2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 0909-1993
(ISO 8042 : 1988)
振動及び衝撃測定−
サイズモ式ピックアップの要求特性
Shock and vibration measurements−
Characteristics to be specified for seismic pick-ups
日本工業規格としてのまえがき
この規格は,1988年第1版として発行されたISO 8042 (Shock and vibration measurements−Characteristics to
be specified for seismic pick-ups) を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本
工業規格である。
なお,この規格で下線(点線)を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,電気・機械式の振動及び衝撃ピックアップ(サイズモ式ピックアップ)の重
要な特性の指示の方法について規定する。ピックアップの出力は,測定対象である運動の一軸,多軸又は
角に関する加速度,速度又は変位の関数である。
この規格は,計器製造業者にピックアップの特性表示についての指針を提供するとともに,使用者が必
要なピックアップを選択し,また,仕様を作成することを容易にするためのものである。その目的は,使
用者が必要なピックアップの特性の適切な記述を得られるようにすることである。
この規格の中で,振動及び衝撃ピックアップは,以下ピックアップと呼ぶ。
2. 引用規格
ISO 2041 Vibration and shock−Vocabulary
ISO 5347 Methods for the calibration of vibration and shock pick-ups
ISO 5348 Mechanical vibration and shock−Mechanical mounting of accelerometers
参考 JIS B 0153 機械振動・衝撃用語
JIS B 0908 振動及び衝撃ピックアップの校正方法−基本概念
3. 用語の定義 この規格には,ISO 2041及びISO 5347の用語の定義を適用する。
4. 一般事項
4.1
総論 4.2から4.16に規定する情報は,ピックアップの使用者に有用なものである。ピックアップの
製造業者が作成する資料,及びピックアップに添付する説明書の中に,全部又は部分的にこの情報を提供
することが望ましい。
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4.2
形式 製造業者は,ピックアップの出力が振動又は衝撃入力の変位,速度又は加速度のいずれに比
例するかを明確に示す。
4.3
運動の形式 製造業者は,ピックアップが応答する運動の種類を次のように示す。
− 一軸
− 多軸
− 角
4.4
受感素子 受感素子の形式は,例えば,次のように示す。
− 抵抗線ひずみゲ−ジ(接着形又は非接着形) (strain-sensitive resistance wire, bonded or unbonded)
− 抵抗ポテンショメ−タ (resistive potentiometer)
− 可変静電容量 (variable capacitance)
− 可変インダクタンス (variable inductance)
− 差動変圧器 (differential transformer)
− 電磁素子 (electromagnetic element)
− 圧電素子 (piezoelectric element)
− 電子管 (electronic tube)
− 光電素子 (photoelectric element)
− 動電気素子 (electrokinetic element)
− ピエゾ抵抗素子 (piezoresistive element)
− 光学素子 (optical element)
− 磁気ひずみ (magnetostrictive)
4.5
取付方向 ピックアップの取付方向は,鉛直,水平及び上下逆の取付けのうちから,使用可能な方
向を選び示す。
4.6
受感方向の表示 ピックアップの受感方向を受感軸と呼び,例えば,矢印で指示する。正の向きは
ピックアップに印を付けるか,又は矢印で示し,また,正の向きの運動に対する出力の極性を示すことが
望ましい。
4.7
全体寸法 ピックアップ全体の外形寸法を図で示す。
4.8
材料 取付面と測定環境にさらされる面の材料を示す。
4.9
取付け ピックアップが次のいずれの方法で取り付けられるかを示す。
(a) ねじ,締め金,接着などによる振動面への取付け。
(b) プロ−ブ形のような振動面への押当て。
4.10 取付方法 ピックアップの取付方法,取付ねじ穴又はねじの位置及び寸法を示す。ピックアップの
取付けにねじを用いるときは締付けトルクの推奨値を示す(ISO 5348参照)。
4.11 質量及び慣性モ−メント 一軸及び多軸ピックアップについては,ピックアップの質量及び重心を
示すことが望ましい。角振動ピックアップについては,測定軸に関する慣性モ−メントを示すことが望ま
しい。固有振動数より高い振動数で作動するピックアップの場合は,サイズモ系の質量要素の質量を明示
する。
4.12 受感素子の位置 ピックアップは,サイズモ系の質量要素の重心の位置を示すことが望ましい(こ
の情報は,遠心器で加速度ピックアップを校正するとき,又は測定量の中に並進と回転運動との組合せが
含まれる場合に必要である。)。
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4.13 接続 ピックアップと補助装置との間の電気的接続が必要な場合は,ケ−ブルの形式(例えば,低
雑音),長さ,質量,シ−ルド,ケ−スとの接続及びコネクタ(ある場合)の形式を示す。
また,そのピックアップに対する悪影響を避けるため,ケ−ブル類の推奨する固定方法を示す。
4.14 電源 製造業者はピックアップが自己発電形であるか否かを示し,その他の場合は,励振又は分極
電源の性質を示す。
4.15 出力の性質 ピックアップの出力の性質を示す。示し方にはいろいろあるが,例えば,次のように
示すのがよい。
(a) 出力は,電圧,変調搬送波電圧又は周波数変調電圧である。
(b) 出力は,入力振動に対して直線的,対数的,その他の関数関係にある。
4.16 補助装置 製造業者は,必要な補助装置の形式又は関連する特性を,次の例のように示す。
なお,ピックアップが補助装置に正しく接続できるように接続図を示す。
− 電荷増幅器 これは,圧電形ピックアップの電荷出力を低インピ−ダンスの電圧に変換する。
− 入力インピ−ダンス これは,インピ−ダンス変換器のような補助装置に必要である。
− 復調器 これは,搬送波周波数を除去するために用いる。
− フィルタ これは,不必要な信号を除去するために用いる。
− バイアス電圧又はブリッジ回路 これは,運動を加えないときに出力を零にするために用いる。
− ある種の非線形装置 これは,出力の非直線性を補正するために用いる。
− 積分及び微分回路についてはそれらの周波数範囲。
5. 特性
5.1
測定範囲 加速度,速度及び(又は)変位の信頼できる指示が得られる測定範囲を示す。
測定範囲の最大値は,指定の精度の範囲内で直線性の低下を招く運動,ストップの設定を超える運動,
ピックアップ機構の追随能力を超える運動及びピックアップを損傷する運動によって制限される。
測定範囲の最小値は,ピックアップの最小分解能,摩擦による付着,熱又は電気雑音による干渉,及び
直線性の低下による精度の減少によって制限される。
5.2
感度(振動数応答) 動作範囲内の指定の振動数における入力に対する出力のデ−タを示す。
出力が入力に比例するピックアップについては,その比例係数を定格感度の形で示し,感度校正の予想
される誤差を示す。振動数と感度との関係は,振動数の関数として感度をグラフに描いてもよい。他の感
度表示の場合と同様に,表示に適用した終端インピ−ダンスを必ず明示する。
励振電圧(交流又は直流),搬送波電圧又はバイアス電圧を必要とするピックアップについては,定格感
度は推奨電圧を加えたときに得られる値か,又は1ボルト当たりの値で示し,バイアス電圧の推奨値を示
す。
入力に対する出力の関係は,速度の実効値に対する電圧若しくは電荷の実効値,又は速度のピ−ク値に
対する電圧若しくは電荷のピ−ク値のような関係で示す。速度のピ−ク値に対する電圧又は電荷の実効値
のような関係にはしない。適切な単位の幾つかを表1に示す。
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B 0909-1993 (ISO 8042 : 1988)
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表1 測定量に対する適切な単位
測定される量
出力の単位*
入力の単位*
変位
V, C
m
速度
m/s
加速度
m/s2
角変位
rad, degree
角速度
rad/s, degree/s
角加速度
rad/s2, degree/s2
注*
実際は好ましい値として10-3の整数乗を表す
接頭語を用いるのが便利である。例えば,変位
に対してはμm。
5.3
振動数範囲 明示された取付状態で,ピックアップの感度が定格感度から指定の値(百分率)以上
に変化しない動作振動数範囲を,出力信号に影響を与えるサイズモ系の共振振動数,その他の共振振動数
とともに示す。できれば,近似的なQ−値を各共振振動数について示す。
5.4
位相ずれ(振動数応答) 指定の負荷を出力端に接続した状態で,推奨振動数範囲での加えられた
正弦振動と発生した正弦出力との間の最大の位相ずれ又は位相角を示す。振動数と位相ずれとの関係は,
グラフで表してもよい。位相ずれが零の場合は,そのことを示す。
備考 位相応答(位相ずれの振動数応答)は既知の基準に対して示してもよい
5.5
減衰 明示された取付状態及び出力端子の負荷に対する減衰比を示す。減衰比は,対数減衰率又は
Q−値によって示してもよい。
5.6
横感度 ピックアップの受感軸に対する横運動に関する最大感度及びそのときの振動数を,出力に
影響を与える他の運動(例えば,回転運動)に関する感度とともに示す。
横運動に関する感度が運動の方向によって変化する場合は,最大感度,その方向及び振動数を示す。
5.7
破損に至らない最大運動の限界 受感軸及びこれに垂直な軸の両方について,破損せずに確実に作
動する最大の振動及び衝撃の加速度,速度及び(又は)変位(及び,できれば振動数を含む。)の大きさを
示す。
5.8
直線性及びヒステリシス ピックアップの作動範囲内で,ピックアップの入力に対する出力の直線
関係からの最大偏差を示す。この偏差は,読取り値の百分率,又は最大出力の百分率で表してもよい。
5.9
電気インピ−ダンス ピックアップの電気インピ−ダンスは,短絡電流に対する開回路電圧の比で
ある。できれば,動作範囲内の幾つかの振動数についてインピ−ダンスの大きさと位相角を表で示すか,
又は振動数の関数としてのそれらの値をグラフで示す。できれば,電気インピ−ダンスは,推奨される振
動数の範囲でインダクタンス,抵抗及び静電容量の等価値によって示す。
6. 環境の影響
6.1
温度及び湿度の彰響 ピックアップ感度及び減衰が,定格値から百分率で表された値以上に変化し
ない動作温度及び(又は)湿度の範囲を示す。温度による感度及び減衰の変化は,グラフで示すことがで
きる。
最低及び最高の保存温度並びに湿度を示す。ピックアップが損傷するおそれがある温度及び湿度の限界
も示す。指定の温度範囲内で,ピックアップを取り付ける附属品及びケ−ブルに与える温度の影響及び限
界を示す。
6.2
熱過渡現象 ピックアップの過渡温度変化による誤差出力は,ピックアップに加えられる温度変化
の大きさ及び時間に関係する出力によって示すことが望ましい。
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6.3
音場による障害 ピックアップの電気出力に対する外部音場の影響を示す。
6.4
磁界による障害 できれば,ピックアップの作動に対する,一定磁界及び交番磁界の影響を示す。
なお,磁界の影響は,適切な周波数について示す。
記述には,次の各事項を含める。
(a) 感度に対する一定磁界の影響。
(b) 感度に対する接近した強磁性体のかたまりの影響。
(c) ピックアップ及びその接続ケ−ブルに発生する電圧に対する交番磁界の影響(例えば,最大応答を示
す方向に1Tの指定の周波数の磁界を加えたときと出力が等価な振動。)。
6.5
接地電流 接地電流(接地ル−プ)からの妨害を避けるために絶縁された取付具が用意されるとき
は,ピックアップの特性への影響を示す。
6.6
ベ−スひずみ感度 ピックアップの電気出力に対するベ−ス(取付面)のひずみの影響を示す。
6.7
放射線暴露 ピックアップが放射線にさらされる場合は,ピックアップの性能,及び長期間の作動
に及ぼす放射線暴露の影響を示す。
JIS B 0909原案作成分科会 構成表
氏名
所属
(主査)
古 川 英 一
中央大学理工学部
(幹事)
白 石 堅 司
工業技術院計量研究所
伊佐山 健 志
通商産業省機械情報産業局産業機械課
井 下 芳 雄
エミック株式会社
石 神 民 雄
工業技術院計量研究所
黒 木 勝 也
財団法人日本規格協会技術・検査部標準課
小 村 英 智
リオン株式会社
酒 井 善 治
IMV株式会社
鷺 沢 忍
株式会社富士電機総合研究所
桜 井 登志郎
社団法人日本船舶品質管理協会
下 村 玄
株式会社明石製作所
杉 山 喬
財団法人機械電子検査検定協会
中 川 栄 一
東京商船大学
藤 井 克 哉
石川島播磨重工業株式会社技術研究所
三 輪 修 三
青山学院大学理工学部
横 田 明 則
財団法人小林理学研究所
吉 田 藤 夫
工業技術院標準部機械規格課
中 嶌 勉
社団法人日本機械学会