B 0420-2:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 寸法及び関連する公差指示の原理及び規則 ············································································ 3
5 図面に使用する寸法の単位 ································································································· 4
6 長さ又は角度に関わるサイズに対する公差の指示 ··································································· 4
7 曖昧な+−公差及び曖昧でない幾何公差の図示例 ··································································· 4
7.1 一般 ···························································································································· 4
7.2 外殻形体間の直線距離 ···································································································· 5
7.3 外殻形体と誘導形体との間の直線距離················································································ 7
7.4 誘導形体間の直線距離 ···································································································· 7
7.5 半径 ···························································································································· 8
7.6 平たんではない外殻形体間の直線距離················································································ 8
7.7 二方向の直線距離 ·········································································································· 9
8 角度公差方式 ··················································································································· 9
8.1 外殻形体間の角度距離 ···································································································· 9
8.2 外殻形体と誘導形体との間の角度距離··············································································· 11
附属書A(参考)長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に
+−公差を適用することによる曖昧さの例 ········································································· 12
附属書B(参考)GPSマトリックスモデルとの関係 ··································································· 19
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 21
B 0420-2:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産
業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済
産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS B 0420の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 0420-1 第1部:長さに関わるサイズ
JIS B 0420-2 第2部:長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法
JIS B 0420-3 第3部:角度に関わるサイズ
日本産業規格 JIS
B 0420-2:2020
製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法の公差表示方式
−第2部:長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法
Geometrical product specifications (GPS)-Dimensional tolerancing-
Part 2: Dimensions other than linear or angular sizes
序文
この規格は,2018年に第2版として発行されたISO 14405-2を基とし,技術的内容を変更して作成した
日本産業規格である。
附属書Bにこの規格とGPSマトリックスとの関係を示す。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,長さ又は角度に関わるサイズ以外に,+−公差を適用するときに生じる曖昧さを避けるた
めに,+−公差の代わりに用いる幾何公差の適用について規定する。
寸法の公差表示は,+−公差方式又は幾何公差方式で指示することが可能である。
長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に+−公差を適用することによる曖昧さの例(個々の公差及び
普通公差が,例えば,JIS B 0405及びISO 8062-3に従う場合)は,附属書A参照。
注記1 この規格に示す図は,単に説明文を例示しているだけであって,実際の使用を反映している
わけではない。したがって,図は関係する基本的事項だけを説明するために単純化している。
注記2 サイズ公差(サイズ形体の寸法の公差を意味する。)の指示については,次の規格を参照。
− 長さに関わるサイズについては,JIS B 0420-1
− 角度に関わるサイズについては,JIS B 0420-3
− くさび形体については,JIS B 0615-1及びJIS B 0615-2
− 円すいについては,JIS B 0028
注記3 幾何公差に関する規定については,JIS B 0021による。
注記4 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 14405-2:2018,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional tolerancing−Part 2:
Dimensions other than linear or angular sizes(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
B 0420-2:2020
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示
方式
注記 対応国際規格:ISO/DIS 1101:1996,Geometrical product specifications (GPS)−Geometrical
tolerancing−Tolerances of form, orientation, location and run-out
JIS B 0024 製品の幾何特性仕様(GPS)−基本原則−GPS指示に関わる概念,原則及び規則
注記 対応国際規格:ISO 8015,Geometrical product specifications (GPS)−Fundamentals−Concepts,
principles and rules
JIS B 0051 製図−部品のエッジ−用語及び指示方法
注記 対応国際規格:ISO 13715:2000,Technical drawings−Edges of undefined shape−Vocabulary and
indications
JIS B 0420-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法の公差表示方式−第1部:長さに関わるサイズ
注記 対応国際規格:ISO 14405-1:2010,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional
tolerancing−Part 1: Linear sizes
JIS B 0420-3 製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法の公差表示方式−第3部:角度に関わるサイズ
注記 対応国際規格:ISO 14405-3:2016,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional
tolerancing−Part 3: Angular sizes
JIS B 0615-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−くさび形体−第1部:角度及び勾配の基準値
注記 対応国際規格:ISO 2538-1:2014,Geometrical product specifications (GPS)−Wedges−Part 1:
Series of angles and slopes
JIS B 0615-2 製品の幾何特性仕様(GPS)−くさび形体−第2部:寸法及び公差の指示方法
注記 対応国際規格:ISO 2538-2:2014,Geometrical product specifications (GPS)−Wedges−Part 2:
Dimensioning and tolerancing
JIS Z 8317-1 製図−寸法及び公差の記入方法−第1部:一般原則
注記 対応国際規格:ISO 129-1:2018,Technical product documentation (TPD)−Presentation of
dimensions and tolerances−Part 1: General principles
ISO 17450-1,Geometrical product specifications (GPS)−General concepts−Part 1: Model for geometrical
specification and verification
ISO 17450-2,Geometrical product specifications (GPS)−General concepts−Part 2: Basic tenets,
specifications, operators, uncertainties and ambiguities
ISO 17450-3,Geometrical product specifications (GPS)−General concepts−Part 3: Toleranced features
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0021,JIS B 0024,JIS B 0051,JIS B 0420-1,JIS B 0420-3,
JIS Z 8317-1,ISO 17450-1,ISO 17450-2及びISO 17450-3によるほか,次による。
なお,この規格で使用する用語“図面”は,加工物の二次元図面,3Dモデル及び他の表示と同義語とし
て用いる。
3
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3.1
+−(プラスマイナス)公差,プラスマイナス公差(±tolerancing)
寸法及び許容差,許容限界サイズ,又は片側許容サイズの指示による公差。
注記 +−の記号は,許容差が常に基準サイズについて対称であることを意味しているとは限らない。
3.2
長さに関わるサイズ(linear size)
サイズ形体の特性を表現する長さの単位をもつもの。
注記 JIS B 0420-1参照。
3.3
角度に関わるサイズ(angular size)
サイズ形体の特性を表現する角度の単位をもつもの。
注記 JIS B 0420-3参照。
3.4
距離(distance)
サイズ形体とはみなすことができない二つの幾何形体(点,線及び/又は面)間の寸法。
注記1 これは,二つの外殻形体の間,一つの外殻形体と一つの誘導形体との間,又は二つの誘導形
体の間の寸法。二つの外殻形体の間の距離の具体例は,図1及び図2参照。一つの外殻形体
と一つの誘導形体との間の距離の具体例は,図3参照。二つの誘導形体の間の距離の具体例
は,図4参照。
注記2 直線距離と角度距離とがある。
3.4.1
直線距離(linear distance)
長さの単位で表された距離。
3.4.2
角度距離(angular distance)
角度の単位で表された距離。
4
寸法及び関連する公差指示の原理及び規則
JIS B 0420-1及びJIS B 0420-3に規定する+−公差指示に関する一般的な規則及び原理は,機械製図の
公差方式の基本であり,この規格にも適用する。他の全ての例は,特別な規則を適用する。
単位指示の規則については,箇条5を参照。
長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に関して,+−公差の要件は,実際の加工物に適用したときに
曖昧になる(仕様上の曖昧さをもつ)ので,+−公差形式の使用は推奨しない(附属書A参照)。
仕様上の曖昧さは,JIS B 0420-1に規定する長さに関わるサイズ又はJIS B 0420-3に規定する角度に関
わるサイズのサイズ公差を適用するときだけ避けることが可能となる。仕様上の曖昧さを避けるために,
表1に示す場合には幾何公差を用いなければならない。
そのほか,特に指定がない限り,例えば,JIS B 0023に規定する最大実体公差方式(○
M)を指示しない
限り,機械製図における公差は,同一形体に対する他の要件とは無関係な独立した要件である。これは,
独立の原則と呼ばれる(JIS B 0024参照)。
加工物の図示モデルには,幾つかの形式の寸法が存在する(表1参照)。
4
B 0420-2:2020
表1−寸法の形式
形体の特徴,形式及び数
寸法の形式
詳細
寸法
長さに関わる
寸法
(単位:長さ)
一つの形体
外殻又は誘導
半径
7.5,A.6,A.7
外殻又は誘導
円弧の長さ
A.12
二つの形体
外殻−外殻
同一方向
直線距離
又は段差
7.2,A.2
正対(対向)
状態
直線距離
7.2,7.6,A.3,
A.8
外殻−誘導
直線距離
7.3,7.7,A.4,
A.9
誘導−誘導
直線距離
7.4,A.5
エッジ
(二つの外殻
形体間の遷移
領域)
外殻
面取り
面取りの高さ
及び角度
A.11
丸み
端部の半径
A.11
角度に関わる
寸法
(単位:角度)
二つの形体
外殻−外殻
角度距離
8.1,
JIS B 0615-1,
JIS B 0615-2,
JIS B 0420-3
外殻−誘導
角度距離
8.2,A.10
誘導−誘導
角度距離
−
5
図面に使用する寸法の単位
寸法に関する標準的な単位は,次による。
− 長さ寸法及びそれに関連した公差許容限界の単位は,ミリメートル(mm)とする。
− 角度寸法及びそれに関連した公差許容限界の単位は,度(°)とする。小数,度(°),分(′),秒(″)
又はradも使用することが可能である。
長さ寸法については,暗黙の了解として,単位は指示しない。
角度寸法については,基準寸法(図示サイズ)及び公差許容限界に対して,単位を指示しなければなら
ない。
標準以外の単位を使用する場合には,その単位は表題欄の中又はその近くに指示しなければならない。
6
長さ又は角度に関わるサイズに対する公差の指示
長さに関わるサイズの公差の指示に関しては,JIS B 0420-1による。
角度に関わるサイズの公差の指示に関しては,JIS B 0420-3による。
7
曖昧な+−公差及び曖昧でない幾何公差の図示例
7.1
一般
この箇条は,長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に対する幾何公差の使用例を示す。+−公差をも
つ寸法の曖昧さを避けるために,幾何公差方式を使用することが可能である。一般に,幾何公差を基本に
した要件は,仕様上の曖昧さは全くないか,又はあったとしても非常に少ない。
+−公差を適用することによる曖昧さについては,附属書Aに記載する。
幾何公差を用いる場合は,通常,幾つかの異なる指示が考えられる。この箇条に示すのは,その一例で
ある。
5
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いずれの例も,解釈が曖昧で仕様上の曖昧さも高くなる+−公差を用いた図とともに,説明している(長
さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に,+−公差を適用することの曖昧さの説明及び例については,附
属書Aを参照。)。
幾何公差に関する詳細は,JIS B 0021を参照。
7.2
外殻形体間の直線距離
図1を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
c) 曖昧さなし
d) 曖昧さなし
図1−直線方向の段差寸法で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b),c) 及びd) 参照]
注記1 図1のa) は,寸法に対して+−公差を用いて指示した例である。この指示では,仕様が曖
昧になる可能性が高い。附属書A参照。
注記2 図1のb)〜d) は,幾何公差を用いて曖昧さをなくした指示である。この指示では,仕様の曖
昧さはない又は非常に低くなる。
注記3 図1のb) では,データム平面Aは,左側の垂直な平らな面であるデータム形体A上に対し
て設定している。データムAは,加工物を空間上の特定の方向に配置させる。右側の垂直で
平らな面は,理論的に正確な寸法の距離Lだけ離れた位置で,位置度公差域によって指示し
ている。
注記4 図1のc) では,データム平面Aは,右側の垂直な平らな面であるデータム形体A上に対し
て設定している。データムAは,加工物を空間上の特定の方向に配置させる。左側の垂直で
6
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平らな面は,理論的に正確な寸法の距離Lだけ離れた位置で,位置度公差域によって公差付
けられている。
注記5 図1のd) では,データムは指示していない。二つの垂直で平らな面を同時に考慮して,空
間における加工物の位置を設定している。その二つの平らな面は,理論的に正確な距離Lだ
け離れた位置で,共通公差域を適用した面の輪郭度によって互いの位置関係に公差を与えて
いる。
図2は,相対している二つの外殻形体の例を示している。ただし,原理的には図1と同じである。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
c) 曖昧さなし
d) 曖昧さなし
図2−サイズ形体ではない,相対する平行な二つの外殻形体間を直線距離で指示した曖昧さのある例
[a) 参照],及び幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b),c) 及びd) 参照]
7
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7.3
外殻形体と誘導形体との間の直線距離
図3を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
図3−一つの外殻形体と一つの誘導形体との間を直線距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 参照]
7.4
誘導形体間の直線距離
図4を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
c) 曖昧さなし
図4−二つの誘導形体間を直線距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 及びc) 参照]
8
B 0420-2:2020
注記1 図4のb) は,二つの穴のうち一方の穴をデータムとして使用し,もう一方の穴をデータム
に対する位置度公差で規制した例である。
注記2 図4のc) は,互いに関係する二つの穴に対して,部品の底面をデータムとして使用し,デー
タムに対する姿勢と二つの穴間距離とを位置度公差で規制した例である。
7.5
半径
図5を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
図5−一つの外殻形体の丸みに対して曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 参照]
7.6
平たんではない外殻形体間の直線距離
図6を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
1
(相対)位置を規制する公差指示
2
形状を規制する公差指示
図6−二つの平たんではない外殻形体間を直線距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 参照]
9
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7.7
二方向の直線距離
図7を参照。
a) 曖昧さあり
b) 曖昧さなし
c) 曖昧さなし
図7−二方向を直線距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 及びc) 参照]
注記1 図7のb) は,各方向について幾何公差及び位置に関する要件を指示した例である。この図
のように,二つの方向に異なる公差を与えることが可能である。
注記2 図7のc) は,位置度公差を円筒公差域として指示した例である。
8
角度公差方式
8.1
外殻形体間の角度距離
図8を参照。
10
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a) 曖昧さあり(角度距離と形状偏差とを
規制したい場合)
b) 曖昧さなし
c) 曖昧さなし
d) 曖昧さなし
図8−二つの外殻形体間を角度距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b)〜d) 参照]
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B 0420-2:2020
8.2
外殻形体と誘導形体との間の角度距離
図9を参照。
a) 曖昧さあり(角度距離と誘導形体の
幾何偏差とを規制したい場合)
b) 曖昧さなし
注記1 a) において,角度距離と誘導形体の幾何偏差とを規制したい場合には,解釈に曖昧さを生じることがある。
注記2 b) において,データムAを指示する引出線が破線になっているのは,背面にあって,隠れている面を指示し
ていることを意味している。
図9−一つの外殻形体と一つの誘導形体との間を角度距離で指示した曖昧さのある例[a) 参照],及び
幾何公差を用いて曖昧さをなくした例[b) 参照]
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附属書A
(参考)
長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に
+−公差を適用することによる曖昧さの例
A.1 はじめに
この附属書では,長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に対する,+−公差の指示によって生じる曖
昧さの説明及び例を示す。
実際の加工物において,サイズ以外の寸法に+−公差を適用したときに,仕様上の要件は曖昧になる。
この曖昧さを解消する万能な指示はない。仕様上の要件を曖昧にするのは,実際の加工物の全ての形状及
び角度距離に偏差(ばらつき)があるためである。これらの偏差(ばらつき)は,+−公差だけにとどま
らず,寸法の評価結果にも影響を及ぼす。この仕様上の曖昧さが,幾つもの解釈を可能としてしまう。こ
れらの解釈のうちのいずれか一つを,要件と一致することを検証するために使用することが可能である。
寸法仕様上の曖昧さは予測できず,事前に定量化もできない。したがって,多くの機能的な事例において,
機能しない部品を除外することはできなくなる。この曖昧さは,実際の加工物の幾何偏差によって生じる
ものである(図A.1参照)。
この附属書での最初の例は,幾つかの解釈が可能なことの説明である。他の例は,+−公差の使用が曖
昧さを生じることだけを示している。
曖昧となる部分は,実際の加工物の寸法を疑問符で図示している。
A.2 同一方向を向いている二つの平行な外殻形体間の直線距離
図A.1を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) 加工物における可能な解釈
図A.1−同一方向を向いている二つの平行な外殻形体間で使用する直線距離の例
13
B 0420-2:2020
注記 図A.1のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.1のb) に示す。形状及び姿勢の偏差をもつ
実際の加工物に対して,公差をもつ寸法(形体)の姿勢と位置とが定義されないために曖昧さ
を生じることになる。
図A.1のb) は,実際の加工物における幾つかの可能な解釈の仕方を示している。
A.3 異なる方向を向いている(相対する)二つの平行な外殻形体の間の直線距離
図A.2を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.2−異なる方向を向いている(相対する)二つの平行な外殻形体間で使用する直線距離の例
注記 図A.2のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.2のb) に示す。
A.4 一つの外殻形体と一つの誘導形体との間の直線距離
図A.3を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.3−一つの外殻形体と一つの誘導形体との間の直線距離の例
注記 図A.3のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.3のb) に示す。
14
B 0420-2:2020
A.5 二つの誘導形体間の直線距離
図A.4を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.4−二つの誘導形体間の直線距離の例
注記 図A.4のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.4のb) に示す。
A.6 一つの外殻形体としての半径
図A.5を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.5−一つの外殻形体としての半径の例
注記 図A.5のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.5のb) に示す。
15
B 0420-2:2020
A.7 一つの誘導形体としての半径
図A.6を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.6−一つの誘導形体としての半径の例
注記 図A.6のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.6のb) に示す。
A.8 二つの平たんではない外殻形体間の直線距離
図A.7を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.7−二つの平たんではない外殻形体間の直線距離の例
注記 図A.7のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.7のb) に示す。
16
B 0420-2:2020
A.9 二方向の直線距離
図A.8を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.8−二方向の直線距離
注記 図A.8のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.8のb) に示す。
A.10 一つの外殻形体と一つの誘導形体との間の角度距離
図A.9を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.9−一つの外殻形体と一つの誘導形体との間の角度距離の例
注記 図A.9のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.9のb) に示す。
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B 0420-2:2020
A.11 丸み及び面取り
図A.10を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
c) 曖昧な寸法指示
d) c) が意味する曖昧さ
図A.10−+−公差を指示した丸み及び面取りの例
注記 図A.10のa) 及びc) の寸法指示が意味する曖昧さを,それぞれ図A.10のb) 及びd) に示す。
丸み及び面取りに関して+−公差を指示することは,形状及び角度距離に偏差をもっている実際の加工
物では,曖昧になる。この仕様上の曖昧さが許容できない場合は,幾何公差方式を使用しなければならな
い。
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B 0420-2:2020
A.12 円弧の長さ
図A.11を参照。
a) 曖昧な寸法指示
b) a) が意味する曖昧さ
図A.11−+−公差を指示した円弧長さの例
注記 図A.11のa) の寸法指示が意味する曖昧さを,図A.11のb) に示す。
+−公差を指示した円弧長さは,形状及び角度距離に偏差をもっている実際の加工物では,曖昧になる。
線の形状又は表面の形状に対して,円弧長さに+−公差を指示する代わりに,仕様の組合せ,例えば,
理論的に正確な寸法及び幾何公差を指示するのが望ましい。
19
B 0420-2:2020
附属書B
(参考)
GPSマトリックスモデルとの関係
B.1
一般
GPSマトリックスモデルの詳細については,ISO 14638:2015を参照。
ISO 14638に示されるISO/GPSマスタープランは,この規格がその一部を構成するISO/GPSシステムの
全体像を与える。JIS B 0024に示すISO/GPSの基本的な規則は,この規格に適用し,また,JIS B 0641-1
に示す標準的な決定規則は,指示しない場合を除き,この規格に従って書かれた仕様を適用する。
B.2
この規格及びその使用に関する情報
この規格は,長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に,+−公差を指示することによって生じる曖昧
さを避けるために,幾何公差を長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に対してどのように指示するかを
示している。
また,長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法に,+−公差を指示することによって生じる曖昧さにつ
いても説明している。
B.3
GPSマトリックスモデルの中における位置
この規格は,GPS基本規格であり,表B.1に示すように,GPS基本規格マトリックスの“距離”のチェ
ーンにおける“記号及び指示法”に影響する。
表B.1−GPSマトリックスモデルにおける位置付け
チェーンリンク
A
B
C
D
E
F
G
記号及び指
示法
形体に対す
る要求事項
形体の性質 適合及び不
適合
測定
測定機器
校正
サイズ
距離
形状
姿勢
位置
振れ
表面性状(輪郭曲
線)
表面性状(三次元)
表面欠陥
B.4
関連国際規格又は日本産業規格
関連国際規格又は日本産業規格は,表B.1に示す規格チェーンの全てである。
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B 0420-2:2020
参考文献
[1] JIS B 0022 幾何公差のためのデータム
注記 対応国際規格:ISO 5459,Geometrical product specifications (GPS)−Geometrical tolerancing−
Datums and datum systems
[2] JIS B 0023 製図−幾何公差表示方式−最大実体公差方式及び最小実体公差方式
注記 対応国際規格:ISO 2692,Geometrical product specifications (GPS)−Geometrical tolerancing−
Maximum material requirement (MMR), least material requirement (LMR) and reciprocity
requirement (RPR)
[3] JIS B 0025 製図−幾何公差表示方式−位置度公差方式
注記 対応国際規格:ISO/DIS 5458:1994,Geometrical Product Specifications (GPS)−Geometrical
tolerancing−Positional tolerancing
[4] JIS B 0028 製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法及び公差の表示方式−円すい
注記 対応国際規格:ISO 3040,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensioning and tolerancing
−Cones
[5] JIS B 0401-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−長さに関わるサイズ公差のISOコード方式−第1部:サ
イズ公差,サイズ差及びはめあいの基礎
注記 対応国際規格:ISO 286-1:2010,Geometrical product specifications (GPS)−ISO code system for
tolerances on linear sizes−Part 1: Basis of tolerances, deviations and fits
[6] JIS B 0405 普通公差−第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差
注記 対応国際規格:ISO 2768-1,General tolerances−Part 1: Tolerances for linear and angular
dimensions without individual tolerance indications
[7] JIS B 0641-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−製品及び測定装置の測定による検査−第1部:仕様に対
する合否判定基準
注記 対応国際規格:ISO 14253-1,Geometrical Product Specifications (GPS)−Inspection by
measurement of workpieces and measuring equipment−Part 1: Decision rules for verifying
conformity or nonconformity with specifications
[8] JIS Z 8222-1 製品技術文書に用いる図記号のデザイン−第1部:基本規則
注記 対応国際規格:ISO 81714-1,Design of graphical symbols for use in the technical documentation of
products−Part 1: Basic rules
[9] ISO 8062-3,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional and geometrical tolerances for moulded
parts−Part 3: General dimensional and geometrical tolerances and machining allowances for castings
[10] ISO 14253-2,Geometrical product specifications (GPS)−Inspection by measurement of workpieces and
measuring equipment−Part 2: Guidance for the estimation of uncertainty in GPS measurement, in calibration
of measuring equipment and in product verification
[11] ISO/TR 14638:1995,Geometrical product specifications (GPS)−Masterplan
[12] ISO 14638:2015,Geometrical product specifications (GPS)−Matrix model
[13] ISO/R 1938:1971,ISO system of limits and fits−Part II: Inspection of plain workpieces
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B 0420-2:2020
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS B 0420-2:2020 製品の幾何特性仕様(GPS)−寸法の公差表示方式−第2部:
長さ又は角度に関わるサイズ以外の寸法
ISO 14405-2:2018,Geometrical product specifications (GPS)−Dimensional tolerancing
−Part 2: Dimensions other than linear or angular sizes
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
6
題名ほか
6
長さ又は角度寸法の公
差指示
変更
“長さ又は角度に関わるサイズに
対する公差の指示”と国際規格の誤
りを訂正した。
国際規格の見直しの際に提案す
る。
7
図1 d),図2 d)及び
図4 c)
7
図1 d),図2 d)及び図4 c)
は位置度公差を用いて
指示している。
変更
位置度公差を用いる指定は適切で
ないため,共通公差域による面の輪
郭度を用いて指示した。
国際規格の見直しの際に提案す
る。
8角度公差
方式
図8
8
図8は正面図だけ示し
ている。
変更
角度距離を指示することを明確に
するために左側面図を追加した。
国際規格の見直しの際に提案す
る。
図9
8
図9 b)において,隠れた
面を表す記号として白
丸及び破線を用いてい
る。
変更
JISでは,視認性の点から,白丸の
かわりに黒丸及び破線を用いてい
る。
国際規格の見直しの際に提案す
る。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 14405-2:2018,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
B
0
4
2
0
-2
:
2
0
2
0