B 7923:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 性能······························································································································· 3
5 構成・形状 ······················································································································ 3
6 試験······························································································································· 4
6.1 試験環境 ······················································································································ 4
6.2 模擬皮膚の構造 ············································································································· 5
6.3 試験の準備 ··················································································································· 5
6.4 発汗量指示誤差試験 ······································································································· 6
6.5 応答時間試験 ················································································································ 7
6.6 基線変動試験 ················································································································ 9
7 表示······························································································································· 9
8 取扱説明書 ······················································································································ 9
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法に基づき,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
注記 工業標準化法に基づき行われた日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法等の一
部を改正する法律附則第9条により,日本産業標準調査会の審議等の手続を経たものとみなさ
れる。
日本産業規格 JIS
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換気カプセル形発汗量測定器
Perspiration meter with ventilation capsule
1
適用範囲
この規格は,人体の局所発汗量を測定する業務用の換気カプセル形発汗量測定器(以下,測定器という。)
について規定する。ただし,医療用は除く。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 7611-1 非自動はかり−性能要件及び試験方法−第1部:一般計量器
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS Z 8103 計測用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8103によるほか,次による。
3.1
発汗
精神的刺激,暑熱性刺激などによって皮膚から水分が発生すること。
注記 皮膚表面から発生する水分には,精神的刺激,暑熱性刺激など中枢の関与によって発生する水
分と,快適環境において中枢の関与によらず皮膚から自然発生する微量な水分(不感蒸散)と
がある。ここでは,前者を発汗という。
3.2
精神性発汗
緊張,動揺などしたときに,手掌部又は足底部から出現する発汗。精神性発汗は,様々な精神的刺激に
対応して瞬時に出現する。
注記 “手に汗握る”と表現されるように精神性発汗と情動との関係が認識されている。測定器によ
る精神性発汗量の測定値を,車両操作時,危険作業時などでのヒヤリハットなど,ヒトの危険
認知を客観的に評価するための一指標にするとともに,ストレスなどの情動変化の簡便な評価
に用いる場合がある。
3.3
温熱性発汗
暑熱性刺激又は運動時に,手掌部及び足底部を除く全身から出現する発汗。
注記 測定器による温熱性発汗量の測定値を,生活環境又は衣服の快適性評価の一指標として用いる
2
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とともに,入浴時の温浴効果などを評価するための一指標として用いる場合がある。
3.4
発汗量
発汗によって皮膚から発生する水分の量。単位は,ミリグラム(mg)。
3.5
局所発汗量
単位面積(cm2)の皮膚における単位時間(min)当たりの発汗量(mg)。単位は,ミリグラム毎平方セ
ンチメートル毎分[mg/(cm2・min)]。
3.6
換気カプセル形発汗量測定器
カプセル(3.7参照)で密閉した皮膚から,局所発汗量[mg/(cm2・min)]を測定して表示・出力する装置。
3.7
カプセル
皮膚を覆い,皮膚表面からの発汗による水分を,キャリアガス(3.8参照)に混合させ,計測部へ適切に
輸送するための測定器の皮膚装着部。
3.8
キャリアガス
皮膚表面からの発汗による水分を計測部に輸送するためのガス。キャリアガスは,試験環境[6.1 a)及び
b)参照]状態の室内空気。
3.9
測定値
計測部で測定された発汗量に相当する値。単位は,ミリグラム毎平方センチメートル毎分[mg/(cm2・min)]。
3.10
測定積分値,Si
測定時間t(min)における測定値の積分値。単位は,ミリグラム毎平方センチメートル(mg/cm2)。
3.11
基線状態
カプセル開口部を閉鎖した状態において閉鎖空間における水分蒸散がなく,キャリアガスがカプセルを
通過する前後における湿度差がない状態。
3.12
基線
基線状態の測定値。通常は0 mg/(cm2・min)で示す。
3.13
基線調整
基線状態にあるとき,測定値を (0.00 mg±0.01 mg)/(cm2・min) に調整すること。
3.14
基線変動
基線調整を実施した後,長時間作動した場合に起こり得る基線の経時的な変動。
3.15
平衡状態
3
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カプセル開口部を閉鎖した状態において閉鎖空間で一定の水分蒸散があり,測定値がある一定の値とな
る状態。
3.16
応答時間
カプセル開口部を閉鎖した状態において,基線状態から平衡状態まで瞬時に移行した場合の測定値の立
上り時間又は平衡状態から基線状態まで瞬時に移行した場合の測定値の立下り時間のいずれか長い方の時
間。
注記 立上り時間とは,平衡状態の測定値の10 %の値から90 %の値まで変化するのに要する時間を
いい,立下り時間とは,平衡状態の測定値の90 %の値から10 %の値まで変化するのに要する
時間をいう(図6参照)。
3.17
模擬皮膚
水分を含み,その水分は限定された部分だけから蒸散する構造をもつシート。測定器の性能試験に使用
される。
4
性能
測定器の性能は,箇条6の試験を行ったとき,表1を満足しなければならない。
表1−測定器の性能
項目
性能値
試験方法
発汗量指示誤差
±10 %
6.4
応答時間
10 s以内
6.5
基線変動
±0.05 mg/(cm2・min)
6.6
5
構成・形状
測定器の構成例を,図1に示す。基本的な構成として,キャリアガスを供給する送ガス部,キャリアガ
スの湿度を測定するセンサ部1及びセンサ部2,それらのセンサ部で測定された湿度から発汗量を求める
演算部並びに測定値の表示及び出力を行う出力部で,次によって構成する。
図1−測定器の構成例
a) カプセル 皮膚に密着させるカプセルは,キャリアガスと皮膚表面から発生する発汗による水分とを
混合する空間をもつものとする。センサ部にキャリアガス回路を通して接続するカプセルは,次によ
4
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る。
1) カプセルは,手掌,足底,胸,背中,額など(表2参照)に確実に装着できなければならない。
2) 測定部位に装着して皮膚を密閉する開口部面積Ocは,100.0 mm2±0.5 mm2(1.000 cm2±0.005 cm2)
を標準とするが,測定目的によっては開口部面積Ocを変更してもよい。この場合は,カプセルなど
に開口部面積Ocを明記しなければならない。カプセルの例を,図2に示す。
表2−代表的な測定部位(参考)
測定部位
特徴
手掌,足底
精神性発汗の発生部位。
胸,背中,前腕
温熱性発汗の測定部位として代表的であり,発汗量が多い。
額(頭部)
発汗量が多く,比較的早く温熱性発汗が始まる。
図2−カプセルの例
b) センサ部1 カプセル流入前のキャリアガスの湿度を測定できるもの。
c) センサ部2 カプセル流入後の発汗による水分を含むキャリアガスの湿度を測定できるもの。
d) 送ガス部 カプセル及びセンサ部にキャリアガスを供給するもの。キャリアガスは,人体に対して障
害を与えるものであってはならない。
e) 計測部 カプセルに供給するキャリアガスの湿度及びカプセルから吸引した発汗による水分を含むキ
ャリアガスの湿度を計測し,発汗量に換算して表示及び出力できるもの。
f)
演算部 センサ部で測定したキャリアガスの湿度から,局所発汗量を算出できるもの。
g) 出力部 測定値を次のように出力・記録できるもの。
1) 出力・記録した測定値を時系列の波形として表示する機能を備えることが望ましい。その際,測定
値のサンプリング周期は,0.1 s以下であることが望ましい。
2) 2か所以上の部位を同時に測定する場合は,各測定値を同時間軸上に表示できる機能を備えること
が望ましい。
6
試験
6.1
試験環境
特に指定がない限り,試験環境は,次による。
5
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a) 温度:23.5 ℃±3.0 ℃
b) 相対湿度:(60±10) %
c) 風速:0.5 m/s以下
6.2
模擬皮膚の構造
模擬皮膚の構造は,次による。
a) 模擬皮膚の構造及び作製例を,図3に示す。水分を含み,その水分は限定された部分だけから蒸散す
るシートであり,容易に水分蒸散量を測定できる。具体的には,1か所だけに開口部をもつポリエチ
レンテレフタレート(PET)シート及び開口部のないPETシートでろ紙を挟み,パウチ加工によって
密閉したものとする。
b) 模擬皮膚開口部の面積は,カプセル開口部面積Ocに対して,次の3種類とする。
1) (50±5) %
2) (25±5) %
3) (13±5) %
c) カプセル開口部面積Ocが1 cm2である測定器の性能試験を実施する場合の模擬皮膚の作製例を,図3 b)
に示す。ろ紙の種類は,JIS P 3801で規定する1種を使用し,ろ紙の大きさは,(35 mm±1 mm)×(35 mm
±1 mm)とする。
なお,カプセル開口部面積Ocが1 cm2ではない場合には,1 cm2に対する割合に応じてろ紙の大き
さ(面積)を,拡大又は縮小する。例えば,カプセル開口部面積Ocが2 cm2である場合には,おおよ
そ2倍に変更するのがよい。
d) ろ紙を完全に密閉するよう,ろ紙の位置を,PETシートの縁から10 mm以上内側に配置し,かつ,PET
シートの開口部がろ紙の中心付近になるように調整する。PETシートの厚さは,約0.15 mmとする。
単位 mm
a) 構造
b) 作製例
図3−模擬皮膚の構造及び作製例
6.3
試験の準備
次によって,試験の準備をする。
a) 各試験を実施する際は,測定器,電子天びん(秤)などの試験に使用する機器,用具などは電源を投
入して,試験環境に30 min〜60 min間静置する。
b) 各試験を実施する際は,試験の都度,測定器を基線状態で基線調整を行い,基線を確認する。基線は
(0.00 mg±0.01 mg)/(cm2・min)とする。
6
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6.4
発汗量指示誤差試験
発汗量指示誤差試験は,次による。
a) 試験環境 次の三つの条件とする。
1) 6.1による。
2) 6.1 c)の風速,箇条8 c)の使用温度範囲の上限温度及び使用湿度範囲の上限湿度
3) 6.1 c)の風速,箇条8 c)の使用温度範囲の下限温度及び使用湿度範囲の下限湿度
b) 器具 器具は,次による。
1) 電子天びん 最小表示が0.01 mg以下で,JIS B 7611-1に規定する機器又はそれと同等以上の精度を
もつもの。
2) 模擬皮膚 6.2に規定するもので,開口部面積は,6.2 b) 1)及び6.2 b) 2)の2種類とする。
c) 試験方法 測定時間t(min)における模擬皮膚からの蒸散水分量の電子天びんによる測定値(mg)を
カプセル開口部面積Oc(cm2)で除した値(mg/cm2)と,その測定時間t(min)における測定器の測
定積分値Si(mg/cm2)とを比較し,測定器の指示誤差A(%)を求める。試験の概要を,図4に示す。
電子天びんは,模擬皮膚の質量を可及的速やかに測定できる位置に配置する。また,模擬皮膚は,電
子天びんと同一の環境に置かなくてもよいが,それぞれの温度差は10 ℃以上あってはならない。
d) 試験手順 測定時間t(min)を10 min±1 minとして,次の手順に従い試験をする。
なお,カプセル開口部面積Ocが1 cm2ではない場合には,1 cm2に対する割合に応じて維持する含
水量及び供給する水分量を増減する。例えば,カプセル開口部面積Ocが2 cm2である場合には,次の
2)及び4)に規定する含水量並びに供給する水分量をおおよそ2倍に変更するのがよい。
1) 乾燥状態の模擬皮膚の質量M0(mg)を電子天びんで測定する。
2) 乾燥状態の模擬皮膚の開口部に精製水を140 mg±10 mg供給し,20 min〜30 min間静置する。PET
シートに水分が付着した場合は取り去る。
3) 基線状態で基線調整を行い,基線を確認する。
4) 模擬皮膚の質量M1(mg)を電子天びんで測定する。質量M0(mg)に対する含水量が110 mg以下
であるときには,含水量が140 mg±10 mgとなるように模擬皮膚の開口部に精製水を供給し,再度,
模擬皮膚の質量M1(mg)を測定する。
なお,PETシートに水分又は異物が付着している場合には,それらを取り去ってから模擬皮膚の
質量M1(mg)を測定しなければならない。
5) 模擬皮膚の質量M1(mg)を測定してから30 s以内に,カプセルの開口部を模擬皮膚に密着させる。
このとき,模擬皮膚開口部が,カプセル開口部の内側になければならない。カプセル及び模擬皮膚
を固定するジグなどを作製して使用することが望ましい。図5に固定ジグの作製及び使用例を示す。
6) 測定時間t(min)経過後,模擬皮膚からカプセルを取り外し,模擬皮膚の質量M2(mg)を電子天
びんで測定する。測定は,模擬皮膚からカプセルを取り外した後1 min以内に行わなければならな
い。
7) 測定時間t(min)と測定値とで囲まれる面積によって測定積分値Siを求める。
8) 次の式から,指示誤差A(%)を求める。
(
)
(
)
1
2
c
1
2
c
/
100
/
iS
M
M
O
A
M
M
O
−
−
=
×
−
e) d) 3)〜d) 8)を5回繰り返し,絶対値で5回のA(%)の最大値を求める。
なお,5回の測定に用いる模擬皮膚は,同一のものでなければならない。
7
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1:模擬皮膚の質量M1(mg)を電子天びんで測定する。その後にカプセルの開口部を模擬皮膚に密着させる(測
定時間tの始点)。
2:模擬皮膚からカプセルを取り外す(測定時間tの終点)。その後に模擬皮膚の質量M2(mg)を電子天びんで測
定する。
図4−発汗量指示誤差試験の概要
a) ジグの作製例
b) ジグの使用例
図5−固定ジグの作製及び使用例
6.5
応答時間試験
応答時間試験は,次による。
a) 器具 器具は次による。
1) 電子天びん 6.4 b) 1)による。
2) 模擬皮膚 6.2に規定するもので,開口部面積は,6.2 b) 3)とする。
8
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b) 試験手順 試験の概要を,図6に示す。次の手順に従い,試験をする。
1) 乾燥状態の模擬皮膚の開口部に精製水を140 mg±10 mg供給し,20 min〜30 min間静置する。
2) 模擬皮膚上において基線状態で基線調整を行い,基線を確認する。
3) カプセルを模擬皮膚の開口部に瞬時に移動し,測定値の立上りの様子を連続的に記録する。
4) 測定値の平衡状態を確認するまで,30 s以上測定を継続する。
5) カプセルを模擬皮膚の開口部から瞬時に外し,基線状態に戻し,測定値の立下りの様子を連続的に
記録する。
6) 立上り時間及び立下り時間を測定し,応答時間を求める。
2)〜5)の間,カプセルと模擬皮膚との間に隙間ができてはならない。カプセル及び模擬皮膚を固定
するジグなどを作製して使用することが望ましい。図7に固定ジグの作製及び使用例を示す。
1:カプセルを模擬皮膚の開口部に瞬時に移動する。
2:カプセルを模擬皮膚の開口部から瞬時に外す。
図6−応答時間試験の概要
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a) ジグの作製例
b) ジグの使用例
図7−固定ジグの作製及び使用例
6.6
基線変動試験
基線変動試験の試験手順は,次による。
a) 基線状態で基線調整を行い,基線を確認する。
b) 基線状態のままで,測定器を8 h連続で動作させ,その間における基線を連続的に記録し,基線の最
大変動幅を求める。
7
表示
測定器には,見やすい箇所に容易に消えない方法で次の事項を表示する。
なお,これらの表示は,1か所にまとめて表示しなくてもよい。
a) 名称及び製造業者の形名
b) 定格電圧,定格周波数及び消費電力
c) 製造業者名又はその略号
d) 製造年月又はその略号
e) 製造番号
8
取扱説明書
取扱説明書には,少なくとも次の事項を記載しなければならない。
a) 測定の準備
1) 測定操作・装着方法 装着方法としては,測定部位へのカプセルの固定について標準的な方法(例
えば,カプセル開口部相当の穴の開いた両面テープでカプセルを固定するなど,皮膚に圧力が加わ
らない装着方法)を明記しなければならない。また,測定中にカプセルが外れたときの影響を明記
しなければならない。
2) 準備に関わるその他の必要な事項
b) 保守点検
1) 日常点検の指針
2) 定期点検の指針
3) 流路系の清掃
c) 使用環境(使用温度・湿度範囲)
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d) 発汗量指示誤差に関する事項
注記 製造業者が定める測定器の最大指示誤差などが,該当する。
e) カプセル開口部面積Oc
f)
その他の必要な事項