A 5011-1
:2013
(1)
目 次
ページ
序文
1
1
適用範囲
1
2
引用規格
1
3
用語及び定義
2
4
種類,区分及び呼び方
3
4.1
種類
3
4.2
粒度による区分
3
4.3
高炉スラグ粗骨材の絶乾密度,吸水率及び単位容積質量による区分
4
4.4
呼び方
4
5
品質
4
5.1
一般事項
4
5.2
化学成分及び物理的性質
4
5.3
粒度,粗粒率及び微粒分量
5
5.4
高炉スラグ細骨材の高気温時における貯蔵の安定性
6
5.5
環境安全品質基準
6
6
試験方法
7
6.1
試料の採取及び縮分
7
6.2
化学分析試験
7
6.3
絶乾密度及び吸水率試験
7
6.4
単位容積質量試験
7
6.5
粒度試験
7
6.6
微粒分量試験
7
6.7
環境安全品質試験
7
7
検査
8
7.1
化学成分,物理的性質,粒度,粗粒率及び微粒分量の検査
8
7.2
環境安全品質の検査
8
7.3
不合格ロットの管理
9
7.4
検査データの保管
9
8
表示
9
9
報告
10
附属書 A(規定)高炉スラグ骨材の化学成分分析方法
18
附属書 B(参考)高炉スラグ細骨材の貯蔵の安定性の試験方法
45
附属書 C(規定)高炉スラグ骨材の環境安全品質試験方法
48
附属書 D(参考)技術上重要な改正についての新旧対照表
52
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,鐵鋼スラグ協会
(NSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の
審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS A 5011-1:2003 は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,平成 25 年 9 月 20 日までの間は,工業標準化法第 19 条第 1 項等の関係条項の規定に基づく JIS マ
ーク表示認証において,JIS A 5011-1:2003 によることができる。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS A 5011
の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS A 5011-1
第 1 部:高炉スラグ骨材
JIS A 5011-2
第 2 部:フェロニッケルスラグ骨材
JIS A 5011-3
第 3 部:銅スラグ骨材
JIS A 5011-4
第 4 部:電気炉酸化スラグ骨材
日本工業規格
JIS
A
5011-1
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コンクリート用スラグ骨材−
第 1 部:高炉スラグ骨材
Slag aggregate for concrete-Part 1: Blast furnace slag aggregate
序文
この規格は,1977 年に制定された JIS A 5011 コンクリート用高炉スラグ粗骨材及び 1981 年に制定され
た JIS A 5012 コンクリート用高炉スラグ細骨材を 1997 年に JIS A 5011-1(コンクリート用スラグ骨材−第
1 部:高炉スラグ骨材)に統合したものであり,その後 2 回の改正を経て今日に至っている。前回の改正
は 2003 年に行われたが,その後,日本工業標準調査会の土木技術専門委員会及び建築技術専門委員会によ
って, 建設分野の規格への環境側面の導入に関する指針 (2003 年 3 月 28 日土木技術専門委員会・建築
技術専門委員会議決)の
附属書 1 として コンクリート用スラグ骨材に環境安全品質及びその検査方法を
導入するための指針
が 2011 年 7 月 12 日付で策定されたことから,これに対応するために改正した。ま
た,技術上重要な改正に関する旧規格との対照を
附属書 D に記載する。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,コンクリートに使用する高炉スラグ骨材について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS A 1102
骨材のふるい分け試験方法
JIS A 1103
骨材の微粒分量試験方法
JIS A 1104
骨材の単位容積質量及び実積率試験方法
JIS A 1109
細骨材の密度及び吸水率試験方法
JIS A 1110
粗骨材の密度及び吸水率試験方法
JIS K 0050
化学分析方法通則
JIS K 0058-1
スラグ類の化学物質試験方法−第 1 部:溶出量試験方法
JIS K 0058-2
スラグ類の化学物質試験方法−第 2 部:含有量試験方法
JIS K 0115
吸光光度分析通則
JIS K 0116
発光分光分析通則
JIS K 0119
蛍光 X 線分析通則
JIS K 0121
原子吸光分析通則
JIS K 8001
試薬試験方法通則
2
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JIS Q 17025
試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
JIS Q 17050-1
適合性評価−供給者適合宣言−第 1 部:一般要求事項
JIS Q 17050-2
適合性評価−供給者適合宣言−第 2 部:支援文書
JIS R 1306
化学分析用磁器燃焼ボート
JIS R 5202
セメントの化学分析方法
JIS R 5204
セメントの蛍光 X 線分析方法
JIS Z 8801-1
試験用ふるい−第 1 部:金属製網ふるい
JIS Z 9015-0
計数値検査に対する抜取検査手順−第 0 部:JIS Z 9015 抜取検査システム序論
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
環境安全品質
高炉スラグ骨材の出荷から,コンクリート構造物の施工,コンクリート製品の製造時及び利用時までだ
けでなく,その利用が終了し,解体後の再利用時又は最終処分時も含めたライフサイクルの合理的に想定
し得る範囲において,高炉スラグ骨材から影響を受ける土壌,地下水,海水などの環境媒体が,各々の環
境基準などを満足できるように,高炉スラグ骨材が確保すべき品質。
3.2
環境安全形式検査
コンクリート用骨材として使用するために粒度調整及び他の材料との混合など(他のスラグ骨材を混合
する場合を含む。
)の加工を行った後,環境安全品質を除く品質要求事項を満足することを確認した高炉ス
ラグ骨材が,環境安全品質を満足するかどうかを判定するために行う検査(以下,形式検査という。
)
。
3.3
環境安全受渡検査
形式検査に合格したものと同じ製造条件の高炉スラグ骨材の受渡しの際に,その環境安全品質を保証す
るために行う検査(以下,受渡検査という。
)
。
3.4
利用模擬試料
高炉スラグ骨材の出荷から,利用が終了し,解体後の再利用時又は最終処分時も含めたライフサイクル
の合理的に想定し得る範囲の中で,環境安全性に関して最も配慮すべき高炉スラグ骨材の状態を模擬した
試料。この試料は,形式検査に用いる。
3.5
高炉スラグ骨材試料
形式検査又は受渡検査に用いるために,適切な試料採取方法で採取した高炉スラグ骨材。
3.6
環境安全品質基準
環境安全品質として必要と認める検査項目について定められた,溶出量及び含有量で示される基準値の
総称。ただし,3.11 に規定する港湾用途に限っては,溶出量だけで示される。形式検査結果の判定におい
て参照する。
3
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3.7
環境安全受渡検査判定値
受渡検査において,環境安全品質基準への適合性を高炉スラグ骨材試料を用いて保証するために参照す
る値(以下,受渡検査判定値という。
)
。
3.8
環境安全形式試験
形式検査において,高炉スラグ骨材の環境安全品質基準に対する適合性を判定するために実施する試験
(以下,形式試験という。
)
。溶出量試験及び含有量試験で構成される。ただし,3.11 に規定する港湾用途
に限っては溶出量試験だけによる。
3.9
環境安全受渡試験
受渡検査において,
高炉スラグ骨材の受渡検査判定値に対する適合性を判定するために実施する試験
(以
下,受渡試験という。
)
。溶出量試験及び含有量試験で構成される。ただし,3.11 に規定する港湾用途に限
っては溶出量試験だけによる。
3.10
一般用途
高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物又はコンクリート製品(以下,コンクリート構造物などと
いう。
)の用途のうち,3.11 に規定する港湾用途を除いた一般的な土木・建築用の用途。
3.11
港湾用途
高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途のうち,海水と接する港湾の施設又はそれに関
係する施設で半永久的に使用され,解体・再利用されることのない用途。港湾に使用する場合であっても
再利用を予定する場合は,一般用途として取り扱わなければならない。
注記 用途の具体例としては,岸壁,防波堤,護岸,堤防,突堤などが該当する。
4
種類,区分及び呼び方
4.1
種類
高炉スラグ骨材の種類は,
表 1 による。
表 1−種類
種類
記号
摘要
高炉スラグ粗骨材 BFG
溶鉱炉でせん鉄と同時に生成する溶融スラグを徐冷し,粒度調整したもの。
高炉スラグ細骨材 BFS 溶鉱炉でせん鉄と同時に生成する溶融スラグを水,空気などによって急冷し,
粒度調整したもの。
4.2
粒度による区分
高炉スラグ骨材の粒度による区分は,次による。
a)
高炉スラグ粗骨材の粒度による区分は,
表 2 による。
4
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表 2−高炉スラグ粗骨材の粒度による区分
区分
粒の大きさの範囲
mm
記号
高炉スラグ粗骨材 4005
40〜5 BFG40-05
高炉スラグ粗骨材 4020
40〜20 BFG40-20
高炉スラグ粗骨材 2505
25〜5 BFG25-05
高炉スラグ粗骨材 2005
20〜5 BFG20-05
高炉スラグ粗骨材 2015
20〜15 BFG20-15
高炉スラグ粗骨材 1505
15〜5 BFG15-05
b)
高炉スラグ細骨材の粒度による区分は,
表 3 による。
表 3−高炉スラグ細骨材の粒度による区分
区分
粒の大きさの範囲
mm
記号
5 mm 高炉スラグ細骨材 5
以下 BFS5
2.5 mm 高炉スラグ細骨材 2.5 以下 BFS2.5
1.2 mm 高炉スラグ細骨材 1.2 以下 BFS1.2
5〜0.3 mm 高炉スラグ細骨材
5〜0.3 BFS5-0.3
4.3
高炉スラグ粗骨材の絶乾密度,吸水率及び単位容積質量による区分
高炉スラグ粗骨材の絶乾密度,吸水率及び単位容積質量による区分は,
表 4 による。
表 4−高炉スラグ粗骨材の絶乾密度,吸水率及び単位容積質量による区分
区分
絶乾密度
g/cm
3
吸水率
%
単位容積質量
kg/L
L 2.2 以上 6.0 以下
1.25 以上
N 2.4 以上 4.0 以下
1.35 以上
4.4
呼び方
高炉スラグ骨材の呼び方は,次による。
例 BFG 40-05 L
BFS 2.5
高炉スラグ粗骨材の絶乾密度,吸水率及び単位容積質量による区分を表す。
高炉スラグ骨材の粒度による区分を表す。
高炉スラグ骨材の種類を表す。
5
品質
5.1
一般事項
高炉スラグ骨材は,保管中及びコンクリートとして使用したときに,その使用環境及びコンクリートの
品質に悪影響を及ぼす物質を有害量含んではならない。
5.2
化学成分及び物理的性質
高炉スラグ骨材の化学成分及び物理的性質は,6.2〜6.4 によって試験を行い,
表 5 の規定に適合しなけ
ればならない。
5
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表 5−化学成分及び物理的性質
項目
高炉スラグ粗骨材
高炉スラグ細骨材
適用試験箇条
L N
化学
成分
酸化カルシウム(CaO として) %
45.0 以下 45.0 以下
6.2
全硫黄(S として)
%
2 0 以下 2.0 以下
三酸化硫黄(SO
3
として)
%
0 5 以下 0.5 以下
全鉄(FeO として)
%
3 0 以下 3.0 以下
絶乾密度 g/cm
3
2.2 以上 2.4 以上 2.5 以上
6.3
吸水率
%
6.0 以下 4.0 以下 3.0 以下
単位容積質量 kg/L
1.25 以上
1.35 以上
1.45 以上
6.4
5.3
粒度,粗粒率及び微粒分量
5.3.1
高炉スラグ粗骨材
高炉スラグ粗骨材の粒度,粗粒率及び微粒分量は,次による。
a)
粒度 高炉スラグ粗骨材の粒度は,6.5 によって試験を行い,表 6 に示す範囲のものでなければならな
い。
表 6−高炉スラグ粗骨材の粒度
単位 %
区分
ふるいを通るものの質量分率
ふるいの呼び寸法
a)
mm
50 40 25 20 15 10 5
高炉スラグ粗骨材 4005
100
95〜100
− 35〜70
− 10〜30 0〜5
高炉スラグ粗骨材 4020
100
90〜100
20〜55 0〜15
−
0〜5
−
高炉スラグ粗骨材 2505
− 100
95〜100
− 30〜70
−
0〜10
高炉スラグ粗骨材 2005
−
− 100
90〜100
− 20〜55 0〜10
高炉スラグ粗骨材 2015
−
− 100
90〜100
−
0〜10 0〜5
高炉スラグ粗骨材 1505
−
−
− 100
90〜100
40〜70 0〜15
注
a)
ふるいの呼び寸法は,それぞれ JIS Z 8801-1 に規定するふるいの公称目開き 53 mm,37.5 mm,26.5 mm,
19 mm,16 mm,9.5 mm 及び 4.75 mm である。
b)
粗粒率 高炉スラグ粗骨材の粗粒率は,製造業者と購入者が協議によって定めた粗粒率に対して±
0.30 の範囲のものでなければならない。
c)
微粒分量 高炉スラグ粗骨材の微粒分量は,6.6 によって試験を行い,次による。
1)
高炉スラグ粗骨材の微粒分量は,2)に定める許容差の範囲内でばらつきが生じても 5.0 %を超えない
ように,製造業者と購入者が協議によって定める。
2)
高炉スラグ粗骨材の微粒分量の許容差は,1)で定めた協議値に対して±1.0 %とする。
5.3.2
高炉スラグ細骨材
高炉スラグ細骨材の粒度,粗粒率及び微粒分量は,次による。
a)
粒度 高炉スラグ細骨材の粒度は,6.5 によって試験を行い,表 7 に示す範囲のものでなければならな
い。
6
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表 7−高炉スラグ細骨材の粒度
単位 %
区分
ふるいを通るものの質量分率
ふるいの呼び寸法
a)
mm
10 5 2.5 1.2 0.6 0.3 0.15
5 mm 高炉スラグ細骨材 100
90〜100
80〜100
50〜90 25〜65 10〜35 2〜15
2.5 mm 高炉スラグ細骨材 100
95〜100
85〜100
60〜95 30〜70 10〜45 2〜20
1.2 mm 高炉スラグ細骨材
− 100
95〜100
80〜100
35〜80 15〜50 2〜20
5〜0.3 mm 高炉スラグ細骨材 100
95〜100
65〜100
10〜70 0〜40 0〜15 0〜10
注
a)
ふるいの呼び寸法は,それぞれ JIS Z 8801-1 に規定するふるいの公称目開き 9.5 mm,4.75 mm,2.36 mm,
1.18 mm,600 μm,300 μm 及び 150 μm である。
b)
粗粒率 高炉スラグ細骨材の粗粒率は,製造業者と購入者が協議によって定めた粗粒率に対して
±0.20 の範囲のものでなければならない。
c)
微粒分量 高炉スラグ細骨材の微粒分量は,6.6 によって試験を行い,次による。
1)
高炉スラグ細骨材の微粒分量は,2)に定める許容差の範囲内でばらつきが生じても 7.0 %を超えない
ように,製造業者と購入者が協議によって定める。
2)
高炉スラグ細骨材の微粒分量の許容差は,1)で定めた協議値に対して±2.0 %とする。
5.4
高炉スラグ細骨材の高気温時における貯蔵の安定性
高炉スラグ細骨材の高気温時における貯蔵の安定性は,受渡当事者間の協定によって確認する。
注記 貯蔵の安定性を確認する試験方法の一例として附属書 B に示す。判定結果が A の場合は,安定
とする。
5.5
環境安全品質基準
環境安全品質基準は,高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途に応じて,次のいずれか
による。
なお,高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途が特定できない場合は,一般用途として
取り扱う。
a)
一般用途の場合 高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途が一般用途の場合の環境安
全品質は,6.7 によって試験を行い,
表 8 の規定に適合しなければならない。
表 8−一般用途の場合の環境安全品質基準
項目
溶出量
mg/L
含有量
a)
mg/kg
カドミウム 0.01 以下 150 以下
鉛 0.01 以下 150 以下
六価クロム 0.05 以下 250 以下
ひ素 0.01 以下 150 以下
水銀 0.000
5 以下
15 以下
セレン 0.01 以下 150 以下
ふっ素 0.8 以下 4 000 以下
ほう素 1
以下 4 000 以下
注
a)
ここでいう含有量とは,同語が一般的に意味する
全含有量
とは異なることに注意を要する。
7
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b)
港湾用途の場合 高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途が港湾用途の場合の環境安
全品質は,6.7 によって試験を行い,
表 9 の規定に適合しなければならない。
なお,港湾用途に使用される場合であっても再利用を予定する場合は,一般用途として取り扱う。
表 9−港湾用途の場合の環境安全品質基準
単位 mg/L
項目
溶出量
カドミウム 0.03 以下
鉛 0.03 以下
六価クロム 0.15 以下
ひ素 0.03 以下
水銀 0.001
5 以下
セレン 0.03 以下
ふっ素 15
以下
ほう素 20
以下
6
試験方法
6.1
試料の採取及び縮分
試料は,代表的なものを採取し,合理的な方法によって縮分する。
6.2
化学分析試験
高炉スラグ骨材の化学分析試験は,
附属書 A による。
6.3
絶乾密度及び吸水率試験
高炉スラグ骨材の絶乾密度及び吸水率試験は,次による。
a)
高炉スラグ粗骨材 高炉スラグ粗骨材の絶乾密度及び吸水率試験は,JIS A 1110 による。
なお,JIS A 1110 の 4.(試料)c)の試料は,JIS A 1110 の 4. a)の試料を水で十分に洗って,粒の表面
に付いているごみ,その他を取り除いて温度 105±5 ℃で一定質量となるまで乾燥し,室温まで冷や
した後,20±5 ℃の水中で 24 時間吸水させたものとする。
b)
高炉スラグ細骨材 高炉スラグ細骨材の絶乾密度及び吸水率試験は,JIS A 1109 による。
なお,微粒分の少ない 5〜0.3 mm 高炉スラグ細骨材の表面乾燥飽水状態の作り方は,JIS A 1109 の
4.
(試料)a)の試料を JIS A 1109 の 4. b)によって 24 時間吸水後,JIS A 1110 の 4. d)による。この場合
には,報告事項にその旨を付記する。また,微粒分の多い高炉スラグ細骨材の場合は,JIS A 1103 に
規定する方法によって洗ったものを試料とすることができる。この場合には,報告事項にその旨を付
記する。
6.4
単位容積質量試験
高炉スラグ骨材の単位容積質量試験は,JIS A 1104 による。
6.5
粒度試験
高炉スラグ骨材の粒度試験は,JIS A 1102 による。
6.6
微粒分量試験
高炉スラグ骨材の微粒分量の試験は,JIS A 1103 による。
6.7
環境安全品質試験
高炉スラグ骨材の環境安全品質試験は,
附属書 C による。
8
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7
検査
7.1
化学成分,物理的性質,粒度,粗粒率及び微粒分量の検査
化学成分,物理的性質,粒度,粗粒率及び微粒分量の検査は,JIS Z 9015-0 又は受渡当事者間の協定に
よってロットの大きさを決定し,合理的なサンプリング方法によって試料を採取し,6.1〜6.6 によって試
験を行い,5.1〜5.3 の規定に適合したものを合格とする。
なお,受渡当事者間の協定によって,検査項目の一部を省略することができる。
7.2
環境安全品質の検査
7.2.1
検査の種類
高炉スラグ骨材の環境安全品質の検査は,形式検査と受渡検査とに区分する。
7.2.2
検査項目
高炉スラグ骨材の環境安全品質の検査は,高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途に応
じて,
表 10 及び表 11 の○印で示す項目について行う。
なお,高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途が特定できない場合,及び港湾用途に使
用される場合であっても再利用を予定する場合は,一般用途として取り扱う。
表 10−一般用途の場合の環境安全品質の検査項目
項目
形式検査
受渡検査
溶出量
含有量
溶出量
含有量
カドミウム
○
○
−
−
鉛
○
○
−
−
六価クロム
○
○
−
−
ひ素
○
○
−
−
水銀
○
○
−
−
セレン
○
○
○
○
ふっ素
○
○
○
○
ほう素
○
○
○
○
表 11−港湾用途の場合の環境安全品質の検査項目
項目
形式検査
受渡検査
溶出量
溶出量
カドミウム
○
−
鉛
○
−
六価クロム
○
−
ひ素
○
−
水銀
○
−
セレン
○
○
ふっ素
○
○
ほう素
○
○
7.2.3
検査方法
高炉スラグ骨材の環境安全品質の検査方法は,次による。
a)
環境安全形式検査 形式検査は,6.1 及び 6.7 によって試験を行い,高炉スラグ骨材を用いるコンクリ
ート構造物などの用途に応じて,5.5 の a)又は b)に適合した試料の製造ロットを合格とする。
b)
環境安全受渡検査 受渡検査は,6.1 及び 6.7 によって試験を行い,7.2.4 によって設定した受渡検査判
9
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定値に適合した試料の製造ロットを合格とする。これに適合しなかった場合,同一の製造ロットから
同一の方法で試料を採取して 2 回の再試験を行い,2 回とも受渡検査判定値に適合した場合は,その
製造ロットを合格とすることができる。
ただし,2 回の再試験のうち,1 回でも不適合となった場合は,
その製造ロットは不合格とする。
7.2.4
環境安全受渡検査判定値
受渡検査判定値は,次による。
a)
形式検査に利用模擬試料を用いた場合 形式検査に利用模擬試料を用いた場合の受渡検査判定値は,
形式試験のデータと形式検査に用いた試料と同じ条件で製造された高炉スラグ骨材試料を用いた受渡
試験のデータに基づき設定し,高炉スラグ骨材の性状のばらつき又は他の材料の影響などの変動要因
を十分に考慮した値としなければならない。
なお,この場合の受渡検査判定値は,形式検査を実施する都度,高炉スラグ骨材の製造業者が設定
する。
b)
形式検査に高炉スラグ骨材試料を用いた場合 形式検査に高炉スラグ骨材試料を用いた場合の受渡
検査判定値は,環境安全品質基準のそれぞれの検査項目の基準値と同じ値を用いる。
7.2.5
検査の頻度
高炉スラグ骨材の環境安全品質の検査の頻度は,次による。
a)
環境安全形式検査 形式検査結果の有効期間は,合否判定を行った日を起点として 3 年間を最大とす
る。ただし,次に該当する場合は,有効期間内であっても検査を行わなければならない。
1)
製造設備の改良,製造プロセス,原料又は添加物の変更などの要因に伴って,環境安全品質に規定
する項目の値が大きく増加する可能性がある場合。
2)
利用模擬試料として使用するコンクリートの配合条件を新たに定める場合。ただし,高炉スラグ骨
材の単位量(1 m
3
のコンクリートを製造するのに用いる高炉スラグ骨材の質量)を小さくするとき
は省略できる。
b)
環境安全受渡検査 受渡検査は,製造ロットごとに行う。
注記 製造ロットの大きさは,工場ごとの製造実態,品質管理実態などに応じて,製造業者の社内
規格で定めるのが望ましい。
7.3
不合格ロットの管理
検査の結果,不合格になった製造ロットは,合格したロットから明確に区分し,混在させてはならない。
7.4
検査データの保管
製造業者は,検査によって得られた品質試験結果及び判定結果の記録を製造ロットごとに期間を定め,
保管しなければならない。
8
表示
製品の送り状には,次の事項を表示しなければならない。
a)
製品の名称及び種類の呼び方(
例 コンクリート用高炉スラグ骨材 BFS5)
b)
高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの環境安全品質面からの用途制約など( 港湾用途に
使用し再利用の予定がない場合に限る
又は
用途制約なし
のいずれかを記入。
)
c)
製品の質量
d)
製造業者名又はその略号
e)
製造工場名又はその略号
10
A 5011-1
:2013
f)
製造年月日,製造年月,製造期間若しくは製造ロット番号,又はこれらのいずれかの略号
g)
出荷年月日又は出荷予定年月日
9
報告
製造業者は,購入者から要求があった場合には,試験成績表を提出しなければならない。試験成績表は,
表 12〜表 17 の様式を標準とし,高炉スラグ骨材を用いるコンクリート構造物などの用途に応じて,該当
するものを提出する。
11
A 5011-1
:2013
表 12−コンクリート用高炉スラグ粗骨材の試験成績表(環境安全品質を除く)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
御中
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
製品の呼び方
化学成分 %
絶乾密度
g/cm
3
吸水率
%
単位容積質量
kg/L
酸化カルシウム
(CaO として)
全硫黄
(S として)
三酸化硫黄
(SO
3
として)
全鉄
(FeO として)
規格
値
BFG 40-05
L
45.0 以下 2.0 以下 0.5 以下 3.0 以下 2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
BFG 40-20
L
2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
BFG 25-05
L
2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
BFG 20-05
L
2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
BFG 20-15
L
2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
BFG 15-05
L
2.2 以上 6.0 以下 1.25 以上
N
2.4 以上 4.0 以下 1.35 以上
11
A
501
1-1
:
2013
12
A 5011-1
:2013
表 12−コンクリート用高炉スラグ粗骨材の試験成績表(環境安全品質を除く)(続き)
製品の呼び方
ふるいを通るものの質量分率 %
粗粒率
a)
微粒分量
a)
その他使用上
の注意事項
50 mm
40 mm
25 mm
20 mm
15 mm
10 mm
5 mm
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
( ) ( )
規格
値
BFG 40-05
L
100
95〜100
− 35〜70
− 10〜30 0〜5
製 造 業 者 と 購 入
者 が 協 議 に よ っ
て 定 め た 粗 粒 率
に 対 し て ± 0.30
の 範 囲 の も の で
な け れ ば な ら な
い。
許容差は,製造業
者 と 購 入 者 が 定
め た 協 議 値 に 対
して±1.0 %とす
る。協議値は,許
容 差 の 範 囲 内 で
ば ら つ き が 生 じ
ても 5.0 %を超え
な い よ う に 定 め
る。
−
N
BFG 40-20
L
100
90〜100 20〜55 0〜15
−
0〜5
−
N
BFG 25-05
L
− 100
95〜100
− 30〜70
−
0〜10
N
BFG 20-05
L
−
− 100
90〜100
− 20〜55 0〜10
N
BFG 20-15
L
−
− 100
90〜100
−
0〜10 0〜5
N
BFG 15-05
L
−
−
− 100
90〜100 40〜70 0〜15
N
注
a)
括弧内は,購入契約時に定められた協議値を記入する。
12
A
501
1-1
:
2013
13
A 5011-1
:2013
表 13−コンクリート用高炉スラグ細骨材の試験成績表(環境安全品質を除く)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
御中
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
製品の呼び方
化学成分 %
絶乾密度
g/cm
3
吸水率
%
単位容積質量
kg/L
酸化カルシウム
(CaO として)
全硫黄
(S として)
三酸化硫黄
(SO
3
として)
全鉄
(FeO として)
規格
値
BFS 5
45.0 以下 2.0 以下 0.5 以下 3.0 以下 2.5 以上 3.0 以下 1.45 以上
BFS 2.5
BFS 1.2
BFS 5-0.3
製品の呼び方
ふるいを通るものの質量分率 %
粗粒率
a)
微粒分量
a)
高気温時貯蔵
の安定性判定
b)
その他使用上
の注意事項
10 mm
5 mm
2.5 mm
1.2 mm
0.6 mm
0.3 mm
0.15 mm
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
( )
規格
値
BFS 5
100
90〜100 80〜100
50〜90
25〜65
10〜35
2〜15
製造業者と購入者
が協議によって定
めた粗粒率に対し
て±0.20 の範囲の
ものでなければな
らない。
許容差は,製造業者と購入
者が定めた協議値に対し
て±2.0 %とする。協議値
は,許容差の範囲内でばら
つきが生じても 7.0 %を超
えないように定める。
判定結果を A
又は B と記入
する。
(記載例)
○今回出荷し
た当社の製品
は,□日以内
にご使用くだ
さい。
BFS 2.5
100
95〜100 85〜100
60〜95
30〜70
10〜45
2〜20
BFS 1.2
− 100
95〜100 80〜100
35〜80
15〜50
2〜20
BFS 5-0.3
100
95〜100 65〜100
10〜70
0〜40
0〜15
0〜10
注
a)
括弧内は,購入契約時に定められた協議値を記入する。
b)
高気温時における貯蔵の安定性は,受渡当事者間の協定によって確認する。判定結果が A(固結しにくい),B(固結しやすい)は,平均気温 20 ℃以上の高気温
時に貯蔵する場合のことであり,他の時期には固結現象は考慮する必要はない。
13
A
501
1-1
:
2013
14
A 5011-1
:2013
表 14−コンクリート用高炉スラグ骨材の環境安全形式試験成績表(コンクリート構造物などの用途が一般用途の場合)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
試験実施事業者・責任者(利用模擬試料の調製)
:
試験実施事業者・責任者(検液の調製及び分析)
:
御中
試験に使用した試料(どちらかに○印)
高炉スラグ骨材試料
利用模擬試料
環境安全形式試験における溶出量及び含有量試験結果
区分
項目
試験項目
カドミウム
鉛
六価クロム
ひ素
水銀
セレン
ふっ素
ほう素
溶出量
mg/L
試験結果
環境安全品質基準値 0.01 以下 0.01 以下 0.05 以下 0.01 以下 0.000
5 以下
0.01 以下 0.8 以下
1 以下
含有量
mg/kg
試験結果
環境安全品質基準値 150 以下 150 以下 250 以下 150 以下 15 以下 150 以下 4
000 以下 4
000 以下
利用模擬試料に用いたコンクリートの配合
配合の
種類
水・セメ
ント比
%
細骨材率
%
単位量 kg/m
3
化学
混和剤
g
スランプ
cm
空気量
%
単位容積
質量
kg/m
3
水
セメント
細骨材
粗骨材
BFS BFG
*環境安全品質の保証は,高炉スラグ細骨材(BFS)と高炉スラグ粗骨材(BFG)をそれぞれ上表に示す単位量以下で使用する場合に限られます。
溶出量試験及び含有量試験に用いた利用模擬試料の粒度
区分
溶出量試験に用いた利用模擬試料の粒度
含有量試験に用いた利用模擬試料の粒度
40 mm 以上 40〜20 mm
20〜5 mm
5〜2.5 mm
2.5 mm 以下 2.0
mm 以上
2.0〜0.6 mm 0.6〜0.15 mm 0.15 mm 以下
質量分率
%
試験結果
規格値 0 30±5 40±5 10±5 20±5 0 50±5 25±5 25±5
環境安全形式検査結果の有効期限: 年 月 日まで
14
A
501
1-1
:
2013
15
A 5011-1
:2013
表 15−コンクリート用高炉スラグ骨材の環境安全形式試験成績表(コンクリート構造物などの用途が港湾用途の場合)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
試験実施事業者・責任者(利用模擬試料の調製)
:
試験実施事業者・責任者(検液の調製及び分析)
:
御中
試験に使用した試料(どちらかに○印)
高炉スラグ骨材試料
利用模擬試料
環境安全形式試験における溶出量試験結果
区分
項目
試験項目
カドミウム
鉛
六価クロム
ひ素
水銀
セレン
ふっ素
ほう素
溶出量
mg/L
試験結果
環境安全品質基準値 0.03 以下 0.03 以下 0.15 以下 0.03 以下 0.001
5 以下
0.03 以下 15 以下 20 以下
利用模擬試料に用いたコンクリートの配合
配合の
種類
水・セメ
ント比
%
細骨材率
%
単位量 kg/m
3
化学
混和剤
g
スランプ
cm
空気量
%
単位容積
質量
kg/m
3
水
セメント
細骨材
粗骨材
BFS BFG
*環境安全品質の保証は,高炉スラグ細骨材(BFS)と高炉スラグ粗骨材(BFG)をそれぞれ上表に示す単位量以下で使用する場合に限られます。
環境安全形式検査結果の有効期限: 年 月 日まで
15
A
501
1-1
:
2013
16
A 5011-1
:2013
表 16−コンクリート用高炉スラグ骨材の環境安全受渡試験成績表(コンクリート構造物などの用途が一般用途の場合)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
試験実施事業者・責任者:
御中
環境安全受渡試験における溶出量及び含有量試験結果
区分
項目
試験項目
セレン
ふっ素
ほう素
溶出量
mg/L
試験結果
環境安全受渡検査判定値
含有量
mg/kg
試験結果
環境安全受渡検査判定値
16
A
501
1-1
:
2013
17
A 5011-1
:2013
表 17−コンクリート用高炉スラグ骨材の環境安全受渡試験成績表(コンクリート構造物などの用途が港湾用途の場合)
平成 年 月 日 製造業者 会社 工場
製造年月日 平成 年 月 日
発行責任者:
試験実施事業者・責任者:
御中
環境安全受渡試験における溶出量試験結果
区分
項目
試験項目
セレン
ふっ素
ほう素
溶出量
mg/L
試験結果
環境安全受渡検査判定値
17
A
501
1-1
:
2013
18
A 5011-1
:2013
附属書 A
(規定)
高炉スラグ骨材の化学成分分析方法
A.1
概要
この附属書は,高炉スラグ骨材の化学成分分析方法について規定する。
A.2
分析項目
ここで規定する分析項目は,次による。
a)
酸化カルシウム(CaO として)
b)
全硫黄(S として)
c)
三酸化硫黄(SO
3
として)
d)
全鉄(FeO として)
A.3
一般事項
化学分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0115,JIS K 0116,JIS K 0119,JIS K 0121 及び
JIS K 8001
による。
A.4
試料の調製
化学分析用試料の調製は,次による。
a)
温度 100〜110 ℃で,一定質量となるまで乾燥させた試料約 500 g を鉄の汚染のおそれのない粉砕装置
などで砕き,JIS Z 8801-1 に規定する公称目開き 2.36 mm の金属製網ふるいを全量通過させる。
b)
次に約 100 g まで縮分する。これを更にすりつぶし JIS Z 8801-1 に規定する公称目開き 600 μm の金属
製網ふるいを全量通過させる。
c)
次に,約 20 g の試料が得られるまで縮分し,これを更に,JIS Z 8801-1 に規定する公称目開き 150 μm
の金属製網ふるいを全量通過させるまですりつぶし,よく混合して化学分析用試料とする。
A.5
分析値の表し方
分析値は,質量分率(%)で表し,四捨五入によって小数点以下 1 桁で示す。
A.6
酸化カルシウムの定量方法
A.6.1
一般
高炉スラグ骨材中の酸化カルシウム(CaO)の定量方法は,次のいずれかによる。これらの方法は,酸
化カルシウム含有率が 30〜50 %の試料に適用する。
a)
過マンガン酸カリウム滴定法
b) EDTA
滴定法
c)
蛍光 X 線分析法
d) ICP
発光分光分析法
19
A 5011-1
:2013
A.6.2
過マンガン酸カリウム滴定法
A.6.2.1
要旨
試料を塩酸,硝酸及び過塩素酸で分解し,ろ過する。残さは,ふっ化水素酸処理を行った後,二硫酸ナ
トリウムで融解し,ろ液に合わせる。この溶液を塩化アンモニウムとアンモニア水で中和し,鉄,アルミ
ニウム,チタンなどを沈殿させてろ過する。さらに,ペルオキソ二硫酸アンモニウムとアンモニア水でマ
ンガンを沈殿させてろ過する。次にしゅう酸アンモニウムでカルシウムをしゅう酸カルシウムとして沈殿
させ,こし分ける。この沈殿を硫酸で分解し,遊離したしゅう酸を過マンガン酸カリウム標準液で滴定す
る。
A.6.2.2
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸
b)
塩酸(1+10)
c)
硝酸
d)
過塩素酸
e)
ふっ化水素酸
f)
硫酸(1+1,1+3)
g)
アンモニア水
h)
アンモニア水(1+1)
i)
塩化アンモニウム
j)
塩化アンモニウム溶液(20 g/L)
:塩化アンモニウム(NH
4
Cl)10 g をビーカ(500 mL)にとり,水約
500 mL を加えて溶解した後,弱アルカリ性になるまでアンモニア水を滴加する。
k)
ペルオキソ二硫酸アンモニウム
l)
二硫酸ナトリウム
m)
しゅう酸アンモニウム溶液(50 g/L)
n) 0.02
mol/L 過マンガン酸カリウム溶液(KMnO
4
:3.161 g/L)
:調製,標定及び計算は,JIS K 8001 の JA.5.2
g)
[0.02 mol/l 過マンガン酸カリウム溶液(KMnO
4
:3.161 g/l)
]による。
o)
メチルレッド指示薬:メチルレッド 0.10 g をエタノール(95 %)100 mL に溶解し,褐色ガラス瓶に保
存する。
A.6.2.3
操作
操作は,次の手順による。
a)
試料約 0.2 g を 0.1 mg の桁まではかりとり,ビーカ(300 mL)に移し,水約 15 mL を加え,煮沸直前
まで加熱し,
振り混ぜながら塩酸 10 mL を加え,
静かに加熱を続けて試料を分解する。
これに硝酸 5 mL
及び過塩素酸 20 mL を加え,時計皿で覆い加熱蒸発を続け,濃厚な過塩素酸の白煙を発生させる。さ
らに,過塩素酸の蒸気がビーカの内壁を伝って逆流する状態で約 15 分間加熱する。
b)
冷却後,温水 50 mL を加え,可溶性塩類を溶解し,ろ紙(5 種 B)でろ過し,ビーカに付着した不溶
解残さをゴム管付きガラス棒でこすり落とし,ろ紙上に移す。初めは温塩酸(1+10)で 3 回,次に温
水で洗液に酸が認められなくなるまで洗浄する。このときのろ液及び洗液は,ビーカ(300 mL)に集
め,主液として保存する。
c)
不溶解残さは,ろ紙とともに白金るつぼ(20 番)に移し入れ,乾燥後注意して強熱灰化した後,放冷
する。次に強熱残さを硫酸(1+1)で湿し,ふっ化水素酸約 5 mL を加えて静かに加熱し,二酸化け
20
A 5011-1
:2013
い素及び硫酸を揮散させる。冷却後,これに二硫酸ナトリウム約 1 g を加え,蓋をして静かに加熱融
解する。冷却後,白金るつぼをそのまま b)で保存した主液中に入れ,融成物を溶解した後,白金るつ
ぼを水で洗って取り出す。
d)
この溶液を加熱濃縮して液量約 100 mL とし,塩化アンモニウム約 3 g を加え,かき混ぜて溶解し,メ
チルレッド指示薬 2〜3 滴を加え,溶液をかき混ぜながら,アンモニア水(1+1)を徐々に滴加し,溶
液の色が赤から黄に変わるまで中和して水酸化物の沈殿を生成させる。これを静かに加熱して約 2 分
間煮沸した後,熱源からおろし,沈殿の沈降するのを待って,ろ紙(5 種 A)を用いてろ過し,温塩
化アンモニウム溶液(20 g/L)で数回洗浄し,ろ液及び洗液はビーカ(300 mL)に集め保存する。
e)
沈殿は,漏斗にろ紙を付けたまま射水して元のビーカに洗い落とし,これに塩酸 10 mL を加えて加熱
溶解する。この溶液から d)の操作を行って水酸化物を再沈殿させ,元のろ紙を用いてろ過し,温塩化
アンモニウム溶液(20 g/L)で数回洗浄し,ろ液及び洗液はビーカ(300 mL)に集め,d)で保存した
ろ液及び洗液に合わせる。
f)
ろ液及び洗液を加熱蒸発し,液量を約 150 mL とする。このときに沈殿が生成した場合は,ろ紙(5 種
A)を用いてろ過し,温塩化アンモニウム溶液(20 g/L)で数回洗浄して,ろ液及び洗液はビーカ(300
mL)に集める。ろ液及び洗液を加熱蒸発して液量を約 150 mL とし,溶液をかき混ぜながらペルオキ
ソ二硫酸アンモニウム 1 g を加え,次にアンモニア水 5 mL を加えて引き続き加熱する。約 10 分間煮
沸してペルオキソ二硫酸アンモニウムを分解させ,マンガンを沈殿させた後,ろ紙(5 種 B)を用い
てろ過し,温水で数回洗浄し,ろ液及び洗液はビーカ(500 mL)に集め,沈殿は捨てる。
g)
ろ液及び洗液は加熱蒸発して約 150 mL とし,かすかにアルカリ性を呈するようにさせ,引き続き煮
沸するまで加熱する。この溶液をかき混ぜながらしゅう酸アンモニウム溶液(50 g/L)20 mL を加え,
この溶液を温度 70〜80 ℃で約 1 時間静置して沈殿を熟成させる。沈殿は,ろ紙(5 種 B)を用いてろ
過し,温水で数回洗浄して,ろ液及び洗液は捨てる。
h)
沈殿は,漏斗にろ紙を付けたまま射水して元のビーカ(500 mL)に洗い落とし,これに塩酸 10 mL を
加え,加熱溶解して液量を約 150 mL とし,煮沸するまで加熱し,アンモニア水(1+1)でかすかに
アルカリ性を呈するようにさせ,溶液をかき混ぜながらしゅう酸アンモニウム溶液(50 g/L)5 mL を
加え,加熱して沈殿の生成を完了させ,約 30 分間静置した後,沈殿は元のろ紙を用いてろ過し,温水
で約 10 回洗浄して,ろ液及び洗液は捨てる。
i)
ろ紙の底に小穴をあけて,射水して沈殿を元のビーカ(500 mL)に洗い落とし,ろ紙はビーカの壁に
張り付けておき,これを初めは温硫酸(1+3)30 mL で洗浄し,次に温水で洗浄して液量を約 200 mL
として約 80 ℃に加熱し,0.02 mol/L 過マンガン酸カリウム溶液で滴定し,最後の 1 滴で溶液が微紅色
に変わる点を終点とする。
A.6.2.4
計算
試料中の酸化カルシウムの含有率は,式(A.1)によって算出する。
100
804
002
.
0
×
×
×
=
m
F
V
CaO
(A.1)
ここに,
CaO
:
酸化カルシウムの含有率(
%
)
V
:
0.02 mol/L
過マンガン酸カリウム溶液の使用量(
mL
)
F
:
0.02 mol/L
過マンガン酸カリウム溶液の力価
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
21
A 5011-1
:2013
A.6.3 EDTA
滴定法
A.6.3.1
要旨
試料を過塩素酸で溶解し,砂浴上で加熱して不溶性二酸化けい素をろ過した溶液にアンモニア水を加え
て中和し,生成した水酸化物の沈殿をろ過する。ろ液を冷却した後,水酸化カリウム溶液を加えて
pH
を
12.7
〜
13.2
に調節する。次に,カルシウム用指示薬を加えて
EDTA
標準液で滴定する。
A.6.3.2
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸(
1
+
1
)
b)
過塩素酸
c)
メチルレッド指示薬(
1 g/L
)
:調製方法は,A.6.2.2 o)による。
d)
アンモニア水(
1
+
1
)
e)
硝酸アンモニウム溶液(
20 g/L
)
f)
トリエタノールアミン(
1
+
1
)
g)
飽和臭素水
h)
水酸化カリウム溶液(
200 g/L
)
:水酸化カリウム
200 g
を水に溶かして
1 000 mL
とする。
i)
カルシウム用指示薬:
2-
ヒドロキシ
-1-
(
2'-
ヒドロキシ
-4'-
スルホ
-1'-
ナフチルアゾ)
-3-
ナフトエ酸
0.5 g
と硫酸カリウム
50 g
とを混合粉砕して均一にし,褐色瓶に保存する。
j)
カルセイン指示薬:カルセイン{
3,3'-
ビス[
N,N-
ジ(カルボキシメチル)
-
アミノメチル]
-
フルオレセ
イン}
0.10 g
を硫酸カリウム
10 g
とともに混合粉砕して均一にし,褐色瓶に保存する。
k)
カルセイン−
PPC
指示薬:カルセイン{
3,3'-
ビス[
N,N-
ジ(カルボキシメチル)
-
アミノメチル]
-
フル
オレセイン}
0.08 g
と
3,3'-
ビス[
N,N-
ジ(カルボキシメチル)
-
アミノメチル]
-
フェノールフタレイン
0.02 g
とを硫酸カリウム
10 g
とともに混合粉砕して均一にし,褐色瓶に保存する。
l)
亜鉛標準液(
0.02 mol/L
)
:容量分析用標準物質の亜鉛約
0.65 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとってビーカ
300 mL
に入れ,水
10 mL
及び塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加え,時計皿で蓋をして水浴上で溶解する。全量
フラスコ
500 mL
に洗い移し,室温まで冷却した後,標線まで水を加えて振り混ぜる。式
(A.2)
によっ
て亜鉛標準液(
0.02 mol/L
)のファクターを算出し,小数点以下
4
桁に丸める。
100
9
653
.
0
×
×
=
a
m
f
(A.2)
ここに,
f
:
亜鉛標準液(
0.02 mol/L
)のファクター
m
:
はかりとった亜鉛の質量(
g
)
a
:
亜鉛の純度(
%
)
m)
緩衝液(
pH 10
)
:塩化アンモニウム
70 g
を適量の水に溶かし,アンモニア水
570 mL
を加え,水を加
えて
1 000 mL
とする。
n)
EBT
指示薬:エリオクロムブラック
T 0.2 g
をトリエタノールアミン
15 mL
及びエタノール
5 mL
に溶
かし,スポイト付き褐色滴瓶に保存する。
o)
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)
:エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物
7.5 g
を適量の水に
溶かして,全量フラスコ
1 000 mL
に入れ,標線まで水を加えて振り混ぜ,ポリエチレン製の瓶に保存
する。
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)は,次のように標定する。
亜鉛標準液(
0.02 mol/L
)
25 mL
を全量ピペットで分取してビーカ(
300 mL
)に入れ,水を加えて約
22
A 5011-1
:2013
100 mL
とし,緩衝液を加えて
pH
を
9.5
〜
10.0
に調節し
1)
,
EBT
指示薬
2
,
3
滴を加え,タングステン
ランプ照明器に載せて,
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)で滴定する。赤から赤みが全く消えて青となった
ときを終点とする。
なお,タングステンランプ照明器は,
30 W
程度のタングステンランプを用い,その光をガラス又は
プラスチック製の乳白板を通して,ビーカ中の溶液を透過させることができる装置とする。この滴定
値から,式
(A.3)
によって
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)の酸化カルシウム相当量を算出し,小数点以下
7
桁に丸める。
v
f
E
×
×
=
25
6
121
001
.
0
(A.3)
ここに,
E
:
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)
1 mL
の酸化カルシウム相当量(
g
)
f
:
亜鉛標準液(
0.02 mol/L
)のファクター
v
:
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)の使用量(
mL
)
注
1)
緩衝液を約
3 mL
加えれば,規定の
pH
となる。
A.6.3.3
操作
A.6.3.3.1
試料溶液の調製
試料溶液の調製は,次の手順による。
a)
試料約
1 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとり,乾燥したビーカ(
100 mL
)に移し入れ,過塩素酸
10 mL
を
加えガラス棒でかき混ぜて溶解する。
b)
砂浴上で加熱し,内容物がはね飛ばないように注意して水分を蒸発させ,過塩素酸の白煙が出始めた
ら時計皿で蓋をして,ビーカの底を少し砂にうずめるようにして,更に,
5
分間加熱を続ける。
c)
ビーカを砂浴から降ろして放冷した後,時計皿を水で洗って取り除き,塩酸(
1
+
1
)
5 mL
及び温水
20 mL
を加えてかき混ぜ,ゼリー状の大きな塊をガラス棒でよくつぶす。
d)
ろ紙(
5
種
B
)を用いてろ過し,温水で
10
〜
12
回洗浄する。ろ液はビーカ(
500 mL
)に受け,室温ま
で冷却した後,全量フラスコ(
250 mL
)に洗い移し,標線まで水を加えて振り混ぜる。この溶液を試
料溶液(
A
)とする。
e)
試料溶液(
A
)から全量ピペットで
20 mL
ずつを
2
個のビーカ(
300 mL
)に分取する。
f)
それぞれに温水を加えて約
150 mL
とし,煮沸し始めるまで加熱する。
g)
メチルレッド指示薬
1
,
2
滴を加え,かき混ぜながら溶液の色が赤から黄に変わるまでアンモニア水
(
1
+
1
)を徐々に滴加し,更に
1
,
2
滴加える。
h)
約
1
分間煮沸した後,加熱を止め,沈殿が沈むのを待って直ちにろ紙(
5
種
A
)を用いてろ過し,硝
酸アンモニウム温溶液(
20 g/L
)で
8
回洗浄する。ろ液は,ビーカ(
500 mL
)に受け,沈殿は捨てる。
なお,使用する硝酸アンモニウム溶液(
20 g/L
)は,メチルレッド指示薬
2
,
3
滴を加え,溶液の色
が赤から黄に変わるまでアンモニア水(
1
+
1
)を滴加して用いる。この溶液を加熱したときに色が赤
に戻った場合は,更にアンモニア水(
1
+
1
)を滴加して黄色にして用いる。
i)
ろ液に塩酸(
1
+
1
)を加えて弱酸性とした後,加熱して約
150 mL
となるまで濃縮し,これに飽和臭
素水
5 mL
及びアンモニア水(
1
+
1
)
10 mL
を加えて
5
分間以上煮沸し,沈殿が凝集して溶液が透明
となった後,ろ紙(
5
種
B
)でろ過し,温水で
7
,
8
回洗浄する。ろ液に塩酸(
1
+
1
)を加えて酸性と
し,煮沸して臭素を完全に除去する。
j)
ろ液を濃縮して約
200 mL
とし,室温まで冷却する。この
2
個の分取ろ液を試料溶液(
B
)とする。
23
A 5011-1
:2013
A.6.3.3.2
カルシウム用指示薬を用いる滴定
カルシウム用指示薬を用いる滴定の手順は,次による。
a)
試料溶液(
B
)とした,一方のろ液にトリエタノールアミン(
1
+
1
)
2 mL
及び水酸化カリウム溶液(
200
g/L
)を加えて
pH
を
12.7
〜
13.2
2)
に調節する。
b)
2
〜
3
分間放置した後,カルシウム用指示薬
0.1 g
を加え,タングステンランプ照明器に載せて
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)で滴定し,赤紫色から赤みが全く消えて青となったときを終点とし,これを予備
滴定値とする。
なお,タングステンランプ照明器は,A.6.3.2 o)で規定した性能をもつものとする。
c)
もう一方のろ液にトリエタノールアミン(
1
+
1
)
2 mL
を加えてかき混ぜ,ビュレットで
EDTA
標準液
(
0.02 mol/L
)を加え,b)の予備滴定値より
1
〜
2 mL
少ないところで一度止めてかき混ぜる。
d)
a)
と同量の水酸化カリウム溶液(
200 g/L
)を加えてかき混ぜる。
2
〜
3
分間放置した後,カルシウム用
指示薬
0.1 g
を加え,b)と同様に
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)で滴定する。
e)
カルシウム用指示薬によって,光度滴定を行う場合は JIS R 5202 の 10.1.3.2(光度滴定による場合)
による。
注
2)
溶液の
pH
が
12.7
〜
13.2
の範囲外では,結果が不正確になる。水酸化カリウム溶液(
200 g/L
)
の量は,約
7 mL
で規定の
pH
となる。
A.6.3.3.3
カルセイン指示薬又はカルセイン−PPC 指示薬を用いる滴定
カルセイン指示薬又はカルセイン−
PPC
指示薬を用いる滴定は,次の手順による。
a)
A.6.3.3.1 d)
の試料溶液(
A
)から,全量ピペットで
20 mL
ずつを
2
個のビーカ
300 mL
に分取し,水を
加えて約
200 mL
とする。
b)
一方の溶液にトリエタノールアミン(
1
+
1
)
10 mL
及び水酸化カリウム溶液(約
3 mol/L
)を加えて
pH 12.7
〜
13.2
2)
に調節する。
c)
2
〜
3
分間放置した後,カルセイン指示薬又はカルセイン−
PPC
指示薬約
0.05 g
を加え,
EDTA
標準液
(
0.02 mol/L
)で滴定し,カルセイン指示薬の場合は,溶液の色が蛍光性黄緑からオレンジ(無蛍光)
となったときを終点とし,カルセイン−
PPC
指示薬の場合は,蛍光性黄緑から赤紫(無蛍光)となっ
たときを終点として,これを予備滴定値とする。
d)
もう一方の溶液にトリエタノールアミン(
1
+
1
)
10 mL
を加えてかき混ぜ,ビュレットで
EDTA
標準
液(
0.02 mol/L
)を加え,c)の予備滴定値より
1
〜
2 mL
少ないところで一度止めてかき混ぜる。
e)
b)
と同量の水酸化カリウム溶液(
200 g/L
)を加えてかき混ぜ,
2
〜
3
分間放置する。カルセイン指示薬
又はカルセイン−
PPC
指示薬約
0.05 g
を加え,d)と同様に
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)で滴定する
3)
。
f)
カルセイン指示薬によって,光度滴定を行う場合は JIS R 5202 の 10.2.3.2(光度滴定による場合)に
よる。
注
3)
滴定は,黒紙の上で行うと終点が判別しやすい。
A.6.3.4
計算
試料中の酸化カルシウムの含有率は,式
(A.4)
によって算出する。
100
20
250
×
×
×
=
m
E
v
CaO
(A.4)
ここに,
CaO
:
酸化カルシウムの含有率(
%
)
v
:
A.6.3.3.2 d)
又は,A.6.3.3.3 e)で求めた
EDTA
標準液(
0.02
mol/L
)の使用量(
mL
)
24
A 5011-1
:2013
E
:
A.6.3.2 o)
で求めた
EDTA
標準液(
0.02 mol/L
)
1 mL
の酸化カ
ルシウム相当量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.6.4
蛍光 X 線分析法
蛍光
X
線分析法は,A.10 による。
A.6.5 ICP
発光分光分析法
ICP
発光分光分析法は,A.11 による。
A.7
全硫黄の定量方法
A.7.1
一般
高炉スラグ骨材中の全硫黄(
S
)の定量方法は,次のいずれかによる。これらの方法は,全硫黄含有率が
0.1
〜
5 %
の試料に適用する。
a)
硫酸バリウム質量法
b)
熱分解−赤外線吸収法
c)
熱分解−よう素酸カリウム滴定法
d)
ICP
発光分光分析法
A.7.2
硫酸バリウム質量法
A.7.2.1
要旨
試料を白金るつぼにはかりとり,炭酸ナトリウム及び硝酸ナトリウムを加えてよく混合し加熱融解する。
融成物は塩酸に溶解し加熱乾固後,再び塩酸に溶解してろ過する。ろ液に塩酸を加えて酸濃度を調節した
後,塩化バリウムを加えて硫酸バリウムの沈殿を生成させ,こし分けてその質量をひょう(秤)量する。
A.7.2.2
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸
b)
塩酸(
1
+
1
,
1
+
100
)
c)
硫酸(
1
+
1
)
d)
ふっ化水素酸
e)
アンモニア水
f)
炭酸ナトリウム
g)
融解合剤:炭酸ナトリウム
10
に硝酸ナトリウム
1
の割合で混合したもの。
h)
炭酸ナトリウム溶液(
20 g/L
)
i)
塩化バリウム溶液:塩化バリウム(
BaCl
2
・
2H
2
O
)
100 g
を適量の水で溶解し,水で
1 L
に薄め,
12
時
間以上静置した後,使用直前にろ過して使用する。
j)
塩化バリウム塩酸溶液:塩化バリウム(
BaCl
2
・
2H
2
O
)
1 g
を塩酸(
2
+
100
)
1 L
に溶解し,
12
時間以上
静置した後,使用直前にろ過して使用する。
k)
エタノール
l)
メチルレッド溶液:調製方法は,A.6.2.2
o)
による。
A.7.2.3
操作
操作は,次の手順による。
a)
試料約
0.5 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとり,炭酸ナトリウム約
3 g
で内張りした白金るつぼに移し入
25
A 5011-1
:2013
れ,これに約
5 g
の融解合剤を加え,十分に混合する。るつぼを初めは徐々に加熱し,次第に温度を
高めて内容物が透明になるまで融解する。冷却後,融成物を温水に溶解し,エタノール
1 mL
を加え
て煮沸した後,ろ紙(
5
種
A
)を用いてろ過し,炭酸ナトリウム溶液(
20 g/L
)で十分に洗浄する。こ
のろ液と洗液はビーカ(
300 mL
)に集め,塩酸で中和し,更に約
10 mL
過量に加える。沈殿は捨てる。
b)
この溶液を加熱蒸発し,乾固させて温度約
110
℃で
30
分間加熱した後,塩酸
5 mL
で湿し,温水約
30 mL
を加え加熱して可溶性塩を溶解する。ろ紙(
5
種
C
)を用いてろ過し,塩酸(
1
+
100
)で約
5
回洗浄する。ろ液及び洗液をビーカ(
300 mL
)に集め,液量が
100
〜
120 mL
になったら洗浄をやめ,
これにメチルレッド溶液を
2
〜
3
滴加え,アンモニア水を溶液の色が黄となるまで加える。これに赤に
なるまで塩酸(
1
+
1
)を加えて酸性にし,更に
2 mL
過量に加える。
c)
この溶液を温度
60
〜
70
℃に加熱し,溶液をかき混ぜながら塩化バリウム溶液
10 mL
をピペットを用
いて滴加し,約
5
分間かき混ぜる。水浴上で温度
60
〜
70
℃に約
2
時間加温した後,室温にて
12
時間
静置する。これをろ紙(
5
種
C
)を用いてろ過した後,塩化バリウム塩酸溶液を用いてビーカの内壁
を
1
回洗浄してろ紙に注ぎ,これまでのろ液と洗液は捨てる。ビーカ内壁に付着した沈殿は,ゴム管
付きガラス棒を用いてこすり落とし,塩化バリウム塩酸溶液を用いてろ紙上に洗い落とし,更に沈殿
を
2
〜
3
回洗浄する。次に,熱水を用いて洗液に塩素イオンがなくなるまで洗浄する。洗浄後の沈殿及
びろ紙は保存しておく。
d)
洗液をビーカ(
300 mL
)に集め,塩化バリウム溶液
2 mL
を加え,乾固直前まで加熱蒸発した後,低
温部に移し,焼き付かないように注意して乾燥する。冷却後,塩酸(
1
+
1
)
2 mL
及び温水
25 mL
を
加えて水浴上で温度
60
〜
70
℃に約
2
時間加温した後,ろ紙(
5
種
C
)を用いてろ過し,熱水で十分に
洗浄する。
e)
c)
及び d)で得た沈殿は,ろ紙とともに質量が既知の白金るつぼに移し入れて乾燥後,低温で炭化し,
次に,温度約
500
℃で灰化した後,温度約
800
℃で一定質量になるまで加熱し,デシケータ内で常温
まで放冷して硫酸バリウムとしてその質量をはかる。ただし,二酸化けい素を含む場合には,次の操
作を行う。硫酸(
1
+
1
)で浸し,ふっ化水素酸約
5 mL
を加え,飛散しないように加熱溶解して二酸
化けい素及び硫酸を揮散させる。この白金るつぼを温度約
800
℃で一定質量となるまで加熱し,デシ
ケータ内で放冷し,白金るつぼの質量をはかる。
A.7.2.4
計算
試料中の全硫黄の含有率は,式
(A.5)
によって算出する。
100
4
137
.
0
×
×
=
m
A
S
(A.5)
ここに,
S
:
全硫黄の含有率(
%
)
A
:
硫酸バリウムの質量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.7.3
熱分解一赤外線吸収法
A.7.3.1
要旨
試料を分解助剤とともに酸素気流中で高周波加熱し,発生した硫黄酸化物を過剰の酸素とともに,赤外
線吸収検出器の測定セルに送り,二酸化硫黄の赤外線吸収量を測定する。
A.7.3.2
試薬及び標準物質
試薬及び標準物質は,次による。
a)
酸素:
99.5 %
以上のもの。
26
A 5011-1
:2013
b)
酸化鉄(
III
)
:できるだけ純度がよく,硫黄含有率が
0.003 %
以下のもの。
c)
硫黄標準液:事前に
105
〜
110
℃で一定質量となるまで乾燥してデシケータ中で放冷した硫酸カリウ
ム(
99.9 %
以上)を
表 A.1 に従ってはかりとり,それぞれ水で溶解してから
100 mL
の全量フラスコに
水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて硫黄標準液とする。
表 A.1−硫黄標準液
硫黄標準液
はかりとり量
g
硫黄の濃度
mg/mL
A 0.543
5 1.0
B 1.902
2 3.50
C 2.717
4 5.00
D 4.076
1 7.50
E 5.434
8
10.0
d)
高炉スラグ及び鉄鉱石などの認証標準物質:硫黄の認証値が
0.1
〜
1.0 %
の範囲で,化学組成が分析試
料と類似しているもの。
注記
認証標準物質は,一般社団法人日本鉄鋼連盟から分譲されたものがよい。
e)
校正試料:硫黄含有率が定量範囲の上限及び下限近傍で,かつ,既知で,測定値の再現性がよいもの。
A.7.3.3
装置
高周波誘導加熱炉型:酸素精製部,試料加熱部,発生ガス精製部及び二酸化硫黄定量部から構成される
積分方式の装置で,次のものを用いる。
a)
酸素精製部 酸素精製部は,酸素の圧力及び流量を調節し,その中に含まれる硫黄酸化物,水などの
硫黄定量に妨げとなる成分を除去する部分で,酸素ボンベ,減圧弁,流量計,硫黄酸化物吸収管,脱
水管などから構成し,この順序に連結して使用する。
硫黄酸化物吸収管には,ソーダ石灰又は粒状水酸化ナトリウムを詰めた塔及び脱水管には,過塩素
酸マグネシウム(無水)を詰めた塔を用いる。また,減圧弁は二段式のものが望ましく,流量計は使
用する装置に指定されたものを用いる。
b)
試料加熱部 試料加熱部は,試料を加熱分解させる部分で,石英製燃焼管(以下,燃焼管という。)及
び高周波誘導加熱炉(以下,加熱炉という。
)から構成する。燃焼管の入り口は酸素精製部,出口は二
酸化硫黄定量部に連結して使用する。加熱炉は,次のものを用いる(
図 A.1 参照)。
加熱炉は,燃焼管(
a
)
(外径
30
〜
44 mm
,内径
26
〜
37 mm
,長さ
140
〜
220 mm
),その外側に巻い
た加熱コイル(
b
)
(高さ
30
〜
55 mm
,巻数
4
〜
5
)
,これに高周波電流を供給する高周波発振器などか
ら構成する。高周波燃焼用磁器るつぼ(
c
)
(以下,るつぼという。
)に試料を入れ,このるつぼを加熱
コイルのほぼ中央に保持して電流を通じたとき,試料が分解して硫黄が完全に追い出される温度が得
られるようにする。酸素の供給にはバイパス回路を設けて,るつぼ受け台(
d
)の動きと連動させるも
のでもよい。また,発生ガスの出口は,燃焼管と一体として硫黄酸化物の凝縮を防止できるものとす
る。
c)
発生ガス精製部 発生ガス精製部は,発生ガス中の酸化物ダストを除去するもので,円筒形の金属フ
ィルタ(
e
)及びガラス綿を詰めた集じん管(
f
)を用いる(
図 A.1 参照)。金属フィルタの周囲は,水
が凝集しないように加熱機構(
g
)があるものが望ましい。また,発生ガス精製部と二酸化硫黄定量部
の間には,過塩素酸マグネシウム(粒径
0.5
〜
2 mm
)を詰めた管を連結する。
d)
二酸化硫黄定量部 二酸化硫黄定量部は,精製された発生ガス中の二酸化硫黄を定量する部分で,赤
27
A 5011-1
:2013
外線検出器,測定回路などで構成する。赤外線吸収検出器(
図 A.2 参照)は,赤外線発生源(
h
)
,フ
ィルタセル(
i
)
,測定セル(
j
)
,対照セル(
k
),赤外線検出部(
l
)などから構成し,二酸化硫黄の赤
外線吸収量を測定できるものとする。
測定回路は,直線化回路,積分回路,演算回路などから構成し,赤外線吸収検出器から取り出され
た電気信号を,二酸化硫黄濃度と直線関係に変換,積分し,硫黄量に比例した値として指示計に指示
する。指示計は,指定された試料はかりとり量の場合に硫黄含有率を表示するものが望ましい。
A.7.3.4
器具及び材料
器具及び材料は,次による。
a)
るつぼ 磁器製で,高周波誘導加熱炉での燃焼に耐え得るもの。るつぼは,電気炉に入れて空気中又
は酸素気流中で,
1 100
℃で
2
時間以上強熱し,使用直前までデシケータ中に保存する。
b)
分解助剤 分解助剤は,酸素中で試料を加熱分解させ,試料中の硫黄を二酸化硫黄として発生しやす
くするため,試料の上に載せて使用するもので,次の材料を組み合わせて用いる。いずれも硫黄含有
率が
0.001 %
以下のもの。
1)
鉄:例えば,粒状
0.2
〜
1.2 mm
のもの。
2)
すず:例えば,粒状
0.2
〜
3.0 mm
のもの。
3)
タングステン:例えば,粒状
0.1
〜
1.0 mm
のもの。
c)
すずカプセル 直径約
6 mm
,高さ約
18 mm
,質量約
0.3 g
で容量約
0.4 mL
のもの。
d)
ミクロピペット
100 μL
で誤差
1 μL
以下のもの。
A.7.3.5
試料のはかりとり量
試料のはかりとり量は約
0.1 g
とし,
0.1 mg
の桁まではかりとる。
A.7.3.6
操作
a)
準備操作 A.7.3.3 の装置を気密に連結した後,電源を入れて各部を安定させ,高周波誘導加熱に関す
る条件
4)
を設定する。次に校正試料を分析し,その表示値がそれぞれ校正試料の硫黄含有率に近似す
るように装置を校正する。
注
4)
高周波発振器の陽極電流,格子電流など,使用する装置の仕様に応じて決められた条件によ
る。
b)
定量操作 定量操作は,次の手順によって行う。
1)
試料をはかりとってるつぼに移し入れ,その上に分解助剤の鉄
0.500 g
,すず
0.3
〜
0.5 g
,タングス
テン
1 g
を順に覆う。
2)
るつぼを燃焼管(
a
)の加熱コイル(
b
)の中心部に挿入する。
3)
酸素精製部と気密に連結し,酸素を送入して空気と置換した後,燃焼管(
a
)内を所定の圧力にし,
高周波スイッチを入れて試料を分解させる。赤外線吸収検出器の指示値が一定になったとき,高周
波誘導加熱をやめ
5)
,指示値を読み取る。るつぼを燃焼管外に取り出して,試料の分解状態が完全
であるかどうか溶融状態を調べる。試料の分解が不完全な場合は,分析をやり直す。
注
5)
燃焼タイマー付きの装置の場合は,自動的に停止する。
A.7.3.7
空試験
試料を用いないで,A.7.3.6
b)
の 1)〜3)の手順に従って試料と同じ操作を試料と併行して行う。
A.7.3.8
検量線の作成
検量線の作成は,次のいずれかによる。
a)
硫黄標準液による場合
28
A 5011-1
:2013
1)
ミクロピペットを用いて,水及び硫黄標準液を,
表 A.2 に示すように分取して
6
個の別々のすずカ
プセル中に移し入れる。次に,
90
℃で完全に乾燥するまで静かに水を蒸発し,デシケータ中で室温
まで放冷する。
2)
1)
で得たすずカプセルをるつぼに入れ,カプセルをるつぼの底部へ軽く押し付ける。次に酸化鉄(
III
)
0.500 g
,分解助剤の鉄
0.500 g
及びタングステン
1 g
を順に覆う。以下,A.7.3.6
b)
の 2)及び 3)の手
順に従って操作して指示値を読み取る。
3)
分取した硫黄量と指示値の関係線を作成し,その関係線が原点を通るように平行移動して検量線と
する。
表 A.2−硫黄標準液分取量
硫黄標準液
分取量
μL
分取した溶液中の硫黄質量
μg
水 100
0
A 100
100
B 100
350
C 100
500
D 100
750
E 100
1 000
b)
高炉スラグ及び鉄鉱石などの認証標準物質による場合
1)
硫黄の定量範囲をほぼ均等に分割するように認証標準物質を
4
,
5
種類用意し,それぞれ
0.10 g
付近
を
0.1 mg
の桁まではかりとってるつぼに移し入れ,その上に分解助剤の鉄
0.500 g
,すず
0.3
〜
0.5 g
及びタングステン
1 g
を順に覆う。以下,A.7.3.6
b)
の 2)及び 3)の手順に従って操作して指示値を読
み取る。
2)
認証標準物質中の硫黄と指示値の関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検
量線とする。
A.7.3.9
計算
A.7.3.6
b)
及び A.7.3.7 で得た指示値と,A.7.3.8 で作成した検量線とから硫黄量を求め,試料中の硫黄含
有率を式
(A.6)
によって算出する。
100
)
(
2
1
×
−
=
m
m
m
S
(A.6)
ここに,
S
:
試料中の硫黄含有率(
%
)
m
1
:
試料の分析で得た硫黄量(
g
)
m
2
:
空試験で得た硫黄量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
29
A 5011-1
:2013
a 石英製燃焼管
e 金属フィルタ
b 高周波誘導加熱コイル
f 集じん管
c るつぼ
g 加熱機構
d 受台
図 A.1−高周波誘導加熱炉及び発生ガス精製部の例
h 赤外線発生源
k 対照セル
i フィルタセル
l 赤外線検出部
j 測定セル
図 A.2−赤外線吸収検出器の例
A.7.4
熱分解−よう素酸カリウム滴定法
A.7.4.1
要旨
試料を酸化タングステン(
VI
)と混合し,窒素気流中で高温に加熱して硫黄を二酸化硫黄とする。これ
30
A 5011-1
:2013
を塩酸を含むよう化カリウム溶液に吸収させ,でんぷんを指示薬としてよう素酸カリウム標準液で滴定す
る。
A.7.4.2
試薬
試薬は,次による。
a)
窒素(体積分率
99.5 %
以上)
b)
過塩素酸マグネシウム:粒径
0.5
〜
2 mm
のもの。
c)
塩化すず(
II
)二水和物:粒径
0.5
〜
2 mm
のもの。
d)
酸化タングステン(
VI
)
:粉末状のもの。
e)
アスカライト
f)
吸収液:塩酸(
1.5
+
98.5
)
80 mL
,よう化カリウム溶液(
30 g/L
)
1 mL
及びでんぷん溶液(
20 g/L
)
1 mL
を混合する。でんぷん溶液(
20 g/L
)は,次によって調製する。
でんぷん(溶性)
2 g
をはかりとってビーカ(
200 mL
)に移し入れ,水
10 mL
でのり状に練り,約
50 mL
の煮沸水中に注ぎ入れ,約
1
分間煮沸して冷却し,水で液量
100 mL
とする。この溶液は,使
用の都度調製する。
g)
よう素カリウム標準液:よう素カリウム
0.222 5 g
を水に溶解し,これを
1 000 mL
の全量フラスコに
水を用いて移し,水で標線まで薄める。この溶液
1 mL
に相当する硫黄の質量は,試料と組成の類似
する硫黄含有率既知の高炉スラグ及び鉄鉱石の認証標準物質を用いて A.7.3.6 の手順に従って操作し,
式
(A.7)
によって求める。
V
G
P
f
×
×
= 01
.
0
(A.7)
ここに,
f
:
よう素カリウム標準溶液
1 mL
に相当する硫黄の質量(
g
)
P
:
認証標準物質の硫黄含有率(
%
)
G
:
認証標準物質のはかりとり量(
g
)
V
:
よう素カリウム標準液の使用量(
mL
)
A.7.4.3
装置,器具及び材料
装置,器具及び材料は,次による(
図 A.3 及び図 A.4 参照)。
a)
窒素清浄装置(
a
)
窒素ガスを清浄乾燥するためのもので,アスカライト及び過塩素酸マグネシウム
を詰めた塔。
b)
熱分解炉(
b
)
管状電気抵抗加熱炉は,長さ約
300 mm
で電気抵抗加熱体を用いて加熱し,電流を調
節して温度を加減し,炉の中央部の長さ約
150 mm
を
1 200
±
25
℃の一定温度に保つことができるも
の。また,出口部にテーパを付けてすり合わせガラス製キャップ(
g
)をはめ,ばね(
h
)で炉壁に締
め付ける。また,ガラス製キャップ(
g
)と炉壁との間に遮熱板(
i
)を置き,炉体からの熱が吸収瓶
(
e
)に当たらないようにする。炉の中央部の磁器燃焼管(
c
)の真上の温度を熱電高温度計で測定す
る。熱電高温度計の指示値は,一般に磁器燃焼管(
c
)内の温度と異なるので,その差を求めておき,
必要があれば指示値を補正して磁器燃焼管(
c
)内の温度を求める。磁器燃焼管(
c
)と窒素清浄装置
(
a
)との連結は,すり合わせ又は耐熱性のシリコーンゴム栓を用いる。
なお,新しい磁器燃焼管を使用するときは,
1 200
℃で
30
分間以上窒素気流中で空焼きを行う。
c)
吸収瓶(
e
)
吸収液約
80 mL
を入れ,ガラス製キャップ(
g
)の先に内径
6 mm
の導入管(ガラス製)
(
d
)を取り付け,その先端が吸収瓶の最下部に達するようにして小孔を開けたもの
6)
。液面までの高
さを
60
〜
80 mm
とする。
31
A 5011-1
:2013
d)
ビュレット(
f
)
ビュレットは,
25 mL
を用いる。硫黄含有率が
0.005 %
未満の場合は,最小目盛が
0.05 mL
のミクロビュレット,又はそれ以上の滴定液滴加精度をもつ滴定器具を用いる。
e)
吸収細管(
k
)
7)
試料から発生した塩素ガスを分離するもので,約
10 g
の塩化すず(
II
)二水和物を
詰めた細いガラス管で,磁器燃焼管(
c
)中の
図 A.3 に示す位置に挿入する。
なお,吸収細管(
k
)の出口側は,試薬が吸収瓶(
e
)側へ吹き飛ばされないように石英ウールを詰
めておく。また,塩化すず(
II
)二水和物の溶解を避けるため,挿入位置はできるだけ低温部にする。
f)
磁器燃焼ボート(
l
)
及び磁器燃焼ボートカバー(以下,ボート及びカバーという。)
ボートは,JIS R
1306
に規定する
CBl
(磁器燃焼ボート
1
種)を用い,必要に応じてカバーを使用する。カバーは,JIS
R 1306
に規定する
CBCl
(磁器燃焼ボートカバー
1
種)を用いる。ボート及びカバーはあらかじめ窒素
気流中又は空気中で
1 200
℃で
10
分間加熱後,デシケータ中で保有したものを用いる
8)
。カバーを用
いる代わりに,多孔質のカートリッジ(
図 A.4)を用いてもよい。
注
6)
小孔の代わりに,その先端を内径
1 mm
に絞り,この管に吸収液面の下約
15 mm
の位置に,
合成樹脂板に多くの小孔を開けた中板(
j
)を取り付けてもよい。
7)
塩化物を含む試料を分析するときに使用する。試料中の塩化物を塩素として
1 %
以上含む試
料を多数分析するときは,塩化すず(
II
)二水和物を取り替える頻度を明確にするため,この
試薬の塩素吸収効率を前もって求めておかなければならない。また,試料中の塩素含有率が
不明の場合は,この塩化すず(
II
)二水和物の吸収細管(
k
)を使用するのが適当である。
8)
デシケータからの出し入れは,ピンセットなどで扱い,直接手を触れてはならない。長時間
保存し,空試験値が高くなっているおそれがあるものは,使用を避けて再度空焼きを行う。
A.7.4.4
試料のはかりとり量
試料のはかりとり量は,
表 A.3 による。
表 A.3−試料のはかりとり量
硫黄含有量
%
試料のはかりとり量
g
0.002 以上 0.05 未満
1.0
0.05 以上 0.30 未満
0.50
0.30 以上 1.0 未満 0.20
1.0 以上 2.0 以下 0.10
A.7.4.5
操作
操作は,次の手順によって行う。
a)
A.7.4.3
の装置を気密に連結し
9), 10)
,磁器燃焼管(
c
)を加熱してその管内温度を
1 200
℃とする。次
に,窒素を毎分
150
〜
200 mL
の割合で流しながら,よう素酸カリウム標準液の数滴を加え,吸収液が
淡い青を呈するようにする。
b)
試料を
表 A.3 に従って
0.1 mg
の桁まではかりとってひょう量瓶に移し入れ,
更に酸化タングステン
1 g
を加えて十分に混合した後,ボートに移し入れ,カバーをかぶせ,挿入棒で磁器燃焼管(
c
)の加熱部
の中央に挿入して気密に栓をする。
c)
直ちに,窒素を毎分
150
〜
200 mL
の割合で送入し,発生した二酸化硫黄などを窒素とともに吸収瓶(
e
)
に導き,吸収液が青を保ち続けるように,よう素酸カリウム標準液を絶えず滴下し,引き続き
5
分間
11)
窒素ガスを流す。
32
A 5011-1
:2013
d)
磁器燃焼管(
c
)の出口のキャップ(
g
)を外し,吸収液でガラス管内を数回洗浄し,再びキャップ(
g
)
をして窒素を流して淡い青を呈するまで滴定し,終点とする。
注
9)
塩化物を含む場合は,吸収細管(
k
)を使用する。
10)
キャップ(
g
)は使用前に洗浄,乾燥したものを用いる。また,試料の種類によっては汚染さ
れやすいものがあるので,この場合は直ちに清浄なキャップと取り代える。
11)
試料が多量の化合水を含む場合は,装置の内部に水が付着するので,このようなときは滴定
完了前に外部から加熟して完全に気化蒸発させる必要がある。
A.7.4.6
空試験
試験試料を用いないで,A.7.4.5 の a)〜d)の手順に従って,試料と同じ操作を試料と併行して行う。
A.7.4.7
計算
A.7.4.5
の d)及び A.7.4.6 で得た滴定量から,試料中の硫黄含有率を式
(A.8)
によって算出する。
(
)
100
2
1
×
×
−
=
m
f
V
V
S
(A.8)
ここに,
S
:
試料中の硫黄含有率(
%
)
V
1
:
試料の分析におけるよう素カリウム標準液の使用量(
mL
)
V
2
:
空試験におけるよう素カリウム標準液の使用量(
mL
)
f
:
よう素カリウム標準液の使用量
1 mL
に相当する硫黄の質量
(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
33
A 5011-1
:2013
単位 mm
注記 寸法は概略を示す。
a
窒素清浄装置
b
熱分解炉
c
磁器燃焼管(内径φ24 mm)
d
導入管
e
吸収瓶
f
ビュレット
g
ガラス製キャップ
h
ばね
i
遮熱板
j
中板
k
吸収細管
l
磁器燃焼ボート
m 廃液だめ
図 A.3−硫黄定量装置の例
34
A 5011-1
:2013
単位 mm
a)
磁器燃焼ボート(l)と磁器燃焼ボートカバーの例
b)
磁器燃焼ボート(l)とカートリッジの例
注記 寸法は概略を示す。
図 A.4−燃焼ボートの例
A.7.5 ICP
発光分光分析法
ICP
発光分光分析法は,A.11 による。
A.8
三酸化硫黄の定量方法
A.8.1
一般
高炉スラグ骨材中の三酸化硫黄(
SO
3
)で表示される酸可溶性硫酸塩の定量方法は,硫酸バリウム質量
法による。この方法は三酸化硫黄含有率
0.1
〜
15 %
の試料に適用する。
A.8.2
要旨
試料を塩酸にて溶解後,アンモニア水を加えてアルカリ性とし,ろ過する。ろ液に塩酸を加えて酸濃度
を調節した後,塩化バリウムを加えて硫酸バリウムの沈殿を生成させ,こし分けてその質量をひょう量す
る。
A.8.3
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸(
1
+
1
,
1
+
5
)
b)
アンモニア水
c)
塩化バリウム溶液(
100 g/L
)
:塩化バリウム(
BaCl
2
・
2H
2
O
)
100 g
を適量の水で溶解し,水で
1 L
に
薄め
1
夜間以上静置した後,使用直前にろ過して使用する。
d)
塩化バリウム塩酸溶液:塩化バリウム(
BaCl
2
・
2H
2
O
)
1 g
を塩酸(
2
+
100
)
1 L
に溶解し,
12
時間以
上静置した後,使用直前にろ過して使用する。
e)
メチルレッド溶液:調製方法は,A.6.2.2
o)
による。
A.8.4
操作
操作は,次の手順によって行う。
a)
試料約
1 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとり,ビーカ(
300 mL
)に移し入れ,水約
10 mL
を加え,時計皿
35
A 5011-1
:2013
で蓋をして煮沸直前まで加熱し振り混ぜながら塩酸(
1
+
5
)
20 mL
を加え,静かに加熱して試料を分
解する。分解しにくい塊状の内容物は,ガラス棒ですりつぶして可溶分を溶解し,
5
〜
6
分間煮沸する。
b)
熱水で液量を約
100 mL
に薄め,少量のろ紙パルプを加えて煮沸し,これにメチルレッド溶液を指示
薬としてアンモニア水でアルカリ性とし,更に
30
秒間煮沸する。この溶液を熱いうちにろ紙(
5
種
B
)
を用いてろ過し,少量の熱水で
1
回洗浄する。このときのろ液及び洗液をビーカ(
300 mL
)に保存す
る。
c)
ろ紙の沈殿を元のビーカに移し入れ,熱塩酸(
1
+
5
)
20 mL
を加え,加熱して
5
〜
6
分間煮沸する。
d)
b)
の操作を繰り返し,先のろ紙を使用してろ過し,ろ液及び洗液を b)で得たろ液及び洗液に合わせ,
液量を約
200 mL
とする。残さはろ紙とともに捨てる。
e)
このろ液及び洗液に溶液の色が赤になるまで塩酸(
1
+
1
)を加えて中和し,更に
2 mL
過量に加えて
酸性とする。
f)
以下,A.7.2.3
c)
〜e)に従って操作を行う。
A.8.5
計算
試料中の三酸化硫黄の含有率は,式
(A.9)
によって算出する。
100
343
.
0
3
×
×
=
m
A
SO
(A.9)
ここに,
SO
3
:
三酸化硫黄の含有率(
%
)
A
:
硫酸バリウムの質量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.9
全鉄の定量方法
A.9.1
一般
高炉スラグ骨材中の酸化第一鉄(
FeO
)で表示される全鉄定量方法は,次のいずれかによる。これらの
方法は,全鉄含有率が
0.1
〜
5 %
の試料に適用する。
a)
三塩化チタン還元二クロム酸カリウム滴定法
b)
原子吸光分析方法
c)
1,10-
フェナントロリン吸光光度法
d)
蛍光
X
線分析法
e)
ICP
発光分光分析法
A.9.2
三塩化チタン還元二クロム酸カリウム滴定法
A.9.2.1
要旨
試料をるつぼで融解させ冷却後,塩酸(
1
+
1
)を加えて沈殿を加熱溶解し,インジゴカルミン溶液を加
え,三塩化チタンを滴加し,無色になるまで還元する。これに二クロム酸カリウム溶液を滴加し,更にジ
フェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶液数滴を加え,
0.016 67 mol/L
二クロム酸カリウム標準液で滴定す
る。
A.9.2.2
試薬
a)
塩酸(
1
+
1
,
1
+
2
,
1
+
10
,
2
+
100
)
b)
融解合剤:炭酸ナトリウムと過酸化ナトリウムの等量混合物
c)
三塩化チタン溶液:三塩化チタン溶液(
TiCl
3
約
20 %
)を塩酸(
1
+
1
)で
10
倍に薄める。
d)
水酸化ナトリウム溶液(
20 g/L
)
36
A 5011-1
:2013
e)
混酸(硫酸
3
+りん酸
3
+水
14
)
f)
二クロム酸カリウム溶液(
1 g/L
)
g)
インジゴカルミン溶液(
1 g/L
)
h)
ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶液(
2 g/L
)
:この溶液は,褐色の瓶に入れて保存する。
i)
0.016
67
mol/L
二クロム酸カリウム溶液(
K
2
Cr
2
O
7
:
4.903 g/L
)
:調製,標定及び計算は,JIS K 8001 の
JA.5.2
v)
[
1/60 mol/l
二クロム酸カリウム溶液(
K
2
Cr
2
O
7
:
4.903 g /l
)
]による。
A.9.2.3
操作
a)
試料約
1.0 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとり,アルミナるつぼ(
C
形
30 mL
)に移し入れ,融解合剤約
10 g
を加えてよく混和し,初めは低温で加熱し,内容物が融解してから,次第に温度を高めて暗赤熱
状とし,完全に融解する。
b)
冷却した後,るつぼをビーカ(
300 mL
)に入れ,温水約
100 mL
を加えて融成物を浸出し,更に数分
間煮沸した後,るつぼを温水で洗って取り出す。このビーカを流水中に浸せきして室温まで冷却後,
ろ紙(
5
種
A
)を用いて水酸化物の沈殿をろ過する。沈殿及びろ紙を水酸化ナトリウム溶液(
20 g/L
)
で
6
〜
8
回,次に温水で
5
〜
6
回洗浄する。このときの,ろ液及び洗液は捨てる。
c)
ろ紙上の沈殿を射水して元のビーカに洗い落とした後,塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加えて沈殿を加熱溶解
し,元のろ紙上に注いでろ紙上に残存した沈殿を溶解し,初めは温塩酸(
1
+
2
)で
3
回,次に温塩酸
(
2
+
100
)で数回,最後に温水で洗液に酸がなくなるまで洗浄する。ろ液及び洗液をビーカ(
500 mL
)
に集め,先に取り出したるつぼをこのビーカの中に入れて付着物を溶解し,るつぼを温水で洗って取
り出す。
d)
この溶液を煮沸させないように加熱温度を調節して加熱蒸発させて,約
70 mL
とし,熱いうちにビー
カの内壁に付着している塩化鉄を少量の熱塩酸(
1
+
10
)で洗い落とす。直ちにインジゴカルミン溶液
(
1 g/L
)
4
滴を加え,三塩化チタン溶液を滴加し,薄い青から無色になるまで還元する。これに二ク
ロム酸カリウム溶液(
1 g/L
)を用いて,溶液に薄い青色が約
5
秒間保持するまで滴加する。
e)
この溶液に混酸の
30 mL
を加えて水で約
300 mL
に薄め,ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶
液(
2 g/L
)数滴を加え,
0.016 67 mol/L
二クロム酸カリウム溶液で滴定する。このときの終点は溶液
の色が緑となり,最後の一滴で紫を呈する点とする。
A.9.2.4
計算
試料中の全鉄の含有率は,式
(A.10)
によって算出する。
100
185
007
.
0
×
×
=
m
V
FeO
(A.10)
ここに,
FeO
:
全鉄の含有率(
%
)
V
:
0.016 67 mol/L
二クロム酸カリウム溶液の使用量(
mL
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.9.3
原子吸光分析方法
A.9.3.1
要旨
A.9.3.3
の a)〜c)に従って処理した溶液を一定量にし,
原子吸光分析計を用いて,
鉄の吸光度を測定する。
A.9.3.2
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸(
1
+
1
,
2
+
100
)
b)
融解合剤:炭酸ナトリウムと過酸化ナトリウムの等量混合物
37
A 5011-1
:2013
c)
水酸化ナトリウム溶液(
20 g/L
)
d)
鉄標準液(
FeO
:
1.0 mg/mL
)
:鉄(
99.9 %
以上)
0.194 3 g
をビーカ(
300 mL
)にはかりとり,塩酸(
1
+
1
)
30 mL
を加え,時計皿で蓋をして溶解する。これに硝酸
2 mL
を加えて鉄を酸化し,静かに煮沸
して,窒素酸化物を追い出す。冷却後,
250 mL
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
A.9.3.3
操作
操作は,次の手順によって行う。
a)
試料約
0.5 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとり,A.9.2.3 の a)〜c)に従って操作を行う。
b)
この溶液を煮沸させないように加熱温度を調節して加熱蒸発し,約
70 mL
とする。冷却後,全量フラ
スコ(
100 mL
)に移し入れ,水で標線まで薄める。
c)
原子吸光分析計の空気−アセチレンフレームの中にこの溶液を噴霧し,
248.3 nm
の波長を用いて鉄の
吸光度を測定する。並行して検量線溶液の吸光度を測定し,作成した鉄の検量線から鉄の含有率を求
める。
A.9.3.4
検量線溶液の調製
数個の全量フラスコ(
100 mL
)を準備し,これに鉄標準液 A.9.3.2 d)を
0
〜
25 mL
段階的に加え,それぞ
れに塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加え,水で標線まで薄める。
A.9.3.5
計算
試料中の全鉄の含有率は,式
(A.11)
によって算出する。
100
×
=
m
c
FeO
(A.11)
ここに,
FeO
:
全鉄の含有率(
%
)
c
:
試料溶液中の鉄(
FeO
)の検出量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.9.4 1,10-
フェナントロリン吸光光度法
A.9.4.1
要旨
試料を塩酸,ふっ化水素酸及び過塩素酸を用いて分解し,塩化ヒドロキシルアンモニウムを加えて鉄を
還元した後,緩衝溶液及び
1,10-
フェナントロリンを加えて呈色させ,分光光度計を用いて,その吸光度を
測定する。
A.9.4.2
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸
b)
塩酸(
1
+
1
,
1
+
50
)
c)
ふっ化水素酸
d)
過塩素酸
e)
塩化ナトリウム
f)
塩化ヒドロキシルアンモニウム(
NH
2
OH
・
HC1
)溶液(
100 g/L
)
g)
緩衝溶液:酢酸アンモニウム
200 g
を水に溶かして
1 000 mL
にする。
h)
1,10-
フェナントロリン溶液:
1,10-
フェナントロリン塩酸塩(一水和物)
0.12 g
を水に溶かして
100 mL
とし,冷暗所に保存する。
i)
鉄標準液(
FeO
:
0.02 mg/mL
)
:純鉄(
99.9 %
以上)
0.155 g
をビーカ(
300 mL
)にはかりとり,塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加えて加熱分解し,これに過酸化水素水
1 mL
を注意して滴加後,煮沸して酸化し,更
38
A 5011-1
:2013
に煮沸を続けて過剰の過酸化水素水を分解した後,冷却して
1 000 mL
の全量フラスコに移し入れ標線
まで薄める。使用の都度,正しく
10
倍に薄める。
A.9.4.3
操作
操作は,次の手順によって行う。
a)
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順による。
1)
試料
0.5 g
を
0.1 mg
の桁まではかりとって白金皿又はポリ四ふっ化エチレンビーカに移し入れる。
2)
試料を少量の水で潤し,塩酸
15 mL
,過塩素酸
10 mL
及びふっ化水素酸
10 mL
を加え,静かに加熱
分解し,過塩素酸の白煙を激しく発生させて蒸発乾固する。
3)
冷却後,白金皿又はポリ四ふっ化エチレンビーカの内壁を水洗し,過塩素酸
3 mL
を加えて再び加
熱し,白煙を発生させる。乾固近くになったらやや低温で完全に乾固する。
4)
放冷後,塩酸(
1
+
1
)
5 mL
及び水
10 mL
を加え,時計皿で覆い水浴上で約
10
分間加熱する。
5)
冷却後,時計皿を水洗して取り除き,
250 mL
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
b)
呈色 試料溶液から,正確に
5 mL
を
100 mL
の全量フラスコに分取し,水で約
60 mL
に薄め,塩化ヒ
ドロキシルアンモニウム溶液
2 mL
を加えて振り混ぜ,
1,10-
フェナントロリン溶液
10 mL
及び緩衝溶
液
10 mL
を加え,標線まで水を加えて
7
,
8
回かくはんし,
30
分間放置する。
c)
吸光度の測定 溶液の一部を分光光度計の吸収セル(
10 mm
)に取り,水を対照液として,波長
510 nm
付近で吸光度を測定する。
A.9.4.4
空試験
試料を用いないで,A.9.3.3 の手順に従って,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
A.9.4.5
検量線の作成
鉄標準液(
FeO
:
0.02 mg/mL
)
0
〜
30 mL
(酸化第一鉄として
0
〜
0.6 mg
)を
100 mL
の全量フラスコに段
階的にとる。A.9.4.3 c)の手順に従って操作し,得た吸光度と全鉄(
FeO
)との関係線を作成して,この関
係線が原点を通るように平行移動して検量線とする。
A.9.4.6
計算
試料中の全鉄の含有率を,式
(A.12)
によって算出する。
(
)
100
5
250
2
1
×
×
−
=
m
A
A
FeO
(A.12)
ここに,
FeO
:
全鉄の含有率(
%
)
A
1
:
分取した試料溶液中の鉄(
FeO
)の検出量(
g
)
A
2
:
分取した空試験液中の鉄(
FeO
)の検出量(
g
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
A.9.5
蛍光 X 線分析法
蛍光
X
線分析法は,A.10 による。
A.9.6 ICP
発光分光分析法
ICP
発光分光分析法は,A.11 による。
A.10
蛍光 X 線分析による酸化カルシウム及び全鉄の定量方法
A.10.1
一般
蛍光
X
線分析による酸化カルシウム及び全鉄の定量方法は,ブリケット法又はガラスビード法のいずれ
かの方法を用いる。
39
A 5011-1
:2013
A.10.2
ブリケット法
A.10.2.1
要旨
試料に一次
X
線を照射して,試料から発生する蛍光
X
線強度を蛍光
X
線分析装置を用いて測定し,あ
らかじめ成分含有率既知の試料を用いて求めてある蛍光
X
線強度と成分含有率との関係線(検量線)から
定量値を求める。
A.10.2.2
定量範囲
定量範囲を
表 A.4 に示す。
表 A.4−定量範囲
単位 %
化学成分
定量範囲
酸化カルシウム 30〜50
全鉄 0.1〜5
A.10.2.3
装置
装置は,次による。
a)
蛍光 X 線分析装置 蛍光
X
線分析装置は,JIS K 0119 に規定するものとし,
表 A.4 の定量下限域でも
十分な測定感度をもつものとする。
b)
加圧成形装置 加圧成形装置は,
196
〜
392 kN
の能力をもつものとする。
A.10.2.4
成形試料調製方法
A.4
の規定に従って調製した試料は,測定のために,金属カップ,金属リング,成形ダイスなどによっ
て,加圧成形する。
なお,バインダを用いる場合は,試料とバインダを正確にはかりとり,一定の割合で均一に混合し,成
形する。
A.10.2.5
分析方法
分析方法は,次による。
a)
スペクトル線 使用するスペクトル線は,表 A.5 による。
表 A.5−スペクトル線
化学成分
スペクトル線
波長 nm
次数
酸化カルシウム Ca K
α 0.335
9 1
全鉄 Fe K
α 0.193
7 1
b)
検量線の作成 化学分析法によって成分含有率を決定した高炉スラグ試料の数点を,A.10.2.4 の方法
によって成形し,蛍光
X
線分析装置を用いて測定元素の蛍光
X
線強度を測定する。得られた蛍光
X
線強度と成分含有率から関係線を求める。
c)
定量 それぞれの成分の含有率は,b)と同様に測定して得た試料の蛍光
X
線強度から,b)で作成した
検量線を用いて算出する。
A.10.3
ガラスビード法
A.10.3.1
要旨
試料を融解剤で溶解してガラスビードを作製した後,蛍光
X
線分析装置の試料室に装入し,試料に一次
X
線を照射して,試料から発生する蛍光
X
線強度を測定し,あらかじめ成分含有率既知の試料を用いて作
40
A 5011-1
:2013
製している検量線から定量値を求める。
A.10.3.2
定量範囲
定量範囲を
表 A.6 に示す。
表 A.6−定量範囲
単位 %
化学成分
定量範囲
酸化カルシウム 30〜50
全鉄 0.1〜5
A.10.3.3
装置及び器具
装置及び器具は,次による。
a)
蛍光 X 線分析装置 蛍光
X
線分析装置は,JIS K 0119 に規定するものとし,
表 A.6 の定量下限域でも
十分な測定感度をもつものとする。
b)
ガラスビード作製装置 ガラスビード作製装置は,加熱方法として電気炉,ガスバーナ,高周波誘導
炉などをもつものとする。いずれの方法も温度が
1 000
〜
1 150
℃の範囲で一定温度を保持できること
が必要である。また,成分偏析及び気泡ができるだけ少ないガラスビードを得るため,融成物の振り
混ぜが容易にできるような装置であることが必要である。
c)
融解器具 融解器具は,次の
2
種類のうちいずれかを用いる。
1)
融解鋳込み兼用型 加熱融解操作によって変質変形しにくい材質で,しかも融解が完了した後,ガ
ラスビードが容易に剝離する容器
12)
を用いる。
2)
融解鋳込み分離型 融解用の容器
12)
は加熱融解操作によって変形せず,融成物を容易に鋳込み用容
器に流し込めるものを使用する。鋳込み用の容器は融成物の鋳込みの後,ガラスビードが容易に剝
離するものを使用する。
注
12)
容器の材質には,例えば,白金−金(
5
〜
20 %
)又は白金−金(
5
〜
20 %
)−ロジウム(
3
〜
5 %
)などを用いる。また,容器の大きさは,融成物量,加熱方法,
X
線照射面積などに
よって適切な大きさのものを選ぶ。
A.10.3.4
試薬
試薬は,次による。
a)
融解剤 四ほう酸ナトリウム(無水)又は四ほう酸リチウム(無水)融解剤には,空試験値のできる
だけ低い試薬を用いる。空試験値が低くてもロット番号が変わると空試験値が変動し,定量値に影響
を与えることがあるので,ロットを変えた場合は,含有率既知の試料を定量し,定量値が JIS R 5204
の 15.2(対標準物質許容差)で規定している対標準物質許容差を超える場合には,新しい融解剤に変
えた検量線を作成しなければならない。
b)
剝離促進剤 容器からガラスビードの剝離性をよくするもので,臭化ナトリウム,臭化カリウム,臭
素酸ナトリウム,硝酸ナトリウム,よう化ナトリウムなどを用いる。
A.10.3.5
ガラスビードの検定
ガラスビードの検定は,JIS R 5204 の 12.6(ガラスビード調製条件の検定)による。
A.10.3.6
操作
A.10.3.6.1
ガラスビード作製方法
a)
分析試料 試料は A.4 による。
41
A 5011-1
:2013
b)
分析試料,融解剤及び剝離促進剤のはかりとり 分析試料のはかりとり量は,分析試料
1
:融解剤
7
〜
10
の質量比で
0.3
〜
1 g
を±
2 mg
の精度ではかりとる。融解剤は,±
5 mg
の精度ではかりとる。ま
た,剝離促進剤を使用する場合は,剝離促進剤を±
1 mg
の精度ではかりとる。
A.10.3.6.2
融解及び成形
融解及び成形は,次のいずれかの手順によって行う。
a)
融解鋳込み兼用方法 融解鋳込み兼用方法は,次の手順によって行う。
1)
はかりとった試料,融解剤及び剝離促進剤を容器に移し入れ,穏やかにかき混ぜる。
2)
ガラスビード作製装置の電気炉,ガスバーナ,高周波炉などで融解する。融解の標準的な加熱温度
を,
表 A.7 に示す。温度はできるだけ一定に保つ。融解中は,融成物の均質化と気泡抜きのために
融成物を振り混ぜながら,
表 A.8 に示す時間加熱する。
表 A.7−融解剤の融解温度
単位 ℃
融解剤
融解温度
四ほう酸ナトリウム(無水)
1 000〜1 050
四ほう酸リチウム(無水) 1
050〜1 150
表 A.8−融解剤の融解時間
単位 分
加熱方法
融解時間
電気炉
8〜50
ガスバーナ 20〜25
高周波誘導加熱炉
3〜5
3)
融解が完了した後,室温まで放冷し,成形したガラスビードを容器から取り出す。
b)
融解鋳込み分離方法 融解鋳込み分離方法は,次の手順によって行う。
1)
はかりとった試料,融解剤及び剝離促進剤を融解用の容器に移し入れ,穏やかにかき混ぜる。
2)
a)
の 2)の操作を行う。
3)
融成物をあらかじめ
250
〜
400
℃に加熱してある鋳込み用の容器に移し入れ,室温まで放冷し,成
形したガラスビードを鋳込み用の容器から取り出す。
A.10.3.7
蛍光 X 線強度の測定
蛍光
X
線強度の測定は,次の手順によって行う。
a)
スペクトル線 分析に用いるスペクトル線は,表 A.5 による。
b)
測定操作 測定操作は,JIS K 0119 の箇条 7(測定操作)による。
A.10.3.8
検量線の作成
化学分析法によって成分含有率を決定した
7
種類以上の高炉スラグ試料を A.10.3.6 の操作によってそれ
ぞれ
2
個のガラスビードを作製し,蛍光
X
線分析装置を用いて測定元素の蛍光
X
線強度を測定する。得ら
れた
2
個の蛍光
X
線強度の平均強度と成分含有率から関係式を求め検量線とする。
A.10.3.9
定量
分析試料及び含有率既知のガラスビードを作製し,A.10.3.7 と同一条件で蛍光
X
線強度を測定し,得た
X
線強度から A.10.3.8 で作成した検量線を用いて含有率既知試料各元素の定量値を求める。含有率既知試
料の定量値が対標準物質許容差内にある場合は,分析試料の定量を行う。含有率既知試料の定量値が対標
42
A 5011-1
:2013
準物質許容差を超えている場合は,A.10.3.5 のガラスビードの検定を行うか,検量線を作成し直す。
A.11 ICP
発光分光分析法による酸化カルシウム,全硫黄及び全鉄の定量方法
A.11.1
要旨
試料を塩酸,硝酸,ふっ化水素酸,過塩素酸などで分解した後,蒸発乾固を行う。これを塩酸に溶解し
て得られた溶液を
ICP
発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,その発光強度を測定する。
A.11.2
定量範囲
定量範囲を
表 A.9 に示す。
表 A.9−定量範囲
単位 %
化学成分
定量範囲
酸化カルシウム
5〜50
全硫黄 0.01〜5
全鉄 0.1〜5
A.11.3 ICP
発光分光分析装置
ICP
発光分光分析装置は,JIS K 0116 に規定するものとし,
表 A.9 の定量下限を測定するのに十分な感
度をもつものとする。
A.11.4
試薬
試薬は,次による。
a)
塩酸
b)
塩酸(
1
+
1
)
c)
硝酸
d)
臭素
e)
ふっ化水素酸
f)
過塩素酸
g)
融解合剤:無水炭酸ナトリウム
10
に硝酸ナトリウム
1
の割合で混合したもの。
h)
カルシウム標準液(
Ca
:
0.5 mg/mL
)
:炭酸カルシウムを
180
℃で約
1
時間加熱し,デシケータ中で放
冷する。その
1.249 g
をはかりとり,ビーカ(
300 mL
)に移し入れ,塩酸(
1
+
1
)
100 mL
を加えて溶
解した後,煮沸して二酸化炭素を除去する。常温まで冷却した後,
1 000 mL
の全量フラスコに移し入
れ,水で標線まで薄めてカルシウム標準液(
Ca
:
0.5 mg/mL
)とする。
i)
硫黄標準液(
S
:
0.5 mg/mL
)
:硫酸カリウムを白金皿に取り,温度
800
℃で
1
時間加熱した後,デシ
ケータ中で放冷する。この硫酸カリウム
2.717 g
をはかりとり,ビーカ(
300 mL
)に移し入れ,水を
加えて溶解した後,
1 000 mL
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて硫黄標準液(
S
:
0.5
mg/mL
)とする。
j)
鉄標準液(
Fe
:
0.5 mg/mL
)
:鉄(
99.9 %
以上)
0.500 g
をはかりとり,ビーカ(
300 mL
)に移し入れ,
時計皿で覆い,塩酸(
1
+
1
)
30 mL
を加え,加熱して分解する。常温まで冷却した後,時計皿の下面
を水で洗浄して時計皿を取り除き,
1 000 mL
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて鉄標準
液(
Fe
:
0.5 mg/mL
)とする。
k)
イットリウム標準液(
Y
:
1 000 μg/mL
)
:三酸化二イットリウム(
99.9 %
以上)
1.270 g
をはかりとり,
43
A 5011-1
:2013
ビーカ(
300 mL
)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加え加熱して分解する。常温ま
で冷却した後,時計皿の下面を水で洗浄して時計皿を取り除き
1 000 mL
の全量フラスコに移し入れ,
水で標線まで薄める。
A.11.5
試料のはかりとり量
試料のはかりとり量は
0.2 g
とし,
0.1 mg
の桁まではかりとる。
A.11.6
操作
操作は,次の手順によって行う。
a)
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次による。
1)
試料をはかりとって,ポリ四ふっ化エチレンビーカ又は白金皿に移し入れ,硝酸
10 mL
及び臭素
1 mL
を加えて,穏やかに試料を加熱分解する。ただし,全硫黄を定量しない場合は,この操作を省
略できる。
引き続き,塩酸
15 mL
,過塩素酸
10 mL
及びふっ化水素酸
10 mL
を加えて加熱し,蒸発乾固する。
2)
放冷後,ポリ四ふっ化エチレンビーカ又は白金皿の内壁を少量の水で洗浄し,過塩素酸
5 mL
を加
え,再び加熱して蒸発乾固する。放冷後,塩酸(
1
+
1
)
40 mL
を加えて時計皿で覆い加熱溶解する。
3)
2)
の操作後に,不溶解残さが認められた場合は,ろ紙(
5
種
B
)で
200 mL
のビーカにろ過する。ろ
液は主液として保存する。残さは白金るつぼに移し入れ,乾燥灰化後,融解合剤約
2 g
加えてよく
混合し,初めは低温で加熱し,内容物が融解してから次第に温度を高めて暗赤熱状とし,完全に溶
解する。冷却後,るつぼを主液に入れ,融成物を加熱溶解した後,るつぼを取り出す。
4)
常温まで冷却した後,時計皿の下面を水で洗浄して時計皿を取り除き,水を用いて
200 mL
の全量
フラスコに移し入れ水で標線まで薄める。この溶液は,全硫黄及び全鉄を定量するための試料溶液
とする。
5)
4)
で得られた溶液の
20 mL
を
100 mL
の全量フラスコに分取し,塩酸(
1
+
1
)
16 mL
を加えて,水で
標線まで薄める。この溶液は酸化カルシウムを定量するための試料溶液とする。
b)
発光強度の測定 溶液の一部を
ICP
発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,発光強度を測定す
る。使用するスペクトル線の波長は,
表 A.10 による。
なお,内部標準法を利用する場合は,全ての試料溶液及び検量線溶液に,正確に等しい濃度になる
量のイットリウム標準液を加える。
表 A.10−スペクトル線の波長
単位 nm
化学成分
波長
a)
酸化カルシウム 317.933
全硫黄 180.73
全鉄 259.940
注
a)
精度及び正確性を確認してあれば,他の波長
を用いて測定してもよい。高次スペクトル線
が使用可能な装置では,高次スペクトル線を
用いてもよく,また,バックグラウンド補正
機構が付いている装置では,バックグラウン
ド補正機構を用いてもよい。
A.11.7
空試験
試料を用いないで,A.11.6 の手順に従って,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
44
A 5011-1
:2013
A.11.8
検量線の作成
検量線の作成は,次の手順によって行う。
a)
酸化カルシウムの検量線溶液 カルシウム標準液(
Ca
:
0.5 mg/mL
)
0
〜
15 mL
(カルシウムとして
0
〜
7.5 mg
)を数個の
100 mL
全量フラスコに段階的にとり,塩酸(
1
+
1
)
20 mL
を加えて,水で標線ま
で薄める。
b)
全硫黄の検量線溶液 硫黄標準液(
S
:
0.5 mg/mL
)
0
〜
20 mL
(硫黄として
0
〜
10 mg
)を数個の
200 mL
全量フラスコに段階的に取り,塩酸(
1
+
1
)
40 mL
を加えて,水で標線まで薄める。
c)
全鉄の検量線溶液 鉄標準液(
Fe
:
0.5 mg/mL
)
0
〜
20 mL
(鉄として
0
〜
10 mg
)を数個の
200 mL
全量
フラスコに段階的にとり,塩酸(
1
+
1
)
40 mL
を加えて,水で標線まで薄める。
これらの溶液の一部を A.11.6
b)
に従って試料溶液と並行して測定し,得た発光強度と検量線溶液に
含まれる測定対象元素量との関係線を作成し,その関係線を原点が通るように平行移動して検量線と
する。
なお,A.11.6
a) 3)
の融解合剤を用いた操作を行った場合は,空試験溶液及び検量線作成溶液にも融
解合剤約
2 g
加える。
A.11.9
計算
計算は,次による。
a)
酸化カルシウムの計算 A.11.6
b)
及び A.11.7 で得た発光強度と,A.11.8 で作成した検量線とから酸化
カルシウム濃度を求め,試料中の酸化カルシウム含有率を式
(A.13)
によって算出する。
100
2
399
.
1
10
000
1
2
1
×
×
×
×
−
=
m
C
C
CaO
(A.13)
ここに,
CaO
:
酸化カルシウム含有率(
%
)
C
1
:
試料溶液中のカルシウム濃度(
μg/mL
)
C
2
:
空試験液中のカルシウム濃度(
μg/mL
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
1.399 2
:
CaO
の分子量を
Ca
の原子量で除した値
b)
全硫黄の計算 A.11.6
b)
及び A.11.7 で得た発光強度と,A.11.8 で作成した検量線とから硫黄濃度を求
め,試料中の全硫黄含有率を式
(A.14)
によって算出する。
100
000
1
2
1
×
×
−
=
m
S
S
S
(A.14)
ここに,
S
:
全硫黄含有率(
%
)
S
1
:
試料溶液中の硫黄濃度(
μg/mL
)
S
2
:
空試験液中の硫黄濃度(
μg/mL
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
c)
全鉄の計算 A.11.6
b)
及び A.11.7 で得た発光強度と,A.11.8 で作成した検量線とから鉄濃度を求め,
試料中の全鉄含有率を,式
(A.15)
によって算出する。
100
5
286
.
1
000
1
2
1
×
×
×
−
=
m
F
F
FeO
(A.15)
ここに,
FeO
:
全鉄含有率(
%
)
F
1
:
試料溶液中の鉄濃度(
μg/mL
)
F
2
:
空試験液中の鉄濃度(
μg/mL
)
m
:
はかりとった試料の質量(
g
)
1.286 5
:
FeO
の分子量を
Fe
の原子量で除した値
45
A 5011-1
:2013
附属書 B
(参考)
高炉スラグ細骨材の貯蔵の安定性の試験方法
B.1
概要
この附属書は,高炉スラグ細骨材の高気温時における貯蔵の安定性の試験方法について記載する。
B.2
試験装置・器具
試験装置・器具は,次による。
a)
オートクレーブ装置 オートクレーブ装置は,高圧蒸気の高圧容器及び加熱装置からなる。高圧容器
には,排気弁,安全弁,圧力計,温度計及び圧力制御装置を装備するものとする。圧力計は,JIS B 7505-1
に規定する普通形のブルドン管圧力計とし,
1.5 MPa
の操作圧において誤差±
0.025 MPa
で,
1
目盛
0.05
MPa
以内の精度をもつものとする。
b)
試験容器 試験容器は,開口部の内径
44
〜
50 mm
の円筒又は底部に向かってテーパが付いて若干細く
なったもので,内容積は
150 g
の試料を入れるのに十分なものとする。また,試験容器は,肉厚
0.60
〜
1.00 mm
,質量
90 g
以下のステンレス鋼製又は鋼製のものとする。
c)
ミキサ ミキサは,JIS R 5201 に規定する練混ぜ機とする。
d)
含水率測定用器具 含水率測定用器具は,JIS A 1125 に規定する赤外線ランプ,電気ヒータ若しくは
ガスヒータ,又はこれらを組み合わせた迅速測定用の水分計とする。
e)
突き棒 突き棒は,JIS A 1109 に規定するものとする。
f)
さじ さじは,長さ
200 mm
程度の金属製さじとする。
g)
ヘら へらは,試験容器の内壁と供試体との間に差し込めるような厚さの薄いものとする。
h)
試験容器用の蓋 試験容器用の蓋は,オートクレーブ装置の減圧時に凝縮水が供試体に入らないよう
にするためのもので,ガラス板,金属製板などとする。
i)
はかり はかりは,試料質量の
0.5 %
以内の精度をもつものとする。
j)
フローテーブル フローテーブルは,JIS R 5201 に規定するものとする。
B.3
試料
B.3.1
試料採取
試料採取は,次による。
a)
試料は,高炉スラグ細骨材の製造工場において,製造後
2
日以内の製品から代表的なものを全量
20 kg
以上採取する。
b)
直ちに試験に供しない試料は,密封して温度
15
℃以下で保存する。
B.3.2
試料の調製
試料の調製は,次による。
a)
採取した試料は,速やかに適切な方法によって縮分し,約
650 g
の試料を二つ得る。一つの試料は予
備試料とし,密封して温度
15
℃以下で保存する。
b)
含水率が(
10
±
3
)
%
となるように蒸留水又はイオン交換樹脂で精製した水を加え
1)
,ミキサを用いて
含水率が一様になるように調整して,速やかに B.4.1 の供試体の作製に供する。
46
A 5011-1
:2013
注
1)
赤外線水分計などによって,試料の含水率をあらかじめ測定しておく。
B.4
試験操作
B.4.1
供試体の作製
供試体は,次の手順によって B.3.2 で調製した試料から速やかに
3
個作製する。
a)
試料
150 g
をはかりとり,さじで試験容器に入れる。
b)
フローテーブル上に試料を入れた試験容器を置き,
1
回
/
秒の速さで
75
回の落下運動を与えて試料を
締め固め,更に,試料の表面を突き棒で均一に
25
回自重で突き固めて水平にならす。
B.4.2
オートクレーブ処理
オートクレーブ処理は,次による。
a)
あらかじめ,圧力制御装置が
1.5
±
0.1 MPa
(
1.5 MPa
の飽和水蒸気温度は,
200.4
℃)
2)
に作動するよ
うに調整しておく。
b)
オートクレーブ処理の全試験期間を通じ,飽和水蒸気の雰囲気が保たれるのに十分な水を,オートク
レーブ装置の槽に入れる。
c)
同時に作製した
3
個の供試体を試験容器ごとオートクレーブ装置内の架台上に載せ,各試験容器に蓋
をかぶせる。
d)
オートクレーブ装置を密封し,排気弁を開いて加熱を開始する。温度約
50
℃で排気弁を閉止し,温
度約
90
℃で再び排気弁を数秒間開放して空気抜きを行う。
e)
温度約
50
℃で排気弁を閉止してから約
60
分でゲージ圧が
1.5 MPa
(飽和水蒸気温度は,
200.4
℃)
2)
になるように加熱昇圧する。
f)
ゲージ圧が
1.5
±
0.1 MPa
(飽和水蒸気温度は,
200.4
±
3.0
℃)
2)
になるようにして
2
時間保持する。
g)
加熱を停止し,
1.5
時間後にゲージ圧が
0.05 MPa
(飽和水蒸気温度は,
110.8
℃)
2)
以下となるように
冷却する。さらに,排気弁を少しずつ開けて,加熱停止後約
2
時間で温度
100
℃以下に達するように
する。
h)
オートクレーブ装置を開けて供試体の入った試験容器を取り出す。
i)
試験容器の高さの約
2/3
の深さまで水を入れた水槽に供試体を試験容器ごと入れ,手で触れても熱く
ない程度まで冷却する。
注
2)
飽和水蒸気温度は,各水蒸気圧に対応する理論値で,参考として示したものである。
B.4.3
試験
試験は,次による。
a)
フローテーブル上で供試体の入った試験容器を逆さにする。供試体が出にくい場合は,試験容器の底
を軽くたたいたり,ヘらなどを用いて試験容器の内壁と供試体の間を緩めて,供試体をフローテーブ
ル上に取り出す。
b)
供試体が約
10 mm
以上の大きさの粒に固まっているときは,その粒以外の細粒を固まっている粒に触
れないように分離し,
1
回
/
秒の速さで落下運動を与える。
c)
全ての粒が約
10 mm
以下に砕けるまでの落下回数を記録する。ただし,落下運動は最高
40
回までと
する。
d)
試験は,B.4.2 でオートクレーブ処理した
3
個の供試体について行う。
47
A 5011-1
:2013
B.5
結果及び判定
B.5.1
各供試体の試験結果を,
表 B.1 に従って区分する。
表 B.1−試験結果の区分
約 10 mm 以下に砕けるまでの落下回数
区分
0〜10 a
11〜40 b
40 回でも約 10 mm 以下に砕けない場合 c
B.5.2
同時に行った
3
個の供試体の試験結果の区分から,貯蔵の安定性を
表 B.2 のように判定する。
表 B.2−貯蔵の安定性の判定
3 個の供試体の試験結果の区分
判定
a a a A
a a b A
a b b B
a)
b b b B
c が 1 個以上あるもの B
注
a)
予備試料で再試験をすることができる。
48
A 5011-1
:2013
附属書 C
(規定)
高炉スラグ骨材の環境安全品質試験方法
C.1
概要
この附属書は,高炉スラグ骨材の環境安全品質試験方法について規定する。
C.2
試験の種類及び試験項目
試験は,試験の種類に応じて形式試験及び受渡試験に区分し,それぞれの試験は,高炉スラグ骨材を用
いるコンクリート構造物などの用途に応じて,
表 C.1 及び表 C.2 の○印で示す項目について行う。
表 C.1−一般用途の場合の環境安全品質試験項目
項目
形式試験
受渡試験
溶出量
含有量
溶出量
含有量
カドミウム
○
○
−
−
鉛
○
○
−
−
六価クロム
○
○
−
−
ひ素
○
○
−
−
水銀
○
○
−
−
セレン
○
○
○
○
ふっ素
○
○
○
○
ほう素
○
○
○
○
表 C.2−港湾用途の場合の環境安全品質試験項目
項目
形式試験
受渡試験
溶出量
溶出量
カドミウム
○
−
鉛
○
−
六価クロム
○
−
ひ素
○
−
水銀
○
−
セレン
○
○
ふっ素
○
○
ほう素
○
○
C.3
環境安全形式試験
C.3.1
一般
環境安全形式試験として,溶出量試験及び含有量試験を実施する。ただし,港湾用途に限っては,溶出
量試験だけでよい。溶出量試験及び含有量試験のいずれの場合も,利用模擬試料又は高炉スラグ骨材試料
のいずれかを選択する。
利用模擬試料を選択した場合は,7.2.4 に規定する受渡検査判定値を設定するため,利用模擬試料の調製
に用いたものと同一の製造ロットの高炉スラグ骨材試料を用いて,C.4 の受渡試験を実施する。
49
A 5011-1
:2013
C.3.2
溶出量試験
C.3.2.1
試料の調製
試料の調製は,利用模擬試料による場合は a)によって,高炉スラグ骨材試料による場合は b)による。
なお,利用模擬試料の調製は,高炉スラグ骨材の製造業者から委託を受けた,材料の試験を主たる事業
としている試験事業者が実施する。
a)
利用模擬試料による場合 利用模擬試料による場合は,次の 1)〜5)の手順に従って試料を調製する。
ただし,港湾用途に限っては,次の 1)で作製した成形体をそのまま用いる。
1)
6.1
によって採取及び縮分した高炉スラグ骨材を用い,受渡当事者間の協議によって決定した配合条
件に従ってコンクリート成形体を作製する。成形体の大きさ及び個数は,C.4.2 で必要な量の検液が
得られるよう決定する。ただし,港湾用途の場合の成形体は,直径
100 mm
,高さ
200 mm
の円柱形
とし,この成形体を破砕することなく溶出量試験に供する。
成形体の養生は水中養生とせず,封かん養生で行う。養生の期間は
28
日以内とし,
7
日間を標準
とする。
注記 1
セメントなどの種類によっては,形式試験の結果に影響を与える可能性がある。そのよ
うな場合は,セメントなどの種類を考慮して試験を実施することが望ましい。
2)
1)
で作製及び養生した成形体をハンマーなどで粗く砕いた後,JIS Z 8801-1 に規定する呼び寸法
40
mm
のふるいを用いて分級し,ふるい上に残ったものを更に砕いて,全量がふるいを通過するよう
にする。
3)
2)
の試料を JIS Z 8801-1 に規定する呼び寸法
20 mm
,
5 mm
及び
2.5 mm
のふるいを用いて分級する。
4)
3)
で分級した試料から,それぞれの粒度が偏らないように分取し,
表 C.3 に示す割合で混合する。
注記 2
特定の粒度区分の試料が不足する場合は,より大きい粒度区分の試料を破砕して追加し
てもよい。
表 C.3−溶出量試験に用いる利用模擬試料(一般用途)の粒度区分ごとの混合割合
単位 %
粒度区分
a)
40
mm 以上 40〜20 mm
20〜5 mm
5〜2.5 mm
2.5 mm 以下
合計
質量分率 0 30±5 40±5 10±5 20±5 100
注
a)
ふるいの呼び寸法は,それぞれ JIS Z 8801-1 に規定するふるいの公称目開き 37.5 mm,19 mm,4.75 mm,2.36
mm である。
5)
4)
の試料から,粒度が偏らないように
3 kg
以上を分取する。
b)
高炉スラグ骨材試料による場合 高炉スラグ骨材試料による場合は,6.1 によって採取及び縮分した高
炉スラグ骨材を用い,JIS K 0058-1 の 5.3.2(試料の調製)によって調製する。
C.3.2.2
検液の調製及び分析
検液の調製及び分析は,次による。
なお,検液の調製及び分析は,高炉スラグ骨材の製造業者から委託を受けた JIS Q 17025 又は JIS Q
17050-1
及び JIS Q 17050-2 に適合している試験事業者,又は環境計量証明登録事業者
1)
が実施する。
注
1)
計量法に基づく計量証明の事業の区分が
水又は土壌中の物質の濃度に係わる事業
の登録を
受けた者とする。
なお,この場合,高炉スラグ骨材に関する事業は,水又は土壌中の物質の濃度に係わる事業
ではないので計量証明書の発行はできず,分析結果報告書などの様式で発行されることとなる。
50
A 5011-1
:2013
a)
試験装置 試験装置は,JIS K 0058-1 の 5.1(試験装置)による。
b)
試薬及び器具 試薬及び器具は,JIS K 0058-1 の 5.2(試薬及び器具)による。
c)
検液の調製 検液の調製は,JIS K 0058-1 の 5.4(検液の調製)による。
d)
検液の分析 検液の分析は,JIS K 0058-1 の 5.5(検液の分析)による。
C.3.3
含有量試験
C.3.3.1
試料の調製
試料の調製は,利用模擬試料による場合は a)によって,高炉スラグ骨材試料による場合は b)による。
なお,利用模擬試料の調製は,高炉スラグ骨材の製造業者から委託を受けた,材料の試験を主たる事業
としている試験事業者が実施する。
a)
利用模擬試料による場合 利用模擬試料による場合は,C.3.2.1
a)
1)
によって作製した成形体から
300
g
以上の試料片を採取し,次の 1)〜4)の手順に従って調製する。
1)
試料片をハンマー,ジョークラッシャーなどで粗く破砕する。
2)
1)
の試料を JIS Z 8801-1 に規定する呼び寸法
2.0 mm
のふるいを用いて分級し,ふるい上に残った試
料を更に破砕し,全量がふるいを通過するようにする。
3)
2)
の試料を,JIS Z 8801-1 に規定する呼び寸法
0.6 mm
及び
0.15 mm
のふるいを用いて分級する。
4)
3)
で分級した試料を
表 C.4 に示す割合で混合する。
注記
特定の粒度区分の試料が不足する場合は,より大きい粒度区分の試料を破砕して追加して
もよい。
表 C.4−含有量試験に用いる利用模擬試料(一般用途)の粒度区分ごとの混合割合
単位 %
粒度区分
a)
2.0
mm 以上 2.0〜0.6 mm
0.6〜0.15 mm
0.15 mm 以下
合計
質量分率 0 50±5 25±5 25±5 100
注
a)
ふるいの呼び寸法は,それぞれ JIS Z 8801-1 に規定するふるいの公称目開き 2 mm,600 μm,
150 μm である。
b)
高炉スラグ骨材試料による場合 高炉スラグ骨材試料による場合は,6.1 によって採取及び縮分した高
炉スラグ骨材から
300 g
以上を用いて,次の 1)〜5)の手順に従って調製する。
1)
JIS Z 8801-1
に規定する呼び寸法
2.0 mm
のふるいを用いて分級し,ふるい上の試料の質量
U
(
g
)
及びふるい下の試料の質量
L
(
g
)を測定する。
2)
1)
のふるい上の試料をハンマー,ジョークラッシャーなどで更に破砕し,全量が JIS Z 8801-1 に規
定する呼び寸法
2.0 mm
のふるいを通過するようにする。
3)
2)
の試料を JIS Z 8801-1 に規定する呼び寸法
0.6 mm
及び
0.15 mm
のふるいを用いて分級する。
4)
3)
の試料を
表 C.4 に示す割合で混合する。
なお,特定の粒度区分の試料が不足する場合は,より大きい粒度区分の試料を破砕して追加して
もよい。大きい粒度区分の試料が不足する場合は,小さい粒度区分の試料で代用してもよい。
5)
4)
の試料及び 1)のふるい下の試料のそれぞれから,粒度が偏らないように試料を分取し,
U
:
L
の割
合で混合する。
C.3.3.2
検液の調製及び分析
検液の調製及び分析は,次による。
なお,検液の調製及び分析は,高炉スラグ骨材の製造業者から委託を受けた JIS Q 17025,又は
51
A 5011-1
:2013
JIS Q 17050-1
及び JIS Q 17050-2 に適合している試験事業者,
又は環境計量証明登録事業者
1)
が実施する。
注
1)
は,C.3.2.2 の
注
1)
を参照。
a)
試薬及び器具 試薬及び器具は,JIS K 0058-2 の 5.(試薬及び器具)による。
b)
検液の調製 検液の調製は,JIS K 0058-2 の 7.(検液の調製)による。
c)
検液の分析 検液の分析は,JIS K 0058-2 の 8.(検液の分析)による。
C.4
環境安全受渡試験
C.4.1
一般
環境安全受渡試験として,溶出量試験及び含有量試験を実施する。ただし,港湾用途に限っては,溶出
量試験だけでよい。
溶出量試験及び含有量試験のいずれの場合も,高炉スラグ骨材試料を用いる。
なお,受渡試験は,高炉スラグ骨材の製造業者又は高炉スラグ骨材の製造業者から委託を受けた試験事
業者が実施する。
C.4.2
溶出量試験
C.4.2.1
試料の調製
試料の調製は,C.3.2.1
b)
による。
C.4.2.2
検液の調製及び分析
検液の調製及び分析は,C.3.2.2 の a)〜d)
による。
C.4.3
含有量試験
C.4.3.1
試料の調製
含有量試験用試料の調製は,C.3.3.1
b)
による。
C.4.3.2
検液の調製及び分析
検液の調製及び分析は,C.3.3.2 の a)〜c)
による。
参考文献
JIS A 1125
骨材の含水率試験方法及び含水率に基づく表面水率の試験方法
JIS B 7505-1
アネロイド型圧力計−第
1
部:ブルドン管圧力計
JIS R 5201
セメントの物理試験方法
52
A 5011-1
:2013
附属書 D
(参考)
技術上重要な改正についての新旧対照表
技術上重要な
改正項目
現行規格(JIS A 5011-1:2013)
旧規格(JIS A 5011-1:2003)
改正理由
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
及び題名
内容
D.1 環 境 安 全
品 質 に 関 わ る
規定の追加
2 引用規格
引用規格に JIS K 0058-1,JIS K 0058-2,
JIS Q 17025
,JIS Q 17050-1 及び JIS Q
17050-2
を追加。
−
−
日本工業標準調査会標準部会
の土木技術専門委員会及び建
築技術専門委員会が共同で
建
設分野の規格への環境側面の
導入に関する指針 附属書 1
コンクリート用スラグ骨材に
環境安全品質及びその検査方
法を導入するための指針
を定
めたことから,環境安全品質に
関わる基準及び検査方法を規
定した。
3 用語及び定義
用語として,環境安全品質,環境安全形
式検査,環境安全受渡検査,利用模擬試
料,高炉スラグ骨材試料,環境安全品質
基準,環境安全受渡検査判定値,環境安
全形式試験,環境安全受渡試験,一般用
途,及び港湾用途を定義。
5 品質 5.5 に環境安全品質基準及び環境安全受
渡検査判定値を規定。
6 試験方法 6.7 に環境安全品質試験を規定。
併せて,附属書 C(規定)として高炉ス
ラグ骨材の環境安全品質試験方法を追
加。
7 検査 7.2 に環境安全品質の検査方法を追加。
9 報告
環境安全品質に関わる試験成績表の様
式の標準として,
表 14 から表 17 を追加。
D.2 高 炉 ス ラ
グ 細 骨 材 の 吸
水 率 の 規 格 値
の変更
5.2 化 学 成 分 及 び 物 理
的性質の表 5
高 炉 ス ラ グ 細 骨 材 の 吸 水 率 の 規 格 値
3.0 %以下。
4.2 化学成分
及び物理・化学
的性質の表 5
高炉スラグ細骨材の吸水率の
規格値 3.5 %以下。
製造技術の改善による高炉ス
ラグ細骨材の品質の向上に伴
い,吸水率の規格値を 3.5 %以
下から 3.0 %以下に変更した。
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A
501
1-1
:
2013
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A 5011-1
:2013
技術上重要な
改正項目
現行規格(JIS A 5011-1:2013)
旧規格(JIS A 5011-1:2003)
改正理由
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
及び題名
内容
D.3 高 炉 ス ラ
グ 粗 骨 材 の 水
中 浸 せ き 及 び
紫外線(360.0
nm)照射の規
定の削除
−
− 4.2 化 学 成 分
及び物理・化学
的性質の表 5
水中浸せき:亀裂,分解,泥状
化,粉化などの現象があっては
ならない。
紫外線(360.0nm)照射:発光
しないか又は一様な紫色に輝
いていなければならない。
この規定は欧州の国家規格を
参考に規定されたものである
が,これまでの日本国内の製造
実績では不合格になったこと
がないことから,規定を削除す
ることとした。
D.4 高 炉 ス ラ
グ 骨 材 の 微 粒
分 量 規 定 の 追
加
5.3.1 高炉スラグ粗骨材
の c) 微粒分量及び 5.3.2
高炉スラグ細骨材の c)
微粒分量
高炉スラグ粗骨材の微粒分量として,最
大値 5.0 %,許容差±1.0 %を規定。
高炉スラグ細骨材の微粒分量として,最
大値 7.0 %,許容差±2.0 %を規定。
−
−
JIS A 5005
コンクリート用砕石
及び砕砂の 2009 年改正におい
て微粒分量の規定が見直され
たことを考慮し,高炉スラグ骨
材についても規定を設けるこ
ととした。
D.5 高 炉 ス ラ
グ 骨 材 の 化 学
成 分 分 析 分 方
法の追加
A.6 酸化カルシウムの
定量方法,A.7 全硫黄の
定量方法,A.9 全鉄の定
量方法,A.10 蛍光 X 線
分析による酸化カルシ
ウム及び全鉄の定量方
法並びに A.11 ICP 発光
分光分析法による酸化
カルシウム,全硫黄及び
全鉄の定量方法
酸 化 カ ル シ ウ ム の 定 量 方 法 と し て ,
EDTA 滴定法,蛍光 X 線分析法及び ICP
発光分光分析法を追加。
全硫黄の定量方法として,熱分解−赤外
線吸収法,熱分解−よう素酸カリウム滴
定法及び ICP 発光分光分析法を追加。
全鉄の定量方法として,1,10-フェナント
ロリン吸光光度法,蛍光 X 線分析法及び
ICP 発光分光分析法を追加。
6.1 酸 化 カ ル
シ ウ ム の 定 量
方法,6.2 全硫
黄 の 定 量 方 法
及 び 6.4 全 鉄
の定量方法
酸化カルシウムの定量方法:過
マンガン酸カリウム滴定法
全硫黄の定量方法:硫酸バリウ
ム質量法
全鉄の定量方法:三塩化チタン
還元二クロム酸カリウム滴定
法及び原子吸光分析方法
蛍光 X 線分析法,ICP 発光分光
分析法などの機器分析方法が
高炉スラグ骨材の化学成分分
析にも使用できるように,JIS A
5011
の第 2 部〜第 4 部に規定さ
れている化学分析方法を参考
に,分析方法を追加した。
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A
501
1-1
:
2013