B 0090-6 : 2001 (ISO 10110-6 : 1996)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本光学工業協会 (JOIA) /財団法人日本規
格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査
会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
今回の制定は,日本工業規格を国際規格に整合させるため,ISO 10110-6 : 1996, Optics and optical
instruments−Preparation of drawings for optical elements and systems−Part 6 : Centring tolerancesを基礎として
用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
JIS B 0090の規格群には,次に示す部編成がある。
第1部:通則
第2部:材料欠陥−応力複屈折
第3部:材料欠陥−泡及び異物
第4部:材料欠陥−不均一性及び脈理
第5部:表面形状公差
第6部:偏心公差
第7部:表面欠陥許容値
第8部:面の肌
第9部:表面処理及びコーティング
第10部:単一レンズ素子のデータ表示表
第11部:公差表示のないデータ
第12部:非球面
第17部:レーザ放射による損傷しきい値(予定)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 0090-6 : 2001
(ISO 10110-6 : 1996)
光学素子及びシステム用の製図手法−
第6部:偏心公差
Preparation of drawings for optical elements and systems−
Part 6 : Centring tolerances
序文 この規格は,1996年に第1版として発行されたISO 10110-6 (Optics and optical instruments−
Preparation of drawings for optical elements and systems−Part 6 : Centring tolerances) を翻訳し,技術的内容及
び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格の中で点線の下線を施してある参考は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 JIS B 0090の規格群は,製造及び検査に用いられる製図における光学素子及びシステムに
対する設計上並びに機能上の要求事項の表記について規定する。
この規格は,光学素子,部分組立部品,組立部品の偏心公差を表示する約束を規定する。これらの約束
は回転対称の光学系だけに適用する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 10110-6 : 1996 Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements and
systems−Part 6 : Centring tolerances (IDT)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるのものは,記載の年の版だけが規格の規定を構成
するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その最
新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0021 製品の幾何特性仕様 (GPS)−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示
方式
備考 ISO 1101/DIS : 1996, General product specifications (GPS)−Geometrical tolerancing−Tolerancing
of form, orientation, location and run-outが,この規格と一致している。
JIS B 0090-1 光学素子及びシステム用の製図手法−第1部:通則
備考 ISO 10110-1 : 1996, Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements
and systems−Part 1 : Generalが,この規格と一致している。
JIS B 0090-5 光学素子及びシステム用の製図手法−第5部:表面形状公差
備考 ISO 10110-5 : 1996, Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements
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B 0090-6 : 2001 (ISO 10110-6 : 1996)
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and systems−Part 5 : Surface form tolerancesが,この規格と一致している。
JIS B 0090-7 光学素子及びシステム用の製図手法−第7部:表面欠陥許容値
備考 ISO 10110-7 : 1996, Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements
and systems−Part 7 : Surface imperfection tolerancesが,この規格と一致している。
JIS B 0090-10 光学素子及びシステム用の製図手法−第10部:単一レンズ素子のデータ表示表
備考 ISO 10110-10 : 1996, Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements
and systems−Part 10 : Table representing data of a lens elementが,この規格と一致している。
JIS B 0090-12 光学素子及びシステム用の製図手法−第12部:非球面
備考 ISO 10110-12 : 1997, Optics and optical instruments−Preparation of drawings for optical elements
and systems−Part 12 : Aspheric surfacesが,この規格と一致している。
ISO 5459 : 1981 Technical drawings−Geometrical tolerancing−Datums and datum-systems for geometrical
tolerances
参考 JIS B 0022,幾何公差のためのデータムが,部分的にこの規格と一致している。
3. 定義 この規格に用いる用語の定義は,次による。
3.1
光学システム (optical system) 光学素子,部分組立部品又は組立部品。
3.2
光軸(光学システムの) [optical axis (of an optical system)] 光学システムがその周りで名目上回転
対称となる理論軸。
備考 平面鏡,プリズムなどのような偏向素子及びシステムは例外とする。
3.3
データム軸 (datum axis) 光学システム特定の形体を考慮して選択する軸。
備考 データム軸は,面,素子,組立部品の位置についての基準として使う。この規格では,データ
ム軸の定義は,ISO 5459で与えられた一般原則と一致して作られている。
3.4
データム点 (datum point) データム軸上に定められた点。
備考 光学システムの位置の付加的な基準として使う。データム点の表示は,5.2で記述する。
3.5
球面の傾き角 (tilt angle of a spherical surface) データム軸が面と交わる点における面の法線とデー
タム軸のなす角(図1参照)。
図1 単一球面の傾き角
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3.6
非球面の傾き角 (tilt angle of an aspherical surface) 非球面の回転軸と,非球面が属する部品,サブ
システム又はシステムのデータム軸のなす角。
3.7
非球面の横変位 (lateral displacement of an aspherical surface) 非球面の回転対称点からデータム軸
までの距離。
3.8
光学素子又はサブシステムの傾き角 (tilt angle of an optical element or sub-system) 素子又はサブシ
ステムのデータム軸と,素子又はサブシステムがその部品である(全)システムのデータム軸のなす角(図
2参照)。
図2 光学サブシステムの傾き角及び横変位
3.9
光学素子又はサブシステムの横変位 (lateral displacement of an optical element or sub-system) 素子又
はサブシステムのデータム軸と,素子又はサブシステムがその部品である(全)システムのデータム軸の
間の,サブシステムのデータム点で測定される距離(図2参照)。
4. 偏心公差の規定 個々の球面について,偏心誤差は3.5で定義する面の傾き角で構成する。他のすべ
ての場合(非球面,素子,サブシステム)では,偏心誤差は3.6〜3.9で定義する二つのデータム軸の間の
傾き角と横変位で構成する。
4.1 個々の球面 個々の球面については,データム軸に対する最大許容傾き角 (σ) で表示する(3.5参照)。
4.2
個々の非球面 個々の非球面については,3.6で定義する傾き角 (σ) の最大許容値と,3.7で定義す
る横変位 (L) で表示する。
面の非球面効果が球面の度(屈折力)と比べて小さければ,偏心公差は4.1のとおりに,すなわち,球
面であるとして規定することができる。
代わりに,非球面の偏心公差はJIS B 0021によって規定することができる(JIS B 0090-12参照)。
4.3
光学素子及びサブシステム 光学素子及びサブシステムについては,3.8で定義する傾き角 (σ) の最
大許容値と,3.9で定義される横変位 (L) で表示する。
4.4
接合光学組立部品の接合剤くさび 接合光学組立部品については,接合剤層のくさび角の公差を規
定することができる。
4.5
光学機能をもたない面 光学機能をもたない(例えば,外周のような)光学素子の面の偏心公差は,
JIS B 0021に規定される約束どおりに規定する(図14及び図15参照)。
4.6
視野絞り,焦点板 (reticle) など 視野絞り,焦点板などの偏心公差は,JIS B 0021に規定される方
法を用いて規定する(図16参照)。
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5. 図面上の表示
5.1
データム軸 データム軸は,JIS B 0021によって一つ又は二つの形体にデータム三角記号を使用し
て表示され,大文字のローマ字で識別する[例えば,図3a),及び図4参照]。
個々の面の偏心公差が表示された製図では,データム軸の表示が必要ない次の二つの場合がある。
− データム軸が素子の外周を基準とする[図3b)参照]。
− データム軸が面の曲率中心及びその面の中心点を基準とする[図5b)参照]。
5.2
データム 点データム点は,次の記号で表示する。
データム点が,データム軸と関係する光学システムの(光の進行方向に数えて)最初の光学面との交点
と一致する場合,データム点は表示しなくてもよい。
単一回転対称性非球面については,データム点はその面の対称点と一致する。この場合データム点を表
示する必要はない。
5.3
偏心公差
5.3.1
偏心公差の表示はコード番号,一つ又は二つの許容値,及び必要なら(図17参照)データム軸素
子への参照からなる。
接合剤くさび角公差の表示には,許容値の前に三角デルタ記号 (∆) を付ける。
5.3.2
偏心公差のコード番号は,4である。
5.3.3
表示の構成 表示は,次の三つの形式のうちの一つで示す。
4/σ, 4/σ (L) 又は4/∆τ
ここで,σは最大許容傾き角,Lは最大許容横変位,また,(三角形記号∆の後に付く)τは最大許容接合
剤くさび角である。
5.3.4
偏心公差は,光学素子又はサブシステムのデータム軸を参照する。図面に二つ以上のデータム軸が
示されている場合は,適用するデータム軸の参照文字を許容値に付加する(図17参照)。
5.3.5
公差の値は角寸法の場合,角の分 [′] 又は秒 [″] で,線寸法の場合mmで規定する。
5.4
位置 表示は,それを参照する面又は光学システムに引出し線で結んで示す(図3〜7参照)。
面に対して好ましい方法は,表面形状公差及び表面欠陥許容値の表示と結び付けることである(JIS B
0090-5及びJIS B 0090-7参照)。そのような表示の例が,JIS B 0090-1の附属書Aに与えられている。代わ
りに,表示をJIS B 0090-10のように表中に与えてもよい。
光学配置図では,偏心公差は表中に与えてもよい。データム軸を示していない場合は,すべての偏心公
差は理論的光軸を基準とする。配置図中のサブシステムの傾き角及び横変位の公差の表示例が,JIS B
0090-1の図30に与えられている。
6. 例 単一素子についての例は,図3〜7,図14及び図15に示す。部分組立部品及び組立部品について
は,図8〜13及び図16,図17に示す。
図3a)では,データム軸は外周の軸である(この軸は,素子のコバ厚が十分あるときだけ薦められる)。
データム軸が示されておらず,光学的に有効な両方の面に対して傾き角公差が規定されている場合[図3b)
参照],データム軸は外周の軸である。
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図3 外周を参照するデータム軸
図4に示すデータム軸は,左の面の曲率中心と断面Bの中心点を結ぶ線である。
図4 面の曲率中心と表示断面の中心を参照するデータム軸
図5a)では,データム軸は左の面の曲率中心と中心点を結ぶ線である。データム軸が示されておらず,
一つの傾き公差だけが[図5b)のように]規定されている場合,データム軸は図5a)のように定義する。
図5 同じ面の曲率中心と中心点を参照するデータム軸
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図6では,データム軸は,平面Bに垂直で,左の面の中心を貫く。
図7は,例として4.2による非球面に対する偏心公差の表示を示す。
長さ寸法:単位mm
図6 平面と光学的有効面の中心点を
参照するデータム軸
図7 非球面の偏心公差
図8及び図11でのデータム軸は,図3a)の軸と類似して定義する。
図9及び図12のデータム軸の定義は,図5a)の定義と同じである。
図8 外周を参照するデータム軸
図9 同じ面の曲率中心と中心点を
参照するデータム軸
図10では,データム軸は,レンズ1の両面の曲率中心を結ぶ線(すなわちレンズ1の光軸)である。
図13は機械素子面を参照し,図6と類似して定義するデータム軸を示す。
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図10 二つの面の曲率中心を
参照するデータム軸
図11 接合剤くさび公差の表示を含む部分組立部品:
外周を参照するデータム軸
図12 同じ面の曲率中心と中心点を
参照するデータム軸
図13 機械素子を参照するデータム軸
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単位 mm
図14 光学機能のない面の偏心公差の表示
長さ寸法:単位 mm
図15 光学機能のある面とない面の偏心公差の表示
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B 0090-6 : 2001 (ISO 10110-6 : 1996)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
図16 焦点板の偏心公差の表示
図17 二つの異なるデータム軸を参照する複合素子の偏心公差の表示
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B 0090-6 : 2001 (ISO 10110-6 : 1996)
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光学素子及びシステムの製図手法原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
田 中 俊 一
東京理科大学理学部
(幹事)
山 本 公 明
オリンパス光学工業株式会社基礎技術研究所
池 森 敬 二
キヤノン株式会社レンズ開発センター
大 園 成 夫
東京大学大学院工学系研究科
加 藤 欣 也
株式会社ニコンインストルメンツカンパニーMS事業部
桐 木 俊 彦
コニカ株式会社オプトテクノロジーカンパニー光学開発
センター
小 泉 昇
富士写真光機株式会社光学設計部
中 村 均
株式会社トプコン産業機器技術部
橋 本 進
財団法人日本規格協会技術部
福 島 省
ミノルタ株式会社光システム技術部
松 田 淳
旭光学工業株式会社カメラ事業部
山 口 孝 夫
株式会社リコー画像技術開発本部
吉 本 勇
元東京工業大学精密工学研究所
(オブザーバ)
八 田 勲
通商産業省工業技術院標準部
(事務局)
岩 崎 郁 也
日本光学工業協会