B 8702:2018
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 測定方法························································································································· 3
4.1 原理 ···························································································································· 3
4.2 注入流体 ······················································································································ 3
4.3 測定装置・構成 ············································································································· 3
4.4 画像取得の準備 ············································································································· 5
4.5 画像取得の手順 ············································································································· 5
4.6 混合性能を示す指標及びその算出方法················································································ 6
5 測定報告書 ······················································································································ 8
附属書A(参考)静的流体混合装置の混合性能測定報告書の例······················································ 9
附属書B(参考)注入流体の推奨溶液の調製例 ·········································································· 10
附属書C(参考)混合性能測定結果画像サンプル ······································································ 12
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まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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静的流体混合装置の混合性能測定方法
Measuring method for mixing performance of static mixers
1
適用範囲
この規格は,一般産業用に用いる静的流体混合装置において,複数の流体の混合性能を測定する方法に
ついて規定する。
この規格は,注入流体として濃厚高分子溶液(カルボキシメチルセルロース水溶液)などの水との相溶
性の低い流体のほか,グリセリン,水あめなどの水との相溶性の高い液体,更に,水以外の流体に対する
他流体の混合を対象とする場合にも適用できる。
注記 この規格は,水(主流)が流れる配管に蛍光物質を含む注入流体を供給し,その下流に設置し
た静的流体混合装置の出口における可視化画像から,注入流体の混合状態を五つの指標で定量
化する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 6741 硬質ポリ塩化ビニル管
JIS X 0013 情報処理用語(図形処理)
JIS Z 8120 光学用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS X 0013及びJIS Z 8120によるほか,次による。
3.1
静的流体混合装置
流体の流れる配管内に設置し,流体を混合するための装置で,装置自身には可動部がなく,流体が装置
内部のエレメントを通過することによって,流れ方向若しくは円周方向への分割,合流,局部的な加速,
引き伸ばし又は折り畳み作用が発生し混合する装置。
3.2
混合エレメント
静的流体混合装置の内部に挿入する孔又は溝,更にはその両方をもつ平板,湾曲板,傾斜板などで構成
され,流体の流れを乱すことによって混合するもの。例として次に代表的な混合エレメントのタイプを示
す(図1参照)。
2
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a) らせんタイプ
b) 多層タイプ
c) 多孔タイプ
図1−静的流体混合装置用混合エレメントの例
3.3
主流体(主流)
主配管を流れる流体。
3.4
注入流体
主流体に供給する流体。
3.5
蛍光物質
レーザ光の照射によって発光する物質で注入流体に添加して使用する物質。注入流体から主流体に容易
に拡散しない染料,顔料などがある。
3.6
可視化部
静的流体混合装置の下流に設置された透明アクリル製円管及びそれを覆うアクリル製ボックスから成る
可視化流路,デジタルカメラ,シャープカットフィルタなどから構成するもの。
3.7
レーザシート光
可視化流路断面を照射するシート状のレーザ光。蛍光物質はレーザシート光によって発光する。
3.8
断面画像
3
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静的流体混合装置の下流に設置された可視化部内の可視化流路に対して,主流体の流れ方向と直角にレ
ーザシート光を照射することによって観察した可視化流路断面の画像。
3.9
撮影画像
断面画像をシャープカットフィルタを透過させて取得した静止画。
3.10
蛍光領域
撮影画像で蛍光している部分。領域は画素の輝度値で判別する。
4
測定方法
測定方法は,次による。
4.1
原理
管内部を主流体(例えば,水)が流れる流れ系に接続された静的流体混合装置の上流において,管中心
部から蛍光物質を含む注入流体を供給し,静的流体混合装置の下流の可視化部内の可視化流路に対して主
流体の流れ方向に直角にレーザシート光を照射して,管断面の画像をデジタルカメラで撮影する。得られ
た撮影画像を画像処理して,データ解析を行い,各種混合性能を示す指標を求める。
4.2
注入流体
注入流体は,高粘度の水溶液に蛍光物質を加えたもの。注入流体の推奨溶液の調製方法を附属書Bに示
す。
4.3
測定装置・構成
測定装置は,図2に例示する構成とし,タンク,温度計,ポンプ,流量計,マイクロフィーダ,可視化
部,画像処理部などから成る。
図2−測定装置の例
4.3.1
タンク
タンクは,主流体を一時的に貯蔵するために使用するもので,貯蔵量を維持するために,液面制御シス
テム(液面を設定した高さに保つシステム)を備えることが望ましい。
4.3.2
ポンプ
ポンプは,タンク内の主流体を静的流体混合装置に供給するために使用するもので,主流体を10 L/min
〜30 L/minを吐き出しできるものとする。
主流体
タンク
ポンプ
流量計
マイクロ
フィーダ
静的流体
混合装置
レーザ
シート光
排水
デジタル
カメラ
可視化部
シャープカット
フィルタ
画像処理
・データ解析
可視化流路
温度計
4
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4.3.3
配管
主配管は,内径25 mmの平滑管とし,通常JIS K 6741に規定する硬質ポリ塩化ビニル管とする。
4.3.4
流量計
流量計は,10 L/min〜30 L/minの流量において,指示値に対する誤差が±4 %で計測できる流量計とする。
4.3.5
マイクロフィーダ
マイクロフィーダは,次による。
a) 流量10 mL/min〜30 mL/minの範囲で,注入流体が連続的に供給できるものを使用する。
b) マイクロフィーダにセットしたシリンジ先端から,透明チューブによって外径4 mm,内径3 mmの注
入ノズルと接続する。
c) 注入ノズルは,先端部を静的流体混合装置の上流70 mmの管断面中央に配置する(図3参照)。
d) 静的流体混合装置と可視化部との距離は,180 mmとする。
単位 mm
図3−静的流体混合装置回りの位置関係
4.3.6
可視化部
静的流体混合装置の下流管断面を可視化して撮影画像を得る。可視化部は,可視化流路,レーザシート
光発生装置,シャープカットフィルタ及びデジタルカメラで構成し,次による。
a) 可視化流路 内径25 mmの透明アクリル製円管とする。レーザシート光の屈折の影響を極力抑えるた
め,肉厚は0.7 mm以下とし,これを長方形の透明アクリル製ボックスで囲い,円管及びボックスの
空間には水を満たす。可視化流路は図4による。
b) レーザシート光発生装置 可視化流路内の所定位置の断面画像を得るためのシート状のレーザ光を発
生する装置で,波長532 nm,約50 mWのグリーンレーザ光を発生させる。
c) シャープカットフィルタ 流体中に含まれる気泡を画像から消去するための光学フィルタであり,透
過限界波長560±5 nmのものを使用する。
d) デジタルカメラ 可視化流路内でレーザシート光によって照射された断面画像をシャープカットフィ
ルタ透過後に撮影して撮影画像を得ることができるもので,デジタルカメラの性能は,シャッタース
ピード1/60秒,画素数は640×480以上,連写は1枚/秒以上,レンズのFナンバは5.6以下とする。
マイクロ
フィーダ
静的流体
混合装置
可視化部
70
180
主配管
注入
ノズル
主流体
レーザシート光
シリンジ
チューブ
注入
ノズル
主配管
注入流体+蛍光物質
5
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単位 mm
図4−可視化流路
4.3.7
画像処理・データ解析
画像処理・データ解析は,デジタルカメラで撮影した画像に対し,各画素のR(赤)要素の輝度値を使
って混合性能を表す指標である混合度,中央輝度,最大輝度,濃厚塊の大きさ及び偏在度を算出するもの
である。
4.4
画像取得の準備
画像取得の準備は,次による。
a) タンク,ポンプ,流量計,マイクロフィーダ,可視化部などの各機器を図2のとおりに接続する。
b) 静的流体混合装置及び注入ノズルを可視化部上流に図3のとおりに接続する。
c) マイクロフィーダの流量を所定値に設定する。
d) デジタルカメラを調整する。シャッタースピードは1/60秒,被写体の画面上のサイズは全画面に対し
25 %以上とする。
e) タンクに主流体を供給する。
f)
計装機器(流量計,温度計など)及びポンプに電源を入れる。
g) ポンプを起動し,主流体の流量が規定の値になるように流量計を見ながら調整する。
4.5
画像取得の手順
画像取得の手順は,次による。
a) 4.4が完了していることを確認する。
b) レーザシート光発生装置の電源を入れ,レーザシート光を可視化流路に照射する。
c) 斜視正面図
空気抜き穴(ねじ式が望ましい)
a) 正面図
400
300
100
26
φ
3
2
φ
2
5
φ
2
5
.4
8
0
b) 右側面図
40 40
4
0
4
0
6
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c) レーザシート光を照射した管断面にデジタルカメラの焦点を合わせる。
d) 可視化部を黒い布等で遮光する。
注記 実験の結果,可視化部を黒い布で覆うだけでも,ほぼ0 lxにできることを確認済み。
e) 管の壁面の位置を特定するための画像(以下,基準画像という。)をデジタルカメラで撮影する。
f)
マイクロフィーダを起動し,注入流体を供給する。
g) 管断面を連続撮影し,解析画像とする。解析画像の枚数は100枚以上とする。
4.6
混合性能を示す指標及びその算出方法
混合性能を示す指標及びその算出方法は,次による。
4.6.1
画像の解析範囲の決定及び輝度変換
撮影した管断面の画像については,管内部の全画素が解析対象となる。図5に基準画像及び解析画像の
2例を示す。解析範囲は,基準画像を用いて決定する。画像中のだいだい色の円は管壁の輪郭線であり,
この線よりも内側にある画素を解析範囲とする。解析範囲にある各画素について,R(赤)の輝度値R(0
〜255の256段階)を求める。
4.6.2
輝度のしきい値の決定
取得した画像は様々な光学ノイズを含んでおり,4.5 d) のように遮光して撮影した基準画像でも,輝度
値がゼロにならない画素があることがある。そこで,輝度のしきい値を決定し,光学ノイズを除去する処
理を行う。しきい値は,基準画像を用いて決定する。解析範囲にある画素について,Rとその画素数の関
係をヒストグラムとして表す。ここで,Rが小さい領域に見られる上に凸の曲線に対し,最頻値となる輝
度を求め,この右側の分布の外形を最頻値の10 %以上の輝度データによって直線近似する。この近似線か
ら度数=0(ヒストグラムの横軸と近似線の交点)の輝度値を求め,これに10をプラスしたものをしきい
値とする。解析画像の解析範囲としきい値は,基準画像で決定したものを用いる。しきい値以下の画素に
ついては,R=0とする。このように求めたRを用いて,次に示す各混合指標を算出し,静的流体混合装置
の混合性能を評価する。
a) 基準画像
b) 解析画像1
c) 解析画像2
図5−撮影画像の例
4.6.3
混合性能を示す指標
混合性能を示す指標は,次による。
a) 混合度(M) Mは,蛍光している画素(R>0)の数を解析範囲にある全画素数に対する百分率とし
て算出する。Mが大きいほど主流体に供給した注入流体が管断面へ広がっていることを示し,流体の
混合が良好なことを示す。
b) 中央輝度(Rmed) 蛍光している画素に対し,その画素数n(R) の関係を図6のようなヒストグラムと
して表し,分布の中央値に対応する輝度をRmedとして求める。Rmedが大きいほど注入流体の均一化が
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進んでいることを示す。
図6−中央輝度Rmedの例
c) 最大輝度(R'max) R'maxは,次によって求める。
1) 蛍光している画素に対し,その画素数n(R) の代わりに,式(1)で定義するn'(R) を算出する。
255
/
)
(
)
(
R
R
n
R
n
=
′
········································································ (1)
2) n' 及びRの関係を図7のようなグラフとして表し,n' が最大となる輝度をR'maxとして求める。R'max
が小さいほど蛍光領域中の注入流体の最大濃度が低く,流体の混合が良好なことを示す。
図7−最大輝度R'maxの算出方法
d) 濃厚塊の大きさ(L) Lは,次によって求める。
1) 解析画像において,周辺に比べてRが大きく,しかも塊状に存在する画素群(濃厚塊)のサイズを
式(2)から求める。
100
×
=ba
L
··············································································· (2)
ここに,
L: 濃厚塊の大きさ(%)
R
n
'
[個
]
(
R
/2
55
)
しきい値(=21)
最大輝度
R'max=255
0
100
200
0
2000
4000
6000
8000
R
n
255
50
150
[-]
[個
]
しきい値(=21)
中央輝度(Rmed=47.9)
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a: 濃厚塊を構成する画素数
b: 全画素数
2) Lはサイズが1番目〜5番目の濃厚塊について,それぞれ求める。Lが小さいほど,流体の混合が良
好なことを示す。
なお,一番大きな濃厚塊を最大濃厚塊とする。
e) 偏在度(Dev) Devは,解析範囲内のRを用いてその輝度重心を求め,管中心をゼロとし,鉛直方向
に内管壁位置が±1になるようにとった座標上に,重心のy座標を比例配分して求める。すなわち,
Devは−1〜1の範囲にあり,偏在していない場合は0になる。
また,Devは,主流体に対して密度の差異が大きい注入流体の混合特性を評価する場合に有効であ
り,Devの絶対値が大きくなるほど混合が不十分であることを示す。
4.6.4
混合性能を示す指標の平均値の算出
解析画像それぞれについて求めたM,Rmed,R'max及びDevは全ての解析画像の平均値を算出する。Lは
個々の画像単位で評価する指標であり,平均値は求めない。
5
測定報告書
混合性能測定報告書には,次の事項を記載する。
なお,測定報告書の記載項目例を附属書Aに示す。
a) 静的流体混合装置の形式
b) 主流体名
c) 注入溶液名及び濃度
d) 蛍光物質名及び濃度
e) 注入流体比重及び粘度
比重は,測定温度における注入流体の密度を主流(水)の密度で除した値である。
f)
撮影条件
g) 測定条件(主流体の流量,注入流体の流量,主流体に対する注入流体の濃度,静的流体混合装置の入
口流速,水温及び気温,処理画像枚数)
h) 混合性能測定結果(混合度:M,中央輝度:Rmed,最大輝度:R'max,濃厚塊の大きさ:L,偏在度:Dev)
附属書Cは典型的な画像を3枚(1〜3枚を基本とする)選択し,それぞれの画像についてM,Rmed,
R'max,L及びDevを示したものである。また,Lを除く指標は全画像の平均値を示している。
均一混合に近づくほど,Mが100に近づき,RmedとR'maxが近い値になる。また,Lは限りなく小さ
くなり,Devはゼロに近づく。
i)
混合性能の特徴
4.6.3のa)〜e) に示した混合性能を示す指標の説明に従い,混合性能の特徴を記載する。
j)
測定年月日
k) 測定者
l)
その他必要な事項
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附属書A
(参考)
静的流体混合装置の混合性能測定報告書の例
A.1 混合性能測定報告書の例
静的流体混合装置の形式:
主流体名 :
注入溶液名:
注入溶液濃度:
蛍光物質名:
蛍光物質濃度:
注入流体比重:
注入流体粘度:
撮影条件:
測定条件:
項 目
単位
値
注 記
主流体の流量
L/min
注入流体の流量
mL/min
主流体に対する注入流体の濃度
%
静的流体混合装置の入口流速
m/s
水温
℃
気温
℃
混合性能測定結果:(処理画像枚数: )
<サンプル
画像>
<サンプル
画像>
<サンプル
画像>
項 目
記号
単位
選択画像1
選択画像2
選択画像3
平均値
混合度
M
%
中央輝度
Rmed
−
最大輝度
R'max
−
最大濃厚塊
L
%
−
偏在度
Dev
−
混合性能の特徴
日付:
測定者の氏名:
署名:
10
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附属書B
(参考)
注入流体の推奨溶液の調製例
B.1
推奨溶液の調製
推奨溶液の調製は,次による。
a) 推奨溶液として,カルボキシメチルセルロースの水溶液に蛍光物質を添加したものを用いる。CMCは
1 %水溶液の粘度が25 ℃において2 000 mPa·s〜6 000 mPa·sのものを選定する。
b) CMC水溶液の濃度は,注入流体として使用した場合,ノズルから途切れることなく連続的に本流に供
給する必要がある。
c) 実験環境の温度及び主流体の温度によって,扱う流体の粘度が変化するため,CMC水溶液の質量分率
を変えて調節する。例えば,水温が25 ℃の場合は質量分率1.0 %及び1.5 %を使用し,15 ℃の場合は
質量分率0.75 %及び1.0 %を使用するなど,流体温度の低下に伴う粘度上昇を考慮する。
d) 蛍光物質は,波長532 nmのグリーンレーザの照射によって,赤又はオレンジ色に蛍光する顔料・染
料を選定する。
e) この際,注入流体の混合速度よりも拡散速度が速い(主流体との相溶性が顕著に高い)ものは不向き
である。
B.2
調製手順
CMC水溶液は,次によって調製する。
なお,CMCとして,CMC2260(株式会社ダイセル)1),カルボキシメチルセルロースナトリウム
CAS.NO9004-32-4(富士フイルム和光純薬株式会社)1) などを使用する。また,蛍光顔料としてシンロイ
ヒRed(シンロイヒ株式会社)1) などを使用する。
注1) これは市販製品の一例である。この情報は,この規格の利用者の便宜を図って記載するもので
あり,この製品を推奨するものではない。同じ結果が得られる場合は,これと同等のほかのも
のを使用してもよい。
a) 150 gの質量分率0.75 %のCMC水溶液を調製する場合
1) 200 mLの三角フラスコを用意する。
2) 電子天びん(秤)で蛍光顔料を1.500 g,CMCを1.125 g量り取り,三角フラスコに入れる。
3) 三角フラスコに147.375 gのイオン交換水(又は,蒸留水)を入れ,ゴム栓をする。
4) スターラーで一昼夜以上かくはん(撹拌)し,溶け残りがないように溶解させてから使用する。
b) 150 gの質量分率1.0 %のCMC水溶液を調製する場合
1) 200 mLの三角フラスコを用意する。
2) 電子天びん(秤)で蛍光顔料を1.500 g,CMCを1.500 g量り取り,三角フラスコに入れる。
3) 三角フラスコに147.000 gのイオン交換水(又は,蒸留水)を入れ,ゴム栓をする。
4) スターラーで一昼夜以上かくはん(撹拌)し,溶け残りがないように溶解させてから使用する。
c) 150 gの質量分率1.5 %のCMC水溶液を調製する場合
1) 200 mLの三角フラスコを用意する。
2) 電子天びん(秤)で蛍光顔料を1.500 g,CMCを2.250 g量り取り,三角フラスコに入れる。
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3) 三角フラスコに146.250 gのイオン交換水(又は,蒸留水)を入れ,ゴム栓をする。
4) スターラーで一昼夜以上かくはん(撹拌)し,溶け残りがないように溶解させてから使用する。
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附属書C
(参考)
混合性能測定結果画像サンプル
C.1 測定結果画像サンプル
測定結果画像サンプルを,次に示す。
a) 静的流体混合装置を設置しない場合の典型例 管中心に供給された注入流体はほとんど広がること
なく,濃厚なまま存在している。このため,混合度は2.7 %〜3.7 %と低く,最大輝度は最大値(=255)
となる。また,最大濃厚塊は0.484 %〜0.901 %と大きい。
項 目
記号
単位
選択画像1
選択画像2
選択画像3
混合度
M
%
3.7
3.5
2.7
中央輝度
Rmed
−
22
24
22
最大輝度
R'max
−
255
255
255
最大濃厚塊
L
%
0.797
0.901
0.484
偏在度
Dev
−
0.014
0.000
0.110
b) 静的流体混合装置による混合が中程度の場合 管中心に供給された注入流体は分断されているもの
の,注入流体は管断面全域には広がっておらず,混合度は60.4 %〜67.6 %である。大きく濃厚な塊が
複数存在しており,最大輝度は255,最大濃厚塊は1.796 %〜3.400 %と大きい。偏在度は−0.053〜0.109
であり,鉛直方向に偏って存在しているものではない。
項 目
記号
単位
選択画像4
選択画像5
選択画像6
混合度
M
%
62.9
67.6
60.4
中央輝度
Rmed
−
24
22
23
最大輝度
R'max
−
255
255
255
最大濃厚塊
L
%
3.400
1.796
2.928
偏在度
Dev
−
0.074
−0.053
0.109
c) 静的流体混合装置による混合が良好な場合 管中心に供給された注入流体は管断面全域に広がって
おり,混合度は100 %である。また,中央輝度と最大輝度が接近しており,完全混合状態に近づいて
13
B 8702:2018
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
いることが分かる。大きな濃厚塊の存在はなく,最大濃厚塊は0.020 %〜0.041 %と格段に小さい。
項 目
記号
単位
選択画像7
選択画像8
選択画像9
混合度
M
%
100.0
100.0
100.0
中央輝度
Rmed
−
49
39
37
最大輝度
R'max
−
61
49
49
最大濃厚塊
L
%
0.036
0.041
0.020
偏在度
Dev
−
0.032
0.032
0.046