日本工業規格
JIS
B
8007
-1987
往復動内燃機関の性能に関する
温度計測方法
Temperature Measurements of Performance for
Reciprocating Internal Combustion Engines
1.
適用範囲 この規格は,往復動内燃機関の性能に関する受渡し試験及び形式試験において温度を計測
する一般的方法について規定する。
引用規格:
JIS B 7411
ガラス製棒状温度計(全浸没)
JIS B 7412
ガラス製二重管温度計
JIS B 7528
水銀充満圧力式指示温度計
JIS B 7542
工業用バイメタル式温度計
JIS B 8002
往復動内燃機関の性能試験方法通則
JIS C 1602
熱電対
JIS C 1604
測温抵抗体
JIS C 1605
シース熱電対
JIS C 1610
熱電対用補償導線
JIS C 1611
サーミスタ測温体
JIS F 9703
船用白金測温抵抗体
JIS Z 8705
ガラス製温度計による温度測定方法
JIS Z 8710
温度測定方法通則
関連規格:JIS F 7004 船舶機関部温度計装備基準
2.
用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,次による。
(1)
常用限度 大気中において連続使用できる温度の限度。
(2)
過熱使用限度 必要上,やむを得ない場合に短時間使用できる温度の限度。
(3)
測温媒体 ガラス製温度計の球部及び圧力式温度計のブルドン管等に封入される媒体で,温度に対応
する膨張,収縮の度合いによって温度を指示するもの。
(4)
経年変化 同じ温度に対する温度計の示度が,年月の経過とともに変化する現象。
(5)
バイメタル 熱膨張率が違う 2 種類の薄い金属板をはり合わせたもの。
(6)
測温抵抗体 抵抗素子,内部導線,保護管,端子などからなる白金測温体及びサーミスタ測温体。
(7)
抵抗素子 裸又は被覆された抵抗素線とその保持構造体。
(8)
抵抗素線 測温抵抗体の測温部を構成する白金線。
2
B 8007-1987
(9)
熱電対 熱起電力を発生させる目的で,2 種類の導体の一端を電気的に接続したもの。
(10)
素線 熱電対の両脚となる金属線及び合金線。
(11)
測温接点 熱電対の素線を接合した接点で,温度を測る位置に置かれるもの。
(12)
基準接点 熱電対と導線との,又は補償導線と導線との接合点を一定の温度(例えば,氷点)に保つ
ようにしたもの。
(13)
補償接点 熱電対と補償導線との接合点。
(14)
補償導線 常温を含む相当な温度範囲において,組み合わせて使用する熱電対とほぼ同一の熱起電力
特性をもった一対の導体に絶縁及び各種の保護被覆を施したものをいい,熱電対の端子と基準接点と
の間をこれによって接続し,熱電対の補償接点端子部分の温度変化によって生じる誤差を補償するた
めに使用する。
3.
単位 温度の単位は,セルシウス度(単位記号℃)とする。
4.
計測項目及び使用計測器 往復動内燃機関の性能を確かめる試験において,温度計測の対象となる項
目及び使用計測器は,
表 1 による。
なお,この項目は,JIS B 8002(往復動内燃機関の性能試験方法通則)の
表 8 の規定による。
表 1 計測項目及び使用計測器
番号
計測項目
計測器
1
機関又は過給機入口における空気温度(周囲
温度)
ガラス製温度計,抵抗式温度計,
熱電温度計
2
過給機後の給気温度
ガラス製温度計,抵抗式温度計,
熱電温度計
3
給気冷却器後の給気温度
ガラス製温度計,抵抗式温度計,
熱電温度計
4
シリンダ出口における排気ガス温度
ガラス製温度計,抵抗式温度計,
熱電温度計
5
排気タービン前又は他の排気ガスで駆動さ
れたタービンの排気ガス入口温度
ガラス製温度計,抵抗式温度計,熱電
温度計
6
排気出口管内又はターボ過給機後若しくは,
他の排気ガスで駆動されたタービンの排気
ガス出口温度
ガラス製温度計,抵抗式温度計,
熱電温度計
7
冷却液温度
ガラス製温度計,バイメタル式温度計,
抵抗式温度計,圧力式温度計,
熱電温度計
8
潤滑油温度
ガラス製温度計,バイメタル式温度計,
抵抗式温度計,圧力式温度計,
熱電温度計
9
燃料温度
ガラス製温度計,バイメタル式温度計,
抵抗式温度計,圧力式温度計,
熱電温度計
10
空冷ガソリン機関
点火プラグ座温度
熱電温度計
5.
使用計測器の種類 使用計測器の種類は,次による。
(1)
ガラス製温度計 ガラス管内の測温媒体が温度によって膨張,収縮する特性を利用したもので,ガラ
3
B 8007-1987
ス管内の媒体としては,一般にアルコール又は水銀が使用される。
ガラス製温度計は,JIS B 7411[ガラス製棒状温度計(全浸没)
]又は JIS B 7412(ガラス製二重管
温度計)による。ただし,360∼650℃の範囲の計測は,JIS Z 8705(ガラス製温度計による温度測定
方法)による。
(2)
圧力式温度計 ブルドン管などに封入された測温媒体が温度の変化によって膨張,収縮してブルドン
管などが変形する特性を利用し,ダイヤル式の目盛板に温度を指示して読み取るようにしたものであ
る。
圧力式温度計は,JIS B 7528(水銀充満圧力式指示温度計)による。
(3)
バイメタル式温度計 温度の変化によるバイメタルの自由端の動きを利用し,ダイヤル式の目盛板に
温度を指示して読み取るようにしたものである。
バイメタル式温度計は,JIS B 7542(工業用バイメタル式温度計)による。
(4)
熱電温度計 一般に,2 種類の金属導体の両端を電気的に接続して閉回路を作り,両端に温度差を与
えればゼーベック効果によって,温度差に対応する熱起電力を発生し回路中に電流が流れる。この現
象を利用したものが熱電対であり,この熱電対を検出端として使用する温度計が熱電温度計である。
一般に使用される熱電温度計には,保護管付の熱電対及びシース熱電対とがあり,それぞれ JIS C
1602
(熱電対)及び JIS C 1605(シース熱電対)による。
また,熱電対及び補償導線には計測範囲によって
表 2 に示す区分がある。
表 2 熱電対及び補償導線の種類と組合せ
組み合わせて使用する熱電対の種類
補償導線の種類
区分
記号
記号
心線の材質
+脚
−脚
熱電対
(JIS C 1602)
シース熱電対
(JIS C 1605)
+脚
−脚
KX
ニッケル及
びクロムを
主とした合金
ニッケルを主と
した合金
WX
鉄
銅 及 び ニ ッ ケ
ル を 主 と し た
合金
クロメル アルメル K
(CA)
SK
VX
銅
銅 及 び ニ ッ ケ
ル を 主 と し た
合金
クロメル
コンスタン
タン
E (CRC)
SE
EX
ニッケル及
びクロムを
主とした合金
銅 及 び ニ ッ ケ
ル を 主 と し た
合金
鉄
コンスタン
タン
J (IC)
SJ
JX
鉄
銅 及 び ニ ッ ケ
ル を 主 と し た
合金
銅
コンスタン
タン
T (CC)
ST
TX
銅
鉄 及 び ニ ッ ケ
ル を 主 と し た
合金
4
B 8007-1987
備考1. 熱電対の記号のうち括弧を付けたものは,旧規格によるものであって参考のために示す。
2.
熱電対で測温する場合,一般に熱電対と計器との接続距離は長くなることが多い。熱電対
と計器との間を銅線で結んだ場合には,熱電対と銅線との接続点(補償接点)と,熱電対
の測温接点との温度差は,正確に測ることができても,補償接点の温度が変動するために
正確な測定ができないので,一般に補償導線が使用される。これには電磁遮へい及び保護
被覆が施される。
補償導線は,JIS C 1610(熱電対用補償導線)による。
(5)
抵抗式温度計 一般に物質の電気抵抗は,温度によって変化する。金属,半導体などの電気抵抗と温
度との間にはほぼ一定の関係がある。この関係を基にして温度を測定する計器が抵抗式温度計である。
抵抗式温度計の検出端としては,一般に金属素線を用いた測温抵抗体又は半導体を用いたサーミスタ
測温体などがある。
金属素線には,高純度の金属線(白金)を用い,純粋な白金線で作られた白金測温抵抗体は最高の
精度を示す。
半導体の場合は,電気伝導度が金属と絶縁物との中間にあり,一般に金属混合物を混合し高温焼結
したサーミスタを用いる。
これらは JIS C 1604(測温抵抗体)
,JIS C 1611(サーミスタ測温体)又は JIS F 9703(船用白金測
温抵抗体)による。
6.
機関における計測上の基本事項 機関における計測上の基本事項は,次による。
(1)
温度計測に際しては,機関の作動温度が機関製造業者が定めた安定状態にあることを確認の上で計測
を行う。
(2)
計測における運転時間,計測回数は,各用途別に異なるので,個別規格による。
(3)
計測項目に対する計測位置及び計測条件の注意事項を
表 3 に示す。
表 3 計測位置及び計測条件
計測項目
計測位置及び計測条件
1
機関又は過給機入口におけ
る空気温度(周囲温度)
試験室内において,日光,機関の放射熱,排気熱などの影響がない
場所で計測する。
2
過給機後の給気温度
過給機出口で計測する。
3
給気冷却器後の給気温度
給気冷却器の出口で計測する。
4
シリンダ出口における排気
ガス温度
5
排気タービン前又は他の排
気ガスで駆動されたタービ
ンの排気ガス入口温度
6
排気出口管内又はターボ過
給機後若しくは他の排気ガ
スで駆動されたタービンの
排気ガス出口温度
(1)
無過給機関の場合には,排気マニホールド出口付近で計測する。
(2)
ターボ過給機関の場合には,排気タービンの入口及び出口で計
測し,その位置を記録する。ただし,入口温度の計測を省略す
ることができる。
(3)
計測器の取付位置としては,断面の変化がなく,曲がりがない
箇所が望ましい。
(4)
必要な場合には,各シリンダ排気出口においても計測する。
7
冷却液温度
機関の出口,又は入口及び出口で計測する。
なお,必要な場合は,各部品(シリンダ,ピストン,燃料弁,過
給機など)の冷却に関し,それぞれの入口及び出口で計測する。
8
潤滑油温度
オイルパン又は油冷却器の入口及び出口の温度を計測する。
なお,必要な場合には,各部品(ピストン,過給機軸受,カム軸
など)の出口で計測する。
9
燃料温度
必要な場合,機関の入口で計測し,その位置を記録する。
5
B 8007-1987
計測項目
計測位置及び計測条件
10
空冷ガソリン機関
点火プラグ座温度
点火プラグの座金の温度を熱電対で計測する。
(4)
温度計の校正 一般に,校正法としては,比較法を用い,次の 3 種類がある。
(a)
現場で測温する際に,標準器を同時に挿入して比較する方法
(b)
恒温槽に使用計器及び標準計器を挿入して比較する方法
(c)
定点装置を精度がよい比較装置として使用する方法
機関製造業者は,標準器を準備して,比較校正を行う必要がある。
各種温度計における校正は,JIS Z 8710(温度測定方法通則)の規定によって行い,それぞれガ
ラス製温度計,白金測温抵抗体,白金熱電対(R 及び S)の標準器を使用する。
7.
計測器の計測範囲及び精度 内燃機関の温度計測に使用する各計測器の計測範囲及び精度は表 4 によ
る。
表中の許容差は,使用計器による計測温度と標準器による計測温度との差をいう。
また,この値は,℃又は%のどちらか大きな値とする。
なお,t は,+−の記号に無関係な温度 (℃) で示される計測温度である。
表 4 各計測器の計測範囲及び精度
種類
計測範囲
精度(許容差)
備考
ガ ラ ス 製 温
度計
50
度温度計
100
度温度計
200
度温度計
300
度温度計
360
度温度計
−30∼+50℃
−5∼+105℃
−5∼+200℃
−5∼+300℃
−5∼+360℃
±1℃
±1℃
±1℃
<200℃±1℃,>200℃±1.5℃
<200℃±1℃,<300℃±1.5℃,
>300℃±2℃
B 7411
B 7412
水銀封入ガラ
ス製温度計
−
−50∼+650℃
−50∼+550℃,±1 目量
精密級(0.1℃目盛)は
0
∼100℃,±0.03℃
Z 8710
水銀以外の液
体封入ガラス
製温度計
−
−200∼+200℃
−100∼+200℃,±2 目量
Z 8710
低温用−200∼+100℃
中温用 0∼ 350℃
高温用 0∼ 500℃
0.15
級± (0.15+0.001 5t) ℃
0.2
級± (0.15+0.002t) ℃
0.5
級± (0.3+0.05t) ℃
C 1604
白 金 測 温 抵
抗体
P
t
低温用−200∼+100℃
中温用 0∼ 350℃
高温用 0∼ 600℃
0.5
級± (0.3+0.005t) ℃
0.75
級± (0.5+0.007 5t) ℃
F 9703
サ ー ミ ス タ
測温体
−
−50∼+350℃
−50∼+350℃,±1 目量
Z 8710
圧力式温度計
−
−30∼+500℃
+2%
目盛範囲に対する百分率
B 7528
バ イ メ タ ル
式温度計
−
−50∼+500℃
+2%
目盛範囲に対する百分率
B 7542
熱電対 K
(CA)
0
∼1 000℃ 0.4 級
0
∼1 200℃ 0.75 級
−200∼0℃ 1.5 級
±1.5℃又は計測温度の±0.4 %
±2.5℃又は計測温度の±0.75%
±2.5℃又は計測温度の±1.5 %
C 1602
6
B 8007-1987
種類
計測範囲
精度(許容差)
備考
E(CRC)
0
∼ 800℃ 0.4 級
0
∼ 800℃ 0.75 級
−200∼0℃ 1.5 級
±1.5℃又は計測温度の±0.4 %
±2.5℃又は計測温度の±0.75%
±2.5℃又は計測温度の±1.5 %
J(IC)
0
∼ 750℃ 0.4 級
0
∼ 750℃ 0.75 級
±1.5℃又は計測温度の±0.4 %
±2.5℃又は計測温度の±0.75%
熱電対
T(CC)
0
∼ 350℃ 0.4 級
0
∼ 350℃ 0.75 級
−200∼0℃ 1.5 級
±0.5℃又は計測温度の±0.4 %
±1.0℃又は計測温度の±0.75%
±1.0℃又は計測温度の±1.5 %
C 1602
参 考 計測器の特徴と使用上の注意事項
1.
ガラス製温度計
(1)
構造上,棒状温度計及び二重管温度計に大別できる。
(2)
感温液としては,有機液体及び水銀を使用する。
(3)
水銀温度計の通常の使用範囲は,−35∼360℃であるが,不活性気体を適正に加圧封入した場合には,
650
℃ぐらいまで使用可能である。
なお,石英ガラス管を使用する場合は,750℃ぐらいまで使用できる。
(4)
有機液体の温度計は,測温媒体の種類によって,最低−200℃ぐらいまで使用可能であり,不活性気体
の加圧封入によって,最高 200℃ぐらいまで使用できる。
(5)
機関に取り付ける場合,保護枠付温度計を使用することがある。
保護枠付温度計は,JIS F 7004(船舶機関部温度計装備基準)による。
2.
熱電温度計
2.1
熱電温度計による計測温度の範囲 各種熱電対並びにシース熱電対の常用限度及び過熱使用限度は,
JIS C 1602
及び JIS C 1605 の
参考表 1 及び参考表 2 のとおりである。
なお,熱電対における常用限度とは,裸熱電対を大気中で 10 000 時間使用した場合に,熱起電力の変化
が±0.75%に達する大略の温度のことであり,過熱使用限度とは,連続 250 時間の変化が同じく±0.75%で
ある大略の温度を指している。
参考表 1 熱電対の常用限度及び過熱使用限度
単位 ℃
記号
線径 mm
常用限度
過熱使用限度
0.65
650
850
1.00
750
950
1.60
850 1
050
2.30
900 1
100
K (CA)
3.20
1 000
1 200
0.65
450
500
1.00
500
550
1.60
550
650
2.30
600
750
E (CRC)
3.20
700
800
0.65
400
500
1.00
450
550
J (IC)
1.60
500
650
7
B 8007-1987
単位 ℃
記号
線径 mm
常用限度
過熱使用限度
2.30
550
750
3.20
600
800
0.32
200
250
0.65
200
250
1.00
250
300
T (CC)
1.60
300
350
備考1. 記号は,本体表2参照。
2.
( )内は,旧 JIS の記号を表す。
参考表 2 シース熱電対の常用限度
単位 ℃
金属シースの外径 (mm)
1.0, 1.5, 1.6, 2.0
3.0, 3.2
4.5, 4.8
6.0, 6.4
8.0
金属シース
シース熱電対
A,
B
A,
B A B A B A B
SK
650
750
800
900
800
1 000 900 1 050
SE 650
750
800
900
800
900
800
900
SJ
450
650
750 750 750
ST
300
350
350 350 350
備考 A:オーステナイト系ステンレス鋼 B:ニッケルクロム系耐熱合金
2.2
熱電対 熱電温度計の温度検出素子である熱電対は,種々のガス,金属などと反応し,金属組織が
変化するので,一般には保護皮膜として酸化皮膜をつけているが,特に高温で使用する K (CA) では,劣
化に対し注意が必要である。
すなわち,クロメルは,高温で使用されることによって酸化が進行し,熱起電力は+方向に変化するか
らである。しかし,この酸化は,クロメル表面付近の酸化であるため,最初にち密な酸化皮膜ができてい
る場合は,酸化の進行は遅く,長時間使用しても熱起電力の変化は少ないが,随時校正を行って使用する
ことが望ましい。
2.3
シース熱電対 シース熱電対は,参考図 1 のように保護管(金属シース)の中に絶縁材マグネシア
(MgO)
又はアルミナ (Al
2
O
3
)
を固く充てんして,熱電対素線相互間及び保護管と熱電対素線との間を絶縁
したものであるので,シース熱電対では酸化皮膜は付けていない。
また,一般的な保護管付熱電対に比較して細形であるので,自由に曲げられ感度もよく,耐熱性,耐振
性に優れているなどの特長がある。しかし,シース熱電対の場合は,次のような注意が必要である。
参考図 1 シース熱電対の構造
(1)
シース熱電対の先端に微小なクラックがある場合は,湿気が浸入し,絶縁劣化を起こすことがある。
(2)
シース内の残留酸素やシースに微小なピンホール又はクラックがある場合,そこから浸入する微量の
酸素とクロメルの Cr が反応して熱起電力を起こすことがある。
2.4
補償導線 補償導線は,通常 150℃以下の低温で使用し,また被覆を施してあるので,心線の劣化は
問題ないが,被覆材料の劣化について考えなければならない。
8
B 8007-1987
2.5
熱電対の取付け及び計測上の注意
(1)
挿入深さの影響 測温体の挿入深さが少ないと,保護管に接した壁又は外気の影響を受けて誤差を生
じるので,挿入深度としては通常,保護管直径の 8 倍以上にすることが望ましい。
(2)
導線間の温度こう配及び接合点,素線の不均質による影響 温度計測部と計器とを結ぶ導線に異種金
属の接合点及び素線の不均質性があると寄生熱起電力が発生するので,特に使用する異種金属の接合
点及びこれら導線の均質性が大切である。
(3)
折曲げによる影響 シース熱電対は,過度の折曲げにより寄生熱起電力を発生するので注意が必要で
ある。
(4)
気泡による影響 一般に被測温流体が液体である場合は,気泡による誤差を生じるので,計測器は,
配管の上流に取り付ける等の配慮が必要である。
(5)
その他 細い配管内の流体温度の計測及び火災防止の見地から,必要な固体の表面温度の計測につい
ては具体的に解説に記載する。
3.
抵抗式温度計
3.1
抵抗式温度計 測温抵抗体による温度計測の場合の注意事項は,熱電対の場合と多くの点で一致す
るが,別に次の注意が必要である。
(1)
自己加熱による影響 抵抗式温度計では,測温抵抗体に電流を流し,その抵抗値を計測して温度を知
るが,この際ジュール熱を発生し,測温抵抗体自身を加熱するので,自己加熱による誤差を生じる。
自己加熱の大きさは,測温抵抗体の構造(素線径,巻線密度,保護管径,保護管内充てん物の有無
及び種類など)によって定まり,周囲条件によって変化する。
しかし,一般には,自己加熱が無視できるよう測温体自身が設計され,測温抵抗体に流す電流は,
JIS C 1604
(測温抵抗体)によって 2mA,5mA の 2 種類に規定してある。
(2)
導線の影響 測温抵抗体による温度計測回路としては,通常ホイートストーン・ブリッジを使用する
が,誤差要因としては,次の点が挙げられる。
(a)
導線抵抗,接触抵抗による誤差 計測回路中の抵抗には,十分注意が必要である。
(b)
寄生熱起電力による誤差 市販の専用の計測器では,線材の材質に考慮が払われているが,計測者
自身が計測回路を構成する場合には,異種金属の接合点で,その点の温度による寄生熱起電力が発
生するので注意を払う必要がある。
(c)
絶縁抵抗による誤差 計測回路が,アースから浮いていれば,測温抵抗部の絶縁抵抗が問題となる
ことはないが,一般の工業計測においては,計測回路がアースに落ちていることがある。このとき,
測温抵抗体の絶縁が悪いと,計測できなかったり,誤差を生じることがある。
(3)
挿入深さの影響 挿入深さは,測温部を除いて,金属保護管では,直径の 10∼15 倍が望ましい。
熱電対の場合には,測温接点が点と考えられたのに対し,測温抵抗体の場合には,測温部が保護管
径に対し,かなりの大きさをもつため,その分だけ挿入深さを大きくする必要がある。
3.2
シース測温抵抗体 シース測温抵抗体は,参考図 2(3 導線式)のようにマグネシア (MgO) 又はア
ルミナ (Al
2
O
3
)
の無機絶縁物を固く充てんした金属シースの先に測温抵抗体素子を内蔵したもので,保護
管と組み合わされた保護管付測温抵抗体に比べて細形でシース内に空気層がないために応答が速く,曲げ
加工も容易であり,悪い雰囲気に素子がさらされないので寿命は長く,耐振性にも優れた特長がある。
9
B 8007-1987
参考図 2 シース測温抵抗体の構造
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
吉 田 正 一
埼玉大学
斎 藤 孟
早稲田大学
手代木 尚 久
千葉大学
五 味 努
上智大学
森 田 昭 三
工業技術院標準部
中 川 勝 弘
通商産業省機械情報産業局
辻 充
社団法人陸用内燃機関協会
古 川 洋
社団法人自動車技術会
大 橋 秀 夫
社団法人日本建設機械化協会
中 島 元 夫
社団法人日本農業機械工業会
長 島 孝 一
社団法人日本舶用工業会
小 郷 一 郎
財団法人日本船舶標準協会
小 島 克 己
社団法人日本自動車部品工業会
岡 山 透
財団法人日本海事協会
由 川 透
日本国有鉄道大宮工場
伊 藤 文 男
三菱重工業株式会社相模原製作所
高 橋 貞 信
三井造船株式会社機械事業本部機械技術部
李 上 宗 弟
石川島播磨重工業株式会社ディーゼル事業部基本設計部
荒 井 靖 平
いすゞ自動車株式会社産業エンジン設計部
村 松 綏 啓
株式会社新潟鉄工所内燃機事業部技術部
鍵 山 保 男
ダイハツディーゼル株式会社
森 光 良
ヤンマーディーゼル株式会社技術研究所
柳 瀬 宣 義
株式会社小松製作所小山工場
三 沢 武 則
横河電機株式会社センサ事業部
上 原 光 信
長野計器株式会社上田工場
高 村 昭 生
小野測機株式会社技術センター
菱 刈 功
チノー株式会社技術本部
武 田 勝
日本内燃機関連合会