B 0615-2:2017 (ISO 2538-2:2014)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義··················································································································· 1
4 くさび形体の寸法指示······································································································· 1
5 くさび形体の公差指示······································································································· 3
附属書A(参考)GPSマトリックスモデル ················································································ 7
参考文献 ····························································································································· 9
B 0615-2:2017 (ISO 2538-2:2014)
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工
業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済
産業大臣が制定した日本工業規格である。これによって,JIS B 0615:2002は廃止され,その一部を分割し
て制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS B 0615の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 0615-1 第1部:角度及び勾配の基準値
JIS B 0615-2 第2部:寸法及び公差の指示方法
日本工業規格 JIS
B 0615-2:2017
(ISO 2538-2:2014)
製品の幾何特性仕様(GPS)−くさび形体−
第2部:寸法及び公差の指示方法
Geometrical product specifications (GPS)-Wedges-
Part 2: Dimensioning and tolerancing
序文
この規格は,2014年に第1版として発行されたISO 2538-2を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
この規格と他の規格及びGPSマトリックスとの詳細な関係を附属書Aに示す。
1
適用範囲
この規格は,くさび形体の寸法及び公差の指示方法について規定する。
注記1 この規格では,簡単化のために,先端を切り取られたくさび形体だけを示すが,この規格の
内容はあらゆる形のくさび形体に適用することができる。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 2538-2:2014,Geometrical product specifications (GPS)−Wedges−Part 2: Dimensioning and
tolerancing(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0615-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−くさび形体−第1部:角度及び勾配の基準値
注記 対応国際規格:ISO 2538-1:2014,Geometrical product specifications (GPS)−Wedges−Part 1:
Series of angles and slopes(IDT)
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0615-1による。
4
くさび形体の寸法指示
4.1
くさび形体の特性
くさび形体を定義するためには,表1に示す特性及び寸法の中から,くさび形体の機能として適切なも
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のを組み合わせて使用するのがよい。
表1−くさび形体の特性及び寸法
特性及び寸法
記号
指示の例
推奨の方式
副次的方式
特性
くさび比
C
1:2.835 641
−
くさび角度
β
20°
−
くさび勾配
S
1:2.747 477
36.4 %
寸法
くさび形体の大端高さ
H
くさび形体の小端高さ
h
ある断面位置でのくさび形体の高さ
Hx
大端部のくさび形体の厚さ
T
小端部のくさび形体の厚さ
t
ある断面位置でのくさび形体の厚さ
Tx
くさび形体の長さ
L
高さHx又は厚さTxとして指定された断面
位置でのくさび形体の横方向の位置
Lx
4.2
くさび形体の寸法指示
寸法をこれ以上指示する必要がない場合においても,図2のように,付加的な寸法を参考情報として括
弧付きの参考寸法で指示してもよい。
くさび形体の特性及び寸法の典型的な組合せは,図1〜図4による。
図1−くさび形体の高さを指示する場合
図2−くさび形体の一方の高さ及びくさび角度を指示する場合
図3−くさび形体の厚さを指示する場合
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図4−くさび形体の一方の厚さ及びくさび比を指示する場合
4.3
くさび形体の系列(基準値)
くさび角度は,JIS B 0615-1に規定するくさび角度の基準値の系列の中から選択するのがよい。
5
くさび形体の公差指示
くさび形体は,図5〜図10に示す方法によってサイズ及び勾配について公差指示する。
文字記号tは,公差域の幅を定義するために用いる。
注記1 図5〜図10に用いた幾何公差の指示は,JIS B 0024,JIS B 0021及びISO 14405-2に規定し
ている。
注記2 平らな表面の位置の幾何特性仕様を図示するために,位置度又は面の輪郭度を用いることが
できる。
なお,対応国際規格では,図6,図7,図9及び図10について,位置度を採用する例も記
載している。
a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
公差域
2
測得面
3
測得した平らな面に当てはめた平面。この平面は,データムAに対応する。
4
測得した平らな面に当てはめた平面。この平面は,データムAに垂直拘束されたデータム
Bに対応する。
− 公差域は,理論的に正確なくさび角度βをなし,距離tだけ離れた平行二平面によって制
限される。
− くさび角度の公差域は,くさび角度βに対応し,当てはめられたデータム平面Bからの高
さhに位置する。
− くさび形体の測得面は,この公差域の中になければならない。
図5−くさび形体に指示した幾何公差の例(データム指示がある場合)
4
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a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
共通公差域
2
測得面
− くさび形体の離れた二つの側面に対する共通公差域は,距離tだけ離れた平行二平面によ
って制限される。
− 一対の当てはめ平面(一点鎖線で図示)間は,理論的に正確なくさび角度βをなしている。
− くさび形体の測得面は,それぞれの公差域内になければならない。
図6−データムを指示しないくさび形体の二側面の図示例
a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
共通公差域
2
測得面
3
測得した平らな面に当てはめた平面。この平面は,データムAに対応する。
4
当てはめ平面(データムA)から理論的に正確な距離Lxだけ離れた位置に設定された平面。
− 共通公差域は,くさび形体のそれぞれの側面において距離tだけ離れた平行二平面によっ
て制限される。
− 一対の当てはめ平面(一点鎖線で図示)間は,理論的に正確なくさび角度βをなしている。
− 理論的に正確な高さHxは,データムAから理論的に正確な距離Lxだけ離れた位置の高さ
である。
− くさび形体の測得面は,それぞれの公差域内になければならない。
図7−一つのデータムに対する位置及び姿勢を制限したくさび形体の図示例
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a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
共通公差域
2
測得面
3
測得した平らな面に当てはめた平面。この平面は,データムAに対応する。
− 二つの公差域は,くさび形体のそれぞれの側面において距離tだけ離れた平行二平面によ
って制限される。
− 一対の当てはめ平面(一点鎖線で図示)間は,理論的に正確なくさび角度βをなしている。
− くさび形体の測得面は,それぞれの公差域内になければならない。
− 条件記号“CZ”は,二つの公差域を,共通公差域とみなして同時に制限する。
− 条件記号CZがない場合,二つの公差域は互いに異なる方向に回転することができる。例
えば,上側の面に対する公差域の姿勢を投影面に直角にし,下側の面に対する公差域の姿
勢を投影面に垂直でない状態にする,などのように公差域の方向を変えることができる。
図8−一つのデータムに対する姿勢だけで制限したくさび形体の図示例
a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
共通公差域
2
測得面
3
測得した平らな面に当てはめた平面。この平面は,データムAに対応する。
− 二つの公差域は,くさび形体のそれぞれの側面において距離tだけ離れた平行二平面によ
って制限される。
− 一対の当てはめ平面間は,理論的に正確なくさび角度βをなしており,それぞれの平面は
データムAに対して90°−β/2の角度となっている。
− データムAの位置では,理論的な正確な厚さTとなる。
− くさび形体の測得面は,それぞれの公差域内になければならない。
図9−単一のデータム面に対する方向だけで制限した(両側が傾斜面の)くさび形体の図示例
6
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a) 仕様(図示)
b) 解釈
1
共通公差域
2
測得面
3
測得した“平らな”面に当てはめた平面。この平面は,データムAに対応する。
− 二つの公差域は,くさび形体の二側面のそれぞれにおいて理論的に正確な距離tだけ離れた平行二平面によ
って制限される。
− 一対の当てはめ平面間は,理論的に正確なくさび角度βをなしており,データムAに対して90°−β/2の角
度となっている。
− くさび形体の測得面は,それぞれの公差域内になければならない。
注記1 このような公差指示は,例えば,山形案内面及びダブテールに使用することができる。
注記2 空間部をくさび形体と見なす場合もある。
図10−共通データムに対するくさび形体の二つの側面の位置関係の図示例
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附属書A
(参考)
GPSマトリックスモデル
A.1 一般
GPSのマトリックスモデルの詳細は,ISO/TR 14638による。
ISO/TR 14638に示されるISO/GPSマスタープランは,この規格がISO/GPSシステムのどの一部になっ
ているかの概要を示す。ISO 8015に示すISO/GPSの基本的な規則は,この規格に適用し,また,JIS B 0641-1
に示す標準的な決定規則は,指示がない限り,この規格に従って作成した仕様を適用する。
注記 ISO/TR 14638は廃止され,ISO 14638として制定されている。
A.2 規格及びその使用に関する情報
くさび形体に関するこの規格は,くさび形体の公差指示のための形体特性の定義について規定する。曖
昧さのない理解をするために,形体特性,測定,測定装置及び校正を規定している規格によって網羅され
るのが望ましい。
A.3 GPSマトリックスモデルの中における位置
この規格は,一般的なGPS規格であり,図A.1に示すように,一般的なGPSマトリックスの中のサイ
ズに関するチェーンのリンク番号1〜3に影響する。
注記 リンク番号1〜3は,ISO 14638:2015ではそれぞれリンク番号A〜Cに対応している。
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GPS原理
規格
GPS共通規格
GPS基本規格
リンク番号
1
2
3
4
5
6
サイズ
距離
半径
角度
データムに無関係な線の形状
データムに関係する線の形状
データムに無関係な面の形状
データムに関係する面の形状
姿勢
位置
円周振れ
全振れ
データム
粗さ曲線
うねり曲線
断面曲線
表面欠陥
エッジ
リンク番号
1 記号及び指示法
2 形体に対する要求事項
3 形体の性質
4 測定
5 測定機器
6 校正
図A.1−GPSマトリックスモデルにおける位置付け
A.4 関連国際規格
関連する国際規格又は日本工業規格は,図A.1に示す規格チェーンの全てである。
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参考文献
[1] ISO 1101:2012,Geometrical product specifications (GPS)−Geometrical tolerancing−Tolerances of form,
orientation, location and run-out
[2] ISO 1119:2011,Geometrical product specifications (GPS)−Series of conical tapers and taper angles
注記 対応日本工業規格:JIS B 0612:2017 製品の幾何特性仕様(GPS)−円すいのテーパ比及び
テーパ角度の基準値
[3] ISO 3040:2009,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensioning and tolerancing−Cones
注記 対応日本工業規格:JIS B 0028:2017 製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法及び公差の表示方
式−円すい
[4] ISO 3098-2:2000,Technical product documentation−Lettering−Part 2: Latin alphabet, numerals and marks
注記 対応日本工業規格:JIS Z 8313-2:1998 製図−文字−第2部:ギリシャ文字
[5] ISO 8015,Geometrical product specifications (GPS)−Fundamentals−Concepts, principles and rules
注記 対応日本工業規格:JIS B 0024 製図−公差表示方式の基本原則
[6] JIS B 0641-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−製品及び測定装置の測定による検査−第1部:仕様に対
する合否判定基準
注記 対応国際規格:ISO 14253-1:2013,Geometrical product specifications (GPS)−Inspection by
measurement of workpieces and measuring equipment−Part 1: Decision rules for proving conformity
or nonconformity with specifications
[7] ISO 14405-2:2011,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional tolerancing−Part 2: Dimensions
other than linear sizes
[8] ISO/TR 14638,Geometrical product specification (GPS)−Masterplan
[9] ISO 14638:2015,Geometrical product specifications (GPS)−Matrix model
[10] JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示
方式
[11] JIS B 0024 製図−公差表示方式の基本原則