B 8673-1:2011 (ISO 21018-1:2008)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 安全衛生························································································································· 4
4.1 一般 ···························································································································· 4
4.2 電源接続 ······················································································································ 4
4.3 油圧システムへの接続 ···································································································· 4
4.4 液体の取扱い ················································································································ 4
5 モニタ技術の選択 ············································································································· 5
5.1 一般 ···························································································································· 5
5.2 選択 ···························································································································· 5
6 モニタ方法及び測定上の要求事項 ························································································ 5
6.1 一般 ···························································································································· 5
6.2 サンプル採取 ················································································································ 5
6.3 オフラインサンプル採取 ································································································· 5
6.4 オンライン分析 ············································································································· 6
6.5 インライン分析 ············································································································· 6
6.6 油タンク又は容器からの吸引分析······················································································ 6
6.7 校正上の要求事項 ·········································································································· 6
6.8 データの確かさの確認 ···································································································· 7
6.9 作業者への教育訓練 ······································································································· 7
6.10 分析精度の管理方法 ······································································································ 7
7 試験報告書 ······················································································································ 7
附属書A(参考)サンプル採取及び分析の特性概要 ···································································· 9
附属書B(参考)清浄度モニタ方法の種類及び特徴 ···································································· 15
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(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本フルードパワー工業会(JFPA)
及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があ
り,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS B 8673(油圧−作動油の清浄度モニタ方法)の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 8673-1 第1部:一般原則
JIS B 8673-3 第3部:フィルタ目詰まり法
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日本工業規格
JIS
B 8673-1:2011
(ISO 21018-1:2008)
油圧−作動油の清浄度モニタ方法−
第1部:一般原則
Hydraulic fluid power-
Monitoring the level of particulate contamination of the fluid-
Part 1: General principles
序文
この規格は,2008年に第1版として発行されたISO 21018-1を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,油圧システムにおける清浄度をモニタする方法及び技術について規定する。また,設備に
適したモニタ方法を選択できるように種々の技術の特徴及び限界について記述する。
この規格に規定する清浄度をモニタする技術は,次のモニタに適している。
a) 油圧システムにおける一般的な清浄度
b) フラッシング作業における進捗状況
c) 補助装置及び試験装置
また,この規格は,他の液体(例えば,潤滑剤,燃料,加工液及び洗浄液)にも適用できる。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 21018-1:2008,Hydraulic fluid power−Monitoring the level of particulate contamination of the
fluid−Part 1: General principles(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0142 油圧・空気圧システム及び機器−用語
注記 対応国際規格:ISO 5598,Fluid power systems and components−Vocabulary(MOD)
JIS B 9932 油圧−液体用自動粒子計数器の校正方法
注記 対応国際規格:ISO 11171,Hydraulic fluid power−Calibration of automatic particle counters for
liquids(IDT)
JIS B 9933 油圧−作動油−固体微粒子に関する汚染度のコード表示
2
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注記1 対応国際規格:ISO/DIS 4406,Hydraulic fluid power−Fluids−Code for defining the level of
contamination by solid particles(IDT)
注記2 現在,ISO 4406:1999,Hydraulic fluid power−Fluids−Method for coding the level of
contamination by solid particlesが,発行されている。
JIS B 9935 油圧−液体用オンライン式自動粒子計数システム−校正方法及び妥当性確認方法
注記 対応国際規格:ISO 11943,Hydraulic fluid power−On-line automatic particle-counting systems for
liquids−Methods of calibration and validation(IDT)
JIS B 9936 油圧−微粒子分析−運転中のシステム管路からの作動油試料採取方法
注記 対応国際規格:ISO 4021,Hydraulic fluid power−Particulate contamination analysis−Extraction of
fluid samples from lines of an operating system(IDT)
JIS B 9937 油圧−作動油試料容器−清浄度の品質及び管理方法
注記 対応国際規格:ISO 3722,Hydraulic fluid power−Fluid sample containers−Qualifying and
controlling cleaning methods(IDT)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0142によるほか,次による。
3.1
自動粒子計数器(automatic particle counter)(APC)
光遮蔽原理に基づき,自動的に液中に存在する微粒子を大きさで分けて計測する計測器。
3.2
同時通過(coincidence)
検出領域に2個以上の粒子が同時に存在した状態で,2個以上の粒子を1個の粒子として検出すること。
3.3
ダイナミックレンジ(dynamic range)
センサが分析可能な微粒子サイズのうち最も大きいものと最も小さいものとの比率。
3.4
ろ材(filter medium)
微粒子を取り除き保持するフィルタの材料。
3.5
ゲル(gel)
計測及びモニタ工程を妨害する輪郭の曖昧な不定形物質。
注記 ゲルは,通常作動油の化学反応によって生成する。
3.6
インライン分析(in-line analysis)
管路中の流体全てがセンサを通過するように,油圧システムに永久的に直接接続したモニタ機器によっ
て行う流体の分析。
3.7
オフライン分析(off-line analysis)
油圧システムに接続していないモニタ機器によって行う流体サンプルの分析。
3
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3.8
オンライン分析(on-line analysis)
油圧システムから分岐した管路にモニタ機器を接続し,供給される流体に対して行う分析。
注記 モニタ機器は,管路に常に接続しているものでも,分析の前に接続するものでもどちらでもよ
い。
3.9
メッシュ(mesh)
金属線又は繊維を織り合わせて製作したろ材。
3.10
粒子径(particle size)
使用する分析手法において,物理的に測定可能な寸法で定義した粒子の大きさ。例えば,最も長い寸法,
投影面積円相当径など,各方法に適した表示を用いる。
注記 粒子の投影面積と同じ面積をもつ円の直径で定義した粒子の粒径である。
3.11
孔径(pore size)
機器の製造業者が表示しているろ材の孔の大きさ。
3.12
定性データ(qualitative data)
定量的なデータに比べて,精度が低いデータで,通常,正確な数値ではなく,傾向を与えたデータ。
3.13
定量データ(quantitative data)
正確な数値で表したデータ。
3.14
要求清浄度(required cleanliness level)(RCL)
システム又は工程に対して指定する液体の清浄度。
3.15
サンプラ(sampler)
設備から代表的なサンプルを採取するための器具。
3.16
シルト(silt)
液体中に存在する非常に小さい粒子(3 μm未満の大きさ)の集まり。粒子サイズは,一般に用いる計測
方法の検出限界を下回ることが多い。
注記1 シルトは,計測可能な粒子を覆い隠したり,複数の粒子の同時通過の影響によって,測定デ
ータの信頼性に疑問が出る原因となる。
注記2 シルトは,摩耗粉又は作動油の劣化生成物であることもある。
3.17
吸引分析[suction (sip) analysis]
加圧していない容器からポンプによって吸い出し,センサに導入したサンプルの分析。
3.18
清浄度コード(ISO codes)
4
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油圧システムで使用する流体中の固体粒子の量と粒径分布とを表し,次の例のように/(斜線)で区切
った三つの番号からなる。
例 JIS B 9933の表1(スケール番号の割当て)から,22/18/13のコードは,液体サンプル1 mL中に,
4 μm (c) 以上の粒子が20 000を超え40 000以下(スケール22),6 μm (c) 以上の粒子が1 300を
超え2 500以下(スケール18),14 μm (c) 以上の粒子が40を超え80以下(スケール13)存在す
る。
4
安全衛生
4.1
一般
モニタ機器の操作は,常に機器の製造業者の指示に従って行い,地方自治体の定めた条例に従わなけれ
ばならない。必要な場合には保護具を使用する。
4.2
電源接続
モニタ機器に電源を接続する場合は,モニタ機器の製造業者の指示に従い注意して行わなければならな
い。また,モニタ機器に適合した保護ヒューズが付いていることを確認する。
4.3
油圧システムへの接続
モニタ機器を油圧システムに接続するときは,モニタ機器の製造業者の指示に従って,安全,かつ,漏
れのない方法によって行わなければならない。使用する全ての継手は,サンプル採取箇所の圧力に適した
ものでなければならない。
全ての継手及びプラグは,取り外す前に確実に内部の圧力を取り除かなければならない。
注記 圧力配管からのサンプル採取に関しては,箇条6を参照。
4.4
液体の取扱い
4.4.1
揮発性液体
揮発性液体は,次のように使用しなければならない。
a) 関連する製品安全データシート(MSDS)に従って使用する。
b) 引火点以下の温度で使用する。
c) 引火源になり得るものから遠ざけて使用する。
別の容器に揮発性液体を移送するときには,静電気放電に注意して慎重に行わなければならない。
4.4.2
溶剤
溶剤は,よく換気された部屋で使用する。また,エアロゾルの発生は避けなければならない。
注記 例えば,ノズルから噴射させる溶剤が容器に垂直に当たるとエアロゾルが発生しやすいため,
角度をつけて容器に当てることによって,エアロゾルの発生を避ける。
4.4.3
接地
溶剤又は揮発性可燃性液体をろ過又は分配するために使用する装置は,噴出口近傍での静電気放電の危
険を避けるために電気的に接地しなければならない。
4.4.4
環境対応
全ての液体及び化学物質は,地方自治体の定めた条例に従って処分しなければならない。こぼれたとき
は関連するMSDSで詳細に示されているように清掃する。
4.4.5
化学的適合性
様々な工程で使用する全ての化学物質が,設備の一部を溶解又は腐食させてはならない。さらに,化学
物質及び流体が互いに混ざり合うときに,反応して異物を発生させてはならない。
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5
モニタ技術の選択
5.1
一般
使用するモニタ機器及び技術は,少なくとも次の項目を考慮して選択する。
a) モニタ機器がどのような分析方法に使用されるか。
b) 分析を必要とする目的
c) 測定項目
d) 液体の特性
5.2
選択
モニタ機器は,附属書A及び附属書Bで詳細に記述されている操作上の分析項目をよく考慮し,モニタ
に関する個々の要求を満たす機器及び技術を選択する。
注記 サンプル採取及び分析の方式の説明は,A.1を参照。また,モニタ機器を選択するための種々
の要因は,A.2を参照。
6
モニタ方法及び測定上の要求事項
6.1
一般
いかなるモニタ方法及び測定技術を選択しても,正確なデータを取得し誤差を最小にするためには多く
の注意を払わなければならない。
この箇条では,誤差を小さくする一般的な手順を示す。
6.2
サンプル採取
6.2.1 サンプル採取の目的に合致するサンプル採取位置を選択する(JIS B 9936参照)。
注記1 正しいサンプル採取技術を使用することは重要である。実際の流れ配管に接続したサンプラ
を使用すると,余分な汚染による誤差を抑えることができる。
注記2 サンプル採取のときに混入する粒子汚染物によるサンプルの汚染濃度は,ろ過されているシ
ステム内部の液体の汚染濃度よりはるかに高いことがある。
6.3〜6.6のサンプル採取手順は,信頼できる結果を得るための代表的な方法で,JIS B 9936と併せて用
いるのが望ましい。
6.2.2 JIS B 9936に準拠するサンプル採取バルブを使用する。
6.2.3 一般に清浄度をモニタする場合には,システムが運転中で,状態が安定しているときにサンプルを
採取する。
注記 運転を開始してから30分程度経過すれば,状態が安定する。
6.2.4 機械又は工程の定期的な清浄度のモニタを行う場合には,同じ場所から同じ方法でサンプルを採取
する。
6.3
オフラインサンプル採取
6.3.1 洗浄し,JIS B 9937に従って検定したサンプル瓶を使用する。
6.3.2 サンプル採取の目的に合致したサンプル採取バルブの取付け場所を決める。
6.3.3 乱流状態が存在する位置にサンプル採取バルブを取り付ける。
6.3.4 サンプル採取バルブと接続管とを,少なくとも2 L/minの流量で500 mL以上の流体を通過させフ
ラッシングする。ただし,次に示す場合には,1 L〜3 Lの液体を通過させる。
a) バルブがJIS B 9936の要求を満たしていない場合
b) 長い接続管を使用している場合
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c) システムの液体が,JIS B 9933に規定する清浄度コードで14/12/9以下の場合
6.3.5 周辺環境からの汚染の影響を最小限にするような方法でサンプルを採取する。
6.3.6 サンプルを採取したら直ちに蓋をし,間違いが起こらないような識別ラベルを付ける。
6.3.7 ドレンバルブからのサンプル採取は行わない。
6.4
オンライン分析
6.4.1 JIS B 9936で規定した手順及びサンプル採取バルブを使用する。
6.4.2 モニタ機器の吸込み不良及びキャビテーションの発生を避けるために十分な圧力を供給する。
6.4.3 分析を始める前に,管路接続後少なくとも1 L〜2 Lの液体でサンプル採取接続管をフラッシング
する。
6.4.4 二つの連続したサンプルからのデータが,次に示す要求のうち一つを満たすまで分析を続ける。
a) 結果が,モニタ機器の製造業者の設定した限界内にある。
b) 要求される結果が粒子計数の場合には,モニタしている最小粒子径における試験結果の差が10 %以下
である。
c) 同じ清浄度コードが記録されている。
6.5
インライン分析
モニタ機器の設置場所は,次による。
a) 主要な流れが通過する場所
b) 乱流状態が存在する場所
6.6
油タンク又は容器からの吸引分析
6.6.1 液体が動いている場所からサンプルを採取する。
6.6.2 サンプルを抽出する前に,容器を振り,容器内の液体をよくかき混ぜる。容器が大きく容器内の液
体をかくはん(攪拌)できない場合には,報告書にその旨を記載しなければならない。
注記 誤差及び変動が非常に大きいので,この方法は推奨する方法ではない。
6.6.3 汚染物がサンプル,容器及び油タンクに入り込まないように,サンプルを採取する場所の周辺を清
浄にする。
6.6.4 システムで使用している液体を用いて,モニタ機器及びその接続配管をフラッシングする。フラッ
シングに必要な液体の量は,モニタ機器及びその接続配管内の全容量の10倍以上とする。
6.6.5 二つの連続したサンプルからのデータが,次に示す要求のうち一つを満たすまで分析を続ける。
a) 結果が,モニタ機器の製造業者の設定した限界内にある。
b) 要求される結果が粒子計数の場合には,モニタしている最小粒子径における試験結果の差が10 %以下
である。
c) 同じ清浄度コードが記録されている。
6.7
校正上の要求事項
モニタ機器によっては,この規格で規定した校正手順が適用できない場合もあるが,このような場合で
も,この規格の要件には可能な限り従わなければならない。例えば,この規格で規定した校正手順が適用
できないモニタ機器は,A3テストダスト(ISO 12103-1:1997の箇条3参照)を用いて校正又は確認しなけ
ればならない。この方法によって,JIS B 9932又はJIS B 9935を用いて校正した自動粒子計数器(APC)
の結果とモニタ機器の結果との差を最小にすることができる。
なお,顕微鏡による粒子計数法では,粒子の最長寸法を計測しなければならない。
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6.8
データの確かさの確認
6.8.1 データを報告する前に,許容できない誤差を検出する手順を確立しなければならない。誤差を検出
する手順は,適用できる限り,6.8.2〜6.8.4を用いる。
6.8.2 モニタ機器に関して,二つの連続したサンプルからのデータが,次に示す要求を満たすまで分析を
続ける。
a) 結果が,モニタ機器の製造業者の設定した限界内にある。
b) 要求される結果が粒子計数の場合には,モニタしている最小粒子径における試験結果の差が10 %以下
である。
c) 同じ清浄度コードが記録されている。
6.8.3 試験データを見直し,それらが次に示すデータと同じ桁数であることを確認する。
a) 同じシステム又は工程から得た以前のデータ
b) 同じろ過レベルを使用する同様のシステムから得た以前のデータ
6.8.4 オフライン分析では,モニタ機器の有効性を妨げる要素がないか,前もってサンプルを観察する。
次に例を示す。
a) 大きな粒子が存在すると,モニタ機器内の狭い通路,オリフィス又はセンサを塞ぐことがある。大き
な粒子が存在すると,小さな粒子が多数存在することを意味する。
b) W/O乳化形作動液,O/W乳化形作動液,作動液の混合など,液中に別の液体が存在することによるサ
ンプルの濁りは,粒子の検出に光の透過を利用するモニタ機器の検出機能を妨げることがある。
c) 透明ではあるが暗く見えるサンプルは,摩耗粉,酸化生成物などの微細粒子が存在することを示す。
サンプル中に微細粒子が存在すると,同時通過の影響でモニタ機器の有効性を妨げることがある。
d) サンプル中に気泡が存在すると,光の通路を妨げる。分析を行う前に気泡を除去する。
6.9
作業者への教育訓練
分析手法及びモニタ機器の使用方法について作業者を訓練する。可能ならば,訓練内容は作業者の適正
に応じて計画する。訓練プログラムには,次の項目を含めなければならない。また,作業者の訓練記録を
保管することを推奨する。
a) 利点,欠点を含め,使用する手法の原理
b) モニタ機器の主要な特徴
c) モニタ機器を使用しての訓練
d) 基本的問題の解決方法の説明
注記 測定の誤差を認識し,測定の誤差を最小にするには,測定の知識と経験とが必要である。使用
するモニタ機器及び分析手法の両方の適切で体系的な訓練は重要である。
6.10 分析精度の管理方法
6.10.1 分析手法から得られた結果の精度によって,作業者の能力を評価する手順を準備する。
6.10.2 作業者を含めて,分析手法の再現性の程度を評価し記録する。測定値の変動の程度によっては,作
業者を再訓練する。
7
試験報告書
報告書には,次の項目を含めなければならない。
a) サンプル名
b) 分析日
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c) モニタ機器
d) 分析方法
e) 分析結果
f)
考察
9
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附属書A
(参考)
サンプル採取及び分析の特性概要
A.1 サンプル採取と分析の方式
A.1.1 概要
サンプル液の採取及び分析方法には,図A.1及びA.1.2〜A.1.5に分類するような4種類がある。
a) インライン,オンライン,オフラインサンプル採取及び分析
b) 吸引分析
記号
1 採取バルブ
6 オフラインサンプル採取
2 サンプル瓶
7 吸引分析
3 油タンク又は容器
a 流れ方向
4 インライン分析
b 油タンク又は廃液容器
5 オンライン分析
図A.1−操作方式の概略
A.1.2 オフライン分析方法
オフラインサンプル採取及び分析は最も利用されている方法で,幅広い方法が利用できる。
オフライン分析では,装置から適切な性状のサンプルを抜き取り,サンプル瓶又は適切な容器への収集
後,分析となる。サンプルの分析は,外部分析機関で行うこともできる。
これらのサンプル採取から分析までの各手順でサンプルが汚染され,測定結果に影響を与えることが考
えられる。したがって,サンプルへの汚染を防止する適切な手順をとる必要がある(6.2.1参照)。
注記 サンプルの汚染要因は,次による。
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a) サンプル採取時
b) 採取箇所の周辺環境(採取器具を含む。)
c) 分析工程
A.1.3 オンライン分析方法
オンライン分析では,モニタ機器を装置の配管又は補助的に設置した配管に直接接続する。
オンライン分析は周辺環境からの汚染を排除できる。しかし,モニタ機器を装置に接続するときにサン
プルを汚染する可能性があるので,分析前に接続配管の十分なフラッシングを実施する(6.4.3参照)。
ほとんどのオンライン分析用モニタ機器の測定流量は小さく(20 mL/min〜100 mL/min),モニタ機器接
続後に接続配管の汚染物質を洗い流すには不十分な場合があるので,事前に接続配管のフラッシングを実
施する必要がある。モニタ機器の測定流量では,採取口で十分な乱流が生じないため,適切なサンプル採
取にならない場合がある。さらに,少ない分析量(例えば,10 mL又は20 mL)では,粒子数が少ない場
合に真の清浄度を得るには十分でない(JIS B 9933の3.4.6参照)。
A.1.4 インライン分析方法
インライン分析用モニタ機器は,常に流れが存在する配管に接続し,清浄度を連続して測定できる。A.1.2
で記述したサンプル採取に伴う誤差は発生しない。この方法では,測定点の上流で乱流が存在する箇所に
接続するため,測定結果は配管中の流体の清浄度を代表する。
A.1.5 吸引分析
吸引分析用モニタ機器は,ドラム缶,装置の油タンクなどの加圧していない容器からの液体を分析する
ときに使用する(図A.1参照)。この方法では,サンプルを容器からモニタ機器にポンプなどによって移さ
なければならないため,これが誤差の原因となる可能性がある。ポンプがサンプルをモニタ機器まで吸い
上げる場合,ポンプ吸い込み側は負圧になり,液体中の溶解空気が気泡として現れたり,継手部分から空
気を吸い込む可能性がある。サンプルに気泡が存在するとモニタ機器の誤差の原因となる。ポンプがモニ
タ部の上流側に設置されている場合,ポンプから発生した粒子が更なる誤差要因となり,その結果,装置
の真の清浄度を表さない分析データとなる。
その他の誤差要因は,JIS B 9936に規定されている。
A.2 モニタの選択
A.2.1 概要
モニタ機器及び分析方法の選択は,次に示す要素によるが,これらに限定しない。
a) 分析目的
b) 測定要素
c) 使用方法
d) サンプルの性質
ここでは,最も適切な分析方法を選択する前に考慮しなければならない要素について詳述する。サンプ
ル採取及び分析方法の特徴の概略を表A.7に示し,各分析方法について附属書Bに示す。ここに示す分類
で,対象とする適用分野の説明が不十分である場合には,モニタ機器の製造業者にモニタ機器の適性につ
いて確認する必要がある。
A.2.2 測定理由
測定結果の活用方法及び要求精度によって測定方法を選択し,測定器への要求精度を決める。
清浄度及びその傾向のグラフ化による評価では,測定結果は定性的であり(3.13参照。例えば,JIS B 9933
11
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
に規定する清浄度コード),モニタは,微粒子計数器の代わりとなる妥当な測定器である。
装置又は製品の清浄度証明書には,定量的な測定結果が通常必要となる(3.13参照)。
A.2.3 粒子の測定要素
A.2.3.1 概要
粒子の測定要素の選択は,分析目的に密接に関連している(例えば,清浄度コードが要求される場合,
大きさの定義を選択しなければならない)。
現在使用されている分析方法を表A.1〜表A.6に示す。さらに,各分析方法によって得られる結果が定
性的であるか,定量的であるかも参考として示す。
分析方法の種類及び特長のまとめについては,表A.7参照。
A.2.3.2 粒子の大きさ
粒子の大きさに関する情報は,粒子が機器の隙間及び細い孔に干渉する原因となる確率を検討するため
に必要となる。
表A.1−粒子の大きさの分析方法
要素
定量データ
定性データ
長さ
直接測定(例えば,定規,マイクロメータ)
画像解析法
光学顕微鏡
自動粒子計数法
走査形電子顕微鏡
なし
面積
画像解析法
自動粒子計数法
走査形電子顕微鏡
なし
体積
電気抵抗法
レーザ回折法
A.2.3.3 粒子の量
汚染物質の量に関する情報は,汚染物質の量に起因する問題の発生確率を評価するために用いる。
表A.2−粒子の量の分析方法
要素
定量データ
定性データ
特定の大きさについての
粒子計数(分布)
電気抵抗法
画像解析法
光学顕微鏡
走査形電子顕微鏡
自動粒子計数法
レーザ回折法
フィルタ目詰まり法
特定の大きさについての
濃度
レーザ回折法
フィルタ目詰まり法
メンブレンフィルタによる比較法
総濃度(例えば,広い粒径
範囲を含む汚染度の指標)
質量汚染濃度分析法
磁気検出法
薄膜アブレシブ法
濁度法
A.2.4 操作方式
オフライン,オンライン,インライン,又は吸引法におけるモニタ機器を用いた分析方法は,表A.3〜
表A.6に示す。表A.1も参照。
12
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表A.3−オフライン分析方法
定量データ
定性データ
直接測定
電子検出領域法
画像解析法
磁気検出法
自動粒子計数法
光学顕微鏡
走査形電子顕微鏡
メンブレンフィルタによる比較法
レーザ回折法
フィルタ目詰まり法
磁気検出法
薄膜アブレシブ法
濁度法
表A.4−オンライン分析方法
定量データ
定性データ
自動微粒子計数法
画像解析法
磁気検出法
レーザ回折法
フィルタ目詰まり法
薄膜アブレシブ法
濁度法
表A.5−インライン分析方法
定量データ
定性データ
自動微粒子計数法
磁気検出法
レーザ回折法
表A.6−吸引分析方法
定量データ
定性データ
自動微粒子計数法
画像解析法
レーザ回折法
フィルタ目詰まり法
薄膜アブレシブ法
A.2.5 液体の特性
液体中の粒子及び液体の状態が分析法の機能に干渉する可能性があるため,液体の特性を考慮して分析
方法を選択する必要がある。
A.2.6 サンプルの性質及び光学的特性
A.2.6.1 透明な単相液体
光学原理を用いたモニタ機器で分析する液体は,透明で,均質な液体でなければならない。また,光学
的な境界面が存在してはならない。
A.2.6.2 複相液体
複相液体は,意図の有無にかかわらず2液以上が混入したもの(例えば,乳化形作動液,水溶性流体中
の油,油中の水,油中の空気)であり,液相間で光学的な境界面を含む。このような境界がサンプル中に
存在すると,光学式モニタ機器の場合に,液体を透過する光の伝達に干渉し,大きな誤差の原因となる可
能性がある。
A.2.6.3 不透明な液体
不透明な液体は,液体中を通過する光の伝達を全て又は部分的に妨げ,モニタ機器の機能に悪影響を及
ぼす。正確な検出結果を得るためには,サンプル中の光の伝達が不十分な測定環境では,光を活用するモ
ニタ機器は利用できない。
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A.2.7 電気的特性
電気抵抗法を用いる場合は,液体の電気伝導率を考慮する必要がある。
表A.7−分析方法の種類及び特長
分析方法
サンプル採取a)
粒径 μm
結果の表記a)
定性
又は
定量
難易
度b)
分析方
法の併
用a)
注記
IN
ON
OFF
SIP
最小
最大
ダイナミッ
クレンジ
粒径
数量
清浄度
コード
その他
自動粒子計数法
Y
Y
Y
Y
1.0
3 000+
100
Y
Y
Y
なし
定量
B
N
B.7
光学顕微鏡法
N
N
Y
N
2.0
3 000+
200
Y
Y
Y
種類
定量
A
Y
B.8
画像解析法
N
Y
Y
Y
2.0
3 000+
200
Y
Y
Y
形状
定量
B
Y
B.8
レーザ回折法
Y
Y
Y
Y
0.2
2 000+
10 000
Y
Y
Y
容積
定性
B
N
B.2
フィルタ目詰まり法
N
Y
Y
Y
6
14
3.5
Y
N
Y
なし
定性
C
N
B.4
走査形電子顕微鏡法(SEM)
N
N
Y
N
0.01 3 000+
5 000
Y
Y
Y
種類と形状
定量
A
Y
B.9
直接測定法
N
N
Y
N
100
3 000+
−
Y
N/A
N
なし
定量
B
Y
電気抵抗法
N
N
Y
N
0.5
1 500+
100
Y
Y
Y
容積
定量
B
N
B.3
メンブレンフィルタによる
比較法
N
N
Y
N
5.0
3 000+
−
N
N
Y
種類
定性
B
Y
B.1
質量汚染濃度分析法
N
N
Y
N
1.0
3 000+
−
N
N
N
質量
定量
A
Y
B.5
磁気検出法 (i)
磁気検出法 (ii)
磁気検出法 (iii)
N
N
Y
N
0.5
3 000+
−
N
N
N
任意指数
定性
C
Y
B.6.1 a)
Y
Y
Y
N
50
3 000+
100+
Y
Y
N
磁気と粒子
定量
C
N
B.6.1 b)
Y
Y
N
N
15
3 000+
100+
N
N
N
磁気と粒子
定量
C
Y
B.6.1 c)
薄膜アブレシブ法
Y
Y
Y
Y
5.0
3 000+
−
N
N
N
アブレシブ指数
定性
C
Y
B.10
注a) Y:可,N:不可,N/A:非該当,IN:インライン,ON:オンライン,OFF:オフライン,SIP:吸引
b) A:上級の訓練が必要,B:中級程度のモニタ機器の操作技能及び結果の評価能力をもつための訓練が必要,C:初級の技能と結果の評価能力をもつための訓練が
必要
2
B
8
6
7
3
-1
:
2
0
11
(I
S
O
2
1
0
1
8
-1
:
2
0
0
8
)
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附属書B
(参考)
清浄度モニタ方法の種類及び特徴
B.1
メンブレンフィルタによる比較法
B.1.1 概要
メンブレンフィルタによる比較法は,サンプル中の粒子を捕捉した測定用メンブレンフィルタと,あら
かじめ準備した限度見本(現物,写真などの画像)を光学顕微鏡による清浄度とを比較する方法である。
測定用メンブレンフィルタは,オフライン又はオンラインいずれかの採取方法でサンプルを採取し,限度
見本と同じ孔径のメンブレンフィルタを用い,限度見本と同じサンプル量をろ過して準備する。
測定用メンブレンフィルタ又はそれらの画像を準備した後,測定者は限度見本を観察するのと同じ倍率
に光学顕微鏡を合わせて,全体の粒子濃度を観察する。あらかじめ準備した限度見本を用い,測定用メン
ブレンフィルタと比較することで,該当サンプルの濃度を決定する。汚染の程度の同等又は汚れた側の限
度見本を測定用メンブレンフィルタの清浄度として選択する。
B.1.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) サンプルの準備と分析とに5分程度必要である。
b) 分析費用が安く,費用対効果が大きい。
c) ある程度の技能は必要である。
d) サンプルの状態を観察できる。
e) 粒子の種類を識別するため診断の道具として使用できる。
f)
判断の道具として使用できる。
B.1.3 限界
このモニタ機器には,次の測定上の限界がある。
a) オフラインでの分析に限られる。
b) 分析時間は,ろ過時間に依存する。
c) 周辺の環境からの汚染の影響を受けるので,使用できる環境には限界がある。
d) 誤差を少なくするためにサンプルの準備には十分な注意が必要である。
e) 粒子の数又は大きさを測定する方法ではない。
f)
粒子は,シルト及びゲルによって観察しにくくなる。
g) 限度見本との一致の程度は,粒度分布の影響を受ける。
B.2
レーザ回折法
B.2.1 概要
レーザ回折法は,広い粒径及び濃度範囲のサンプルに適用できる光散乱法粒子分析器の一種である。レ
ーザ回折分析器は,光学フィルタを通した弱いレーザ光をサンプルの通過する範囲に平行に直接照射する
ことによって分析する。粒子が平行光線を通過するとき,光は粒子の大きさに従って異なる方向に散乱又
は回折する。回折光線は検出部で焦点を結ぶ。検出した回折光線から計算によって,又は標準試験ダスト
を用いた校正によって粒度分布を求めることができる。
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B.2.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) ガラスのような光を通す測定壁をもっていれば,オフライン,オンライン及びインラインで使用でき
る。
b) 0.2 μm〜2 000 μmまでの幅広い大きさの粒子に適用できる。
c) 高濃度に汚染されたサンプル(例えば,JIS B 9933に規定した清浄度コード20/18/15を超えるような
サンプル)の分析に使用できる。
d) 標準的分析時間は5分である。
B.2.3 限界
このモニタ機器には,次の限界がある。
a) 正確な測定のためには,高濃度に汚染されたサンプル(例えば,JIS B 9933に規定した清浄度コード
19/17/14)が必要である。
b) 粒度分布は,粒子の量による。
c) 油圧分野では,一般的には使用されていない。
d) 分析装置は大形である。
e) 複相のサンプルには適用できない。
B.3
電気抵抗法
B.3.1 概要
絶縁した小さなオリフィスの片側に二つの電極を設置し,そこに導電性液体を流す。粒子が存在しない
とき,電極間のインピーダンスは一定値を保つ。液体と異なる電気伝導率をもつ粒子がオリフィスを通過
すると,粒子の体積に比例する電気パルスが生じる。
サンプルから粒子を分離し導電性液体に分散するか,又は油に導電性をもたせるために数種類の薬品を
準備するような多くの段階を含むため,この種の機器を油圧システムに使用することは少ない。この手法
は,水性系作動液には使用できる(JIS Z 8832参照)。
B.3.2 特長
このモニタ方法は,次の特長がある。
a) 異なる大きさのオリフィスを使用することによって,広い範囲の粒径(0.5 μm〜1 500 μm)のサンプ
ルに適用できる。
b) 体積を基準とした正確な粒径の測定ができる。
c) 粒度分布が求められる。
d) サンプルを直接測定する場合の標準的分析時間は,約5分である。
B.3.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) オフライン分析だけに適用可能である。
b) 液体サンプルには導電性が必要である。
c) サンプル油中の粒子の電気伝導率は,溶媒の電気伝導率と異なることが必要である。
d) サンプルに導電性がない場合には,分析用サンプルの作製に20分〜40分の時間が余分にかかる。
e) 油圧分野では,一般には使用しない。
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B.4
フィルタ目詰まり法
B.4.1 概要
フィルタ目詰まり法の原理は,粒子を含んだ液体が既知の数の開路(又は孔径)をもつフィルタメッシ
ュ又はスクリーンを通過するときの特性の変化を測定することである。フィルタ(フィルタメッシュ又は
スクリーン)は孔径より大きい粒子を捕捉し,徐々に目詰まりする。このため,フィルタの差圧が増加す
るか(一定流量下)又はフィルタを通過する流量が低下する(一定差圧下)。
サンプル中のフィルタ孔径より大きい粒子の濃度は,目詰まりした孔の数(目詰まりの程度)及びフィ
ルタを通過した液体の量によるか,又は校正によって求めることができる。その結果はJIS B 9933に規定
した清浄度コードに変換する。
フィルタの圧力損失は,液体の粘性に比例するため,求めた結果を分析中の粘度変化で補正する必要が
ある。補正の程度は,使用するモニタ機器による。分析中の密度の変化による結果への影響は僅かである。
B.4.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 次のような分析方法が選択できる。
1) 高圧及び低圧ラインからのオンライン分析
2) 油タンク又は容器からの吸引分析
3) サンプル容器からのオフライン分析
b) 幅広い液体に使用できる(鉱物油,合成油,乳化形液体,溶剤,燃料,洗浄液,水溶性液体など)。
c) 分析中に液体の状態が一定であれば,光学的境界面(油中の水,液体中の気泡,混じらない液体など)
があるサンプルでも分析できる。
d) 一つの装置で幅広い粒子濃度のサンプルが測定できる。
e) 使用するモニタ機器の種類にもよるが,標準的分析時間は3分〜6分である。
B.4.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 測定する粒径範囲の数が制限される(現在利用できるモニタ機器は,1個又は2個のフィルタを装備)。
b) 一定差圧下を原理とするモニタ機器では,粒子濃度が低いサンプル(例えば,清浄度コード*/13/11以
下)を測定できない。
c) 一定流量下を原理とするモニタ機器では,粒子濃度が低いサンプル(例えば,清浄度コード*/10/8以
下)を測定する場合,分析時間が長くなる(約8分)。
d) 単一の粒子を分析し記録しないため,総括的な粒子濃度の測定に制限される。
B.5
質量汚染濃度分析法
B.5.1 概要
質量汚染濃度分析法では,減圧ろ過によってサンプル中の粒子を,事前に質量を測定したメンブレンフ
ィルタ(1 μm以下の孔径)で捕捉する。油分の除去及び乾燥後,メンブレンフィルタの質量を再度測定す
ることによって粒子の質量を算出する(JIS B 9931参照)。
B.5.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 多量の粒子を含んでいる場合でも測定可能である。
b) 粒子を採取したメンブレンフィルタは,他の分析に使用できる。
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B.5.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) この分析方法は,汚染濃度が低い場合に大きな誤差が生じやすい。
b) 多量のサンプルを分析しなければ,清浄なシステムからのサンプル(JIS B 9933に規定した清浄度コ
ード17/15/12以下)分析には適さない。
c) 標準的分析時間は35分である。
d) 粒度分布を測定できない。
e) 乾燥器,天びん(秤)などの補助装置が必要である。
B.6
磁気検出法
B.6.1 概要
磁気検出法は,磁気を帯びた粒子を含む液体が通過するときの磁場の変化を計測する方法である。磁気
計測器には様々な機種がある。
a) ある機種は,サンプル(粒子を含む液体,液体から分離した粒子を含むメンブレンフィルタ又は磁力
によって分離された粒子を含む層のいずれか)を検出器内に挿入しサンプル中の磁性物質の量を測定
する。サンプル中の磁性物質の含有量は,校正によって質量比として測定し,無次元の数値として表
示する。この機種は,幅広い大きさの粒子を分析でき,0.5 μm以下の小さい粒子を検出できる。
b) ある機種は,磁気検出器を流路(インライン又はオンライン)に設置し,粒子が通過するときに個々
の粒子を検出する。この機種は,大きな粒子(75 μm超え)しか検出できず,体積から粒子の数を表
示する。
c) ある機種は,粒子を磁石によって集め,集めた粒子が増加するときに検出器の静電容量の変化を測定
する。粒子は,磁力を切るか,又は高電圧によって気化させることで取り除くことができる。この機
種は“チップ探知器”と呼ばれている。
B.6.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 磁性粒子の分析は短時間でできる(標準的な分析時間は5秒である。)。
b) 操作が簡単である。
c) 安価なモニタ機器が多い。
B.6.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 磁性及び常磁性粒子だけに有効である。
b) 分析結果を粒径分布及び清浄度コードで表せない。
c) 多量のサンプルを分析しなければ,清浄なサンプル(JIS B 9933に規定した清浄度コード17/15/13未
満)の分析には限界がある。
d) 分析結果は,任意の単位を用いる場合が多い。
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B.7
自動粒子計数器
B.7.1 概要
自動粒子計数器の場合には,機器内の狭い通路に照射し(例えば,低出力のレーザ)サンプルを分析す
る。単一の粒子が光線を通り抜けるとき,検出器(通常流れの反対側)の受光量は,粒子の投影面積に比
例して減少する。その結果,発生する電圧パルスを分析し,記録する。粒径とパルス電圧との関係は,JIS
B 9932又はJIS B 9935を用いて校正する。分析時間は,センサを通過させるサンプルの量に依存する(JIS
B 9934及びISO 21018-4参照)。
B.7.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 複数の分析方法が使用できる。
− 高圧又は低圧箇所からのオンライン分析
− システムに恒久的に設置したインライン
− 油タンク又は容器からの吸引分析
− サンプル容器からのオフライン分析
b) 1.0 μm〜3 000 μmの幅広い粒径に対応できる(機種によって異なるがモニタ機器のダイナミックレン
ジは,通常50〜100である。)。
c) 標準的な分析時間は2〜15分間であり,分析方法によって異なる。
d) 自動で機能し,オンライン装置では操作者を常時必要としない。
e) 希釈を必要とせずに幅広い粒子濃度に対応できる。
f)
通常よりも多量のサンプルを測定し,統計的処理を施すことによって,非常に清浄なサンプルでも正
確に測定することができる。
B.7.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 液体は,透明で均質でなければならない。
b) 液体に境界面が存在する場合は,誤差を生じる(例えば,油中の水,気泡,相溶性のない液体同士の
混合,乳化形液体)。
c) 非常に汚染された液体は,誤った結果となるので,分析前に希釈する必要がある。
d) 検出下限以下の粒子が多量に存在することによって正確な測定に影響を及ぼす。
e) オフライン分析は“制御された”環境を必要とする。
f)
200 μmを超える大きな粒子は,センサ部を閉塞させる。
g) 分析結果は,液体の状態に影響を受ける(例えば,ゲル,濁りの存在)。
B.8
光学顕微鏡による計数法
B.8.1 概要
サンプル中の粒子は,減圧ろ過によってサンプル中の粒子をメンブレンフィルタ(1 μm以下の孔径)に
捕捉する。メンブレンフィルタの孔径は,液体の状態及び測定する粒子の最小径にもよるが,一般には1.2
μmである。一般にメンブレンフィルタには,手動計測を助けるために3.1 mmの正格子が印刷されている。
無地のメンブレンフィルタは,画像解析法に使用する。
乾燥後,光学顕微鏡を用いて上からの光若しくは落射光で直接分析するか又はメンブレンフィルタを透
明にして透過光で分析する。そして,接眼レンズの計数線で粒子の最も長い辺を計測するか(手動の計測),
20
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又は粒子が占有するピクセル数から計測(画像解析)し,粒径を算出する。これらの方法は,校正履歴が
はっきりとしている対物ミクロメータを用いて校正する。
手動計測においては,時間短縮のために統計的な計数法を用いる。メンブレン上に印刷された格子の中
から,任意に選択した格子中に存在する個々の粒子の大きさ及び数を測定し,選択した格子の数とメンブ
レン上の格子の総数との比から,メンブレンフィルタを通過した総サンプル量中に含まれる粒子の数を粒
子の大きさごとに計算する。画像解析法を用いた自動計数法は,メンブレンフィルタの全面積を分析する。
異なる粒径を計数する場合には,顕微鏡レンズの倍率を変更する(JIS B 9930参照)。
B.8.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) この方法は,基準となる方法として存在し,ほとんどの計数法はこの方法を参照している。
b) 2 μm以上の幅広い大きさの粒子に適用できる。
c) 粒子を観察するため,計数上の潜在的な問題点が分かる。
d) 手動計測は,設備費用を抑えることができる。
e) 必要があれば,粒子の種類に関する情報も分かる。
f)
ろ過が可能であれば,液体の状態に影響を受けない。
g) 画像解析法によって自動化が可能で,分析者による計数誤差を減少させることができ,精度を高める
ことができる。
B.8.3 手動計測の限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 高い技能を必要とする。
b) 6種の粒径範囲を分析するために必要な時間は,30分である。
c) 管理された分析環境を必要とする。
d) オフライン分析専用である。
e) 粒子は,シルト,ゲルなどで不明瞭になる。
B.8.4 画像解析法の限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 画像解析法は,共存(重なり)及び粒子の焦点のずれによる誤差を考慮し,手動編集を行う必要があ
る。これは分析時間を増加させる原因になる。
b) より代表的な結果を得るためには,他の倍率での分析を必要とする。
B.9
走査形電子顕微鏡(SEM)
B.9.1 概要
粒子を含むメンブレンフィルタから小片(通常1 cm2)を切り取り,専用のアルミニウム台に載せ,導
電性の層(金,銀又は炭素)で蒸着する。この標本を真空にしたSEMの試料室に置き,電子を衝突させ
る。電子は,標本を光らせて(ちょうど光学顕微鏡の光子のように),画像がディスプレイ上に映し出され
る。この画像は,画像解析法(B.8参照)と同様の方法で電子的に処理して,同様の結果を求めることが
できる。
標本表面に電子線の焦点を合わせたときに原子はイオン化し,物質特有のX線を発生させる。このスペ
クトルの分析によって,粒子の構成元素を識別し,量を測定することができる(ISO 16232-7及びISO
16232-8参照)。
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B.9.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 高分解能である(0.01 μmの粒子まで検出することができる。)。
b) 画像解析法を用いた場合は,粒径と粒子数とを計測できる。
c) 粒子の構成元素を分析できる。
d) 被写界深度の限界がほとんどない高解像度画像が得られる。
e) 適切なソフトウェアとともに使用すると,粒子の種類及び大きさの分布を表示できる。
B.9.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) この方法は,実験室だけで使用できる。
b) 高価な装置であると同時に,分析に時間を要する。標準的な分析時間は1〜3時間である。
c) 熟練した技能者が必要である。
d) 電子の物質内への浸透に限界(5 μm程度)がある。
B.10 薄膜アブレシブ法
B.10.1 概要
このモニタ機器は,油圧システムの補助流路(オンラインで)に取り付け,ノズルからの比較的速い速
度(25 m/s)の流れをセンサ内の2枚の金属片の一方に向ける。2番目の金属片は,1番目の金属片の反対
側にある。センサは,真空下で塗布した薄い伝導性薄膜を用いてブリッジ回路を構成し,電気的に接続す
る。前面の(有効な)センサと接触する粒子が伝導性薄膜をそぎ落とし,金属片の抵抗を変化させる。抵
抗の変化は,粒子の濃度,硬度及びアブレシブ性に比例する。モニタ機器は時間とともに変化する抵抗及
び発生周期を記録し,これを“アブレシブ性”として表示する。大きい単一の粒子も検出できる。
B.10.2 特長
このモニタ機器には,次の特長がある。
a) 粒子の硬度及び研磨性の情報を提供する。
b) オンライン用及びインライン用のモニタ機器である。
B.10.3 限界
このモニタ方法は,次の限界がある。
a) 粒子の大きさ,数量及びJIS B 9933に規定した清浄度コードを求めることはできない。
b) 油圧の分野では,あまり使わない。
c) 結果は,液体の粘度に依存する。
d) 結果は,粒子の硬度で変化する。
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B 8673-1:2011 (ISO 21018-1:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献 [1] JIS B 8673-3 油圧−作動油の清浄度モニタ方法−第3部:フィルタ目詰まり法
注記 対応国際規格:ISO 21018-3,Hydraulic fluid power−Monitoring the level of particulate
contamination of the fluid−Part 3: Use of the filter blockage technique(IDT)
[2] JIS B 9930 油圧−作動油汚染−光学顕微鏡を用いた計数法による微粒子測定方法
注記 対応国際規格:ISO 4407,Hydraulic fluid power−Fluid contamination−Determination
of particulate contamination by the counting method using an optical microscope(IDT)
[3] JIS B 9931 質量法による作動油汚染の測定方法
注記 対応国際規格:ISO 4405,Hydraulic fluid power−Fluid contamination−Determination
of particulate contamination by the gravimetric method(MOD)
[4] JIS B 9934 油圧−光遮へい原理を用いた自動計数法による微粒子測定方法
注記 対応国際規格:ISO 11500:1997,Hydraulic fluid power−Determination of particulate
contamination by automatic counting using the light extinction principle(IDT)
[5] JIS Z 8832 粒子径分布測定方法−電気的検知帯法
注記 対応国際規格:ISO 13319,Determination of particle size distributions−Electrical
sensing zone method(MOD)
[6] ISO 12103-1,Road vehicles−Test dust for filter evaluation−Part 1: Arizona test dust
[7] ISO 16232-7,Road vehicles−Cleanliness of components of fluid circuits−Part 7: Particle sizing
and counting by microscopic analysis
[8] ISO 16232-8,Road vehicles−Cleanliness of components of fluid circuits−Part 8: Particle nature
determination by microscopic analysis
[9] ISO 21018-4,Hydraulic fluid power−Monitoring the level of particulate contamination of the
fluid−Part 4: Use of the light extinction technique
注記 ISOで審議中