B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
(1)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 輪郭曲線(断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線)パラメータ ······················································· 8
4.1 山及び谷の高さパラメータ ······························································································ 8
4.2 高さ方向のパラメータ ··································································································· 11
4.3 横方向のパラメータ ······································································································ 12
4.4 複合パラメータ ············································································································ 13
4.5 輪郭曲線の負荷曲線及び確率密度関数並びにそれらに関連するパラメータ ······························· 13
附属書A(参考)等価記号 ···································································································· 17
附属書B(参考)表面の評価の流れ ························································································ 18
附属書C(参考)JIS B 0601:2013とJIS B 0601:1994及びJIS B 0660:1998とのパラメータの記号の相違
········································································································································ 19
附属書D(参考)GPSマトリックス ························································································ 21
附属書E(参考)参考文献 ···································································································· 22
附属書JA(参考)十点平均粗さ ····························································································· 23
附属書JB(参考)2RCフィルタを適用した場合の中心線平均粗さ ················································ 25
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本
規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS B 0601:2001は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
B 0601:2013
(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
製品の幾何特性仕様(GPS)−
表面性状:輪郭曲線方式−
用語,定義及び表面性状パラメータ
Geometrical Product Specifications (GPS)-Surface texture:
Profile method-Terms, definitions and surface texture parameters
序文
この規格は,1997年に第1版として発行されたISO 4287,Amendment 1(2009),Technical Corrigendum
1(1998)及びTechnical Corrigendum 2(2005)を基に,技術的内容を変更することなく作成した日本工業
規格である。ただし,追補(Amendment)及び技術的正誤票(Technical Corrigendum)については,編集し,
一体とした。この規格では,パラメータの英数字をコンピュータで表現しやすいように等価記号を用いる
ことを許容している。その詳細は,附属書Aを参照する。また,表面の評価の流れを附属書Bに図説した。
この規格で用いた用語及びパラメータの記号は,1994年に発行されたJIS B 0601及び1998年に発行され
たJIS B 0660のものとは異なっている。その詳細は,附属書Cを参照する。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項,附属書JA及び附属書JBは,対応国際規格にはな
い事項である。
この規格は,製品の幾何特性仕様(GPS)の一つで,GPS基本規格に属し(ISO/TR 14638:1995参照),
表面性状規格チェーンのリンク番号2に関係する。この規格と他のGPS規格との関連についての詳細は,
附属書Dを参照する。
この規格では,我が国で用いてきた十点平均粗さを附属書JA,JIS B 0601:1994以前の規格による算術
平均粗さは,附属書JBに参考として記述した。
1
適用範囲
この規格は,輪郭曲線方式による表面性状(粗さ曲線,うねり曲線及び断面曲線)を表すための用語,
定義及び表面性状パラメータについて規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 4287:1997,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile method−Terms,
definitions and surface texture parameters,Amendment:1:2009,Technical Corrigendum 1:1998
及びTechnical Corrigendum 2:2005(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
2
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次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0651 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性
注記 対応国際規格:ISO 3274:1996,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Nominal characteristics of contact (stylus) instruments(IDT)
3
用語及び定義
3.1 一般用語
3.1.1
輪郭曲線フィルタ(profile filter)
輪郭曲線の波長成分を長波長成分と短波長成分とに分離するフィルタ。
注記 粗さ曲線,うねり曲線及び断面曲線を測定するために,測定機では,3.1.1.1〜3.1.1.3に示す3
種類のフィルタを用いる(図1参照)。これらは全て,JIS B 0632に規定された振幅伝達特性を
もつが,カットオフ値が異なる。
3.1.1.1
λs輪郭曲線フィルタ(λs profile filter)
粗さ成分とそれより短い波長成分との境界を定義するフィルタ(図1参照)。
3.1.1.2
λc輪郭曲線フィルタ(λc profile filter)
粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ(図1参照)。
3.1.1.3
λf輪郭曲線フィルタ(λf profile filter)
うねり成分とそれより長い波長成分との境界を定義するフィルタ(図1参照)。
注記 カットオフ値λfの定義域は,ISO 4287:1997では定義されておらず実在しない。JIS B 0610:2001
においてだけカットオフ値λfが定義されているが,このカットオフ値λfの定義域はISO
4287:1997とは整合していない。
3.1.2
座標系(coordinate system)
表面性状パラメータを定義する座標系。
注記 平均線に一致する触針の測定方向をX軸,X軸に直角で実表面上の軸をY軸及び外側方向(物
体側から周囲の空間側への方向)をZ軸とする右手直交座標系が一般に用いられる。この規格
では,右手直交座標系を用いる。
3.1.3
実表面(real surface)
周囲の空間から分離する物体の境界表面。
3.1.4
実表面の断面曲線(surface profile)
実表面を指定された平面によって切断したとき,その切り口に現れる曲線(図2参照)。
注記 切断する平面は,実表面に垂直で任意の方向とするのが一般的である。
3
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3.1.5
断面曲線(primary profile)
測定断面曲線にカットオフ値λsの低域フィルタを適用して得られる曲線(JIS B 0651)。
注記1 断面曲線は,断面曲線パラメータの評価の基礎となるものである。
注記2 測定断面曲線は,縦軸及び横軸からなる座標系において,基準線を基にして得られたディジ
タル形式の測定曲線である(JIS B 0651参照)。
3.1.6
粗さ曲線(roughness profile)
カットオフ値λcの高域フィルタによって,断面曲線から長波長成分を遮断して得た輪郭曲線。この輪郭
曲線は,意図的に修正された曲線である(図1参照)。
注記1 粗さ曲線用の帯域通過フィルタは,カットオフ値λs及びカットオフ値λcの輪郭曲線フィルタ
によって定義される[JIS B 0632の2.6(輪郭曲線の通過帯域)及び3.2(振幅伝達特性)参
照]。
注記2 粗さ曲線は,粗さパラメータの評価の基礎となるものである。
注記3 λs及びλcの標準的な関係は,JIS B 0651の4.4(粗さ曲線用カットオフ値λc,触針先端半径
rtip及びカットオフ比λc/λsの関係)による。
1 粗さ曲線
2 うねり曲線
図1−粗さ曲線及びうねり曲線の伝達特性
4
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図2−実表面の断面曲線
3.1.7
うねり曲線(waviness profile)
断面曲線にカットオフ値λf及びλcの輪郭曲線フィルタを順次適用することによって得られる輪郭曲線。
λf輪郭曲線フィルタによって長波長成分を遮断し,λc輪郭曲線フィルタによって短波長成分を遮断する。
この輪郭曲線は,意図的に修正された曲線である。
注記1 うねり曲線を分離するためのλf輪郭曲線フィルタを適用する前に,測定断面曲線から呼び形
状を最小二乗法によって除去しておかなければならない。呼び形状が円の場合には,半径は,
最小二乗法における最適化条件に含め,呼び値に固定しないことが望ましい。うねり曲線を
分離する手順は,理想的なオペレータによる。
オペレータとは,不確かさの概念を導入するために,形体を求めるのに必要な測定原理,
測定方法,測定条件,データ処理など一連のものを順序に従って並べてまとめたものである。
理想的なオペレータとは,測定機器及び量子化されたデータなどに誤差がなく,離散化され
たデータの数も無限に大きいなど,理論的に正確なオペレータをいう。
“半径は,最小二乗法における最適化条件に含め”の意味は,最小二乗法によって,デー
タに最も当てはまる円の半径を求めることである。
注記2 うねり曲線用の帯域通過フィルタは,カットオフ値λc及びλfの輪郭曲線フィルタによって定
義される(JIS B 0632の2.6及び3.2参照)。
注記3 うねり曲線は,うねりパラメータの評価の基礎となるものである。
3.1.8
平均線に関する用語
3.1.8.1
粗さ曲線を求めるための平均線(mean line for the roughness profile)
高域(ハイパス)用λc輪郭曲線フィルタによって遮断される長波長成分を表す曲線(JIS B 0632の3.2
5
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参照)。
3.1.8.2
うねり曲線を求めるための平均線(mean line for the waviness profile)
低域(ローパス)用λf輪郭曲線フィルタによって遮断される長波長成分を表す曲線(JIS B 0632の3.2
参照)。
3.1.8.3
断面曲線を求めるための平均線(mean line for the primary profile)
最小二乗法によって断面曲線に当てはめた呼び形状を表す直線。
3.1.9
基準長さ,lp,lr,lw(sampling length)
輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線のX軸方向長さ。
注記 粗さ曲線用の基準長さlr及びうねり曲線用の基準長さlwは,それぞれ輪郭曲線フィルタのカ
ットオフ値λc及びλfに等しい。断面曲線用の基準長さlpは,評価長さlnに等しい。
3.1.10
評価長さ,ln(evaluation length)
輪郭曲線のX軸方向長さ。
注記1 評価長さは,一つ以上の基準長さを含む。
注記2 評価長さの標準値については,JIS B 0633の4.4(評価長さの標準値)参照。JIS B 0633は,
うねりパラメータのための標準的な評価長さは規定していない。
3.2 パラメータに関する用語
3.2.1
断面曲線パラメータ(P-parameter)
断面曲線から求められたパラメータ。
3.2.2
粗さパラメータ(R-parameter)
粗さ曲線から求められたパラメータ。
3.2.3
うねりパラメータ(W-parameter)
うねり曲線から求められたパラメータ。
注記 箇条4で定義されるパラメータは,該当する輪郭曲線から求められる。パラメータの記号の最
初の大文字は,輪郭曲線の種類を表す。例えば,Raは粗さ曲線から求められ,Ptは断面曲線か
ら求められる。
3.2.4
山(profile peak)
輪郭曲線をX軸(平均線)によって切断したときの隣り合う二つの交点に挟まれた曲線部分のうち,平
均線より上側(物体から空間側への方向)の部分。
3.2.5
谷(profile valley)
輪郭曲線をX軸(平均線)によって切断したときの隣り合う二つの交点に挟まれた曲線部分のうち,平
均線より下側(周囲の空間から物体側に向かう方向)の部分。
6
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3.2.6
高さ及び/又は横方向長さの最小識別値(height and/or spacing discrimination)
輪郭曲線の山及び谷と判断するための最小高さ及び最小長さ。
注記 一般に,山及び谷と判断する高さは,Pz,Rz,Wzのパーセント値によって規制し,横方向の最
小長さは,基準長さのパーセント値によって規制する。
3.2.7
輪郭曲線要素(profile element)
山とそれに隣り合う谷からなる曲線部分(図3参照)。
注記 基準長さの輪郭曲線の始点又は終点において,正又は負の部分(平均線より上側又は下側にあ
る部分)は,山又は谷とみなす。連続する幾つかの基準長さにわたって輪郭曲線要素の数を求
める場合には,基準長さの始点又は終点における山及び谷は,各基準長さの始点で1回だけ考
慮する。
3.2.8
縦座標値,Z (x)(ordinate value)
任意の位置xにおける輪郭曲線の高さ。
注記 高さの符号は,X軸(平均線)の下側を負とし,上側を正とする。
3.2.9
局部傾斜,
x
x
Z
d
d
)
(
(local slope)
xiの位置における輪郭曲線の傾斜(図4参照)。
注記1 パラメータP∆q,R∆q及びW∆qによって表される局部傾斜の値は,データ間隔∆Xに大きく
依存する。
注記2 局部傾斜を求める式は,次による。
{
})
(
)
(
9
)
(
45
)
(
45
)
(
9
)
(
60
1
)
(
d
)
(
d
3
2
1
1
2
3
−
−
−
+
+
+
−
+
−
+
−
∆
=
i
i
i
i
i
i
i
x
Z
x
Z
x
Z
x
Z
x
Z
x
Z
X
x
x
Z
ここに,
xi: i番目の点のX方向の位置
Z (xi): i番目の点の高さ
∆X: 隣接するデータ点の間隔
この式は,JIS B 0651に規定されているデータのサンプリング間隔に対して適用される。
注記3 局部傾斜を求める式は,数値微分の7点公式によっている。
3.2.10
輪郭曲線の山高さ,Zp(profile peak height)
X軸(平均線)から山頂までの高さ(図3参照)。
3.2.11
輪郭曲線の谷深さ,Zv(profile valley depth)
X軸(平均線)から谷底までの深さ(図3参照)。
3.2.12
輪郭曲線要素の高さ,Zt(profile element height)
一つの輪郭曲線要素における山高さと谷深さとの和(図3参照)。
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3.2.13
輪郭曲線要素の長さ,Xs(profile element width)
輪郭曲線要素によって切り取られたX軸の線分の長さ(図3参照)。
3.2.14
レベルcにおける輪郭曲線の負荷長さ,Ml (c)(material length of profile at the level c)
X軸(平均線)に平行なレベル(以下,切断レベルという。)cの直線によって切断された輪郭曲線要素
の実体側の長さの和(図5参照)。
図3−輪郭曲線要素
図4−局部傾斜
8
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図5−輪郭曲線の実体側の長さ
4
輪郭曲線(断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線)パラメータ
4.1
山及び谷の高さパラメータ
4.1.1
輪郭曲線の最大山高さ(maximum profile peak height)
基準長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値(図6参照)。
断面曲線の最大山高さPp,粗さ曲線の最大山高さRp及びうねり曲線の最大山高さWpがある。
4.1.2
輪郭曲線の最大谷深さ(maximum profile valley depth)
基準長さにおける輪郭曲線の谷深さZvの最大値(図7参照)。
断面曲線の最大谷深さPv,粗さ曲線の最大谷深さRv及びうねり曲線の最大谷深さWvがある。
4.1.3
輪郭曲線の最大高さ(maximum height of profile)
基準長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和(図8参照)。
断面曲線の最大高さPz,最大高さ粗さRz及び最大高さうねりWzがある。
注記 ISO 4287:1984では,記号Rzは“十点平均粗さ”を指示するために使われていた。我が国を含
む幾つかの国では,JIS B 0601:1994のRzを測定する表面粗さ測定機が使用されている。JIS B
0601:2013とJIS B 0601:1994による測定値の差が,無視できるほど小さいとは限らないので,
既に発行されている文書情報及び図面を用いる場合には,注意しなければならない(附属書JA
参照)。
9
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図6−輪郭曲線の最大山高さ(粗さ曲線の例)
図7−輪郭曲線の最大谷深さ(粗さ曲線の例)
10
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図8−輪郭曲線の最大高さ(粗さ曲線の例)
4.1.4
輪郭曲線要素の平均高さ(mean height of profile elements)
基準長さにおける輪郭曲線要素の高さZtの平均値(図9参照)。
断面曲線要素の平均高さPc,粗さ曲線要素の平均高さRc及びうねり曲線要素の平均高さWcがある。
∑
=
=
m
i
i
Zt
m
Wc
Rc
Pc
1
1
,
,
注記1 パラメータPc,Rc,Wcでは,山及び谷と判断する最小高さ及び最小長さの識別が必要で
ある。指示がない限り,標準的な最小高さの識別は,それぞれPz,Rz,Wzの10 %とし,
最小長さの識別は,基準長さの1 %とする。この二つの条件は,満たされなければならな
い。
注記2 mは,基準長さ中の輪郭曲線要素の数を示す。
4.1.5
輪郭曲線の最大断面高さ(total height of profile)
評価長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和。
断面曲線の最大断面高さPt,粗さ曲線の最大断面高さRt及びうねり曲線の最大断面高さWtがある。
注記1 Pt,Rt,Wtは,基準長さではなく評価長さによって定義されるので,全ての輪郭曲線に対し
て次の関係が成り立つ。
Pt ≧ Pz,Rt ≧ Rz,Wt ≧ Wz
注記2 PzがPtに等しい場合には,Ptの使用を推奨する。
11
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図9−輪郭曲線要素の高さ(粗さ曲線の例)
4.2
高さ方向のパラメータ
4.2.1
輪郭曲線の算術平均高さ(arithmetical mean deviation of the assessed profile)
基準長さにおけるZ (x) の絶対値の平均。
断面曲線の算術平均高さPa,算術平均粗さRa及び算術平均うねりWaがある。
∫
=
l
x
x
Z
l
Wa
Ra
Pa
0
d
)
(
1
,
,
ここに, lは,lp,lr又はlwである。
4.2.2
輪郭曲線の二乗平均平方根高さ(root mean square deviation of the assessed profile)
基準長さにおけるZ (x) の二乗平均平方根。
断面曲線の二乗平均平方根高さPq,二乗平均平方根粗さRq及び二乗平均平方根うねりWqがある。
∫
=
l
x
x
Z
l
Wq
Rq
Pq
0
2
d)
(
1
,
,
ここに, lは,lp,lr又はlwである。
4.2.3
輪郭曲線のスキューネス(skewness of the assessed profile)
それぞれ,Pq,Rq又はWqの三乗によって無次元化した基準長さにおけるZ (x) の三乗平均。
断面曲線のスキューネスPsk,粗さ曲線のスキューネスRsk及びうねり曲線のスキューネスWskがある。
=
∫lr
x
x
Z
lr
Rq
Rsk
0
3
3
d)
(
1
1
注記1 上記の式は,Rskの定義である。Psk及びWskも同様に定義される。
注記2 Psk,Rsk及びWskは,輪郭曲線の確率密度関数(図13参照)の非対象性の度合を示す数値
12
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[統計用語では,わい(歪)度]である。
注記3 これらのパラメータは,突出した山又は谷の影響を強く受ける。
4.2.4
輪郭曲線のクルトシス(kurtosis of the assessed profile)
それぞれPq,Rq,Wqの四乗によって無次元化した基準長さにおけるZ (x) の四乗平均。
断面曲線のクルトシスPku,粗さ曲線のクルトシスRku及びうねり曲線のクルトシスWkuがある。
=
∫lr
x
x
Z
lr
Rq
Rku
0
4
4
d)
(
1
1
注記1 上記の式はRkuの定義である。Pku及びWkuも同様に定義される。
注記2 Pku,Rku及びWkuは,輪郭曲線の確率密度関数(図13参照)のとがり(鋭さ)の度合を示
す数値[統計用語では,せん(尖)度]である。
注記3 これらのパラメータは,突出した山又は谷の影響を強く受ける。
4.3
横方向のパラメータ
4.3.1
輪郭曲線要素の平均長さ(mean width of the profile elements)
基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXsの平均(図10参照)。
断面曲線要素の平均長さPSm,粗さ曲線要素の平均長さRSm及びうねり曲線要素の平均長さWSmがあ
る。
∑
=
=
m
i
i
Xs
m
WSm
RSm
PSm
1
1
,
,
注記1 パラメータPSm,RSm及びWSmでは,山及び谷と判断する最小高さ及び最小長さの識別が
必要である。識別可能な最小高さの標準値は,Pz,Rz又はWzの10 %とする。識別可能な最
小長さの標準値は,基準長さの1 %とする。この二つの条件を両方満足するように,山及び
谷を決定した上で,輪郭曲線要素の平均長さを求める。
注記2 mは,基準長さ中の輪郭曲線要素の数を示す。
4.3.2
輪郭曲線要素に基づくピークカウント数(peak count number)
輪郭曲線の長さLに含まれる輪郭曲線要素の平均長さの数
断面曲線要素に基づくピークカウント数PPc,粗さ曲線要素に基づくピークカウント数RPc及びうねり
曲線要素に基づくピークカウント数WPcがある。
RSm
L
RPc=
注記1 上記の式は,RPcの定義である。PPc及びWPcも同様に定義される。
注記2 特別に指示がない限り,長さLは10 mmとする。
13
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図10−輪郭曲線要素の長さ
4.4
複合パラメータ
4.4.1
輪郭曲線の二乗平均平方根傾斜(root mean square slope of the assessed profile)
基準長さにおける局部傾斜
x
x
Z
d
)
(
d
の二乗平均平方根。
断面曲線の二乗平均平方根傾斜P∆q,粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜R∆q及びうねり曲線の二乗平均平
方根傾斜W∆qがある。
4.5
輪郭曲線の負荷曲線及び確率密度関数並びにそれらに関連するパラメータ
注記 負荷曲線及び確率密度関数とそれに関するパラメータは,安定した結果を得るために,基準長
さではなく評価長さによって定義する。
4.5.1
輪郭曲線の負荷長さ率(material ratio of the profile)
評価長さに対する切断レベルcにおける輪郭曲線要素の負荷長さMl (c) の比。
断面曲線の負荷長さ率Pmr (c),粗さ曲線の負荷長さ率Rmr (c) 及びうねり曲線の負荷長さ率Wmr (c) が
ある。
ln
c
Ml
c
Wmr
c
Rmr
c
Pmr
)
(
)
(
),
(
),
(
=
4.5.2
輪郭曲線の負荷曲線(アボットの負荷曲線)[material ratio curve of the profile (Abott Firestone curve)]
切断レベルcの関数として表された輪郭曲線の負荷長さ率の曲線(図11参照)。
断面曲線の負荷曲線,粗さ曲線の負荷曲線及びうねり曲線の負荷曲線がある。
14
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 この曲線は,評価長さにおける高さZ (x) の確率と解釈することができる。
4.5.3
輪郭曲線の切断レベル差(profile section height difference)
与えられた二つの負荷長さ率に一致する高さ方向の切断レベルの差。
断面曲線の切断レベル差Pδc,粗さ曲線の切断レベル差Rδc及びうねり曲線の切断レベル差Wδcがある。
2
1
);
2
(
)1
(
Rmr
Rmr
Rmr
c
Rmr
c
c
R
<
−
=
δ
注記1 上記の式はRδcの定義である。Pδc及びWδcも同様に定義される。
注記2 高さの方向を正とすれば,切断レベルc基準(原点)を任意に設定しても,図11及び図12
の関係が得られる。ただし,Rmr (c)=100 %でのcは0とは限らないので,原点の位置を,
Rmr (c) のパーセント表示などで明記することが望ましい。図5の例は,最高の山頂の位置
を基準としている。
注記3 対応国際規格では,C (Rmr1)−C (Rmr2) となっているが,4.5.1に整合させて,Cを小文字で
表した。
図11−輪郭曲線の負荷曲線(粗さ曲線の例)
15
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図12−輪郭曲線における異なった切断レベル(粗さ曲線の例)
4.5.4
相対負荷長さ率(relative material ratio)
基準とする切断レベルc0と輪郭曲線の切断レベル差Rδcとによって決まる負荷長さ率(図12参照)。
断面曲線の相対負荷長さ率Pmr,粗さ曲線の相対負荷長さ率Rmr及びうねり曲線の相対負荷長さ率Wmr
がある。
)
(
),
(
),
(
,
,
1
1
1
c
Wmr
c
Rmr
c
Pmr
Wmr
Rmr
Pmr
=
ここに, c1=c0−Rδc(又はPδc,又はWδc)
c0=c (Rmr0)[又はc (Pmr0),若しくはc (Wmr0)]
4.5.5
輪郭曲線の確率密度関数(profile height amplitude curve)
評価長さにわたって得られる高さZ (x) の確率密度関数(図13参照)。
断面曲線の確率密度関数,粗さ曲線の確率密度関数及びうねり曲線の確率密度関数がある。
注記 輪郭曲線の高さ方向パラメータについては,4.2を参照する。
16
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図13−輪郭曲線の確率密度関数
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B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(参考)
等価記号
コンピュータにおいてパラメータを表現するために,次の等価記号を使用することが望ましい。
注記 対応国際規格では,この附属書を規定としているが,内容からみて参考とした。
パラメータ
等価記号
P∆q
Pdq
R∆q
Rdq
W∆q
Wdq
Pδc
Pdc
Rδc
Rdc
Wδc
Wdc
λs
Ls
λc
Lc
λf
Lf
18
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
表面の評価の流れ
図B.1−表面の評価の流れ図
19
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
JIS B 0601:2013とJIS B 0601:1994及び
JIS B 0660:1998とのパラメータの記号の相違
表C.1−基本用語
JIS B 0601:2013
の箇条
JIS B 0601:2013の基本用語
JIS B 0601:1994及び
JIS B 0660:1998の記号
JIS B 0601:2013の記号
3.1.9
基準長さ
l
lp, lr, lw a)
3.1.10
評価長さ
ln
ln
3.2.8
縦座標値
y
Z (x)
3.2.9
局部傾斜
−
x
x
Z
d
)
(
d
3.2.10
輪郭曲線の山高さ
yp
Zp
3.2.11
輪郭曲線の谷深さ
yv
Zv
3.2.12
輪郭曲線要素の高さ
−
Zt
3.2.13
輪郭曲線要素の長さ
−
Xs
3.2.14
レベルcにおける輪郭曲線
の負荷長さ
ηp
Ml (c)
注a) 異なった三つの輪郭曲線の基準長さは,次の名称とする。
lp(断面曲線),lr(粗さ曲線),lw(うねり曲線)
20
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表C.2−表面性状パラメータ(粗さパラメータの例)
JIS B 0601:2013
の箇条
JIS B 0601:2013
のパラメータ
JIS B 0601:1994
及び
JIS B 0660:1998
の記号
JIS B 0601:2013
の記号
輪郭曲線の長さ
評価長さ
ln
基準長さa)
4.1.1
粗さ曲線の最大山高さ
Rp
Rp b)
−
○
4.1.2
粗さ曲線の最大谷深さ
Rm
Rv b)
−
○
4.1.3
最大高さ粗さ
Ry
Rz b)
−
○
4.1.4
粗さ曲線要素の平均高さ
Rc
Rc b)
−
○
4.1.5
粗さ曲線の最大断面高さ
−
Rt b)
○
−
4.2.1
算術平均粗さ
Ra
Ra b)
−
○
4.2.2
二乗平均平方根粗さ
Rq
Rq b)
−
○
4.2.3
粗さ曲線のスキューネス
Sk
Rsk b)
−
○
4.2.4
粗さ曲線のクルトシス
−
Rku b)
−
○
4.3.1
粗さ曲線要素の平均長さ
Sm
RSm b)
−
○
4.3.2
粗さ曲線要素に基づくピー
クカウント数
−
RPc b)
−d)
−d)
4.4.1
粗さ曲線の二乗平均平方根
傾斜
∆q
R∆q b)
−
○
4.5.1
粗さ曲線の負荷長さ率
tp
Rmr(c) b)
○
−
4.5.3
粗さ曲線の切断レベル差
−
Rδc b)
○
−
4.5.4
粗さ曲線の相対負荷長さ率
−
Rmr b)
○
−
附属書JA
十点平均粗さ
(ISO 4287:1997から削除)
Rz
RzJIS c)
−
○
注記 対応する国際規格では,1984年版の相対負荷長さ率をtpとしているが,tpは負荷長さ率である。ここでは,
誤りを訂正した。
注a) 粗さ,うねり及び断面曲線パラメータに対する基準長さは,それぞれlr,lw及びlpである。lpはlnに等しい。
b) パラメータは,断面曲線,うねり曲線及び粗さ曲線の3種類の輪郭曲線に対して定義される。この表には,
粗さパラメータだけを示してある。一例として,3種類のパラメータは,Pa(断面曲線パラメータ),Wa(う
ねりパラメータ)及びRa(粗さパラメータ)のように表示する。
c) 十点平均粗さは,JISだけの粗さパラメータであり,断面曲線及びうねり曲線には適用しない。
d) 長さはLであり、特別に指示がない限りLは10 mmとする。
21
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
GPSマトリックス
GPSマトリックスの詳細は,ISO/TR 14638:1995を参照する。
D.1 規格及びその利用についての情報
この規格は,うねり曲線,断面曲線及びそれらのパラメータを矛盾なく定義するなど,JIS B 0632(ISO
11562)及びJIS B 0651(ISO 3274)と並行して大幅な書き直しと構成の変更を行った。
D.2 GPSマトリックスにおける位置付け
この規格は,図D.1に示す粗さ曲線,うねり曲線及び断面曲線に関する規格チェーンのリンク番号2に
関わる基本規格である。
D.3 関連国際規格
関連国際規格は,図D.1に示す規格チェーンに含まれる規格である。
GPS
原理
規格
GPS共通規格
GPS基本規格マトリックス
リンク番号
1
2
3
4
5
6
サイズ
距離
半径
角度
データムに無関係な線の形状
データムに関係する線の形状
データムに無関係な面の形状
データムに関係する面の形状
姿勢
位置
円周振れ
全振れ
データム
粗さ曲線
■
うねり曲線
■
断面曲線
■
表面欠陥
エッジ
図D.1−GPSマトリックスにおける位置付け
22
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
参考文献
1) ISO/TR 14638:1995,Geometrical product specification (GPS)−Masterplan
2) VIM-International vocabulary and general terms in metrology, BIPM, IEC, IFCC, ISO, IUPAC, IUPAP, OIML,
2nd edition, 1993
3) JIS B 0610 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−転がり円うねりの定義及び表示
4) JIS B 0632 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−位相補償フィルタの特性
注記 対応国際規格:ISO 11562:1996,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Metrological characteristics of phase correct filters(IDT)
5) JIS B 0633 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−表面性状評価の方式及び手順
注記 対応国際規格:ISO 4288:1996,Geometrical Product Specifications (GPS)−Surface texture: Profile
method−Rules and procedures for the assessment of surface texture(IDT)
23
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JA
(参考)
十点平均粗さ
十点平均粗さは,対応国際規格(ISO 4287:1997)から削除された粗さパラメータであるが,我が国にお
いては広く普及しているパラメータであるため,附属書に参考として記載する。
JA.1 十点平均粗さ(ten point height of roughness profile)RzJIS
カットオフ値λc及びλsの位相補償帯域通過フィルタを適用して得た基準長さの粗さ曲線において,最高
の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均との
和。
注記 この規格による最大高さ粗さRzが,過去の技術資料などで用いられてきた十点平均粗さRzと
紛らわしい場合には,注記などで違いを記述することが望ましい。
JA.2 旧規格による十点平均粗さの定義
旧規格JIS B 0601:1982,JIS B 0601:1994及びJIS B 0660:1998による十点平均粗さも,我が国において
は広く普及し,過去の技術資料に蓄積されている。旧規格による十点平均粗さの定義は,次のとおりであ
る。
注記 JIS B 0601:1994及びJIS B 0660:1998における十点平均粗さは同一である。
a) 旧規格JIS B 0601:1994の場合 カットオフ値λcの位相補償高域フィルタを適用して(カットオフ値
λsの位相補償低域フィルタは適用しない。)得た基準長さの輪郭曲線(旧規格JIS B 0601:1994の粗さ
曲線)において,最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番
目までの谷深さの平均との和。
旧規格JIS B 0601:1994による十点平均粗さと上述したRzJISとの差が心配され,両者を区別する必
要がある場合には,旧規格JIS B 0601:1994による十点平均粗さは,RzJIS94のパラメータ記号を用いる。
記号の内容を注記する場合には,表JA.1のような記述を参考とするとよい。
注記 旧規格JIS B 0601:1994及びJIS B 0660:1998に定義された粗さ曲線は,現在は存在しない。
b) 旧規格JIS B 0601:1982の場合 この規格における十点平均粗さは,アナログ式表面粗さ測定器によっ
て求めていたものであり,基準長さの断面曲線(フィルタなどの処理を一切しない測定したままのデ
ータ)において,最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番
目までの谷深さの平均との和として定義。旧規格JIS B 0601:1982による十点平均粗さと上述したRzJIS
とでは,パラメータの値に差が生じることがあるので,この両者を区別する必要がある場合には,旧
規格JIS B 0601:1982による十点平均粗さは,RzJIS82のパラメータ記号を用いる。記号の内容を注記す
る場合には,表JA.1のような記述を参考にするとよい。
注記 旧規格JIS B 0601:1982に定義された断面曲線は,現在存在しないが,測定断面曲線(JIS B
0651:1996参照)が同じ内容の曲線である。ただし,測定断面曲線は,ディジタルデータであ
る点が異なる。厳密に違いを表現しなければならない場合には,アナログデータによってい
るか,ディジタルデータによっているかの注記をすることが望ましい。
24
B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表JA.1−注記する場合の旧規格によるパラメータの記号
記号
用いた輪郭曲線(注記の例)
RzJIS82
測定したままの輪郭曲線による。
RzJIS94
位相補償高域フィルタ適用の輪郭曲線による。
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B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JB
(参考)
2RCフィルタを適用した場合の中心線平均粗さ
2RCフィルタを適用して求める中心線平均粗さRa75の用語,定義及び表示は,附属書に参考として残す。
JB.1 用語及び定義
この附属書で用いる主な用語は,次による。
JB.1.1
カットオフ値,λc75(cut-off wavelength)
高域(ハイパス)2RCフィルタの振幅伝達率が75 %になる波長。
注記 添字の75は,2RCフィルタのカットオフ値での減衰率75 %を表し,ディジタルフィルタと異
なっていることを示している。
JB.1.2
平均線
測定曲線に減衰率12 dB/octでカットオフ値λc75の高域(ハイパス)フィルタを適用して得られる曲線に,
最小二乗法によって当てはめた対象面の幾何学形状である直線又は曲線。
JB.1.3
粗さ曲線(75 %)
測定曲線に減衰率12 dB/octでカットオフ値λc75の高域(ハイパス)フィルタを適用して得られる曲線で,
平均線からの偏差によって表したもの。
JB.2 中心線平均粗さの表示
JB.2.1 中心線平均粗さRa75
粗さ曲線(75 %)を用いて得られる次の算術平均高さで,μmによって表したもの。
∫ln
x
x
Z
ln
Ra75
0
d
)
(
1
=
ここに,
Z (x): 粗さ曲線(75 %)
ln: 評価長さ
JB.2.2 カットオフ値λc75
λc75は,次の6種類とする。
0.08,0.25,0.8,2.5,8,25
単位mm
JB.2.3 カットオフ値λc75の標準値
λc75の標準値は,表JB.1による。
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B 0601:2013 (ISO 4287:1997,Amd.1:2009)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表JB.1−カットオフ値λc75の標準値
Ra75範囲
μm
カットオフ値λc75
mm
を超え
以下
−
12.5
0.8
12.5
100
2.5
JB.2.4 評価長さ
評価長さlnは,λc75の3倍以上とする。
JB.2.5 中心平均粗さRa75の表示
Ra75の表示は,次による。
中心線平均粗さ(75 %) μm,カットオフ値(75 %) mm,評価長さ mm
又は,
μm Ra75,λc75 mm,ln mm
注記1 表JB.1を満たしている場合には,λc75の表示は省略してもよい。
注記2 評価長さがλc75の3倍以上の場合には,評価長さの表示は省略してもよい。
JB.2.6 Ra75の標準数列
Ra75によって表面粗さを表示する場合には,一般に表JB.2の標準数列を用いる。
表JB.2−Ra75の標準数列
単位 μm
0.013
0.4
12.5
0.025
0.8
25
0.05
1.6
50
0.1
3.2
100
0.2
6.3
JB.2.7 Ra75の区間表示
Ra75を区間で表示する必要がある場合には,区間の上限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さ
い方)の数値を表JB.2から選んで併記する。
例1 上限及び下限のλc75の標準値が等しいとき
表示例(6.3〜1.6)μmRa75
この場合,λc75は0.8 mmを用いる。
例2 上限及び下限のλc75の標準値が異なるとき
表示例(25〜6.3)μmRa75
この場合,λc75を2.5 mmとして測定したRa75が25 μm以下であり,λc75を0.8 mmとして測
定したRa75が6.3 μm以上であることを意味する。
注記1 上限及び下限に対応するλc75を同一にする必要がある場合,又は表JB.1の標準値以外のλc75
を用いる場合には,λc75を併記する。
表示例(25〜6.3)μmRa75,λc75,2.5 mm
注記2 ここでいう上限及び下限のRa75とは,指定された表面からランダムに抜き取った数箇所の平
均値であって,個々のRa75の最大値ではない。