B 1563:2009
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語,定義及び量記号 ······································································································· 1
4 要求事項 ························································································································· 3
4.1 呼び及び寸法 ················································································································ 3
4.2 形状及び表面の品質 ······································································································· 3
4.3 等級及びゲージ ············································································································· 3
5 材料······························································································································· 3
6 測定方法 ························································································································· 3
6.1 平均直径及び直径不同 ···································································································· 3
6.2 真球度 ························································································································· 4
6.3 ウェビネス ··················································································································· 4
6.4 表面粗さ ······················································································································ 4
6.5 ロットの直径の相互差及びゲージ······················································································ 4
7 検査······························································································································· 4
8 呼び方···························································································································· 4
9 包装及び表示 ··················································································································· 4
9.1 包装 ···························································································································· 4
9.2 表示 ···························································································································· 4
附属書A(規定)真球度の評価方法 ························································································· 7
附属書B(規定)ゲージ及び区分けの説明図 ·············································································· 8
附属書C(参考)測定力及び窒化けい素球の質量による弾性接近量の補正 ······································ 10
B 1563:2009
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本ベアリング工業会(JBIA)から,
工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経
済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
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日本工業規格 JIS
B 1563:2009
転がり軸受−窒化けい素球
Rolling bearings−Silicon nitride balls
序文
この規格は,JIS R 1669:2006(ファインセラミックス−転がり軸受球用窒化けい素材の基本特性及び等
級分類)を用いた転がり軸受用球について,JIS B 1501を基に作成した日本工業規格である。
なお,対応国際規格は,現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,転がり軸受用窒化けい素球について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0104 転がり軸受用語
JIS B 0124 転がり軸受−量記号
JIS B 0633 製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−表面性状評価の方式及び手順
JIS B 0651 製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性
JIS B 1501 転がり軸受−鋼球
JIS B 1515-1 転がり軸受−公差−第1部:用語及び定義
JIS B 7451 真円度測定機
JIS R 1669 ファインセラミックス−転がり軸受球用窒化けい素材の基本特性及び等級分類
3
用語,定義及び量記号
この規格で用いる主な用語,定義及び量記号は,JIS B 0104,JIS B 0124,JIS B 1501及びJIS B 1515-1
によるほか,次による。
3.1
窒化けい素球
窒化けい素材を用いた転がり軸受用完成球。
3.2
呼び
窒化けい素球の寸法が同一であることを示すのに一般的に用いる直径の値。呼び及び寸法を表1に示す。
2
B 1563:2009
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3.3
呼び直径,Dw
呼びをmm単位で表した値。
3.4
実測直径,Dws
1個の窒化けい素球の実際の表面に接する平行二平面間の距離。
3.5
平均直径,Dwm
1個の窒化けい素球の実測直径の最大値と最小値との算術平均値。
3.6
直径不同,VDws
1個の窒化けい素球の実測直径の最大値と最小値との差。
3.7
真球度
窒化けい素球表面の最小二乗平均球面の中心をその中心とする,最小外接球面と最大内接球面との半径
差。
3.8
ウェビネス
理想球形からの不規則又は周期的な表面のうねり。
3.9
表面粗さ
製造方法及び/又は他の影響から生じた,比較的小さな範囲の表面の不均一性。表面粗さは,算術平均
粗さ (Ra) で表す。
3.10
表面きず
製造,保管,取扱い又は使用中に生じた,表面のきず,凹凸,又はそれらの集まりをいう。
注記 表面きずは,表面粗さを構成するものとは異なるものであり,表面粗さ測定に際しては考慮に
入れない。
3.11
ロット
等しいと考えられる条件の下で製造し,同等品として取り扱う一定数量の窒化けい素球。
3.12
ロットの平均直径,DwmL
ロット内の最大窒化けい素球の平均直径と最小窒化けい素球の平均直径との算術平均値。
3.13
ロットの直径の相互差,VDwL
ロット内の最大窒化けい素球の平均直径と最小窒化けい素球の平均直径との差。
3.14
等級,G
寸法,形状,表面粗さ及びゲージ間隔の許容値についての特定の区分(表2及び表3参照)。
3
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注記 等級は,ラテン文字Gとアラビア数字で表す。
3.15
ゲージ,S
ロットの平均直径と呼び直径との寸法差であって,あらかじめ等級ごとに規定した系列の値。
注記1 各ゲージは,該当する等級に対して,あらかじめ規定したゲージ間隔の整数倍である(表3
及び附属書B参照)。
注記2 顧客が正確な窒化けい素球の仕様を指定するためには,等級及び呼び直径だけでなく,ゲー
ジも考慮に入れる。
3.16
ゲージからの寸法差,∆S
ロットの平均直径から呼び直径とゲージの和を引いた値(表3及び図B.2参照)。
∆S=DwmL−(Dw+S)
3.17
サブゲージ
あらかじめ規定した系列の値であり,ロットの平均直径とゲージとの差に最も近い値。
注記1 各サブゲージは,該当する等級に対してあらかじめ規定したサブゲージ間隔の整数倍である
(表3及び附属書B参照)。
注記2 サブゲージは,その呼び直径とゲージとを組み合わせて,製造業者がロットの平均直径を表
示するために用いるものである。
4
要求事項
4.1
呼び及び寸法
呼び及び寸法は,表1による。
4.2
形状及び表面の品質
形状及び表面の品質は,次による。
− 直径不同,真球度及び表面粗さは,表2による。
− ウェビネスの許容限界値及び測定方法は,受渡当事者間の協議による。
− 表面の外観特性,表面きずその他同類のものは,受渡当事者間の協議による。
4.3
等級及びゲージ
ロットの直径の相互差,ゲージ間隔,推奨ゲージ,サブゲージ間隔及びサブゲージは,表3による。
5
材料
材料の基本特性,硬さ,曲げ強さ,破壊じん性値などは,JIS R 1669による。
6
測定方法
6.1
平均直径及び直径不同
平均直径及び直径不同を求めるために必要な直径は,窒化けい素球1個を測定平面とこれに垂直な測定
子との間に置き,通常10回以上方向を変えて測定する。
平均直径は,その最大値と最小値の算術平均値として求め,直径不同は,その最大値と最小値との差と
4
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して求める。
この場合の測定力は,3 N以下とする。呼び0.3 mm〜3.0 mmの窒化けい素球については,より小さな測
定力が望ましい。
注記 平均直径は,通常測定力及び窒化けい素球の質量による弾性接近量を補正する。補正方法は,
附属書Cを参照。
6.2
真球度
真球度の評価方法は,附属書Aによる。
6.3
ウェビネス
ウェビネスは,速度振幅として評価し,フィルタを用いたウェビネスメータで測定することを推奨する。
6.4
表面粗さ
窒化けい素球の表面粗さの測定はRaで評価し,JIS B 0651に規定する測定機を用い,評価方式及び手順
は,JIS B 0633による。
6.5
ロットの直径の相互差及びゲージ
ロットの直径の相互差は,ロット内の最大窒化けい素球の平均直径と最小窒化けい素球の平均直径との
差として求める。
ゲージは,ロットの平均直径の寸法差が,表3に規定する推奨ゲージのうち最も近い値として求める。
7
検査
窒化けい素球の検査は,6.1〜6.5について行い,箇条4を満足しなければならない。
8
呼び方
窒化けい素球の呼び方は,名称,呼び,ゲージ及び等級で表す。
例1 軸受用窒化けい素球
3 mm +3 μm G 10
例2 転がり軸受用窒化けい素球 3/8
−4 μm G 40
9
包装及び表示
9.1
包装
窒化けい素球は,適切な容器に収める。
9.2
表示
容器の表面に少なくとも次の事項を表示する。表示様式は,受渡当事者間の協議による。
− 名称
− 材料
− 呼び
− ゲージ
− 等級
− 数量
− 製造業者名又はその略号
− 製造年月又はその略号
5
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表1−呼び及び寸法
呼び
呼び直径
Dw
mm
呼び
呼び直径
Dw
mm
呼び
呼び直径
Dw
mm
0.3 mm
0.3
21/64
8.334 38
29/32
23.018 75
1/64
0.396 88
8.5 mm
8.5
15/16
23.812 5
0.4 mm
0.4
11/32
8.731 25
24 mm
24
0.5 mm
0.5
9 mm
9
31/32
24.606 25
0.02
0.508
23/64
9.128 12
25 mm
25
0.6 mm
0.6
9.5 mm
9.5
1
25.4
0.025
0.635
3/8
9.525
26 mm
26
0.68 mm
0.68
25/64
9.921 88
1 1/32
26.193 75
0.7 mm
0.7
10 mm
10
1 1/16
26.987 5
1/32
0.793 75
13/32
10.318 75
28 mm
28
0.8 mm
0.8
10.5 mm
10.5
1 1/8
28.575
1 mm
1
11 mm
11
30 mm
30
3/64
1.190 62
7/16
11.112 5
1 3/16
30.162 5
1.2 mm
1.2
11.5 mm
11.5
1 1/4
31.75
1.5 mm
1.5
29/64
11.509 38
32 mm
32
1/16
1.587 5
15/32
11.906 25
33 mm
33
5/64
1.984 38
12 mm
12
1 5/16
33.337 5
2 mm
2
31/64
12.303 12
34 mm
34
3/32
2.381 25
12.5 mm
12.5
1 3/8
34.925
2.5 mm
2.5
1/2
12.7
35 mm
35
7/64
2.778 12
13 mm
13
36 mm
36
3 mm
3
17/32
13.493 75
1 7/16
36.512 5
1/8
3.175
14 mm
14
38 mm
38
3.5 mm
3.5
9/16
14.287 5
1 1/2
38.1
9/64
3.571 88
15 mm
15
1 9/16
39.687 5
5/32
3.968 75
19/32
15.081 25
40 mm
40
4 mm
4
5/8
15.875
1 5/8
41.275
11/64
4.365 62
16 mm
16
1 11/16
42.862 5
4.5 mm
4.5
21/32
16.668 75
1 3/4
44.45
3/16
4.762 5
17 mm
17
45 mm
45
5 mm
5
11/16
17.462 5
1 13/16
46.037 5
13/64
5.159 38
18 mm
18
1 7/8
47.625
5.5 mm
5.5
23/32
18.256 25
1 15/16
49.212 5
7/32
5.556 25
19 mm
19
50 mm
50
15/64
5.953 12
3/4
19.05
2
50.8
6 mm
6
25/32
19.843 75
2 1/8
53.975
1/4
6.35
20 mm
20
55 mm
55
6.5 mm
6.5
20.5 mm
20.5
2 1/4
57.15
17/64
6.746 88
13/16
20.637 5
7 mm
7
21 mm
21
9/32
7.143 75
27/32
21.431 25
7.5 mm
7.5
22 mm
22
19/64
7.540 62
7/8
22.225
5/16
7.937 5
22.5 mm
22.5
8 mm
8
23 mm
23
注記 呼び直径の表記方法は,JIS B 1501に準じたものである。
6
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表2−直径不同,真球度及び表面粗さの許容限界値
単位 μm
等級
直径不同
VDws
真球度
表面粗さ
Ra
最大
最大
最大
G 3
G 5
G 10
G 16
G 20
G 24
G 28
G 40
G 60
0.08
0.13
0.25
0.4
0.5
0.6
0.7
1
1.5
0.08
0.13
0.25
0.4
0.5
0.6
0.7
1
1.5
0.010
0.014
0.020
0.025
0.032
0.040
0.050
0.060
0.080
注記 この表に示す値は,表面きずを考慮していないので,表面きずを除外して測定する。
表3−等級及びゲージ
単位 μm
等級
ロットの直径
の相互差
VDwL
ゲージ
間隔
推奨ゲージ
サブゲージ
間隔
サブゲージ
最大
G 3
G 5
G 10
G 16
G 20
G 24
G 28
G 40
G 60
0.13
0.25
0.5
0.8
1
1.2
1.4
2
3
0.5
1
1
2
2
2
2
4
6
−5,......−0.5, 0, +0.5,...+5
−5,......−1,
0, +1,......+5
−9,......−1,
0, +1,......+9
−10,....−2,
0, +2,......+10
−10,....−2,
0, +2,......+10
−12,....−2,
0, +2,......+12
−12,....−2,
0, +2,......+12
−16,....−4,
0, +4,......+16
−18,....−6,
0, +6,......+18
0.1
0.2
0.2
0.4
0.4
0.4
0.4
0.8
1.2
−0.2, −0.1, 0,
+0.1, +0.2
−0.4, −0.2, 0,
+0.2, +0.4
−0.4, −0.2, 0,
+0.2, +0.4
−0.8, −0.4, 0,
+0.4, +0.8
−0.8, −0.4, 0,
+0.4, +0.8
−0.8, −0.4, 0,
+0.4, +0.8
−0.8, −0.4, 0,
+0.4, +0.8
−1.6, −0.8, 0,
+0.8, +1.6
−2.4, −1.2, 0,
+1.2, +2.4
注記 ゲージ間隔の値は,受渡当事者間の協議によって小さくしてもよい。
7
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附属書A
(規定)
真球度の評価方法
A.1 適用範囲
この附属書は,窒化けい素球の真球度の評価方法について規定する。真球度の評価は,次の半径法測定
による。また,真球度の簡易評価方法として直径法測定を参考に示す。
A.2 半径法測定
真球度の測定は,互いに90°の3赤道平面における真円度測定によって行う。一つの実測赤道平面にお
ける真円度評価は,最小二乗中心によって行う。各実測赤道平面における半径差の最大値を真球度とする。
また,真円度評価に最小外接円を使用し,最小外接円から窒化けい素球表面までの半径方向の距離の最
大値を真球度としてもよい。疑義が生じた場合は,最小二乗中心法とする。
真円度の評価方法の詳細な内容については,JIS B 7451を参照。
注記 直径法測定(参考) 真球度の簡易評価方法として,窒化けい素球1個を角度90°のV溝とこ
れに垂直な測定子との間に置き,方向を変えて測定したときの測定子の動きの最大の値を2で
除した値を真球度とする。この場合の測定力は,3 N以下とする。
呼び0.3 mm〜3.0 mmの窒化けい素球については,より小さな測定力が望ましい。
8
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附属書B
(規定)
ゲージ及び区分けの説明図
序文
この附属書は,ゲージ及び区分けについて規定する。
B.1
ゲージ及びサブゲージ
等級G5のゲージ及びサブゲージの例を図B.1に示す。
単位 μm
図B.1
B.2
ロットとゲージとの関係
ロットとゲージとの関係を図B.2に示す。
図B.2
ロット
ロットの直径の相互差 (VDwL)
ロット内の最大の窒化けい素球
直径不同 (VDws)
ロット内の最小の
窒化けい素球
ロットの平均直径 (DwmL)
製造業者が用いる
サブゲージの目盛
顧客が用いる
ゲージの目盛
製造業者が用いる
サブゲージの目盛
呼び直径 (Dw)
ゲージ間隔
顧客が用いる
ゲージの目盛
サブゲージ間隔
−0.4 −0.2 0 +0.2 +0.4 −0.4 −0.2 0 +0.2 +0.4 −0.4 −0.2 0 +
0.2
−1 0 +1 +2
9
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図B.2(続き)
ゲージからの寸法差(ΔS)
ゲージ(S)に属する
最大DwmLのロット
ロットの平均直径 (DwmL)
ロット
製造業者が用いる
サブゲージの目盛
顧客が用いる
ゲージの目盛
ゲージ(S)に属する
最小DwmLのロット
ゲージ(S)
ゲージ(S)に対しての
ロットの平均直径の範囲
そのロットが
属している
サブゲージ
10
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附属書C
(参考)
測定力及び窒化けい素球の質量による弾性接近量の補正
序文
測定力を加えて窒化けい素球の直径を測定する場合は,測定力及び窒化けい素球の質量による弾性変形
が生じる。この附属書は,弾性接近量の補正方法について記載するものであって規定の一部ではない。
C.1 実測直径
実測直径は,式(C.1)によって求められる。
s
wx
ws
H
D
D
+
=
······································································ (C.1)
ここに,
Dws: 実測直径
Dwx: 測定によって得られた値1)
Hs: 弾性接近による補正量
注1) 測定力及び窒化けい素球の質量による弾性変形を含む。
C.2 補正量の計算
窒化けい素球の直径を測定する場合は,窒化けい素球を球端面測定子と測定平面との間に挟んで,ブロ
ックゲージと比較測定する。
a) 補正量 弾性接近による補正量は,式(C.2)で表される。
3
2
1
s
ε
ε
ε
−
+
=
H
····································································· (C.2)
ここに,
ε 1: 窒化けい素球と測定子との接触点における測定力による
弾性接近量
ε 2: 窒化けい素球と測定平面との接触点における測定力及び
窒化けい素球の質量による弾性接近量
ε 3: ブロックゲージと測定子との接触点における測定力によ
る弾性接近量
b) 弾性接近量 測定子と窒化けい素球 (ε 1),窒化けい素球と測定平面 (ε 2) 及び測定子とブロックゲー
ジ (ε 3) との接触点における弾性変位量の計算式を,表C.1に示す。
ここに,
P: 測定力
(N)
ν1: 測定子のポアソン比
W: 窒化けい素球の質量
(kg)
ν2: 窒化けい素球のポアソン比
r: 測定子球端面の曲率半径
(mm)
ν3: 測定平面のポアソン比
Dw: 窒化けい素球の呼び直径
(mm)
ν4: ブロックゲージのポアソン比
E1: 測定子の縦弾性係数
(GPa)
Θ1: 測定子の弾性定数
(GPa−1)
E2: 窒化けい素球の縦弾性係数
(GPa)
Θ2: 窒化けい素球の弾性定数
(GPa−1)
E3: 測定平面の縦弾性係数
(GPa)
Θ3: 測定平面の弾性定数
(GPa−1)
E4: ブロックゲージの縦弾性係数 (GPa)
Θ4: ブロックゲージの弾性定数
(GPa−1)
なお,弾性定数は式(C.3)によって求める。
11
B 1563:2009
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(
)
i
i
i
E
2
1
4
ν
−
=
Θ
······································································· (C.3)
表C.1−弾性接近量の計算式
測定の図例
接触の条件別の計算式
窒化けい素球と測定子との
接触点における測定力によ
る弾性接近量
ε 1 (μm)
(
)
3
w
2
2
1
2
1
2
1
28
.3
+
Θ
+
Θ
=
D
r
P
ε
···· (C.4)
窒化けい素球と測定平面と
の接触点における測定力及
び窒化けい素球の質量によ
る弾性接近量
ε 2 (μm)
(
)(
)
3
2
3
2
w
2
2
8.9
13
.4
Θ
+
Θ
+
=
D
W
P
ε
····· (C.5)
ブロックゲージと測定子と
の接触点における測定力に
よる弾性接近量
ε 3 (μm)
(
)
3
2
4
1
2
3
28
.3
Θ
+
Θ
=
r
P
ε
·············· (C.6)
c) 計算例 測定力及び窒化けい素球の質量による弾性接近量の補正の計算例を,次に示す。
呼び10 mmの窒化けい素球を,超硬合金製測定子球端面と超硬合金製測定平面との間に挟んで,ブ
ロックゲージと比較した場合の直径の実測値が9.998 50 mmであったとする。ただし,この場合の測
定力 (P) は0.39 N,窒化けい素球の質量 (W) は0.001 686 kg,測定子球端面の曲率半径 (r) は1.587 5
mmとする。
P=0.39 N,r=1.587 5 mm,Dw=10 mm,W=0.001 686 kg
また,超硬合金製測定子のポアソン比 (ν1) は0.21,窒化けい素球のポアソン比 (ν2) は0.28,超硬
合金製測定平面のポアソン比 (ν3) は0.21,ブロックゲージのポアソン比 (ν4) は0.30とする。
さらに,超硬合金製測定子の縦弾性係数 (E1) は550 GPa,窒化けい素球の縦弾性係数 (E2) は320
GPa,超硬合金製測定平面の縦弾性係数 (E3) は550 GPa,ブロックゲージの縦弾性係数 (E4) は210
GPaとする。
ν1=0.21,ν2=0.28,ν3=0.21,ν4=0.30,E1=550 GPa,E2=320 GPa,E3=550 GPa,E4=210 GPa
測定平面
P +W
窒化けい素球
P
球端面測定子
窒化けい素球
と測定子との
接触点
窒化けい素球
と測定平面と
の接触点
測定平面
P
球端面測定子
ブロックゲー
ジと測定子と
の接触点
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B 1563:2009
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ここで,式(C.3)から超硬合金製測定子の弾性定数 (Θ1),窒化けい素球の弾性定数 (Θ2),超硬合金
製測定平面の弾性定数 (Θ3),ブロックゲージの弾性定数 (Θ4) を求めると,次のとおりとなる。
Θ1=0.006 952 GPa−1,Θ2=0.011 520 GPa−1,Θ3=0.006 952 GPa−1,Θ4=0.017 333 GPa−1
まず,窒化けい素球と超硬合金製測定子球端面との弾性接近量ε 1を式(C.4)から求める。
(
)
μm
115
.0
520
011
.0
952
006
.0
10
2
5
587
.1
1
)
39
.0(
28
.3
3
2
2
1
=
+
+
=
ε
次に,窒化けい素球と超硬合金製測定平面との弾性接近量ε 2を式(C.5)から求める。
(
)(
)
μm
074
.0
952
0.006
520
0.011
10
686
001
.0
8.9
39
.0
13
.4
3
2
2
2
=
+
×
+
=
ε
ブロックゲージと超硬合金製測定子球端面との弾性接近量ε 3を式(C.6)から求める。
(
)(
)
μm
126
.0
333
017
.0
952
006
.0
5
587
.1
39
.0
28
.3
3
2
2
3
=
+
=
ε
弾性接近による補正量は,式(C.2)からHs=0.115+0.074−0.126=0.063 μmとなる。
したがって,窒化けい素球の実測直径は,式(C.1)からDws=9.998 50+0.000 063=9.998 563 mmとな
る。また,例として次の測定条件での窒化けい素球の呼び直径 (Dw) と弾性接近による補正量 (Hs) と
の関係を図C.1に示す。
P=0.39 N,r=1.587 5 mm,Dw=10 mm,W=0.001 686 kg
ν1=0.21,ν2=0.28,ν3=0.21,ν4=0.30,E1=550 GPa,E2=320 GPa,E3=550 GPa,E4=210 GPa
図C.1−窒化けい素球の呼び直径 (Dw) と弾性接近による補正量 (Hs) の例