A 6919:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 原料······························································································································· 2
4.1 一般 ···························································································································· 2
4.2 消石灰 ························································································································· 2
4.3 生石灰 ························································································································· 2
4.4 骨材 ···························································································································· 2
4.5 顔料 ···························································································································· 2
4.6 すさ ···························································································································· 2
4.7 のり ···························································································································· 2
5 種類······························································································································· 2
6 品質······························································································································· 3
7 試験······························································································································· 3
7.1 試験の種類 ··················································································································· 3
7.2 試験室及び養生室の状態 ································································································· 3
7.3 試験用基板及び試験体数 ································································································· 3
7.4 試料の調製 ··················································································································· 4
7.5 保水性試験(ろ紙法) ···································································································· 4
7.6 初期ひび割れ抵抗性試験 ································································································· 4
7.7 付着強さ試験 ················································································································ 4
8 検査······························································································································· 7
9 表示······························································································································· 7
A 6919:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本漆喰協会(JSA)及び一般財団法人日本
規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本産業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
A 6919:2020
内装上塗用既調合しっくい
Japanese pre-mixed lime plaster for interior finish
1
適用範囲
この規格は,建築物の室内の壁,天井などの部位を対象とし,せっこうプラスター,砂しっくい,セメ
ントモルタルなどの下地,又は下地調整されたせっこうボード,合板,コンクリートなどの下地に塗り付
ける内装上塗用既調合しっくい1) について規定する。
注1) 既調合しっくいには,下塗用及び上塗用があるが,この規格は上塗用を対象としている。内装
上塗用既調合しっくいとは,消石灰又は生石灰を主原料とし,骨材,顔料,すさ,のりなどの
副原料を製造工場において調合し,建築現場において水と練り合わせて使用するもの,又はあ
らかじめ水と練り合わせたものをそのまま使用するものをいう。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS A 6203 セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂
JIS A 6901 せっこうボード製品
JIS A 6902 左官用消石灰
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS R 3202 フロート板ガラス及び磨き板ガラス
JIS R 9001 工業用石灰
JIS R 9200 せっこう及び石灰に関する用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS R 9200によるほか,次による。
3.1
気硬性
水中では硬化せず,空気中において二酸化炭素(CO2)と反応して硬化する性質。
3.2
こて押さえ
塗り付けた材料を,水引き具合をみながら,再度,こてで押さえ付けること。
2
A 6919:2020
4
原料
4.1
一般
a) 内装上塗用既調合しっくいの主原料である4.2の消石灰又は4.3の生石灰は,その質量が製品中の全固
形分質量の50 %以上となるように使用する。
b) 気硬性以外の結合材(セメント,せっこうなど)を用いてはならない。
c) 4.4〜4.7の骨材,顔料,すさ及びのり,並びに水又はその他の少量添加剤は,消石灰又は生石灰と混
合して使用した場合に,その品質に有害な影響を及ぼさないものとする。
注記 その他の少量添加剤には,酢酸ビニル系,アクリル系,スチレンブタジエンゴム(SBR)系
などの再乳化形粉末又は水溶性樹脂などの合成樹脂,植物油系又は動物油系の防水剤などが
ある。
d) すさ,のり,合成樹脂,有機質顔料などの有機質固形分質量の合計は,製品中の全固形分質量の6.8 %
以下となるように使用する。
4.2
消石灰
消石灰は,次のいずれかによる。
a) JIS A 6902に規定する左官用消石灰の上塗用の品質に適合するもの。
b) JIS R 9001に規定する工業用消石灰の消石灰特号,1号又は2号の品質に適合し,かつ,JIS A 6902
の4.4.3(安定性試験)(2)(蒸気試験)に合格するもの。
なお,貝灰等を原料とする場合もa)又はb)による。
4.3
生石灰
生石灰は,JIS R 9001に規定する生石灰特号,1号又は2号の品質に適合するもの。
4.4
骨材
骨材は,耐久性があり,消石灰又は生石灰と混合して使用した場合,こて塗り作業性などに支障がない
もの。
注記 骨材には,川砂,けい砂,寒水石,砕砂,ドロマイト,軽質炭酸カルシウム,重質炭酸カルシ
ウム,沸石,けい藻土などがある。
4.5
顔料
顔料は,耐アルカリ性に優れ,消石灰又は生石灰と混合して使用した場合,著しい変退色など有害な影
響を及ぼさないもの。
注記 顔料には,酸化黄,カーボンブラック,酸化鉄などの無機質顔料,黄土(きづち)などの天然
鉱物顔料,フタロシアニンブルーなどの有機質顔料などがある。
4.6
すさ
すさは,消石灰又は生石灰と混合して使用した場合,こて塗り作業性に支障がないもの。
注記 すさには,麻すさ,紙すさ,稲わら,ガラス繊維,化学繊維,カーボン繊維などがある。
4.7
のり
のりは,消石灰又は生石灰と混合して使用した場合,こて塗り作業性に支障がないもの。
注記 のりには,海藻のり,でんぷんのり,メチルセルロースなどがある。
5
種類
内装上塗用既調合しっくいの種類は,その形態によって,次のように区分する。
a) 粉末状しっくい 主原料に4.2の消石灰を用い,製品に水を練り混ぜて使用する粉末状のもの。
3
A 6919:2020
b) クリーム状しっくい 主原料に4.2の消石灰又は4.3の生石灰を用い,製品に水が練り混ぜられている
クリーム状のもの。
6
品質
内装上塗用既調合しっくいの品質は,次による。
a) 内装上塗用既調合しっくいの製品の外観は,色調が均等でなければならない。
b) 内装上塗用既調合しっくいは,製造業者が定める使用方法によってこて塗りしたとき,作業性に支障
があってはならない。
c) 内装上塗用既調合しっくいは,箇条7によって試験したとき,表1の規定に適合しなければならない。
表1−内装上塗用既調合しっくいの品質
試験項目
品質
保水率
%
34以上
初期ひび割れ抵抗性
ひび割れがない。
付着強さ
N/mm2
0.10以上
d) 内装上塗用既調合しっくいには,ユリア樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,レゾルシノール樹脂
及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれも使用してはならない。
7
試験
7.1
試験の種類
試験の種類は,表2による。
表2−試験の種類
試験の種類
適用試験箇条
保水性試験(ろ紙法)
7.5
初期ひび割れ抵抗性試験
7.6
付着強さ試験
7.7
7.2
試験室及び養生室の状態
試験室及び養生室の状態は,温度20 ℃±5 ℃,相対湿度(65±10)%で,試験体に直接風が当たらな
いものとする。
7.3
試験用基板及び試験体数
試験用基板(以下,基板という。)は,JIS A 6901に規定する厚さ12.5 mmの強化せっこうボードとし,
製造業者の定める合成樹脂エマルション2) によって処理されたものとする。
なお,特に定めがない場合は,JIS A 6203に規定するエチレン酢酸ビニル系のセメント混和用樹脂エマ
ルションで固形分(45±2)%のものと水とを質量比で1:4となるように混合したものを100 g/m2±10 g/m2
塗布したものとする。
基板の大きさ及び試験体数は,次による。
a) 初期ひび割れ抵抗性試験用基板 基板の大きさは300 mm×150 mmとし,試験体数は3個とする。
b) 付着強さ試験用基板 基板の大きさは70 mm×70 mmとし,試験体数は3個とする。
4
A 6919:2020
なお,基板は試験室に24時間以上静置した後,試験体作製に使用する。
注2) 合成樹脂エマルションは,吸水調整材ともいう。
7.4
試料の調製
試験に使用する全ての材料の必要量を,それぞれ別の容器に入れ,試験室に24時間以上静置する。その
後,製造業者が定める方法によって,均質になるように十分に練り混ぜたものを試料とする。
なお,粉末状しっくいで,製造業者が当該製品の使用方法として練り置き後に用いることを定めている
場合は,練り上がった材料を容器に入れ,所定の時間,試験室に静置したものを試料とすることができる。
7.5
保水性試験(ろ紙法)
7.5.1
試験用器具
試験用器具は,次による。
a) ガラス板 JIS R 3202に規定する磨き板ガラスで,150 mm×150 mm×5 mmのもの。
b) ろ紙 JIS P 3801に規定する5種Aろ紙(直径15 cm)のもの。
c) リング型枠 金属製で,内径50 mm,高さ10 mm及び厚さ3 mmのもの。
7.5.2
試料
試料は,7.4によって調製した試料とする。
7.5.3
試験の手順
ガラス板の上にろ紙をのせ,その中央部にリング型枠を設置し,試料を金べらでリング型枠内に平たん
に隙間ができないように詰め込む。その後,直ちにリング型枠上部にガラス板を当て上下を逆さにひっく
り返し,ろ紙部分が上部になるようにして静置する。20分後にろ紙へにじみ出した水分が広がった後の直
径を最大と認める方向とこれに直角な方向とで,1 mmまで測定し,その平均値L20(mm)を求め,次の
式によって保水率(Rw)を算出する。
100
50
20
w
×
=L
R
ここに,
Rw: 保水率(%)
L20: 20分後の水分の広がり(mm)
この操作を3回行い,その平均値を四捨五入によって整数に丸め,保水率(%)とする。
7.6
初期ひび割れ抵抗性試験
7.6.1
試験体
試験体は,7.3 a)に示す基板の表面に,7.4によって調製した試料を,製造業者が定める方法によって塗
り付け,上面を平たんに仕上げ,こて押さえをしないものとする。
7.6.2
試験の手順
7.6.1で塗り付けた試験体を養生室に水平に静置し,6時間後に3個の試験体について表面のひび割れの
発生の有無を目視によって調べ,ひび割れが認められない場合は“ひび割れがない。”とする。
7.7
付着強さ試験
7.7.1
試験体
試験体は,7.3 b)に示す基板の表面に,7.4によって調製した試料を,製造業者が定める方法によって塗
り付け,上面を平たんに仕上げ,養生室に14日間静置したものとする。製造業者が使用方法で金ごて押さ
え仕上げを定めている場合は,試験体の上面も金ごて押さえ仕上げとすることができる。
5
A 6919:2020
7.7.2
試験の手順
試験体の試料塗付け面に接着剤を塗り,図1に示すように上部引張り用鋼製ジグを静かに載せ,軽くす
り付けるように接着し取り付け,周辺にはみ出した接着剤を拭き取る。24時間静置した後,上部引張り用
鋼製ジグの周り4辺に,基板に達するまで40 mm×40 mmの方形の切込みを入れ,図2に示す鋼製当て板
及び図3に示す下部引張り用鋼製ジグを用いて,図4に示すように試験体面に対して鉛直方向に引張り力
を加えて,最大引張荷重T(N)を求める。荷重速度は1 500 N/min〜2 000 N/minとする。付着強さA(N/mm2)
は,次の式によって算出する。
600
1
T
A=
ここに,
A: 付着強さ(N/mm2)
T: 最大引張荷重(N)
3個の試験体の平均値を四捨五入によって小数点以下2桁の値に丸めて示す。
注記 接着剤は試験体に浸透しにくく高粘度のものとして,例えば,無溶剤系2液形エポキシ樹脂接
着剤がある。
単位 mm
図1−上部引張り用鋼製ジグの取付け(例)
6
A 6919:2020
単位 mm
図2−鋼製当て板(例)
単位 mm
図3−下部引張り用鋼製ジグ(例)
7
A 6919:2020
図4−試験体の引張試験機への取付け方
8
検査
検査は,形式検査と受渡検査とに区分し,合理的な抜取検査方式で次によって行い,箇条6の規定に適
合したものを合格とする。
それぞれの検査の項目は,次による。
a) 形式検査項目
1) 外観
2) 保水率
3) 初期ひび割れ抵抗性
4) 付着強さ
b) 受渡検査項目
1) 外観
2) 保水率
9
表示
この規格の全ての要求事項に適合した内装上塗用既調合しっくいの包装又は容器には,次の事項を表示
する。ただし,包装容器に全ての項目を表示できない場合は,h)及びi)の事項については,添付する印刷
物など他の方法で表示してもよい。
a) 規格番号
b) 規格名称
c) 製造業者名又はその略号
d) 製造年月日又はその略号
e) 正味質量
f)
保管条件
g) 有効期間
h) 使用方法
i)
注意事項
8
A 6919:2020
注記 使用方法に記載する内容には,標準加水量(クリーム状しっくいの場合は除く。),練り混ぜ方
法,練り置き時間,塗り付けの方法,養生条件・期間などがある。