A 6207:2016
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 種類······························································································································· 3
5 品質······························································································································· 3
5.1 粉体シリカフューム及び粒体シリカフューム ······································································· 3
5.2 シリカフュームスラリー ································································································· 4
6 試料······························································································································· 4
6.1 採取 ···························································································································· 4
6.2 調製 ···························································································································· 4
7 試験方法························································································································· 5
7.1 二酸化けい素 ················································································································ 5
7.2 酸化マグネシウム ·········································································································· 5
7.3 三酸化硫黄 ··················································································································· 5
7.4 遊離酸化カルシウム ······································································································· 5
7.5 遊離けい素 ··················································································································· 5
7.6 塩化物イオン ················································································································ 5
7.7 強熱減量 ······················································································································ 5
7.8 湿分 ···························································································································· 5
7.9 比表面積 ······················································································································ 5
7.10 活性度指数 ·················································································································· 5
7.11 密度 ··························································································································· 5
7.12 シリカフュームスラリーの固形分 ···················································································· 5
8 検査······························································································································· 5
9 包装······························································································································· 6
10 表示 ····························································································································· 6
11 報告 ····························································································································· 6
附属書A(規定)遊離酸化カルシウムの定量方法 ······································································· 8
附属書B(規定)コンクリート用シリカフュームの湿分及び強熱減量の定量方法 ····························· 11
附属書C(規定)コンクリート用シリカフュームのモルタルによる活性度指数の試験方法 ················· 13
附属書D(規定)全量フラスコを用いたコンクリート用シリカフュームの密度試験方法 ···················· 16
附属書E(規定)シリカフュームスラリーの固形分の定量方法 ····················································· 17
附属書F(規定)コンクリート用シリカフュームの蛍光X線分析方法 ··········································· 18
附属書G(参考)技術上重要な改正に関する新旧対照表 ····························································· 23
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本シリカフュー
ム技術研究会(JST)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を
改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格で
ある。これによって,JIS A 6207:2011は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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コンクリート用シリカフューム
Silica fume for use in concrete
序文
シリカフュームは,金属シリコン又はフェロシリコンをアーク式電気炉で製造するときに発生する排ガ
ス中のダストを集じんして得られる超微粒子であり,電力が高価な我が国では産出量が少なく,コンクリ
ート用混和材としての利用は少なかった。しかし,コンクリートの高強度化,耐久性の向上,施工性の改
善などに顕著な効果が認められ,国外から輸入されたシリカフュームがコンクリート用混和材として多く
使用されるようになり,品質規格が必要となったため2000年に制定された。前回の改正は2011年に行わ
れたが,その後のシリカフュームの用途の多様化及び技術進歩を配慮し,品質及び試験方法の改正を行っ
た。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。また,技術上重要な改正に関する新旧対照表を附属
書Gに示す。
1
適用範囲
この規格は,コンクリート及びモルタルに混和材料として用いるシリカフューム(以下,コンクリート
用シリカフュームという。)について規定する。
注記 シリカフュームの形態には,粉体,粒体及びスラリーがある。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法
JIS A 1116 フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量
方法)
JIS A 1128 フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法
JIS A 1132 コンクリートの強度試験用供試体の作り方
JIS A 1171 ポリマーセメントモルタルの試験方法
JIS A 5308 レディーミクストコンクリート
JIS A 6204 コンクリート用化学混和剤
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0119 蛍光X線分析通則
JIS K 8101 エタノール(99.5)(試薬)
2
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JIS K 8105 エチレングリコール(試薬)
JIS K 8359 酢酸アンモニウム(試薬)
JIS K 8617 炭酸カルシウム(試薬)
JIS K 8799 フェノールフタレイン(試薬)
JIS M 8853 セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法
JIS Q 0030 標準物質に関連して用いられる用語及び定義
JIS R 1301 化学分析用磁器るつぼ
JIS R 1616 ファインセラミックス用炭化けい素微粉末の化学分析方法
JIS R 1626 ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製体積計
JIS R 5201 セメントの物理試験方法
JIS R 5202 セメントの化学分析方法
JIS R 5204 セメントの蛍光X線分析方法
JIS R 5210 ポルトランドセメント
JIS Z 1505 クラフト紙袋−セメント用
JIS Z 1651 非危険物用フレキシブルコンテナ
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
シリカフューム
金属シリコン又はフェロシリコンをアーク式電気炉で製造するときに発生する排ガスから捕集される二
酸化けい素を主成分とする非晶質の球状の超微粒子。
3.2
粉体シリカフューム
捕集されたままの状態で,単位容積質量を大きくするための処理,水に懸濁させる処理などを行ってい
ない形態のシリカフューム。
3.3
粒体シリカフューム
粉体シリカフュームの輸送及び取扱いを容易にするために,単位容積質量を大きくするための処理を行
い,見かけの粒径を大きくした形態のシリカフューム。
3.4
シリカフュームスラリー
輸送及び取扱いを容易にするために,シリカフュームを水に懸濁させたもの。
3.5
固形分
シリカフュームスラリーを105〜110 ℃で恒量になるまで乾燥して得られた固体の質量を,乾燥前の質
量で除した値を百分率で表したもの。
3
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3.6
基準モルタル
シリカフュームの品質の試験において,結合材として,JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメン
トを用いて作製した基準とするモルタル。
3.7
試験モルタル
シリカフュームの品質の試験において,結合材として,基準モルタルに使用した普通ポルトランドセメ
ントと試験の対象とするシリカフュームとを,質量比で9対1に混合したものを用いて作製したモルタル。
3.8
活性度指数
基準モルタルの圧縮強度に対する試験モルタルの圧縮強度の比を百分率で表したもの。
3.9
フロー
JIS R 5201の箇条12(フロー試験)に従ってフローコーンを上方に取り去り,振動又は衝撃を与えるこ
となく広がった後のモルタルの径をミリメートル(mm)を単位とする整数で表した値。
4
種類
コンクリート用シリカフュームの種類は,製品形態によって,次の3種類とする。
a) 粉体シリカフューム
b) 粒体シリカフューム
c) シリカフュームスラリー
5
品質
5.1
粉体シリカフューム及び粒体シリカフューム
粉体シリカフューム及び粒体シリカフュームの品質は,箇条6の試料を箇条7によって試験を行い,表
1の規定に適合しなければならない。
なお,密度については,製造業者又は供給業者の測定値を試験報告書に記載する。
4
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表1−コンクリート用シリカフュームの品質
項目
品質
二酸化けい素
%
85.0以上
酸化マグネシウム
%
5.0以下
三酸化硫黄
%
3.0以下
遊離酸化カルシウム
%
1.0以下
遊離けい素
%
0.4以下
塩化物イオンa)
%
0.10以下
強熱減量
%
4.0以下
湿分b)
%
3.0以下
比表面積(BET法)
m2/g
15以上
活性度指数c)
材齢7日
95以上
% 材齢28日
105以上
注a) 購入者の承認を得て0.30 %以下とすることができる。
b) 粉体シリカフューム及び粒体シリカフュームに適用する。
c) 基準モルタル及び試験モルタルの空気量については,製造業者又は供給
業者の測定値を試験報告書に記載する。
5.2
シリカフュームスラリー
シリカフュームスラリー中の固体の品質は,箇条6の試料を箇条7によって試験を行い,表1の規定に
適合しなければならない。また,シリカフュームスラリーの固形分は,7.12の試験を行い,製造業者又は
供給業者の表示値に対し,その値は0.96〜1.04の範囲とする。
シリカフュームスラリーの作製に用いる水の品質は,JIS A 5308のC.4(上水道水)及びC.5(上水道水
以外の水)による。
6
試料
6.1
採取
6.1.1
粉体シリカフューム及び粒体シリカフューム
試料は,平均的な品質を表すように採取し,縮分する。
6.1.2
シリカフュームスラリー
試料は,内容物を十分に均一な状態にしてから採取する。採取量,採取方法及び縮分方法は,受渡当事
者間の協定による。
6.2
調製
6.2.1
粉体シリカフューム及び粒体シリカフューム
試料の調製は,JIS R 5201の箇条5(試料)による。
6.2.2
シリカフュームスラリー
試料の調製は,シリカフュームスラリーに使用されたシリカフュームが入手可能な場合には,そのシリ
カフュームを使用する。これによれない場合には,シリカフュームスラリーを乾燥することとし,その方
法及び手順は,E.3による。ただし,7.12のシリカフュームスラリーの固形分の試験にはシリカフューム
スラリーを用いる。
5
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7
試験方法
7.1
二酸化けい素
二酸化けい素の試験は,次のいずれかによる。
a) 附属書F
b) JIS M 8853
c) JIS R 5202の附属書A(完全分析によるセメントの主成分の化学分析方法)
7.2
酸化マグネシウム
酸化マグネシウムの試験は,次のいずれかによる。
a) 附属書F
b) JIS M 8853
c) JIS R 5202の附属書A
7.3
三酸化硫黄
三酸化硫黄の試験は,次のいずれかによる。
a) 附属書F
b) JIS M 8853
c) JIS R 5202の箇条12(三酸化硫黄の定量方法)
7.4
遊離酸化カルシウム
遊離酸化カルシウムの試験は,附属書Aによる。
7.5
遊離けい素
遊離けい素の試験は,JIS R 1616の箇条9(遊離けい素の定量方法)による。
7.6
塩化物イオン
塩化物イオンの試験は,JIS R 5202の箇条18(塩素の定量方法)による。
7.7
強熱減量
強熱減量の試験は,附属書Bによる。
7.8
湿分
湿分の試験は,附属書Bによる。
7.9
比表面積
比表面積の試験は,JIS R 1626による。吸着質としては窒素を用いる。
7.10
活性度指数
活性度指数の試験は,附属書Cによる。
7.11
密度
密度の試験は,附属書Dによる。
7.12
シリカフュームスラリーの固形分
シリカフュームスラリーの固形分の試験は,附属書Eによる。
8
検査
コンクリート用シリカフュームの検査は,合理的な抜取検査方式によって試料を抜き取り,箇条7に規
定する試験を行い,箇条5に適合したものを合格とする。
6
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包装
粉体シリカフューム及び粒体シリカフュームを包装する場合には,JIS Z 1505に規定するクラフト紙袋
若しくはJIS Z 1651に規定するフレキシブルコンテナ又はこれに準ずるものとする。シリカフュームスラ
リーの荷姿は,受渡当事者間の協定による。
10
表示
コンクリート用シリカフュームには,次の事項を表示する。コンクリート用シリカフュームの包装形態
が,紙袋,フレキシブルコンテナ又は容器の場合,これらの包装に直接表示するか,又は送り状に表示す
る。また,包装をしない場合には,送り状に表示する。ただし,出荷年月日の表示は,受渡当事者間の協
定による。
a) 規格名称又は商品名
b) 正味質量
c) 製造業者名
d) 製造工場名
e) 製造年月
f)
供給業者名
g) 出荷年月日
11
報告
製造業者又は供給業者は,購入者から要求があった場合は,試験成績表を提出しなければならない。試
験成績表の標準様式は,表2による。塩化物イオンの上限を緩和している場合は,備考欄に“塩化物イオ
ンの規定値を0.30 %以下に緩和”と記載する。
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表2−試験成績表の標準様式
シリカフューム試験成績表 (JIS A 6207)
規格名称又は商品名
年 月度 製造業者名又は供給業者名
項 目
JIS A 6207による
規定値
試験値
二酸化けい素
%
85.0以上
酸化マグネシウム
%
5.0以下
三酸化硫黄
%
3.0以下
遊離酸化カルシウム
%
1.0以下
遊離けい素
%
0.4以下
塩化物イオンa)
%
0.10以下
強熱減量
%
4.0以下
湿分b)
%
3.0以下
比表面積(BET法)
m2/g
15以上
密度c)
g/cm3
−
活性度指数試験
活性度指数
材齢 7日
%
95以上
材齢28日
%
105以上
基準モルタルの空気量d)
%
−
試験モルタルの空気量d)
%
−
備 考a)
項目
表示値
JIS A 6207による
規定値
試験値
シリカフュームスラリーの固形分e)
%
表示値×0.96
〜
表示値×1.04
注a) 塩化物イオンの上限を緩和する場合は,備考欄に“塩化物イオンの規定値を0.30 %
以下に緩和”と記載する。
b) 粉体シリカフューム及び粒体シリカフュームに適用する。
c) 測定値を報告する。
d) 測定値を報告する。
なお,モルタルの空気量はJIS A 6207のC.5.1に規定される2.0 %以下である。
e) シリカフュームスラリーに適用する。
連絡先 社名・担当部門
所 在 地
電 話 番 号
用紙の大きさは,日本工業規格のA列4番(210 mm×297 mm)とする。
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附属書A
(規定)
遊離酸化カルシウムの定量方法
A.1 一般
この附属書は,コンクリート用シリカフューム中の遊離酸化カルシウムの定量方法について規定する。
なお,この定量方法で,遊離酸化カルシウムとともに水酸化カルシウムも定量できる。
A.2 試験用器具
A.2.1 ガラス器具
ガラス器具は,JIS R 3503及びJIS R 3505に規定するものとする。
A.2.2 白金るつぼ
白金るつぼは,JIS H 6201に規定するものとする。
A.2.3 電気炉
電気炉は,900〜1 000 ℃で調整できるものとする。
A.3 試薬
A.3.1 試薬の純度
試薬は,次に規定するものとする。ただし,この分析では水が共存してはならないので,試薬はデシケ
ーター中に保存し,取扱いは吸湿しないように十分注意しなければならない。
a) エタノール(99.5)
JIS K 8101 特級
b) エチレングリコール
JIS K 8105 特級
c) 酢酸アンモニウム
JIS K 8359 特級
d) 炭酸カルシウム
JIS K 8617 特級
e) フェノールフタレイン
JIS K 8799 特級
A.3.2 試薬の調製
A.3.2.1 フェノールフタレイン指示薬
フェノールフタレイン1 gをエタノール100 mLに溶かす。
A.3.2.2 酢酸アンモニウム標準液
酢酸アンモニウム標準液は,次による。
a) 標準液の作り方 酢酸アンモニウム16 gをはかり瓶を用いて手早く量り採り,これをエタノール1 000
mLに溶かす。
なお,酢酸アンモニウムは,あらかじめ時計皿にとり,薄層として時々かき混ぜながら硫酸デシケ
ーター中で2週間以上乾燥し,水分を除いた後使用する。この標準液の保存及び取扱いには,できる
だけ空気中の水分又は炭酸ガスにさらされないように厳重に注意しなければならない。
b) 標準液の標定 標準液の標定は,次による。
1) 少量の炭酸カルシウムをJIS H 6201に規定する白金るつぼに入れ,900〜1 000 ℃に調整した電気炉
中で恒量となるまで加熱して酸化カルシウムとする。
2) 1) で作製した酸化カルシウムを硫酸デシケーター中で冷却した後,めのう乳鉢で手早く押し潰し,
9
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その0.02〜0.03 gを0.1 mgまで正しく量り採る。この際,酸化カルシウムは,非常に吸湿性が強い
ため,はかり瓶を用いて手早く量り採らなければならない。
3) 2) で量り採った試料をよく乾いた容器(100 mL)に入れ,80±5 ℃に加熱したエチレングリコール
40 mL及びフェノールフタレイン指示薬を数滴加える。また,溶媒に酸化カルシウムを分散させる
ためマグネチックスターラなどでかくはんする。
4) 3) の操作後,溶媒の温度を80±5 ℃に維持して,5分間溶出させる。溶出中の溶媒の温度を80±5 ℃
に保つため,オイルバスなどで加熱する。このとき,溶媒の蒸発を防ぐために,時計皿などで蓋を
してもよい。
5) 酢酸アンモニウム標準液で,4) で溶出した溶液が無色となるまで滴定する。その後,再び溶液を加
熱し,色が現れたら再度滴定し,色が現れなくなったときを終点とする。
なお,酸化カルシウムの粒度などによって溶出速度が異なるため,溶出操作を続け,色が現れな
くなったときを終点とする。また,ビュレットは刻度1/50 mL程度で,1 mLが約50滴になるよう
なものが適切である。
6) 測定値から,式(A.1)によって酢酸アンモニウム標準液の酸化カルシウム相当量を算出し,四捨五入
によって小数点以下5桁に丸める。
s
s
v
m
E=
················································································ (A.1)
ここに,
E: 酢酸アンモニウム標準液の酸化カルシウム相当量(g/mL)
ms: 酢酸アンモニウム標準液の標定に使用した酸化カルシウ
ムの質量(g)
vs: 酢酸アンモニウム標準液の標定に使用した酢酸アンモニ
ウム標準液使用量(mL)
A.4 操作
操作は,次による。
a) 6.2で調製した試料から約1 gを0.1 mgまで正しく量り採ったものを試験試料とし,よく乾いた容器
(100 mL)に入れる。試験試料は,指頭に感じない程度の細かさにめのう乳鉢で手早くすり潰す。こ
のとき,必要以上に空気にさらされるのを避けなければならない。
b) a) で容器に入れた試験試料に,80±5 ℃に加熱したエチレングリコール40 mL及びフェノールフタレ
イン指示薬を数滴加える。また,予熱した溶媒に試験試料を入れてもよいが,容器の壁面に付着させ
ないように注意する。
c) マグネチックスターラなどでかくはんしながら遊離酸化カルシウムを5分間溶出させる。溶出中は溶
媒の温度を80±5 ℃に保つため,オイルバスなどで加熱する。このとき,溶媒の蒸発を防ぐために,
時計皿などで蓋をしてもよい。
d) 溶出後,酢酸アンモニウム標準液で滴定し,赤色が消失したときを終点とする。滴定の終点が不明瞭
な場合は,エタノールで希釈することによって,終点の確認が容易になる。
A.5 計算
遊離酸化カルシウムの含有量は,式(A.2)によって算出し,四捨五入によって小数点以下1桁に丸める。
なお,試験は同時に採取した試験試料について2回行い,その平均値をとる。
10
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100
.
t
t
×
×
=mE
v
CaO
f
································································ (A.2)
ここに,
f.CaO: 遊離酸化カルシウムの含有量(%)
E: 酢酸アンモニウム標準液の酸化カルシウム相当量(g/mL)
mt: 試験試料の質量(g)
vt: 試験試料の滴定に使用した酢酸アンモニウム標準液使用
量(mL)
A.6 許容差
平均値との差は,0.1 %以下でなければならない。
11
A 6207:2016
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附属書B
(規定)
コンクリート用シリカフュームの湿分及び強熱減量の定量方法
B.1
一般
この附属書は,コンクリート用シリカフュームの湿分及び強熱減量の定量方法について規定する。
B.2
試験用器具
B.2.1 平形はかり瓶
平形はかり瓶は,JIS R 3503に規定する呼び寸法50 mm×30 mmのものとする。
B.2.2 磁器るつぼ
磁器るつぼは,JIS R 1301に規定する容量15 mLのものとする。
B.2.3 乾燥器
乾燥器は,排気孔のついた電気恒温器で温度105〜110 ℃に保持できるものとする。
B.2.4 電気炉
電気炉は,温度950±25 ℃に保持できるものとする。
B.2.5 デシケーター
デシケーターは,JIS R 3503に規定するものとする。
B.3
定量方法
B.3.1 湿分の定量方法
a) 試料約2 gを平形はかり瓶に0.1 mgまで正しく量り採って薄く広げ,この質量を(m1)とする。平形
はかり瓶の蓋を取って,105〜110 ℃に調整した乾燥器で3時間乾燥し,蓋をしてデシケーター中で放
冷した後,質量を量る。
b) さらに,恒量になるまで1時間ずつ乾燥を繰り返す。ただし,恒量とは乾燥前後の質量差が0.5 mg以
下になったときを示す。
c) 乾燥後の試料の質量(m2)を量る。
d) 同時に採取した試料について,測定を2回行う。
B.3.2 強熱減量の定量方法
a) B.3.1 c) において105〜110 ℃で恒量となった乾燥済み試料の全量(約2 g)を磁器るつぼに移して,
0.1 mgまで正しく量り採り,この質量を(m3)とする。磁器るつぼに少し隙間をあけて蓋をして,950
±25 ℃に調整した電気炉で15分間加熱し,デシケーター中で放冷した後,質量を量る。
b) さらに,恒量になるまで約15分間ずつ強熱を繰り返す。ただし,恒量とは強熱前後の質量差が0.5 mg
以下になったときを示す。
c) 強熱後の試料の質量(m4)を量る。
d) 同時に採取した試料について,測定を2回行う。
B.4
計算
コンクリート用シリカフュームの湿分は,式(B.1)によって算出し,その数値を平均して,四捨五入によ
12
A 6207:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
って小数点以下1桁に丸める。
100
1
2
1
×
−
=
m
m
m
A
···································································· (B.1)
ここに,
A: 湿分(%)
m1: 試料の質量(g)
m2: 乾燥後の試料の質量(g)
コンクリート用シリカフュームの強熱減量は,式(B.2)によって算出し,その数値を平均して,四捨五入
によって小数点以下1桁に丸める。
100
.
3
4
3
×
−
=
m
m
m
loss
ig
······························································ (B.2)
ここに,
ig.loss: 強熱減量(%)
m3: B.3.2 a) において105〜110 ℃で恒量となった乾燥済み
試料の質量(g)
m4: 強熱後の試料の質量(g)
B.5
許容差
平均値との差は,0.1 %以下でなければならない。
13
A 6207:2016
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附属書C
(規定)
コンクリート用シリカフュームのモルタルによる
活性度指数の試験方法
C.1 一般
この附属書は,コンクリート用シリカフュームのモルタルによる活性度指数の試験方法について規定す
る。
C.2 試験用器具
C.2.1 機械練り用練混ぜ機
機械練り用練混ぜ機は,JIS R 5201に規定するものとする。
C.2.2 フローコーン及びフロー用平板
フローコーンは,JIS R 5201に規定するものとする。フロー用平板は,十分な水密性及び剛性をもつ鋼
製のものとし,表面が平滑なものとする。また,フロー用平板は,磨き板ガラスを用いてもよい。
C.2.3 型枠
型枠は,JIS A 1132の4.2(器具)に規定するものを用い,直径50 mm,高さ100 mmの円柱とする。
C.2.4 突き棒
突き棒は,JIS A 1171の6.3(スランプ試験)に規定する直径9 mm,長さ約30 cmの鋼製で,先端が半
球状のものとする。
C.3 試験に用いる材料
C.3.1 セメント
セメントは,任意に選んだ三つの異なる生産者の,JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメントを,
等量ずつ混合して用いる。
C.3.2 標準砂
標準砂は,JIS R 5201の11.3(標準砂)に規定する標準砂を用いる。
C.3.3 化学混和剤
化学混和剤は,JIS A 6204の高性能AE減水剤又は高性能減水剤に適合するものとする。また,必要に
応じて空気量調整剤を用いる。
C.3.4 水
水は,精製水又は上水道水とする。
C.3.5 試験試料
試験試料は,6.2で調製したものとする。
C.4 温度及び湿度
供試体を成形する試験室の温度及び湿度,型枠に詰めた供試体を貯蔵する湿気箱内の温度及び湿度並び
に水槽の水温は,JIS R 5201の11.4(温度及び湿度)による。
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A 6207:2016
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C.5 試験方法
C.5.1 モルタルの配合
モルタルの配合は,質量比でセメント1,標準砂1.4,水と化学混和剤との合量0.3とする。フロー並び
に空気量の測定及び圧縮強度試験のために1回に練り混ぜる材料の量は,表C.1とする。
なお,化学混和剤の量は,練混ぜ後のフローが260±10 mmに,空気量が2.0 %以下になるように定める。
表C.1−モルタルの配合
単位 g
モルタルの種類
セメント
試験試料
標準砂
水と化学混和剤との合量
基準モルタル
964±2
0
1 350±5
289±1
試験モルタル
868±1.8
96±0.2
注記 配合は,1回の練混ぜ量を示したもので,フロー及び空気量の試料並びに圧縮強度試験の供試体3個作製分に
相当する。
C.5.2 練混ぜ
モルタルの練混ぜは,JIS R 5201の9.2.3(機械練り用練混ぜ機)の機械練りによる方法の装置・器具を
用いて,次のように行う。ただし,試験モルタルの場合には,表C.1に示す量のセメントと試験試料とを
あらかじめ十分混合したものを入れる。
なお,セメント,試験試料,標準砂及び水は,室温と等しくなるようにあらかじめ試験室内に準備して
おく。
練り鉢に規定量のセメント(試験試料)と標準砂を入れ,JIS R 5201の9.2.3 a) に示す低速(自転速度:
毎分140±5回転,公転速度:毎分62±5回転)で30秒間練り混ぜる。練混ぜ機を停止し,水と化学混和
剤とを混ぜたものを加えて低速で2分間練り混ぜた後,20秒間休止する。その間に,さじで練り鉢及びパ
ドルに付着したモルタルをかき落とすとともに,練り鉢の底のモルタルをかきあげるようにして2〜3回か
き混ぜる。
その後再び低速で,2分40秒間練り混ぜる。練混ぜが終わったら練り鉢を練混ぜ機から取り外し,さじ
で10回かき混ぜる。
C.5.3 フローの測定
試料とするモルタルを,JIS R 5201の12.2(フロー値の測定)によって速やかにフローコーンに詰め,
フローコーンを上方に取り去ってから,広がりが静止するのを待ってフローを測定する。フローはモルタ
ルが広がった後の径を最大と認める方向,及びこれに直角な方向で測定し,その平均値を整数で表す。フ
ローの測定及び次項の空気量の測定は,それぞれ同バッチで1回行う。
C.5.4 空気量の測定
空気量は,JIS A 1116又はJIS A 1128のいずれかの方法を用いて測定する。ただし,空気量測定器の容
器の容積は,500 mL以上とする。
C.5.5 圧縮強度試験
供試体は,直径50 mm,高さ100 mmの円柱供試体とする。成形は,ほぼ等しい2層に分けて型枠に詰
め,突き棒で5回突くものとする。突き棒によってできた穴が残る場合には,突き終わった後,型枠側面
を木づちで軽くたたいて,突き穴がなくなるようにする。供試体の上下面の仕上げ方法は,研磨とする。
装置,測定及び計算は,JIS A 1108による。各材齢の基準モルタル及び試験モルタルの圧縮強度は,3個
の供試体の平均値とする。
15
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試験時の材齢は,7日及び28日とする。試験に先立ち,供試体及び装置の加圧面を清掃する。
C.6 計算
各材齢の活性度指数は,式(C.1)によって算出し,その数値は,四捨五入によって整数に丸める。
100
2
1
s
×
=CC
A
········································································· (C.1)
ここに,
As: 活性度指数(%)
C1: 各材齢における試験モルタルの圧縮強度(N/mm2)
C2: 各材齢における基準モルタルの圧縮強度(N/mm2)
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A 6207:2016
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附属書D
(規定)
全量フラスコを用いたコンクリート用シリカフュームの密度試験方法
D.1 一般
この附属書は,コンクリートの配合設計に用いるコンクリート用シリカフュームの密度を求める試験方
法について規定する。
D.2 試験用器具
全量フラスコは,JIS R 3505に規定するクラスAのものとする。
D.3 試験方法
試験方法は,次による。
a) 容量500 mLの全量フラスコの質量(Wf)を10 mgの精度で量る。6.2で調製した試料から約30 g量り
採った試験試料を全量フラスコに投入し,全量フラスコ及び試験試料の質量(Wa)を10 mgの精度で
量る。
b) 全量フラスコにイオン交換水を半分まで加え,試験試料がイオン交換水になじむように全量フラスコ
を振り,標線までイオン交換水を満たす。空気泡は,全量フラスコを15分間隔で振るか,又は真空ポ
ンプを用いて除去する。全ての空気泡が除去された後に,全量フラスコ及び試験試料が一定温度に達
するまで,20±1 ℃の定温水槽の中に漬ける。
c) 20±1 ℃のイオン交換水を標線まで満たした後,全量フラスコの外部を乾くまで拭いて,全量フラス
コ,試験試料及び標線までのイオン交換水の質量(Ws)の全量を10 mgの精度で量る。
d) 全量フラスコから試験試料を取り出してきれいに洗浄し,20±1 ℃のイオン交換水を標線まで満たし,
その質量(Wt)を10 mgの精度で量る。
e) 同時に採取した試験試料について,測定を2回行う。
D.4 計算
シリカフュームの全量フラスコを用いた密度(Dsf)は,式(D.1)によって算出し,その数値を平均して,
四捨五入によって有効数字3桁まで丸める。
(
)
w
a
s
f
a
sf
500
D
W
W
W
W
D
−
−
−
=
·························································· (D.1)
ここに,
Dsf: シリカフュームの全量フラスコを用いた密度(g/cm3)
Ws: 全量フラスコ,試験試料及び標線までのイオン交換水の質
量(g)
Wf: 全量フラスコの質量(g)
Wa: 全量フラスコ及び試験試料の質量(g)
Dw: (Wt−Wf)/500,イオン交換水の密度(g/cm3)
Wt:全量フラスコ及び標線までのイオン交換水の質量(g)
D.5 許容差
平均値との差は,0.01 g/cm3以下でなければならない。
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A 6207:2016
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附属書E
(規定)
シリカフュームスラリーの固形分の定量方法
E.1
一般
この附属書は,シリカフュームスラリーの固形分の定量方法について規定する。
E.2
試験用器具
E.2.1 ガラス器具
平形はかり瓶は,JIS R 3503に規定する呼び寸法50 mm×30 mmのものとする。
デシケーターは,JIS R 3503に規定するものとする。
E.2.2 乾燥器
乾燥器は,排気孔のついた電気恒温器で温度105〜110 ℃に保持できるものとする。
E.3
定量方法
定量方法は,次による。
a) 箇条6の試料を十分にかくはんした後,約5 gを平形はかり瓶に0.1 mgまで正しく量り採ったものを
試験試料とし,その質量を(m1)とする。平形はかり瓶の蓋を取って,105〜110 ℃に調整した乾燥器
で3時間乾燥し,蓋をしてデシケーター中で放冷した後,質量を量る。
b) さらに,恒量になるまで1時間ずつ乾燥を繰り返す。ただし,恒量とは乾燥前後の質量差が0.5 mg以
下になったときを示す。
c) 恒量になったときの質量(m2)を量る。
E.4
計算
シリカフュームスラリーの固形分は,式(E.1)によって算出し,その数値を平均して,四捨五入によって
小数点以下1桁に丸める。
100
1
2×
=m
m
A
·········································································· (E.1)
ここに,
A: シリカフュームスラリーの固形分(%)
m1: 試験試料の質量(g)
m2: 恒量になったときの質量(g)
試験は,同時に採取した試験試料について2回行い,その平均値をとる。
E.5
許容差
平均値との差は,0.1 %以下でなければならない。
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A 6207:2016
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附属書F
(規定)
コンクリート用シリカフュームの蛍光X線分析方法
F.1
一般
この附属書は,蛍光X線分析によるコンクリート用シリカフュームの分析方法について規定する。蛍光
X線分析による定量方法には,ガラスビード法を用いる。
F.2
一般事項
化学分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050及びJIS K 0119による。
F.3
試料
6.1によって採取し,6.2によって調製した試料を105〜110 ℃に調整した乾燥機で3時間乾燥し,デシ
ケーターで放冷したものを使用する。
なお,試料中に粗い粒子が存在している場合は,これをすり潰して使用する。
F.4
分析項目及び定量範囲
F.4.1
分析項目
分析項目は,次による。
a) 二酸化けい素(SiO2)
b) 酸化マグネシウム(MgO)
c) 三酸化硫黄(SO3)
F.4.2
定量範囲
定量範囲の例を表F.1に示す。
表F.1−分析項目の定量範囲の例
化学成分
定量範囲(%)
二酸化けい素
(SiO2)
75〜99
酸化マグネシウム
(MgO)
6.0以下
三酸化硫黄
(SO3)
4.0以下
F.5
装置及び器具
F.5.1
蛍光X線分析装置
蛍光X線分析装置は,JIS K 0119によるもので,表F.1に示す分析項目について十分な感度で測定でき
るものを使用する。
F.5.2
ガラスビード調製装置
ガラスビード調製装置は,加熱方法として電気炉,ガスバーナ,高周波誘導炉などをもつものとする1)。
いずれの加熱方法も一定温度を保持できるものとする。また,一定温度を保持できる炉を備えた装置で均
質なガラスビードが調製できるものであれば,自動ガラスビード調製装置1) を用いてもよい。
注1) 成分偏析及び気泡ができるだけ少ないガラスビードを得るため,溶融物の振り混ぜが容易にで
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きるような装置であるとよい。
F.5.3
ガラスビード調製容器
ガラスビード調製容器は,次の2種類のうちいずれかを用いる。
a) 溶融鋳込み兼用型 加熱溶融操作によって変質変形しにくい材質で,かつ,溶融が完了した後,ガラ
スビードが容易に剝離する容器2) 3) を用いる。
b) 溶融鋳込み分離型 溶融用の容器2) は,溶融物を容易に鋳込み用容器3) に流し込めるものを使用する。
鋳込み用の容器は溶融物の鋳込みの後,ガラスビードが容易に剝離する容器2) 3) を用いる。
注2) 容器の材質は,例えば,白金−金(5〜20 %),白金−金(5〜20 %)−ロジウム(3〜5 %)
などが適当である。
3) 容器の大きさは,溶融物量,加熱方法,X線照射面積などによって適切な大きさのものを選
ぶ。
F.6
試薬及び標準物質
F.6.1
試薬
試薬は,特級又は特級相当品を用いる。
なお,純度は水分を除外した状態で99.95 %以上でなければならない。二酸化けい素及び酸化マグネシ
ウムは1 200±50 ℃で30分間強熱し,デシケーター中で放冷後用いる。三酸化硫黄に対する試薬について
は,硫酸カルシウム(無水)を使用し,使用前に105〜110 ℃に調整した乾燥機で2時間乾燥し,デシケ
ーターで放冷後用いる。上記以外の試薬を使用する場合,その試薬の調製条件はJIS R 5204の6.1(試薬)
による。
F.6.2
認証標準物質
認証標準物質は,JIS Q 0030の標準物質(RM)の定義を満足するものを用いる4)。
注4) この附属書で使用する認証標準物質として,例えばBCS(British Chemical Standard)-313高純
度シリカ,NIST(National Institute of Standards and Technology)-2696シリカフュームなどがある。
F.6.3
工業用標準物質
工業用標準物質は,日本工業規格で規定されている化学分析方法及びこれに準ずる化学分析方法によっ
て正確に分析され,含有量が確定された物質を用いる。
F.7
融剤
ガラスビードの調製には,次に示す融剤を使用する。ただし,検量線の作成から試料の分析を通して同
じ融剤を用いなければならない。
a) 融解剤 融解剤5) には高純度のものを用いる。ロット番号が変わると空試験値が変動し,定量値に影
響を与えることがあるので注意する。
b) 流動化向上剤 溶融物の流動性を向上させるもので,ふっ化リチウムなどを用いる。
c) 剝離促進剤 容器からのガラスビードの剝離性をよくするもので,臭化リチウム,よう化リチウムな
どを用いる。
d) 酸化剤 低次の硫黄酸化物の酸化を促進し,揮発を抑制するもので,硝酸アンモニウムなどを用いる。
注5) 融解剤には四ほう酸リチウム(無水:Li2B4O7)とメタほう酸リチウム(無水:LiBO2)との
混合物の使用を推奨する。
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F.8
ガラスビードの調製
F.8.1
要旨
試料の溶融は,全てがガラス状になり,ガラスビードが均質になる温度及び時間にて行い,F.11の分析
用ビード,F.10.2の検量線用ビード,F.10.3のドリフト補正用ビード及びF.10.4の検定用ビードの調製は,
F.7の融剤を含め同一の調製条件で行わなければならない。ガラスビードの調製条件を変更する場合には,
これらのガラスビードを新たに調製する。
F.8.2
ガラスビードの調製方法
a) 試料等の量り採り 試料及び融剤の質量は,鋳込み用容器の大きさ・形状によって決める。試料に対
する融剤の混合比6) は,全ての分析項目について十分な感度が得られるように決めなければならない。
また,試料及び融剤の量は,検量線の作成から試料の分析を通して同じ量を用いなければならない。
試料の量り採り量は,式(F.1)によって補正し,正確に量り採る。
−
=
100
1
2
1
L
m
m
········································································ (F.1)
ここに,
m1: 試料の量り採り量(g)
m2: ガラスビードの調製に必要な試料値(g)
L: 7.7による強熱減量(%)
b) 溶融操作 量り採った試料及び融剤は,溶融する前に十分に混合する。
なお,剝離促進剤を溶液で用いる場合は,試料及び融剤を混合してガラスビード調製容器に移した
後添加し,水分を蒸発させてから溶融を行う。規定の溶融温度7) において一定時間溶融を行う。溶融
時においては明らかな試料の飛散又は成分の揮発があってはならない。ガラスビードは,測定面にき
ず及び気泡がないように,均質となるように調製する。
c) 成形及び冷却 溶融鋳込み兼用型のガラスビード調製容器を用いる場合は,溶融終了後ガラスビード
調製容器を水平な位置に置いて放冷する。溶融鋳込み分離型のガラスビード調製容器を用いる場合は,
炉,バーナーなどであらかじめ加熱しておいた成形型に溶融物を流し込み,直ちに水平な場所に置い
て放冷する。十分に放冷した後,ガラスビードを取り出す。
注6) 試料に対する融剤の混合比は,質量として試料の5〜10倍程度が望ましい。
7) 溶融温度は1 050 ℃とするのがよい。溶融温度が1 100 ℃を超えると三酸化硫黄の揮発が無視
できなくなる。
F.9
測定条件
装置の種類,分析項目及びその含有量に応じて,適切な感度をもつ測定条件を設定する。表F.2にスペ
クトル線の例を示す。
表F.2−スペクトル線の例
化学成分
スペクトル線
波長(nm)
二酸化けい素
(SiO2) Si Kα1
0.712 5
酸化マグネシウム
(MgO) Mg Kα1
0.989 0
三酸化硫黄
(SO3) S Kα1
0.537 2
21
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F.10
検量線の作成
F.10.1
検量線用試料
検量線の作成に使用する試料は,次に示す偏りのない4種類以上のシリカフューム試料若しくは試薬合
成試料,又はその両方を使用する。
a) シリカフューム試料 各測定成分の含有量が表F.1に示す範囲内である,二酸化けい素は7.1のb) 又
はc),酸化マグネシウムは7.2のb) 又はc),及び三酸化硫黄は7.3のb) 又はc) の方法によって成分
含有量を決定したシリカフューム。
b) 試薬合成試料を使用する場合 F.6に規定する試薬及び標準物質,又は試薬だけを用いて,各測定成
分の含有量が表F.1の範囲に示した範囲内となるように混合した試料。
F.10.2
検量線用ビードの調製
検量線の作成に用いるガラスビードを検量線用ビードとする。検量線用ビードは,検量線用試料を用い
て調製する。各成分の含有量は,表F.1の範囲に示した範囲内で検量線用ビードを調製する。ガラスビー
ドは,F.8.2の操作によって調製する。
F.10.3
ドリフト補正用ビードの調製
蛍光X線強度の経時的なドリフトを補正し,測定したX線強度を検量線作成時の状態に変換するために
用いるガラスビードをドリフト補正用ビードとする。検量線における最大値側を第1ドリフト補正用ビー
ド,最小値側を第2ドリフト補正用ビードとする。
F.10.4
検定用ビードの調製
検量線の検定に用いるガラスビードを検定用ビードとする。検定用ビードは,認証標準物質を用いて調
製する。
なお,認証標準物質は,検量線作成に用いたものと同じものを用いてはならない。また,各分析項目に
おいて,検定用ビードに用いる認証標準物質の認証値は検量線の範囲内になければならない。
F.10.5
検量線の作成手順
各分析項目について検量線用ビードの蛍光X線強度を測定し,最小二乗法によって1次回帰式として検
量線を作成する。必要に応じて重なり補正,共存成分効果補正を行う。
なお,ドリフト補正用ビードの蛍光X線強度も同時に測定しておく。
F.10.6
検量線の検定
認証標準物質を用いて調製した検定用ビードの定量値によって各分析項目の検量線を検定する。定量値
と認証標準物質の認証値との差は,二酸化けい素(SiO2)は1.5 %,酸化マグネシウム(MgO)及び三酸
化硫黄(SO3)は0.30 %以内とする。もし,許容差を満たさなかった場合は再測定を行うか,検量線を再
作成する。
なお,認証標準物質の認証値が7.7の強熱減量の試験と同一条件の強熱後の試料を基準として付与され
ていない場合は,認証値を強熱後の試料を基準とした値に換算し,認証値とする。また,認証標準物質に
ついてSO3の認証値がない場合,7.3 b) による測定値を認証値としてもよい。
F.11
試料の定量
F.11.1
ドリフト補正
検量線の作成時から時間を経て試料を分析する場合,検定用ビードを用いて検量線を再度,検定する。
分析項目についてF.10.6に規定する許容差を満たさなかった場合,ドリフト補正を実施する。ドリフト補
正は,次のように行う。式(F.2)及び式(F.3)によってドリフト補正係数を算出し,式(F.4)によって標準化X
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A 6207:2016
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
線強度を算出する。
(
)
(
)
2
S
1S
2
S
1S
N
N
N
N
′
−
′
−
=
α
······································································· (F.2)
α
β
×
′
−
=
2
S
2
S
N
N
····································································· (F.3)
ここに,
α: ドリフト補正係数(傾き係数)
β: ドリフト補正係数(切片係数)
NS1: 第1ドリフト補正用ビードの基準X線強度
NS2: 第2ドリフト補正用ビードの基準X線強度
N'S1: 第1ドリフト補正用ビードのX線強度
N'S2: 第2ドリフト補正用ビードのX線強度
β
α
+′
×
=
I
I
··········································································· (F.4)
ここに,
I: 分析用ビード又は検定用ビードの標準化X線強度
I': 分析用ビード又は検定用ビードのX線強度
α: ドリフト補正係数(傾き係数)
β: ドリフト補正係数(切片係数)
標準化X線強度を用いても許容差を満たさなかった場合は,検定用ビードを再調製して再測定を行い同
様に検定する。それでも許容差を満たさなかった場合は,新規検量線の作成をやり直す。
なお,ドリフト補正を行った上で許容差を満たした場合は,試料の分析においてドリフト補正後のX線
強度を用いて定量を行う。
F.11.2
試料の分析
試料の分析は,検定用ビードと同じ条件で調製した分析用ビードを用いて,検量線を作成したときと同
じ条件で測定したX線強度を測定する。
なお,F.11.1においてドリフト補正を行った場合は,標準化X線強度を算出する。X線強度又は標準化
X線強度を検量線に代入して定量値を算出する。含有量は,式(F.5)によって算出し,四捨五入によって小
数点以下2桁で示す。
−
×
=
100
100
2
1
L
W
W
·································································· (F.5)
ここに,
W1: 含有量(%)
W2: 定量値(%)
L: 7.7による強熱減量(%)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書G
(参考)
技術上重要な改正に関する新旧対照表
現行規格(JIS A 6207:2016)
旧規格(JIS A 6207:2011)
改正理由
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
及び題名
内容
5.1 粉体シリカ
フューム及び粒
体シリカフュー
ム
表1の注a)
シリカフュームの品質について,購入
者の承認を得た場合には,塩化物イオ
ンの品質を0.30 %以下とすることが
できるように注a) を追加した。
5.1 粉体シリカ
フューム及び粒
体シリカフュー
ムの品質
−
コンクリート用シリカフュームの利用拡大を促
進する観点から,購入者の承認を得た場合には,
塩化物イオンの規定値の上限を緩和できること
とした。
7.1 二酸化けい
素a),7.2 酸化マ
グネシウムa),
7.3 三酸化硫黄
a)
二酸化けい素,酸化マグネシウム及び
三酸化硫黄の定量方法として,附属書
F(コンクリート用シリカフュームの
蛍光X線分析方法)を新たに規定し,
導入した。
7.1 二酸化けい
素,7.2 酸化マグ
ネシウム,7.3 三
酸化硫黄
二酸化けい素:JIS R 5202の附属書A
による。
酸化マグネシウム:JIS R 5202の附属
書Aによる。
三酸化硫黄:JIS R 5202の箇条12に
よる。
シリカフュームの品質試験の迅速化を図るた
め,蛍光X線による化学分析方法を導入した。
7.1 二酸化けい
素b),7.2 酸化マ
グネシウムb),
7.3 三酸化硫黄
b)
二酸化けい素,酸化マグネシウム及び
三酸化硫黄の定量方法として,JIS M
8853を試験方法に追加した。
7.1 二酸化けい
素,7.2 酸化マグ
ネシウム,7.3 三
酸化硫黄
二酸化けい素:JIS R 5202の附属書A
による。
酸化マグネシウム:JIS R 5202の附属
書Aによる。
三酸化硫黄:JIS R 5202の箇条12に
よる。
旧規格の湿式分析方法における分析操作上の問
題点等を考慮し,品質試験の合理化を図るため,
JIS M 8853を試験方法に追加した。
11 報告
表2の注a)
シリカフューム試験成績表について,
塩化物イオンの上限を緩和する場合
は,備考欄に“塩化物イオンの規定値
を0.30 %以下に緩和”と記載するよう
注a) を追加した。
11 報告
−
塩化物イオン規定の緩和品であることを明記す
るため。
附属書F
附属書F(コンクリート用シリカフュ
ームの蛍光X線分析方法)を新たに
規定した。
−
−
シリカフュームの品質試験の迅速化を図るた
め,蛍光X線による化学分析方法を導入した。
2
A
6
2
0
7
:
2
0
1
6