B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本フルードパワー工業会(JFPA)
/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日
本工業標準化調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
今回の制定は,日本工業規格を国際規格に整合させるため,ISO 8573-3 : 1999 Compressed air−Part 3 : Test
methods for measurement of humidityを基礎として用いた。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
JIS B 8392-3には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考) 圧縮空気湿度報告例
附属書B(参考) 蒸気圧力の計算
附属書C(参考) 基準の湿度測定方法
附属書D(参考) その他の湿度測定方法
JIS B 8392規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 8392-1 第1部:汚染物質及び品質等級
JIS B 8392-2 第2部:オイルミストの試験方法
JIS B 8392-3 第3部:湿度測定方法
日本産業規格 JIS
B 8392-3 : 2001
(ISO 8573-3 : 1999)
空気圧−第3部:湿度測定方法
Compressed air−Part 3 :
Test methods for measurement of humidity
序文 この規格は,1999年に第1版として発行されたISO 8573-3 : 1999, Compressed air−Part 3 : Test
methods for measurement of humidityを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した
日本産業規格である。
1. 適用範囲 この規格は,圧縮空気における湿度測定の適切な方法を選定するための指針を定めており,
種々の測定方法の制限を規定する。
この規格は,蒸気以外の状態の水分含有量の測定方法は規定しない。
また,この規格は,サンプリング技術,測定,評価,不確かさ及び空気汚染の要因となる湿度表示の方
法について規定している。
この規格は,湿度表示を蒸気圧力,露点温度に換算するための指針とする。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 8573-3 : 1999 Compressed air−Part 3 : Test methods for measurement of humidity (IDT)
2. 引用規格 次の規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。こ
れらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構成する
ものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記してない引用規格は,その最新版(追
補を含む。)を適用する。
JIS B 0142 油圧及び空圧用語
備考 ISO 5598 : 1985, Fluid power systems and components−Vocabularyからの引用事項は,この規格
の該当事項と同等である。
JIS B 8392-1 空気圧−第1部 汚染物質及び品質等級
備考 ISO 8573-1 Compressed air−Part 1 : Contaminants and purity classes.が,この規格と一致する。
ISO 3857-1 Compressors, pneumatic tools and machines−Vocabulary−Part 1 : General.
ISO 7183 : 1986 Compressed air dryers−Specifications and testing.
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS B 0142及びISO 3857-1による。
2
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
4. 単位 この規格では,次のSI単位を使用する。
1MPa=10bar
1m3=1 000L
5. 選択基準及び選定方法 湿度測定の方法,不確かさ,湿度範囲を表1に示す。
表1 湿度測定方法
不確かさ
℃
圧力露点表示による湿度範囲 ℃
c
備考
測定方法
表
−80 −60 −40 −20 0 +20 +40 +60
分光分析
2
a
水蒸気の検出限界
0.1×10−6〜1×10−6
b
凝縮
3, 4
0.2〜1.0
化学反応
5
1.0〜2.0
電気的
6, 7, 8
2.0〜5.0
乾湿球湿度計
9
2.0〜5.0
a:℃における不確かさは,規定されていない。
b:体積分率。
c:圧力露点は,ISO 7183 : 1986の定義による。
6. サンプリング技術
6.1
一般通則 露点の測定は,大気圧又は実際の圧力条件下で測定してもよい。露点測定時の圧力は,
明確に表示しなければならない。流量は,プローブの損傷を防ぎ信頼性のある測定値を得るために上限,
下限内で管理することが重要である。
6.2
プローブの取付け
6.2.1
全流量測定 プローブは,水分及びその他の汚染物質から保護して空気の主流に挿入し,測定装置
で指定された流速の上限,下限内で使用する。
6.2.2
部分流量測定
6.2.2.1
バイパス プローブは,細いバイパス・チューブに取り付ける。この方法によって探針に当たる
流速のコントロールを行うことができる。
6.2.2.2
抽出 プローブは,主要配管から抜き取り用の細いチューブに取り付けられ,測定はシステム圧
力下で行われる。
6.2.3
減圧測定 プローブは,主要配管部から空気の供給室に取り付ける。供給室は,測定前に適切な測
定圧力になるように減圧する(通常は,大気圧)。
6.3
サンプリングの必要条件及び測定条件
6.3.1
測定は,測定設備に関連する関係者の経験と測定方法の再現性に依存して実施される。
6.3.2
サンプリング装置内の空気の処理に使用する材料は,試料の水蒸気含有量に影響を与えるものであ
ってはならない。附属書CのC.2参照。
6.3.3
サンプリング装置内の圧力は,測定中記録しなければならない。
6.3.4
サンプリング装置内の温度は,測定露点より高くしなければならない。
3
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
6.3.5
サンプリング装置は,測定前に必ず安定した状態になるようにし,測定中は,安定した状態を維持
しなければならない。最低20分間隔で連続測定した2回の読み取りは,測定装置の精度以上の差があって
はならない。
7. 測定方法 適用の制限,測定時の圧力及び温度を含む湿度測定の方法については,次の表2〜表9に
示す。種々の方法については,附属書Cに示す。その他の測定方法については附属書Dを参照。
測定装置の信頼度及び測定機器の校正の基準については,適用する国際標準規格等に述べられているこ
とを考慮しなければならない。
使用される機器は,指定の範囲及び公差において必要な不確かさをもっていることを証明しなければな
らない。
いずれの方法においても,使用範囲の上限,下限内でだけ使用しなければならない。
校正記録を確認,検討する。
表2 分光分析法:レーザー・ダイオード
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−80〜+60℃圧力露点
圧力範囲
大気圧
温度範囲
0〜+40℃
耐汚染性
強い
表3 肉眼判定式露点計(凝縮)
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−20〜+25℃圧力露点
圧力範囲
0〜20MPa (0〜200bar)
温度範囲
0〜+50℃
耐汚染性
弱い
表4 自動平衡式露点計(凝縮)
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−80〜+25℃圧力露点
圧力範囲
0〜2MPa (0〜20bar)
温度範囲
0〜+50℃
耐汚染性
弱い
表5 吸湿剤による直読式チューブを用いた化学反応法
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−65〜+35℃圧力露点
圧力範囲
大気圧
温度範囲
0〜+40℃
耐汚染性
普通
表6 静電容量に基づくセンサによる測定
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−80〜+40℃圧力露点
圧力範囲
0〜2MPa (0〜20bar)
温度範囲
−30〜+50℃
耐汚染性
普通
4
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
表7 導電率に基づく電気センサによる測定
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−40〜+25℃圧力露点
圧力範囲
0〜2MPa (0〜20bar)
温度範囲
−30〜+50℃
耐汚染性
普通
表8 抵抗に基づく電気センサによる測定
適用特性
大気及び圧縮空気
湿度範囲
−40〜+25℃圧力露点
圧力範囲
0〜2MPa (0〜20bar)
温度範囲
−30〜+50℃
耐汚染性
普通
表9 乾湿球湿度計(サイクロメータ)
適用特性
大気
湿度範囲
5〜100%相対湿度
圧力範囲
大気圧
温度範囲
0〜+100℃
耐汚染性
弱い
8. 試験結果の評価
8.1
基準条件 特に指定しない限り,湿度表示の基準条件は,次による。
圧縮空気温度 20℃
圧縮空気ゲージ圧力 0.7MPa (7bar)
8.2
圧力偏差のための再計算 必要に応じて,得られた数値を絶対圧力及び分圧を用いて(基準圧力)
で表示することができる。附属書Bを参照。
8.3
温度偏差のための再計算 通常,相対湿度の場合は必要ではない。
8.4
他の汚染物質の影響のための再計算 幾つかの汚染物質,特に水分子に類似した構造をもつ分子は,
測定上支障があるかもしれないので,測定前にサンプルから取り除かなければならない。もし,取り除く
ことができない場合は,この汚染物質による不確かさの評価を用いて判断する。
9. 非標準湿度単位から標準湿度単位への換算及びその逆
9.1
相対湿度 相対湿度の値は,ISO 7183 : 1986の附属書Cで示されている露点温度によって再計算す
ることができる。異なる温度における飽和水蒸気圧力と密度の値は,ISO 7183 : 1986の附属書Cによって
与えられる。
実際の温度の飽和水蒸気圧力を読み取り,相対湿度の割合をこれに乗じる。表から,実際の水蒸気分圧
に相当する露点温度を読み取る。
9.2
露点 大気圧(0.1MPa絶対)における露点は,誤りにもかかわらず,一般的に“大気圧露点”とし
て用いられている。それは仮想露点を表し,水分含有量を表す用語ではない。
9.3
混合比(又は比湿) 乾燥空気質量に対する水分の混合比:ISO 7183 : 1986の附属書Cの表を使用。
湿り空気質量に対する水分の混合比:ISO 7183 : 1986の附属書Cの表を使用。
5
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
10. 不確かさ
備考 この箇条によれば考えられる不確かさの計算は,必ずしも必要ではない。
物理的な測定の本質のために,物理的な量を誤差なく測定すること,又は実際にどの特定の測定におい
ても真の不確かさを決定することは不可能である。
しかし,測定条件が十分に周知の場合は,真の値から測定値の偏差特性を推定又は計算することは可能
である。この場合,真の誤差は,前途の偏差より小さいという,ある程度の信頼度をもって断言すること
が可能である。そのような偏差値は,その信頼水準(通常95%)とともに特定の測定精度の規準を構成す
る。
個々の量の測定及びガス特性の測定において,生じる可能性のあるすべての系統的な不確かさは,修正
によって補正されたものとみなす。さらに,読み取った数値で十分な場合は,個々の読み取りの誤差と積
算誤差の不確かさの信頼限界は無視してもよいといえる。生ずる(小さな)系統的な不確かさは,精度誤
差に含まれる。
不確かさの質の等級及び限界は,例外(例えば,電気変換器)を除き,類似した質の等級又は不確かさ
の限界から成り立っているため,しばしば,個別の測定によって生じる不確かさの確認が必要である。
測定された個々の量の測定の不確かさとガスの特性の信頼限界に関する情報は,近似である。この近似は,
不均衡な損失により高めることができる(ISO 2602及びISO 2854参照)。
11. 結果の表示 試験の中で圧縮空気中の水蒸気の濃度は,圧力露点で表現しなければならない。
表示内容はできるだけ詳細にし,この規定の手順に従って確認(検証)できるようにしなければならな
い。
12. 試験報告 この規定に従って使用する報告書の中の湿度は,次の情報を含まなければならない。
a) 圧縮空気装置とその運転条件の説明は,湿度の適切性を判断できるだけの詳細なものであること。
b) 試料が採取された場所についての説明。
c) サンプリング及び測定装置(特に使用した器具)の説明とその校正記録の詳細。
d) この規格に基づく“公表圧力露点”は,次による。
e) サンプリング及び測定の日付
報告書の見本を附属書Aに記載する。
1) 実際条件として,8.に従って評価した実測値の平均値を摂氏で表す。
2) 基準条件として,8.に従って評価した実測値の平均値を基準条件で換算した数値。
3) 露点の基準となる実際の圧力。Pa (bar) で表示する。
4) 適切な不確かさに関する説明を付す。
6
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
附属書A(参考) 圧縮空気湿度報告例
XX産業の圧縮空気装置は,4台の空気圧縮機・アフタクーラ及び冷凍式エアドライヤから構成されてお
り,1台は予備,2台は最大負荷,1台は約50%の負荷で稼動し,0.7MPa (7bar) の回路圧力で作動してい
る。湿度の測定は,装置の供給用の配管がB工場に入る地点で行った。
試料の採取は,1996年1月23日から1996年1月25日までの48時間内において1時間ごとに定期的に
行った。
サンプリング場所における圧力は,0.66MPa (6.6bar) であった。
測定は,±0.5℃の不確かさを有する冷却露点計(凝縮)タイプXXを用いて行った。
計測器は,記録(同封のもの)に示すように1995年11月30日に校正を行った。
JIS B 8392-3に基づく公表圧力露点は,次のとおりである。
実際の条件 (0.66MPa, 26℃) における圧力露点+1±0.5℃。
基準条件 (0.7MPa, 20℃) における再計算に基づく圧力露点+3±0.5℃。
7
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
附属書B(参考) 蒸気圧力の計算
B.1 乾湿球温度測定に基づく実際の水蒸気圧計算
乾湿球湿度計の公式:
pw=pwsat−C・ptot・(T−Tw)
ここに
pw : 実際の蒸気分圧,(Pa)
pwsat: 飽和蒸気圧,(Pa)
ptot : ガスの全圧,(Pa)
T : 乾球温度,(K)
Tw : 湿球温度,(K)
C : 係数は使用する計器のタイプに応じて異なり,10−3の等
級(オーダー)である。
数値は,校正値に基づいて計算しなければならない。
B.2 温度測定に基づく水の飽和蒸気圧の計算
参考文献[4]を参照
(
)
+
∑
=
−
=
9
0
2
w
w
1n
wsat
i
i
iT
F
T
B
e
p
ここに
B= −12.150 799
Fi= 表B.1参照
その他の記号は,次の表B.1に記載したものと同じである。
表B.1 係数Fiの数値
係数Fi=0−9
数値
係数
数値
F0
−8 499.22
F5
−1.146 05×10−8
F1
−7 423.186 5
F6
2.170 13×10−11
F2
96.163 514 7
F7
−3.610 26×10−15
F3
0.024 917 646
F8
3.850 45×10−18
F4
−1.316×10−5
F9
−1.431 7 ×10−21
B.3 非基準圧力における測定に基づく基準圧力における露点の計算
水と接するときの露点
1
2.
611
2.
611
ln
62
.
17
2.
611
ln
12
.
243
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
rp
D(w),
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
rp
D,
>
条件
p
p
p
t
p
p
p
p
p
p
t
=
−
=
氷と接するときの露点
1
2.
611
2.
611
ln
46
.
22
2.
611
ln
46
.
272
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
rp
D(i),
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
nrp
tot,
rp
tot,
nrp
w,
rp
D,
<
条件
p
p
p
t
p
p
p
p
p
p
t
=
−
=
8
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
ここに,
tD,rp : 基準圧力における露点温度,(℃)
tD(w),rp: 水と接するときの基準圧力における露点温度,(℃)
tD(i),rp : 氷と接するときの基準圧力における露点温度,(℃)
pot,rp : 総基準圧力,(Pa)
ptot,nrp: 非基準圧力における全圧,(Pa)
pw,nrp : 非基準圧力における水蒸気分圧,(Pa)
9
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
附属書C(参考) 基準の湿度測定方法
C.1 測定方法の説明
C.1.1 乾湿球湿度計(サイクロメータ) 乾湿球湿度計は,温度的に隔離した2個の温度計を並べるよう
に構成されていて,一つの温度計は,湿度が生じやすい環境に置いている。温度計の一方の感温部は,多
孔性の媒体(ウイック)で包まれて水溜からの毛管現象で湿った状態に保たれている。
水は,空気中の湿度に比例した割合で湿ってから蒸発する。蒸発によって湿った感温部は冷やされる。
湿った感温部と乾いた感温部の温度差を用いて空気中の湿度を計算する。
C.1.2 冷却露点計(凝縮)
C.1.2.1 肉眼判定式露点計 光学式凝縮露点計においては,鏡を冷却することによって空気にさらされた
鏡面上に気流中の湿気の凝縮がひきおこされる。凝縮が始まる温度は,鏡面の光の反射状態の変化を検出
することによって観測できるので,その温度を露点として記録する。
C.1.2.2 自動平衡式露点計 上記と同じであるが凝縮及び温度を監視する電子装置が付いている。
C.1.3 電子センサを使った測定
C.1.3.1 概要 このタイプのセンサは,吸湿性のある素材で作られており,その電気的特性は,水の分子
を吸収すると変化する。湿度の変化は,センサの静電容量又は抵抗並びに,この両者を組み合わせたもの
の変化として測定される。プローブは,汚染を防止するためにフィルタを取り付けなければならない。こ
の保護を行わなければ応答時間は,より早くなる。インピーダンス湿度計には,通常温度センサが取り付
けられている。示度は直接表示され,単位(例えば,相対湿度又は露点)を選択することができる場合が
あり,また,電気信号(アナログ電圧)の出力が可能な場合もある。
電気センサには,数種類の異なったタイプのものがある。
C.1.3.2 静電容量センサ このタイプのセンサは,露点よりむしろ相対湿度にもっとも敏感に応答し,低
い相対湿度において直接性は最もよい。一般的に静電容量センサは,凝縮(すなわち,100%の相対湿度)
によって損傷することはない。ただし,結果として校正値がずれることがある。
C.1.3.3 抵抗センサ このタイプのセンサは,露点よりむしろ相対湿度にもっとも敏感に応答し,高い相
対湿度において直接性は最もよい。ほとんどの抵抗センサは,凝縮に対して耐えられない。ただし,凝縮
を防止するために自動加熱装置の付いた“飽和防止式”のものもある。
C.1.4 化学反応法 化学反応を起こす物質の入った直読式(ガラス)チューブを用いる。直読式チューブ
による方法は,基本的に,空気サンプル中の水蒸気とチューブ内の充てん剤が化学的に反応し,色素変化
を起こす。その反応は,一定量の空気が通過したときにチューブ内に流れ込む全水分量に比例し,色素の
沈着した部分が長さとして示されるので,その目盛を読む。
C.1.5 分光分析法 分光分析は,一般に,特定の波長又は振動数をもつ光に対して混合気体の組成物質が
どのように吸収(又は放出)するかを分析して,その組成物を判明するために使われる技術である。化学
物質は,すべてスペクトルの紫外線又は赤外線上に存在する“固有”の振動特性をもっている。分光分析
の測定方法は,他の物質の濃度を水蒸気の濃度と同様に測定する場合に適している。
高湿度又は中湿度に対して用いられる分光分析技術は,赤外線の吸収性に基づいている。水は,1μmか
ら10μmの範囲内にある何種類かの波長の赤外線を吸収する。伝達される放射線の強度は,光電管を用い
てこの波長中の一つを探索,測定して基準となる波長と比較することによって求められる。気体に吸収さ
10
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
れたこの放射線量は,水蒸気の濃度(又は分圧)に比例する。
また,分光分析技術を用いて極端に低い水蒸気濃度,2〜3ppb(ppbは10億分の1)近くの濃度まで測定
できるとされている。この高度な技術には,APIMS(大気圧イオン化質量分光法),FT-IR(フーリエ分光
法)及びTDLAS(同調式ダイオードレザー吸収分光法)を含む。何種類かの方法がある。
C.2 特定の範囲における注意事項
C.2.1 高湿度で雰囲気温度以上 サンプルの配管部の温度は,凝縮を避けるために測定する気体の露点以
上に維持する。多くの場合,バンドヒータが最も現実的な方法である。
C.2.2 低湿度で非常に乾燥した気体 サンプルの配管部と湿度計は,できれば測定前に乾燥した気体でフ
ラッシング又は低圧になるように排気して準備をする。加熱乾燥をして,できれば標遊残余水分を除去す
る(このように設計されていない計器類は不可)。測定濃度が低ければ低いほど乾燥時間は,劇的に早くな
る。
吸湿材は避ける。低湿度(露点0℃以下)において有機・多孔質材を用いて除去した水分量は,空気中
の湿度の値に劇的に作用する。湿度レベルが下がれば下がるほど,影響も大きくなる。
不浸透性材料を選び,サンプリング用のチューブ及び容器から入った湿度が内容に広がるのを避ける。
スチール及びその他の金属は,実質的に不浸透である。四フッ化エチレン(PTFE)は,わずかに浸透性があ
るが,露点が零下20℃以上,ときにはこれ以下の場合でも通常は十分である。塩化ビニール(PVC),ナイ
ロン及びゴムのような材料は,比較的浸透性があり,そのため低湿度では全く不適当であり,また,いか
なる湿度領域においても実質的に不十分である。
非常に低湿度の場合は,表面仕上げが重要である。非吸湿性材の表面から吸収された場合には,ごく少
量の水分でさえも,強く影響するおそれがあるので重要である。最適な結果を得るためには,研磨又は電
気的研磨されたステンレス綱を使うことが望ましい。
常にクリーンな環境は,湿度測定において最適だといえるが,特に湿度が低いときには重要である。指
紋でさえ水分を含んでいる。純度の高い洗浄剤の使用を推奨する。オイル系の汚染物質には分析用試薬溶
剤を,また,塩類には純水(蒸留水又は脱イオン水)を用いるようにする。洗浄後は,クリーンな方法を
用いて十分に乾燥を行う。
サンプルの配管は,最小限の長さにするのが望ましい。流動条件が許す限り最小径のチューブを用いて
表面積を最小にするのが望ましい。漏れを避けるために,結合部(エルボ,T,バルブなど)の数を最小
限にするのが望ましい。
流路中の標遊水の元になる影響を最小限にするため,気体サンプルの適切な流れを確保するのが望まし
い。
配管は簡単に洗い流すことができないので,“行き止り”は避ける。
湿度の戻り拡散は,例えば,気体の早い流速,センサのあとの長い排気チューブによって,又は周辺空気
から低湿度領域を隔離するバルブによって最小限に止める。
11
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
附属書D(参考) その他の湿度測定方法
D.1 概要 次の測定方法は,圧縮空気システム及び汚染物質の等級に関して規定したISO 8573-1に準拠
するその他の湿度測定方法として知られている。
D.2 物理的な方法 感知媒体は,吸湿性で水分を吸収すると物理的特質に変化を起こす。一例として,
よく知られているのは毛髪湿度計で,湿度の変化に伴って束ねた毛髪の長さが変化する。その動きは,拡
大されて目盛りの指針によって表示される。
D.3 飽和塩化リチウム法 空気中の水分を吸収する塩化リチウムを感知媒体とする。塩化リチウムの皮
膜全体に電圧を印加すると吸収された水蒸気量に応じて電流が流れる。それと同時に塩化リチウムを過熱
する。
水分の吸収と加熱によってバランスが保たれる。これが発生する温度は水蒸気圧力と関係がある。機器
は,通常,プローブと露点表示部で構成される。
D.4 電解的方法(五酸化リン) センサは,強い乾燥性をもつフィルム状の五酸化リン (P2O5) からでき
ており,周囲の気体から水蒸気を強く吸収する。電圧をP2O5の周囲に印加すると電解が起こり,水をその
構成物質の水素と酸素に分解する。この過程で流れる電流は,(ファラデーの法則によって)電解された水
分量に関係する。そのため,電流値は測定された気体の湿度を示す。これらのセンサは,非常に低い湿度
の測定に適している。ただし,安定した気体の流量を必要とする。この計測器は,体積中の水分濃度を測
定し,体積又は蒸気圧によってppmのような絶対単位で表示される。通常センサは,プローブの形ではな
くサンプリングの流路中で使用される。
D.5 圧力スイングセル露点計 試料空気を圧縮し断熱的に膨張させる,圧力を放出してから最初に霧が
生じるときの断熱膨張からの温度を読み取る。
12
B 8392-3 : 2001 (ISO 8573-3 : 1999)
参考文献一覧
[1] ISO 2602, Statistical interpretation of test results−Estimation of the mean−Confidence interval.
[2] ISO 2854, Statistical interpretation of data−Techniques of estimation and tests relating to means and variances.
[3] Institute of Measurement and Control : A Guide to the Measurement of Humidity. Germany, 1996, ISBN
0-904457-24-9.
[4] A. Wexler and R. Greenspan, US Code of Federal Regulations, Part 40, § 86.344-79, Protection of the
environment. Humidity calculations. National Bureau of Standards.
JIS原案作成本委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
竹 中 俊 夫
東京工業大学名誉教授
(委員)
香 川 利 春
東京工業大学
藤 田 昌 宏
通商産業省
橋 本 進
財団法人日本規格協会
村 井 孝 宣
財団法人機械振興協会
岡 安 英 雄
社団法人日本工作機械工業会
福 井 義 雄
SMC株式会社
竹 内 俊 一
オリオン機械株式会社
小 林 隆 博
コベルコ建機株式会社
渡 並 直
トヨタ自動車株式会社
荒 木 義 昭
株式会社日平トヤマ
黒 部 昌 徳
東芝機械株式会社
小 林 周 二
日精樹脂株式会社
美濃越 昌 二
日本電気株式会社
最 上 敏 博
CKD株式会社
中 西 康 二
黒田精工株式会社
伊 藤 三 郎
株式会社コガネイ
赤 井 英 夫
太陽鉄工株式会社
(事務局)
三 浦 吉 成
社団法人日本フルードパワー工業会
堀 切 俊 彦
社団法人日本フルードパワー工業会
エアドライヤ分科会 構成表
氏名
所属
(主査)
竹 内 俊 一
オリオン機械株式会社
(副主査)
伊 藤 要 逸
CKD株式会社
(委員)
福 井 義 雄
SMC株式会社
上 間 丈 司
黒田精工株式会社
辻 光 雄
日本精器株式会社
小 松 隆
株式会社コガネイ
(事務局)
三 浦 吉 成
社団法人日本フルードパワー工業会
(文責 竹内俊一)