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A 6203 : 2000

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人建材試験センター  (JTCCM)/財団

法人日本規格協会  (JSA)  から工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業

標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって JIS A 6203 : 1996

は改正され,この規格に置き換えられる。


日本工業規格

JIS

 A 6203

: 2000

セメント混和用

ポリマーディスパージョン及び

再乳化形粉末樹脂

Polymer dispersions and redispersible polymer powders for cement

modifiers

1.  適用範囲  この規格は,ポリマーセメントモルタル,ポリマーセメントコンクリートなどに用いるセ

メント混和用ポリマーとしてのセメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂について

規定する。

2.  引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用することによって,この規格の規定の一部を構成する。

これらの引用規格は,その最新版を適用する。

JIS A 1171  ポリマーセメントモルタルの試験方法

JIS K 0067  化学製品の減量及び残分試験方法

JIS K 5101  顔料試験方法

JIS K 6387-1  ゴムラテックス−第 1 部:サンプリング

JIS K 6387-2  ゴムラテックス−第 2 部:全固形分の求め方

JIS K 6726  ポリビニルアルコール試験方法

JIS K 6828  合成樹脂エマルジョンの試験方法

JIS K 6833  接着剤の一般試験方法

JIS R 5201  セメントの物理試験方法

JIS R 5210  ポルトランドセメント

JIS Z 8401  数値の丸め方

JIS Z 8802  pH 測定方法

JIS Z 8803  液体の粘度−測定方法

JIS Z 8804  液体比重測定方法

JIS Z 9001  抜取検査通則

3.  定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 
a)  セメント混和用ポリマー  セメントモルタル及びコンクリートの改質を目的に,それらに混和して用

いるセメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂の総称。

b)  ポリマーセメントモルタル  結合材にセメントとセメント混和用ポリマーを用いたモルタル。



A 6203 : 2000

c)  ポリマーセメントコンクリート  結合材にセメントとセメント混和用ポリマーを用いたコンクリート。 
d)  ポリマーセメント比  ポリマーセメントモルタル及びコンクリートにおけるセメントに対するセメン

ト混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂の全固形分の質量比。

e)  全固形分  セメント混和用ポリマーディスパージョンにおいては不揮発分,セメント混和用再乳化形

粉末樹脂においては揮発分以外の成分。

4.  種類  セメント混和用ポリマーの種類は,その形態及び主な化学組成によって,次のように区分する。 
a)  セメント混和用ポリマーディスパージョン  セメント混和用ポリマーディスパージョン(以下,ディ

スパージョンという。

)は,水の中にポリマーの微粒子が分散している系。次の 2 種類に区分する。

1)  セメント混和用ゴムラテックス  セメント混和用ゴムラテックスは,合成ゴム系,天然ゴム系,ゴ

ムアスファルト系などのゴムラテックスに安定剤,消泡剤などを加えて,よく分散させ均質にした

もの。以下,ゴムラテックスという。

2)  セメント混和用樹脂エマルション  セメント混和用樹脂エマルションは,エチレン酢酸ビニル系,

アクリル酸エステル系,樹脂アスファルト系などの樹脂エマルションに安定剤,消泡剤などを加え

て,よく分散させ均質にしたもの。以下,樹脂エマルションという。

b)  セメント混和用再乳化形粉末樹脂  セメント混和用再乳化形粉末樹脂(以下,粉末樹脂という。)は,

ゴムラテックス及び樹脂エマルションに安定剤などを加えたものを乾燥して得られる,再乳化可能な

粉末状樹脂。

5.  品質  ディスパージョン及び粉末樹脂の品質は,表 による。

表 1  品質

品質

項目

ディスパージョン

粉末樹脂

適用試験箇条

外観

粗粒子,異物,凝固物などがあってはならない。

7.1

又は

8.1

不揮発分 35.0%以上

7.5

揮発分

− 5.0%以下

8.2

曲げ強さ 8.0N/mm

2

以上

圧縮強さ 24.0N/mm

2

以上

9.5

接着強さ 1.0N/mm

2

以上

9.6

吸水率 10.0%以下

9.7

透水量 15g 以下

9.8

長さ変化率

0∼0.150%

9.9

6.  試験の一般条件 
6.1

数値の丸め方  数値の丸め方は,JIS Z 8401 による。

6.2

試験室の状態  試験室の温度は,20±2℃,相対湿度は,60%以上とする。

6.3

試料採取方法

a)  ディスパージョン試料の採取方法  ディスパージョン試料の採取方法は,次による。

1)  容器の中身をかき混ぜるか,振り混ぜるなどして,内容物を十分に均一な状態にしてから試料を採

取する。

2)  ドラム缶,貯蔵タンク及びタンク車から試料を採取する場合は,JIS K 6387-1 の 6.(サンプリング)


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による。

b)  粉末樹脂試料の採取方法  小型容器(紙袋,段ボール箱,石油缶などで内容量 50kg 未満)から採取す

る場合は,容器の中心に近いところから,大型容器(フレキシブルコンテナ)から採取する場合は,

内容物の上・中・下から,それぞれ,試験に必要な量の 2 倍以上の一定量を採取し,よく混合して試

料とする。

6.4

試料及び試験に用いる材料の温度  試料及び試験に用いる材料は,あらかじめ試験室に入れ,室温

と等しくなるようにする。

7.  ディスパージョンの試験 
7.1

外観  外観は,試料を清浄なガラス板上に,ガラス棒などで均一に薄く塗布し,直ちに粗粒子,異

物,凝固物などの有無を目視によって調べる。

7.2

密度  密度は,JIS Z 8804 の 3.(比重びんによる比重測定方法)又は 4.(浮ひょうによる比重測定

方法)によって比重を測定して密度に換算するか,又は JIS K 6833 の 6.1.1(比重カップ法)又は 6.1.2(比

重瓶法)によって測定し,3 回の試験結果の平均値を求め,小数点以下 2 けたで表示する。JIS Z 8804 

3.  又は 4.によって測定した比重は,水の密度(例えば,温度 20℃のとき 0.998 2g/cm

3

)を乗じて密度に換

算する。

7.3

pH  pH は,JIS Z 8802 によって測定し,引き続いて測定された 3 回の試験結果が pH 計の精度以内

の範囲で一致するまで行う。pH の試験結果は,小数点以下 1 けたで表示する。pH11 以上の測定に対して

は,高アルカリ用又は高 pH 用のガラス電極を使用することが望ましい。

7.4

粘度  粘度は,次によって測定し,3 回の試験結果の平均値を求め,整数値で表示する。

a)  装置  装置は,JIS Z 8803 の 8.2(単一円筒形回転粘度計の種類)に規定する単一円筒形回転粘度計を

用いる。

参考  単一円筒形回転粘度計の代表的なものは,ブルックフィールド形粘度計である。

b)  操作  操作は,JIS Z 8803 の 8.4(操作)による。ただし,測定条件(粘度計の形式,円筒の種類及び

角速度)を記録する。

7.5

不揮発分  不揮発分は,ディスパージョンの種類によって,次のように測定する。

a)  ゴムラテックス  ゴムラテックスの不揮発分は,JIS K 6387-2 によって測定した全固形分とし,3 回

の試験結果の平均値を求め,小数点以下 1 けたで表示する。

b)  樹脂エマルション  樹脂エマルションの不揮発分は,JIS K 6828 の 5.2(不揮発分)によって測定し,

3 回の試験結果の平均値を求め,小数点以下 1 けたで表示する。

8.  粉末樹脂の試験 
8.1

外観  外観は,試料を清浄なガラス板上に取り,白紙の上に置いて,粗粒子,異物,凝固物などの

有無を目視によって調べる。

8.2

揮発分  揮発分は,JIS K 6726 の 3.4(揮発分)によって測定し,3 回の試験結果の平均値を求め,

小数点以下 1 けたで表示する。

8.3

強熱残分  強熱残分は,JIS K 0067 の 4.4(強熱残分又は灰分試験)の第 1 法  灰化後に強熱する方

法によって測定し,3 回の試験結果の平均値を求め,小数点以下 1 けたで表示する。ただし,強熱温度は

650±50℃とする。



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8.4

見掛け密度  見掛け密度は,JIS K 5101 の 20.1(静置法)によって測定し,3 回の試験結果の平均値

を求め,小数点以下 2 けたで表示する。

9.  ポリマーセメントモルタルの試験 
9.1

試験に用いる材料  セメントは JIS R 5210 に規定する普通ポルトランドセメント,骨材は JIS R 5201

の 10.2(標準砂)に規定する標準砂,練混ぜに用いる水は精製水又は上水道水とする。

9.2

ポリマーセメントモルタルの調製方法

9.2.1

試験用機械器具  機械練りに用いる練混ぜ機は,JIS R 5201 の 8.1(2)(機械練り用練混ぜ機),機械

練りに用いるさじ及び手練りに用いる鉢及びさじは,JIS R 5201 の 8.1(3)(手練り用練混ぜ器具)に規定

するものとする。

9.2.2

ポリマーセメントモルタルの配合  ポリマーセメントモルタルの配合は,セメント:標準砂=1 : 3

(質量比)

,ポリマーセメント比 10%とし,JIS A 1171 の 6.1(フロー試験)によってフロー試験を行い,

フロー値が 170±5 となるように練混ぜ水量を定める。1 回に練り混ぜるセメント及び標準砂の規定採取量

は,セメント 450±2g 及び標準砂 1 350±5g とする。

備考  水は,所定量が採取できる容積計量器で計量してもよい。

9.2.3

ポリマーセメントモルタルの練混ぜ  ポリマーセメントモルタルの練混ぜは,機械練りとする。た

だし,機械練りによってポリマーセメントモルタルの空気量や単位容積質量の変動が著しく,製品の品質

を適切に評価できない場合には,手練りによる練混ぜとするか,又は消泡剤を用いて空気量を調整しても

よい。

なお,消泡剤を用いる場合は,セメント混和用ポリマーの製造業者の指定する方法に従って添加する。

機械練り及び手練りは,次の方法による。

a)  機械練りによる方法

1)  ディスパージョンを混入する場合  計量したセメント及び標準砂を練り鉢に入れ,練混ぜ機を始動

させて 2 分間練り混ぜる。練混ぜを中断し,計量したディスパージョン及び水を入れ,直ちに 1 分

間練り混ぜる。30 秒間練混ぜを休止し,その間に,パドルに付いたモルタルをさじでかき落とし,

更に,練り鉢に付着したモルタルをさじでかき落として 3 回練り混ぜてから練り鉢の中央に集める。

休止が終わったら,再び始動させて 2 分間練り混ぜる。練混ぜが終わったら,練り鉢を練混ぜ機か

ら取り外し,さじで 10 回かき混ぜる。

2)  粉末樹脂を混入する場合  計量したセメント,粉末樹脂及び標準砂を練り鉢に入れ,練混ぜ機を始

動させて 2 分間練り混ぜる。練混ぜを中断し,計量した水を入れ,直ちに 1 分間練り混ぜる。30 秒

間練混ぜを休止し,その間に,パドルに付いたモルタルをさじでかき落とし,更に,練り鉢に付着

したモルタルをさじでかき落として 3 回練り混ぜてから練り鉢の中央に集める。休止が終わったら,

再び始動させて 2 分間練り混ぜる。練混ぜが終わったら,練り鉢を練混ぜ機から取り外し,さじで

10 回かき混ぜる。

備考  機械練りによるポリマーセメントモルタルの練混ぜは,低速(自転速度:毎分 140±5 回転,公

転速度:毎分 62±5 回転)で行う。

b)  手練りによる方法

1)  ディスパージョンを混入する場合  計量したセメント及び標準砂を鉢に入れて,さじで 2 分間練り

混ぜ,更に,計量したディスパージョン及び水を加えて,直ちに 3 分間よく練り混ぜる。

2)  粉末樹脂を混入する場合  計量したセメント,標準砂及び粉末樹脂を鉢に入れて,さじで 2 分間練


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り混ぜ,更に,計量した水を加えて,直ちに 3 分間よく練り混ぜる。

9.3

供試体の形状,寸法及び個数  試験に用いる供試体の形状,寸法及び個数は,表 による。

表 2  供試体の形状,寸法及び個数

試験項目

供試体の形状及び寸法 mm

供試体の個数

曲げ及び圧縮強さ 40×40×160 3

接着強さ

モルタル製基板の上に 40×40×10 の形

状にポリマーセメントモルタルを充てん
し,成形したもの

5

吸水率 40×40×160 3

透水量

φ

150×40 3

長さ変化率 40×40×160 3

9.4

供試体の作製  供試体は,JIS A 1171 の 7.1.3(供試体の成形及び養生)によって成形し,養生して

作製する。

9.5

曲げ強さ及び圧縮強さ  曲げ強さ及び圧縮強さは,JIS A 1171 の 7.2(曲げ強さ及び圧縮強さ試験)

によって試験し,曲げ強さは 3 個の供試体,圧縮強さは 6 個の供試体折片の試験結果の平均値を求め,小

数点以下 1 けたで表示する。

9.6

接着強さ  接着強さは,JIS A 1171 の 7.3(接着強さ試験)によって試験し,5 個の供試体の試験結

果の平均値を求め,小数点以下 1 けたで表示する。

9.7

吸水率  吸水率は,JIS A 1171 の 7.4(吸水率試験)によって試験し,3 個の供試体の試験結果の平

均値を求め,小数点以下 1 けたで表示する。

9.8

透水量  透水量は,JIS A 1171 の 7.5(透水量試験)によって試験し,3 個の供試体の試験結果の平

均値を求め,整数値で表示する。

9.9

長さ変化率  長さ変化率は,JIS A 1171 の 7.6(長さ変化率試験)によって試験し,3 個の供試体の

試験結果の平均値を求め,小数点以下 3 けたで表示する。

10.  検査  セメント混和用ポリマーの検査は,次による。 
a)  外観,不揮発分,揮発分,曲げ強さ及び圧縮強さは,JIS Z 9001 によってロットの大きさを決定し,

合理的な抜取検査方法によって試料を抜き取り,7.17.58.18.2 及び 9.5 に規定する試験を行い,

表 の規定に適合した場合,そのロットを合格とする。

b)  接着強さ,吸水率,透水量及び長さ変化率は,それらの品質に影響を及ぼす技術的生産条件が変更さ

れたときに,形式検査として試験する。

c)  ディスパージョンの密度,pH 及び粘度,粉末樹脂の強熱残分及び見掛け密度は,7.27.37.48.3

及び 8.4 によって試験し,11.2 の表示による。

11.  表示 
11.1  セメント混和用ポリマーの容器には,次の事項を表示する。

a)  製品名称

b)  種類及び主な化学組成

c)  正味質量

d)  不揮発分(ディスパージョン)又は揮発分(粉末樹脂)の表示値及び変動範囲

e)  製造年月日又はその略号



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f)  製造業者名又はその略号

g)  消泡剤などの添加剤を必要とする製品には,その旨を表示する。

11.2  セメント混和用ポリマーの取扱説明書,カタログなどには,次の事項を記載する。

a)  ディスパージョンの密度,pH,粘度及び不揮発分の表示値並びに変動範囲

b)  粉末樹脂の揮発分,強熱残分及び見掛け密度の表示値並びに変動範囲

c)  その他必要事項

12.  報告  製造業者は,次の事項を報告する。報告書の標準様式は,表 又は表 による。 
a)  セメント混和用ポリマーの商品名,種類及び主な化学組成

b)  ディスパージョン又は粉末樹脂の試験結果

c)  ポリマーセメントモルタルの試験結果

1)  ポリマーセメントモルタルの配合

2)  曲げ強さ及び圧縮強さ

3)  接着強さ

4)  吸水率

5)  透水量

6)  長さ変化率


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表 3  報告書の標準様式(例 1)



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表 4  報告書の標準様式(例 2)


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A 6203 : 2000

JIS A 6203 改正原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

大  濱  嘉  彦

日本大学工学部

(副委員長)

小  柳      洽

岐阜大学工学部

(幹事)

宮  川  豊  章

京都大学大学院工学研究科

(幹事)

出  村  克  宣

日本大学工学部

(委員)

笠  井  芳  夫

日本大学名誉教授

辻      幸  和

群馬大学工学部

河  野  広  隆

建設省土木研究所

阿  部  道  彦

建設省建築研究所

真  鍋      隆

通商産業省生活産業局

八  田      勲

工業技術院標準部

渡  辺  和  足

建設省大臣官房技術調査室

橋  本      進

財団法人日本規格協会

岸      賢  蔵

財団法人建材試験センター

豊  岡  光  男

住宅・都市整備公団

沢  出      稔

清水建設株式会社

中  川  裕  章

鹿島建設株式会社

安      伸  二

大成建設株式会社

関  野  一  男

太平洋セメント株式会社

榊  原  弘  幸

住友大阪セメント株式会社

小  俣  一  夫

日本建築仕上材工業会

野  中  正  規

クラリアントポリマー株式会社

毛  利      誠

日本エヌエスシー株式会社

尾  嶋  和  雄

株式会社イーテック

伊  部      博

株式会社小野田

能登谷  恭  一

日本化成株式会社

(事務局)

関  根  茂  夫

財団法人建材試験センター

○印は,小委員会委員を兼ねる。その他の小委員会委員は,次に示す。 

氏名

所属

(委員)

清  水  良  郁

工業技術院標準部

矢  崎  剛  吉

建設省大臣官房技術調査室

真  野  孝  次

財団法人建材試験センター

原  田      進

富士川建材工業株式会社

古  賀  優  夫

電気化学工業株式会社

相  澤  豊  治

日本シーカ株式会社

佐  藤  輝  行

昭和電工株式会社

楠      一  隆

住友化学工業株式会社

(協力委員)

渡  邊  一  雄

菊水化学工業株式会社

青  木  正  博

三菱化学 BASF 株式会社