日本工業規格 JIS
B 7097-1986
ISO色特性指数 (ISO/CCI) による
写真撮影用レンズの色特性の表し方
Determination of ISO Colour Contribution Index
(ISO/CCI) of Camera Lenses
1. 適用範囲 この規格は,ISO色特性指数 (ISO/CCI) による写真撮影用レンズ(以下,レンズという。)
の色特性の表し方について規定する。
引用規格:
JIS Z 8105 色に関する用語
JIS Z 8113 照明用語
JIS Z 8120 光学用語
JIS Z 8720 測色用の標準の光及び標準光源
対応国際規格:
ISO 6728 Photography−Camera lenses−Determination of ISO colour contribution index
(ISO/CCI)
2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS Z 8105(色に関する用語),JIS Z 8113(照明
用語),JIS Z 8120(光学用語)及びJIS Z 8720(測色用の標準の光及び標準光源)によるほか,次による。
(1) 色特性指数 あるレンズを使用して撮影したカラー写真の色が,そのレンズを使用したことによって,
撮影系にレンズがないときのカラー写真の色に比べてどの程度変化するかを予測するための指数。青,
緑,赤の3色によって決められる3個一組の数値で示す。
(2) ISO色特性指数 この規格に定める方法によって算出した色特性指数。
記号:ISO/CCI
(3) 写真レスポンス レンズを通った放射束に対する写真フィルム(以下,フィルムという。)の応答であ
り,次の式で表す。
∫
=
2
1
)
(
)
(
)
(
λ
λ
λ
λ
λ
τ
λ
λ
d
s
S
R
ここに,
R: 写真レスポンス
Sλ (λ) : 放射束の分光分布
τ (λ) : レンズの光軸上での分光透過率
s (λ) : フィルムの分光感度
λ: 波長
λ1〜λ2: フィルムが感度をもつ波長範囲
2
B 7097-1986
(4) ISO標準カメラレンズ 国際標準化機構 (ISO) が定めた相対分光透過率[記号:τ (λ)]をもつ仮想
のカメラレンズ(付表1参照)。
(5) 平均カラーフィルム(ISO色特性指数計算用) その相対分光感度が,数種類の昼光用カラーフィル
ムの相対分光感度の平均値になっている仮想のカラーフィルム(付表2参照)。
(6) 写真昼光 相関色温度約5 500Kの昼光。太陽が地平線上約40度の高度(カラー写真撮影に推奨され
ている時間帯での温帯における平均太陽高度)にあるときの昼光の分光分布に相当する(付表3参照)。
記号:D55
(7) フィルムの分光感度 単色光に対するフィルムの感度。所定の現像処理をしたフィルムの画像の写真
濃度が特定の値になるのに必要な,波長ごとの放射エネルギーの逆数で表す。
(8) 重み付き分光感度(ISO色特性指数計算用) 写真昼光に対してカラーフィルムを構成している主と
して青の光に感じる感光層(青感層),主として緑の光に感じる感光層(緑感層)及び主として赤の光
に感じる感光層(赤感層)の写真レスポンスが,ISO色特性指数 (ISO/CCI) の計算においてそれぞれ
等しい値になるように定めた青感層,緑感層及び赤感層の分光感度(付表4参照)。
3. ISO色特性指数の求め方
3.1
原理 レンズのISO色特性指数は,そのレンズの分光透過率と写真昼光の分光分布とを用いて計算
した,平均カラーフィルムの青感層,緑感層,赤感層の各層の写真レスポンスから求める。
3.2
レンズの分光透過率 レンズの分光透過率は,附属書に定める方法によって求める。
3.3
計算の手順 ISO色特性指数の計算手順は,次による。
(1) 次の式(2)によって,平均カラーフィルムの青感層の写真レスポンスを算出する。
∫
=
2
1
)
(
)
(
)
(
55
λ
λ
λ
λ
τ
λ
λ
B
B
d
s
D
K
R
B
·················································· (1)
∫
=
2
1
)
(
)
(
λ
λ
λ
τ
λ
λ
B
d
W
··································································· (2)
ただし, WB (λ) =KBD55 (λ)
B
S (λ)
ここに,
KB: τ (λ) ≡1(1)のときRB=100とするための定数
注(1) 撮影系にレンズがない状態を意味する。
D55 (λ): 写真昼光の分光分布
τ (λ): ISO色特性指数を求めるレンズの光軸上での分光透過率 (2)
注(2) 相対値でよい。
B
S(λ) : 平均カラーフィルムの青感層の相対分光感度
WB (λ) : 平均カラーフィルムの青感層の重み付き分光感度
λ1〜λ2: 平均カラーフィルムの青感層が感度をもつ波長範囲
実際の計算ではRBは,次の式(3)によって波長間隔10nmごとのWB (λ) 及びτ (λ) の離散的な
値を用いて算出する。
RB=∑WB (λ) τ (λ) ······································································ (3)
(2) 同様にして,平均カラーフィルムの,緑感層の写真レスポンスRGと,赤感層の写真レスポンスRRと
を算出する。
(3) RB,RG及びRRの常用対数を小数点以下2けたまで求める。
(4) log10RB,log10RG及びlog10RRのそれぞれの値から,log10Ri(RiはRB,RG,RRのいずれか)の最小値 (log10Ri)
minを減じて最小値を0にする。
3
B 7097-1986
(5) log10RB− (log10Ri) min,log10RG− (log10Ri) min及びlog10RR− (log10Ri) minを100倍する。
(6) (5)で算出した値をそれぞれB,G,Rとしたとき,ISO色特性指数は,次の形式で示す。
ISO/CCI B/G/R
備考1. ISO標準カメラレンズについての計算例を付表5に示す。
2. ISO色特性指数の推奨値と推奨許容差,三線座標を用いた推奨許容域及び三線座標への記入
方法を参考に示す。
4
B 7097-1986
付表1 ISO標準カメラレンズの相対分光透過率
波長
nm
相対分光
透過率(3)
τ (λ)
350
0.00
360
0.07
370
0.23
380
0.42
390
0.60
400
0.74
410
0.83
420
0.88
430
0.91
440
0.94
450
0.95
460
0.97
470
0.98
480
0.98
490
0.99
500
0.99
510
1.00
520
1.00
530
1.00
540
1.00
550
1.00
560
1.00
570
1.00
580
1.00
590
0.99
600
0.99
610
0.99
620
0.98
630
0.98
640
0.97
650
0.97
660
0.96
670
0.95
680
0.94
690
0.94
注(3) 最大値を1.00に
基準化して定
めた値である。
付表2 平均カラーフィルムの相対分光感度
波長
nm
青感層の相対
分光感度(4)
B
S (λ)
緑感層の相対
分光感度(4)
B
S (λ)
赤感層の相対
分光感度(4)
B
S (λ)
350
2
360
5
370
12
380
26
390
49
1
400
71
1
410
87
1
420
97
1
430
100
1
440
87
1
450
80
1
460
68
1
470
47
2
480
25
3
490
11
6
500
4
9
510
3
14
520
1
20
530
31
1
540
60
1
550
100
2
560
51
3
570
54
5
580
39
7
590
11
12
600
2
19
610
26
620
34
630
54
640
83
650
100
660
70
670
17
680
2
注(4) 最大値を100に基準化して定めた値である。
付表3 写真昼光の分光分布
波長
nm
写真昼光の
分光分布(5)
D55 (λ)
350
28
360
31
370
34
380
33
390
38
400
61
410
69
420
72
430
68
440
86
450
98
460
100
470
100
480
103
490
98
500
101
510
101
520
100
530
104
540
102
550
103
560
100
570
97
580
98
590
91
600
94
610
95
620
94
630
90
640
92
650
89
660
90
670
94
680
90
690
80
注(5) 560nmの値
を100に基
準化して定
めた値であ
る。
付表4 重み付き分光感度
波長
nm
青感層の重み
付き分光感度
WB (λ)
緑感層の重み
付き分光感度
WG (λ)
赤感層の重み
付き分光感度
WR (λ)
370
1
380
1
390
3
400
7
410
10
420
12
430
12
440
13
450
13
460
12
470
8
1
480
4
1
490
2
1
500
1
2
510
1
4
520
5
530
8
540
15
550
25
1
560
13
1
570
13
1
580
9
2
590
2
3
600
1
4
610
6
620
8
630
12
640
19
650
22
660
16
670
4
680
1
6
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付表5 ISO標準カメラレンズについてのISO色特性指数の計算例
波長
nm
ISO標準カメラ
レンズの相対分
光透過率(3)
τ (λ)
WB (λ)
WB (λ) τ (λ)
WG (λ)
WG (λ) τ (λ)
WR (λ)
WR (λ) τ (λ)
350
0.00
360
0.07
370
0.23
1
0.23
380
0.42
1
0.42
390
0.60
3
1.80
400
0.74
7
5.18
410
0.83
10
8.30
420
0.88
12
10.56
430
0.91
12
10.92
440
0.94
13
12.22
450
0.95
13
12.35
460
0.97
12
11.64
470
0.98
8
7.84
1
0.98
480
0.98
4
3.92
1
0.98
490
0.99
2
1.98
1
0.99
500
0.99
1
0.99
2
1.98
510
1.00
1
1.00
4
4.00
520
1.00
5
5.00
530
1.00
8
8.00
540
1.00
15
15.00
550
1.00
25
25.00
1
1.00
560
1.00
13
13.00
1
1.00
570
1.00
13
13.00
1
1.00
580
1.00
9
9.00
2
2.00
590
0.99
2
1.98
3
2.97
600
0.99
1
0.99
4
3.96
610
0.99
6
5.94
620
0.98
8
7.84
630
0.98
12
11.76
640
0.97
19
18.43
650
0.97
22
21.34
660
0.96
16
15.36
670
0.95
4
3.80
680
0.94
1
0.94
ΣWi (λ) τ (λ) (6)
89.35
99.90
97.34
log10 [ΣWi (λ) τ (λ)]
1.95
2.00
1.99
それぞれの値から1.95を減ずる。
0.00
0.05
0.04
それぞれの値を100倍する。
0
5
4
ISO色特性指数
ISO/CCI
0
/
5
/
4
注(6) Wi (λ) は,WB (λ) ,WG (λ) 及びWR (λ) のいずれかである。
7
B 7097-1986
参考 ISO色特性指数の推奨値,推奨許容差,三線座標を用いた
推奨許容域及び三線座標への記入方法
1. 推奨値及び推奨許容差 ISO標準カメラレンズのISO色特性指数の値は,0/5/4である。レンズ製造業
者は,この値を目標値とすることが望ましい。レンズのISO色特性指数のB,G,Rのそれぞれの値は,
下記の範囲内にあることが望ましい。
B : 0
34
+−
G : 5
02
−
R : 4
12+−
2. 三線座標を用いた推奨許容域 参考図の破線で示した六角形(辺を含む。)の内部とする。
3. 三線座標への記入方法 最初にBの数値だけ原点から青の向きに進む。次にその点からGの数値だけ
緑の軸に平行に緑の向きに進む。最後にその位置からRの数値だけ赤の軸に平行に赤の向きに進む。ISO
色特性指数が0/7/5のレンズの例を参考図に示す。
参考図
8
B 7097-1986
附属書 ISO色特性指数を求めるための写真撮影用レンズの
分光透過率の測定方法
1. 適用範囲 この附属書は,ISO色特性指数を求めるための,写真撮影用レンズ(以下,レンズという。)
の分光透過率の測定方法を規定する。
2. 用語の意味 この附属書で用いる主な用語の意味は,次のとおりとする。
分光透過率 進行方向に垂直な断面の中心がレンズの光軸に一致する単色平行光線束を,レンズの物体
側からレンズの光軸に平行に入射させたとき,レンズを透過した放射束と,それに対応する入射放射束と
の比を波長の関数として示した値で,次の式(1)によって求めるもの。
λ
λ
τ
φ
φ
λ
τ
,
,
)
(
i
=
··············································································· (1)
ここに,
τ (λ) : 分光透過率
φτ, λ: レンズを透過した波長λの放射束
φi, λ: φτ, λに対応する波長の入射放射束
3. 測定装着
3.1
光学系 光学系は,附属書図1(a)又は(b)に示すものを用いる。
3.2
光源 光源は,原則として白熱電球とし,時間的に安定な,波長360nm以上680nm以下の放射束を
放射するものとする。
3.3
モノクロメーター モノクロメーターは,原則としてダブルモノクロメーターとする。プリズム形,
回折格子形のいずれを用いてもよいが,回折格子形の場合は,高次の回折光による誤差が生じないように
配慮しなければならない。波長範囲は,360nm以上680nm以下とする。波長幅及び波長間隔は,それぞれ
10nm以下で可変とする。
3.4
コリメーター コリメーターには,アポクロマート又は軸外し放物面鏡を用いる。その焦点距離は,
モノクロメーターの射出スリットの長さの100倍以上であることが望ましい。アポクロマートは,波長
360nm以上680nm以下のどの単色光に対する焦点距離も等しいことが望ましい。また,空気と接するレン
ズ面には,上記の波長範囲の放射束の反射ができるだけ少なくなるようなコーティングをすることが望ま
しい。
3.5
開口絞り 開口絞りには,開口の形が円形でその直径が可変のものを用いる。絞りの表面には,反
射率の低い黒色つや消し塗装を施す。
3.6
積分球 積分球には,その半径が,原則として被測定レンズの焦点距離より小さく,かつ被測定レ
ンズの入射ひとみの直径の21より大きいものを用いる。積分球の開口の直径は,入射ひとみの直径の21より
大きくなければならない。内部には,分光反射率が波長360nm以上680nm以下の範囲でなるべく一定で,
均等拡散性の塗装を施す。
3.7
測光器 測光器は,波長360nm以上680nm以下の放射束に対して十分に応答しなければならない。
積分球に取り付けるときは,測光器の受光部の表面を積分球の内壁面と一致させなければならない。受光
部の表面積は,なるべく小さく,受光部の表面の反射指向特性及び分光特性は,積分球の内壁面の特性に
近くなければならない。測光器の応答の直線性からの外れは,0.1%以下とする。
9
B 7097-1986
附属書図1 測定光学系
4. 測定条件及び測定の手順
4.1
測定条件 測定条件は,次による。
(1) 波長範囲は,360nm以上680nm以下とする。
(2) 波長間隔及び波長幅は,それぞれ10nmとする。
4.2
測定手順 測定手順は,次による。
(1) モノクロメーターの波長目盛を波長λにセットする。
(2) 開口絞りの直径を,被測定レンズの入射ひとみの直径の21になるように調節する(1)。
注(1) 被測定レンズの入射ひとみが非常に大きいか又は小さい場合は,開口絞りの直径の入射ひとみ
の直径に対する比を変えてもよい。
(3) 測光器の指示値(φi, λに比例した値)を記録する。
(4) 被測定レンズを,その物体側の面が開口絞りの方を向くようにして,開口絞りと積分球の間に置く。
(5) 附属書図2(a),(b)に示したように,被測定レンズを透過して積分球に入る光線束によって照らされて
いる積分球の内壁の部分の面積が,被測定レンズがないときの照射面積と±20%の誤差で一致するよ
うに被測定レンズの位置を調節する。この際,開口絞りとレンズ前面との相互反射及びレンズ後面と
積分球開口との相互反射による影響が生じないように注意する。
なお,被測定レンズがミラーレンズの場合には,附属書図3(a),(b)のように被測定ミラーレンズな
どを配置する。
(6) 測光器の指示値(φt, λに比例した値)を記録する。
10
B 7097-1986
(7) (6)で測定した指示値の,(3)で測定した指示値に対する比を算出し,波長λにおける分光透過率τ (λ) を
得る。
(8) 波長を次々に変えて同様の測定を行う。
附属書図2 被測定レンズの配置
11
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附属書図3 被測定ミラーレンズの配置
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
辻 内 順 平
東京工業大学工学部
(幹事)
☆ 藤 井 澄
オリンパス光学工業株式会社
(幹事)
○ 近 藤 英 樹
財団法人日本写真機光学機器検査協会
小 瀬 輝 次
千葉大学工学部
久 保 走 一
千葉大学工学部
半 田 武
通商産業省機械情報産業局
松 本 大 治
通商産業省工業技術院標準部機械規格課
市 川 泰 憲
カメラ記者クラブ(写真工業出版社)
川 本 和 夫
全日本カラーラボ協会連合会(株式会社フジカラーサービス)
島 根 保 治
全日本写真材料商組合連合会
保 積 英 次
社団法人日本映画テレビ技術協会(東京工芸大学短期大学部)
三 堀 家 義
社団法人日本写真家協会
山 本 豊 孝
社団法人日本映画機械工業会
○ 大久保 斤 二
写真感光材料工業会(富士写真フイルム株式会社)
○ 須 賀 恒 夫
写真感光材料工業会(小西六写真工業株式会社)
○ 阿 部 治 男
ミノルタカメラ株式会社
○ 小 島 忠
小西六写真工業株式会社
○ 篠 田 守 正
日本光学工業株式会社
○ 田 島 晃
キヤノン株式会社
○ 松 尾 博 文
旭光学工業株式会社
○ 鈴 木 憲 章
日本写真工業会
(☆:小委員会主査; ○:小委員会委員)