B 0060-5:2020
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目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 幾何公差の指示方法 ·········································································································· 2
4.1 一般事項 ······················································································································ 2
4.2 公差記入枠 ··················································································································· 4
4.3 公差付き形体 ················································································································ 4
5 データム························································································································· 8
5.1 データムの指示方法 ······································································································· 8
5.2 データムターゲットの指示方法 ······················································································· 11
6 限定した指示 ·················································································································· 12
6.1 限定した領域への指示方法 ····························································································· 12
6.2 特定の位置への指示方法 ································································································ 13
7 突出公差域 ····················································································································· 14
附属書A(参考)デジタル製品技術文書情報(DTPD)スコープマトリックス································· 16
附属書B(参考)要素間連携 ································································································· 17
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まえがき
この規格は,産業標準化法に基づき,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
注記 工業標準化法に基づき行われた日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法等の一
部を改正する法律附則第9条により,日本産業標準調査会の審議等の手続を経たものとみなさ
れる。
JIS B 0060の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS B 0060-1 第1部:総則
JIS B 0060-2 第2部:用語
JIS B 0060-3 第3部:3DAモデルにおける設計モデルの表し方
JIS B 0060-4 第4部:3DAモデルにおける表示要求事項の指示方法−寸法及び公差
JIS B 0060-5 第5部:3DAモデルにおける幾何公差の指示方法
JIS B 0060-6 第6部:3DAモデルにおける溶接の指示方法
JIS B 0060-7 第7部:3DAモデルにおける表面性状の指示方法
JIS B 0060-8 第8部:3DAモデルにおける非表示要求事項の指示方法(予定)
JIS B 0060-9 第9部:DTPD及び3DAモデルにおける一般事項(予定)
JIS B 0060-10 第10部:組立3DAモデルの表し方(予定)
日本産業規格 JIS
B 0060-5:2020
デジタル製品技術文書情報−
第5部:3DAモデルにおける幾何公差の指示方法
Digital technical product documentation-
Part 5: Indication of geometrical tolerancing for 3D annotated model
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適用範囲
この規格は,JIS B 0060-1に基づき,一般機械,精密機械,電気機械などの工業分野で用いる3DAモデ
ル(3D annotated model:三次元製品情報付加モデル)の設計モデルに設定する表示要求事項の一つである
幾何公差の指示方法について規定する。
注記1 この規格における3D指示例は,軸測投影保存ビューだけではなく,任意の方向でコンピュ
ータモニタなどに表示した例も含んでいる。
注記2 この規格では,一部の図に二次元製図による指示例(以下,2D指示例という。)を参考とし
て記載している。
注記3 この規格と各製造工程との関連範囲を,附属書Aに示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示
方式
JIS B 0022 幾何公差のためのデータム
JIS B 0060-1 デジタル製品技術文書情報−第1部:総則
JIS B 0060-2 デジタル製品技術文書情報−第2部:用語
JIS B 0060-4 デジタル製品技術文書情報−第4部:3DAモデルにおける表示要求事項の指示方法−
寸法及び公差
JIS B 0672-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−形体−第1部:一般用語及び定義
JIS Z 8114 製図−製図用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0021,JIS B 0022,JIS B 0060-2,JIS B 0672-1及びJIS Z 8114
による。
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幾何公差の指示方法
4.1
一般事項
幾何公差の指示方法に関する一般事項は,JIS B 0060-1及びJIS B 0060-4によるほか,次による。
a) 幾何公差は,通常,設計モデルに表示要求事項として指示する(図1参照)。また,図1のように,設
計モデルに多数の幾何公差を指示する場合は,できるだけ重なり合わないように配置する。
図1−幾何公差の指示例
b) 幾何公差は,要求事項配置面を用いて指示する[図2及びJIS B 0060-4の箇条5(表示要求事項及び
要求事項配置面)参照]。要求事項配置面は,一つの設計モデルの中に複数あってもよい。
図2−要求事項配置面の使用例
要求事項配置面
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c) 幾何公差を表示要求事項として指示しない場合(例えば,個々に指示しない普通幾何公差)は,二次
元図面の注記,設計モデルの非表示要求事項,モデル管理情報などに記載する。
d) 設計モデルに傾斜度,線の輪郭度,面の輪郭度及び位置度を指示する場合,理論的に正確な寸法(以
下,TEDという。)は,省略してもよい(図3参照)。ただし,設計モデルの製品データ品質が,十分
に管理できている場合に限る。
a) 2D指示例
b) 3D指示例
図3−位置度公差の指示例
e) 幾何公差は,外殻形体(例えば,円筒の外側表面)又は誘導形体(例えば,中心線,中心面)に指示
する。
f)
データムに関連した形体に指示した幾何公差は,データム形体自身の幾何偏差を規制しない。データ
ム形体には,必要に応じて幾何公差を指示するのがよい(図4参照)。
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図4−データム形体に対する幾何公差の指示例
g) 幾何公差の指示に用いる補足幾何形状は,次によって表すことができる。
− 公差域の向き,位置などを表す細い実線
− 誘導形体の中心を表す細い一点鎖線
− 公差域の適用領域を表す細い二点鎖線
h) 設計モデルに幾何公差を指示したときの公差付き形体と公差記入枠との間,又は設計モデルにデータ
ムを指示したときのデータム形体とデータム記号との間で,自動的に関連付けが行われる(以下,要
素間連携という。)3D CADの機能については,附属書Bを参照する。
4.2
公差記入枠
公差記入枠の構成及び要求事項の記入方法は,JIS B 0021の6.(公差記入枠)による。
4.3
公差付き形体
4.3.1
一般事項
一般事項は,次による。
a) 公差付き形体は,公差記入枠と,その左側又は右側から引き出した指示線とを結び付けて示す。
b) 公差記入枠を重ねて指示する場合,公差記入枠から指示線を引き出す位置は,図5のa)〜c) のいずれ
かとする。ただし,4.3.3 b) による場合を除く。
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a) 指示線を引き出す位置の例1
b) 指示線を引き出す位置の例2
c) 指示線を引き出す位置の例3
図5−公差記入枠を重ねたときの指示線の付け方
c) 設計モデルを二次元製図の第三角法及び矢示法による投影図と同様の向きで見たとき,公差記入枠を
コンピュータモニタの下側から読み取れるように記載する(図1参照)。
4.3.2
外殻形体への指示方法
外殻形体への指示方法は,次による。
a) 外殻形体の境界(エッジ)の内側に指示する場合は,黒丸付きの指示線と公差記入枠とを結び付けて
指示する(図6及び図7参照)。
注記 3D CADで指示線を実体の外側に引き出したときの黒丸は,円形の半分が形体内部にうずも
れるため,半円形にしか見えない場合が多い。
図6−外殻形体への指示例1
図7−外殻形体への指示例2
b) 外殻形体の境界(エッジ),補足幾何形状又は延長線上に指示する場合は,矢印付きの指示線と公差記
入枠とを結び付けて指示する(図8,図9及び図10参照)。
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1
この面に対する平面度の指示
図8−外殻形体への指示例3
図9−外殻形体への指示例4
c) 公差域の幅の向きを指定する場合,外殻形体上に作成した補足幾何形状を用いることができる。補足
幾何形状は,細い実線を使用する(図10参照)。
図10−補足幾何形状で公差域の向きを指定した例
4.3.3
誘導形体への指示方法
誘導形体への指示方法は,次による。
a) サイズ形体の寸法線と公差記入枠とを,矢印付きの指示線で結び付けて指示する[図11 a) 参照]。
なお,指示線は寸法線の延長線上に置く。
b) 延長した寸法線の横にサイズ形体のサイズを記入した場合,又は引出線につないだ参照線の横にサイ
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ズを記入した場合は,サイズの下に公差記入枠を使用して幾何公差を指示してもよい[図11 b),図
11 c) 及び図12参照]。
a) サイズ形体の外形線への指示例
b) 引出線につないだ参照線の横
にサイズを記入した場合の例1
c) 引出線につないだ参照線の横
にサイズを記入した場合の例2
図11−誘導形体への指示例1
図12−誘導形体への指示例2
c) サイズと組み合わせて指示しない場合は,誘導形体への適用を指定する誘導形体記号“Ⓐ”を公差値
の後に続けて記入する(図13参照)。
図13−誘導形体記号を用いた指示例
d) 中心線が,その基となる外殻形体と関連付けられている場合は,公差記入枠と中心線とを結び付けて
指示してもよい(図14参照)。
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図14−中心線への指示例
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データム
5.1
データムの指示方法
設計モデルに対するデータムの指示方法は,次による。
a) データムは,データム三角記号と文字記号とを引出線で結び付けて指示する(表1参照)。
表1−データム及びデータムターゲットの記号
説明
記号a)
二次元製図
三次元製図
データム三角記号
データム文字記号
BC
A
FF
データムターゲット記入枠
Ø10
A1
B2
データムターゲット記号
点
線
領域
注a) 文字記号及び数値は,一例を示す。
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b) データムを確立する単一の形体がサイズ形体でない場合(例えば,データム平面)は,外殻形体の境
界(エッジ)の内側から引き出した引出線に参照線をつなげて,これにデータム三角記号を指示する。
このとき,引出線の端末記号は,黒丸とする(図15のデータムA〜D)。また,外殻形体の延長線上
にデータム三角記号を指示する(図15のデータムE参照)。
図15−データム平面の指示例
c) データムを確立する単一の形体がサイズ形体の場合(例えば,データム点,データム軸直線,データ
ム中心平面など)は,サイズ形体の寸法線の延長線上にデータム三角記号を指示する(図16参照)。
a) データム軸直線B及びデータム中心平面Aの例
図16−データム軸直線及びデータム中心平面の指示例1
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b) データム中心平面Cの例
図16−データム軸直線及びデータム中心平面の指示例1(続き)
d) 延長した寸法線の横,及び引出線につないだ参照線の横にサイズ形体のサイズを記入する場合は,寸
法線上又は参照線上にデータム三角記号を置くことで,データム軸直線及びデータム中心平面を示す
ことができる(図17参照)。
c) 参照線の下側に置く例2
d) 参照線の上側に置く例2
図17−データム軸直線及びデータム中心平面の指示例2
a) 参照線の上側に置く例1
b) 参照線の下側に置く例1
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e) データム三角記号は,外殻形体の境界(エッジ)を除いた外殻形体上(表面上)に直接,指示しても
よい。ただし,見誤るおそれがない場合に限る(図18参照)。
図18−外殻形体(表面上)に直接指示した例
f)
設計モデルを二次元製図の第三角法及び矢示法による投影図と同様の向きで見たとき,データム文字
記号は,コンピュータモニタの下側又は右側から読み取れるように指示する。
g) データム三角記号は,図4に示すように公差記入枠に付ける。
5.2
データムターゲットの指示方法
設計モデルに対するデータムターゲットの指示方法は,次による。
a) データムターゲットは,表1に記載のデータムターゲット記号とデータムターゲット記入枠とを引出
線で結び付けて指示する。
b) 領域のデータムターゲットは,データムターゲット記入枠と領域のデータムターゲット記号とを,領
域の内側から引き出した黒丸の引出線で結び付けて指示する(図19参照)。通常,領域は,細い二点
鎖線で囲み,ハッチングを施す。ただし,図示が困難な場合(例えば,領域が小さい。)には,細い実
線で囲み,ハッチングを施してもよい。
図19−領域のデータムターゲットの指示例
c) 線のデータムターゲットは,データムターゲット記入枠と線のデータムターゲット記号とを,矢印付
きの引出線で結び付けて指示する(図20参照)。また,実用データム形体の長さを明示したい場合に
は,始点及び終点に×印の付いた線のデータムターゲット記号で示す。
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図20−線のデータムターゲットの指示例
d) 点のデータムターゲットは,データムターゲット記入枠と点のデータムターゲット記号とを,端末記
号なしの引出線で結び付けて指示する(図21参照)。
注記 3D CADでデータムターゲット記入枠を実体の外側に引き出したときは,データムターゲッ
ト記号が形体内部にうずもれるため,×印に見えない場合が多い。
図21−点のデータムターゲットの指示例
e) データムターゲットの位置を表すTEDは,省略してもよい。ただし,設計モデルの製品データ品質が,
十分に管理できている場合に限る。
6
限定した指示
6.1
限定した領域への指示方法
幾何公差を限定した領域に指示する方法は,次による。
a) 単一の形体内の限定した領域に幾何公差を指示する場合は,限定した領域の内側と公差記入枠とを指
示線で結び付けて示す。このとき,指示線の端末記号は,黒丸とする(図22参照)。
なお,限定した領域を表面上に作成する方法については,JIS B 0060-4の6.10(位置及び範囲の限
定)による。
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図22−限定した領域への指示例
b) 幾つかの連続した形体を限定した領域として指示する場合は,区間記号“
”と公差付き形体の
始まりから終わりまでを示す文字記号(ラテン文字の大文字)とで指示する(図23参照)。区間記号
は,公差記入枠の上又は下に示す。公差付き形体の始まり及び終わりの位置は,図23のように引出線
に文字記号を付けて示す。
なお,公差付き形体の始まり又は終わりが外殻形体の境界(エッジ)でない場合は,細い実線の補
足幾何形状でその位置を示す。
図23−区間記号による指示例
c) 限定した領域の大きさ及び位置の寸法表記は,省略してもよい。ただし,設計モデルの製品データ品
質が,十分に管理できている場合に限る。
6.2
特定の位置への指示方法
幾何公差をある特定の位置に指示する場合は,TEDによって位置を特定した補足幾何形状に指示線を結
び付けて示す(図24参照)。
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図24−特定の位置への指示例
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突出公差域
突出公差域は,公差値の後に続けて条件記号“Ⓟ”及び仮想の突出長さを記入し,突出側に指示する(図
25参照)。
a) 2D指示例
図25−突出公差域の指示例
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b) 3D指示例
図25−突出公差域の指示例(続き)
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附属書A
(参考)
デジタル製品技術文書情報(DTPD)スコープマトリックス
A.1 規格及びその利用についての情報
この規格は,デジタル製品技術文書情報(DTPD)の3DAモデルにおける幾何公差の指示方法を示す。
A.2 デジタル製品技術文書情報(DTPD)スコープマトリックスにおける位置付け
この規格は,表A.1に示すデジタル製品技術文書情報(DTPD)に関わる3DAモデルの基本規格であり,
全ての工程に関わる。
なお,3DAモデルの中で示さなければならない3DAモデルと当該工程との関係,又は当該工程への指
示事項がある場合についても,表A.1では丸印を付けている。
表A.1−この規格の関連範囲[デジタル製品技術文書情報(DTPD)スコープマトリックス]
分類
工程
開発・設計
生産準備
加工
組立
検査
サービス
三次元製品情報付
加モデル
モデル管理情報
○
○
○
○
○
○
設計モデル
○
○
○
○
○
○
製品特性
○
○
○
○
○
○
二次元図面
−
−
−
−
−
−
デジタル製品技術文書情報(DTPD)
管理情報
−
−
−
−
−
−
三次元製品情報付
加モデルに付加,又
は連携させるデー
タ
DMUデータ
○
○
○
○
○
○
解析データ
○
○
○
○
○
○
試験データ
○
○
○
○
○
○
製造データ
○
○
○
○
○
○
品質データ
○
○
○
○
○
○
サービスデータ
○
○
○
○
○
○
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附属書B
(参考)
要素間連携
B.1
一般
3D CADの多くは,設計モデルに幾何公差を指示したときの公差付き形体と公差記入枠との間,又は設
計モデルにデータムを指示したときのデータム形体とデータム記号との間で,自動的に関連付けが行われ
る。3DAモデルのもつデジタル技術情報の一つとして,この要素間連携は,必要な機能であり,B.2に代
表的な例を示す。
なお,要素間連携の規定は,JIS B 0060-4を参照する。
B.2
要素間連携の例
要素間連携の例を,図B.1に示す。
a) 幾何公差の指示例
図B.1−要素間連携の例
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1
選択(照会)
2
表示応答(4か所)
b) 照会及び表示応答例1
1
選択(照会)
2
表示応答
c) 照会及び表示応答例2
図B.1−要素間連携の例(続き)
参考文献
[1] JIS B 0024 製品の幾何特性仕様(GPS)−基本原則−GPS指示に関わる概念,原則及び規則
[2] JIS B 0029 製図−姿勢及び位置の公差表示方式−突出公差域
[3] JIS Z 8322 製図−表示の一般原則−引出線及び参照線の基本事項と適用
[4] ISO 16792,Technical product documentation−Digital product definition data practices
1
2
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