2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 8608-1994
冷凍装置−性能試験方法通則
Refrigerating systems−Test methods−General requirements
1. 適用範囲 この規格は,定常状態の下で運転されている蒸気圧縮式の冷凍装置(以下,冷凍装置とい
う。)について,総合冷凍能力,正味冷凍能力及び有効冷凍能力,並びに消費電力を求めるための試験方法
の一般事項について規定する。
備考1. この規格で用いる圧力は,特に明記してないときは,絶対圧力である。
2. この規格における蒸気圧縮式冷凍装置には,散水式又は蒸発式の凝縮器をもった冷凍装置は
含めない。
3. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 8606 冷凍用圧縮機の試験方法
JIS C 1102 指示電気計器
JIS Z 8762 絞り機構による流量測定方法
4. この規格の対応国際規格案を,次に示す。
ISO/DIS 916-1.2 Refrigerating systems−Test methods−Part 1 : Testing of systems for cooling
liquids and gases using a positive displacement compressor
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする(図1参照)。
(1) 蒸気圧縮式冷凍装置 冷媒を圧縮,凝縮,絞り膨張及び蒸発させる機器及びそれらを相互に接続する
配管並びに冷凍サイクルを完成させるのに必要な附属機器からなる冷凍装置。
(2) 総合冷凍能力 (Φ0) 冷凍サイクルを循環している冷媒が被冷却媒体,又は二次冷却媒体,低圧側の
周囲空気などから除去する単位時間当たりの熱量。
備考 総合冷凍能力は,圧縮機入口と膨張弁入口とでの冷媒の比エンタルピー差に冷凍サイクルを循
環している冷媒の質量流量を乗じた値。ただし,液−ガス熱交換器をもつ冷凍サイクルでは,
液−ガス熱交換器によって冷凍サイクルから熱は除去されないものとして算定する。
(3) 正味冷凍能力 (Φn) 冷凍サイクルを循環している冷媒が,被冷却媒体又は二次冷却媒体から除去す
る単位時間当たりの熱量。
(4) 有効冷凍能力 (Φu) 冷凍能力を求める2点間(図1の点A及び点B)で,冷媒又は二次冷却媒体が
被冷却媒体から除去する単位時間当たりの熱量。
(5) 被冷却媒体 冷凍装置の目的として,最終的に冷却される媒体(図1において熱負荷となる空気)。
(6) 二次冷却媒体 冷却する被冷却媒体から冷媒に熱を伝えるのに使われる,主に液体などの媒体(図1
における水冷却器の冷水)。
(7) 定常運転状態 冷凍装置の各部運転状態値が時間的に平衡に到達した状態。
備考 この定常運転状態は,冷凍装置の性能に影響を及ぼす諸量を示す各種計器の指示値を連続的に
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観察して判定する。
図1 冷凍装置の例
備考 図1の冷凍装置におけるそれぞれの冷凍能力の算定値は,侵入熱流 (Φ1〜Φ6) 並びにポンプ軸
入力Φp及びファン軸入力Φfが補正された,単位時間当たりの熱量となる。ただし,ポンプ及
びファンの電動機が二次冷却媒体回路内に組み込まれている場合には,ΦpとΦfは電動機の入
力を用いる。
総合冷凍能力 Φ0=Φu+Φ1+Φ2+Φ3+Φ4+Φ5+Φ6+Φp+Φf
正味冷凍能力 Φn=Φ0−Φ1−Φ2
=Φu+Φ3+Φ4+Φ5+Φ6+Φp+Φf
有効冷凍能力 Φu=Φ0−Φ1−Φ2−Φ3−Φ4−Φ5−Φ6−Φp−Φf
=Φn−Φ3−Φ4−Φ5−Φ6−Φp−Φf
3. 使用する量記号及び単位記号 この規格で用いる主な量,量記号及び単位記号は表1による。
表1 量,量記号及び単位記号
量
量記号
単位記号
伝熱面積
A
m2
比熱
c
J/ (kg・K)
比エンタルピー
h
J/kg
熱通過率
K
W/ (m2・K)
断熱材の厚さ
l
m
消費電力
P
W
圧力
p
Pa
質量流量
qm
kg/s
温度
t
K, ℃
熱伝達率
α
W/ (m2・K)
温度差
∆t
K, ℃
熱伝導率
λ
W/ (m・K)
熱流
φ
W
冷凍能力(総合,正味,有効)
Φ0, Φn, Φu
W
4. 試験方法一般
4.1
試験方法の種類 試験方法は,直接法による冷凍能力試験方法,間接法による冷凍能力試験方法及
び消費電力試験方法の三つとするが,冷凍能力の試験は,一般に直接法による。
なお,間接法による冷凍能力試験方法は,直接法による試験が冷凍装置の構造,使用目的などによって
実用的でない場合,直接法よりも測定精度が良い場合又は直接法による冷凍能力試験の確認を目的として
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行う場合に適用する。
4.2
試験に用いる計器 試験に用いる計器は,表2に規定する精度を満足しなければならない。計器は,
霜付き・熱流などによる測定誤差が少ない形式のものを選定し,冷凍装置の通常の運転を妨げないように
取り付ける。特に,流量の測定は,管路での脈動及び油の混入による影響がないようにする。
なお,据付現場試験での試験に用いる計器の精度が,表2の値を満足しない場合には,受渡当事者間の
協議によって定める。
表2 試験に用いる計器の精度
区分
項目
工場試験
据付現場試験
温度計
冷媒,加熱媒体,冷却媒体,及
び湿球温度
±0.1℃
±0.2℃
露点温度(0℃以下)
±2.0℃
±3.0℃
その他
±0.3℃
±0.5℃
圧力計
低圧側冷媒及び冷却ガス媒体
(絶対圧力の読み)
±1.5%
±2.0%
高圧側冷媒
(絶対圧力の読み)
±2.0%
±3.0%
流量計
液冷媒,冷却液媒体(読み)
±1.5%
±2.0%
冷媒蒸気,ガス,空気(読み)
±2.0%
±3.0%
時間
(経過時間)
±0.1%
±0.1%
質量
(読み)
±0.5%
±1.0%
電気計器 指示計
JIS C 1102に規定する1.0級の
もの
±1.0%
±1.0%
積算計
(読み)
±1.0%
±1.0%
4.3
試験運転条件 試験における運転条件は,次による。
(1) 試験は,冷凍装置の通常の使用状態で行い,これと相違する状態で行う場合には,補機・周囲空気か
らの侵入熱量による試験結果の補正を行う。
(2) 試験を行う場合には,冷凍装置は定常状態のもとで運転されており,表3に規定する最大許容変動量
の範囲内で安定していなければならない。
なお,据付現場試験での定常状態における許容変動量が表3の値を超える場合には,受渡当事者間
の協議によって定める。
表3 定常状態における最大許容変動量
変動量
工場試験
据付現場試験
蒸発器出口2次冷却液媒体温度
±0.2℃
±0.3℃
蒸発器,冷却器入口の空気(ガス)温度
±1.0℃
±1.5℃
凝縮器入口冷却水温度
±0.3℃
±0.5℃
凝縮器入口冷却空気温度
±1.0℃
±1.5℃
凝縮器冷却水質量流量
±2.0%
±3.0%
凝縮器冷却空気質量流量
±4.0%
±5.0%
冷却又は加熱媒体質量流量
±2.0%
±3.0%
圧縮機回転速度(密閉形を除く。)
±1.0%
±1.5%
電源電圧
±3.0%
±4.0%
(3) 熱交換器の冷却・加熱の媒体は,指定の媒体又はその種類及び性質が実質的にこれと同じものでなけ
ればならない。
(4) 試験は,2.の(2)〜(4)に規定した3種の冷凍能力のうち,実際に試験可能でもっとも使用目的に適合し
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たいずれか1種の冷凍装置の冷凍能力のほかに,消費電力についても行わなければならない。
(5) 指定条件の下で冷凍能力及び消費電力を求めるには,同一条件を目標として2回の試験を行う。各試
験は10〜20分間隔で3回以上の読取りを定期的に行い,各項目の読み取った値の算術平均から結果を
算定する。ただし,直接法と間接法の2種の試験を同時に行う場合には,1回の試験から結果を算定
してもよい。
また,数多くの同一機種の冷凍装置を試験,又は一つの冷凍装置で各種運転条件で試験する場合な
ど,冷凍能力が1時間にわたって±4%以内の変動であることが確認されている冷凍装置では,1回の
試験及び読取りから,結果を算定してもよい。
5. 冷凍能力試験方法
5.1
直接法による冷凍能力試験方法
5.1.1
総合冷凍能力試験 冷凍装置の総合冷凍能力は,圧縮機入口における冷媒が飽和又は過熱の蒸気で
あれば,次の式によって算定する(図2及び図3参照)。
Φ0=qm (h1−h5) ·········································································· (1)
ここに,
h1: 圧縮機入口における冷媒の比エンタルピー
h5: 膨張弁入口(液−ガス熱交換器を用いた図3の装置では,液
−ガス熱交換器入口)における冷媒の比エンタルピー
qm: 冷凍装置を循環している冷媒の質量流量
冷凍装置内の各部を循環している冷媒の質量流量がどこでも同じ場合には,その質量流量測定方法によ
って,次のように分ける。
(1) 水冷凝縮器熱平衡法 凝縮器の熱平衡から,冷媒の質量流量は次の式によって算定する。
h
Δ
Φ
t
Δ
c
q
q
c
w
w
mw
m
+
=
···································································· (2)
ここに,
qmw: 凝縮器における冷却水の質量流量
cw: 冷却水の比熱
∆tw: 凝縮器出入口における冷却水の温度差(3℃以上でなければな
らない。)
∆h: 凝縮器出入口における冷媒の比エンタルピー差
Φc: 凝縮器外表面における漏れ熱量
Φc=KA (tm−ta) ·········································································· (3)
ここに,
A: 周囲大気と接している凝縮器外表面積,ただし,断熱している
場合には,断熱材の外表面積
tm: 内側の流体温度(冷媒の場合には飽和温度)に等しいと考えら
れる凝縮器外表面の平均温度
ta: 周囲大気温度
K: 凝縮器外表面から周囲大気に漏れる熱流の熱通過率
λ
α
l
K
+
=1
1
·············································································· (4)
ここに,
α: 外表面の熱伝達率
ただし,強い気流にさらされていない場合には (α=7W/m2・K)
とする。
l: 断熱材の厚さ
λ: 断熱材の熱伝導率
図3の冷凍装置のように,凝縮器が過冷却器をもつ場合には,これら二つの熱交換器を一緒にして
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熱平衡をとることによって,冷媒の質量流量を求めるのがよい。
(2) 冷媒流量計法 冷媒流量計法は,液又は過熱蒸気の状態にある冷媒の質量流量を測定する方法で,記
録式若しくは指示式の流量計又はJIS Z 8762の方法のいずれかによって測定する。
図2 冷凍装置の回路及びp−h線図(例1)
図3 冷凍装置の回路及びp−h線図(例2)
5.1.2
正味冷凍能力試験 正味冷凍能力試験は,次による。
(1) 二次冷却液媒体法
(1.1) 蒸発器熱平衡法 蒸発器の熱平衡から,正味冷凍能力は次の式によって算定する。
Φn=qmfcf∆tf+Φc ········································································· (5)
ここに,
qmf: 蒸発器における二次冷却液媒体の質量流量
cf: 二次冷却液媒体の比熱
∆tf: 蒸発器における二次冷却液媒体の出入口温度差(3℃以上でな
ければならない。)
Φc: 二次冷却液媒体への侵入熱による補正項[周囲大気からの侵
入熱流及び二次冷却液媒体回路の測定点間におかれたすべて
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の補機(循環ポンプ・かくはん機など)によって二次冷却液
媒体に加えられる熱流の和である。]
補正項Φcは,次の式によって求める。
Φc=KA (ta−tm) ·········································································· (6)
ここに,
K: 周囲大気から二次冷却液媒体に侵入する熱流の熱通過率
A: 周囲大気に接している蒸発器外表面積
ta: 周囲大気温度
tm: 図4の二次冷却液媒体を強制循環させている蒸発器では,そ
れの出入口温度の平均値。図5の二次冷却液媒体をかくはん
機でかくはんしている蒸発器では,それの出口温度。
Pa: 補機の軸入力
ただし,電動機が冷却媒体回路内に組み込まれている場合
には電動機入力とする。
式(6)の補正項Φcの第1項KA (ta−tm) は,周囲大気から二次冷却液媒体に侵入する熱流である。
したがって,周囲大気から配管,バルブ,補機などの外壁を通じて冷媒に直接熱が侵入する場合に
は,この第1項KA (ta−tm) を正味冷凍能力に算入してはならない。
図4 二次冷却液媒体強制循環式蒸発器
図5 二次冷却液媒体かくはん式蒸発器
(1.2) 熱量計法 熱量計法では,定常の運転条件を保持するために,次のいずれかの加熱源によって,蒸
発器の通常の熱負荷と置き換えて試験を行う。
(a) 水蒸気加熱法 水蒸気加熱法は,二次冷却液媒体の加熱源として,水蒸気を用いる試験方法である。
図6のように,二次冷却液媒体槽内に挿入したコイルに水蒸気を通過させ,凝縮する水蒸気量を測
定し,正味冷凍能力を次の式によって算定する。
Φn=qmw (hw1−hw2) +Φc ······························································ (7)
ここに,
qmw: 水蒸気コイル出口における凝縮した水の質量流量
hw1: 水蒸気コイル入口における水蒸気の比エンタルピー
hw2: 水蒸気コイル出口における凝縮した水の比エンタルピー
Φc: 侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
水蒸気コイルは,その途中で凝縮水が停滞して氷結しないように下りこう配を付け,またコイル
出口の凝縮水温度は10〜60℃で流出するように調節する。
なお,水蒸気コイル入口の水蒸気をわずかに過熱した状態にするために,気水分離器で水蒸気中
の凝縮水を分離した後,水蒸気を適当な方法でわずかに過熱させてからコイルに流入させることが
7
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望ましい。
(b) 温水加熱法 温水加熱法は,二次冷却液媒体の加熱源として,温水を用いる試験方法である。
図6のように,二次冷却液媒体槽内に挿入したコイルに温水を通過させ,温水の質量流量と出入
口温度差から,正味冷凍能力を次の式によって算定する。
Φn=qmwcw∆tw+Φc ······································································ (8)
ここに, qmw: 温水コイルを通過する温水質量流量
cw: 温水の比熱
∆tw: 温水コイル出入口における温水の温度差
Φc: 侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
温水コイル出口の温水の温度は,10〜60℃で流出するように調節する。
また,温水を他のブラインに置き換えて試験してもよい。
図6 水蒸気又は温水による熱量計
(c) 電気加熱法 電気加熱法は,二次冷却液媒体の加熱源として,電気加熱器を用いる試験方法で,正
味冷凍能力は次の式によって算定する。
Φn=Ph+Φc ·············································································· (9)
ここに,
Ph: 電気加熱器の供給電力
Φc: 侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
(2) 被冷却ガス媒体法
(2.1) 蒸発器熱平衡法 この試験方法は,蒸発器の加熱源としてガス又は空気を用いる。図7又は図8の
漏れがない被冷却ガス媒体測定回路における媒体の質量流量,温度,湿度及び圧力の状態量から,
正味冷凍能力は次のいずれかによって算定する。
(2.1.1) ガス媒体法 ガスの比エンタルピーから算定するガス媒体法(図7参照)は
Φn=qm1h1− (qm2h2+qm1iqh1iq+qmso1hso1) +Φc ·································· (10)
として求めるか又は質量保存則qm1=qm2+qm1iq+qmso1を用いて
Φn=qm2 (h1−h2) +qm1iq (h1−h1iq) +qmso1 (h1−hso1) +Φc ··················· (11)
として求める。
ここに,
qm1, qm2: それぞれ,測定回路の入口と出口におけるガス冷却媒体
の質量流量
h1, h2: それぞれ,測定回路の入口と出口におけるガス冷却媒体
の比エンタルピー
qm1iq, qmso1: それぞれ,蒸発器表面で液相又は固相に変化するガス冷
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却媒体の単位時間当たりの質量
h1iq, hso1: それぞれ,液相及び固相におけるガス冷却媒体の比エン
タルピー
Φc: 侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
測定点間に送風機がある場合には,式(6)の補正値Φcに送風機による付加熱量を算入しなければな
らない。ガスの流量は,JIS Z 8762によって測定する。
(2.1.2) 空気媒体法 乾き空気1kg当たりの湿り空気の比エンタルピーから算定する空気媒体法(図8参照)
は
(a) 蒸発器表面で水蒸気の凝縮及び着霜がある場合
Φn=qmdry (h1−h2) − (qm1iqh1iq+qmso1hso1) +Φc ································ (12)
として求める。
(b) 蒸発器表面で着霜がない場合
Φn=qmdry (h1−h2) − (qm1iqh1iq) +Φc
=qmdry [(h1−h2) − (x1−x2) h1iq] +Φc ········································ (13)
として求める。
ここに,
qmdry: それぞれ,測定回路を流れる湿り空気中の乾き空気の質
量流量
h1, h2: それぞれ,測定回路の入口及び出口における,冷却媒体
の乾き空気1kg当たりの湿り空気の比エンタルピー
qm1iq, qmso1: それぞれ,蒸発器表面で結露した凝縮水又は着霜の単位
時間当たりの質量
h1iq, hso1: それぞれ,凝縮水及び霜の比エンタルピー
x1, x2: それぞれ,測定回路の入口及び出口における空気の絶対
湿度で,湿り空気中に含まれる水蒸気量と乾き空気量と
の質量比[kg/kg(乾き空気)]
Φc: 侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
測定点間に送風機がある場合には,式(6)の補正値Φcに送風機による付加熱量を算入しなければな
らない。空気の流量は,JIS Z 8762によって測定する。
図7 被冷却ガス媒体測定回路
図8 被冷却空気媒体測定回路
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(2.2) 熱量計法 この試験方法は5.1.2(1.2)における二次冷却液媒体に代えて,ガス又は空気を被冷却媒体
として用いる。試験は,定常の運転条件を保持するために水蒸気,温水又は電気加熱器による加熱
源によって,蒸発器の通常の熱負荷と置き換えて行う。
正味冷凍能力は,次の式によって算定する。
Φh=ΣPh+qm1iq (hw1−hw2) +Φc ···················································· (14)
ここに,
ΣPh: 熱量計への加熱源及び加湿器・ファンなど補機による全入力
の合計
Hw1: 被冷却媒体の湿度保持のために熱量計に入る水,液化ガス又
は蒸気の比エンタルピー
Hw2: 熱量計を出る凝縮した水又は液化ガスの比エンタルピー
qm1iq: 熱量計内の蒸発器で単位時間当たりに凝縮した水若しくは
液化ガスの質量,又は加湿器の蒸発質量
Φc: 熱量計への侵入熱による補正項[式(6)によって算定する。]
5.1.3
有効冷凍能力 5.1.2の測定法による冷却媒体回路出入口における2測定点間の正味冷凍能力から,
式(5)〜(14)の補正値Φc及び配管,バルブ,補機などの外壁を通じて直接冷媒に侵入する熱流を差し引いた
冷凍能力が有効冷凍能力である。
5.2
間接法による冷凍能力試験方法
5.2.1
総合冷凍能力 総合冷凍能力を,次によって求める。
(1) 校正圧縮機法 圧縮機の生産者によって行われた圧縮機単体の冷凍能力試験の結果から,冷凍装置の
運転条件に対応した蒸発温度と凝縮温度のもとでの総合冷凍能力を算定する。
単段容積式の圧縮機単体の冷凍能力の測定は,JIS B 8606による。
(2) 冷凍装置総合熱平衡法 冷凍装置総合熱平衡法による試験は,直接法による冷凍能力試験の確認を目
的として行う。
直接膨張式蒸発器と蒸発しない媒体で冷却される凝縮器とをもった冷凍装置の熱平衡(図9参照)
から,総合冷凍能力を次の式によって算定する。
)
(
IV
II
1
2
6
1
0
Φ
Φ
P
h
h
h
h
Φ
−
−
−
−
=
························································· (15)
又は
Φ0=ΦI+ΦII+ΦIII+ΦIV+ΦV−P ·················································· (16)
ここに,
h1, h2: それぞれ,圧縮機の入口及び出口における冷媒の比エンタ
ルピー
h6: 膨張弁入口における冷媒の比エンタルピー
ΦI: 凝縮器入口と過冷却器出口との間において,冷媒から冷却
媒体及び周囲大気に放出される熱流[式(2)から導かれる次
の式によって算定する]
ΦI=qmwcw∆tw+Φc ····································································· (17)
ここに,
qmw: 凝縮器における冷媒質量流量
cw: 冷却水の比熱
∆tw: 凝縮器出入口における冷却水温度差
Φc: 凝縮器からの漏れ熱量[式(3)によって算定する。]
図9のように過冷却器をもつ場合には,過冷却器及び凝縮器と過冷却器との間の配管において,冷
媒から放出される熱流をΦIに加える。ここに,過冷却器の入口と出口との間において,冷媒から冷却
媒体及び周囲大気に放出される熱流は,凝縮器と同様に求める。
また,凝縮器と過冷却器との間の冷媒液管路から,周囲大気に放出される熱流は式(21)によって求
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める。
ΦII:圧縮機シリンダが水ジャケット又は中間冷却器などの補助機器をもつ場合に,それらにおいて放
出される熱流
ΦII=qmwcw∆tw ·········································································· (18)
ここに, qmw: 水ジャケット又は中間冷却器における冷却媒体質量流量
cw: 冷却媒体の比熱
∆tw: 冷却媒体の出入口間の温度差
ΦIII:圧縮機吐出し口から凝縮器入口までの吐出管路において放出される熱流
ΦIII=qm (h2−h3) ······································································· (19)
ここに,
qm: 式(2)による冷媒質量流量
h2: 圧縮機吐出し口における冷媒の比エンタルピー
h3: 凝縮器入口における冷媒の比エンタルピー
ΦIV:圧縮機本体から放出される熱流
ΦIV=KA (tm−ta) ······································································· (20)
ここに,
A: 圧縮機本体表面積
tm: 圧縮機本体表面の平均温度
ta: 周囲大気温度
K: 圧縮機本体表面から周囲大気に放出される熱流の熱通過率
[式(4)によって算定する。]
ΦV:過冷却器出口から膨張弁入口までの液管路において放出される熱流
ΦV=qm (h5−h6) ······································································· (21)
ここに,
h5: 過冷却器出口における冷媒の比エンタルピー
h6: 膨張弁入口における冷媒の比エンタルピー
P:開放形圧縮機では,特性の校正された電動機の消費電力との比較から算定した圧縮機消費動力(ベ
ルト駆動法では,駆動効率0.95〜0.97とする。),密閉形及び半密閉形の圧縮機では,電動機端子にお
ける供給電力
図9 冷凍装置における熱流
6. 消費電力試験方法 消費電力試験は,冷凍装置に使われている圧縮機及び補助機器の電動機などの消
費電力を,指定された定常状態のもとで測定する。
7. 試験結果の判定と表示
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7.1
冷凍能力 冷凍能力の試験結果は,次によって判定し,表示する。次の(1)の2種の試験結果又は(2)
の2回の試験結果のそれぞれの冷凍能力の値は,いずれか小さい方の値の10%を超える相違があってはな
らない。ただし,据付現場試験では,いずれか小さい方の値の15%を超える相違があってはならない。
(1) 直接法及び間接法の2種の試験を同時に行った場合には,直接法による冷凍能力の算定値を表示する。
(2) 同一試験法で2回試験した場合には,それぞれの冷凍能力の算定値の平均を表示する。
7.2
消費電力 消費電力の表示は,次による。
(1) 直接法及び間接法の2種の試験を同時に行った場合には,その消費電力の測定値を表示する。
(2) 同一試験法で2回試験した場合には,それぞれの消費電力の測定値の平均を表示する。
8. 試験の報告書 試験の報告書には,試験の目的が達成されたことを実証するために必要な事項を記載
しなければならない。報告書の一般的な記載事項を次に示す。
報告書の始め
(1) 試験の日付
(2) 試験の表題
(3) 試験の実施場所
(4) 装置の所有者(購入者)
(5) 製造業者名,型式名称
(6) 試験責任者
(7) 報告書作成者
(8) 報告書作成の日付
報告書の本文
(1) 試験の目的,合意事項
(2) 冷凍装置の概略図
(3) 試験時の運転条件,計器の設置場所
(4) 試験方法
(5) 試験結果
関連規格 JIS B 8600 冷凍用圧縮機の定格温度条件
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B 8608-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS B 8608 改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
樋 口 金次郎
東京農工大学
(幹事)
五 島 正 雄
東京商船大学
宝 谷 幸 男
東京水産大学
若 松 茂 三
工業技術院標準部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
北 野 松 司
社団法人日本冷蔵倉庫協会
日 比 俊 二
社団法人日本冷凍空調設備工業連合会
小笠原 祥 五
社団法人建築設備技術者協会
佐 野 哲 夫
株式会社東芝住空間システム技術研究所
楠 本 博 亮
三洋電機株式会社空調冷機事業本部
後 藤 康 之
三菱重工業株式会社エアコン製作所
佐 原 一 雄
ダイキン工業株式会社技術開発部
矢 田 敏 和
三菱電機株式会社和歌山製作所
森 川 喜 之
松下電器産業株式会社エアコン事業部
藤 田 誠
株式会社日立製作所清水工場
阿 部 徹
株式会社前川製作所システム技術センター
佐 川 秀 俊
社団法人冷凍空調工業会
(事務局)
森
社団法人日本冷凍協会