B 0109-12:2019
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
3.1 排気排出物及び関連事項 ································································································· 2
3.2 排気浄化装置及び機器 ···································································································· 3
3.3 排気浄化装置に関するパラメータ······················································································ 5
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································· 9
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本内燃機関連合会(JICEF)及び一般財団
法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本
工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
これによって,JIS B 0110:1999は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS B 0109の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 0109-1 第1部:機関構造及び外部カバー
JIS B 0109-2 第2部:主要運動部品
JIS B 0109-3 第3部:弁,カム及び駆動装置
JIS B 0109-4 第4部:過給及び吸排気装置
JIS B 0109-5 第5部:冷却装置
JIS B 0109-6 第6部:潤滑装置
JIS B 0109-7 第7部:調速装置
JIS B 0109-8 第8部:始動装置
JIS B 0109-9 第9部:制御及び監視装置
JIS B 0109-10 第10部:点火装置
JIS B 0109-11 第11部:燃料装置
JIS B 0109-12 第12部:排気浄化装置
日本工業規格 JIS
B 0109-12:2019
往復動内燃機関−要素及びシステム用語−
第12部:排気浄化装置
Reciprocating internal combustion engines-Vocabulary of components
and systems-Part 12: Exhaust emission control systems
序文
この規格は,2014年に第1版として発行されたISO 7967-12を基とし,我が国の内燃機関の排気浄化装
置に関する用語の使用実態と合わせるため,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,往復動内燃機関において一般に用いる要素及びシステム用語のうち,排気浄化装置に関す
る用語について規定する。
この規格では,排気浄化装置に関する用語を,次のように区分する。
a) 排気排出物及び関連事項
b) 排気浄化装置及び機器
c) 排気浄化装置に関するパラメータ
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 7967-12:2014,Reciprocating internal combustion engines−Vocabulary of components and systems
−Part 12: Exhaust emission control systems(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0108-1 往復動内燃機関−用語−第1部:機関設計及び運転用語
JIS B 8040 ガスタービン及び附属装置−用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0108-1によるほか,次による。
2
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3.1
排気排出物及び関連事項
3.1.1
排気排出物(exhaust emission)
内燃機関の排気に含まれる大気汚染物質。
注記 対応英語“exhaust emission”は,“排気排出物の排出”の意味でも使用される。
3.1.2
粒子状物質,PM(particulate matter,particulates,PM)
排気に含まれる粒子状の物質。主に,炭素,炭化水素,硫黄化合物及び水滴から成る。
注記 粒子状物質の定義は,測定作業又は規制の目的のためには,次のような詳細な規定がある。ろ
過した清浄な空気で,一次捕集フィルタの直前において,315 K(42 ℃)を超え,325 K(52 ℃
以下まで希釈した排気から,決められたフィルタに捕集する全ての物質。
3.1.3
浮遊粒子状物質,TSP(total suspended particulate,TSP)
100 μm以下の粒子状物質(3.1.2)。
3.1.4
黒煙(soot)
燃料の燃焼中に生成される炭素の微粒子。“すす”ともいう。
注記 より広義の意味で使用される“ばいじん”とは,黒煙,燃えかすなどの排気排出物に含まれる
固体粒子状物質全てをいう。
3.1.5
排気煙(exhaust gas smoke)
燃焼又は熱分解の結果,排気中に浮遊する,目視できる固体及び/又は液体の微粒子。
3.1.6
硫黄酸化物(SOx)
排気に含まれる,SO2,SO3などの硫黄酸化物。
3.1.7
窒素酸化物(NOx)
排気に含まれる,NO,NO2などの窒素酸化物。
3.1.8
亜酸化窒素(nitrous oxide,N2O)
主に内燃機関のSCR(選択触媒還元方式)における還元作用の結果生成されるガス状排気排出物(3.1.1)。
3.1.9
二酸化炭素(carbon dioxide,CO2)
内燃機関の燃焼過程で,燃料と空気との酸化作用によって生成されるガス状排気排出物(3.1.1)。
3.1.10
揮発性有機化合物,VOC(volatile organic compound,VOC)
燃料若しくは塗料からの蒸発,又は内燃機関の排気中の未燃燃料(不完全燃焼の場合を含む。)に含まれ
て排出される,トルエン,キシレン,エチルアセテート,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒドなどの有
機化合物。
3
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3.1.11
全炭化水素,THC(total hydrocarbon,THC)
化石燃料又は潤滑油の未燃若しくは不完全燃焼の結果排気中に残存する炭化水素の全量。
注記 全炭化水素の定義は,測定作業又は規制の目的のために,次のような詳細な規定がある。“水素
と炭素との質量比が,1.85:1の炭化水素の全炭化水素を測定するために規定された手順で測定
した有機化合物の全質量(参考文献[6] を参照。)。”
3.1.12
ブローバイガス(blowby gas)
ピストン,ピストンリング及びシリンダ壁の隙間からクランクケースへ漏れる燃焼ガス。
3.1.13
光化学スモッグ(photochemical smog)
排気排出物が太陽光に反応して生成される大気中の有害な煙霧。
3.1.14
非メタン炭化水素,NMHC(non-methane hydrocarbon,NMHC)
メタン以外の炭化水素の全量。
3.1.15
一酸化炭素(carbon monoxide,CO)
内燃機関の燃焼過程で,不完全燃焼によって生成される炭素化合物で,毒性のあるガス状排気排出物
(3.1.1)。
3.2
排気浄化装置及び機器
3.2.1
リアクティブマニホールド(reactive manifold)
熱酸化反応によって,排気中の可燃成分を減らすための内容積を増大させた排気マニホールド。
3.2.2
排気ポートライナ(exhaust port liner)
排気温度を高温に保つために,排気ポートに挿入するライナ。
3.2.3
サーマルリアクタ(thermal reactor)
排気中のHC,COなどを,熱酸化反応によって低減する装置。
3.2.4
触媒コンバータ(catalytic converter)
触媒を用いて,排気排出物(3.1.1)中のHC,CO2などの酸化又はNOxの還元を行い,排出量を低減す
る装置。
3.2.5
酸化触媒コンバータ(oxidation catalytic converter)
排気中のHC及びCOを酸化触媒によって減らす装置。
3.2.6
選択触媒還元方式,SCR(selective catalytic reduction,SCR)
排気中のNOxを,触媒を用いてN2及びH2Oに還元し,低減する方式。
注記1 図1の例を参照。
4
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注記2 通常,アンモニア又は尿素水が還元剤として使われる。過剰のアンモニアは,反応しないで
排出される場合がある。
3.2.7
選択触媒還元脱硝装置(NOx reduction catalytic converter)
SCR(選択触媒還元方式)(3.2.6)によって,NOxを低減する装置。
注記 この装置自体を“SCR”と呼ぶことがある。
3.2.8
deNOxシステム(deNOx system)
尿素水などを用いた強制再生式又は自然再生式触媒,NOx吸蔵還元触媒[NOx absorber(3.2.8A)],選択
触媒還元脱硝装置(3.2.7)などのNOxを低減する排気浄化装置の総称。
3.2.8A
NOx吸蔵還元触媒(NOx absorber)
排気中のNOxを一時的に吸蔵し,後に還元(N2化)する触媒。
3.2.9
三元触媒コンバータ(three-way catalytic converter)
排気中のHC,CO及びNOxを酸化・還元反応によって同時に低減するための触媒コンバータ。
3.2.10
O2センサ(oxygen sensor,λ sensor)
排気中の酸素濃度を検知するセンサ。
3.2.11
二次空気供給装置(secondary air supply system)
排気中の未燃成分を酸化するため,排気系に空気を供給する装置。
3.2.12
排気再循環,EGR(exhaust gas recirculation,EGR)
機関の排気の一部を吸気部へ還流し,吸気と混合して燃焼することによって,NOxの発生を低減する方
法。
注記 図2の例を参照。
3.2.13
内部EGR(internal EGR)
機関の排気行程で,ガス交換のときに,残留ガス量を増してEGR(3.2.12)と同じように,NOxの発生
を低減する方法。
3.2.14
ディーゼル微粒子捕集フィルタ,DPF(diesel particulate filter,DPF)
ディーゼルエンジンの排気通路に設置し,排気中の粒子状物質(3.1.2)を除去するフィルタ。
注記1 図4の例を参照。
注記2 フィルタで捕集したPMの再生(酸化)温度を下げるために,ウォッシュコート及び貴金属
を使用したDPFをCDPF(catalysed diesel particulate filter)という場合がある。
3.2.15
ガソリン微粒子捕集フィルタ,GPF(gasoline particulate filter,GPF)
ガソリンエンジンの排気通路に設置し,排気中の粒子状物質(3.1.2)を除去するフィルタ。
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3.2.16
再生式トラップ(particulate trap oxidizer)
DPFで捕集した粒子状物質(3.1.2)を燃焼(酸化)させて取り除くフィルタ。
3.2.17
排気スクラバ(exhaust scrubber)
機関の排気系統に設置し,海水,清水又は乾式の洗浄剤を用いて排気排出物を洗浄・除去する装置。
注記1 図3の例を参照。
注記2 水を洗浄剤として用いるものを湿式スクラバ,乾式の洗浄剤を用いるものを乾式スクラバと
いう。
3.3
排気浄化装置に関するパラメータ
3.3.1
SV値,SV(space velocity,SV)
触媒単位体積当たりの処理ガス流量。空間速度ともいう。JIS B 8040によって,次の式で表す。
SV=G/V
ここに,
SV: SV値(h−1)
G: 処理ガス流量(m3/h)1)
V: 触媒量(m3)
注1) 0 ℃,1 013 hPaの状態。
3.3.2
EGR率,rEGR(EGR ratio,rEGR)
EGRガス質量流量とシリンダに流入する空気・ガス質量流量との比。
注記 例えば,EGR率は,次の式で表す。
)
/(
EGR
IN
EGR
EGR
m
m
m
r
+
=
ここに,
rEGR: EGR率
mEGR: EGRガス質量流量
mIN: 吸入空気質量流量
3.3.3
排出指数,EI(emission index,EI)
排気排出物の質量流量と燃料の質量流量との比。排気排出物の排出量の程度を表す。
注記 例えば,NOxの排出指数は,次の式で表す。
f
NOx
NOx
/m
m
EI
=
ここに,
EINOx: NOxの排出指数
mNOx: 排ガス中のNOxの質量流量(g/s)
mf: 燃料の質量流量(kg/s)
3.3.4
対出力比排出量(specific emission)
排気排出物の単位出力当たりの排出量。
注記 通常,mg/J 又はg/kW・hで表す。
6
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3.3.5
排出係数(emission coefficient,emission factor)
使用した燃料の量に対する排気排出物の比。
注記 装置の温室効果ガス排出量の指標として用いられる。
3.3.6
触媒浄化率(catalyst conversion efficiency)
触媒コンバータ(3.2.4)で,各排気排出物を無害な物質に変換した割合(百分率)。
注記 詳細は参考文献[3] を参照。
図1−選択触媒還元方式(3.2.6)の例
NOxからN2及びH2Oへの触媒反応
尿素水から
アンモニアへの
加水分解
排ガス
触媒コンバータ
(3.2.4)
排ガス
尿酸噴射ノズル
尿酸
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注記 詳細は参考文献[4] を参照。
図2−船用EGR(3.2.12)の例
注記 詳細は参考文献[4] を参照。
図3−船用の排気スクラバ装置の例
バイパス弁
排ガス
ジェット
スクラバ
船外へ
海水
排気スクラバ(3.2.17)
蒸気又は
ジャケット水
デミスタ
排気
過給機
スクラバ
弁(EGR用)
EGR用
ブロワ
スラッジ 海水
給気冷却器
海水
ポンプ
水処理装置
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注記 詳細は参考文献[5] を参照。
図4−ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF,3.2.14)の例
参考文献
[1] JIS B 8008-1 往復動内燃機関−排気排出物測定−第1部:ガス状排出物及び粒子状排出
物の台上測定
[2] JIS B 8008-9 往復動内燃機関−排気排出物測定−第9部:圧縮点火機関の過渡状態にお
ける排気煙濃度の台上測定での試験サイクル及び試験方法
[3] SCR system for NOx reduction of Medium Speed Marine Diesel Engine, 26th CIMAC Congress,
Paper No. 228
[4] Tier III Compliance−Low Speed Engines, Technical Brochure, Man Diesel & Turbo
[5] KOMATSU TECHNICAL REPORT Vol.48 No.149, Commercialization of Diesel Particulate Filter
(DPF)
[6] Global technical regulation No.11, ENGINE EMISSIONS FROM AGRICULTURAL AND
FORESTRY TRACTORS AND FROM NON-ROAD MOBILE MACHINERY, UNITED
NATIONS, No. ECE/TRNS/180/Add.11
排ガス
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附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS B 0109-12:2019 往復動内燃機関−要素及びシステム用語−第12部:排気浄
化装置
ISO 7967-12:2014,Reciprocating internal combustion engines−Vocabulary of
components and systems−Part 12: Exhaust emission control systems
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 a) 排気排出物及び
関連事項
1
用語の区分。
a) 排気排出物
変更
用語の区分a) を“排気排出物及び
関連事項”に変更した。
a) には排気排出物そのもの以外
の関連事項が含まれるので変更し
た。次回ISO規格の定期見直しの
際に変更を提案する。
2 引用規格
3 用語及び
定義
3.1.10 揮発性有機
化合物
3.1.10 JISとほぼ同じ。
追加
定義文に化合物を追加した。
最近問題になることのある臭気性
化合物を追加した。次回ISO規格
の定期見直しの際に追加を提案す
る。
3.1.15 一酸化炭素
−
−
追加
用語及び定義を追加した。
主要な排気排出物であるので追加
した。次回ISO規格の定期見直し
の際に追加を提案する。
3.2.8 deNOxシステ
ム
3.2.8
JISとほぼ同じ。
追加
定義文に化合物を追加した。
強制再生式の意味を明確にするた
め,使用する触媒を追加記述した。
次回ISO規格の定期見直しの際に
追加を提案する。
3.2.8A NOx吸蔵還元
触媒
−
−
追加
用語及び定義を追加した。
3.2.8の定義にある用語であるが,
ISO規格では定義がないので追加
した。次回ISO規格の定期見直し
の際に追加を提案する。
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B
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1
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(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義(続き)
3.3.1 SV値
3.3.1
JISとほぼ同じ。
変更
JIS B 8040の定義を引用し,変更し
た。
JIS B 8040によって詳細な定義が
あるので,引用し変更した。次回
ISO規格の定期見直しの際に変更
を提案する。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 7967-12:2014,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
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