B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 2
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 安全関連情報を表すシグナル ······························································································ 5
4.1 一般事項 ······················································································································ 5
4.2 視覚シグナル ················································································································ 6
4.3 聴覚シグナル ················································································································ 8
4.4 触覚シグナル ················································································································ 8
5 シグナルのコード化 ·········································································································· 8
5.1 一般事項 ······················································································································ 8
5.2 視覚シグナルのコード化 ································································································· 9
5.3 聴覚シグナルのコード化 ································································································ 10
5.4 触覚シグナルのコード化 ································································································ 11
附属書A(参考)アクチュエータの操作に関連する図記号 ·························································· 13
参考文献 ···························································································································· 16
B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本機械
工業連合会(JMF)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調
査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS B
9706-1:2001は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認に
ついて,責任はもたない。
JIS B 9706の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 9706-1 第1部:視覚,聴覚及び触覚シグナルの要求事項
JIS B 9706-2 第2部:マーキングの要求事項
JIS B 9706-3 第3部:アクチュエータの配置及び操作に対する要求事項
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日本工業規格
JIS
B 9706-1:2009
(IEC 61310-1:2007)
機械類の安全性−表示,マーキング及び操作−
第1部:視覚,聴覚及び触覚シグナルの要求事項
Safety of machinery−Indication, marking and actuation−
Part 1: Requirements for visual, acoustic and tactile signals
序文
この規格は,2007年に第2版として発行されたIEC 61310-1を基に,技術的内容及び対応国際規格の構
成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
HMI(ヒューマン マシン インタフェース)において,警告シグナル及び危険シグナルは,機械を安全
に使用し,監視するために,安全に関連する情報を危険区域内にいる人及びオペレータに伝達する必要が
ある。
オペレータは,HMIを介して機械又はプロセスに働きかけを行う(図1参照)。HMIは,オペレータが機
械に指令を伝えるためのアクチュエータ(操作器),及びオペレータが機械から情報を受け取るための表示
機器によって構成する。一般に,操作及び表示のための情報は,明確な規則によってコード化したシグナ
ルによって表す。オペレータは,コードによってシグナルの意味を理解する。オペレータの作業負荷に適
するように,色,形状,時間などの各種コード形式を用いる。
図1−HMI(ヒューマン マシン インタフェース)
シグナルのコード化には,次の利点がある。
− 機械から離れた場所で機械を集中制御できる。
− 表示機器の情報伝達量(例えば,表示面単位又は表示時間単位の情報量)を増やすことができる。
− オペレータ又は危険区域内にいる人の精神的負担を軽減できる。
アクチュエータ
(コード化)
操作
情報
HMI
表示機器
(コード化)
オペレータ
機械
2
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1
適用範囲
この規格は,機械のHMIにおいて,また,危険区域内にいる人に対して,安全関連情報を伝達するため
の視覚的手段,聴覚的手段及び触覚的手段に対する要求事項について規定する。
この規格は,危険状態,健康に害を及ぼす状態及び何らかの非常事態を示すための,色,安全標識,マ
ーキング及びその他の警告手段について規定する。また,機械類を安全に使用し,監視するために用いる
表示機器及び操作機器における,視覚シグナル,聴覚シグナル及び触覚シグナルのコード化について規定
する。
この規格の,色及び他の手段によるコード化に関する部分は,IEC 60073を基礎にしている。この規格
の適用対象は,電気的側面だけに限定しない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61310-1:2007,Safety of machinery−Indication, marking and actuation−Part 1: Requirements for
visual, acoustic and tactile signals (IDT)
なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。
これらの引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追
補を含む。)には適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 9703 機械類の安全性−非常停止−設計原則
注記 対応国際規格:ISO 13850,Safety of machinery−Emergency stop−Principles for design (IDT)
JIS B 9960-1:2008 機械類の安全性−機械の電気装置−第1部:一般要求事項
注記 対応国際規格:IEC 60204-1:2005,Safety of machinery−Electrical equipment of machines−Part 1:
General requirements (MOD)
JIS Z 9101:2005 安全色及び安全標識−産業環境及び案内用安全標識のデザイン通則
注記 対応国際規格:ISO 3864-1:2002,Graphical symbols−Safety colours and safety signs−Part 1:
Design principles for safety signs in workplaces and public areas (IDT)
ISO 7000:2004,Graphical symbols for use on equipment−Index and synopsis
ISO 7010:2003,Graphical symbols−Safety colours and safety signs−Safety signs used in workplaces and
public areas
ISO 7731:2003,Ergonomics−Danger signals for public and work areas−Auditory danger signals
IEC 60417,Graphical symbols for use on equipment
IEC 60073:2002,Basic and safety principles for man-machine interface, marking and identification−Coding
principles for indicators and actuators
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
アクチュエータ (actuator)
操作制御機器の,人が操作する部分[IEV 1) 441-15-22を修正]。
注記 アクチュエータには,ハンドル,つまみ,ペダル,押しボタン,ローラー,プランジャー,マ
3
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ウス,ライトペン,キーボード,タッチスクリーンなどがある。
注1) IEVは,International Electrotechnical Vocabulary(国際電気標準用語)の略称である。IEVは,IEC
60050規格群に規定されている。
3.2
明るさ (brightness)
ある面から発している光の強弱の見え方の基になる視感覚の属性(JIS Z 8113の03012参照)。
3.3
コード化 (coding)
一定の規則に従って,特定の意味又は数値をシグナルによって体系的に表すこと。
3.4
コントラスト (contrast)
a) 知覚的意味 同時に又は継時的に見える二つ以上の見え方の差の評価値。
注記1 コントラストの例には,明るさコントラスト,色コントラスト,同時コントラスト,継時
コントラストなどがある。
b) 物理的意味 知覚的明るさコントラストと対応するように意図して,通常,刺激の輝度を含む幾つか
の式の一つによって定義される量。
注記2 物理的には,コントラストは,例えば,光覚輝度いき2)の付近ではΔL / L,また,より高
い輝度ではL1 / L2によって表される。
注2) 輝度いき(luminance threshold)とは,知覚を可能にする最低の輝度をいう(JIS Z 8113
の02022参照)。
(JIS Z 8113の02024参照)
3.5
危険区域内にいる人 (exposed person)
体の全部又は一部が危険区域3)内に存在する人。
注3) 危険区域とは,人が危険源にさらされるような機械類の内部及び/又は機械類周辺の空間をい
う(JIS B 9700-1の3.10参照)。
3.6
図記号 (graphical symbol)
特定の意味を,言語によらずに視覚的に伝えるために用いる図形(ISO 17724の3.1参照)。
3.7
危険源 (hazard)
危害(身体的傷害又は健康障害)を引き起こす潜在的根源。
注記1 危険源という用語は,危険の発生源(例えば,機械的危険源,電気的危険源)を明確にする
ため又は潜在的な危害の性質を明確にするために修飾語を付けて用いることがある(例えば,
感電の危険源,切断の危険源,毒性による危険源,火災による危険源など)。
注記2 この定義において,危険源は,次のものを想定している。
− 機械の“意図する使用”の期間中,恒久的に存在するもの(例えば,危険な動きをする
要素の運動,溶接工程中の電弧,健康を害する姿勢,騒音放射,高温など)。
− 予期せずに現れ得るもの(例えば,爆発,意図しない起動及び予期しない起動の結果と
しての押しつぶしの危険源,破損の結果としての放出,加速度又は減速度の結果として
の落下)。
(JIS B 9700-1の3.6参照)
4
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3.8
危険状態 (hazardous situation)
人が,少なくとも一つの危険源にさらされる状態。危険源にさらされることによって,瞬時に又は長期
的に危害が及ぶことがある(JIS B 9700-1の3.9を修正)。
3.9
照光式アクチュエータ (illuminated actuator)
照光によって可視表示できる,光源付きのアクチュエータ。光源の操作は,アクチュエータ操作に対応
するもの及び対応しないものがある(IEC 60073:2002の3.8参照)。
3.10
機械類 (machinery, machine)
連結された部品又は構成品の組合せであって,そのうちの少なくとも一つは適切な機械駆動部,制御回
路及び動力回路を備えて動くものであって,特に,材料の加工,処理,移動,こん(梱)包などの用途に
合うように結合されたもの。同一の目的を達成するために完全な統一体として機能するように配置され,
制御される複数の機械の集合体も含む(JIS B 9700-1の3.1を修正)。
3.11
メッセージ [message (in telegraphy and data communication)]
送信側から受信側に伝送される一連の文字及び制御シーケンス。送信側が文字の組合せを決定する(IEV
721-09-01参照)。
3.12
オペレータ (operator)
機械の設置,操作,調整,保全,清掃,修理又は輸送に携わる人。
3.13
リスク (risk)
危害の発生確率及び危害のひどさの組合せ(JIS B 9700-1の3.11参照)。
3.14
安全標識 (safety sign)
安全色4)及び幾何学的形状を組み合わせた基本形によって一般的な安全のメッセージを伝え,図記号を
加えることによって,特定の安全のメッセージを伝える標識[JIS Z 9101の3.b) 参照]。
注4) 安全色とは,安全を図るための意味を備えた特別の属性をもつ色をいう[JIS Z 9101の3.a)参
照]。安全色及び対比色については,JIS Z 9101及びJIS Z 9103に詳しい規定がある。
3.15
彩度 (saturation)
ある面について,その明るさにおいて判断される有彩色の度合の強さ。
注記 与えられた視覚条件において,視覚可能範囲の明るさにおける色の感覚は,非常に明るい場合
を除いて,明るさに依存せずほぼ一定の彩度を示す。JIS Z 8113では,彩度(saturation)を飽
和度としている。
3.16
シグナル (signal)
3.16.1
聴覚シグナル (acoustic signal)
音源の,音色,周波数,及び断続形態によって伝達する情報(IEC 60073の3.2.1参照)。
3.16.2
能動的シグナル (active signal)
5
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機械の状態の変化を報知するため又はリスクの変化を警告するために,伝達内容を即時に変えられる機
器によって伝達する情報(表1の例参照)。
3.16.3
受動的シグナル (passive signal)
機械又は機械周辺の恒久的情報を提供するための機器によって伝達する情報(表1の例参照)。
3.16.4
触覚シグナル (tactile signal)
振動,力,表面粗さ,形状又は位置によって伝達する情報。
3.16.5
視覚シグナル (visual signal)
表示機器の明るさ,コントラスト,色,形状,大きさ又は位置によって伝達する情報。
4
安全関連情報を表すシグナル
4.1
一般事項
機械は,機械に接近する人のリスクを低減するために,次の要求事項を満足しなければならない。
− 適切な安全関連情報を人に伝える手段を備えている。
− アクチュエータは,安全に使用でき,アクチュエータ上又はその近傍の適切なマーキングによって明
確に識別できる。
− 警告機能が正常に作動することをオペレータが確認する手段を備えている。
能動的シグナルは,危険源が発生したことを人に伝え,必要な行動を促すために用いる。
受動的シグナルは,恒常的なリスクを警告するために,また,例えば,避難経路,非常停止用アクチュ
エータの位置などを示すために用いる。
注記1 表1は,能動的シグナル及び受動的シグナルの例を示している。
すべての安全関連シグナルは,その意味がオペレータに明確に伝わるように設計しなければならない。
特に,機械の設計及び据付けにおいては,人間工学的原則を考慮しなければならない。シグナル及びその
コード化は,機械全体において矛盾があってはならない。安全関連情報を伝達する機器を選択するときは,
その機器が故障したときの影響を考慮しなければならない(例えば,ランプのフィラメント故障,ビデオ
ディスプレーの電子銃の故障などは,シグナルの喪失をもたらす。)。
注記2 安全関連情報伝達機器の故障に対する具体的方策は,リスクアセスメントに基づいて決定す
る。この規格では規定しない。
安全関連情報は,オペレータ又は危険区域内にいる人の知覚能力に適応する手段を用いて伝達しなけれ
ばならない。視覚的手段によって伝達できる場合には,視覚シグナルを用いなければならない。例えば,
弱視,色弱,難聴などの知覚障害者,又は保護具着用によって知覚を阻害される人が,安全関連シグナル
を認識する必要がある場合は,次に示す補助的手段などを用いることによってこれらの人が確実に知覚で
きるように,特に留意しなければならない。
− 複数の知覚手段(視覚,聴覚及び触覚)の使用。
− 複数のコード(5.2.2参照)の使用。
次の場合には,視覚シグナルを補完する手段を選択し,用いなければならない。
a) 他の情報が過剰であるために目的のシグナルを容易に認識できない。
b) 次の理由によって,視覚シグナルによるだけでは伝達が不十分である。
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− オペレータが,アクチュエータを操作しながら別の場所を見る必要がある。
− 危険区域内にいる人が,オペレータの視野外になる。
− 危険区域内にいる人が,警告シグナルを視認できない。
表1−シグナルの例
シグナルの種類
視覚(4.2参照)
聴覚(4.3参照)
触覚(4.4参照)
能動的シグナル
表示のオンオフ
又は次の属性の変化:
− 色
− 明るさ
− コントラスト
− 彩度(飽和度)
点滅照明又はせん光照明
位置の変化
音響のオンオフ
又は次の属性の変化:
− 周波数
− 強度(音量)
異なる音種
振動
位置の変化
クリック感,スナップ感
戻り止め機構の触感による選
択位置の伝達
受動的シグナル
安全標識
補助標識
マーキング
形状,色
無音
形状
表面の粗さ
浮き彫り
相対位置
4.2
視覚シグナル
4.2.1
一般事項
視覚シグナルは,次の条件を満足しなければならない。
− 伝える相手の視野に入るように配置する。
− 背景に対して適度の明るさコントラスト及び色コントラストをもつ。
表示機器及び照光式アクチュエータに用いる照明の照度は,通常は一定とし,更に細かい区別及び詳細
情報の伝達を目的とする場合(特に情報を強調したいとき)には,点滅照明又はせん光照明を用いるとよ
い。
4.2.2
視野
視覚シグナルは,視認を容易にするために次の条件を満足しなければならない。
a) シグナル及び光源は,必要なすべての視点から表示面が見えるように配置する。
b) 能動的な安全関連シグナルは,作業位置にいるオペレータ及び危険区域内にいる人から視認できるよ
うに配置し,可能な限り広い角度からよく見えるようにする。
c) 視認できる視角が限定される表示面は,必要なすべての位置からよく見えるように配置する。
d) 受動的な視覚シグナル(安全標識,補助標識,マーキングなど)は,情報必要者が場所を移動(自分
又は他者のリスクを増すような移動)しなくてもシグナルを視認できるように配置する。
注記1 図2及び図3は,視覚シグナルを見る人の垂直軸上及び水平軸上の推奨視野及び許容視野
を示している。
注記2 VDT(ディスプレー端末装置)の文字情報の文字の高さ,幅,及び間隔に関しては,JIS Z
8513に規定がある。
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視野A:推奨
視野B:許容
視野C:不適当
視線D:標準視線(統計の中央値)
図2−視覚シグナルを見る人の垂直視野
視野A:推奨
視野B:許容
視野C:不適当
視線D:標準視線(統計の中央値)
図3−視覚シグナルを見る人の水平視野
4.2.3
明るさ,色及びコントラスト
視覚シグナルの明るさ,色及びコントラストに関して,次の要求事項を満足しなければならない。
a) 発光表示面では,明るさコントラスト比が6対1を下回らない。
b) 表示面は,定常時及び非常時の目視条件下で鮮明に見える。
c) 予想されるすべての目視条件(例えば,非常時)に適応するように,必要ならば,非発光表示面には
照明手段を備える。
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4.2.4
図記号
図記号は,容易に理解でき,明確に解釈できるように,単純で論理的でなければならない。可能な限り,
ISO 7000及びIEC 60417に規定する図記号を用いなければならない。
注記 機器・装置用図記号の基本原則が,JIS Z 8221(規格群)に規定されている。機械によく用い
られるIEC 60417の代表的図記号が,この規格の附属書Aに記載されている。
4.2.5
安全標識及び補助標識
安全標識は,意図する条件及び予見される条件下で視認できなければならない。
禁止,強制,警告などの安全情報は,形状,安全色,対比色5)及び図記号を組み合わせて伝達しなけれ
ばならない。
安全標識は,ISO 7010 6)に適合しなければならない。
安全標識だけによって安全に必要なすべての情報を伝達できない場合は,追加の文字情報を伝達するた
めに補助標識7)を安全標識と組み合わせて用いなければならない。
補助標識は,JIS Z 9101に適合しなければならない。
注5) 対比色とは,図記号,文字,地色などを用いて,安全色を引き立たせる効果をもつ無彩色をい
う[JIS Z 9103の3.a) 参照]。
6) ISO 7010の図記号の一部は,JIS Z 9104の附属書2に記載されている。
7) 補助標識とは,標識の主要な目的を更に明確にするために,補助情報を提供する標識をいう[JIS
Z 9101の3.d) 参照]。
4.3
聴覚シグナル
聴覚シグナルは,差し迫った危険を警告し,危険状態が発生したこと及び持続中であることを伝えなけ
ればならない。オペレータの制御又は介入が可能な場合は,聴覚シグナルは少なくともオペレータが介入
するまで持続しなければならない。
聴覚シグナルは,次の条件を満足しなければならない。
− 音量は,周囲の騒音より大きく,容易に聴き取れ,かつ,苦痛を感じるほど過大でない。
− 音響のパルス幅,パルス間隔又はパルスグループ間隔を容易に識別でき,他の聴覚シグナル及び周囲
騒音から明りょうに区別できる。
− ISO 7731の,認識,音響,弁別性及び明りょう性に関する要求事項を満たす。
4.4
触覚シグナル
触覚を通してオペレータに伝える情報は,視覚及び聴覚とは独立に,オペレータが,伝達要素の表面粗
さ,形状及び相対位置を判断して,伝えようとする機械の多種の操作機能を認識でき,区別できるもので
なければならない。
注記1 触覚シグナルは,人体の部分(例えば,指,手,足など)が意図的にアクチュエータの表面
(例えば,押しボタン,レバーなど)に接触するときに伝達される。視認性が低い条件下で
は,触覚シグナルだけに依存することが必要な場合もある。
注記2 触覚シグナルを認識し,理解するためには,オペレータがそのシグナルの意味を承知してい
ることが前提になる。
5
シグナルのコード化
5.1
一般事項
シグナルは,コード化しなければならない。コードは,この規格に従って,機械の設計の初期段階にお
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いて選択しなければならない。
コード化には,次の手段を単独に又は組み合わせて用いなければならない。
− 色(視覚)
− コントラスト(視覚)
− 記号(視覚)
− 周波数(定常波,断続波)(聴覚,触覚)
− 位置(視覚,触覚)
− 形状(視覚,触覚)
− 手ざわり(触覚)
− その他
コードの意味は,機械上又は関連文書の中で説明しなければならない。コードに対応して行動する必要
のある人に説明する情報を提供しなければならない。
5.2
視覚シグナルのコード化
5.2.1
色によるコード化
伝える情報に応じて色を選択しなければならない。表示機器及びアクチュエータの色のコード化に用い
る色は,表2による。機械の電気装置に用いる色は,JIS B 9960-1による。安全標識に用いる安全色及び
対比色は,JIS Z 9101による。非常停止用アクチュエータに用いる対比色は,JIS B 9703による。
表2−色によるコード化の基本原則
色
意味
人又は周囲の安全
機械及びプロセスの状態
装置の状態
赤
危険,禁止
非常
故障
だいだい・黄
警告,注意
異常
異常
緑
安全
正常
正常
青
義務,強制の意味に用いる。
白,灰色,黒
特別の意味を割り当てない。
5.2.2
色の補助手段によるコード化
色によるコード化を安全関連用途に用いる場合は,色以外のコード化手段を補助的に用いてコード化を
補完しなければならない。
色の補助手段は表3によるものとし,コードの意味をオペレータが明確に理解できるようにしなければ
ならない。
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表3−色の補助手段によるコード化
補助手段
コード化要素
形状
− 形態(英数字,絵,図記号,線)
− 形状(文字フォント,大きさ,線幅)
− 外見,質感(線種,影付き,点付き)
位置
− 絶対位置,相対位置
− 方向(基準座標系を使用又は不使用)
時間的変化
時間的変化
− 明るさ
− 色
− 形
− 位置
注記1 色によるアクチュエータのコード化(照光式及び発光式を含む。)についての更に詳細な情報
は,IEC 60073に記述がある。
注記2 アクチュエータの操作の要求事項については,JIS B 9706-3に規定がある。
5.3
聴覚シグナルのコード化
危険,注意,障害除去完了などの状態を示す聴覚シグナルの強度,持続時間,音程,音色,音響パルス
の繰返し周波数,二重音などによる安全関連及びその他の情報,並びに放送に用いる聴覚シグナルのコー
ド化は,表4による。
表5は,聴覚シグナルのコード化手段の例を示す。
表4−聴覚シグナルのコード化
伝達情報
コード
危険の通報
保護又は救助の要求
次によるコード化が可能であるa)。
− 音程の連続的変化
− 断続音
− 音程のステップ変化(強制的又は優先的行動を促す。
音程数は2〜3とする。)
注意の喚起
必要な行動を促すための警告
同じ音程で長さ(最短0.3秒)が異なる2音の組合せ(最初
の音を長くする。)。2音の長さが等しい場合は,繰返し周波
数を0.4 Hz以上とする。
障害除去完了(安全状態回復)の通報
連続音(一定音程で30秒以上)
広報
放送
2音チャイム(高低の2音。反復しない。指示又はメッセー
ジが続く。)。
注記 音響シグナルの定義,構成,原理及び特性は,ISO 7731に規定されている。
注a) 緊急性は,音響の高速変化又は不協和変化によって伝えることができる。
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B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表5−聴覚シグナルのコード化手段の例
コード化手段
コード特性
音及び声の種類
− 音
− 雑音
− 言葉のメッセージ
単音の種類
− 異周波数の選択
時間的変化の違い
属性の時間的変化
− 周波数
− 音量
− 総持続時間
5.4
触覚シグナルのコード化
触覚シグナルのコード化は,機械の異なる操作要素を触覚によって明確に区別できるように実施しなけ
ればならない。一つの操作面には,異なる形状を5種類を超えない範囲で用いるものとする。異なる形状
の例を図4に示す。
安全関連の触覚シグナルには,アクチュエータ上又はその近傍,及び操作マニュアルの中に説明を与え
なければならない。
表6は,触覚シグナルのコード化手段の例を示す。
注記 相対位置の違いによる触覚シグナルのコード化に関しては,JIS B 9706-3に規定がある。
表6−触覚シグナルのコード化手段の例
コード化手段
コード特性
形状の違い
− 形
− 表面粗さ
力の違い
− 力の大きさ
振動の種類
− 振幅
− 周波数
位置の違い
− 絶対位置,相対位置
− 方向(基準系あり又はなし)
時間的変化の違い
属性の時間的変化
− 力
− 振動
12
B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図4−触覚だけによって識別する形状の例
13
B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(参考)
アクチュエータの操作に関連する図記号
序文
この附属書は,アクチュエータの操作に関連する図記号の例を示すものであって,規定の一部ではない。
A.1 図記号
アクチュエータの操作に関連する多くの図記号がIEC 60417に規定されている。機械におけるこれらの
使用例を抜粋して表A.1に示す。これらの図記号は,主として電気回路制御用のアクチュエータに用いる
が,機械制御用,液圧制御用などのアクチュエータにも使用できる。
表A.1−アクチュエータ操作に関連する図記号の例
図記号
意味
機能
IEC 60417-5007
電源オン
主電源との接続を意味する。少なくとも主電源スイッチ又は主電
源スイッチ位置の識別に用いる。安全に関連する場合は,主電源
以外にも用いる。
注記1 線の向きによって図記号の意味が異なる。
注記2 図記号5264も参照。
IEC 60417-5008
電源オフ
主電源からの切り離しを意味する。少なくとも主電源スイッチ又
は主電源スイッチ位置の識別に用いる。安全に関連する場合は,
主電源以外にも用いる。
注記 図記号5265も参照。
IEC 60417-5009
待機
装置を待機状態にするために,装置の一部の電源をオンにするス
イッチ又はスイッチ位置の識別に用いる。
注記 図記号5266も参照。
IEC 60417-5010
電源オン・電源オ
フ
押すごとに交互に主電源のオン・オフを繰り返すことを意味する。
少なくとも主電源スイッチ又は主電源スイッチ位置の識別に用い
る。安全に関連する場合は,主電源以外にも用いる。
手を離しても指令した機能は持続する。
IEC 60417-5011
電源オン・電源オ
フ(押ボタン)
押している間だけ主電源を接続することを意味する。手を離せば
電源オフになる。
少なくとも主電源スイッチ又は主電源スイッチ位置の識別に用
いる。安全に関連する場合は,主電源以外にも用いる。
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B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−アクチュエータ操作に関連する図記号の例(続き)
図記号
意味
機能
IEC 60417-5104
起動
起動ボタンの識別に用いる。
注記 図記号5177も参照。
IEC 60417-5107A
定常速度運転
定常速度運転を指令するスイッチ又はスイッチ位置の識別に用い
る(例えば,テープの運転において。)。
注記 逆向きの記号は,逆方向の定常速度運転を意味する。
IEC 60417-5107B
図記号5107Aの代替表示方法。
意味は,図記号5107Aに同じ。
IEC 60417-5108A
高速運転
定常速度より速い運転を指令するスイッチ又は表示器の識別に用
いる(例えば,テープの運転において。)。
注記 逆向きの記号は,逆方向の高速運転を意味する。
IEC 60417-5108B
図記号5108Aの代替表示方法。
意味は,図記号5108Aに同じ。
IEC 60417-5110A
停止
運転(アクティブ機能)停止を指令するアクチュエータ又は表示
器を示す。
IEC 60417-5111A
中断
機械(装置)を運転モード状態に保ちながら,間欠的に運転を停
止するアクチュエータ又は表示器を示す。
IEC 60417-5124A
低速運転
三角形が示す向きに定常速度より低い速度で運転することを指令
するアクチュエータ又は表示器の識別に用いる。
注記 逆向きの記号は,逆方向の低速運転を意味する。
IEC 60417-5124B
図記号5124Aの代替表示方法。
意味は,図記号5124Aに同じ。
15
B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−アクチュエータ操作に関連する図記号の例(続き)
図記号
意味
機能
IEC 60417-5125A
反復
実行したプログラムの先頭に戻って実行を繰り返すことを指令す
るアクチュエータ又は表示器の識別に用いる。
IEC 60417-5125B
図記号5125Aの代替表示方法。
意味は,図記号5125Aに同じ。
IEC 60417-5177
迅速起動
例えば,プロセス,プログラム,テープなどが,有意の遅れ時間
なしに直ちに定常速度で起動することを指令するアクチュエータ
の識別に用いる。
注記 図記号5177は,特に,図記号5104を用いる装置で用いる。
IEC 60417-5178
迅速停止
例えば,プロセス,プログラム,テープなどが,有意の遅れ時間
なしに直ちに停止することを指令するアクチュエータの識別に用
いる。
注記 図記号5178は,特に,図記号5110Aを用いる装置で迅速
停止と通常停止とを区別するときに用いる。
IEC 60417-5264
装置の部分的オ
ン
装置の部分のオン状態の識別に用いる。図記号5007を使用できな
いとき(例えば,スイッチのオン位置の表示)に用いる。
注記 図記号5264は,図記号5265と関連して用いる。
IEC 60417-5265
装置の部分的オ
フ
装置の部分のオフ状態の識別に用いる。図記号5008を使用できな
いとき(例えば,スイッチのオフ位置の表示)に用いる。
注記 図記号5265は,図記号5264と関連して用いる。
IEC 60417-5266
装置の部分的待
機又は準備
装置の部分の待機状態又は準備状態の識別に用いる。図記号5009
を使用できないとき(例えば,スイッチの待機位置の表示)に用
いる。
IEC 60417-5638
非常停止
非常停止用アクチュエータの識別に用いる。
図記号5638は,電気を使う機械及び装置の使用者の安全を重視
する場合に,図記号5110A又は図記号5178の替わりに用いる。
16
B 9706-1:2009 (IEC 61310-1:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
JIS B 9700-1:2004 機械類の安全性−設計のための基本概念,一般原則−第1部:基本用語,方法論
注記 対応国際規格:ISO 12100-1:2003,Safety of machinery−Basic concepts, general principles for design
−Part 1: Basic terminology, methodology (IDT)
JIS B 9706-3:2009 機械類の安全性−表示,マーキング及び操作−第3部:アクチュエータの配置及び
操作に対する要求事項
注記 対応国際規格:IEC 61310-3:2007,Safety of machinery−Indication, marking and actuation−Part 3:
Requirements for the location and operation of actuators (IDT)
JIS Z 8113:1998 照明用語
注記 対応国際規格:IEC 60050-845:1987,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Chapter 845:
Lighting (MOD)
JIS Z 8221(規格群) 機器・装置用図記号の基本原則
注記 対応国際規格:IEC 80416 (all parts),Basic principles for graphical symbols for use on equipment
[-1&-2:2001, -3:2002 (IDT)]
JIS Z 8513:1994 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−視覚表示装置の要求事項
注記 対応国際規格:ISO 9241-3:1992,Ergonomic requirements for office work with visual display
terminals (VDTs)−Part 3: Visual display requirements (MOD)
JIS Z 9103 安全色−一般的事項
JIS Z 9104 安全標識−一般的事項
ISO 17724:2003,Graphical symbols‒Vocabulary
IEC 60050-441:1984,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Chapter 441:Switchgear, controlgear and
fuses
IEC 60050-721:1991,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Chapter 721:Telegraphy, facsimile and
data communication