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B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人日本規格協会 (JSA) /社団法人日

本工作機械工業会 (JMTBA) から工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申し出があり,日

本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって JIS B 6191 :

1993

は改正され,この規格に置き換えられる。

今回の改正は,対応国際規格である ISO 230-1 : 1996 Test code for machine tools−Part 1 : Geometric

accuracy of machines operating under no-load or finishing conditions

との整合化を図るため改正を行った。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

JIS B 6191

には,次に示す附属書がある。

附属書 A(参考)  工作機械精度試験用測定器

附属書 B(参考)  参考文献


日本工業規格

JIS

 B

6191

:

1999

(ISO 230-1 :

1996

)

工作機械−静的精度試験方法及び

工作精度試験方法通則

Machine tools

−Geometric

accuracy tests and practical tests

−Test methods

序文  この規格は,1996 年に第 2 版として発行された ISO 230-1,Test code formachine tools−Part 1 :

Geometric accuracy of machines operating under no-load or finishing conditions

を翻訳し,技術的内容及び規格

票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。

  なお,この規格で下線の点線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。

  この規格では,定義,測定方法,測定器及び許容値に関する一般事項について規定するとともに,試験

のための準備運転,工作精度試験,静的精度試験及び特殊な試験について規定する。

附属書 A(参考)は,工作機械の精度試験に使用する測定器に関する情報を追加したものである。

附属書 B(参考)は,この規格の引用規格である。

静的精度試験は,構成要素の寸法,形状及び位置,並びに構成要素間の相対位置の試験からなる。この試

験は,工作機械の構成要素に影響するすべての運転を含む(面の平面度,軸の一致度及び交差度,直線及

び平面の平行度並びに直角度)

。この試験は,機械運転の精度に影響を及ぼす寸法,形状,位置及び相対運

動だけを対象とする。

工作精度試験は,工作機械の設計仕様に沿った適切な工作物を加工すること,及びあらかじめ決めた限界

及び公差をもっていることを試験することからなる。

1.

適用範囲  この規格は,無負荷又は仕上げ条件で行う工作機械の静的精度及び工作精度の試験方法に

ついて規定する。これらの試験方法は,静的精度及び工作精度が関係する産業用機械に適用してもよい。

この規格は,切りくずを出すか又は塑性変形によって金属,木材などを加工する動力で駆動される機械

に適用するが,加工中に手で持って操作する可搬形の機械には適用しない。

この規格は,幾何学的な精度試験だけを規定する。特に,工作機械の精度を試験する前に通常は行って

おくのが望ましい運転試験(振動,運動部品の動きの滑らかさなど)又は特性試験(回転速度及び送り速

度)については,規定しない。

この規格に規定されていない測定方法が,同等又はそれ以上の精度で測定できるものであれば,その方

法を使用してもよい。

2.

一般事項

2.1

静的精度に関係する定義  この規格で規定する測定上の定義は,幾何学的定義と区別するのが望ま

しい。


2

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

幾何学的定義は,抽象的であり,仮想的な直線及び平面だけに関係している。そのために,幾何学的定

義は,ときどき実際に使えないことがある。この幾何学的定義は,実際の機械構造又は静的精度の実用性

を考慮に入れていない。

測定上の定義は,測定ができる実際の直線及び平面を考慮していることから,実際的である。測定上の

定義には,一つの結果に微視的及び巨視的な幾何学的偏差が含まれているが,それらを区別することなく,

偏差のすべての要因を含んだ結果を許容する。その区別は,製造業者が行うのが望ましい。

場合によっては,混乱を排除するため及び使用する用語を明らかにするために,この規格では幾何誤差

の定義(例えば,振れ,周期的軸方向の動きなどの定義)を使用している。しかし,試験方法,測定器及

び許容値を規定するときは,基本的には測定上の定義を使用する。

2.2

試験方法及び使用する測定器  静的精度及び工作精度の試験において,許容値を超えないことを試

験するだけでよい場合(例えば,限界ゲージ)

,又は長時間かかる高精度な測定によらなければ偏差を求め

ることができない場合には,測定の代わりに許容値の限界を超えていないことを確かめるだけで十分であ

る。

測定器及び測定方法に起因する測定の不確かさを試験中に考慮に入れることが望ましい。測定器は,試

験する許容値の幅を超えるような測定の誤差を引き起こしてはならない。使用する測定器の精度は,環境

によって変化するので,各測定器の校正表を使用するのが望ましい。

試験を行う工作機械及び測定器は,風,光又は熱輻射(日光,近くの照明など)から保護し,かつ,測

定器の温度は,測定を始める前に安定した状態にしておくのがよい。工作機械は,外部の温度変化の影響

がないように安定した状態にしておく。

測定は,できるだけ繰り返して行い,その平均値を測定値とするのが望ましい。平均値を求めるときは,

個々の測定値のばらつきが小さいほうがよい。ばらつきが大きい場合には,その原因が測定器,測定方法

又は工作機械のどれにあるかを明らかにするのが望ましい。

測定器の詳細は,

附属書 A(参考)参照。

2.3

許容値

2.31

この規格で規定する許容値  許容値は,超えてはならない限界値であり,工作精度だけでなく,工

具,重要部品及び付属品の取付けに不可欠な寸法,形状,位置及び運動に適用する。

工作物だけに適用する許容値もある。

2.311

測定単位及び測定範囲  許容値を決めるときには,次の 3 項目を示す必要がある。

a)

測定単位

b)

許容値の基準及びその値並びに基準に対する許容値の位置

c)

測定範囲

許容値と測定範囲とは,同じ単位系で表さなければならない。許容値,特に寸法の許容値は,工作機械

の構成要素の国際規格又は日本工業規格が適用できる場合には示さない。角度の許容値は,度,分,秒又

は正接 (mm/mm) で表す。

許容値が所定の測定範囲で既知の場合には,その測定範囲とほぼ同等の範囲の許容値には,比例則を適

用する。ただし,基準とする測定範囲と大きく異なる場合の許容値には,比例則を適用できない。すなわ

ち,許容値は,この比例則を適用して得られた値よりも,測定範囲が小さいときには大きくなり,測定範

囲が大きいときには小さくなる。

2.312

許容値の取扱い  許容値は,使用する測定器及び測定方法に起因する不確かさを含む。測定の不確

かさは,最終的には許容値の中に考慮するのが望ましい(2.2 参照)


3

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

例  振れの許容値  xmm

測定器の不確かさ及び測定誤差  ymm

測定値の読みの最大許容差    (xy) mm

比較測定による精度の不確かさ及び測定の基準面として用いた機械部分の形状の不確かさによる誤差は,

測定器の支持台又は測定子で覆われる面を含めて考慮することが望ましい。

実際の偏差にはこれらの誤差要因が含まれるので,数回の読みの平均値から求めるのが望ましい。

基準として選ぶ線又は面は,工作機械と直接関係するものから選ぶのが望ましい(例えば,旋盤のセン

タ間の軸線,中ぐり盤の主軸,平削り盤の案内面)

。許容値の向きは,2.324 に従って定義する。

2.32

許容値の種類

2.321

工作物及び構成要素に適用する許容値  JIS B 0021 に規定された製品の幾何特性仕様 (GPS) は,

個々の工作物及び構成要素の幾何学的な精度に関係し,この幾何公差表示方式は,製造図面に適用する。

2.321.1

寸法の許容値  この規格に規定する寸法の許容値は,工作精度試験で使用する工作物の寸法,並び

に工作機械に取り付ける切削工具及び測定器のはめあい寸法(主軸テーパ穴,タレット工具取付穴)だけ

に適用する。寸法の許容値は,呼び寸法からの偏差の許容できる限界値であって,長さの単位で表す(例

えば,工具を取り付け,心出しするための軸受と穴との直径の偏差)

寸法の偏差は,数字又は JIS B 0401 に規定する記号で表示するのが望ましい。

例 80

012

.

0

007

.

0

+

又は 80j6

2.321.2

形状の許容値  形状の許容値は,理論的な幾何学的形状からの許容できる偏差(例えば,平面,直

線,円筒面,ねじ又は歯車の歯からの偏差)の限界値であって,長さ又は角度の単位で表す。測定器の測

定子又は支持面は,ある大きさをもっているために,形状誤差の一部を検出しているに過ぎない。したが

って,精度の高い測定が必要な場合には,測定子又は支持面で覆われる面積を正確に示さなければならな

い。

測定子の面及び形状は,測定すべき面の微細形状に適したものがよい(定盤と大形平削り盤のテーブル

とは同じ測定子では測定しない。

2.321.3

位置の許容値  位置の許容値は,直線,平面又は工作機械の他の構成要素に対する構成要素の位置

に関係する許容できる偏差(例えば,平行度,直角度,同軸度などの偏差)の限界値であって,長さ又は

角度の単位で表す。

位置の許容値が,異なる二つの平面内での別々の測定によって定義されるとき,その二つの平面からの

偏差が工作機械の加工精度に影響を及ぼさない場合には,許容値は,それぞれの平面で決めるのが望まし

い。

備考1.  位置を形状の誤差をもつ面から決めるときは,位置の許容値を決める際に,この面の形状誤

差を考慮するのが望ましい。

2.321.4

位置の誤差を求めるときの形状誤差の影響  二つの面又は二つの線(図 参照,線 XY 及び ZT)

の相対位置の誤差を求めるとき,測定器の読みにはさまざまな形状誤差が含まれる。原理的には,この測

定は,二つの面又は二つの線の形状誤差を含む全誤差を求めるときだけに適用する。したがって,許容値

には,関係する面の形状の許容値を考慮に入れなければならない(これらが役立つと考えられれば,相対

位置を決定する面又は線の形状の誤差を確かめておくとよい。

測定器の読みの差 mn は,図示すると ab のような曲線になる(

図 参照)。誤差は,規定として,この

曲線の代わりに 5.211.1 に規定する直線 AB を使って求める。


4

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 1

2.321.5

部分許容値  形状及び位置の許容値は,通常,全体としての形状又は位置(例えば,平面度又は真

直度 1 000mm について 0.03mm)に関係するが,部分長さに対する許容値は,全体の長さに対する許容値

とは別に決めてもよい。

部分許容値は,線又は構成要素の運動の軌跡の一部分の総体的な向きに平行な二つの直線間の間隔であ

る。これには,この部分の最大偏差を含む(

図 参照)。

図 2

部分許容値  (T

local

)

の決め方は,次のいずれかによるのがよい。

−  個別機械の規格による。

−  全許容値  (T

total

)

から比例配分によって求める。ただし,最小値は,0.001mm 以上とする(

図 3

参照)

図 3

1

2

L

L

T

T

total

local

×

=

T

total

=0.03mm

L

2

=1 000mm

L

1

=1 00mm

とすると,部分許容値は,


5

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

mm

T

local

003

.

0

100

1000

03

.

0

=

×

=

実際上,部分的な欠陥は,測定器の支持面又は測定子によって覆われるので,一般的にわずかである。

しかし,相対的に小さな測定子(ダイヤルゲージ又は電気マイクロメータの測定子)を使用する場合には,

測定器は,測定子が精密に仕上げられた面(直定規,テストバーなど)に当てるようにするのが望ましい。

2.322

構成要素の運動精度の許容値

備考2.

数値制御による位置決め精度については,JIS B 6192参照。

2.322.1

位置決めの許容値  位置決めの許容値は,運動部品上の一点が運動後に到達した位置の,目標位置

からの偏差の許容できる限界値を表す。

1.

4参照)運動部品の移動の終点で,偏差

d

は,到達した実際の位置と目標位置との間の距離

である。位置決めの許容値は,

p

である。

2.

5参照)回転軸に取り付けた割出し板の角度に対する回転軸の回転角。位置決めの許容値は,

p

である。

図 4

図 5

2.322.11

繰返し精度の許容値  繰返し精度の許容値は,一方向又は両方向から繰り返して位置決めしたと

きの,目標位置と実際の位置との偏差のばらつきの限界値を表す。

2.322.2

運動軌跡の許容  値運動の軌跡の許容値は,運動部品上の一点の実際の軌跡と理論上の軌跡との偏

差の限界値である(

図 参照)。偏差は,長さで表す。

図 6

図 7

2.322.3

直進運動の相対位置の許容値(図 参照)  直進運動の相対位置(平行度,直角度など)の許容値

は,運動部品上の一点の軌跡と規定した直線又は平面(例えば,直線又は平面と軌跡との平行度又は直角

度の偏差)との許容できる偏差の限界値である。許容値は,全長

L

又は任意の測定長さ

l

について長さの

単位で表す。

2.322.4

構成要素の運動の部分許容値  位置決め精度,運動の軌跡及び直進運動の向きの許容値は,運動部

品の全移動距離と関係する。部分許容値が必要な場合の定義及び許容値の決め方は,2.321.5 による。

2.323

複合許容値  複合許容値は,

1

回の測定に含まれる複数の要因による偏差の総和の許容できる限界値

である。個々に偏差を決める必要はない。


6

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

軸の振れの偏差は,形状の偏差(測定子が接触している円周断面

ab

の真円度)

,位置の偏差(幾

何学的中心と軸の回転中心との一致度)及び軸受の穴の真円度の偏差の総和である(

図 参照)。

図 8

2.324

軸,案内面などの相対角度位置に対する許容値の符号及び位置  所定の位置に対する許容値の位置

が対称のとき,符号±を使う。許容値の位置が所定の位置に対して非対称の場合は,機械又は機械の構成

要素との関係を言葉で詳細に規定する。

2.325

軸及び運動の従来の定義  直進運動軸及び回転運動軸の名称は,混乱の生じるおそれのある前後方

向,長手方向などの用語の使用を避けるために,JIS B 6310 に従って文字(例えば,

X

Y

Z

)及び符号

で呼ぶ。

3.

試験の準備

3.1

試験前の機械の据付け  工作機械は,試験する前に製造業者の指示に従って適切な基礎の上に据付

けし,水平出しをすることを基本とする。

3.11

水平出し  工作機械を据え付けるときの準備作業として,水平出し(3.1 参照)を行う。水平出しは,

試験する個々の工作機械ごとに異なる。

水平出しの目的は,特にある構成要素の真直度に対して,その後に行う測定を容易にするために,機械

が静的に安定な状態になるようにすることである。

3.2

試験前の機械の状態

3.21

構成要素の取外し  試験は,一般に完成した機械で行うので,構成要素を取り外すことは,例外と

してだけ行う。その場合には,製造業者の指示に従って行うのが望ましい(例えば,案内面を検査するた

めにテーブルを取り外す場合)

3.22

試験前の構成要素の温度状態  この試験の目的は,潤滑及び暖機に関しては,通常の運転状態にで

きる限り近い状態にして機械の精度を評価することである。静的精度及び工作精度の試験中に,主軸のよ

うな部品は温度が上昇して,位置又は形状が変化するおそれがあるが,使用条件及び製造業者の取扱説明

書に従って無負荷で運転して適切な温度にしなければならない。

高精度の工作機械,数値制御工作機械などのうち,温度の変化が精度に著しい影響を及ぼす場合は,特

殊な条件を適用してもよい。

通常行う運転中に,室温から加工時の温度まで変化する間に,機械各部の寸法がどの程度変わるかを考

慮する必要がある。

機械を試験するときの予備運転条件及び室温は,

受渡当事者間の協定によるのがよい。

熱変形は,主に次の領域で生じる。

a)

構成要素(主軸を含む)の運動,特に主平面及び軸平面内で

b)

位置決め精度が送りねじに関係するとき,軸駆動及び位置決めフィードバックシステム


7

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

3.23

運転条件及び負荷条件  静的精度試験は,機械が停止状態又は無負荷運転状態のときに行う。製造

業者が特に指定する場合,例えば,強力切削形工作機械のような場合には,一つ以上の工作物を機械に負

荷する。

4.

工作精度試験

4.1

工作精度試験条件  工作精度試験は,標準の工作物又は使用者の提供した工作物を用いて行う。工

作精度試験の実施に際しては,その機械でできる以外の運転を要求してはならない。工作精度試験は,そ

の機械の設計に合致した仕上げ運転で行う。

加工する工作物の数又は場合によっては支給された

1

個の工作物で行う加工回数は,平均的な工作精度

を決定できるように決める。必要があれば,使用する工具の摩耗を考慮するのが望ましい。

加工する工作物の寸法,材料,得られる精度及び加工条件の規定が個別規格にない場合には,受渡当事

者間の協定によって決める。

4.2

工作精度試験方法  工作精度試験における工作物の試験は,測定の項目及び必要な精度の程度に応

じて選んだ測定器で行う。

2.321

,特に 2.321.1 及び 2.321.2 に示した許容値は,工作精度試験に適用する。

特定の工作機械の場合には,工作精度試験は,対応する個別規格に規定されている特殊な試験(例えば,

剛性試験,運動学的試験)で置き換えるか又は補足してもよい。

5.

静的精度試験

5.1

一般  ここでは,工作機械の直線又は平面の形状,位置又は運動に関係する次の

5

項目の静的精度

試験の定義(

1

)

,測定方法及び許容値の決め方について規定する。

真直度

5.2 参照)

平面度

5.3 参照)

平行度,等距離度及び一致度(5.4 参照)

直角度

5.5 参照)

回転精度

5.6 参照)

(

1

)

2.1

参照。

この規格では,各試験項目に対して少なくとも一つの測定方法を示し,使用する測定原理及び測定器を

示す。

この規格に規定する以外の測定方法を使用する場合には,その精度は,少なくともこの規格に示す測定

方法による精度と同等でなければならない。

この規格では,測定方法は,簡単のために,直定規,テストバー,円筒スコヤ,精密水準器及びダイヤ

ルゲージのような基本的な測定器を使用する方法から系統的に選択しているが,ここに規定する以外の方

法,特に工作機械の組立部門又は検査部門では,実際に光学式測定器が使われることが多い。大形の工作

機械の試験では便利さ及び迅速さから特殊な測定器の使用が必要なことがある。

5.2

真直度  真直度の試験項目は,次の

3

項目とする。

平面内又は空間内の線の真直度(5.21 参照)

構成要素の真直度

5.22 参照)

運動の真直度

5.23 参照)

5.21

平面内又は空間内の線の真直度


8

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.211

定義

5.211.1

平面内の線の真直度(図 参照)  一つの平面内にある線は,その線上の所定の長さの間のすべて

の点が,

その線の総体方向に平行な二つの直線の間にあって,

この

2

直線の間隔が許容値に等しいときに,

所定の長さに対して真直であるとみなす。

線の総体方向又は代表直線は,真直度の偏差を最小にするように決める。通常は,次のいずれかによる。

測定すべき線の両端近傍の適切に選んだ二つの点を結んだ直線(ほとんどの場合は,両端に近い

部分には局部的に重要でない不整があるので無視する。

測定したすべての点から求めた直線(例えば,最小二乗法)

図 9

図 10

5.211.2

空間内の線の真直度(図 10 参照)  空間内の線の真直度は,その線の総体方向に平行な指定され

た直交

2

平面への投影のそれぞれが真直であるとき,所定の長さに対して真直であるとみなす(5.211.1 

照)

備考3.

許容値は,それぞれの平面で異なってもよい。

5.212

測定方法  真直度の測定方法は,次のいずれかによる。

長さの測定による方法

角度の測定による方法

真直度の実際の基準は,物理的な直線(直角定規,鋼線)又は精密水準器,光学機器の光軸などで与え

られる基準線とする。

測定長さに応じて,次のような測定器を使用することを推奨する。

a)

測定長さ

1 600mm

以下の場合:精密水準器又は物理的基準(例えば,直定規)

b)

測定長さ

1 600mm

を超える場合:基準線(例えば,精密水準器,光学機器又は鋼線)

5.212.1

長さの測定による方法  物理的な基準(真直度の基準)は,適切に測定器を使用するために,試験

すべき線に対して適切な位置に置く(

図 11 参照)。

図 11

測定器は,直線の基準に対する試験すべき線の読みの偏差を与える。この読みは,その線の全長にわた

ってできるだけ多くの点(等間隔又は不等間隔)で取る(測定点の間隔は,使用する測定器と関係なく選

んでよい。

両端の読みが,ほぼ等しくなるように真直度基準を定置することを推奨する。読みは適切な尺度で直接

図示する。


9

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

結果は,代表直線を決めた後に求める(5.211.1 参照)

。正しい偏差は,間隔

Mm'

で表された値である。

真直度の偏差は,代表直線に平行で,偏差の最大値と最小値とを通る

2

直線間の間隔として定義される。

備考4.

代表直線の傾きが大きい場合には,縦倍率を考慮するのが望ましい。

5.212.11

直定規による方法

5.212.111

垂直面内での測定  直定規は,できれば,自重によるたわみが最小となる

2

点で支持ブロック上

に置くのが望ましい(最適な支点は,

附属書 A.2 参照)。

測定は,

3

点支持式のダイヤルゲージ取付台に取り付けたダイヤルゲージを直定規に沿って滑らせて行

う。三つの支持点の一つを測定すべき面上に置き,ダイヤルゲージの測定子をその法線上で直定規に当て

る(

図 12 参照)。

図 12

取付台は,直線(案内用直定規)に沿って滑らせる。

直定規の既知の誤差は,必要があれば真直度の結果を求めるときに考慮する。

5.212.112

水平面内での測定  水平面内での測定の場合には,平行平面をもつ直定規を水平に定置して使用

するのが望ましい。

ダイヤルゲージの測定子を直定規の基準面に当てて(

図 13 参照),試験すべき面に沿ってダイヤルゲー

ジを移動させる。線の両端で読みが等しくなるように直定規を定置する。直線に対する線の真直度の偏差

は,読みの最大値と最小値とから直接読み取ることができる。


10

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 13

支持台上の直定規のたわみが何であれ,直定規の基準面の真直度は,実際に重力によるたわみに影響さ

れないことに注意するのが望ましい。

直定規による水平面内の真直度の測定方法の別の特徴は,測定すべき面と直定規の基準面との両方の真

直度の偏差を測定できることである。

この二つの偏差をそれぞれ別に求めるためには反転法を用いる。反転法は,

1

回目の測定の後に,直定

規を長手方向の軸の周りに

180

度回して反転し,

1

回目の測定と同じ測定面上の位置に置いたダイヤルゲ

ージを反転前と直定規上の同じ位置に当てることによって測定する方法である。

このようにして求めた二つの偏差曲線

E

1

及び

E

2

の一方は,

図 14 に示すように,直定規と測定する面と

の偏差の和となり,もう一方は,偏差の差となる。

図 14

平均曲線

M

は,直定規の基準面の偏差である。平均曲線と偏差曲線との差

ME

1

  (

ME

2

)

は,測定した

真直度偏差となる。

5.212.12

鋼線と測微顕微鏡とによる方法  直径約

0.1mm

の鋼線を,試験すべき線にほぼ平行になるよう

に張る(

図 15 参照)。例えば,水平面内の線

MN

の場合には,測微顕微鏡を垂直に立て,水平方向測微目

盛を動かして,水平な測定面

XY

上で測定基準となる鋼線と試験すべき線との偏差を読み取ることが可能

である(

附属書 A.9 参照)。

鋼線

F

と試験すべき線とは,

MN

を含む面に直角な同一平面内になければならない。


11

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

測微顕微鏡の支持台は,試験すべき線を含む面上に

2

点で支持され,その一つの点

P

は,測微顕微鏡の

光軸を含む測定面に垂直な面上に設置する(

図 15 参照)。

図 15

鋼線による方法は,鋼線

F

のたわみ

f

を考慮しなければならない場合には使用できない。測微顕微鏡を

水平に置いた

図 15 に示す例の場合には,鋼線のたわみが各点で分かっていれば,垂直面内の線

RS

の真直

度を測定することは可能であるが,このたわみを十分な精度で求めることは極めて難しい。

5.212.13

アラインメント望遠鏡による方法(図 16 参照)  アラインメント望遠鏡による方法を使用する

場合には,望遠鏡の光軸と標点との間の距離に相当する水平面上の高さの差

α

を,直接望遠鏡内の目盛で

読み取るか,又はマイクロメータを動かした量で読み取る(

附属書 A.10 参照)。

図 16

望遠鏡の光軸を測定の基準とする。

望遠鏡及び標点の両方を回転させることによって任意の平面内の線の真直度を測定できる。

標点の支持台には,試験すべき線を含む面上において安定性と案内とを確保するためにできるだけ多く

の数の支持点があるとよい。

標点支持台の支持点の一つ

P

を試験すべき線上に置き,5.212.12 に規定した注意をして処理する必要が

ある。

標点は,支持点の一つ

P

で試験すべき線を含む面に垂直でなければならない。

標点の支持台の移動は,適度に真直で,望遠鏡の光軸に平行になるように十分に注意する。

測定距離が長い場合には,その精度は,光軸の偏差に関係して,空気の屈折率変化の影響を受ける。


12

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.212.14

アラインメントレーザによる方法(図 17 参照)  レーザ光軸を測定の基準として用いる。レー

ザ光軸の軸に沿って移動させて,その光軸を

4

分割フォトダイオード検出器に直接向ける。この検出器に

よって光軸に対する検出器中心の水平方向及び垂直方向の偏差を検出し,記録計に出力する。アラインメ

ントレーザ測定器の取扱説明書を参考にするとよい(

附属書 A.13 参照)。

検出器支持台の支持点の一つ

P

については 5.212.13 と同じように注意する必要がある。

図 17

5.212.15

レーザ干渉計による方法(図 18 参照)  二面反射鏡の対称軸が測定の基準となる。

レーザ干渉計及び特殊な光学部品を用いて二面反射鏡の対称軸に対する目標位置の変化を検出する。こ

の光学部品及び測定方法は種々あるので,レーザ干渉測定器の取扱説明書を参考にするとよい(

附属書

A.13

参照)

支持台の支持点の一つ

P

についても 5.212.13 と同じように注意する必要がある。

図 18

5.212.2

角度測定による方法  この方法では,測定台を距離

d

だけ離れた

2

P

及び

Q

で,試験すべき線

に接触させる(

図 19 参照)。その測定台を,順次

P

0

Q

0

から

P

1

Q

1

に移動させる。このとき

P

1

Q

0

と一致さ

せる。試験すべき線を含む面に垂直な平面内に測定器を置いて,測定の基準に対する測定台の角度

α

0

及び

α

1

を測定する。

備考5.

測定台の脚間部分は,この方法では測定することができない。脚間部分の測定は,適切な長

さの直定規を使用して行う。


13

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 19

測定結果の計算は,次による(

図 20 参照)。計算結果は,適切な尺度で図示する。

横軸には脚間の距離

d

をとる。

縦軸には測定基準に対する高さをとる。相対的な水準の差は,次の式による。

Eh

i

1

dtan

α

i

図 20

試験すべき線上の点

P

0

P

1

P

2

………

P

i

…………

P

n

の位置は,適切な尺度で表示する。

代表直線は,求めた線,すなわち,両端

P

0

P

n

を結ぶ直線で定義する(5.211.1 参照)

真直度の偏差は,5.212.1 と同様に,代表直線に平行で,かつ,測定した曲線にそれぞれ接する

2

直線間

YY

軸に平行な方向の間隔から求める。

備考6.

測定台の支持点

P

及び

Q

は,測定する面の小さな欠陥の影響が最小になるよう十分な面積を

もつものが望ましい。全体の測定結果に影響を及ぼす偏差を最小にするために,支持点の表

面を十分注意し,清浄にしておく必要がある。

7.

この方法は,長い測定距離にも適用できるが,この場合の

d

の値は,測定回数が多くなるこ

と及びそれに伴う累積誤差が増えることを避けるように選択するのが望ましい。

5.212.21

精密水準器による方法  5.212.2 に従って,精密水準器(附属書 A.6 参照)を試験すべき線に沿

って順次移動させて測定する。測定の基準は,垂直面内で微小角度を測定できる精密水準器の水平線であ

る(

図 19 参照)。

測定すべき線が水平でない場合には,精密水準器は,適切な角度をもった支持台上に置く(

図 21 参照)。


14

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 21

AB

の測定中は,精密水準器及びその支持台は,例えば,案内用直定規を使用するなどして一定の向

きに保てるようにするのが望ましい。

備考8.

精密水準器は,垂直面内だけで真直度を測定できる。他の平面内での線の真直度の測定には

別の方法を用いるのがよい(例えば,鋼線と測微顕微鏡とによる方法)

5.212.22

オートコリメータによる方法  この方法では,同軸上に取り付けたオートコリメータ(図 22 

照)を用いて,水平軸周りの可動反射鏡

M

の回転が焦点面における標線の像の垂直方向変位を発生させる。

この変位は,測微目盛で測定でき,反射鏡支持台の角度偏差を求めることができる(

附属書 A.11 参照)。

図 22

測定基準は,オートコリメータの焦点面における標線の中心で決まる光軸とする。

備考9.

測微目盛を

90

度回すことによって,垂直軸周りの可動反射鏡

M

の回転角も測定できる。水平

及び垂直方向の角度を同時に測定できるオートコリメータもある。

10.

この方法は,アラインメント望遠鏡とは違って光線の往復経路による空気の屈折率の変動の

影響が少ないため,特に長い距離の測定に適している。

11.

この方法では,オートコリメータを,試験すべき線がある構成要素上に置くのが望ましい。

5.212.23

レーザ干渉計による方法(角度測定)

図 23 参照)  この方法では,干渉計を,試験すべき線が

ある構成要素上に確実に取り付けるのが望ましい。

この方法は,空気の屈折率変化にあまり影響されないために,特に高精度な測定に適している。

測定の基準は,干渉計から出る二つの平行光線

F

1

及び

F

2

である。


15

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 23

5.213

許容値

5.213.1

定義  許容値

t

は,測定面内において,代表直線

AB

に平行な

2

直線の間隔

t

の限界値である(

24

参照)

図 24 の場合の最大偏差は,間隔

MN

である。

図 24

測定の範囲,

すなわち試験すべき長さ及び代表直線

(又は代表平面)

に対する許容値の位置は,

(例えば,

中高だけ,又は中低だけのように)できるだけ示すのが望ましい。

ほとんどの場合には,両端に近い部分にある部分偏差は,通常,重要でないので無視できる。

5.213.2

許容値の決め方

L

1

以下の任意の測定長さ

L

に対して最小許容値

T

1

を決める(

図 25 参照)。

L

2

以上の任意の測定長さ

L

に対して最大許容値

T

2

を決める。

どの中間の測定長さ(

L

1

L

2

との間)に対する許容値も,比例配分によって決める。

図 25

5.22

構成要素の真直度

5.221

定義  構成要素の真直度の定義は,線の真直度の定義による(5.211 参照)。

5.222

測定方法  測定方法は,線の真直度の測定方法による(5.212 参照)。


16

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.222.1

テーブルの基準溝又は基準面  真直度の偏差を直接測定する場合には,測定台を点

P

又は

Q

を通

る直線に垂直な面内で

h

を最小に保つように置いて,偏差を読み取る(

図 26 参照)。

角度偏差測定の場合には,測定間隔

d

は,測定台支持点の間隔である(

図 27 参照)。

測定台は,

テーブル上面に平行に置いて

(全面当たりよりは,

3

S

1

S

2

及び

S

3

で当てる方が望ましい。

測定すべき線上で二つの支持点

2

P

及び

Q

を当てる(

図 27 参照)。

複雑な形状の基準面(

図 28 参照)の真直度偏差は,基準面に直角な方向ではなく,案内面の機能面(直

HH

及び

VV

の方向)内で測定する。

図 26

図 27

図 28

5.222.2

案内面  案内は,滑り面によって又は機械を分解しないと取外しできないような複雑な機構によっ

て行われる。案内面の測定は,真直度の測定と関係しており,案内面を測定器で直接測定できる場合だけ

について行うのが望ましい。より複雑な案内面の真直度は,運動部品の直進運動の測定の一部として行わ

なければならない(5.23 参照)

真直度偏差は,常に機能面内で測定するのが望ましい。一般に機能面は,水平(

図 29 の線

AA

)又は垂

直(

図 29 の線

BB

)であるとみなせるが,機械構造によっては例外もある(

図 36 参照)。

製造業者が,機能面として特殊な形状を採用することがあるので,案内面の長手方向の形状は,必ずし

も真直であるとは限らないことに注意しなければならない。

案内面は,次のように構成されている。

a)

一つの平面又は複数の小さな結合した平面

b)

複数の幅の狭い平面,円筒案内面,又はその二つの組合せ

5.222.21

V

形案内面  測定台は,

V

形案内面に

4

点で接触し,かつ,安定のために他方の案内面上に付加

支持点で支持するのが望ましい。

図 29 は逃げを設けた逆

V

を示し,

図 30 及び図 31 は逃げを設けた円筒を示す。


17

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

備考12.

付加支持点は,測定台を置いたときに無理な力を生じさせない。

図 29

図 30

図 31 

5.222.22

円筒案内面  四つの支持点をもつ測定台を円筒案内面上に置くのが望ましい。この四つの支持点

は,逆

V

の溝の中にある(

図 32 及び図 33 参照)。

測定台の付加支持点については,5.222.21 と同じように注意する。

図 32

図 33

5.222.23

一つの垂直な面  測定台は,測定すべき面に

2

P

及び

Q

で接触させる。三つの付加支持点で

測定台を案内する必要がある。この三つの付加支持点は,二つの測定接触点

P

及び

Q

の位置決めに影響し

ないで案内できるように設けるのが望ましい(

図 34 及び図 35 参照)。

備考13.

真直度偏差を直接測定するときは,測定すべき面に垂直で,接触点の一つを通る平面上で測

定を行うのが望ましい。また,角度偏差で測定するときは,測定間隔

d

を決める。


18

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 34

図 35

5.222.24

スラントベッド構造(図 36 参照)  この場合には,運動部品の機能面は,水平面に対してある

角度をなしている。

真直度の偏差は,この機能面(線

AB

)内とそれに直角な平面内とで測定する。

図 36

5.222.3

許容値  5.213 参照。

5.23

直進運動  工作機械構成要素の直進運動の試験は,機械が真直又は平らな工作物の加工することを

確かめるだけでなく,工作物上の点の位置精度が直進運動と関係することからも必要である。

5.231

定義(図 37 参照)  運動部品の直進運動は,常に次の

6

成分と関係している。

a)

運動方向の位置偏差

b)

運動部品上の

1

点の軌跡の

2

方向の直進偏差

c)

運動部品上の

1

点の

3

方向の角度偏差


19

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

Z

軸方向の運動による偏差

EXZ

:直進偏差

 EAZ

:ピッチ

EYZ

:直進偏差

 EBZ

:ヨー

角度偏差

EZZ

:位置偏差

 ECZ

:ロール

図 37

5.231.1

位置決め偏差  位置決め偏差は,2.322.1 及び JIS B 6192 による。

5.231.2

運動の直進偏差  直進運動の直進偏差は,運動部品上の機能点又は代表点の軌跡によって定義する。

機能点は,運動部品に工具を取り付ける構造では工具の位置である。運動部品に工作物を取り付ける構造

ではテーブルの中央を代表点とみなしてよい。

5.231.3

角度偏差  運動部品が直進運動するときに,直交

3

軸周りに角度偏差を生じる。これらの角度偏差

は,

図 37 に示すように,それぞれロール,ピッチ及びヨーという。

これらの偏差は,すべて直進運動に影響する。代表点の軌跡の直進運動を測定するとき,測定結果は,

すべての角度偏差の影響を含むが,これらの角度偏差の影響は,運動部品上の点の位置が代表点と異なる

場合には,同じ結果にはならないので,別々に測定しなければならない。それぞれの角度偏差の値は,運

動部品の全移動範囲の最大角度で表す。

5.232

測定方法

5.232.1

運動の直進偏差の測定方法  運動部品の機能点の軌跡の描き方は,次による。

5.232.11

直定規とダイヤルゲージとによる方法(5.212.112 参照)  直定規とダイヤルゲージとを用いて

測定するときは,直定規は,通常,基準として用いる構成要素(フライス盤,マシニングセンタ及び研削

盤の作業テーブル,旋盤のベッドなど)の上に定置する。ダイヤルゲージは,工具取付け位置に固定し,

測定子は,できるだけ工具の作用域近くにくるようにする(

附属書 A.2 及び A.7 参照)。

5.232.12

測微顕微鏡と鋼線とによる方法(5.212.12 参照)  この方法は,直定規とダイヤルゲージとによ

る方法と同じで,直定規の代わりに鋼線を張り,ダイヤルゲージの代わりに測微顕微鏡を使用する(

附属

書 A.9 参照)。

5.232.13

アラインメント望遠鏡による方法(5.212.13 参照)  アラインメント望遠鏡を使用するとき,そ

の標線を基準線に一致させて,標点を刃物台に取り付け,その標点の中心をできるだけ工具の作用域の近

くに置く(

附属書 A.10 参照)。


20

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.232.14

レーザによる方法(5.212.14 及び 5.212.15 参照)  レーザを使用するとき(真直度干渉計を使う

直接測定)

,測定の基準となる光学系を基準として選んだ構成要素上にしっかりと取り付ける。反射鏡は,

工具ホルダに取り付け,反射鏡の中心は,できるだけ工具の作用域の近くにくるようにする(

附属書 A.13

参照)

5.232.15

角度測定による方法(5.212.2 及び 5.232.2 参照)  この方法は,直進偏差の測定には推奨しない。

案内面の真直度は,測定台を点

P

及び

Q

で接触させ(

図 19 参照),脚間隔

d

で次々に測定する。

この場合には,運動部品には一般にこのような脚はなく,その長さ全体にわたって面で接触している。

この方法を用いたときの結果は,真の軌跡とは多少異なる。表面が平滑で,運動部品が表面の包絡線に

沿って運動するとすれば,直進偏差は,

図 38 に示す方法によって求められる。

i

番目の測定点での角度偏差を

θ

i

とする。

θ

i

は,

i

1

i

の中点から

i

i

1

との中点まで正しいものと

する。

θ

に顕著な変化が起これば,測定間隔は,そこで変えなければならない。

5.232.2

角度偏差の測定方法  水平面内の運動については,精密水準器によってピッチ及びロールの測定が

でき,オートコリメータ及びレーザによってピッチ及びヨーの測定ができる。

図 38

5.232.21

精密水準器による方法(5.212.2 参照)  精密水準器で測定する場合は,精密水準器を運動部品

上に定置し,運動部品を適切な間隔で移動させて,各移動ごとの精密水準器の読みを記録する。

5.232.22

オートコリメータによる方法(5.212.22 参照)  オートコリメータを使用するときは,反射鏡を

運動部品上に定置し,オートコリメータを基準直線上に定置する。

5.232.23

レーザによる方法(5.212.23 参照)  レーザを使用するときは,干渉計とビームベンダとを基準

直線上に定置し,反射鏡を運動部品上に定置する。逆に反射鏡を基準直線上に定置し,干渉計とビームベ

ンダとを運動部品上に定置してもよい。

5.233

許容値

5.233.1

運動の直進偏差の許容値  許容値は,代表直線(軌跡の総体方向)に対する機能点又は代表点の軌

跡の直進運動の許容できる偏差である。直角

2

方向における直進偏差の許容値は,異なってもよい。

5.233.2

直進運動の角度偏差の許容値  許容値は,運動部品の直進運動の許容できる角度偏差である。

角度偏差の許容値は,ピッチ,ロール及びヨーの

3

成分に対して異なってもよい。

5.3

平面度

5.31

定義  所定の測定範囲内で,すべての点がその面の総体方向に平行な二つの平面の間にあり,かつ,

所定の値によって分離できるとき,この面は,平面であるとみなす。

面の総体方向又は代表平面は,平面度の偏差が最小となるように決める。通常は,次のように決めても

よい。

試験すべき面内で便宜的に選んだ

3

点を含む平面(通常,局部的微小欠陥がある縁に近い部

分は,無視する。

最小二乗法によって測定した点群から求めた平面


21

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.32

測定方法

5.321

定盤による平面度の測定  定盤による測定では,軽油で薄めたべんがら又は酸化クロムを定盤の表

面に塗る。この定盤を測定すべき面の上に載せ,軽く前後左右に動かす。次に,定盤を取り除いて,単位

面積当たりの接触点の分布を記録する。この分布は,測定すべき面全域にわたって一様で,所定の値と等

しいことが望ましい。この測定方法は,比較的精密な仕上げ面(きさげ面又は研削面)で,面積の小さい

面に対してだけ適用できる。

5.321.1

定盤とダイヤルゲージとによる測定  測定は,定盤とその定盤上を動く研削した支持台に取り付け

たダイヤルゲージとによって行う。

この測定方法には,次の

2

通りがある。

a)

測定すべき構成要素を定盤上に置く(定盤の寸法及びダイヤルゲージ支持台の形状は,測定すべき

面全面を測定するのに十分な大きさでなければならない。

図 39 参照)。

b)

定盤を測定すべき面に対向して置く。この場合には,定盤の寸法が測定すべき面の寸法と同程度で

あれば測定できる(

図 40 参照)。

図 39

図 40

測定箇所を決めるために,格子線を描く。

面の表面の不整による読取り誤差は,次の方法によって避けることができる。

a)

表面粗さの影響を受けないように測定子先端が球面のダイヤルゲージを使用する。

b)

面の不整(きさげ面,平削り面など)を避けるために,測定すべき面とダイヤルゲージの測定子と

の間に,研削仕上げした小さな平行ブロックを置く。

備考14.

定盤上に構成要素を載せる方法(

39)では,ダイヤルゲージの位置は,定盤表面の傾きの

変化に影響される。この方法では,高精度な定盤を使用するのが望ましい。この方法では,

定盤上面の不整を考慮できないため,小部品にだけ適用する。

測定すべき面に対向して定盤を置く方法(

図 40)では,定盤に垂直に置いたダイヤルゲー

ジ支持台によって測定を行うため,結果の処理段階で定盤の不整を考慮することができる。

5.322

直定規による平面度の測定

5.322.1

直定規の変位による直線群を用いた測定  基準点が配置されている理論的な平面を最初に決める。

この目的のために,測定すべき面上の

3

a

b

及び

c

を零点として選ぶ(

図 41 参照)。次に,厚さの等し

3

個のブロックゲージをその

3

点に置く。そうすることによってこの

3

個のブロックゲージの上面が比

較する平面の基準平面になる。


22

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 41

基準平面上に置いた第

4

番目の点

d

の高さは,次のようにして決める。高さを調整したブロックゲージ

を使って,直定規を

2

a

c

との上に置き,高さ調整ブロックをその平面上の点

e

に置いて,その直定

規の底面と接触させる。したがって,ブロックゲージ

a

b

c

及び

e

の上面は,すべて同一平面にそろう

ことになる。

d

の偏差は,点

b

及び

e

上に直定規を置くことによって分かる。高さ調整ブロックを点

d

に置き,す

でに配置したブロックゲージの上面によって決まる面に当てる。

直定規をブロックゲージ

a

d

との上に,次いでブロックゲージ

b

c

との上に置くと,

2

a

d

の間及び

2

b

c

との間にあるすべての点の偏差がわかる。同様にして

2

a

b

との間及び

2

c

d

との間もわかる(直定規のたわみに対して,直定規の剛性に十分な余裕をもたせることが望ましい。

このようにして決めた長方形又は正方形の内側の読みを取るには,例えば,その高さが分かっている点

f

g

とに正確に高さを調節したブロックゲージを置いて,直定規をこれらの点の上に定置し,ブロック

ゲージを使って測定すべき面と直定規との間の偏差を測定する。

図 12 に例を示すように,真直度の測定器

を使うこともできる。

5.322.2

直定規,精密水準器及びダイヤルゲージによる測定(図 42 参照)  この方法では,精密水準器を

使って平行に定置した二つの直定規を測定基準とする(

附属書 A.6 参照)。

図 42

図 43

高さの等しい三つの支持台及び高さの調節のできる一つの支持台

a

b

c

及び

d

上に二つの直定規

R

1

及び

R

2

を置き,この二つの直定規の上面が平行で,かつ,同一平面になるように精密水準器を使って調節

する。直定規

R

を格子線に合わせて

R1

R2

とに直角に置き,ダイヤルゲージ

G

(又は標準ブロックゲー

ジ)によって直定規

R

に平行な直線

fg

上の偏差を読み取る。

直定規

R

1

及び

R

2

は,直定規

R

の質量による変形が無視できるように十分な剛性がなければならない。

測定の基準を決め,この測定基準からの偏差を測定して,図に描く。表示は,測定すべき面の全表面を

覆うように(

図 43 参照),規則的な方形格子線の交点で行う。測定点の間隔は,使用する測定器とは無関

係である。


23

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.323

精密水準器による測定  精密水準器による測定方法は,一つの位置から別の位置に測定位置を変え

ても測定基準(水平方向)の方向を一定に維持できる唯一の方法である。

角度偏差による線の真直度の測定がこの測定の基本である(5.212.2 参照)

5.323.1

長方形表面の測定  基準平面は,測定すべき面上の点

O

を通る二つの直線

OmX

及び

OO'Y

によっ

て決まる。ただし,

3

O

O'

及び

m

は,測定すべき面上の点である(

図 44 参照)。

直線

OX

及び

OY

は,互いに直角にとるのが望ましく,できれば測定すべき面の外周に平行にとる。測

定は,面の一つの隅の点

O

から

OX

の方向に行う。直線

OA

及び

OC

上の表面の輪郭を 5.212.21 に示した

方法によって求める。長手方向の線

O'A'

O"A"

及び

CB

は,面全体を覆うように決める。

この測定を確認するために,

mM

m'M'

などについても補足的に測定してもよい。

測定すべき面の幅が長さとほぼ同程度の場合には,対角線に沿った測定を行うことが望ましい。

測定結果の処理(図 45 及び図 46 参照)  図 20 に示した手順によって描いた線

Omm'A

及び

OO'O"C

結果から,

Omm'A

及び

OO'O"C

を三次元的に表示する。線

O'A'

O"A"

及び

CB

の始点は,それぞれ

O'

O"

及び

C

とする。

図 45 に示す場合には,すべての測定値が測定基準平面に非常に近いので,その基準平

面が代表平面となる。しかし,

図 46 に示す場合には,線

Omm'm"A

及び

OO'O"C

のそれぞれの代表直線が

直線

OX'

及び

OY'

の方向にあるので,代表平面は

OX'

及び

OY'

を含む平面,すなわち,平面

OABC

となる。

図 44

図 45

図 46

5.323.2

円板平面の測定  大きな円板平面は,方形格子状に測定すると測定できない部分が残る。したがっ

て,外周円と直径とを使って測定するとよい(

図 47 参照)。

備考15.

小さな円板の平面度の測定は,次のように真直度の測定を行うだけの簡単な方法で行える。


24

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 47

図 48

直交する

2

直径上の真直度の測定

この

2

直径を対角線とする四角形の辺上の真直度の測定(

図 48 参照)

a)

円周に沿った測定  精密水準器を測定すべき面に

3

点で接触する支持台

A

上に定置し,その支持台を

円板の外周に沿って一定間隔で移動させる。

b)

直径上の測定  線の真直度の測定方法による(5.21 参照)。

5.324

光学的方法による平面度の測定

5.324.1

オートコリメータによる測定  基準平面を定める直線

OX

及び

OY

は,二つの位置で,できれば互

いに直角な位置で,オートコリメータの光軸によって決める。次いで 5.212.22 に示した方法で測定する。

測定の基準平面は,オートコリメータの光軸

OX

及び

OY

の方向によって決まる。したがって,

O'A'

O"A"

及び

CB

の測定では,

オートコリメータの光軸を

OX

に平行に移動しなければならない

図 44 参照)。

5.324.2

走査形光学式スコヤによる測定  走査形光学式スコヤ(五角形プリズム)も使える。基準平面は,

面の外周部分に定置した

3

個の標点(

A

B

及び

C

)のそれぞれの中心点によって決まる(

図 49 参照)。

光学式スコヤは,望遠鏡の光軸が基準平面と直角になるように心合わせして,

4

個目の標点を使って面の

任意点の位置を測定する(

附属書 A.12 参照)。

図 49

5.324.3

アラインメントレーザによる測定  この方法では,同一平面上にある直線基準を使って測定のため

の基準平面を決めるためにアラインメントレーザと走査モジュールとを使用する(

図 50 及び附属書 A.13

参照)


25

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 50

5.324.4

レーザ測定システムによる測定  表面の形状は,角度偏差を測定することによって真直度の測定を

面上の各方向について行った結果を処理して求める(

附属書 A.13 参照)。

代表的な測定手順は,

図 51 に示す。この図では,

1

から

8

までの線で示す。

順次,線

1

から線

8

まで測定する。コンピュータ処理によって解析した結果は,三次元的な形で定盤の

平面度を図示する(

図 52 参照)。

備考16.

レーザ光軸は,ビームベンダを調節することによって水平面内で方向を調節できるが,垂直

面内でのレーザ光軸の向きに影響することがある。

図 51 


26

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 52

5.325

三次元座標測定機による測定  平面度は,三次元座標測定機

 (CMM)

で測定できる。基準平面は,

5.31

の定義に基づいた三次元座標測定機の解析プログラムによって求められ,この基準平面に対する偏差

を求める(

図 43 参照)。

5.33

許容値  平面度の許容値は,面の総体方向に平行な二つの平面間の間隔

t

によって決める。

測定範囲と代表平面に対する許容値の位置とを規定するのが望ましい。

平面度の許容値の表示は,次による。

両端の間で,面の中低及び中高が許される場合

平面度の許容値:……

mm

両端の間で,面の中低(又は中高)だけが許される場合

中低(又は中高):……

mm

部分許容値が規定してあり,中低及び中高の両方が許される場合

部分許容値:……

mm

×……

mm

について……

mm

この場合の許容値は,

“部分許容値”として知られている。

備考17.

測定結果は,測定器の測定子接触面の状態に影響されることがある。必要があれば,この接

触面の状態を規定してもよい。

5.4

平行度,等距離度及び一致度  この測定には,次の

4

項目が含まれる。

線及び面の平行度

5.41 参照)

運動の平行度

5.42 参照)

等距離度

5.43 参照)

同軸度,一致度又はアラインメント

5.44 参照)

5.41

線及び面の平行度

5.411

定義  一つの面と一つの面との間では,面とそれに垂直で,多数の点で線を含む平面との交線の代

表直線(5.211.1 参照)と線との距離を測定したとき,所定の範囲内でその最大差が許容値を超えなければ,

線は,面に対して平行であるとみなす。


27

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

二つの線の間では,一方の線が他方の線の代表直線を通る二つの平面に平行であるとき,二つの線は平

行であるとみなす。この場合の平行度の許容値は,二つの平面で同じでなくてよい。

二つの面の間では,一方の面の代表平面と他方の面との間隔を少なくとも二方向で全面にわたって測定

したときの最大差が,所定の面の長さに対して合意した値を超えないとき,この二つの面は平行であると

みなす。

最大差とは,測定したときに得られる最大値と最小値との差である。

これらの最大差は,所定の面(水平面,垂直面,測定すべき面に対して直角な面,測定すべき軸と交差

する面など)で,所定の長さ(例えば,

300mm

)又は所定の面の大きさ(面全体)について測定する。

備考18.

平行度は,線(又は面)の代表直線(又は代表平面)と他の線又は面との間隔の差で表す。

基準として選んだ代表直線(又は代表平面)が逆になれば,結果が異なることがある。

5.412

測定方法

5.412.1

軸についての一般事項  平行度の測定において軸を含む場合には,測定部分の形状精度が高く,表

面粗さが小さく,かつ,長さも十分な円筒面であれば,軸自身を直接使用してもよい。主軸の表面がこの

条件を満たさない場合,又は主軸穴内面で,その穴に測定子を挿入できない場合は,補助として円筒面(テ

ストバー)を使用する。

テストバーの取付け及び心出しは,工具又は他の取付具を取り付けるように設計された軸端,円筒穴又

はテーパ穴で行う。

主軸穴にはめたテストバーを回転軸の代表とする場合は,回転軸にテストバーを正確に心合わせできな

い。主軸を回転させると,テストバーの軸線は,双曲線(又は,テストバーの軸が回転軸中心線と交差す

るときはテーパ面)を描き,測定平面内で二つの位置

B

B'

を取る(

図 53 参照)。

図 53

平行度の測定は,これらの条件下で,主軸の回転角度位置に影響されるが,

180

度回転させてから測定

を繰り返して行うのがよい。二つの読みの平均は,所定の平面内での平行度の偏差を表す。

また,テストバーを平均位置

A

“振れの平均位置”と呼ばれる。

)まで回転させて,この位置だけで測

定を行ってもよい。

180

度回転させて二つの読みをとる方法は,振れの平均位置で測定する方法とほぼ同じ速さで測定でき

るが,精度がそれよりも高い。

備考19.

“振れの平均位置”とは,次のように理解できる。すなわち,ダイヤルゲージの測定子を測

定平面内で回転軸中心を代表する円筒面に当てる。主軸をゆっくり回転させたときにダイヤ

ルゲージの読みを取る。主軸は,ダイヤルゲージの指針が読みの中央の値を示すとき,振れ

の平均位置にあるという。

5.412.2

二つの面の平行度  二つの面の平行度の測定は,次による。測定は,

2

方向,できれば互いに直角

な方向について行うのが望ましい。


28

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.412.21

直定規とダイヤルゲージ  ダイヤルゲージを平らな底面をもった測定台に取り付け,案内用直定

規に測定台を接触させて,所定の範囲まで基準とする面上を動かす。測定子は,もう一方の面に当てて滑

らせる(

図 54 参照)。

図 54

5.412.22

精密水準器による方法  精密水準器を比較する二つの面に渡した測定台に載せる。面に沿って移

動させて,次々に精密水準器の読みを取る。読み(角度)の最大差が角度による平行度の偏差となる。こ

の偏差に測定台の脚間隔

l

を掛けることによって長さによる平行度の偏差が求められる(

図 55 及び附属書

A.6

参照)

二つの面に測定台を渡すことが困難な場合には,測定台を用いないで水平面を測定基準とし,個々の面

に沿って読みを取る(5.212.2 参照)

。対応する位置での読みの差が平行度を表す。

図 55

5.412.3

二つの軸の平行度  測定は,

2

平面内で行う。

二つの軸を含む面内で

次いで第二の面内で,できれば最初の平面に直角な面内で

5.412.31

二つの軸を含む平面内での平行度(

2

)

  測定器を適切な形状の底面をもった測定台に取り付けて,

一方の軸を代表する円筒面に沿って滑らせる。

その測定子を第二の軸を代表する円筒面に沿って滑らせる。

(

2

)

この表現は,二つの軸の一つを含む平面を意味し,もう一つの軸にできるだけ近くにとる。

任意の点での

2

軸間の読みの最小値を求めるために,測定器をその軸に直角な方向にわずかに揺り動か

す(

図 56 参照)。必要があれば,測定台を載せる側の軸が測定中に支持している測定台の重量によって生

じるたわみを考慮する。


29

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 56

5.412.32

第一の平面に平行な第二の平面  この測定方法は,もう一つ平面を追加する必要がある。できれ

ば二つの軸を含む平面に平行な平面を追加する。

追加した平面があれば,この二つの軸が機械の面に平行であることから,各軸の平行度は,分けて考え

られ,5.412.4 に規定した方法で求める。この追加した平面がなければ,測定は,気泡管の調整できる精密

水準器を使って理論上の平面を基準として行うのが望ましい。そのためには,二つの軸を代表する二つの

円筒面に精密水準器を置いて,その目盛をゼロに設定する。二つの軸が水平面内にない場合には,補助と

して測定台(

図 57 及び図 58 参照)を使用してもよい。

精密水準器を所定の距離だけ軸に沿って移動させ,読みを取る。測定値は,

2

軸間の距離に換算して表

す。例えば,この軸間距離が

300mm

で,精密水準器の読みが

0.06mm/1 000mm

であれば,平行度の偏差は,

0.06

×

0.3

0.018mm

となる。

図 57

図 58

5.412.4

軸と面との平行度  測定器を平らな底面をもった測定台に取り付けて,面に沿って所定の距離だけ

動かす。その測定子を,軸を代表する円筒面に沿って滑らせる(

図 59 参照)。

測定の各点で,測定器を軸に直角な方向にわずかに動かして読みの最小値を読み取る。軸が旋回する場

合には,中央位置と旋回の両端の位置とで測定を行えば十分である(

図 60 参照)。

備考20.

軸を代表する円筒の平行度偏差については,5.412.1参照。


30

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 59

図 60

5.412.5

軸と二つの面の交線との平行度  測定器を二つの面にはまる適切な形状の底面をもった測定台に

取り付ける。次に,その測定器を,交差する二つの面の交線に沿って所定の距離だけ移動させ,測定子を

軸を代表する円筒に沿って滑らす(

図 61 参照)。測定は,できるだけ工作機械の運転にとって最も重要と

考えられる直交

2

平面内で行う。

備考21.

軸を代表する円筒の平行度偏差については,5.412.1参照。

図 61

5.412.6

二つの面の交線と第三の面との平行度  二つの面の交線と第三の面とが互いに測定しやすい位置

に配置されている場合には,測定台と精密水準器とを使用する(

図 62 参照)。精密水準器を定置した測定

台を交線に沿って移動させ,読みの最大差に,交線と平面の中央位値との間隔

l

を乗じた値を平行度の偏

差とする(5.412.32 参照)

第三の面の配置が測定上不都合な位置にある場合には,測定台とダイヤルゲージとを使用する(

図 63

参照)

。その測定子を第三の面に直角に当て,交線に沿って移動させて,次々に読みを取る。


31

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 62

図 63

他の測定方法については,5.412.2 参照。

測定台の座面の角度は,二つの面の交差角と正確に一致していなければならない。これは,ベンガラの

ような塗布剤で測定できる。

5.412.7

交線と交線との平行度  この測定は,5.412.5 と同様に行う。測定器の測定子を一方の交線を形成

する面に沿って滑る

V

ブロックに当てる。測定は,互いに直角な

2

平面について行わなければならない(

64

参照)

この方法は,測定器を支持台にしっかりと取り付ける必要があり,二つの交線が互いに近い場合に適用

できる。垂直面内における平行度の測定には,原則として精密水準器を使用することが望ましい(

図 65

参照)

備考22.

関係する平面又は直線の直接測定が,測定領域内で工作機械の構成要素と干渉することから,

困難な場合には,測定は,例えば,精密水準器で決まる水平面を基準平面として行ってもよ

い。

図 64

図 65

5.413

許容値  線又は面の平行度の許容値は,次による。

平行度:……

mm

平行度の許容値が所定の長さに対してだけ与えられている場合には,

その長さを示さなければならない。

 300mm

について

0.02mm

一般に,偏差の向きは重要でない。しかし,平行度の偏差が一方の向きだけに許される場合は,その向

きを示さなければならない。例えば,

主軸の先端は,上向きだけ(テーブル上面に対して)

平行度の許容値は,線及び面に対応する形状偏差を含んでおり,測定結果は測定子先端の面に関係する

ので,必要な場合には,測定子先端の面について記述しておくことを推奨する。

5.42

運動の平行度

5.421

定義  “運動の平行度”は,機械の運動部品上の機能点(5.231.2 参照)の運動の軌跡と次の事項と

について参照する。

面(支持面又は案内面)


32

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

線(軸,又は二面の交線)

機械の他の運動部品上の点の運動の軌跡

5.422

測定方法

5.422.1

一般事項  測定方法は,通常,線と線及び線と面との平行度の測定に使う方法と同じである。

運動部品は,案内面内のすきま及び欠陥の影響をあるがままにするように,できるかぎり通常の方法で

駆動しなければならない。

5.422.2

運動の軌跡と面との平行度

5.422.21

面が運動部品上にある場合  ダイヤルゲージを機械の固定部品に取り付け,測定子を測定すべき

面に直角に当てる。運動部品を所定の移動距離まで移動させる(

図 66 参照)。

この種類の測定は,工作物がテーブル上面に固定されるフライス盤及び研削盤に適用する。

図 66 に示すように,ダイヤルゲージを主軸端に取り付け,テーブルを長手方向に移動させる。その読み

は,仕上げた工作物で期待される精度(平行度について)を反映する。

5.422.22

面が運動部品上にない場合  測定器を運動部品に取り付け,所定の移動距離まで運動部品と一緒

に移動させる。測定子は,測定すべき面に直角に当てて,移動させる(

図 67 参照)。

図 66

図 67

測定子を測定する面に直接に当てられない場合(例えば,基準溝の側面)の測定は,次のいずれかの方

法によってもよい。

アングルレバーの使用(

図 68 参照)

適切な形状のブロックの使用(

図 69 参照)

参考

附属書 図 A.10 に示すてこ式ダイヤルゲージを使えば,測定子を当てられる。

図 68

図 69

5.422.3

運転の軌跡と軸との平行度  測定器を運動部品に取り付け,所定の移動距離まで運動部品と一緒に

移動させる。測定子は,軸を代表する円筒又はテストバーに当てて滑らす(

図 70 参照)。


33

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

測定すべき軸が回転軸の場合には,振れの平均位置を使用するのが望ましい(5.412.1 参照)

すべての面が同等に重要でなければ,できれば,測定は,機械を実際に使用する際に最も重要である直

2

平面内で行う。

図 70

5.422.4

運動の軌跡と二つの面の交線との平行度  二つの面のそれぞれと運動の軌跡との平行度は,5.422.2

に従って,別個に測定しなければならない。交線の位置は,その面の位置から推定する。

5.422.5

二つの運動の軌跡の平行度  ダイヤルゲージを機械の一方の運動部品上に取り付け,その測定子を

他方の運動部品上の

1

点に当てる。

この二つの運動部品をともに同じ向きに所定の同じ距離だけ移動させ,

その測定器の読みを取る(

図 71 参照)。

図 71

すべての面が同等に重要でなければ,できれば,測定は,機械を実際に使用する際に最も重要である直

2

平面内で行う。

5.423

許容値  運動の平行度の許容値は,所定の距離内で運動部品上の所定の

1

点の軌跡と面,線又は他

の軌跡との間隔の許容できる偏差である。

許容値の決め方は,5.413 参照。

5.43

等距離度

5.431

定義  等距離度は,軸と基準平面との距離に関係する。軸を含む平面が基準平面に平行であるとき,

等距離とみなす。軸は,異なった軸でも,旋回後に異なった位置にある同じ軸であってもよい。

5.432

測定方法

5.432.1

一般事項  軸を含む平面と基準平面との平行度の測定と同じである。

一つの面と二つの軸又は旋回軸との等距離度の測定は,実際には平行度の測定である(5.412.4 参照)

二つの軸が基準平面と平行であることを,最初に試験し,次いで軸を代表する二つの円筒に当てた一つの

ダイヤルゲージを使って,二つの軸がその平面から同じ距離にあることを試験する(

図 72 参照)。

この二つの円筒が異なるときは,測定断面の半径の差を考慮するのが望ましい。


34

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 72

5.432.2

2

軸とその 軸の旋回面との等距離度の特殊な場合  二つの軸のうちの一つを移動させる部分の旋

回面を近づけることができなく,旋回面上で測定器を移動させることができない場合には,旋回面に平行

な補助平面を設ける必要がある(

図 73 参照)。

図 73

精密水準器を補助平面上に,できれば直交する

2

方向に定置し,構成要素の旋回運動によって,その水

準器に偏差を生じないようにこの補助平面を設定し,固定する。軸の等距離度は,

(軸の中央位置とその両

端の位置で)固定軸の測定と同様に補助平面に対して測定する。

備考23.

水平又は傾斜した補助平面のいずれかを用いる場合には,旋回したときにダイヤルゲージが

異常な変位を起こさずに元の位置に戻るようにダイヤルゲージを固定するのが望ましい。

5.433

許容値  距離の許容差には,符号を付けず,一般には基準平面に平行なすべての方向において有効

である。

許容差が一方の向きだけに許される場合には,その向きを規定しなければならない。例えば,軸

1

は軸

2

より高いこと。

5.44

同軸度,一致度又はアラインメント(

3

)

(

3

)

アラインメントは,現場では平行度のより一般化した意味で使われているが,この規格では,

二つの軸が互いに一致するか,又は一つの軸が他の軸の延長上にある場合だけに用いる。

5.441

定義  所定の長さに対する相対距離が所定の値を超えないとき,二つの線又は二つの軸は,同軸で

ある,一致している又はアラインメントが出ているという。測定した距離は,実際の線上にあっても,そ

の延長上にあってもよい。


35

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.442

測定方法  一方の軸に固定したダイヤルゲージをその軸の周りに

360

度回転させる。その測定子を

もう一方の軸を代表する円筒の断面

A

に当てる(

図 74 参照)。ダイヤルゲージの読みの変化は,同軸度の

偏差の

2

倍を表す。測定のために選んだ断面

A

だけでは,二つの軸が交わる場合もあるので,測定は,断

B

でも行わなければならない。

偏差を所定の二平面で求める場合(例えば,

図 74 の平面

H

及び

V

)には,この二つの平面内の偏差を

別々に読み取る。

特に水平軸の場合には,剛性の高い取付具が必要である。高精度な測定が必要な場合には,取付具のた

わみの影響をなくすために

180

度離して取り付けた

2

個の測定器を同時に使用しなければならない。使用

するダイヤルゲージの

2

倍までの質量で,たわみを無視できる取付具を使用しなければならない。いずれ

の場合も,軽量のダイヤルゲージを使用する。

図 74

回転に伴って,測定の方向が重力の方向に関係して変化するので,測定器の重力に対する感度を考慮し

なければならない。

二つの軸のうち,一方の軸が回転軸の場合には,

測定器の取付具を軸を代表するテストバーに固定する。

ダイヤルゲージの取付具を固定する。測定器は,固定したテストバーの周りに回転させる必要がある場合

には,最小のすきまで回転できる中空円筒上に取り付けるのが望ましい。この中空円筒は,読みがその円

筒の遊びの影響を受けないような十分な長さのものを使用するのがよい(

図 75 参照)。

二つの軸がともに回転軸の場合には,測定平面内でテストバーを振れの平均位置にして測定する

5.412.1

参照)

図 75

5.443

許容値  二つの軸(又は二つの線)の同軸度の偏差の向きが問題にならない場合には,許容値の表

示は,次による。

2

に対する軸

1

の同軸度の許容値:……

mm

について……

mm

特別な場合には,運転条件に関係して,指示してもよい。例えば,

1

は軸

2

よりも高いこと。

又は,

1

の自由端は,軸

2

に対して向こう向きとする。


36

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 76

場合によっては,同軸度の許容値に加えて,二つの軸の平行度の許容値をさらに付け加えてもよい(

76

参照)

a)

2

に対する軸

1

の同軸度の許容値:……

mm

について

Tmm

b)

1

と軸

2

との平行度の許容値:……

mm

について

T'mm (T'

T)

5.5

直角度  直角度の測定は,次の

2

項目とする。

直線及び面の直角度

5.51 参照)

運動の直角度

5.52 参照)

5.51

直線及び面の直角度

5.511

定義  二つの面,二つの線,又は一つの線と一つの面とは,直角定規に対する平行度の偏差が所定

の値を超えないとき,直角であるとみなす。基準とする直角定規は,測定用直角定規,角形精密水準器,

又は運動学的平面若しくは運動学的直線で組み立てたものでもよい。

5.512

測定方法

5.512.1

一般事項  直角度の測定は,実際には平行度の測定と同じである。次の一般的説明が使える。

回転軸については,次の方法を適用する。ダイヤルゲージを固定する取付具を主軸に取り付けて,ダイ

ヤルゲージの測定子を回転軸に平行に合わせて,主軸を回転させ,主軸に直角な平面内でダイヤルゲージ

を回転させる。測定子の描く円形軌跡を含む平面と測定すべき平面との平行度の偏差は,ダイヤルゲージ

の測定子を測定すべき面上で走査することによって測定できる。

この偏差は,測定器の回転直径に対する値として表示する(

図 77 参照)。

a)

測定すべき平面が規定されていないときは,ダイヤルゲージを

360

度振り回し,読みの最大差を求

める。

b)

測定すべき平面が規定されているとき(例えば,平面

I

及び平面

II

)は,

180

度離れたダイヤルゲー

ジの

2

位置での読みの差を,それぞれの平面について求めるのが望ましい。


37

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 77

測定を不確かにする可能性のある主軸の周期的な軸方向の動き(5.621.2 参照)の影響による誤差を除く

ために,

2

個の長さの等しい取付具にそれぞれ

180

度離してダイヤルゲージを取り付けて,ダイヤルゲー

ジを同じ接触点でゼロに合わせてあれば,その読みの平均値を求めてもよい。

この測定は,

1

個のダイヤルゲージだけでも行える。その場合には,最初の測定を行った後に,ダイヤ

ルゲージの位置を主軸に対して

180

度取付け換えして再び測定する。

必要があれば,軸方向に適切な力をかけて軸方向の最小遊びを除かなければならない(5.621.1 参照)

5.512.2

互いに 90 度である二つの面  円筒スコヤを一方の面上に立てる(図 78 参照)。ダイヤルゲージを

他方の面に沿って移動させて,一定の間隔で読みを取る。次に,円筒スコヤを

180

度回して同様の測定を

行い,読みをとる。それぞれの位置における

2

回の読みの平均値を求める。

5.512.3

二つの軸の直角度

5.512.31

二つの軸が固定軸の場合  適切な底面をもった直角定規を二つの軸の一方の軸を代表する円筒

上に定置する(

図 79 参照)。直角定規の使用面ともう一方の軸との平行度は,平行度の測定方法(参照)

に規定されている方法によって測定する。

5.512.32

軸の一つが回転軸の場合  ダイヤルゲージを回転軸を代表するテストバーに固定した取付具に

取り付け,もう一方の軸を代表する円筒上の

2

A

及び

B

に当てる(

図 80 参照)。読みの変化は,距離

AB

との関係で表す。

二つの軸が回転軸の場合には,平行度の測定方法(5.412.1 参照)に規定されている方法に従って,もう

一方の軸を代表する円筒を測定面内で振れの平均位置まで回す。


38

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 78

図 79

図 80

5.512.4

軸と面との直角度

5.512.41

固定軸  適切な底面をもった直角定規を軸を代表する円筒上に定置する(図 81 参照)。

直角定規の使用面と面との平行度を,平行度の測定方法(5.412.2 参照)に規定されている方法によって

軸に直角な

2

方向について測定する。

図 81

図 82

5.512.42

回転軸  ダイヤルゲージを主軸に固定した取付具に取り付け,5.512.1 に従って測定する。

5.512.5

二つの面の交線と軸との直角度

5.512.51

固定軸  軸を代表する円筒軸上に適切な底面をもった直角定規を定置する(図 82 参照)。

直角定規の使用面と交線との平行度を,平行度の測定方法(5.412 参照)に規定されている方法によって

測定する。

5.512.52

回転軸  ダイヤルゲージを主軸に固定した取付具に取り付け,測定子を交差する

2

面上に置いた

V

ブロックに当てる。主軸を

180

度回し,その

V

ブロックの同じ位置に測定子が当たるように,

V

ブロッ

クを移動させる(

図 83 参照)。


39

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 83

5.512.6

二つの面の交線と面との直角度  直角定規(図 84 参照)又はダイヤルゲージ(図 85 及び図 86 

照)を交差する

2

面上に定置できるようにふさわしい底面形状をした取付台に適切に取り付ける。

図 84

図 85

図 86

直角定規の使用面と第三の面又は交線との平行度は,平行度の測定方法(5.412.2 又は 5.412.6 参照)に

規定する方法によって測定する。測定は,できるだけ直交

2

平面内で行う(

図 85 及び図 86 参照)。

5.512.7

交線と交線との直角度  適切な底面形状をした直角定規を一方の交線上に定置する。直角定規の他

の使用面ともう一方の交線との平行度を,平行度の測定方法(5.412.6 参照)に規定した方法によって測定

する。

備考24.

対象となる面及び線の測定が,それらの間隔,又は構成要素による干渉のために直接できな

い場合には,基準平面,例えば精密水準器を使って行う。

5.513

許容値  直角度の許容値の表示は,次の二つの方法による。

1)

基準直角定規を使用して直角度を測定する場合には,直角度の許容値は,平行度の許容値と同様に

与える。

直角度の許容値:任意の測定長さ……

mm

について……

mm

2)

軸に対する直角度を測定直径上の読みの差として測定する場合。

直角度の許容値:……

mm/

……

mm

直角度の偏差が一方の向きだけに許されている場合は,その向きを示さなければならない。例えば,主

軸端は,コラムだけに向うこと(立て軸の場合には,テーブル上面に関して)

5.52

運動の直角度

5.521

定義  工作機械の“運動の直角度”には,運動部品上の

1

点の運動の軌跡上の連続した位置と次の

3

項目との直角度がある。


40

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

面(支持面又は案内面)

線(軸又は二つの平面の交線)

機械の他の運動部品上の

1

点の運動の軌跡

5.522

測定方法

5.522.1

一般事項  運動の直角度の測定は,所定の条件に適合した直角定規を使用した平行度の測定方法と

同じである(5.42 参照)

運動部品は,案内面の遊び及び欠陥の影響を表すために通常の方法で駆動するのが望ましい。

5.522.2

運動の軌跡と面との直角度  直角定規を面上に定置する(図 87 参照)。運動の軌跡と直角定規の使

用面との平行度は,5.422.22 に従って直角

2

方向で測定しなければならない。

5.522.3

運転の軌跡と軸との直角度  軸を代表する円筒上に適切な底面をもった直角定規を定置する(図

88

参照)

。運動の軌跡と直角定規の使用面との平行度の測定は,5.422.22 に従って行う。

図 87

図 88

軸が回転する場合には,軸を代表するテストバーを測定平面内における振れの平均位置まで回す。特に,

主軸に面板を取り付けることができる旋盤主軸の場合には,円板を取り付けて行わなければならない。最

初に,運動に平行な直径上にある面板上の

1

点でダイヤルゲージの読みをとる。次に,主軸を

180

度回転

させて同じ点で読みをとる。この二つの読みの平均値が,測定長さに対する直角度の偏差となる。この測

定は,また,5.512.42 に示すように運動の軌跡と平行に置いた直定規を使用してできる。

5.522.4

互いに直角な二つの運動の軌跡  二つの運動の軌跡は,適切にブロックゲージ上に定置した直定規

の上に立てた直角定規を用いて測定する。これらの測定器の設定の例を

図 89 に示す。

直角定規の使用面を,ダイヤルゲージを使って軌跡

I

に平行になるように調整し,軌跡

II

を 5.42 に従っ

て測定する。

図 89

ダイヤルゲージの戻り誤差の影響をなくすために,指針が一方向だけに動くようにして,平行度の許容

値よりも大きな傾斜をもつ軌跡に平行になるように直角定規の使用面を置いてもよい。この場合には,直


41

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

角度の偏差は,同じ測定長さに対して二つのダイヤルゲージの読みの変化の差に等しくなる。

支持する負荷による構成要素のたわみを考慮する必要があることがある。

この測定は,光学的方法によって行ってもよい(

図 90 参照)。

図 90

5.523

許容値  所定の運動の直角度の許容値は,機械の運動部品上の

1

点の運動の軌跡と直角定規の使用

面との間隔の,所定の移動範囲内(例えば,

300mm

)における許容できる偏差である。

許容値の表示は,5.513 参照。

5.6

回転精度  回転精度に関する測定項目は,次の

3

項目とする。

振れ

5.61 参照)

周期的軸方向の動き

5.62 参照)

端面の振れ

5.63 参照)

5.61

振れ

5.611

定義

5.611.1

直径差  直径差は,軸に直角な任意の一断面内における構成要素の真円形状からの偏差である。

軸の場合には,直径差の値は,外接円の直径と測定可能な軸の最小直径との差によって与えられる。

穴の場合には,直径差の値は,内接円の直径と測定可能な穴の最大直径との差によって与えられる。そ

れぞれの直径は,軸に直角な断面内で測定する。

通常の測定方法ではこの定義を実際上,厳密に適用することはできない。しかし,構成要素の直径差を

測定するとき,この定義があることに留意し,使用する方法は,結果ができるだけ定義と合致するように

選ぶのが望ましい。

5.611.2

偏心(図 91 参照)  二つの平行軸のうちの一方が他方の軸の周りを回転するときの二つの平行軸

の距離(偏心は誤差ではなく,一つの寸法で,それには許容値が付く。

5.611.3

所定の点における軸の半径振れ  部品の幾何学的軸心が回転中心と一致しない場合に,この二つの

軸心間の距離を半径振れという(

図 92 参照)。

5.611.4

所定の断面における構成要素の振れ  直径差を考慮しない場合の振れは,所定の断面における軸の

半径振れの

2

倍である(

図 92 参照)。

一般に測定された振れは,次の項目を総合したものになる。

軸の半径振れ


42

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

構成要素の直径差

回転軸の半径誤差運動(軸受の誤差)

図 91

図 92

工作機械の静的精度試験において,軸の半径振れは,軸心上に取り付けられた部品の振れから測定

できる。

測定を行う者が機械の試験に際して混乱するのを避け,

誤りを起こす危険性をなくすために,

この規格では,用語として“振れ”だけを使用し,表示した許容値には系統的にこの“振れ”を適用

しているので,測定器の読みは,そのままとし

2

で割らない。規定している測定方法は,この点を考

慮してある。

備考25.

転がり軸受を使っている場合には,転動体と保持器とは,軸が

2

回転以上する間に

1

回転し,

軸の振れが数回転ごとに周期的に振れを繰り返すのが一般的である。したがって,振れは,

数回転以上,少なくとも

2

回転以上回転させて測定するのが望ましい。

測定上の観点から,円筒又は円すい軸受は,所定の測定距離内において(必要があれば,軸受にテスト

バーをはめた後で)

,各測定点での振れが許容値を超えなければ,回転軸と同軸であるとみなす。

5.612

測定方法

5.612.1

測定前の準備(3.22 参照)  測定を行う前に,潤滑油膜が測定中に変化しないようにし,機械の温

度を通常の運転状態にできるだけ近い状態にするために,主軸を十分に回転させなければならない。

5.612.2

外面  ダイヤルゲージの測定子を測定すべき回転軸に当て,主軸をゆっくり回転させながらダイヤ

ルゲージの読みを取る(

図 93 参照)。

図 93

テーパ面の場合には,測定子を母線に垂直に当て,また,測定結果に及ぼすテーパ角度の影響を計算す

る。さらに,測定すべき円の直径は,回転中に主軸が軸方向に動けば変化する。これは,実際以上の振れ

を生じる原因になる。したがって,テーパ角度が小さければ,テーパ面を振れの測定に使用できる。主軸

の軸方向の動き(5.621.2 参照)は,どんな場合にでもあらかじめ測定しておき,その軸方向の動きが振れ

の測定結果に及ぼす影響をテーパ角度に応じて計算しておく。

測定結果は,ダイヤルゲージの測定子に横方向から力が加わると影響される。この誤差が入るのを避け

るために,測定子をテーパ面の母線と垂直に厳密に一致させなければならない。


43

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.612.3

内面  ダイヤルゲージを円筒穴又はテーパ穴に直接当てることができない場合には,テストバーを

その穴にはめる。5.612.2 に規定する方法によって,テストバーの

1

断面だけで測定する。しかし,この測

定をテストバーの

1

断面だけで行えば,軸について測定した一つの断面の位置だけで振れを求めることに

なる。テストバーの軸心が測定面内で回転軸中心線と交差することもあるので,測定は,所定の距離だけ

離れた

2

断面

A

及び

B

で行うのが望ましい(

図 94 参照)。

図 94

例えば,

1

回目の測定は,テストバーの口元近くで,

2

回目は,それから規定された距離だけ離れた位置

で行うのが望ましい。穴にテストバーを,特にテーパ穴にテストバーをはめると精度が低下するので,テ

ストバーを主軸に対して

90

度ごとに回して,少なくとも

4

回この操作を繰り返して行う。読みの平均値を

求める。

いずれの場合においても,振れは,垂直面内及び水平面内について測定しなければならない(

図 94 

C

1

及び

C

2

の位置で)

この測定を適用する場合には,次の事項に留意する。

    ダイヤルゲージ測定子の接線方向への引きずりの影響を最小化するような順番で行うのが望ましい。

    テストバーを使うときに穴の正確な形状を明らかにする必要はない。

円筒状工作物を加工してから試験することによって主軸の振れを測定すると,主軸軸受の欠陥だけを考

慮することになる。このことから,実際に旋削試験を行っても,円筒穴又はテーパ穴の正確な形状,及び

回転軸中心に対する実際の穴の位置に関する情報を得られない。

これらの方法は,玉軸受及びころ軸受で支持された主軸だけに適用する。回転中に自動調心できる主軸

(例えば,油圧によって)は,常用速度で運転するときだけ測定できる。このような場合には,非接触の

測定器,例えば,静電容量形変位計,電磁形変位計又はその他の適切な測定器を用いなければならない。

5.613

許容値  振れの許容値は,回転軸断面上の点の軌跡における許容できる偏差である。これには正負

の符号を付けない。振れの許容値には,回転面の形状誤差,回転軸中心に対する回転面軸心の平行度の誤

差(位置の誤差)

,及び軸受面又は軸受取付穴が正確な円でない場合には,回転軸中心の動きの誤差(軸受

の誤差)が含まれる。測定する軸方向の長さが短い場合(例えば,研削盤の主軸端)には,一断面内で測

定するだけで十分であるが,長い場合には,複数の断面内で測定する。

所定の

1

断面内又は規定された長さに対してだけ振れの測定を規定することが望ましいときは,その面

又は長さを規定する。

5.62

周期的軸方向の動き

5.621

定義

5.621.1

最小軸方向遊び  最小軸方向遊びは,回転部品を静止させた状態で,軸の周りの数箇所で測定した

ときの軸方向の最小移動量である(

図 95 参照)。

5.621.2

周期的軸方向の動き  回転部品の回転軸中心の軸方向の往復運動の大きさ。所定の向きに軸方向の

P

を掛けて最小軸方向遊びの影響を取り除く(

図 95 参照)。


44

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 95

回転部品の軸方向の動きが許容値内にあるとき,この部品は,その軸方向において固定されているとみ

なす。

5.622

測定方法

5.622.1

一般事項  スラスト軸受では遊びの影響を除くために測定方向に向けて主軸に力を軽く加える。ダ

イヤルゲージの測定子は,回転軸端面の回転中心に当てる。主軸が連続的に低速度で回転している間に読

みを取る。その間,軸方向に力を加えたままにする。

主軸が中空の場合には,端面が平面になっている短いテストバーを主軸端にはめて,それに半球状の先

端をもった測定子を当てるのが望ましい(

図 96 参照)。その代わりに,半球状の面をもったテストバーに

平らな先端をもった測定子を当ててもよい(

図 97 参照)。主軸端面にセンタ穴があいている場合は,その

センタ穴に鋼球をはめて,平らな先端をもった測定子を当ててもよい(

図 98 参照)。

図 96

図 97

図 98

5.622.2

応用  周期的な軸方向の動きは,軸方向に力を加える装置を使って,ダイヤルゲージをそれと同じ

軸心に当てて測定できる。

送りねじの場合には,ナットを結合してスライド部を動かすことによって軸方向の力を加える。水平面

内で回転する面板の場合には,その面板の自重によってスラスト軸受に十分な力がかかっている。予圧を

かけたスラスト軸受を使用している場合には,主軸に力をかける必要はない。

軸心にダイヤルゲージを当てることが不可能な場合には,軸方向の動きの値は,

2

個のダイヤルゲージ

を使って求める(

図 99 参照)。それぞれの読みは,多くの角度位置で求める。このときの軸方向の動きは,

最大値の平均値と最小値の平均値との差に等しい。

備考26.

スラスト軸受として玉軸受又はころ軸受を使用している場合は,測定は少なくとも軸を

2

回転

させて行うのが望ましい。

測定角度を変えるときは,ダイヤルゲージの測定子の接線方向への引きずりの影響を最小にするのが望

ましい。


45

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 99

5.623

許容値  軸方向の動きの許容値は,軸方向に軽く力を加えてゆっくり回転させている間の主軸の軸

方向の動きの限界である。力を加える向きを規定するのが望ましい(例えば,

“ハウジングに向かって軽く

力を加える”

。力を一方の向きに加え,次いで反対の向きに加えて

2

回の測定を行う必要があることもあ

る。この場合には,両方の向きについてそれぞれ許容値を決めてもよい。

5.63

面の振れ

5.631

定義  軸線の周りを回転する面の振れは,次による。

a)

平面の振れ

この振れは,平面が軸線の周りを回転しているとき,その軸線に直角な面内にない平面の不整であ

る。平面の振れは,回転中にその面上の各点が軸線に直角な

2

平面間を動くとき,その

2

平面の間隔

H

で表す。

b)

軸中心から距離 だけ離れた面の振れ

この面の振れは,直径が

2d

で,その対称軸として面の理論回転軸線をもつ回転円筒によって描かれ

る面上の部分がこの軸線に直角な

2

平面間を動くとき,この

2

平面の間隔

h

で表す。

面の振れは,次に示す様々な回転面及び回転軸の不整

  (h

1

h

2

h

3

)

を合成したものである(

図 100

102

参照)

a)

平らでない面

b)

面と回転軸線とが直角でない

c)

軸の周期的軸方向の動き

備考27.

対象とする平面の幾何学的軸線が実際の回転軸線と一致しない場合(

103の部品

A

)には,

半径方向の振れに起因して面の振れを生じる。この不整は,面と回転の軸線との直角度の狂

いによるものである。

図 100

図 101

図 102

図 103


46

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

5.632

測定方法  面の振れの測定は,面板を回転させて行う。その目的は,面板前面の同一円周上のすべ

ての点が回転軸に直角な同一平面内にあり,この平面の軸方向の位置が主軸の回転中に変動しないことを

確認することである。

面の振れは,

振れの測定位置が回転軸から離れるに従って増加する傾向があるので,

測定は,回転軸から最も離れた位置に対応する円周上で行わなければならない。

回転中心から所定の距離

A

だけ離れた位置で,ダイヤルゲージを同一円周上の適当な間隔をおいた数箇

所で順次位置を変えて置いて,その測定子を端面に垂直に当てる(

図 104 参照)。読みの最大値と最小値と

の差を各測定点で記録する。各位置で測定した最大差の中の最大の値が面の振れになる。主軸は,低速で

連続的に回転させ,スラスト軸受の遊びの影響を除くために軸端には軽く力を加える。水平な面板は,す

でに示したように(5.622.2 参照)

,それ自身の自重によってそのスラスト軸受には十分な力が加わってい

る。

測定中に軸に軽く力を加えるときは,その向きを規定するのが望ましい(

例:ハウジングに向かって軽

く力を加える)

備考28.

面の振れの原因を分析したい場合には,その原因が面の不整によるものか,又は軸によるも

のかを別々に測定するのがよい。軸の軸方向の動きは,いずれにしても測定するのが望まし

い。面板を取り付けた後に,表面(例えば,工作機械自身の面板)を加工した場合には,工

具刃先位置にダイヤルゲージを当てるとその読みは,ゼロになる。この特定の位置から

180

度離れた位置に測定子を当てると面の振れ

h

が得られるが,この値は,軸方向の動きの

2

倍の

値になる。

図 104

5.633

許容値  回転軸に直角な平面に対する許容値は,測定すべき面の所定の円周上のすべての点におけ

るすべての軌跡の許容できる最大偏差を表す。この許容値には,端面の形状誤差,回転軸線に対する端面

との角度,主軸の半径方向の振れ,及び軸の周期的軸方向の動きが含まれる。しかし,この許容値は,回

転部品の最小軸方向遊びを含まない(

図 95 及び図 100102 参照)。

6.

特殊な試験

6.1

分割

6.11

誤差の定義  ここでは,目盛尺,歯車,割出し板,送りねじのピッチなどの分割の誤差の定義を扱

う。

一般に,誤差には次の

5

項目がある。


47

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

a)

単一分割誤差

b)

隣接分割誤差

c)

部分分割誤差

d)

累積分割誤差(又は所定の間隔における区間)

e)

全分割誤差

6.111

単一分割誤差  実際の分割点間隔と正しい分割点間隔との差。

図 105 に示す第

2

分割に対して

ab

a'b'

(ここでは,単一分割とは,隣り合った

2

本の目盛線の

間隔とみなせる。幾つかの分割は一定の間隔を形成する。

6.112

隣接分割誤差  隣り合った二つの分割点間隔の実際の偏差。これは,二つの分割区間の単一分割誤

差の差に等しい。

図 105 

 (ab

a'b')

 (bc

b'c')

ab

bc

は,第

3

分割区間に対する第

2

分割区間の差。

6.113

部分分割誤差  所定の区間における正及び負の二つの最大単一分割誤差の大きさ(絶対値)の合計。

図 106 に示す区間

0

から

6

までにおいては,幅

MN

所定の区間においてすべての誤差が同じ符号の場合は,部分分割誤差は,単一分割誤差の絶対値の最大

値に等しい。

6.114

累積分割誤差

k

個の区間の合計とその合計の理論上の値との差。一連の区間は,個々の区間の単一

分割誤差の合計を計算して求めるか,又は測定器の読みから求めた実際の位置とどの区間にも誤差がない

とした正しい位置とを比較することによって求めてもよい(

図 105 参照)。

図 105  実際の分割

6.115

全分割誤差  所定の区間に含まれる正及び負の最大累積分割誤差の大きさ(絶対値)の合計。この

区間は,目盛板全体,例えば

360

度に対応していてもよい。

図 108 に示す幅

RS

6.116

分割誤差の図示方法  図 105 に理論的な目盛と誤差をもった目盛とを示す。

1)

図を描く場合には(

図 106 参照),横軸に一連の分割点を,縦軸に単一分割誤差をとって示す。最大の

MN

は,区間

0

から

6

までの部分分割誤差を示す。この目盛の全区間に対する部分分割誤差は,

PH

になる。

2)

横軸に一連の分割点を,縦軸に隣接分割誤差をとって図示する(

図 107 参照)。この図は,調べるべき


48

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

所定の区間における最大誤差の位置を示す。

3)

横軸に一連の分割点を,縦軸に理論上の位置に対するすべての分割の位置をとって図示する(

図 108

参照)

。図示した例からは,最大幅

RS

が全分割誤差を示す。

図 106 は,次のようにして図 108 から求めたことに留意する。図 106 の区間

k

の縦座標は,

図 108 の区

k

k

1

との縦座標の差に等しい。

(

4

)

単一分割誤差

ab

a'b'

は,

 (aa'

a'b)

 (a'b

bb')

 (b'b

a'a)

の形に置き換えられる。この式

は,所定の分割区間に対する各

1

組の目盛線の実際の差を表す(

105参照)。

図 106  部分分割誤差の決め方

図 107  隣接分割誤差

図 108  全分割誤差の決め方

6.12

測定方法  通常,分割誤差の測定には特殊な測定器が必要となるので,分割に関する技術資料を参

照するのが望ましい。

6.13

許容値  通常,さきに定義した

5

項目の分割誤差すべてについて許容値を決める必要はない。した

がって,直線分割の許容値は,常に所定の区間,例えば

300mm

に対する累積分割誤差だけを指定する。

角度分割の許容値は,通常は単一分割誤差及び全分割誤差に与える。

備考29.

工作機械の試験では,分割誤差は,通常,分割に用いられる制御装置に起因する誤差を含ん

でいる。部分分割誤差の個々の値(例えば,いわゆる分割誤差,回転軸とロータリスケール

との偏心,構成要素の遊びなど。

)が総合された誤差となる。これらの個々の誤差は,工作機

械の使用者にとってほとんど重要ではない。

30.

円周割出し機構によって与えられる精度は,割出し板の固有の分割精度とは別に,機械の軸


49

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

に割出し板を取り付けるときに生じる同心度の偏差に左右されるので,注意する必要がある。

6.2

ねじ送り部品の直進位置決め偏差の求め方  この位置決め偏差を求めるために,静的精度の観点か

ら見て偏差を生じるおそれがあるすべての要素,特に送りねじについて試験する必要がある。

測定されたどのような誤差にも,繰返し誤差及び時間による誤差の影響を無視すれば,二つの成分,す

なわち,周期的誤差及び非周期的誤差がある。周期的誤差は,工作機械の軸に沿って少なくとも

1

回は繰

り返す誤差成分で,非周期的誤差は,周期性のない誤差であるとみなすことができる。特に,送りねじに

よって直接に位置決めされる機械では,周期的誤差は全誤差の大きな割合を占める。

送りねじのピッチの精度は,位置決めの精度を左右する数多くある要因のうちの一つである。機械要素

にある遊び及びたわみは,重要である。全体の許容値が機械に期待される精度に対応するようにそれぞれ

の要因に関係する許容値をそれぞれ与えることも可能である。

したがって,工作機械の試験では,ねじ送り部品の偏差だけを静的精度試験又は工作精度試験によって

求める必要がある。

静的精度試験に適用できる測定方法の中には,送りねじの精度を測定する方法,例えば,親ねじ及びダ

イヤルゲージ,ブロックゲージ及びダイヤルゲージ,又はレーザ干渉計を使用する方法が含まれている。

工作精度試験では,加工した工作物の所定の長さについてねじの進み精度を測定する。例えば,旋盤の

親ねじのような特別な場合には,工作精度試験は,機械に工作物を取り付け,ベッド上の任意の点で最大

長さ

300mm

までの範囲で親ねじを回転させて行う。次いで,工作物に現れたピッチを,例えば,測定器

を使って測定しなければならない。

6.3

回転遊び

6.31

定義  運動部品の回転遊びは,部品を固定したとき,その固定機構の遊びによって生じる回転角度。

6.32

測定方法(割出し装置/要素の試験)  この試験は,割出し装置/要素の上で測定を行うために,

回転軸に直角に固定した十分な長さの腕を固定して行う。所定の腕の位置にダイヤルゲージの測定子が当

たるように取り付ける。トルクは,割出し装置の一方の向きに加え,次いで反対の向きに加える。その差

をダイヤルゲージで読み取る。トルクの大きさは,割出し装置/要素のたわみによって重大な誤差を生じ

ないように選ぶのが望ましい。

6.33

許容値  回転遊びの許容値は,角度又は正接で表される角度の遊びの許容できる最大値である。

6.4

角度割出し装置の繰返し精度

6.41

定義  角度割出しの繰返し精度は,任意の目標位置に,同じ旋回の向き及び同じ速度で近づけて行

った一連の測定で得られた角度の最大差(範囲)である(締付けのできる場合は,毎回締付けを行う。こ

の場合は,回転遊びを含む。

数値制御による繰返し角度位置決め精度は別に定める。

6.42

測定方法  測定は,取付具とダイヤルゲージとを用いて,回転遊びの測定と同じ方法で行う。所定

の割出し位置で運動部品を

1

回転以上回さなければならない。一つの位置で数回の締付けを行ったときの

読みの最大差がこの位置における繰返し精度を表す。測定は,それぞれの割出し位置で繰り返して行わな

ければならない。

6.43

許容値  繰返し精度の許容値は,角度又はその角度の正接で表される偏差の許容できる範囲である。

これには回転遊びが含まれる(実際には,繰返し精度の許容値は,回転遊びの許容値と無関係に決めるこ

とはできない。

6.5

軸の交差度

6.51

定義  平行でない二つの軸間の距離が規定した値内にあるとき,二つの軸は交差しているとみなす。


50

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

6.52

測定方法

6.52.1

直接測定  平行でない

2

軸の交点は,それぞれの軸中心線を代表する軸の間での測定によって求め

る。この方法は,補助平面を用いた

2

軸の等距離度の測定方法と同じである(5.432.1 参照)

。この測定は,

それぞれの軸の軸中心線に平行な平面を設けた適切な二つのテストバーを使用すれば容易にできる。交差

度の偏差を求めるために,この

2

平面間で測定を行う(

図 109 参照)。

6.52.2

間接測定  間接測定は,別の基準平面,例えば,二つの軸に平行に設置した定盤を使用して行う。

その基準平面からそれぞれの軸について別々に測定を行い,比較する。

6.53

許容値  二つの交差している軸間の距離は,軸

1

と軸

2

との前後関係が重要でない場合に,次のよ

うに表示する。

1

と軸

2

との交差度:±…

mm

他の場合には,許容値が運転状態に関係するとき,次のように表示する。

1

が軸

2

より高いこと:

mm

図 109

図 110

6.6

真円度

6.61

定義  平面内にある線は,その線上のすべての点が二つの同心円の間にあり,二つの円の半径方向

の間隔が所定の値を超えないとき,真円であるとみなす(

図 110 参照)。

真円度は,試験片の形状又は運動部品の描く軌跡の形状について適用する。

6.62

試験片の測定方法

6.621

検出器回転形又は載物台回転形真円度測定機  この

2

種類の真円度測定機では,試験片は,テーブ

ルの中心に置く(小さな偏心量は補正できる。

。検出器回転形測定機の場合には,検出器が試験片の周り

に回転し(

図 111 参照),載物台回転形測定機の場合には,テーブルが回転する(図 112 参照)。極座標表

示した図から真円度を求める。

図 111

図 112

6.622

三次元座標測定機  円周に沿ってプローブを移動させ,

X

Y

座標の形式で各点の位置を測定する

図 113 参照)。この測定データから,円形の輪郭形状及び真円からの偏差を求める。


51

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

6.623

輪郭の投影  測定する輪郭をスクリーン上に投影して,円形の投影像を作る(図 114 参照)。この投

影像に重ねた二つの同心円は,許容値の領域及び真円度の偏差を示す。

備考31.

この方法は,投影検査器の大きさによって比較的小さな試験片に制限される。

図 113

図 114

6.624

V

ブロックによる方法  試験片を

2

個の

V

ブロック(できれば,

V

面の角度は,

108

度)で支持す

る。試験片を回転させて真円度の偏差をダイヤルゲージで測定する(

図 115 参照)。

図 115

6.63

数値制御による円運動の測定  円運動は,適用する送り速度の影響を受ける。直径と送り速度とが,

加工するときと円運動による直接測定を行うときとで同じであれば,円運動によって得られた結果は,加

工された部品から得られた結果と同等である。

6.631

回転形一次元変位計  一次元変位計,例えば電子式変位計は,数値制御工作機械によって円経路上

に沿って動く。この変位計は,回転形取付具(

図 116 参照)又は回転機構

1

図 117 参照)によって回転

させられ,基準バー(

図 116 参照),基準円板(図 118 参照)又は回転機構

2

と共に回転する目標(

図 117

参照)に対する変位を測定する。一次元変位計の信号は,極座標に円グラフ(円グラフは,

図 110 に示す。)

として表示される。この円グラフは,例えば,同期式極座標記録計,コンピュータ処理,又は回転機構に

組み込んだロータリーレゾルバ及び極座標記録計を使って描くことができる。

図 116

図 117


52

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

6.632

基準円板及び二次元変位計  二次元変位計は,回転することなく,数値制御工作機械によって円経

路上に沿って基準円板に対して動く(

図 118 参照)。円経路の指令直径は,この変位計が基準円板と接触を

保ちながら動くように決める。二次元変位計からの二つの信号は,円グラフを描く

XY

記録計に直接出力

される(円グラフは,

図 110 に示す。)。

図 118

図 119

6.633

ボールバー  ボールバー(図 119 参照)は,数値制御工作機械上に適切なソケットを介して取り付

ける。すなわち,一方のソケットを機械のテーブル上に,他方のソケットを主軸頭に取り付け,テーブル

に対する円経路上を動く。二つの鋼球間の距離

R

の変化を測定する。測定された信号は,円グラフ上に出

力される(円グラフは,

図 110 に示す。)。この円グラフは,例えば,同期式極座標記録計又はコンピュー

タ処理を使って描くことができる。

6.7

円筒度

備考32.

円筒度の許容値を使って真円度,真直度及び平行度を管理すれば便利なように感じるが,円

筒度の定義に従った測定はかなり難しい。円筒度を構成する個々の特性を関係する部分に

別々に適切な許容値を与えるのが望ましい。

6.71

定義  表面上のすべての点が,二つの同軸の回転円筒の間にあり,二つの円筒の半径方向の間隔が

所定の値を超えないとき,この面は,円筒であるとみなす(

図 120 参照)。

6.72

測定方法  すべての方法は,円筒度の基準に対する寸法偏差の測定に関係する。

6.721

三次元座標測定機  各断面における円形輪郭を検出器で円周上を走査することによって求める(図

121

参照)

図 120

図 121


53

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

6.722

検出器回転形又は載物台回転形真円度測定機  この両方の場合とも,試験片をテーブルの中心に置

き,検出器を回転形テーブルの軸心に平行に移動させる。検出器回転形では,試験片の周りを検出器が回

転し(

図 111 参照),載物台回転形では,テーブルが回転する(図 112 参照)。円筒度は,各断面において

求めた極座標図形を重ね合わせることによって求める。

備考33.

この方法は,容易に心出しができ,精度の高い結果が得られるが,高価な装置が必要となる。

6.723

V

ブロックによる方法  二つの

V

ブロック(

V

面の角度は,

108

度が望ましい。

)で試験片を支持す

る。試験片を回転させ,真円度の偏差をダイヤルゲージで測定する(

図 115 参照)。この手順を円筒度の表

示をするのに必要な数の断面で繰り返して行う。

6.8

加工直径の一様性

6.81

定義  試験片の同一軸平面内で所定の間隔ごとに測定した加工直径間の最大差が,所定の最大直径

と最小直径との間にあるとき,円筒は,加工直径の一様性があるとみなす(

図 122 参照)。

6.82

測定方法

6.821

マイクロメータ又はこれと類似の二点式測定器  軸線を含む同一平面内だけで,軸方向の各断面に

ついて読みを求める。

測定は,

試験片を工作機械に付けたままの状態でも行うことができる

図 123 参照)。

6.822

ハイトゲージ  試験片を両センタ又は

V

ブロックで水平に支持する。ハイトゲージを使って,加工

直径の最高点及び最低点を測定する(

図 124 参照)。

図 122

図 123

図 124


54

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

附属書 A(参考)  工作機械精度試験用測定器

A.1

一般  この附属書は,工作機械の静的精度試験に用いる測定器について示す。必要な場合には,それ

ぞれの測定器の日本工業規格を参照する。

A.2

A.5 は,工作機械の精度試験に用いる精密な測定器及びその精度について示す。

試験を行う際に用いる測定器の精度は,該当する検査項目に示す許容値の

10%

以下が望ましい。

測定器は,既知の標準と定期的に比較し,校正するのが望ましい。必要があれば,校正図には,校正の

条件を示さなければならない。

測定器は,室温で安定するまで使用しないのが望ましく,また,できるだけ試験中にも安定するように

するのが望ましい。

測定器が振動,磁場,電気的障害などの影響を受けないように注意しなければならない。

A.2

直定規

A.2.1

概要  直定規は,所定の精度に対する物理的な直線基準の代表となるもので,面の真直度又は平面

度の偏差を求める基準になる。

直定規には,次の

2

種類がある。

弓形直定規[

図 A.1a)参照]

平行直定規

平行直定規には,次の

2

種類の断面形状がある。

  I

形断面[

図 A.1b)参照]

長方形断面[

図 A.1c)参照]

直定規は,熱処理し,安定化したものが望ましい。


55

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.1  直定規の最適支持位置 


56

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

表 A.1  直定規

単位

mm

幅広形

普通形

番号

測定長さ  全長(

1

)

概略図

断面

質量(

2

)

断面

質量(

2

)

1 300

340

2

1

2 500

540

4

3

3 800

840

5

4

1 000

1 040

12

5

1 600

1 640

33

(

1

)

全長は,使用面よりもわずかに長い。したがって,検査は,高精度に加工するのが難しい直定規の両端を使用し
なくても行える。

(

2

)

質量は,普通鋳鉄に対する値である。鋼製の場合にはわずかに大きくなる。

A.2.2

精度  工作機械の検査に使用する直定規は,次の条件を備えていなければならない。

A.2.21

許容できるたわみ  直定規の自重によるたわみが,その両端を

2

点で支持したときに,

1 000mm

当たり

0.01mm

を超えないような断面

2

次モーメントにしなければならない。

この自重によるたわみの正確な値,すなわち,直定規の最大たわみを,その面の一つに印しなければな

らない。

A.2.22

使用面の平面度及び真直度  最適な位置(図 A.1 参照)で支持したとき直定規の使用面の平面度

及び真直度の偏差は,次の値を超えてはならない。

1000

)

01

.

0

2

(

L

+

ここに,

L

は使用面の長さ

 (mm)

さらに,

300mm

について

0.005mm

を超えないのが望ましい。

A.2.23

使用面の平行度  平行直定規の使用面の平行度は,真直度の偏差の

1.5

倍を超えてはならない。す

なわち,

1000

)

01

.

0

2

(

5

.

1

L

+


57

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

A.2.24

側面の真直度

1000

)

01

.

0

2

(

10

L

+

A.2.25

側面の平行度

1000

)

01

.

0

2

(

15

L

+

A.2.26

使用面と側面との直角度

10mm

について,±

0.002 5mm

A.2.27

使用面の仕上げ  測定のときに使用する使用面は,研削又はきさげによって仕上げるのが望まし

い。

A.2.28

直定規の幅  直定規を精密水準器と共に用いる場合には,直定規の使用面の幅は,

35mm

以上でな

ければならない。

A.2.3

使用上の注意  直定規は,一般に,使用面を鉛直方向に置いて側面を支持するか,又は使用面を水

平方向にしてもう一方の使用面を支持するように,水平にして使用する。

使用面を水平にして支持する場合には,支持点は,できれば自重によるたわみが最小となるように選ぶ

のが望ましい。断面形状一様の直定規の場合には,その支持点は,

9

5

L

だけ離した位置で,両端から

9

2

L

距離で支持する(

図 A.1 参照)。この支持点の位置は,直定規にはっきりと印しなければならない。

直定規を最適支持位置ではなく,特に両端で支持するときは,自重によるたわみを考慮するのが望まし

い。

表 A.1 は,例としてだけ示すが,

5

種類の長さの直定規の最適支持点について示す。自重によるたわみ

は,使用する材料の弾性係数

E

に直接に依存する。

表 A.2 に示すたわみの値は,普通鋳鉄(弾性係数

E

98kN/mm

2

)で製作した直定規のたわみに対応する。鋼製の直定規(弾性係数

E

196kN/mm

2

)の場合には,

そのたわみは,半分になる。強じん(靱)鋳鉄の場合には,例えば,弾性係数

E

147kN/mm

2

であれば,

たわみは,弾性係数に反比例する。

表 A.2  表 A.1 に示した 種類の直定規に対応する要求精度

単位

mm

使用面

側面

呼び番号

寸法

普通鋳鉄(

1

)

製の場合にお

ける両端支持時のたわみ

真直度(

2

)

平行度

真直度

平行度

使用面との直角度

300

普通形

1

300

幅広形

0.001

0.005 0.007

5 0.050  0.075

±0.008

500

普通形

2

500

幅広形

0.003

0.007 0.010

5 0.070  0.105

±0.012

3 800

0.004

0.010 0.015

0 0.100  0.150

±0.020

4 1000

0.008

0.012 0.018

0 0.120  0.180

±0.025

5 1600

0.016

0.018 0.027

0 0.180  0.270

±0.045

(

1

)  E

=98kN/mm

2

(

2

)

部分許容値=300mm について 0.005mm

A.3

テーパシャンク付テストバー  テストバーは,所定の許容値内で,振れ又は機械の他の構成部品に対

する位置の測定において軸線の代表として使用する。

A.3.1

概要  テストバーには,機械の穴にはめるテーパシャンク部と測定の基準として使う円筒部とがあ

る[

図 A.2a)及び b)参照]。テストバーは,焼き入れし,安定化したものであるが,硬質クロムメッキを施

してあってもよい。


58

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

テストバーには,次の特性がある。

a)

製造及び検査のために,その両端には,研削又はラップ仕上げしたセンタ穴があり,その穴の周囲は,

保護のための逃げが設けられている。

b)

 90

度間隔に印を付けた四つの基準線

r

1

2

3

及び

4

。両端に付けた二つの印の間の距離は,測定

長さ

l

を表す。

l

は,

75mm

150mm

200mm

300mm

及び

500mm

とする。

c)

テーパ角度の比較的小さいモールステーパ及びメトリックテーパの場合には,テストバーは,ソケッ

トに自己保持される[

図 A.2a)参照]。ソケットからテストバーを引き抜くために,円筒部とテーパ部

との境近くにナットを入れるねじ部を設ける。

d)

比較的テーパ角度の大きなテーパの場合には,ねじ穴は,ねじ付きのドローバー又は自動工具交換装

置で使われるリテンションノブでテストバーを固定するために使用する[

図 A.2c)参照]。

研削するときに,といし車の送りの向きを反転させる部分として,テストバーの円筒部分よりもわずか

に直径を小さくした延長部分

P

を長さ

14mm

から

32mm

設けてもよい[

図 A.2d)参照]。

図 A.2  モールス及びメトリックテーパシャンク付テストバー

図 A.3 には,テストバーの形状・寸法を例として示す。この図に示す外形寸法及び中空穴の形状は,テ

ストバーを片持ちで使用したときの自重による先端でのたわみ及びダイヤルゲージをテストバー先端に当

てたときのたわみを無視できるように決めてある(ただし,モールステーパ

No.0

及び

No.1

を除く。

表 A.3 には,たわみの値を示す。このたわみは,

E

206kN/mm

2

のときの計算値である。この弾性係数

よりも幾分小さな値

  (E

176kN/mm

2

E

186kN/mm

2

)

でも,そのたわみは無視できる。


59

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

表 A.4 には,

7/24

テーパに対応するモールステーパの呼び番号及び円筒部を示す。

図 A.3 と異なる寸法のテストバーを心出し試験に使用する場合には,そのたわみを分かるようにテスト

バーに印しておき,試験を行うときに考慮することが望ましい。

5kg

を超える質量をもつテストバーは,そのテストバーを主軸穴にはめたときに主軸にたわみを生じさ

せることがあることに注意する。

A.3.2

精度  テストバーは,表 A.3∼表 A.5 の条件を満たすのが望ましい。

機械のソケットに適切にはめるために,テーパシャンクの精度は,テーパプラグゲージの精度と一致す

るのが望ましい。

中空テストバーの場合に設ける自由端側の止めぶたは,

はめたときに変形を生じさせないように強固に,

かつ,確実に固定するのが望ましい(例えば,冷やしばめ)

テストバーを使用する試験には,センタ間にテストバーを取り付けて行う試験,テストバーの母線に沿

って等間隔に幾つかの点で振れを測定する試験及び四つの基準線に対応する母線を含む二直角断面内にお

ける円筒部分の直径の測定を行う試験がある。

表 A.5 に示す公差は,測定長さに対応させて計算しなけれ

ばならない。

テストバーの円筒部分は,ダイヤルゲージの測定子の接触点での摩擦を減らすようにするために研削仕

上げを施し,表面の粗さを小さくしなければならない。

表 A.3  テストバー−たわみ量

延長部分のないテストバー

延長部分付テストバー

自由端に荷重 P
をかけたときの
たわみ

自由端に荷重 P
をかけたときの
たわみ

使 用 円

筒 部 の
長さ

全質量 
( 近 似
値)

自由たわ 
(

1

)

P

全たわ

全 質 量
( 近 似
値)

自由た
わみ(

1

)

P

全たわ 

テーパ呼び番号

mm kg  mm  g  mm mm

kg mm

g  mm mm

備考

モールステーパ

No.0

75

0.11

0.000 65

  50

0.000 9

0.001 6 0.12

0.000 9

  50

0.000 9  0.001 8

モールステーパ

No.1

75

0.13

0.000 5

  50

0.000 7

0.001 2 0.14

0.000 7

  50

0.000 7  0.001 4

たわみは,
考慮する。

モールステーパ

No.2

150

0.73

0.001 5

100

0.000 6

0.002 1 0.79

0.001 9

100

0.000 6  0.002 5

モールステーパ

No.3

200

0.96

0.001 8

100

0.000 7

0.002 5 1.09

0.002 2

100

0.000 7  0.002 9

モールステーパ

No.4

300

2.2

0.003 3

100

0.000 7

0.004

2.28

0.003 9

100

0.000 7  0.004 6

モールステーパ

No.5

300

3

0.002 6

100

0.000 6

0.003 2 3.14

0.003 1

100

0.000 6  0.003 7

モールステーパ

No.6

500

10

0.005 8

100

0.000 35 0.006 2 10.32

0.006 6

100

0.000 35  0.007

メトリックテー

パ No.80 以上

500

15

0.003 5

100

0.000 15 0.003 7 15.24

0.003 9

100

0.000 15  0.004 1

たわみは,
考慮しなく
てよい。

(

1

)

この自由たわみの値は,測定長さ の両端における自由たわみの差を示す。


60

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

備考1.  引抜き用ナットは,テストバーと共に供給されるのが望ましい。

2.

テーパシャンクの詳細及び D

1

寸法は,最新の日本工業規格による。テストバーの両端に研削又はラップ仕上

げしたセンタ穴を設ける。センタ穴保護のためにセンタ穴の周りに逃げを設ける。

3.  2

点鎖線で示した部分は,

図 A.2d)に示した延長部分である。この延長部分 は,製造を容易にするために付

加したものである。テストバーの全長は,延長部分の長さだけ長くなり,中空テストバー円筒穴の長さも長

くなる。止めぶたは,変えない。

図 A.3  テストバー 


61

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

表 A.4  テストバー−7/24 テーパシャンクの円筒部

50

7/24

テーパ番号 30  40  45

短尺形

長尺形

測定長さ

200mm 300mm 300mm 300mm 500mm

円筒部に適用するモー

ルステーパ番号

3

4, 5

4, 5

4, 5

6

表 A.5  テストバー−必要条件

単位

mm

測定長さ

75  150 200 300 500

振れ(全長にわたって)

0.002 0.002 0.003 0.003 0.003

円筒部の直径差

0.002 0.002 0.003 0.003 0.003

テーパ公差

テーパシャンクの精度は,テーパゲージの精度と対応するのが望まし

い。

A.3.3

使用上の注意  テストバーのテーパシャンクは,機械の主軸にうまくはまるのが望ましい。このこ

とは主軸にも注意を必要とする。

振れを測定するために,テストバーは,

4

位置で主軸に順次はめて,

90

度ごとの

4

位置での読みの平均

を取る。

構成部品の側面の位置精度又は平行度を検査するために,試験は,テストバーと主軸とを

180

度回転さ

せて,テストバーの円筒面上の相対する二つの母線上で順次行う。

主軸にテストバーをはめたあと,作業者が手で触ったときの熱の影響がなくなり,温度が安定するまで

十分に時間をとるのが望ましい。

モールステーパ

No.0

及び

No.1

のテストバーの場合には,自重によるたわみを考慮する必要がある。目

0.001mm

,接触力

0.5N

以下のダイヤルゲージだけを使用するのが望ましい。そのダイヤルゲージは,

できれば,自重によるたわみの向きと反対になるようにテストバーの下側から当てるのが望ましい。

A.4

センタ穴付テストバー

A.4.1

概要  テーパシャンク付テストバーは,回転軸線の物理的な代表として使用するが,センタ間に取

り付けたテストバー(

図 A.4 参照)は,二つのセンタを通る直線の代表として使用する。そのようなテス

トバーの軸線は,直線であり,円筒外面は真円筒である。

両端には互いに直交する軸線を通る平面に配置された四つの基準線が印してあり,センタ穴の周りには

保護のための逃げが設けてある。

図 A.4  センタ穴付テストバー


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B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

表 A.6  センタ穴付テストバー

精度

全長

L

外径

D

内径

d

止めぶたなし

の質量

自由たわみ

直径の最大差 振れの最大値

mm mm

mm

kg

mm

mm mm

表面仕上げ

300

150

≤ L

 40 0  1.5

∼3 0.000

02

∼0.000 04

0.003

0.003

500

301

≤ L

 63 50 2.7

∼4.5 0.000

1

∼0.000 7

0.003

0.003

1000

501

≤ L

 80  61 8.3

∼16.5 0.000

5

∼0.00 8

0.004

0.007

1600

1001

≤ L

 125 105 28.2

∼45 0.003∼0.019 0.005 0.010

精密研削

(

1

)  E

=206kN/mm

2

センタ穴付テストバーは,一般に継目なし熱間引抜鋼管から製造する。このテストバーの両端には,セ

ンタ穴付きの止めぶたが固定してある。この止めぶたには,製造及び試験に使用する研削又はラップ仕上

げしたセンタ穴があり,保護のための逃げが設けられている。止めぶたは,変形が生じないように強固に,

かつ確実に固定するのが望ましい。円筒の外面は,必要な円筒度を得るために研削仕上げする。加工は,

通常の鋼管からは得られない肉厚を必要とする。すなわち,強化形の高圧配管用鋼管を使用する必要があ

る。この鋼管は,研削仕上げする前に,安定化しなければならない。円筒は,焼き入れし,耐摩耗性を向

上させるために硬質クロムメッキを施してもよい。

A.4.2

精度  センタ穴付テストバーに関係する真の問題点は,製造時に必要な精度を確保することである。

工作機械の心出しは,300mm について 0.01mm の精度まで測定する必要があるので,このテストバーの円

筒部の真直度は,300mm について少なくとも 0.003mm 以下でなければならない。

300mm

を超える中空テストバーの肉厚は,質量を軽減し,かつ剛性を損なわない程度のものがよい。

1 600mm

を超えるテストバーは,製造がかなり困難であり,その質量も取り扱いができなくなるほど重

くなる。長いテストバーが必要な場合には,その代わりに光学的な方法,鋼線と顕微鏡とによる方法など

の試験方法を採用する必要がある。

表 A.6 に示す例は,工作機械で必要な大部分の試験を行うのに適しているテストバーの測定範囲を示す。

テストバーは,センタ間に取り付けて試験し,等間隔に,例えば,50mm 又は 100mm ごとに,軸線を含

む二直角断面における振れと直径とを測定する。この二つの断面は,円筒面に印された四つの基準線と一

致させる。

A.4.3

使用上の注意  平行度を試験するためには,テストバーの円筒面上の一つの母線上で読み取り,次

いでテストバーを 180 度回してもう一方の母線上で測定する。次いで,テストバーの左右を入れ替えて同

じ一対の母線上で測定を繰り返す。

これらの 4 組の読みの平均値を平行度の偏差とする。

この測定方法は,

テストバーの不確かさに起因する偏差の大部分を除くのに役立つ。

A.5

直角定規  直角定規の基本的な種類は,次による。

1)

平面と直角な角部とをもつ直角定規。補強リブ付きとリブなしとがある[

図 A.5a)参照]。

2)

円筒スコヤ。平面に直角な軸線をもつ[

図 A.5b)及び c)参照]。

3)

角形スコヤ。補強リブ付きとリブなしとがある[

図 A.5d)参照]。

A.5.1

概要  直角定規の寸法は,一般に 500mm を超えない。それよりも長い直角を試験するには,光学的

な方法を使用するのが望ましい。この方法のほうがより実際的である。

直角定規は,鋼,鋳鉄又は他の適切な材料で製作する。焼き入れし,安定化してあるものがよい。

A.5.2

精度  直角定規は,次の条件を満たすように製作する。


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A.5.21

平面度及び真直度の公差  二つの片をもつ直角定規の平面度の公差又は円筒スコヤの真直度の公

差は,次の式による。

1000

)

01

.

0

2

(

L

+

ここに,  は使用面の長さ (mm)

図 A.5  直角定規の基本形 

A.5.22

直角度の公差  300mm について 0.005mm

角度は,90 度より小さくても,大きくてもよい。

図 A.5a)に示す直角定規について,長片の外側と内側の両使用面は,短片に直角であることが望ましい。

A.5.23

使用面の仕上げ  使用面は,研削仕上げ又はきさげ仕上げしなければならない。

A.5.24

二つの片をもつ直角定規の剛性の公差  たわみは,荷重 2.5N を短片に平行な向きに長片の一端に

かけたときの次の値を超えてはならない(

図 A.6 参照)。

1000

7

.

0

L

ここに,

  L

は直角定規の長片の使用面長さ

 (mm)


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B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.6  長片と短片とをもつ直角定規の剛性測定 

A.5.3

使用上の注意  工作機械の試験で,通常,直角度の許容値は,

0.03mm/1 000mm

0.05mm/1 000mm

まで様々である。直角定規は,この範囲の許容値を扱うのに便利である。しかし,これよりも小さな許容

値に対しては,使用する直角定規の誤差を考慮しなければならない。直角定規を使わない他の測定方法も

考えてもよい。

A.6

精密水準器  精密水準器には,気泡管式(図 A.7 参照)と電子式(図 A.8 参照)とがある。

これらの精密水準器の主な機能は,次のとおりである。

a)

絶対水準の決定

b)

角度又は傾きの微小な変化の比較

実行する試験の要求精度に応じて,必要な精密水準器の感度と種類とを決める。

A.6.1

気泡管式精密水準器

A.6.11

概要  気泡管式精密水準器には,マイクロメータ付きと目盛線付きとがあり,調整ねじ付きと調整

ねじなしとがある。

マイクロメータ付きの精密水準器の場合には,

傾きの変化は,

マイクロメータの読みの差から読み取り,

目盛線付きの場合には,その目盛から直接読み取る。

精密水準器の定数又は感度は,気泡を

1

目盛だけ偏位させるのに要する傾きの変化量で,単位は,

mm/mm

(又は秒)で表す。

図 A.7  気泡管式精密水準器

図 A.8  電子式精密水準器


65

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A.6.12

精度  工作機械を試験するために,精密水準器は,

0.005mm/1000mm

0.02mm/1000mm

の精度で,

かつ気泡は,

0.05mm/1000mm

以下の角度の変化に対して少なくとも

1

目盛偏位するのが望ましい。

底面の平面度は,次の公差に対応するのが望ましい。

L

250mm

のとき,

0.004mm

250mm

L

500mm

のとき,

0.006mm

底面が平らで凹みがない場合には,底面は中高でないことが重要である。

A.6.13

使用上の注意  精密水準器を使った試験は,できるだけ短時間で終わるのがよく,測定は,測定

の始めと終わりとで室温の変化を考慮するために逆方向に繰り返して行う。

気泡の入ったガラス管は経年変化をすることがあるので,気泡管式精密水準器は,定期的に校正するの

が望ましい。各校正日をその精密水準器の校正表に記入しておくのが望ましい。

A.6.2

電子式精密水準器

A.6.21

概要及び精度  電子式精密水準器は,気泡管式よりも感度が高く,応答も速く,温度の影響も受

けにくく,かつ,自動記録計にも出力できる。

A.6.22

使用上の注意  電子式精密水準器の倍率は調整できるので,既知の角度までその精密水準器を傾

けるためにサインバーを使って定期的に校正することが重要である。電子式精密水準器によっては,例え

ば,電磁チャック又はダイヤルゲージを取り付けるマグネットベースの磁力の影響を受けることがある。

測定方向に直角な面の水準が,精密水準器の製造業者の仕様内に入っていることを確かめておく。

絶対水準を検査するときは,精密水準器を

180

度向きを変えて,それぞれの読みを取り,それぞれの読

みの平均値を求めるのが望ましい。

精密水準器を使用した連鎖法による真直度又は平面度を測定するときは,直前に読み取ったときに置い

ていた前側の脚と同じ位置に後側の脚がくるように精密水準器をその脚間間隔

L

図 A.7 及び図 A.8 参照)

だけ次々と移動させて読みを取る。

A.7

変位計  ダイヤルゲージ及び電気マイクロメータの

2

種類を例として示す。

A.7.1

ダイヤルゲージ(図 A.9 及び図 A.10 参照)  ダイヤルゲージの詳細については,該当する日本工業

規格を参照することが望ましい。通常の試験は,目量

0.01mm

のダイヤルゲージを用いて行えるが,より

精密な試験(例えば,工作機械の主軸の振れ)は,目量

0.001mm

ダイヤルゲージを使用する。

図 A.9  ダイヤルゲージ 


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B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.10  てこ式ダイヤルゲージ 

ダイヤルゲージの基本特性の表示は,次による。

a)

誤差線図

b)

戻り誤差の最大値

c)

測定子の行程の始点と終点とにおける測定力の最大差

d)

測定力の最大部分変化(測定力は,一般に,測定範囲のすべての位置でスピンドルが入っていくとき

と出ていくときとで異なった値をとる。

e)

ダイヤルゲージの測定子を上方及び下方から当てたときの再現性

使用するダイヤルゲージとして,行程が短くて,戻り誤差が小さく,かつ,測定力が小さいものを推奨

する。

A.7.2

電気マイクロメータ  電気マイクロメータは,検出器とそれを接続する指示計とから構成される。

指示計は,高い精度で検出器の変位を表示できる。検出器には,プランジャ式とてこ式とがある(

図 A.11

及び

図 A.12 参照)。

図 A.11  プランジャ式

図 A.12  てこ式

A.7.3

使用上の注意  ダイヤルゲージ及び電気マイクロメータの支持には,望まない誤差が入るのを避け

るために,十分に剛性の高いものを使用するのが望ましい。

ダイヤルゲージ又はプランジャ式電気マイクロメータの測定子は,不確かさを避けるために,測定すべ

き面に垂直に当てるのが望ましい。

A.8

定盤


67

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

A.8.1

概要  定盤の大きさは,

160mm

×

100mm

2500mm

×

1600mm

までとする。

400mm

×

250mm

よりも

小さい鋳鉄製定盤には,持ち運びができるように適切な握りを付ける(

図 A.13 参照)。

400mm

×

250mm

上の鋳鉄製定盤には,取外しできる握りを付ける。石製定盤には,握りが付いていない(

図 A.14 参照)。

図 A.13  鋼製又は鋳鉄製定盤

図 A.14  石定盤

A.8.2

使用上の注意

1000mm

×

630mm

以下の定盤の足には,

高さ調整機能のある三つの足が付いている。

400mm

×

250mm

よりも大きい定盤の足のうちの一つは,傾き防止用の安全足とする。

1000mm

×

630mm

りも大きい定盤は,高さ調整機能のある五つ以上の足で支持する(

図 A.15 参照)。

図 A.15  大形定盤の足の位置

A.9

測微顕微鏡及び鋼線(図 A.16 参照)

A.9.1

概要  測定器は,標線付きの測微顕微鏡及び鋼線について位置を高精度に読み取る測微目盛から構

成する。

A.9.2

精度  測微顕微鏡は,精密水準器(測微顕微鏡の支持台に組み込まれているものもある。)を使用し

て機械上で調整する。鋼線の両端は,測微顕微鏡の標線又は標尺目盛に合わせて調整する。測微顕微鏡を

取り付けたテーブルを移動させて水平面内の読みを取る。

A.9.3

使用上の注意  鋼線を扱うとき,十分な引張り力を作用させて,ねじ(捩)れのないように注意す

るのが望ましい。鋼線の直径は,できるだけ小さくし,

0.1mm

以下が望ましい。

20m

以上の長いベッドで

も,特別な注意をしなくても測定ができる。


68

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.16  鋼線と測微顕微鏡 

A.10

アラインメント望遠鏡

A.10.1

概要  アラインメント望遠鏡(図 A.17 参照)は,真直度,平行度及び直角度を測定できるように

設計されている。望遠鏡のレンズを通して,水平及び垂直の標線が標点上に見える。

A.10.2

精度  標点に対する標線の垂直及び水平の変位は,測微目盛から直接

mm

単位で測定する(

図 A.18

参照)

。測微目盛を動かすことによって,焦点合わせ用のレンズの位置を変え,ゼロから無限大まで標点に

焦点を合わせることができる。標線の焦点は,接眼レンズに設けられている。望遠鏡は,通常,照準線の

水平及び垂直方向の調整ができる球面座の付いた架台(

図 A.17 参照)上に取り付けられる。真直度は,標

点を照準線に沿って動かすことによって測定できる(

図 A.19 参照)。精密水準器及び光学式直定規を取り

付ければ,平行度及び直角度を測定できる。

A.10.3

使用上の注意  使用に際しての注意事項は,次による。

a)

過度な光の屈折を起こす温度変化のある場所での使用を避ける。

b)

標点取付け具の底面は,清浄にする。

c)

測微目盛の読みは,正確に読み取る。すなわち,バーニアの読取りにおいて正と負とを混同しないよ

うにする。

 (L)

,上

 (U)

,右

 (R)

,下

 (B)

の順序で読み取ることを推奨する(

図 A.20 参照)。

d)

焦点合わせは,鮮明にする。

e)

できれば,測定器は強固に取り付ける。

A.11

オートコリメータ(図 A.21 参照)

A.11.1

概要  標線は光源側に置き,横からコンデンサレンズを介して照明用光源からの光を標線に当てる。

光は,半透鏡プリズムによって反射され光軸に沿って進む。

標線と接眼側焦点鏡上に結ばれる標線の反射像とを接眼レンズで見て,測微装置で反射像の位置の変化

を測定する。


69

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.17  水平架台上に取り付けたアラインメント望遠鏡

図 A.18  十字線,標点及び測微目盛

図 A.19  真直度は,光軸からの変位を測定することによって求める

図 A.20  LURD の原理

A.11.2

精度  測微装置には,目量

1/2

秒で,

1/4

秒以内の読みを繰り返して得られるように良く反射する面

が付いている。

A.11.3

使用上の注意  測定中は,オートコリメータの望遠鏡を測定すべき線上に定置するのが望ましい。

機械のたわみは,別途測定し,記録しておくことが望ましい。

振動又は温度の急激な変化を避けることが重要である。

図 A.21  オートコリメータ

A.12

走査形光学式スコヤ(5.324 参照)


70

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

A.12.1

概要  走査形光学式スコヤによる測定は,アラインメント望遠鏡と三つの基準標点とを用いる。

この基準標点は,面の平面度の測定に必要な基準平面を形成するために

3

個使用する(

図 A.22 参照)。こ

の望遠鏡は,五角形プリズムを組み込んだ回転光学装置の付いた三脚に取り付ける。この三脚の高さを調

整して,

3

個の基準標点で決まる基準平面と走査する平面とを一致させる。

A.12.2

精度  A.10 に示すように基準標点に焦点を合わせ,回転光学装置のマイクロメータで標線と任意

の位置においた測定用標点との上下方向の変位を測定する。

図 A.22  走査形光学式スコヤの取付け 

A.12.3

使用上の注意

a)

過度の光の屈折を起こす温度変化のある場所での使用を避ける。

b)

標点取付け具の底面は,清浄にする。

c)

マイクロメータの読みは,正確に読み取る。すなわち,バーニアの読み取りにおいて正と負とを混同

しないようにする。左

 (L)

,上

 (U)

,右

 (R)

,下

 (D)

の順序で読み取ることを推奨する(

図 A.20 参照)。

d)

焦点合わせは,鮮明にする。

e)

できれば,測定器は強固に取り付ける。

A.13

レーザ干渉計

A.13.1

概要  レーザ干渉計の開発は,あらゆる種類及びあらゆる大きさの工作機械の試験に使用できる

高精度な標準を工作機械産業に提供した。現在,安定化ヘリウムネオンレーザは,レーザ長さ標準の一つ

であり,実際に利用できる長さ標準である。

A.13.2

精度  干渉計の精度は,レーザの波長によって決まるが,

1000

万分の

5

よりも良い。

レーザ干渉計は,

6

自由度のうちの

5

自由度を測定することができる。すなわち,直線位置決め,水平

面内の真直度,垂直面内の真直度,ピッチ及びヨーを測定できる。その他に

2

軸間の直角度も測定できる。

6

自由度のすべては,運動の角度変化又は直進偏差によって位置決め誤差が一つの座標軸上の位置決め誤

差よりも大きくなることがあるので,同等に重要である。

測定を始める前に考慮すべき誤差原因は,次のとおりである。


71

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

a)

環境誤差  直線の測定では,周囲の環境条件をどの程度正確に把握しているか,また,その安定性が

どの程度であるかがレーザ干渉計の絶対精度を直接決定する。周囲温度

1

℃,絶対気圧

333PA.

(2.5mmHg)

及び相対湿度

30%

の誤差があれば,約

100

万分の

1

の誤差を生じる。これらの誤差は,手

動補正又はレーザ表示装置に接続できる自動補正装置の一つを使用することによってなくすことがで

きる。

しかし,最も重要なことは試験中,条件が安定した状態を保つことである。

b)

機械表面の温度  レーザ干渉計による測定の誤差原因の一つは,工作機械自体に及ぼす温度の影響で

ある。運動部品を位置決めするために鋼製の送りねじを使用する工作機械の場合には,送りねじの温

度が

1

℃上昇すると,

1mm

について約

0.000 010 8mm

の伸びを示す。往復台の全移動量を

1 000mm

すると,温度変化によって送りねじの長さは,

0.010 8mm/

℃も伸びる可能性がある。

c)

固定光路誤差  固定光路誤差は,測定中の環境条件の変化に伴う誤差である。簡単に言えば,レーザ

光の光路の中の補正されない長さによる誤差で,レーザ光の周囲の条件が変化(レーザ波長が変化)

する場合,及び干渉計と反射鏡とを取り付けた機械部分の温度が変化するような場合に,干渉計と反

射鏡との距離が変化する(干渉計と反射鏡との間の距離が長くなったり,短くなったりする。)(

A.23

参照)

レーザ測定経路の固定光路領域は,干渉計とリセット位置(

0

位置)との間の距離

  (L

1

)

である。干

渉計と反射鏡との間に運動がなくてもレーザ光の周囲環境条件が変化すれば,波長は全光路

  (L

1

L

2

)

で変化する。光速度の補正値を環境条件に応じて補正すると,測定光路長

L

2

についてはレーザ波長が

補正されるが,固定光路長

L

1

については補正されない。

図 A.23  固定光路誤差

d)

余弦誤差  レーザ光の光軸と工作機械の運動軸との心合せ誤差は,測定距離と実際に移動した距離と

の誤差となって現れる。この心合せ誤差による誤差は,誤差の大きさが光軸と運動との間の心合せ誤

差の角度の余弦に比例することから,一般に余弦誤差と呼ばれる。

レーザ光の光軸が工作機械の移動軸線と一致していないときは,測定した距離は,余弦誤差によって実

際の距離よりも短くなる(

図 A.24 参照)。

レーザ干渉計によって測定される距離を

L

LMS

とし,

工作機械によって実際に移動した距離を

L

M

として,

半径

L

LMS

で,位置

A

を中心に円弧を描くと,

L

LMS

は,

L

M

よりも短いことが分かる。

余弦誤差をなくすためには,測定装置の準備の段階で,心合せを適切に行うことである。


72

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

図 A.24  余弦誤差

e)

アッベの誤差  測定すべき位置からオフセットした位置で測定を行う場合には,運動部品の運動の角

度偏差による誤差を生じる(

図 A.25 参照)。

角度偏差に起因する誤差の近似計算には,次の経験則が役に立つ。すなわち,角度偏差が

1

秒のときに

生じるオフセット誤差は,約

0.005

µ

m/mm

である。

200mm

のオフセットがある場合には,角度偏差が

2

であれば,測定の誤差は,

200mm

×

0.005

µ

m/mm/

秒)×

2

秒=

2

µ

m

となる。

A.13.3

使用上の注意  工作機械の精度試験でレーザ干渉計を取り付けるときに,次の三つの指針に従う

のが望ましい。

a)

所定の測定を行うために適切に取り付ける。

b)

可能性のある誤差(心合せ誤差,補正誤差,固定光路長誤差など)を最小にする。

c)

できるだけ工作機械の作業状態に近い状態で使用する。

個々の器具の取付けは,工作物の加工精度に影響を及ぼす工作機械の誤差を測定できるように注意して

行うのが望ましい。測定は,工具と工作物との相対運動に対応できるように行うのがよい。光学部品の一

つは工具の位置に,もう一つは工作物の位置に取り付けるように配置するのが望ましい。

レーザ干渉計による測定では,レーザヘッドの位置を変えることなく測定できる方向を最大にするよう

に光学系を配置するのが望ましい。レーザ干渉計は,極めて高精度であるが,その正確さは,初期の設置

と可能性のある誤差の除去とに大きく依存することに注意しなければならない。

図 A.25  アッベの誤差


73

B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

附属書 B(参考)  参考文献

[1]

JIS B 0021

 : 1998

  製品の幾何特性仕様

 (GPS)

−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公

差表示方式

備考

ISO/DIS 1101 

: 1996, Geometrical product specifications (GPS)

Geometrical tolerancing

Toler-ancing of form, orientation, location and run-out

−が,この規格と一致している。

[2]

JIS B 0401-1

 : 1998

  寸法公差及びはめあいの方式−第

1

部:公差,寸法差及びはめあいの基礎

備考

ISO 286-1 

: 1988, ISO System of limits and fits

Part 1 : Bases of tolerances. deviations and fits

が,こ

の規格と一致している。

[3]

JIS B 4003

 : 1991

  モールステーパ部をもつシャンク及びソケット−形状・寸法

備考

ISO 296 

: 1991, Machine tools

Self-holding tapers for tool shanks

からの引用事項が,この規格の当

該事項と同等である。

[4]

JIS B 6101

 : 1982

24

7

テーパの主軸端及びシャンク

備考

ISO 297 

: 1988, 7/24 tapers for tool shanks for manual changing

が,この規格の

表 と一致している。

[5]

JIS B 6192

 : 1999

  工作機械−数値制御による位置決め精度試験方法通則

備考

ISO 230-2 

: 1997, Test code for machine tools

Part 2 : Determination of accuracy and repeatability of

positioning of numerically controlled axes

が,この規格と一致している。

[6]

JIS B 6310

 : 1999

  産業オートメーションシステム−機械及び装置の制御−座標系及び運動の記号

備考

ISO/DIS 841 

: 1994, Industrial automation systems

Physical device control

Coordinate system and

motion nomenclature

が,この規格と一致している。

[7]

JIS B 6339

 : 1998

  マシニングセンターツールシャンク及びプルスタッド

備考

ISO 7388-1 

: 1983, Tool shanks with 7/24 tapers for automatic tool changers

Part 1 : Shanks Nos.40,

45 and 50

Dimensions,

及び ISO 7388-2 

: 1984, Tool shanks with 7/24 tapers for automatic tool

changers

Part 2 : Retention knobs for shanks Nos.40, 45 and 50

Dimensions and mechanical

characteristics

が,それぞれこの規格の

附属書 及び と一致している。

[8]

JIS B 7503

:ダイヤルゲージ

備考

ISO/R463 

: 1965, Dial gauges reading in 0.01 mm, 0.01 in and 0.0001 in

が,この規格と一致してい

る。

[9]

JIS B 7506

 : 1997

  ブロックゲージ

備考

ISO/DIS 3650 

: 1996, Geometrical product specifications (GPS)

Length standards

Guage blocks

が,この規格と一致している。


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B 6191 : 1999 (ISO 230-1 : 1996)

原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

堤      正  臣

東京農工大学大学院

吉  田  嘉太郎

千葉大学工学部

三  島  啓  邦

全国木工機械工業会

土  屋  武  紀

日本鍛圧機械工業会

江  草  友  良

株式会社クレオ

平  沼  朋  一

石川島播磨重工業株式会社生産技術開発センタ合理化推進部

磯  部      章

住友重機械工業株式会社総合技術研究所企画管理部

澤  江  政  信

富士電機株式会社総務部

戸  川      悟

日立精機株式会社開発部

白  石  治  幸

株式会社牧野フライス製作所技術開発センタ

米  田  尚  武

株式会社カシフジ第二技術部

坂  口      誠

株式会社ミヤノ上田開発グループ

吉  村  光  正

光洋機械工業株式会社品質保証部

寺  島  昌  也

株式会社岡本工作機械製作所技術部

(事務局)

大  槻  文  芳

日本工作機械工業会技術部

米  谷  理  史

日本工作機械工業会技術部