B 7251 : 2000 (ISO 8576 : 1996)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 7251 : 2000
(ISO 8576 : 1996)
偏光顕微鏡の基準系
Reference system of polarized light microscopy
序文 この規格は,1996年に第1版として発行されたISO 8576, Optics and optical instruments−Microscopes
−Reference system of polarized light microscopyを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく
作成した日本工業規格である。
1. 適用範囲 この規格は,顕微鏡及び顕微鏡附属品に関し,計測方法を統一するため,目盛られたあら
ゆる回転運動及び並進運動を含む基準系について規定する。特に偏光パラメータ,顕微鏡の回転ステージ,
偏光装置,コンペンセータなどの計測用附属品について適用する。
2. 原理 圧力,温度及び波長を一定とする条件の下で,最小限の対称性をもつ吸収のない異方性結晶の
光学的特性は,3軸の屈折率だ円体によって記述する。軸の半分の長さは,結晶の主屈折率nα,nβ及びnγ
である。この屈折率だ円体をその中心も含めて通る任意の切断面は,一般にnα及びnγの軸長をもつだ円で
ある。定義によって,ここに,nα≦nα'≦nβ≦nγ'≦nγの関係式が成り立つ。
偏光観察で方向の記載は,すべて最大屈折率nγの方向を基準にする。
備考 試料中の屈折率が|nγ' |>|nα' |であることを強調するために,下付き文字γ及びαが,γ' 及びα' に
代わって,しばしば用いられている。
1軸結晶の屈折率だ円体は,回転だ円体である。この回転だ円体は,nω及びnεによって指定される2個
の主軸を特徴とし,ωは正常振動方向を,εは異常振動方向を示す。後者は,回転軸の方向である。次の定
義が成り立つ。
nα=nβ=nω≠nγ=nε(光学的正)
nγ=nβ=nω≠nα=nε(光学的負)
すなわち,nεがnωより大であれば,その結晶は単軸性であって光学的には正という。nωがnεより大であ
れば,その結晶は,単軸性であって光学的には負という。
3. 回転方向及び変位の基準系
3.1
一般事項(図1参照) 一般に,正の直交座標系x,y,zを用いてz方向を光の伝搬方向とし,光源
から顕微鏡の鏡筒光軸を通る光として定義する。したがって,接眼レンズを通して観察した場合には,z
軸と直交する面内における回転角uは,反時計方向を正として読み取る。これは,正立及び倒立いずれの
顕微鏡についても成り立つ。
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図1
3.2
顕微鏡ステージの回転位置 顕微鏡ステージの回転位置は,十字動ステージのx方向が西−東であ
る場合には,すなわち,ポラライザを通過する光の振動方向と平行になるときを基点とする。このときポ
ラライザはν=0°とする(4.2参照)。
備考 ポラライザの基準方向が西−東 (u=0゚) 以外の方向であれば,顕微鏡上に振動方向を表示しな
ければならない。
3.3
十字動ステージ 十字動ステージは,回転顕微鏡ステージに取り付けて,試料を座標軸x,y方向に
平行に動かす装置である。顕微鏡ステージの回転位置を示す目盛がゼロの位置では,十字動ステージのx
軸と基準方向とが一致する。
図2
3.4
ユニバーサルステージの回転方向及び傾斜方向(図3及び図4参照) ユニバーサルステージは,
顕微鏡に取り付ける装置であって,試料を3次元の任意の方向に回転することができる。これは,回転軸
系と傾斜軸系とを備えていて,(ベレックに従うと)A1,A2,A3,A4,A5のように下付き文字で表す。A5
は,偏光顕微鏡ステージの回転軸とする。ユニバーサルステージの位置ゼロで,奇数は垂直な軸を示し,
偶数は水平な軸を示す。ある一つの軸を動かすと,それより小さい下付き数字をもっているすべての軸の
位置が変化する。
顕微鏡ステージの回転位置ゼロで,軸A2及びA4の傾斜位置を読み取るためのスケールが観察者から見
て右に置いてあるとき,それらの軸の方向を180゚と定義する。実際に使用するときのA2の方向は,通常
A4の方向に対して垂直,すなわち,90゚である。ユニバーサルステージがA4を中心として傾斜していると
きには,A2の投影された方向が90゚になる。A2及びA4の方向に見て,A2及びA4を中心にした傾斜角は,
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ユニバーサルステージの面に水平な位置を起点として,時計回りを正と定義する。
備考 ユニバーサルステージの軸の名称には,次のものも使われている。
ベレツク (1924)
(Berek)
ニキティン−デュパーク−ラインハート
(Nikitin−Duparc−Reinhardt)
ラインハート (1931)
(Reinhardt)
アール・シー・エモンズ
(R. C. Emmons)
A1
N(垂直軸)
N(垂直軸)
I. V.
A2
H(水平軸)
H(水平軸)
N. S.
A3
M(可動軸)
A(補助軸)
O. V.
A4
I(不動軸)
K(基準軸)
O. E. W.
A5
M(顕微鏡軸)
M
図3
図4
4. 偏光素子,光学的異方体,コンペンセータ及び検板の調整
4.1
用語
偏光素子 (polarizing devices) 素子の透過方向と一致する振動方向の直線偏光だけを透過させる素子。
ポラライザ (polarizer) 顕微鏡ステージ上の試料と光源との間に置かれる偏光素子。
アナライザ (analyser) 顕微鏡ステージ上の試料と観察者との間に置かれる偏光素子で,試料又は試
料とコンペンセータとの組合せで生じる偏光の状態が分かる。
光学的異方体 (optically anisotropic materials) 光の伝搬及び振動の方向によって,屈折率が異なる物
質。
コンペンセータ及び検板 (compensators and auxiliary objects) 光学的異方体からできている素子で,
偏光された光波の光路差を規則正しく増減させる。これによって,検板は,試料中の光路差の正負を
示し,コンペンセータは,光路差の大きさを示す。
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4.2
ポラライザ及びアナライザの調整(図5参照) ポラライザ及びアナライザを通過する光の振動の
方向は,西−東に合わせたときをゼロとする (u=0゚)。顕微鏡ステージの反時計回り系で,ポラライザ及
びアナライザの回転角度は,反時計方向を正とする。通常の回転位置は,図5のように示す。
図5
4.3
顕微鏡ステージ上の光学的異方体の調整(図6及び図7参照) 消光位は,試料の屈折率nα' とnγ' と
を与える方向が,直交するポラライザ及びアナライザを通過する光の振動方向に平行になった位置。対角
位(測定位)は,試料の屈折率nα' 及びnγ' の方向が,直交するポラライザ及びアナライザを通過する光の
振動方向に対角 (45゚) になった位置。
図6
図7
4.4
試料及び傾斜コンペンセータによる観察(図8参照) 試料を対角位に置き,検板及びコンペンセ
ータを規格化されたチューブスロットに挿入する。この場合には,コンペンセータの屈折率の高い方(γ
軸方向)は,基準方向(ポラライザの振動方向)から45゚回転した方向となっている(2. 備考を参照)。
顕微鏡ステージ上の試料のnγ' の方向(試料の屈折率の高い方)が135゚の位置にあるとき(これはコンペ
ンセータのnαの方向と平行),相減の配置といい,全体のリターデーションは減る方向である。例外とし
て,特定のコンペンセータであるベレック及びエーリングハウスコンペンセータのnγ方向は,135°の位
置に配置される。
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図8
4.5
ブレースケーラのエリプチックコンペンセータによる観察(図9参照) ブレースケーラのような
エリプチックコンペンセータはλ/10までの既知の光路差Γc (nm) をもつ光学的異方性の結晶板をz軸の周
りに回転させるものである。
この結晶板は,初めにnγ方向を90゚の回転位置に配置する。すなわち,アナライザを通過する光の振動
方向と平行な方向に配置する。測定に当たって,顕微鏡ステージ上の試料のnγ'方向は,45゚の回転位置に
配置する。次に試料が消光するまでコンペンセータを反時計回りに回転する。この回転角をβとすると,
試料の光路差Γ は,Γ=Γcsin2β (nm) から求められる。
図9
4.6
セナルモンコンペンセータによる観察(図10参照) セナルモンコンペンセータは,使用する単色
光波長の1/4波長板で構成され,試料からのだ円偏光を特定の方向に振動する直線偏光に変換する。その
直線偏光の振動方向とアナライザを通過する光の振動方向とのなす角は,試料からのだ円偏光の位相差(位
相差を角度で表したもの)の1/2に相当する。
測定に当たって,顕微鏡ステージ上の試料のnγ' 方向は,45゚の位置に配置する。次に,1/4λ板(セナル
モン用)をチューブスロットに挿入する。ここで,1/4λ板(セナルモン用)のnγ方向は,ポラライザの振
動方向と平行な方向である。次に,アナライザを試料が消光するまで反時計回りに回転する。試料の光路
差Γ は,次の式によって求められる。
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λ
∆
Γ
w
=
ここで,λは測定に使用する単色光の波長 (nm),∆wはアナライザの回転角(度)である。
セナルモンコンペンセータによって測定できる光路差の範囲は,0≦Γ≦λである。
図10
JIS B 7251原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
三 宅 和 夫
筑波大学
(委員)
本 間 政 雄
文部省教育局
中 嶋 誠
通商産業省産業機械課
本 間 清
工業技術院標準部
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
辻 内 順 平
東京工業大学
太 田 次 郎
お茶の水女子大学
山 口 和 克
杏林大学
飯 山 敏 道
国士館大学
嶋 昭 紘
東京大学
瀬 谷 正 樹
ユニオン光学株式会社
遠 藤 到
オリンパス光学工業株式会社
阪 本 忍
株式会社ニコン
寺 尾 昌 男
東洋光学工業株式会社
黒 岩 秀 一
協和光学工業株式会社
和 田 計 二
サクラ精機株式会社
(事務局)
松 原 正 樹
日本顕微鏡工業会