B 7253-2:2020 (ISO 19056-2:2019)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義··················································································································· 1
4 測定項目························································································································· 2
4.1 一般 ···························································································································· 2
4.2 分光計測 ······················································································································ 2
4.3 色度 ···························································································································· 2
4.4 相関色温度,Tcp············································································································· 3
5 測定方法························································································································· 3
5.1 一般 ···························································································································· 3
5.2 測定環境 ······················································································································ 4
5.3 積分球 ························································································································· 4
5.4 顕微鏡のセッティング ···································································································· 4
5.5 測定の安定性 ················································································································ 4
6 使用者への提供情報·········································································································· 5
6.1 一般 ···························································································································· 5
6.2 色度及び相関色温度の情報 ······························································································ 5
6.3 追加情報 ······················································································································ 6
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本顕微鏡工業会(JMMA)及び一般財団
法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本
産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
B 7253-2:2020
(ISO 19056-2:2019)
顕微鏡−照明特性の定義及び測定−
第2部:明視野顕微鏡の色特性
Microscopes-Definition and measurement of illumination properties-
Part 2: Illumination properties related to the colour in bright field microscopy
序文
この規格は,2019年に第1版として発行されたISO 19056-2を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本産業規格である。
1
適用範囲
この規格は,透過照明光による明視野顕微鏡の色特性に関し,測定項目及び測定の手順を規定する。こ
れらの測定は,像面及び中間像面に適用する。また,この規格は,使用者に提供すべき情報に関しても規
定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 19056-2:2019,Microscopes−Definition and measurement of illumination properties−Part 2:
Illumination properties related to the colour in bright field microscopy(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こと
を示す。
2
引用規格
次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 8781-1 測色−第1部:CIE測色標準観測者の等色関数
注記 対応国際規格における引用規格:ISO/CIE 11664-1,Colorimetry−Part 1: CIE standard
colorimetric observers
JIS Z 8781-3 測色−第3部:CIE三刺激値
注記 対応国際規格における引用規格:ISO/CIE 11664-3,Colorimetry−Part 3: CIE tristimulus values
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用語及び定義
この規格には,定義する用語はない。
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測定項目
4.1
一般
明視野顕微鏡では,色特性の異なるハロゲンランプ,タングステンランプ,LED,有機ELなどの様々な
光源を用いる。これらの色特性の測定を次のとおり規定する。
4.2
分光計測
像面又は中間像面に,積分球及び分光機能をもつ装置を配置して分光放射束[単位:ワット(W)]の計
測を行う。測定波長範囲380 nm〜780 nmを測定間隔5 nm以下で計測する。
4.3
色度
分光計測で得られた分光特性によってCIE 1931視野の等色関数を用いてXYZ表色系(CIE 1931表色系)
の三刺激値を計算し,(x, y)色度座標を求める。
三刺激値X,Y及びZは,JIS Z 8781-1及びJIS Z 8781-3に従って,波長λの範囲380 nm〜780 nmの間
を積分し,次の式によって求める。
()()d
X k
x
λ
λϕλλλ
=∫
()()d
Yk
y
λ
λϕλ
λλ
=∫
()()d
Zk
z
λ
λϕλλλ
=∫
ここで,
X,Y,Z: 刺激値
φλ(λ): 色刺激関数
x(λ),y(λ),z(λ): CIE等色関数
k: 定数
定数kは次の式によって求める。
100
()()d
k
y
λ
λϕλ
λλ
=∫
色度座標x及びyは,三刺激値X,Y及びZから次の式によって求める。
X
x
XYZ
=
+
+
Y
y
XYZ
=
+
+
ここで,
x,y: 色度座標
横軸にxを,縦軸にyをプロットした図を,CIE(x, y)色度図として定義する。例を図1に示す。
JIS Z 8781-1及びJIS Z 8781-3によれば,この規格では380 nmから780 nmまでのスペクトル範囲で5
nm間隔の等色関数の値を使用すれば十分である。したがって,分光放射束の測定が5 nm未満の間隔で行
われる場合,測定データを,最小二乗法を用いて5 nm間隔に変換するか,又は5 nm間隔のデータだけを
3
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抽出する。
また,JIS Z 8781-1によれば,等色関数にはCIE 1931及びCIE 1964の2種類があるが,この規格では一
般的に使用されているCIE 1931だけを用いる。
4.4
相関色温度,Tcp
4.4.1
一般
色温度の計算には様々な方式があるが,この規格では,4.4.2及び4.4.3に規定する方法のいずれかを用
いる。
色温度は,光源の色度が黒体軌跡と一致する場合,一つのパラメータで色を表現する指標であるが,実
際の光源が黒体放射と完全に一致することはないので,最も近い色をもった黒体軌跡の温度を用いて色を
表現する相関色温度を用いる。
4.4.2
CIE 1960 UCS色度図を用いた相関色温度及びその算出方法
分光計測で得た分光特性及びCIE 1931視野の等色関数を用いてXYZ表色系(CIE 1931表色系)の三刺
激値を計算し,CIE 1960 UCS色度図上の(u, v)色度値に変換する。
色度値は,三刺激値X,Y及びZを用いて次の式によって求める。
4
15
3
X
u
X
Y
Z
=
+
+
6
15
3
Y
v
X
Y
Z
=
+
+
ここで,
u,v: 色度値
この後に,相関色温度は図上の(u, v)色度値から最も近い黒体軌跡点に対応した絶対温度で示す。
相関色温度は,(u, v)色度値から黒体軌跡までの距離が0.05以下であれば表示する。
4.4.3
(x, y)色度座標を用いた相関色温度
相関色温度は,McCamy [8]が提案する次の式によって求める。
Tcp=−437n3+3 601n2−6 861n+5 514.31
ここで,
Tcp: 相関色温度
式中のnは,色度座標x及びyを用いて次の式によって求める(x及びyは4.3を参照)。
0.3320
0.1858
x
n
y
−
=
−
注記 この近似式による誤差は,実用上無視し得る程度とされている。
5
測定方法
5.1
一般
測定結果に影響を与える顕微鏡の設定について,次のとおり規定する。
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5.2
測定環境
顕微鏡システムは,暗室に設置し,街路灯,太陽光,室内灯などが測定値に影響を与えないよう注意を
払う。光強度及び分光特性は,ハロゲンランプだけでなくLEDの熱によっても変化する可能性があるた
め,製造業者が指定した動作温度で測定する。
5.3
積分球
積分球は,測定すべき像面に対応する開口部に取り付ける。使用する積分球は,反射率が測定に使用さ
れる可視光域で十分に高く,380 nm〜780 nmの波長範囲で,5 nm以下の間隔で分光反射率のトレーサビ
リティが取られているものを用いる。
5.4
顕微鏡のセッティング
5.4.1
絞りのセッティング
照明系の視野絞りは,像面で直径約10 mmの円形に制限される。照明系の開口絞りは,使用する対物レ
ンズの開口数と同等の大きさまで開く。
特に開口数の大きな対物レンズは,常に該当する照明開口数まで開くことができるとは限らないので,
その場合には実際の照明開口数を表示しなければならない(箇条6参照)。
5.4.2
試料の調整及び絞り類の焦点合せ
焦点,視野絞り及び開口絞りは,カバーガラス付きのスライドガラスを用いて調整しなければならない。
分光特性は,試料のない状態で測定しなければならない。
5.4.3
その他の組合せ
測定にフィルタなどの光学要素,変倍装置などを使用する場合には,その名称又は製品系列名称を示さ
なければならない。接眼レンズ用のスリーブが二つある双眼鏡筒を使用する場合には,それぞれを測定し,
両方の色度及び相関色温度を提供する。
5.4.4
光源の調整
色度及び相関色温度を測定するためには,顕微鏡の製造業者が推奨する適切な動作条件に従って光源を
調整しなければならない。ハロゲンランプを光源として使用する場合,分光特性は,入力電圧によって大
きく変化するため,所定の白色光を得るためには,適切な(製造業者が推奨する)入力電圧及び色温度変
換フィルタを使用しなければならない。
注記 多くの白色LEDは,光量を増すに従って,蛍光体の飽和吸収の影響によって紫色方向に僅かに変
化する。
5.5
測定の安定性
測定は,光学分光計を用いた測定時間内において光源の光強度及び分光特性の変化が十分に無視し得る
条件下で行う。
5
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6
使用者への提供情報
6.1
一般
色度又は相関色温度(Tcp)に関する情報を使用者に提供する場合,この情報は,数値又は(x, y)色度図で
示し,像面位置,像視野の大きさ,顕微鏡構成及び照明光源に関する追加情報を含まなければならない(6.2
及び6.3参照)。
6.2
色度及び相関色温度の情報
a) 色度及び相関色温度(Tcp)が数値で示される場合
1) 色度は小数点以下3桁まで表記する。
例 (x,y)=(0.355, 0.365)
2) 相関色温度(Tcp)は50 K単位にて表記する。
例 Tcp=5 500 K
b) 色度及び相関色温度(Tcp)をグラフ上で表記する場合
範囲は,CIE(x, y)色度図を用いて表す。(x, y)色度図では,等色温度線及び等偏差線とともに黒体軌
跡を示さなければならない。
注記 図1を参照する。
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記号説明
1:照明光の色
X:色度のx座標
Y:色度のy座標
図1−CIE(x, y)色度図の例
6.3
追加情報
次の追加情報を使用者に提供する。
a) 像面位置及び像視野の大きさの情報
この情報は,色度及び相関色温度(Tcp)を測定する場合に参照する。
b) 顕微鏡構成に関する情報
次の情報を含む。
1) 構成リスト及び型式番号
2) 対物レンズ,コンデンサ,双眼鏡筒及び色温度変換フィルタのリスト
3) 対物レンズの開口数を満たさない場合の照明開口数
注記 特に,追加の光学要素(例えば,フィルタ,対物レンズ,コンデンサなど)が使用される場
合には,これらのデータは重要である。なぜならば,これらの光学要素は使用者によって交
換され,光路の一部になり得るためである。
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c) 照明光源の情報
この情報は,光源の種類及びその分光特性を含む。ハロゲンランプの場合,明るさ設定を提供する。
参考文献
[1] JIS B 7256:2017 顕微鏡−仕様項目
[2] JIS Z 8113:1998 照明用語
[3] JIS Z 8120:2001 光学用語
[4] JIS Z 8725:2015 光源の分布温度及び色温度・相関色温度の測定方法
[5] ISO 10934-1:2002,Optics and optical instruments−Vocabulary for microscopy−Part 1: Light microscopy
[6] CIE 015,Technical Report: Colorimetry, 3rd edition
[7] JUDD D.B., Estimation of chromaticity differences and nearest color temperature on the standard 1931 ICI
colorimetric coordinate system. J. Opt. Soc. Am. 1936, 26 pp. 421-426
[8] McCAMY C.S., Correlated color temperature as an explicit function of chromaticity coordinates. Color Res. Appl.
1992, 17 pp. 142-144