B 8316-1 : 1999
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。これによって JIS B 8316 : 1994 は廃止され,JIS B 8316-1 及び JIS B 8316-2 に置き換
えられる。
JIS B 8316
は,主題を“容積移送式真空ポンプ−性能試験方法”として,次に示す各部によって構成さ
れる。
第 1 部:体積流量(排気速度)の測定
第 2 部:到達圧力の測定
B 8316-1 : 1999
(1)
目次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
定義
1
2.1
体積流量(排気速度)
1
2.2
テストドーム(テストヘッダ)
2
3.
装置
2
3.1
テストドーム
2
3.2
圧力計
2
3.3
試験気体
2
3.4
気体流量測定装置
2
4.
試験方法
2
4.1
原理
2
4.2
手順
3
5.
試験結果
3
6.
試験報告書
3
図 1 テストドーム 4
日本工業規格
JIS
B
8316-1
: 1999
容積移送式真空ポンプ−性能試験方法−
第 1 部:体積流量(排気速度)の測定
Positive-displacement vacuum pumps
−
Measurement of performance characteristics
−
Part 1 : Measurement of volume rate of flow (pumping speed)
序文 この規格は,1993 年に第 2 版として発行された ISO 1607-1, Positive-displacement vacuum pumps−
Measurement of performance characteristics
−Part 1 : Measurement of volume rate of flow (pumping speed) を基
に,対応する部分(装置,試験方法,試験結果及び試験報告書)については,技術的内容を変更すること
なく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない適用範囲(多段ポンプ)を日本
工業規格として追加した。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。
1.
適用範囲 この規格は,容積移送式真空ポンプの体積流量測定方法について規定する。
対象となるポンプは,大気圧下に気体を排気し,限界入口圧力(最低吸気圧力)が,一段又は多段で 100Pa
未満に達するものとする。
これらのポンプは,バッフル又はトラップがあってもなくてもよい。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 1607-1 : 1993
Positive-displacement vacuum pumps − Measurement of Performance
characteristics
−Part 1 : Measurement of volume rate of flow (pumping speed)
2.
定義 この規格の主な用語の定義は,次による。
2.1
体積流量(排気速度) (volume rate of flow ; pumping speed) 理想状態のもとで,単位時間当たり
にポンプの吸入口を通過する気体の体積。
しかし,実際には,ある気体に対するポンプの体積流量(排気速度)S は,便宜的にその気体の流量 Q
を,所定の運転条件において規定したテストドームの所定の点での平衡圧力 p で除して求める。
すなわち,
p
Q
S
=
体積流量(排気速度)の単位は,m
3
/h
又は,l/s とする。
2
B 8316-1 : 1999
2.2
テストドーム(テストヘッダ) (test dome ; test header) 所定の形状・寸法の容器で,ポンプの吸
入口に取り付けることができる。測定する気体がその容器を通過してポンプで排気され,かつ,その容器
には圧力を測定するための測定器が取り付けられるようになっているもの。
2.3
到達圧力 (ultimate pressure ; Pa 単位) 気体導入弁を閉じた状態で,かつ,ポンプが通常の運転状
態にあるときの,テストドーム内の漸近的に到達する限界圧力。
3.
装置
3.1
テストドーム 図 1 に示す円筒形のもの。テストドームの軸方向の寸法は,D をその内径としたと
き,1.5D であり,試験気体の入口は,結合フランジから軸方向で距離 D のところにあり,テストドームへ
の気体入口は,ポンプ入口から遠ざかる方向になるように設ける。入口圧力及び到達圧力の測定のために
使用する真空計取付口は,取付口の軸がテストドームの軸に直角となり,結合フランジからの距離は 0.5D
のところとする。テストドームの軸は,
ポンプの入口フランジの平面に対して直角にしなければならない。
テストドームの容積 (V
D
)
は,
ポンプの 1 圧縮サイクル中に除去される体積 (V
p
)
の少なくとも 5 倍とする。
ポンプ入口の接続口は,0.5D を超えない長さのアダプタから形成される(
図 1 参照)。与えられたサイズ
のポンプに適切なテストドーム寸法を,
表 1 に示す。
表 1 与えられたサイズのポンプに適切なテストドーム寸法
V
p
V
D
D
l
l mm
0
から 0.26 1.3
100
0.26
から 1.1 5.4
160
1.1
から 4.2 21
250
4.2
から 17
84
400
17
から 65
325
630
65
から 260
1 300
1 000
3.2
圧力計 1Pa 以上の圧力に対し±5%,それより低い圧力では±10%の精度に較正されたもの。
3.3
試験気体 特別の指定がない限り,雰囲気の空気を使用する。
3.4
気体流量測定装置 気体流量測定に採用される方法は,必要とする気体流量に依存する。その測定
装置の精度は,次のとおりとする。
a) 9.9
×10
−
1
Pa
・m
3
/s
より大きい流量に対しては±3%
b) 9.9
×10
−
1
Pa
・m
3
/s
と 9.9×10
−
5
Pa
・m
3
/s
との間の流量に対しては±5%
c) 9.9
×10
−
5
Pa
・m
3
/s
よりも小さい流量に対しては±10%
備考 20℃における理想気体として取り扱う。
4.
試験方法
4.1
原理 採用した試験方法は,定圧法であり,測定中は吸気口圧力を一定に保つようにしたものであ
る。実際には,テストドームで測定される圧力が一定であれば,この条件は満足しているとみなす。
3
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4.2
手順 体積流量の測定を行うためには,テストドーム,圧力測定ゲージ及び気体流量測定装置は,
3.
に従ってポンプに取り付ける。試験目的を満足するためには,ポンプは,規定の量及び品質の油で,製
造業者の指定した回転速度で運転する。周囲温度は,特に指定がなければ 15∼25℃の範囲で,試験中は±
1
℃の一定の温度に保つ。気体導入装置から切り離されたときは,1 時間以上,さらにそれ以上の圧力降下
がテストドームで観察されなくなり,ポンプがその平衡運転温度に到達するまで,テストドームは排気し
なければならない。そして,必要とされる測定圧力になるように気体をテストドームの中に導入し,測定
が開始する前に装置が圧力平衡の状態に達するようにしなければならない。
体積流量(排気速度)の測定は,最低圧力から開始し,1 点ごとに異なる入口圧力で(少なくとも,10
の 1 乗の範囲で 3 点の測定,すなわち,概略 2.5,5,10 のように)測定する。それぞれの測定点に対して,
入口圧力,周囲大気圧及び気体流量を測定する。ガスバラストが付いているポンプの場合には,最大ガス
バラスト流量状態で試験を繰り返す。
入口圧力及びガス流入量は,
できる限り同時に測定する。
ガス流入量の測定に 60 秒以上かかる場合には,
60
秒ごとに圧力測定を行い,平均値を記録する。最高値と最低値との読みの差が 10%以上の場合には,再
度測定をやり直さなければならない。
5.
試験結果 入口圧力と体積流量との関係は,到達圧力から大気圧までの範囲,又はポンプの設計の適
切な範囲を表す圧力を対数横座標とし,体積流量を普通目盛縦座標としてグラフで表す。入口圧力と気体
流量との関係は,横軸に圧力,縦軸に流量の両対数グラフを使用することで示す。ガスバラストが装備さ
れたポンプの場合には,これらの曲線は,ガスバラスト無しと最大ガスバラスト流量時との両方を示さな
くてはならない。
6.
試験報告書 試験報告書には,次の項目を含むこととする。
a)
使用したすべての計器の型式及び運転状態
b)
ポンプ入口フランジに使用したガスケットの型式
c)
使用したバッフル及びトラップの型式並びに試験中のそれらの温度
d)
冷却水流量
e)
ポンプの回転速度及び試験中の変化の限度
f)
ガスバラストがあれば,その流量(m
3
/h
又は l/s)
g)
周囲温度及び圧力
4
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図 1 テストドーム
5
B 8316-1 : 1999
JIS B 8316
(容積移送式真空ポンプ性能試験方法)改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
堀 越 源 一
高エネルギー物理学研究所名誉教授
(幹事)
○
榊 原 正 二
日本酸素株式会社
柳 橋 輝 雄
大亜真空株式会社
石 川 雄 一
株式会社日立製作所機械研究所
○
本 間 清
工業技術院標準部材料機械規格課
岡 野 達 雄
東京大学生産技術研究所
岡 原 真
株式会社島津製作所
門 芳 生
株式会社芝浦製作所
○
金 原 浩 之
日本真空技術株式会社
○
金 戸 成
株式会社大阪真空機器製作所
川 原 文 雄
アネルバ株式会社
大工原 茂 樹
株式会社シンクロン(日本真空工業会)
荻 原 徳 男
日本原子力研究所光量子化学センター
○
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
平 田 正 紘
工業技術院電子技術総合研究所
福 山 泰 弘
神港精機株式会社
古 畑 達 雄
ライボルト株式会社
堀 井 春 生
三菱電線工業株式会社
(事務局)
○
間 山 正 義
日本真空協会
○
小 林 廣 子
日本真空協会
備考 ○印は,分科会の委員も兼ねていることを示す。