2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 7958-1995
大気中のふっ素化合物自動計測器
Continuous analyzers for fluorine compounds in ambient air
1. 適用範囲 この規格は,大気中のガス状無機ふっ素化合物濃度を連続的に測定し,ふっ素濃度として
求める自動計測器(以下,計測器という。)のうち,イオン電極法及び吸光光度法に基づくものについて規
定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1302 絶縁抵抗計
JIS K 0105 排ガス中のふっ素化合物分析方法
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0212 分析化学用語(光学部門)
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS Z 8103 計測用語
JIS Z 8761 フロート形面積流量計による流量測定方法
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考として併記したものである。
2. 共通事項 イオン電極法を用いる分析方法について共通する事項は,JIS K 0105による。
吸光光度法を用いる分析方法について共通する事項は,JIS K 0115による。
3. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次に示すもののほか,JIS K 0105,JIS K 0212,JIS
K 0213及びJIS Z 8103による。
(1) ガス状無機ふっ素化合物 孔径0.8μmのフィルタを通過する無機ふっ素化合物。
(2) ゼロガス 計測器の最小目盛値を校正するのに用いるガス。
(3) 等価液 校正用ガスの代わりに,それを用いたものと同等の指示値を得るよう調製した標準液で,こ
の中には次のものがある。
(a) ゼロ調整用等価液
(b) スパン調整用等価液
(c) 目盛校正用等価液
(4) ゼロドリフト 計測器の最小目盛値に対する指示値のある期間内の変動。
(5) スパンドリフト 計測器の目盛スパンに対応する指示値のある期間内の変動。
(6) 干渉成分 測定を妨害する共存成分。
(7) 設定流量 計測器に定められた試料大気の流量。
2
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. イオン電極法
4.1
原理 この方法は,一定量の試料大気中に含まれるガス状無機ふっ素化合物を一定量の緩衝液(1)中
に捕集溶解させ,この溶液中のふっ素イオン濃度をイオン電極法によって測定して,試料大気中のガス状
無機ふっ素化合物濃度を一定周期ごとに求める。測定周期は原則として3時間とする。試料大気中に含ま
れるガス状無機ふっ素化合物の捕集方法には,次の2種類がある。
(1) 乾式捕集形 吸収液を用いて内壁にアルカリ膜を作った試料吸収管に,大気を一定流量で導入して,
大気中に含まれるガス状無機ふっ素化合物を吸収させたのち,この壁面を所定量の緩衝液で洗い流し,
捕集溶解する。
(2) 湿式捕集形 試料大気と緩衝液を一定の割合で直接的に接触させて,一定量の試料大気中に含まれる
ガス状無機ふっ素化合物を所定量の緩衝液に捕集溶解する。
注(1) 既知濃度のふっ素イオンを含む。
4.2
性能 計測器は,次の性能を満足していなければならない。
(1) 測定範囲 測定範囲は,ふっ素濃度として0〜5μg/m3,0〜10μg/m3若しくは0〜20μg/m3又は0〜5volppb,
0〜10volppb若しくは0〜20volppbとし,1〜3段階(レンジ)の切換可能なものとする。
備考 1μg/m3は1.266volppbに相当する (20℃) 101.32kPa {760mmHg (1 013mbar)}。
(2) 再現性(繰返し性) 再現性は,測定セルにゼロ調整用等価液(6.3の規定による)とスパン調整用等
価液(6.3の規定による)を交互に3回入れ,それぞれの指示値の平均値からの偏差を求める。この偏
差は,各測定段階(レンジ)ごとに最大目盛値の±2%でなければならない。
(3) ゼロドリフト ゼロドリフトは,同一条件(2)で24時間連続測定し,測定開始時及び24時間後にゼロ
調整用等価液(6.3の規定による)を用いて計器指示を測定したときの変動は,各測定段階(レンジ)
ごとに最大目盛値の±4%以内でなければならない。
注(2) 同一条件とは次の範囲をいう。
周囲温度
:使用許容温度範囲内で±5℃
湿度
:相対湿度85%以下
気圧
:±0.5kPa {5 mbar}
電源電圧
:定格電圧の±2%
電源周波数 :定格周波数の±0.2Hz
(4) スパンドリフト スパンドリフトは,同一条件(2)で24時間連続測定し,測定開始時及び24時間後に
スパン調整用等価液(6.3の規定による)を用いて計器指示を測定し,ゼロドリフトを除いたときの変
動が,24時間について各測定段階(レンジ)ごとに最大目盛値の±5%でなければならない。
(5) 指示誤差 ゼロ調整及びスパン調整を行った後,中間目盛付近の目盛校正用等価液(6.3の規定による)
を用いて測定した場合,相当するふっ素濃度に対する指示誤差は,各測定段階(レンジ)ごとに最大
目盛値の±4%でなければならない。
(6) 暖機時間 暖機時間は電源を投入してから,4時間以下で安定化し,以後ゼロドリフト及びスパンド
リフトについて,4.2(3)及び(4)の規定に適合しなければならない。
(7) 周囲温度変化に対する安定性 周囲温度変化に対する安定性は,周囲温度が使用許容温度範囲内で±
5℃変化しても,4.2(3)及び(4)の規定に適合しなければならない。
(8) 試料大気流量の安定性 設定流量に対し,流量の経時変化は,10日間を通して10%以下とする。
なお,流量計のフロートの瞬間的変動の幅は,±5%とする。
(9) 緩衝液採取供給の安定性 設定採取量に対し,繰返し誤差は±4%以内とする。
3
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(10) 電源電圧変動に対する安定性 電源電圧が定格電圧の±10%以内で変動しても,指示値の変動は,各
測定段階(レンジ)ごとに最大目盛値の±1%以内でなければならない。
(11) 伝送出力 記録計用以外に伝送出力を必要とする場合には,ふっ素濃度と直線比例関係にある直流0
〜1V若しくは1〜5V(いずれも内部抵抗500Ω以下)又は直流4〜20mAとする。
(12) 耐電圧 商用電源を使用する計測器では,常温,常湿(3)で電源端子を一括して外箱との間に交流1
000Vを1分間加えても,異常を生じてはならない。
注(3) 常温とは20±15℃,常湿とは (65±20) %をいう。
(13) 絶縁抵抗 商用電源を使用する計測器では,常温,常湿(3)で電源端子を一括して外箱との間の絶縁抵
抗は,JIS C 1302に規定する500V絶縁抵抗計で測定し,2MΩ以上でなければならない。
備考 (12),(13)の試験は,計測器の動作停止状態で行う。
4.3
構成
4.3.1
構成一般
4.3.1.1
乾式捕集形 乾式捕集形の方式による計測器は,フィルタ,ガス吸収部,流量計,試料大気吸引
ポンプ,吸収液タンク,緩衝液タンク,排液タンク,吸収液採取供給部,緩衝液採取供給部,測定セル,
増幅器,指示記録計,制御器などから構成される。
計測器全体の構成の例を図1に示す。
図1 イオン電極式ふっ素化合物自動計測器(乾式捕集形)の構成例
4.3.1.2
湿式捕集形 湿式捕集形の方式による計測器は,フィルタ,ガス吸収部,流量計,試料大気吸引
ポンプ,緩衝液タンク,緩衝液採取供給部,測定セル,排液タンク,増幅器,指示記録計,制御器などか
ら構成される。
計測器全体の構成の例を図2に示す。
4
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図2 イオン電極式ふっ素化合物自動計測器(湿式捕集形)の構成例
4.3.2
試料大気導入口 試料大気導入口は,試料大気導入管を接続する部分で,内径6〜8mmの導入管を
接続できなければならない。
4.3.3
フィルタ フィルタは,試料大気中に含まれる粉じんを除去し,流路のつまり,測定セルの汚れや,
緩衝液中への粉じんの溶解による測定誤差発生などを防ぐためのもので,その孔径は0.8μmのものとする。
フィルタは,ふっ化水素の吸着の少ないものを使用しなければならない。
4.3.4
流量計 流量計は,試料大気の流量の調整又は確認のために必要である。ここで用いられる流量計
は,設定流量の約1.2〜2倍の最大目盛をもつものとし,測定精度はJIS Z 8761の3.(測定原理)による。
4.3.5
ガス吸収部
4.3.5.1
乾式捕集形 吸収液によって内壁にアルカリ膜を作った試料吸収管に試料大気を一定流量で導
入し,試料大気中のガス状無機ふっ素化合物を捕集する部分である。
4.3.5.2
湿式捕集形 試料大気と緩衝液をそれぞれ一定の流量で導入し,気液接触によって,試料大気中
のガス状無機ふっ素化合物を緩衝液に捕集溶解させる部分である。
4.3.6
試料大気吸引ポンプ 試料大気吸引ポンプは,試料大気をガス吸収部に通気するために使用するポ
ンプであり,フィルタにダストが付着して通気抵抗が増しても,規定の流量が維持できるよう吸引力に余
裕のあるものを用いる。その材質は,吸収液によって侵されないものでなければならない。
4.3.7
吸収液タンク 吸収液タンクは吸収液によって侵されず,また,吸収液を変質させない材質のもの
を使用する。
4.3.8
吸収液採取供給部 吸収液採取供給部は,吸収液の一定量を計量採取してガス吸収部に送液するこ
とにより,ガス吸収部の吸収管内壁にアルカリ膜を作るためのものであり,吸収液によって侵されず,ま
た,吸収液を変質させない材質のものを使用する。
4.3.9
緩衝液タンク 緩衝液タンクは,緩衝液によって侵されず,また,緩衝液を変質させない材質のも
のを使用する。
4.3.10 緩衝液採取供給部
4.3.10.1 乾式捕集形 緩衝液の一定量を計量採取して吸収部に送液し,吸収されたガス状無機ふっ素化合
物を溶解捕集するためのものであり,緩衝液によって侵されず,また,緩衝液を変質させない材質のもの
でなければならない。
5
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.3.10.2 湿式捕集形 緩衝液をガス吸収部に一定流量で送液するための部分であって,緩衝液によって侵
されず,また,緩衝液を変質させない材質のものでなければならない。
4.3.11 測定セル 測定セルは,試料大気中に含まれるガス状無機ふっ素化合物を捕集した溶液中に含まれ
るふっ素イオン濃度を測定する部分で,ふっ素イオン電極,比較電極などから構成される。
4.3.12 ふっ素イオン電極 ふっ素イオン電極は,応答速度が十分に速く,ふっ素イオン濃度の対数変化に
対し,直線的な電位を示すものでなければならない。
4.3.13 増幅器 増幅器は,ふっ素イオン電極と比較電極との間の電位を測定すると同時に,指示記録及び
伝送信号に必要な電気信号が得られるように増幅する。
4.3.14 指示記録計 指示記録計は,ガス状無機ふっ素化合物をふっ素濃度として等分目盛で記録する。
4.3.15 制御器 制御器は,各構成要素に対し信号を発し,各要素の操作を所定のプログラムに従って自動
的に繰り返す機能をもっている。
また,その測定周期は原則として3時間とし,性能低下をきたさない範囲で適宜選ぶことができる。
4.4
吸収液 吸収液は,例えば炭酸ナトリウム溶液 (10g/l) を用いる。
4.5
緩衝液 緩衝液は,0.01mmol/lふっ化ナトリウムを含む溶液で,pHを約5.0〜5.5の範囲に調整する。
(1) 乾式捕集形用緩衝液の調製は,例えば酢酸ナトリウム三水和物100gを水約200mlに溶かした後,酢
酸10mlを加え,水を加えて1lとする。この溶液50mlに0.01mol/lふっ化ナトリウム溶液1mlを加え,
水を加えて1lとする (pH5.3) 。
(2) 湿式捕集形用緩衝液は,吸収液として用いるもので,例えばくえん酸三ナトリウム37gを水に溶かし
酢酸(約11ml)を加え,水を加えて1lとする。この溶液100mlに0.01mol/lふっ化ナトリウム溶液1ml
を加え,水を加えて1lとする (pH5.4)。
5. 吸光光度法
5.1
原理 この方法は,一定量の試料大気中に含まれるガス状無機ふっ素化合物を一定量の吸収発色液
中に捕集溶解させ,この溶液中のふっ素イオン濃度を吸光光度法によって測定して,試料大気中のガス状
無機ふっ素化合物濃度を一定周期ごとに求める。測定周期は原則として3時間とする。
なお,吸収液と発色液を分離したものもある。
備考 この方法では,オゾン,二酸化硫黄,塩素,塩化水素,窒素酸化物などは正の誤差を与え,ア
ンモニアなどは負の誤差を与える。
5.2
性能 計測器は,次の性能を満足していなければならない。
(1) 測定範囲 測定範囲は,4.2(1)の規定による。
(2) 再現性(繰返し性) 再現性は,4.2(2)の規定による。
(3) 指示のふらつき ゼロガスを流した場合の定常的な指示のふらつきは,各測定段階(レンジ)ごとに
最大目盛値の±2%でなければならない。
(4) ゼロドリフト ゼロドリフトは,同一条件(2)でゼロガスを連続的に導入した場合の変動が,24時間に
ついて各測定段階(レンジ)ごとに最大目盛値の±4%でなければならない。
(5) スパンドリフト スパンドリフトは,同一条件(2)でゼロガスを流しながら適時スパン調整用等価液
(6.3の規定による)を導入し,ゼロドリフトを除いたときの変動が,24時間について各測定段階(レ
ンジ)ごとに最大目盛値の±4%でなければならない。
(6) 指示誤差 ゼロ調整及びスパン調整を行った後,中間目盛付近の目盛校正用等価液(6.3の規定による)
を用いて測定した場合,相当するふっ素濃度に対する指示誤差は,各測定段階(レンジ)ごとに最大
6
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目盛値の±5%でなければならない。
(7) 暖機時間 暖機時間は,電源を投入してから,4時間以下で安定し,以後,ゼロドリフト及びスパン
ドリフトについて,5.2(4)及び(5)の規定に適合しなければならない。
(8) 周囲温度変化に対する安定性 周囲温度変化に対する安定性は,周囲温度が使用許容温度範囲内にお
いて±5℃変化しても,5.2(4)及び(5)の規定に適合しなければならない。
(9) 試料大気流量の安定性 試料大気流量の安定性は,4.2(8)の規定による。
(10) 吸収発色液採取量の精度 吸収発色液の設定採取量に対し,繰返し誤差は±4%以内とする。
(11) 電源電圧変動に対する安定性 電源電圧変動に対する安定性は,4.2(10)の規定による。
(12) 伝送出力 伝送出力は,4.2(11)の規定による。
(13) 耐電圧 耐電圧は,4.2(12)の規定による。
(14) 絶縁抵抗 絶縁抵抗は,4.2(13)の規定による。
5.3
構成
5.3.1
構成一般 計測器は,フィルタ,ガス吸収部,流量計,試料大気吸引ポンプ,吸収発色液タンク,
吸収発色液採取供給部,蒸留水タンク,蒸留水供給部,測定セル,増幅器,制御器,指示記録計などから
構成される。
計測器全体の構成の例を図3に示す。
図3 吸光光度式ふっ素化合物自動計測器の構成例
5.3.2
試料大気導入口 試料大気導入口は,4.3.2の規定による。
5.3.3
フィルタ フィルタは,4.3.3の規定による。
5.3.4
流量計 流量計は,4.3.4の規定による。
5.3.5
ガス吸収部 ガス吸収部は,一定量の吸収発色液に一定量の試料大気を接触させ,試料大気中のガ
ス状無機ふっ素化合物を吸収発色液に吸収させる部分である。
5.3.6
試料大気吸引ポンプ 試料大気吸引ポンプは,4.3.6の規定による。
5.3.7
吸収発色液タンク 吸収発色液タンクは,吸収発色液によって侵されず,また,吸収発色液を変質
させない材質のものを使用する。
7
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.3.8
吸収発色液採取供給部 吸収発色液採取供給部は,吸収発色液タンク内の吸収発色液を計量し,ガ
ス吸収部に供給するためのもので,吸収発色液送液ポンプ,吸収発色液計量器,電磁弁などから構成され
る。これらは吸収発色液によって侵されず,また,吸収発色液を変質させない材質のものでなければなら
ない。
5.3.9
測定セル 測定セルは,試料大気中のガス状無機ふっ素化合物吸収後の吸収発色液の吸光度を測定
するためのセルで,光源ランプ,測定波長フィルタ,光電管などと共に光学系を構成する。ここでは,波
長556nm付近で吸光度を測定するものである。
5.3.10 増幅器 増幅器は,比色計からの信号を受けて,指示記録に必要なレベルにまで増幅するためのも
のである。
5.3.11 指示記録計 指示記録計は,4.3.14の規定による。
5.3.12 制御器 制御器は,4.3.15の規定による。
5.4
吸収発色液 吸収発色液は,例えばエリオクロムシアニンR1.8gを水に溶かして1lにしたものと,
別に水酸化ジルコニウム0.13gを塩酸375mlに溶かした後,水で1lとしたものを用意し,それぞれ160ml
ずつとって混合し,水を加えて1lとする。更に約0.01gの消ほう(泡)用乳液を加える。この吸収液は,
調製後1週間以上経過したものは使用してはならない。
なお,吸収液と発色液を分離する場合は,吸収液は例えば0.05mol/lの水酸化ナトリウム溶液を用い,発
色液は吸収発色液を用いる。
6. 操作方法
6.1
設置 計測器の設置の場所は,次の条件を備えることが望ましい。
(1) 振動が少ないこと。
(2) 腐食性ガスや,ほこりがないこと。
(3) 湿度が高くなく,温度変化(4)が少ないこと。
(4) 直射日光が当たらないこと。
(5) 電源の電圧及び周波数の変動が少ないこと。
(6) 試料大気導入管(5)が短くてすむこと。
(7) 保守上障害とならない場所であること。
注(4) 設置場所の温度は,イオン電極法では40℃以下,吸光光度法では35℃以下とする。
(5) 試料大気導入管の材質は,吸着の少ない四ふっ化エチレン樹脂などを用いる。
6.2
測定準備 計測器の各部を点検し,特に空気漏れのないことを確かめてから,所定の順序に従って
電源を入れ,試料大気通気流量の調整その他必要な調整を行う。
6.3
校正方法 計測器の校正方法は,目盛校正用等価液を用いて次の方法で行う。
(1) ゼロ調整 ゼロ調整用等価液を測定セルに入れ,測定回路を作動する。計器指示が安定した時点で,
ゼロ調整を行う。吸光光度法の場合は,同時にゼロガスを設定流量で導入する。
(2) スパン調整 スパン調整用等価液を測定セルに入れ,計器指示が安定した時点で等価液に対応するふ
っ素濃度 (F) を示すようにスパン調整を行う。吸光光度法の場合は,同時にゼロガスを設定流量で導
入する。必要に応じ,(1)及び(2)を繰り返し,ゼロ及びスパンのそれぞれが合うまで行う。
(3) 校正回数 校正回数は,原則として1日1回とする。
備考 ふっ化ナトリウム標準原液,目盛校正用等価液,スパン調整用等価液,ゼロ調整用等価液及び
校正用ガスは次による。
8
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) ふっ化ナトリウム標準原液 130℃で1時間乾燥したふっ化ナトリウム (NaF=41.99) 0.221g
を正しくはかり取り,水(6)に溶かし1lとする。この標準原液は,ポリエチレン瓶中にたくわ
える。ふっ化ナトリウム標準原液1mlは,0.1mgFに相当する。
注(6) 吸光光度法の場合には蒸留水を用いる。
(2) 目盛校正用等価液 次式から求められるふっ化ナトリウム標準原液分取量V (ml) を100ml
の全量フラスコに正しくはかり取り,これに緩衝液又は吸収発色液を加えて100mlとする。
000
1
1
×
×
×
υ
t
f
c
V=
ここに,
V: ふっ化ナトリウム標準原液分取量 (ml)
c: 目盛校正用ふっ化水素濃度,目盛濃度範囲における4〜5段階
(μg/m3)
f: 試料大気吸引流量 (l/min)
t: 試料大気吸引時間 (min)
υ: イオン電極法の場合は計測器に分取される緩衝液の量 (ml)
吸光光度法の場合は,計測器に実際に大気を導入するときの
吸収発色液の量 (ml)
(3) スパン調整用等価液 備考(2)の目盛校正用等価液の調製にある式を用いて,最大目盛指示の
約90%に相当する濃度のふっ化ナトリウム標準原液分取量V (ml) を100mlの全量フラスコに
はかり取り,これに緩衝液又は吸収発色液を加えて100mlとする。
(4) ゼロ調整用等価液 ゼロ調整用等価液は次による。
(a) イオン電極法の場合は緩衝液をそのまま用いる。
(b) 吸光光度法の場合は計測器に実際に大気を導入するときの吸収発色液を用いる。
(5) 校正用ガス 吸光光度法の場合は,原則として,ゼロガスには高純度窒素又は空気を,活性
炭などによって妨害成分を除去して用いる。
6.4
測定 試料大気を設定流量で導入し,連続測定を行う。
7. 保守・点検 必要に応じ,定期的に次の事項を保守・点検する。
(1) サンプリング配管のガス漏れ点検
(2) 吸収液及び緩衝液の補給
(3) フィルタの交換
(4) 試料大気流量の点検
(5) 吸収液及び緩衝液流量の点検
(6) 記録紙の交換
(7) 記録インキの補給
8. 検量線の作成方法 検量線の作成方法は,次のとおりとする。
(1) 6.3に規定する方法に従って,ゼロ調整及びスパン調整を行う。
(2) 測定範囲の41,42及び43付近の濃度の目盛校正用等価液の所定量を測定セルに入れ,それぞれの指示
を取る。
(3) 各等価液に対応するふっ素濃度と指示値との関係から,検量線を作成する。
(4) 検量線の作成は,必要に応じて行う。
9
B 7958-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9. 表示 計測器には,次の事項を表示しなければならない。
(1) 製造業者名又は登録商標
(2) 製造業者が与えている計測器の形名
(3) 器物番号,必要ある場合は相番号又はその略号
(4) 製造年月又はその略号
(5) 測定成分
(6) 測定原理
(7) 測定範囲
(8) 使用周囲温度範囲
(9) 電源の種類,電圧 (V) ,周波数 (Hz) 及び所要電力 (W) 又は皮相電力 (VA)
(10) 必要ある場合は,伝送出力の種類及び仕様を記載した試験成績書を添付する。
(参考)関連法規 高圧ガス取締法(通商産業省)
精密機械部会 HF自動計測器専門委員会 構成表(昭和51年11月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員会長)
柳 沢 三 郎
慶応義塾大学
村 上 徹 朗
工学院大学
若曽根 和 之
工業技術院標準部
八 木 規 夫
通商産業省機械情報産業局
白 井 恒 雄
慶応義塾大学
鈴 木 晃
環境庁大気保全局
中 村 圭 吾
工業技術院公害資源研究所
森 川 武
工業技術院標準部
河 合 隆 昌
日本分析機器工業会
酒 井 馨
株式会社日立製作所
中 沢 章
京都電子工業株式会社
西 山 正 孝
株式会社柳本製作所
填 田 敏 夫
社団法人日本電気計測器工業会
松 前 鼎 一
東亜電波工業株式会社
森 正 樹
電気化学計器株式会社
中 尾 正 三
株式会社環境技術研究所
向 井 孝 一
株式会社日本軽金属総合研究所
(専門委員)
川 口 廣 美
工業技術院標準部
(事務局)
八 田 勲
工業技術院標準部機械規格課
(事務局)
山 本 繁 文
工業技術院標準部繊維化学規格課(昭和55年2月1日改正のとき)
恒 吉 洋
工業技術院標準部繊維化学規格課(昭和55年2月1日改正のとき)
(事務局)
阪 本 公 昭
工業技術院標準部繊維化学規格課(平成7年7月1日改正のとき)
小 川 和 雄
工業技術院標準部繊維化学規格課(平成7年7月1日改正のとき)