B 8834:2010
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 要求事項························································································································· 1
4.1 一般 ···························································································································· 1
4.2 弾性変形に関する基本要求事項 ························································································ 2
5 けたのプレキャンバに関する一般事項 ·················································································· 2
6 クレーンけたの振動に関する事項 ························································································ 3
6.1 運転者への影響 ············································································································· 3
6.2 振動に対するけたの剛性の影響 ························································································ 3
6.3 溶接構造の箱げたに関するガイドライン············································································· 4
附属書A(参考)けたのたわみに関する最大値の指針 ································································· 5
附属書B(参考)けたの最小振動数に関する指針 ········································································ 6
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································· 8
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本クレーン協会(JCA)及び財団
法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本
工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確
認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
B 8834:2010
クレーン−剛性−天井走行クレーン及び橋形クレーン
Cranes-Stiffness-Bridge and gantry cranes
序文
この規格は,2007年に第1版として発行されたISO 22986を基に,対応する部分については対応国際規
格を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定され
ていない用語及び定義に関する規定項目を日本工業規格として追加している。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。変更の一覧表に
その説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,JIS B 0146-1に規定する天井走行クレーン及び橋形クレーンの構造における剛性のたわみ
及び固有振動数に関する要求事項を規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 22986: 2007,Cranes−Stiffness−Bridge and gantry cranes(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0146-1 クレーン用語−第1部:一般
注記 対応国際規格:ISO 4306-1,Cranes−Vocabulary−Part 1: General(MOD)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0146-1によるほか,次による。
3.1
プレキャンバ
クレーンのけたのたわみを予測して,製作時にあらかじめ上向きに与えておくそり。
4
要求事項
4.1
一般
クレーンの構造における柔軟性の影響は,つり荷による弾性変形,及び運動又は一時的外力によって誘
発される振動として現れる。クレーン本体の構造及び構成機械部品の過度の柔軟性は,クレーンの安全使
2
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用に影響を及ぼすことがある。したがって,弾性変形及び振動は,それらが危険な状況を引き起こさない
ように,制限されなければならない。また,クレーンが設計された条件で使われるのを妨げないものとす
る。
弾性変形及び振動に関する要求事項は,クレーンの部材構成に依存する。また,正確なつり荷の取扱い,
制御システムの方式及び性能,運転席の配置などから派生してくる。しかしながら,剛性を増すことは,
より大きな設備投資経費及びより大きなスペースが必要になることを意味する。また,それがすべての適
用例で時間と労力とをかける価値があるというわけではない。さらに,過度の柔軟性をなくせるかは,ク
レーンの形式とその部材構成に依存するところが多い。したがって,正確な剛性に関する限界値は,たわ
み又は振動だけでは決定できない。
4.2
弾性変形に関する基本要求事項
クレーン本体構造の弾性変形に対する基本要求事項は,次による。
a) クレーン本体又はクラブトロリが他の周囲の物及び構造物と衝突しない。
b) クラブトロリが静的試験荷重を上回らない荷重で横行し,設計されたブレーキ装置で減速及び停止す
ることができる。
c) クラブトロリが静的試験荷重を上回らないつり荷をつった状態で,その位置に問題なく静止すること
ができる。
d) クレーンレール及び軌道に過度の横方向の抵抗力を引き起こしたり,クレーンが動くのを妨げない。
e) 低品質の短い寿命の部品,過度の振動,ブレーキの磨耗又は故障などによって起こる機械駆動装置の
しん(心)ずれの発生の原因とならない。
注記 単純はりの最大たわみに関する推奨事項を,附属書Aに示す。
5
けたのプレキャンバに関する一般事項
けたのプレキャンバは,次による。
a) プレキャンバそのものは,けたの強度に対して何ら影響をもたないため,特別な要求事項はない。
b) 4.2 b)の要求事項を満たすために,クレーンけたは,傾斜範囲(最大と最小の傾斜の違い)がほぼ等し
く,正及び負のたわみに分けられるような形状・寸法でプレキャンバを付けると,傾斜の極値が減少
する(図1を参照)。
結果としてクラブトロリの横行動力及びブレーキ能力の設定を効率的に決めることができる。
c) けたの傾斜は,それが最大となる位置にクラブトロリ及びその荷重,またほかにクラブトロリがある
場合は,そのクラブトロリ及び荷重を考慮したものとする。
d) プレキャンバを付ける別の理由としては,“クレーンの外観上”又は“落成検査時の試験荷重載荷後の
溶接けたの若干の永久変形に対する補償”ということがある。
3
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δ1:
δ2:
δ1+δ2:
s:
m1:
θ:
プレキャンバ及びけた自重によるたわみ量
プレキャンバ,けた自重及びクラブトロリによるたわみ量
クラブトロリ質量,けた自重,クラブトロリ及びつり荷重による静的たわみ量
スパン
つり荷の質量
最大傾斜角
図1−たわみ及び傾斜角
6
クレーンけたの振動に関する事項
6.1
運転者への影響
運転者への影響に関する注意事項を,次に示す。
a) 運転室内の運転者への不快な振動を避けるために,運転室を取り付けたクレーン本体の垂直固有振動
数は,2 Hz以下の垂直振動になってはならない。
b) 長いスパンのクレーンに関して,a)の制限を満たして,経済的に妥当な剛性を求めるのは非常に困難
である。したがって,ある程度低い固有振動数は許容されるが,振幅及び振動の発生期間は,無段階
制御,スムーズな速度移行などを採用し最小にすべきである。
c) 最も低い振動数の指標値は,附属書Bに示す。生産任務の橋形クレーンにおいては,主な操作の動き
に起因する水平振動の振動数が0.50 Hzより小さくなってはならない(例えば,船舶アンローダと船
から陸へのコンテナクレーンのトロリ走行方向の振動数)。
6.2
振動に対するけたの剛性の影響
天井クレーンの構造及びクレーン作業に対する振動の影響は,けたの剛性を高めることによって減じる
ことができる。
4
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これまでに経験的に得られた天井クレーン設置における固有振動数などの代表的な数値を,附属書A及
び附属書Bに示す。
注記 高い振動数は低い振動数より減衰が大きい。
6.3
溶接構造の箱げたに関するガイドライン
天井クレーンの箱げたの寸法比率は,次の比率区分を満たすのがよい。
s/h<25 スパンとけた高さの割合
s/b<65 走行速度がステップ制御のクレーン
s/b<80 走行速度がステップレス制御のクレーン
ここに,
s: スパン
h: けた(フランジ中央線)の高さ(図2参照)
b: けた(ウエブ中央線)の幅(図2参照)
この比率は橋形クレーンのスパンにも適用する。ただし,片持ばりがある橋形クレーンには,脚部が十
分な剛性がない限りスパンsは,けた(片持ばりを含む。)の全長に対して,s/bの限界を適用する。
b:けたの幅
h:けたの高さ
図2−けたの幅及び高さ
5
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附属書A
(参考)
けたのたわみに関する最大値の指針
A.1 クレーンガーダの設計
クレーンガーダの設計は,剛性係数(Is)によって決められるべきである。Isは,はりのスパンを静的な
最大たわみ量で除したもので,δstatはトロリ及びつり荷重によるたわみ量である。
stat
s
δ
s
I=
ここに,
Is: 剛性係数
s: スパン
δstat: トロリ及びつり荷重によるたわみ量
表A.1は,剛性係数の範囲を示す。
表A.1−剛性係数Isの範囲
剛性係数
Is
クレーンに対する適用範囲
Aゾーン−高い位置決め精度が必要とされるクレーンの
場合。
Bゾーン−簡単なコントロールシステムを使うことがで
きる中程度の位置決めの精度の普通の作業場
クレーンの場合。
Cゾーン−低い位置決め精度のもの。又は,それを補うた
めにステップレス制御又は微速がついている
もの。
1 500
1 250
1 000
750
500
250
Aゾーン
Bゾーン
Cゾーン
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附属書B
(参考)
けたの最小振動数に関する指針
B.1
けたの固有振動数
通常の天井走行クレーンにおいては,クレーンけたの垂直及び水平の固有振動数は,次の式(1)及び式(2)
によって概算できる。
a) 垂直方向固有振動数 両端ピンのけたの垂直固有振動数fv(Hz)は,次の式による。
)
7
485
.0
(
48
π
21
g
l
c
3
y
v
m
m
m
s
I
E
f
×
+
+
×
×
=
················································· (1)
ここに,
mc: クラブトロリ質量(kg)
ml: つり上げ質量(kg)
mg: クレーン主けた質量(kg)
E: 縦弾性係数(N/m2)
Iy: 断面2次モーメント(m4)
s: クレーンスパン(m)
他の支持条件では,fvを計算するために,別の手法を必要とする。
b) 水平方向固有振動数 水平固有振動数については,けた及びサドルの取付け状態を考慮しなければな
らない。
係数kmg及びkscを考慮して,水平固有振動数fh(Hz)は,次の式による。
)
(
π
21
g
mg
c
3
z
sc
h
m
k
m
s
I
E
k
f
×
+
×
×
=
···························································· (2)
ここに,
mc: クラブトロリ質量(kg)
mg: クレーン主けた質量(kg)
E: 縦弾性係数(N/m2)
Iz: 断面2次モーメント(m4)
s: クレーンスパン(m)
定数kmg及びkscは次の値とする。
自由に支えられたけた端部の場合:kmg=0.485 7及びksc=48
固定されたけた端の場合:kmg=0.371 4及びksc=192
なお,代表的なクレーンに対する値は,次のとおりである。
クレーンガーダ上を走行する1本げたクレーン:kmg=0.450 0及びksc=100
クレーンガーダ上を走行する2本げたクレーン:kmg=0.430 0及びksc=125
c) 推奨振動数 当該クレーンに特別な要求事項がなければ図B.1のグラフの値から最低振動数fv及びfh
を求める。
これらの値は,実験及び実際の運転計測から得た経験に基づいている。
7
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X:クレーンスパンs(m)
Y:振動数f(Hz)
fh:水平方向振動数
fv:垂直方向振動数
上側の実線は加減速ステップありの場合,下側の二点鎖線は加減速がステップレスの場合を示す。
図B.1−固有振動数fh及びfvのガイドライン
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS B 8834:2010 クレーン−剛性−天井走行クレーン及び橋形クレーン
ISO 22986:2007,Cranes−Stiffness−Bridge and gantry cranes
(I)JISの規定
(II)
国際規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条番
号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範
囲
JIS B 0146-1に規定
するクレーンのう
ち,天井走行クレー
ン及び橋形クレー
ンの構造における
剛性のたわみ及び
固有振動数に関す
る要求事項を規定
する。
1
JISと同じ。ただし,適用
クレーンに関するISO規
格の引用なし。
追加
技術的差異はない。
−
3 用語及
び定義
JIS B 0146-1
3
ISO 4306-5も引用されて
いる。
変更
技術的差異はない。
ISO 4306-5に対応するJISが制定
されていないので,JIS化を検討す
る。
3.1 プレキャンバ
−
本文には記述があるが,
用語の定義にはない。
追加
技術的差異はない。
ISO規格見直し時に定義に追加を
提案する。
5 けたの
プレキャ
ンバに関
する一般
事項
b) 結果としてクラ
ブトロリの横行動
力及びブレーキ能
力の設定を効率的
に決めることがで
きる。
−
本文には記述があるが,
用語の定義にはない。
追加
技術的差異はない。
ISO規格見直し時に本文に追加を
提案する。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 22986:2007,MOD
2
B
8
8
3
4
:
2
0
1
0
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD…………… 国際規格を修正している。
2
B
8
8
3
4
:
2
0
1
0
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。