B 7441
:2009
(1)
目 次
ページ
1
適用範囲
1
2
引用規格
1
3
用語及び定義
1
4
測定特性に対する要求事項
2
4.1
球面形状測定誤差
2
4.2
球直径測定誤差
2
4.3
平面形状測定誤差
3
4.4
球間距離測定誤差
3
4.5
寸法測定誤差
3
4.6
環境条件
3
5
受入検査及び定期検査
3
5.1
一般事項
3
5.2
球面形状測定誤差及び球直径測定誤差
4
5.3
平面形状測定誤差
5
5.4
球間距離測定誤差
7
5.5
寸法測定誤差
9
6
仕様への適合
11
6.1
球面形状測定及び球直径測定の場合
11
6.2
平面形状測定の場合
11
6.3
球間距離測定の場合
12
6.4
寸法測定の場合
12
7
適用事例
13
7.1
受入検査
13
7.2
定期検査
13
7.3
中間検査
13
附属書 A(参考)非接触座標測定機本体部の各種形式
14
附属書 B(参考)面内分解能及びフィルタの評価
16
附属書 C(参考)検査用標準器
20
附属書 D(参考)検査用標準平面の長さが短い場合の注意点
22
附属書 E(参考)球間距離測定用標準器の球間距離が短い場合の注意点
24
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
日本工業規格
JIS
B
7441
:2009
非接触座標測定機の受入検査及び定期検査
Acceptance and reverification tests for coordinate measuring machines
(CMM) with non-contacting probing systems
1
適用範囲
この規格は,対象物の形状を多点群の三次元座標値として取得できる非接触座標測定機の受入検査及び
定期検査について規定する。
測定機は,イメージセンサ(CCD カメラなど)のほかに,測定のために物体表面にパターン・テクスチ
ャを投影するプロジェクタ,レーザ光を照射するシステムなどをもつ光学式センサ,そのほかの手法によ
る非接触プロービングシステムを備えたものとする(
附属書 A 参照)。光学式センサの具体例として,レ
ーザスリットスキャン,しま(縞)投影,スポット光投影,モアレ方式などがある。また,この規格は,
移動機構をもつ測定機及びもたない測定機のどちらにも適用できる。さらに,移動機構をもたない測定機
の測定結果をマーカ,ソフトウェアなどを用いてつなぎ合わせをした場合の評価にも適用できる。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 0641-1
製品の幾何特性仕様 (GPS)−製品及び測定装置の測定による検査−第 1 部:仕様に対す
る合否判定基準
JIS B 0672-1
製品の幾何特性仕様 (GPS)−形体−第 1 部:一般用語及び定義
JIS B 7440-1
製品の幾何特性仕様 (GPS)−座標測定機 (CMM) の受入検査及び定期検査−第 1 部:
用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0641-1,JIS B 0672-1 及び JIS B 7440-1 によるほか,次に
よる。
3.1
球面形状測定誤差 P
FS
(error of spherical form measurement)
非接触座標測定機において,検査用標準球上の測定点の最小二乗法による近似によって決定される中心
から各測定点までの距離の範囲。
注記 球面形状測定誤差 P
FS
は,JIS B 7440-1 に定義するプロービング誤差 P と一致する。
3.2
球直径測定誤差 P
S
(error of diameter measurement)
非接触座標測定機において,検査用標準球上の測定点の最小二乗法による近似によって決定される直径
2
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とその校正値との差。
3.3
平面形状測定誤差 P
FF
(error of flat form measurement)
非接触座標測定機において,検査用標準平面上の測定点の最小二乗法による近似によって決定される平
面に平行な 2 平面ですべての測定点を挟んだときの 2 平面の間隔。
3.4
球間距離測定誤差 E
S
(error of sphere-spacing measurement)
非接触座標測定機において,球間距離測定用標準器の二つの球の中心間距離の測定値とその校正値との
差。
3.5
寸法測定誤差 E (error of indication of a CMM for size measurement)
非接触座標測定機において,寸法測定用標準器の寸法を測定したときの指示誤差。
注記 寸法測定誤差 E は,JIS B 7440-1 に定義する寸法測定における座標測定機の指示誤差 E と一致
する。
3.6
最大許容誤差 (maximum permissible error)
非接触座標測定機の仕様,規定などによって許容する,それぞれの誤差の限界値。最大許容誤差には,
次のものがある。
a)
最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
(maximum permissible error of spherical form measurement)
b)
最大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
(maximum permissible error of diameter measurement)
c)
最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
(maximum permissible error of flat form measurement)
d)
最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
(maximum permissible error of sphere-spacing measurement)
e)
最大許容寸法測定誤差 E
MPE
(maximum permissible error of indication of a CMM for size measurement)
3.7
つなぎ合わせ (merging of measurement data)
マーカ,ソフトウェアなどを用いて複数の測定結果をつなぎ合わせること。
4
測定特性に対する要求事項
4.1
球面形状測定誤差
球面形状測定誤差 P
FS
は,受入検査の場合には製造業者が指定し,定期検査の場合には使用者が指定す
る最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
を超えてはならない。製造業者又は使用者は,限定された測定空間に
ついての最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
を小さくしてもよい。また,対象物表面における三次元座標値
の取得方法及び検査条件を報告書に記載しなければならない。
球面形状測定誤差 P
FS
及び最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
は,
μm 単位で表示する。
4.2
球直径測定誤差
球直径測定誤差 P
S
は,受入検査の場合には製造業者が指定し,定期検査の場合には使用者が指定する最
大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
を超えてはならない。製造業者又は使用者は,限定された測定空間について
の最大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
を小さくしてもよい。また,対象物表面における三次元座標値の取得方
法及び検査条件を報告書に記載しなければならない。
球直径測定誤差 P
S
及び最大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
は,
μm 単位で表示する。
3
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4.3
平面形状測定誤差
平面形状測定誤差 P
FF
は,受入検査の場合には製造業者が指定し,定期検査の場合には使用者が指定す
る最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
を超えてはならない。製造業者又は使用者は,限定された測定空間に
ついての最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
を小さくしてもよい。また,対象物表面における三次元座標値
の取得方法及び検査条件を報告書に記載しなければならない。
平面形状測定誤差 P
FF
及び最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
は,
μm 単位で表示する。
4.4
球間距離測定誤差
球間距離測定誤差 E
S
は,受入検査の場合には製造業者が指定し,定期検査の場合には使用者が指定する
最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を超えてはならない。製造業者又は使用者は,限定された測定空間につ
いての最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を小さくしてもよい。また,対象物表面における三次元座標値の
取得方法及び検査条件を報告書に記載しなければならない。
球間距離測定誤差 E
S
及び最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
は,
μm 単位で表示する。
4.5
寸法測定誤差
寸法測定誤差 E は,受入検査の場合には製造業者が指定し,定期検査の場合には使用者が指定する最大
許容寸法測定誤差 E
MPE
を超えてはならない。製造業者又は使用者は,限定された測定空間についての最大
許容寸法測定誤差 E
MPE
を小さくしてもよい。また,対象物表面における三次元座標値の取得方法及び検査
条件を報告書に記載しなければならない。
この検査の実施は任意とし,受渡当事者間の協定に基づいて行う。
寸法測定誤差 E 及び最大許容寸法測定誤差 E
MPE
は,
μm 単位で表示する。
4.6
環境条件
測定に影響を与える設置場所の温度条件,湿度,振動,外乱光の状態などの環境条件の許容限界は,受
入検査の場合には,製造業者が指定し,定期検査の場合には,使用者が指定する。いずれの場合にも,使
用者は許容限界内において自由に環境条件を選ぶことができる。
5
受入検査及び定期検査
5.1
一般事項
受入検査は,製造業者が指定した仕様及び手順に基づいて行い,定期検査は,使用者が指定した仕様及
び製造業者が指定した手順に基づいて行う。例えば,次の事項などである。
a)
非接触座標測定機の電源を入れ,測定の準備をする。
b)
標準器を固定する。標準器は変形による影響を避けることができるように保持・固定しなければなら
ない。
c)
測定のためのパラメータ設定などを行う。
必要な情報は,製造業者が提供する。検査の間は,製造業者が指定した環境及び運用条件に適合してい
るかどうかを確認する。
受入検査及び定期検査における評価は,
“つなぎ合わせをしない場合”と,
“つなぎ合わせをする場合”
とがある。どちらの評価を行うかは,測定機の機能による。測定機が機能をもち,どちらの測定評価も可
能である場合には,両方の評価を行わなければならない。
受入検査及び定期検査における測定点のうち,明らかに外乱によるノイズであると分かる測定点は,受
渡当事者間の協定に基づいて,手動で取り除くことができる。
4
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測定点に対するフィルタ処理は,検査条件として定義される範囲,又は装置の通常使用される範囲まで
であれば許容できる。フィルタの処理方法は使用者に報告しなければならない。必要であれば,使用者が
異なるフィルタ処理について要求した場合には,製造業者はこれについても評価を行わなければならない
(
附属書 B 参照)。
その他,フィルタ以外の手法を用いた測定点の除去又は補間処理については,受渡当事者間の協定に基
づいて,行うことができる。
温度補正機能をもつ測定機の場合は,温度補正を行ってもよい。温度補正機能のない測定機の場合は,
温度補正は手動で行ってはならない。
5.2
球面形状測定誤差及び球直径測定誤差
5.2.1
一般
球面形状測定誤差 P
FS
及び球直径測定誤差 P
S
は,非接触座標測定機のシステム全体の狭い測定範囲にお
ける測定誤差とみなす。球面形状測定誤差 P
FS
は,対象物表面における三次元座標値取得点のばらつきの
範囲を評価する。球直径測定誤差 P
S
は,検査用標準球の表面特性の影響と狭い測定範囲における寸法測定
特性を評価する。
5.2.2
評価器具
評価器具として,検査用標準球を使用する(
附属書 C 参照)。検査用標準球は,セラミックス,鋼,ア
ルミニウムなどの適切な材料で製作し,光学的に均一な拡散表面をもつ球で,直径が使用する測定機の測
定領域の対角長さの 2 %∼20 %の大きさをもつことが望ましい。使用した球の直径は,報告書に記載しな
ければならない。光学特性によって球面形状測定誤差 P
FS
及び球直径測定誤差 P
S
の値が異なるため,検査
用標準球の材料及び表面の光学特性は報告書に記載しなければならない。製造業者が検査用標準球の材料
及び表面の光学特性の指示をしなかった場合,これらは使用者が任意に選択できる。また,仕様との合致
を判定する場合には,検査用標準球の直径及び真円度を校正し,その校正の不確かさを考慮しなければな
らない。
5.2.3
評価方法
5.2.3.1
つなぎ合わせをしない場合
球面形状測定誤差 P
FS
及び球直径測定誤差 P
S
の評価は,測定機の測定範囲内の任意の位置において検査
用標準球を測定して行う。このとき,異なる五つの位置で測定する。例えば,測定範囲の中心及び各頂点
付近で測定することを推奨する(
図 1 参照)。検査用標準球表面で座標値を取得し評価する点数の合計は
25
点以上でなければならないが,最大点数は制限しない。
5.2.3.2
つなぎ合わせをする場合
5.2.3.1
と同様の測定を行うが,検査用標準球を一つの位置に設置し,二つ以上の異なる位置に光学式セ
ンサなどを移動させて測定し,球面形状測定誤差 P
FS
及び球直径測定誤差 P
S
を算出する。
5
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注記 測定領域における,中心 (①) 及び各頂点付近 (②∼⑤) に配置する。
図 1−検査用標準球の配置及び姿勢
5.2.4
検査結果の求め方
それぞれの測定位置において,球面形状測定誤差 P
FS
及び球直径測定誤差 P
S
を次のとおり算出する。
a)
球面形状測定誤差 P
FS
評価に用いる測定点から最小二乗球の中心座標を計算した後,最小二乗球の
算出に用いたすべての測定点に対して最小二乗球の中心からの距離 R を計算する。最小二乗球の中心
からの距離 R の範囲 (R
max
−R
min
)
を計算し,これを球面形状測定誤差 P
FS
とする。
b)
球直径測定誤差 P
S
評価に用いる測定点から,最小二乗球の直径値 D
mea
を計算する。検査用標準球の
直径の校正値 D
cal
と測定から得られた D
mea
との差 (D
mea
−D
cal
)
を計算し,これを球直径測定誤差 P
S
と
する。
5.3
平面形状測定誤差
5.3.1
一般
平面形状測定誤差 P
FF
は,検査用標準平面を測定し,検査用標準平面上の測定点の最小二乗法による近
似によって決定される平面に平行な 2 平面ですべての測定点を挟んだときの 2 平面の間隔である。この測
定は,測定機を検査する全測定領域内で行わなければならない。
5.3.2
評価器具
評価器具として,検査用標準平面を使用する(
附属書 C 参照)。検査用標準平面は,セラミックス,鋼,
アルミニウムなどの適切な材料で製作し,光学的に均一な拡散表面をもつ長方形の平面でなければならな
い。検査用標準平面の幅,長さ,材料及び表面の光学特性は,報告書に記載しなければならない。検査用
標準平面の表面粗さは,最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
の 10 %未満でなければならない。製造業者が
検査用標準平面の材料及び表面の光学特性の指示をしなかった場合,
これらは使用者が任意に選択できる。
検査用標準平面の幅及び長さはそれぞれ,使用する測定機の測定領域の各辺における測定可能な最大長さ
の少なくとも幅は 5 %,長さは 66 %以上であることが望ましい。
仕様との合致を判定する場合には,検査用標準平面を校正し,その校正の不確かさを考慮しなければな
らない。
5.3.3
評価方法
5.3.3.1
つなぎ合わせをしない場合
平面形状測定誤差 P
FF
の評価は,全測定領域内において検査用標準平面を六つの位置及び姿勢で測定し
6
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て行う。次に示す配置を推奨する(
図 2 参照)。検査用標準平面の表面で座標値を取得し評価する点数の合
計は 25 点以上でなければならないが,最大点数は制限しない。
注記 1 測定領域における,前 (①),中央 (②) 及び後ろ (③) に配置する。
注記 2 測定平面を対角 F-H に平行 (④) 及び A-C に平行 (⑤) に配置する。
注記 3 測定平面を測定領域の一つの空間対角[例えば,A-G (⑥)]に配置する。
図 2−検査用標準平面の配置及び姿勢
使用する検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に満たない場合
は,検査用標準平面を姿勢変化なく各方向に沿って移動させ,各辺の長さの 66 %以上となる領域内で数回
に分けて測定を行わなければならない(
図 3 参照)。
図 3−検査用標準平面の長さが測定可能な最大長さの 66 %以下である場合の測定例
5.3.3.2
つなぎ合わせをする場合
5.3.3.1
と同様の測定を行うが,検査用標準平面を一つの位置に設置し,二つ以上の異なる位置に光学式
センサなどを移動させて測定し,平面形状測定誤差 P
FF
を算出する。
使用する検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に満たない場合
7
B 7441
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は,検査用標準平面を姿勢変化なく各方向に沿って移動させ,各辺の長さの 66 %以上となる領域内で数回
に分けて測定を行わなければならない(
図 3 参照)。
5.3.4
検査結果の求め方
それぞれの配置の測定面に対して,最小二乗平面を決定する。最小二乗平面から各測定点への距離を計
算する。平面形状測定誤差 P
FF
は,それぞれの測定点から最小二乗平面までの符号付距離 N の範囲 (N
max
−N
min
)
である(
図 4 参照)。これは検査用標準平面上の測定点の最小二乗法による近似によって決定され
る平面と平行な 2 平面ですべての測定点を挟んだときの 2 平面の間隔に等しい。
使用した検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %以下であった場
合には,平面形状測定誤差 P
FF
は,数回に分けて行った測定結果の最大値である。
注記 使用した検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %以下で
あった場合は,平面形状測定誤差 P
FF
を過小評価する危険性がある(
附属書 D 参照)。
図 4−平面形状測定誤差の求め方
5.4
球間距離測定誤差
5.4.1
一般
球間距離測定誤差 E
S
の測定は,測定機の検査する全測定領域内で行わなければならない。
5.4.2
評価器具
評価器具として,球間距離測定用標準器を使用する(
附属書 C 参照)。球間距離測定用標準器は,セラ
ミックス,鋼,アルミニウムなどの適切な材料で製作した二つの球とそれを支える支持棒(
図 5 参照)と
をもつボールバーである。測定する球の表面は,光学的に均一な拡散表面であることが望ましい。球間距
離測定用標準器の球の直径,球間距離,材料及び表面の光学特性は,報告書に記載しなければならない。
球間距離測定用標準器の球間距離 L
P
は,使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの 66 %以
上であることが望ましい。球の直径 D
P
は,使用する測定機の測定領域の対角長さの 2 %∼20 %の大きさを
もつことが望ましい。
仕様との合致を判定する場合には,球間距離測定用標準器を校正し,その校正の不確かさを考慮しなけ
ればならない。
8
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図 5−球間距離測定用標準器
5.4.3
評価方法
5.4.3.1
つなぎ合わせをしない場合
球間距離測定誤差 E
S
の評価は,全測定領域内において球間距離測定用標準器を 7 種類の位置及び姿勢で
測定して行う。その評価に対して,次の球間距離測定用標準器の配置及び姿勢を推奨する(
図 6 参照)。球
間距離測定用標準器のそれぞれの球表面で座標値を取得し評価する点数の合計は 25 点以上でなければな
らないが,最大点数は制限しない。
使用する球間距離測定用標準器の球間距離 L
P
が使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの
66 %
に満たない場合は,球間距離測定用標準器を姿勢変化なく移動させ,各辺の長さの 66 %以上となる領
域内で数回に分けて測定を行わなければならない(
図 7 参照)。このとき,1 回の距離は,使用する球間距
離測定用標準器の球間距離 L
P
を超えてはならない。
注記 1 測定領域の縦方向 (①),横方向 (②) 及び奥行き
方向 (③) に配置する。
注記 2 測定領域の境界平面における前 (④),後 (⑤) 及び
横 (⑥) のそれぞれ一つの空間対角に配置する。
注記 3 測定領域の一つの空間対角[例えば,B-H (⑦)]
に配置する。
注記 図中では④-2 及び④-4 における球間距離測定用
標準器の配置を奥行き方向にずらして表示して
いるが,実際には同一直線上に配置する。
図 6−球間距離測定用標準器の配置及び姿勢
図 7−球間距離測定用標準器の長さが測定可能な
最大長さの 66 %以下である場合の測定例
9
B 7441
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5.4.3.2
つなぎ合わせをする場合
5.4.3.1
と同様の測定を行うが,球間距離測定用標準器を一つの位置に設置し,二つ以上の異なる位置に
光学式センサなどを移動させて測定し,球間距離測定誤差 E
S
を算出する。
使用する球間距離測定用標準器の球間距離 L
P
が使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの
66 %
に満たない場合は,球間距離測定用標準器を姿勢変化なく移動させ,各辺の長さの 66 %以上となる領
域内で数回に分けて測定を行わなければならない(
図 7 参照)。このとき,1 回の距離が,使用する球間距
離測定用標準器の球間距離 L
P
を超えてはならない。
5.4.4
検査結果の求め方
球間距離測定誤差 E
S
を決定するために,最小二乗球へのあてはめを行う。それぞれの球の中心位置を最
小二乗球から決定し,球間距離 L
mea
を測定した球の中心間距離として算出する。算出した測定値 L
mea
と校
正値 L
cal
との差 (L
mea
−L
cal
)
を計算し,非接触座標測定機の球間距離測定誤差 E
S
とする。
寸法測定誤差 E の評価は任意であるが,これを行う場合には,寸法測定誤差 E の値を球間距離測定誤差
E
S
の値として代用してもよい。
使用した球間距離測定用標準器の球間距離 L
P
が測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に
満たない場合は,その辺に対しての球間距離測定誤差 E
S
は数回に分けたそれぞれの測定誤差の和である
(
附属書 E 参照)。
5.5
寸法測定誤差
5.5.1
一般
寸法測定誤差 E は,寸法測定用標準器を測定したときの測定値とその校正値との差によって定義する。
この測定は,測定機の検査する全測定領域内で行わなければならない。この誤差は,測定領域内の寸法測
定に関する誤差を評価する。この検査の実施は,任意とし,受渡当事者間の協定に基づいて行わなければ
ならない。
5.5.2
評価器具
評価器具として,寸法測定用標準器を使用する(
附属書 C 参照)。寸法測定用標準器は,セラミックス,
鋼,アルミニウムなどの適切な材料で製作した 2 球間又は 2 平面にて距離を定義できるゲージである。被
測定領域が光学的に均一な拡散表面をもつボールバー(ボールプレートも代用できる。
)を強く推奨する。
また,ブロックゲージ,ステップゲージも使用できるが,測定する標準器の表面は,光学的に均一な拡散
表面であることが望ましい。寸法測定用標準器の呼び寸法,材料及び表面の光学特性は,報告書に記載し
なければならない。
寸法測定用標準器の最小寸法 L
E,min
は,使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの 10 %以下
であり,最大寸法 L
E,max
は,使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの 66 %以上であることが
望ましい。
仕様との合致を判定する場合には,寸法測定用標準器を校正し,その校正の不確かさを考慮しなければ
ならない。
5.5.3
評価方法
5.5.3.1
つなぎ合わせをしない場合
つなぎ合わせをしない測定の場合,この検査は実施しない。
注記 移動機構をもたない測定機の場合,つなぎ合わせをしなければ寸法測定用標準器の寸法を測定
することはできない。
10
B 7441
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5.5.3.2
つなぎ合わせをする場合
寸法測定用標準器を一つの位置に設置し,二つ以上の異なる位置に光学式センサなどを移動させて測定
し,寸法測定誤差 E を算出する。
寸法測定誤差 E の評価は,全測定領域内において最小寸法 L
E1
(L
E,min
)
から最大寸法 L
E5
(L
E,max
)
までの長
さの異なる 5 種類の寸法測定用標準器 (L
E1
<L
E2
<L
E3
<L
E4
<L
E5
)
を 7 種類の位置及び姿勢で測定して行う。
その評価に対して,次の寸法測定用標準器の方向を推奨する(
図 8 参照)。寸法測定用標準器のそれぞれの
表面で座標値を取得し評価する点数の合計は 25 点以上でなければならないが,最大点数は制限しない。
注記 1 測定領域の縦方向 (①),横方向 (②) 及び奥行き方向 (③) に配置する。
注記 2 測定領域の境界平面における前 (④),後 (⑤) 及び横 (⑥) のそれぞれ一つの空間対角に配置する。
注記 3 測定領域の一つの空間対角[例えば,B-H (⑦)]に配置する。
図 8−寸法測定における寸法測定用標準器の配置及び姿勢
使用する寸法測定用標準器の最大寸法 L
E5
が使用する測定機の各辺における測定可能な最大長さの 66 %
に満たない場合は,L
Ei
の寸法をもつ寸法測定用標準器を姿勢変化なく移動させ,各辺の長さの 66 %以上
となる領域内で数回に分けて測定を行わなければならない。このとき,1 回の移動の距離は,使用する寸
法測定用標準器の寸法 L
Ei
を超えてはならない。
5.5.4
検査結果の求め方
測定値 L
mea
と校正値 L
cal
との差 (L
mea
−L
cal
)
を計算し,
非接触座標測定機の寸法測定誤差 E を算出する。
L
E1
∼L
E5
の五つの寸法に対して,次の計算を行う。
寸法測定用標準器にボールバーなどの球を測定対象とする標準器を使用した場合は,寸法測定誤差 E を
球の中心間距離の測定値 L
mea
と校正値 L
cal
との差 (L
mea
−L
cal
)
,5.2 に規定する球直径測定誤差 P
S
及び球面
形状測定誤差 P
FS
の 5 か所の測定値のうち絶対値が最大となるもの P
S,max
及び P
FS,max
を用いて,次の式によ
って算出する。
場合 1:(L
mea
−L
cal
)
+P
S,max
>0
→
E=(L
mea
−L
cal
)
+P
S,max
+P
FS,max
場合 2:(L
mea
−L
cal
)
+P
S,max
=0
→
E=+P
FS,max
又は−P
FS,max
場合 3:(L
mea
−L
cal
)
+P
S,max
<0
→
E=(L
mea
−L
cal
)
+P
S,max
−P
FS,max
11
B 7441
:2009
また,5.4 に規定する球間距離測定用標準器の測定によって球間距離測定誤差 E
S
をすでに算出している
場合は,寸法測定用標準器の測定を省略し,次の式によって算出した値を寸法測定誤差 E の値として代用
してもよい。
場合 1’
:E
S
+P
S,max
>0
→
E=E
S
+P
S,max
+P
FS,max
場合 2’
:E
S
+P
S,max
=0
→
E=+P
FS
又は−P
FS,max
場合 3’
:E
S
+P
S,max
<0
→
E=E
S
+P
S,max
−P
FS,max
使用した寸法測定用標準器の最大寸法 L
E5
が測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に満た
ない場合は,その辺に対する寸法測定誤差 E は,数回に分けたそれぞれの測定誤差の和である(
附属書 E
参照)
。
6
仕様への適合
6.1
球面形状測定及び球直径測定の場合
6.1.1
受入検査
球面形状測定及び球直径測定における非接触座標測定機の性能は 5.2 によって評価を行い,次の二つの
条件を満たす場合に合致すると判定する。
a)
ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準球の校正の不確かさを考慮して判定する。球面形状測定誤
差 P
FS
は,製造業者が指定する最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
以下とする。
b)
ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準球の校正の不確かさを考慮して判定する。球直径測定誤差
P
S
は,製造業者が指定する最大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
以下とする。
それぞれの測定誤差が 1 か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行
わなければならない。その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
及び最
大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
を超えなければ,非接触座標測定機の性能は検証されたことになる。
6.1.2
定期検査
球面形状測定及び球直径測定における非接触座標測定機の性能は 5.2 によって評価を行い,次の二つの
条件を満たす場合に合致すると判定する。
a)
ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準球の校正の不確かさを考慮して判定する。球面形状測定誤
差 P
FS
は,使用者が指定する最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
以下とする。
b)
ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準球の校正の不確かさを考慮して判定する。球直径測定誤差
P
S
は,使用者が指定する最大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
以下とする。
それぞれの測定誤差が 1 か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行
わなければならない。その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容球面形状測定誤差 P
FS,MPE
及び最
大許容球直径測定誤差 P
S,MPE
を超えなければ,非接触座標測定機の性能は検証されたことになる。
6.2
平面形状測定の場合
6.2.1
受入検査
平面形状測定における非接触座標測定機の性能は 5.3 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合
致すると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準平面の校正の不確かさを考慮して判定する。平面形状測定
誤差 P
FF
は,製造業者が指定する最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
以下とする。
1
か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなければならない。
その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
を超えなければ,非接触座標
12
B 7441
:2009
測定機の性能は検証されたことになる。
6.2.2
定期検査
平面形状測定における非接触座標測定機の性能は 5.3 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合
致すると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,検査用標準平面の校正の不確かさを考慮して判定する。平面形状測定
誤差 P
FF
は,使用者が指定する最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
以下とする。
1
か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなければならない。
その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容平面形状測定誤差 P
FF,MPE
を超えなければ,非接触座標
測定機の性能は検証されたことになる。
6.3
球間距離測定の場合
6.3.1
受入検査
球間距離測定における非接触座標測定機の性能は 5.4 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合
致すると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,球間距離測定用標準器の校正の不確かさを考慮して判定する。球間距
離測定誤差 E
S
は,製造業者が指定する最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
以下とする。球間距離測定誤
差 E
S
を寸法測定誤差 E で代用した場合においても,検査の判定には最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を用いる。
1
か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなければならない。
その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を超えなければ,非接触座標
測定機の性能は検証されたことになる。
6.3.2
定期検査
球間距離測定における非接触座標測定機の性能は 5.4 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合
致すると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,球間距離測定用標準器の校正の不確かさを考慮して判定する。球間距
離測定誤差 E
S
は,使用者が指定する最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
以下とする。球間距離測定誤差
E
S
を寸法測定誤差 E で代用した場合においても,検査の判定には最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を
用いる。
1
か所だけこの許容値を超える場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなければならない。
その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容球間距離測定誤差 E
S,MPE
を超えなければ,非接触座標
測定機の性能は検証されたことになる。
6.4
寸法測定の場合
6.4.1
受入検査
寸法測定における非接触座標測定機の性能は 5.5 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合致す
ると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,寸法測定用標準器の校正の不確かさを考慮して判定する。寸法測定誤
差 E は,製造業者が指定する最大許容寸法測定誤差 E
MPE
以下とする。寸法測定誤差 E を球間距離測
定誤差 E
S
などから算出した場合においても,検査の判定には最大許容寸法測定誤差 E
MPE
を用いる。
この許容値を超える箇所が 2 か所以下である場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなけれ
ばならない。その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容寸法測定誤差 E
MPE
を超えなければ,非接
触座標測定機の性能は検証されたことになる。
13
B 7441
:2009
6.4.2
定期検査
寸法測定における非接触座標測定機の性能は 5.5 によって評価を行い,次の条件を満たす場合に合致す
ると判定する。
− ここでは JIS B 0641-1 に従い,寸法測定用標準器の校正の不確かさを考慮して判定する。寸法測定誤
差 E は,使用者が指定する最大許容寸法測定誤差 E
MPE
以下とする。寸法測定誤差 E を球間距離測定
誤差 E
S
などから算出した場合においても,検査の判定には最大許容寸法測定誤差 E
MPE
を用いる。
この許容値を超える箇所が 2 か所以下である場合,その位置でもう一度 3 回の繰返し測定を行わなけれ
ばならない。その測定結果が 3 回ともすべて指定された最大許容寸法測定誤差 E
MPE
を超えなければ,非接
触座標測定機の性能は検証されたことになる。
7
適用事例
7.1
受入検査
次の文書に記述されるような製造業者と使用者との契約状況において,この規格で規定する受入検査は,
受渡当事者間の協定によって,球面形状測定,球直径測定,平面形状測定,球間距離測定及び寸法測定に
おける非接触座標測定機が 5 種類の最大許容誤差 P
FS,MPE
,P
S,MPE
,P
FF,MPE
,E
S,MPE
及び E
MPE
の仕様と合致す
るかどうかを判定する検査として使用できる。
a)
購入契約
b)
保守契約
c)
修理契約
d)
仕様変更契約など
製造業者は,P
FS,MPE
,P
S,MPE
,P
FF,MPE
,E
S,MPE
及び E
MPE
に適用できる詳細な制限を明記でき,製造業者が
そのような制限を指定しなかった場合は,P
FS,MPE
,P
S,MPE
,P
FF,MPE
,E
S,MPE
及び E
MPE
は非接触座標測定機の
測定範囲内で任意の位置及び姿勢に適用する。
7.2
定期検査
組織内の品質保証システムにおいて,この規格で規定する性能検査は,非接触座標測定機が使用者の指
定する 5 種類の最大許容誤差 P
FS,MPE
,P
S,MPE
,P
FF,MPE
,E
S,MPE
及び E
MPE
の仕様と合致するかどうかを判定す
るための定期検査として使用できる。
7.3
中間検査
組織内の品質保証システムにおいて,5 種類の最大許容誤差 P
FS,MPE
,P
S,MPE
,P
FF,MPE
,E
S,MPE
及び E
MPE
に
関して指定された要求を非接触座標測定機が満たす可能性を示すために,簡便な検査を定期的に行っても
よい。中間検査では,測定の種類及び繰返しの数を減らしてもよい。
14
B 7441
:2009
附属書 A
(
参考)
非接触座標測定機本体部の各種形式
A.1
直交三軸形
互いに垂直な案内面に沿って移動する三つの構成要素をもつ測定機。ブリッジ形(
図 A.1 参照),門移動
形(
図 A.1 参照)及びホリゾンタルアーム形(図 A.2 参照)によるものが多く存在する。ホリゾンタルア
ーム形には,軸が鉛直方向のロータリテーブルを測定機のベースに組み込んだものもある。
図 A.1−ブリッジ形・門移動形
図 A.2−ホリゾンタルアーム形
(
ロータリテーブル埋込形)
A.2
多関節アーム形(図 A.3 参照)
角度変位の検出が可能な回転関節を複数組み合わせた測定機。光学式センサを取り付ける手先の位置及
び姿勢を柔軟に変化させ,測定することができる。測定者が光学式センサを支え,直接操作する。また,
アクチュエータの内蔵された工業用ロボットアームに光学式センサを取り付けたものもある。
図 A.3−多関節アーム形
15
B 7441
:2009
A.3
固定据置形(図 A.4 参照)
光学式センサの中で,三次元空間を直接測定可能な三次元センサ[両眼視,しま(縞)投影,モアレ投
影など各種方式による。
]を,三脚,移動台車に搭載し,測定対象の周囲で光学式センサを移動させる,又
は測定対象をターンテーブルなどに搭載し,移動させて測定するもの。複数面測定が必要な測定対象の場
合は,画像間の共通性(測定物の特徴形状及びマーカを付加する。
)又は別の測定方法で得られた三次元座
標点(基準マーカ)を利用して,つなぎ合わせをするもの。
図 A.4−固定据置形
A.4
トラッキング形(図 A.5 参照)
光学式センサにレトロリフレクタを取り付け,その三次元座標位置を画像による三角測量又はレーザ測
長機を利用して測定するもの。例えば,仰角及び方位角の二軸の回転と一軸方向の距離測定とから三次元
座標位置を測定するレーザトラッカがある。
図 A.5−トラッキング形
16
B 7441
:2009
附属書 B
(
参考)
面内分解能及びフィルタの評価
B.1
概要
光学式センサの分解能は,次の 2 種類に区分する。
a)
奥行き分解能(光学式センサの光軸方向の分解能)
b)
面内分解能(光学式センサの光軸方向に垂直な面内の分解能)
一般にフィルタ処理によって平滑化の効果が増加するに従って,
光学式センサの光軸方向の測定誤差
(奥
行き誤差)は改善されるが,面内分解能は低下する。次に示す評価を行うことで,面内分解能及びフィル
タの影響を評価することができる。
B.2
評価方法
B.2.1
ホールアーティファクト
穴,すき間,スパイク,球などの構造が面内分解能の検証に使用できる。回転対称構造であれば,平面
内のあらゆる方向における情報を得ることができる。例えば,深さ及び直径が校正された穴を測定する場
合を
図 B.1 に示す。この穴の直径は,測定機の仕様として規定された面内分解能に等しいものとする。
測定機によって測定された深さは,校正値と比較される。測定値と校正値との比率は,63 % (=1−e
−
1
)
を超えることが要求される。比率が 63 %未満の場合は,仕様によって規定された分解能は得られていない
ことになる。
図 B.1−ホールアーティファクトを使用した面内分解能の決定
B.2.2
エッジアーティファクト
穴,スパイク,すき間などの 90 度のエッジを使用し,面内分解能の検証を行う。アーティファクトの寸
法(穴の場合,直径及び深さ)は,検証される分解能よりも十分大きいことが要求される。回転対称構造
であれば,平面内のあらゆる方向における情報を得ることができる。エッジの品質(エッジの丸み及び直
角度)は,検証される面内分解能より十分よいことが要求される。
図 B.2 に示すように,エッジは,測定
機で測定し,測定値を面内分解能とする。
17
B 7441
:2009
図 B.2−エッジアーティファクトによる面内分解能の決定
B.2.3
波状アーティファクト
一つ又は数個の正弦波形状を使用し,面内分解能の検証を行う。検証される分解能に相当する波長の正
弦波がアーティファクト上に存在しなければならない。アーティファクト上の正弦波の振幅及び波長は,
校正していなければならない。回転対称構造であれば,平面内のあらゆる方向における情報を得ることが
できる。
図 B.3 に示すように,測定機を用いて波状アーティファクトを測定し,測定された振幅と校正さ
れた振幅との比率が 70 % (=
2
1
)
を超える波長を決定する。この波長を面内分解能とする。
図 B.3−波状アーティファクトによる面内分解能の決定
B.3
基本原理
分解能の限界は,周波数領域(空間周波数,例えば,1 mm 当たりの周期)及び時間領域(ここでは,
空間領域)で同様に定義される。どちらの領域においても同じ情報が含まれ,フーリエ変換による相互変
換が可能である。分解能の限界を求めるためのモデルとして,一次のローパスフィルタを例にする。最初
に空間領域で考える(
図 B.4 参照)。特徴をもつ構造(接合箇所,段差及びスロープ)の測定を信号の入力
とすると,測定結果はフィルタ処理後の応答出力に相当する。段差は,計測の観点からも重要な形状であ
る。
18
B 7441
:2009
図 B.4−システム入力時の段差,システム応答面内及び分解能限界の決定
フィルタ特性である定数 X
1
は,ゼロを通る接線と,接線から十分に長い距離の段差との交点である。こ
の定数は,次のように遮断周波数に変換できる。
1
1
X
x
e
y
−
=
−
遮断周波数 υ
g
は,フィルタの利得が通過帯域のそれに比較して
2
/
1
(3 dB 限界)低下する周波数であ
る。
( )
1
1
1
X
j
j
G
ω
ω
+
=
( )
2
1
g
=
ω
j
G
→
1
1
g
=
X
⋅
ω
π
λ
υ
π
2
2
1
g
g
1
=
=
×
X
それゆえ,ステップ応答(理想形状の段差測定)から,フィルタによって振幅が 70 %に減衰する遮断波
長を計算することができる。
1
g
2
X
×
π
λ
=
図 B.5 は,この関係を示したものである。
厳密にいえば,この原理は正弦波形状に関してだけ適用されるが,方形波形状についても近似として適
用しても問題ない。なぜなら,方形波は,フーリエ級数を使用して正弦波の重ね合わせとして表現できる
からである。高周波成分はローパスフィルタによって大部分が消滅してしまう。それゆえ,遮断波長分解
能をもつ波形状を使用し,伝達因子が少なくとも正弦波の 70 %又は方形波の 90 % (=
π
2
2
)
であるかど
うかを確認する。
マルチ波アーティファクトを製作,入手することは難しいため,段差(
図 B.4)又は図 B.5 のような二
つの段差において同様の情報を獲得することが,より現実的な手法である。
X
1
19
B 7441
:2009
図 B.5−規定の遮断波長の周期をもつ正弦波及び方形波
20
B 7441
:2009
附属書 C
(
参考)
検査用標準器
C.1
一般
この規格で受入検査及び定期検査のために用いる検査用標準器は,セラミックス,鋼,アルミニウムな
どの適切な材料で製作し,次の影響を受けないものが望ましい。
a
)
固定時の位置及び姿勢の違い
b
)
温度,湿度などの環境の変化
c
)
経時変化など
測定表面は,光学的に均一な拡散面であることが望ましい。
検査用標準器は,適切に校正していなければならない。
注記 光学的に均一な拡散面を得ることを目的として,検査結果に影響を与えない範囲で,除去可能
な粉体を塗布することが許容される。
C.2
表面の光学特性
検査用標準器の測定表面の特性は,例えば,
図 C.1 のように光を検査用標準器に投影し,その反射光を
観測することによって評価できる。評価パラメータの一つとして,例えば,光源とカメラとのなす角 θ
s
及
びカメラの視線方向 θ
c
を変化させ,次の式(C.1)の表面の特性 R
a,OPT,θs,θc
の変化量を算出するなどが考えられ
る。
( )
dx
x
Z
l
R
l
∫
=
0
c
,
s
c
,
s
,
OPT
,
a
1
θ
θ
θ
θ
(C.1)
ここに,
)
(
c
,
s
x
Z
θ
θ
:
輝度
l
:
カメラ上の基準ピクセル数
図 C.1−検査用標準器表面の光学特性の評価方法
注記 上記の評価法は,光学式センサのうちしま(縞)投影方式によるセンサを検査するための検査
用標準器の光学特性評価に対して有効である。
21
B 7441
:2009
C.3
検査用標準球
単一の球である。球の直径は校正しなければならない。球の直径の校正値,材料及び表面の光学特性は,
検査報告書に記載しなければならない。C.5 に規定する球間距離測定用標準器の球を検査用標準球として
使用することができる。
鋼球にブラスト処理を行い,表面の保護のため,クロム又は窒化チタンコーティングを施したもの,セ
ラミックス製の球にブラスト処理を行ったもの,鋼球に腐食処理を施したものが適している。
注記 球直径測定においては,セラミックス製の球を使用すると,光の潜り込みによる影響が起きる
可能性がある。
C.4
検査用標準平面
長方形の平面である。平面の表面粗さ,材料及び表面の光学特性は,検査報告書に記載しなければなら
ない。
セラミックスをブラスト処理したもの,鋼製又はガラス製の平板をブラスト処理したものにクロム又は
窒化チタンコーティングしたものが適している。
C.5
球間距離測定用標準器
球間距離測定用標準器は,二つの球とそれを支える支持棒とから構成する。球の直径及び二つの球の間
の距離は校正しなければならない。球の直径の校正値,球間距離の校正値,材料及び表面の光学特性は,
検査報告書に記載しなければならない。
二つの球を支える支持棒は,熱膨張係数が既知である鋼など又は熱膨張しないカーボンなどによって製
作するのが望ましい。両端の球は,C.3 に規定する検査用標準球と同一仕様の球を使用するのが望ましい。
C.6
寸法測定用標準器
二つの球の間の距離又は二つの平面の間の距離で寸法を定義できる検査用標準器。
例えば,
ボールバー,
ボールプレート,ブロックゲージ,ステップゲージなどがある。ブロックゲージ及びステップゲージは,
測定面の面積が小さいため,非接触座標測定機の検査用標準器としては,不向きな場合が多い。そのため
に,測定ターゲットとなる球が直列に並んだボールバーの使用が望ましい。寸法測定用標準器の寸法は,
校正しなければならない。寸法の校正値,材料及び表面の光学特性は,検査報告書に記載しなければなら
ない。
ボールバーの支持棒は,熱膨張係数が既知である鋼など又は熱膨張しないカーボンなどによって製作す
ることが望ましい。測定ターゲットとなる球は,C.3 に規定する検査用標準球と同一仕様の球の使用が望
ましい。
22
B 7441
:2009
附属書 D
(
参考)
検査用標準平面の長さが短い場合の注意点
D.1
概要
平面形状測定誤差 P
FF
の検査結果を求める場合,検査用標準平面の幅及び長さは,それぞれ使用する測
定機の測定領域の各辺における測定可能な最大長さの少なくとも幅は 5 %,長さは 66 %以上であることが
望ましいが,使用する検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に満た
ない場合は,検査用標準平面を姿勢変化なく各方向に沿って移動させ,各辺の長さの 66 %以上となる領域
内で数回に分けて測定を行わなければならない。また,この場合は,平面形状測定誤差は数回に分けて行
った測定結果の最大値である(5.3.4 参照)
。
5.3.4
の
注記にあるように,使用した検査用標準平面の長さが測定領域の各辺における測定可能な最大長
さの 66 %に満たない場合は,平面形状測定誤差を過小評価する危険性がある。この附属書では,この危険
性について説明する。
D.2
平面形状測定誤差の性質
図 D.1 は平面形状測定誤差 P
FF
の一つの断面における例を示している。この例でも分かるように,平面
形状測定誤差は場所による違いがあり,空間周波数として考えることもできる。
図 D.2 は空間周波数が低
い誤差の例で,
図 D.3 は空間周波数が高い誤差の例である。この例に対して広い範囲で評価した場合及び
検査用標準平面を移動させ狭い範囲で評価した場合の P
FF
は,
図 D.2 及び図 D.3 に示すような大きさをも
つことになる。この例で分かるように,平面形状測定誤差が検査用標準平面の大きさより低い空間周波数
をもつ場合には,平面形状測定誤差を過小評価することになる。
図 D.1−平面形状測定誤差の一つの断面における例
図 D.2−平面形状測定誤差が低い空間周波数だけをもつ場合における例
図 D.3−平面形状測定誤差が高い空間周波数だけをもつ場合における例
23
B 7441
:2009
D.3
過小評価の危険性
上記のように,
検査用標準平面の長さが小さい場合には,
平面形状測定誤差を過小評価する危険がある。
これに対しては,使用者が必要とする測定範囲が限定される場合には,その限定された範囲に対応した大
きさの検査用標準平面で評価をすることができる。また,測定機のもつ誤差の空間的な性質が分かる場合
には,誤差の大きい空間周波数に対応した大きさの検査用標準平面で評価をすることができる。
しかし,一般的に平面形状測定誤差の場合には,数回に分けて行った測定結果から全体を予測すること
はできない。
24
B 7441
:2009
附属書 E
(
参考)
球間距離測定用標準器の球間距離が短い場合の注意点
E.1
概要
球間距離測定誤差 E
S
の検査結果を求める場合,球間距離測定用標準器の球間距離 L
P
が使用する測定機
の各辺における測定可能な最大長さの 66 %に満たないときは,球間距離測定用標準器を姿勢変化なく移動
させ,各辺の長さの 66 %以上となる領域内で数回に分けて測定を行わなければならない。また,この場合
は,球間距離測定誤差は数回に分けたそれぞれの測定結果の和であると規定している。これは,ボールバ
ー測定実験による測定結果を解析し,得られた結論を反映したものである。この検査結果算出法を規定す
るに当たり,ボールバーを用いて 6 種類の異なる測定機を用いて評価実験を行い,この結論を得ている。
E.2
球間距離測定誤差の検査結果算出例
球間距離測定誤差 E
S
の検査例として,測定可能な最大長さの 66 %が 500 mm よりも短い場合を取り上
げる。このとき球間距離 L
P
が 500 mm のボールバーの場合は,球間距離測定誤差を適切に検査できる。
図
E.1
に,ある非接触座標測定機で球間距離 L
P
が 500 mm のボールバーを測定したときの球間距離測定誤差
を示す[
図 E.1 a) 中の■]。配置番号は,図 6 に示したボールバーの七つの配置場所に対応している。こ
の結果が正しい球間距離測定誤差である。
ここで検査に球間距離 L
P
が 100 mm のボールバーを使用する場合を考える。ボールバーは姿勢変化なく
移動させるとし,
図 E.1 b) に示すように 1 回の移動量を 100 mm とした場合及び 200 mm とした場合のそ
れぞれについて,5.4 に規定した測定と評価を行った。
図 E.1 a) にその結果を示す。図 E.1 a) に示すよう
に,1 回の移動量が検査に使用するボールバーの球間距離 L
P
よりも長い場合[
図 E.1 a) 中の+],それぞ
れの配置場所において算出される E
S
が正しい球間距離測定誤差よりも小さくなっている。このことから 1
回の移動が使用するボールバーの球間距離 L
P
よりも長い場合は,球間距離測定誤差を過小評価しているこ
とが分かる。また,1 回の移動量が検査に使用するボールバーの球間距離 L
P
と等しい場合[
図 E.1 a) 中の
○]は,本来必要な球間距離 L
P
をもつボールバーを使用した場合と同じ結果となる。
図 E.2 は,球間距離 L
P
が 200 mm のボールバーを使用し,
1
回の移動量を 100 mm とした場合及び 300 mm
とした場合のそれぞれについて,5.4 に規定した測定と評価を行った結果である。
図 E.1 の場合と同様に,
1
回の移動量が検査に使用するボールバーの球間距離 L
P
よりも長い場合[
図 E.2 a) 中の+]は,球間距離
測定誤差を過小評価していることが分かる。
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B 7441
:2009
図 E.1−使用するボールバーの球間距離長さと 1 回の移動量との関係
図 E.2−使用するボールバーの球間距離長さと 1 回の移動量との関係
参考文献 ISO/IEC Guide 99:2007 International vocabulary of metrology−Basic and general concepts and
associated terms (VIM)