A 4302:2006
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本建築
設備・昇降機センター(BEEC)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日
本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS A 4302:1992は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
A 4302:2006
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 検査項目 ························································································································ 1
3.1 完了検査 ······················································································································ 1
3.2 定期検査 ······················································································································ 1
4. 検査器具 ························································································································ 1
5. 検査方法及び判定基準 ······································································································ 2
5.1 ロープ式エレベーター(機械室なしエレベーターを除く) ····················································· 2
5.2 機械室なしエレベーター(ホームエレベーター含む) ·························································· 14
5.3 油圧エレベーター(直接式,間接式及びパンタグラフ式) ···················································· 15
5.4 エスカレーター(動く歩道を含む) ·················································································· 18
5.5 小荷物専用昇降機 ········································································································· 19
5.6 段差解消機 ·················································································································· 20
5.7 いす式階段昇降機 ········································································································· 25
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日本工業規格 JIS
A 4302:2006
昇降機の検査標準
Inspection standard of elevator, escalator and dumbwaiter
1. 適用範囲 この規格は,建築物,工作物などに設置したエレベーター(段差解消機及びいす式階段昇
降機を含む。),エスカレーター(動く歩道を含む。)及び小荷物専用昇降機の安全について検査するための
検査項目,検査器具,検査方法及び判定基準について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 7507 ノギス
JIS B 7510 精密水準器
JIS B 7512 鋼製巻尺
JIS B 7516 金属製直尺
JIS B 7522 繊維製巻尺
JIS B 8360 液圧用鋼線補強ゴムホースアセンブリ
JIS B 8364 液圧用繊維補強ゴムホースアセンブリ
JIS C 1102-2 直動式指示電気計器 第2部:電流計及び電圧計に対する要求事項
JIS C 1302 絶縁抵抗計
JIS G 3525 ワイヤロープ
JIS G 3546 異形線ロープ
3. 検査項目
3.1
完了検査 完了検査では,設計図書に記載している各項目に適合しているかどうかを検査するほか,
5. に規定された全項目について検査する。
3.2
定期検査 管理のための定期検査では,負荷試験を除く5. に規定された全項目並びに上昇及び下降
時の速度について検査する。
4. 検査器具
4.1
絶縁抵抗測定には,JIS C 1302に規定する500 V 100 MΩの絶縁抵抗計を用いる。ただし,半導体,
電解コンデンサ,電子管などの電子機器を含む回路については,回路に応じた絶縁抵抗計を用いる。
4.2
負荷試験には,次の規格に規定する電流計,電圧計及び速度計を用いる。
a) 電流計及び電圧計は,JIS C 1102-2に規定する2.5級以上の精度のもの,又は同程度のディジタル式の
ものとする。
b) 速度計は,瞬間式回転速度計(タコメータ)又は電子式速度表示装置とする。
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備考 電子式速度表示装置とはエンコーダー式,加速度変換式,パルスカウント式などで,昇降機に
設けられたものを含む。
4.3
その他の検査には,次の規格に規定する巻尺,直尺,ノギス,水準器などを用いる。
a) ノギスは,JIS B 7507に規定するノギスとする。
b) 水準器は,JIS B 7510に規定する水準器とする。
c) 巻尺は,JIS B 7512又はJIS B 7522に規定する巻尺とする。
d) 金属製直尺は,JIS B 7516に規定する直尺とする。
5. 検査方法及び判定基準
5.1
ロープ式エレベーター(機械室なしエレベーターを除く)
5.1.1
機械室で行う検査
a) 機械室の構造及び設備
1) 駆動装置及び制御盤は,柱及び壁から原則として50 cm以上離れていることとする。ただし,保守
管理に支障がない場合には,この限りでない。
2) 主索,調速機ロープ,階床選択機のスチールテープなどが機械室床の貫通部分と接触していないこ
ととする。
3) 機械室には,所要の設備以外のものを設置し又は置いていないこととする。
4) 管理,検査に支障のないように照明及び換気は適切であり,室温は原則として40 ℃以下に保たれる
ようにする。
5) 出入口は錠付戸とし,施錠装置は良好であることとする。
6) 機械室に至る廊下,階段などは,維持管理上支障がないこととする。
7) 非常用エレベーターの機械室は,専用昇降路以外の部分と防火区画されていることとする。
b) 受電盤・主開閉器,制御盤,電気配管及び配線
1) 受電盤・主開閉器は,原則として機械室出入口近くに設置され,安全,かつ,容易に操作できるこ
ととする。
2) 制御盤及びその他の制御装置の取付けは強固で,地震その他の振動によって移動,転倒しない措置
が施されていることとする。
3) 盤内の各機器の作動は,良好であることとする。
4) 絶縁抵抗は各回路ごとに,それぞれ表1の規定に適合していることとする。ただし,絶縁抵抗は,
開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに検査ができる。
5) 接地線が確実に接続されていることとする。
6) 非常用エレベーターの場合には,予備電源が設けられていることとする。
7) 非常用エレベーターにあっては,非常用に供しているとき,他のエレベーターの影響を受けないこ
ととする。
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表 1 回路の絶縁抵抗
単位 MΩ
回路の用途
回路の使用電圧
絶縁抵抗値
電動機主回路
300 V以下のもの
300 Vを超えるもの
0.2以上
0.4以上
制御回路
信号回路
照明回路
150 V以下のもの
150 Vを超え300 V以下のもの
0.1以上
0.2以上
備考 電動機主回路の絶縁抵抗は,制御盤の各開閉器又は過電流遮断
器を“切り”の状態において検査する。
制御回路の絶縁抵抗は,各ドア・スイッチを閉じて,開閉器
又は過電流遮断器を“切り”の状態において検査する。
c) 駆動装置及び制動機
1) 駆動装置の取付けは確実で,地震その他の振動によって移動,転倒しない措置が施されていること
とする。
2) 駆動装置の運転状態は良好で異常な発熱,振動や異音がないこととする。
3) 制動機の取付けは確実で,動力遮断の際,かごを安全に減速停止させることができることとする。
4) 綱車にはひび割れがなく,通常運転時,主索との間に著しいすべりがないこととする。また,減速
機構のあるものは,その歯車の歯の厚さは,設置時の歯の厚さの7/8以上とする。
5) 綱車,そらせ車又は巻胴は,地震その他の振動によって主索が外れないように措置されていること
とする。
6) かごに救出口を設けていない場合は,常用の電源を使用せずに下記6.1) 又は6.2) によって,かごを
階床レベル又は救出可能な位置まで移動し,かご内の乗客を安全に救出できることとする。
6.1) 建物の予備電源又は専用のバッテリーなどを電源として,制御器の手動操作又は保守用コンソー
ルなどの操作によって,駆動用電動機を回転させるか,制動機を断続的に緩めるなどしてかごと
つり合おもりのアンバランスを利用して,かごを上昇又は下降させる。
6.2) 手動で制動機を緩め,クランクなどを操作して綱車を回転させるか,制動機を断続的に緩め,か
ごとつり合おもりのアンバランスを利用して,かごを上昇又は下降させる。
d) 負荷試験
1) 次の三つの場合につき,それぞれ定格電圧及び定格周波数の下で速度及び電流を測定し,表2の規
定に適合していることとする。
1.1) 無負荷の場合
1.2) 定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
1.3) 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
表 2 速度及び電流
項目
無負荷の場合及び定格積載量の110 %の
負荷を載せた場合
定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
速度
設計図書に記載された速度の125 %以下 上昇の際の速度が設計図書に記載された
速度の90 %以上105 %以下
電流
電動機の定格電流値の120 %以下
電動機の定格電流値の110 %以下
2) かごの定格積載量の1.25倍(乗用及び寝台用以外でフォークリフトなどが,かご停止時に乗り込む
エレベーターにあっては,1.5倍)の負荷を載せた場合においても,かごの位置が7.5 cm以上変動
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しないこととする。かごの位置が7.5 cm以上変動する場合は床合せ補正装置を設け,着床面を基準
として7.5 cm以内の位置において補正できることとする。
e) 調速機
1) 調速機の取付けは確実で,地震その他の振動によって移動,転倒しない措置が施されていることと
する。
2) 調速機の作動状態は速度計を用いて作動速度を測定し,表3の規定に適合していることとする。こ
の場合,直接かごを運転することによって過速度が得られない場合は,調速機をかごと無関係に駆
動して,かごの速度が異常に増大した場合と同じ効果を与えて測定してもよい。
表 3 調速機の作動速度
種類
定格速度(1)が45 m/min以下のもの
定格速度(1)が45 m/minを超えるもの
過速スイッチ
63 m/min以下で切れ,自己保持すること
定格速度(1)の1.3倍以下で切れ,自己保持
すること
キャッチ
過速スイッチが切れると同時又は切れた後
作動し,かつ,下降方向の速度が68 m/min
以下で作動すること
過速スイッチが切れた後作動し,かつ,下
降方向の速度が定格速度(1)の1.4倍以下で
作動すること
注(1) 定格速度とは,設計図書に記載された速度で,定格積載量の100 %の負荷を載せて上昇する場合の
毎分の最高速度をいう。
備考 つり合おもりに非常止め装置が設けられ,その作動を調速機で行う場合は,つり合おもり側の調速
機は,かご側調速機の作動速度より大きく,かつ1.1倍以下の速度で作動すること。
f)
非常止め装置の作動状態 次の1) 又は2) によって検査を,行う。
なお,つり合おもりの非常止め試験の場合は,かご又はつり合おもりを,それぞれつり合おもり又
はかごと読みかえて検査する。
1) 工場試験その他によって事前にその安全性が認められたものについては,可能な限り低い速度で,
次の1.1) 及び1.2) の事項を検査する。
1.1) 次の1.1.1) 又は1.1.2) によって行う。ただし,調速機を備えていない方式については1.1.3),つり
合おもりを備えていない場合は1.1.4) によって行う。
1.1.1) 無負荷(作業関係者を除く。)で,かごの下降中に調速機のキャッチを作動させ,かごをいった
ん停止させた後,更に,かごを下降させるように巻上機を操作する。綱車が回転しても,かごが
下降しなくなることによって,非常止め装置が作動したことを確認する。
1.1.2) かご内に100 %の負荷を載せ,かごの下降中に調速機のキャッチを作動させ,かごをいったん停
止させた後,ブレーキを開放してもかごが下降しなくなることによって,非常止め装置が作動し
たことを確認する。
1.1.3) 無負荷(作業関係者を除く。)で,かごを固定した後につり合おもりをつり上げ,かご端の主索
を緩めてから,かごの固定を解除してもかごが下降しなくなり,かご端の主索が緩んでいること
によって,非常止め装置が作動したことを確認する。
1.1.4) 無負荷(作業関係者を除く。)で,かごを固定した後に駆動装置をかごが下降する方向へと操作
し,かご端の主索を緩めてから,かごの固定を解除してもかごが下降しなくなり,かご端の主索
が緩んでいることによって非常止め装置が作動したことを確認する。
備考 1.1.3) 及び1.1.4) について,完了検査時においては,非常止め装置がかごの停止位置によら
ず確実に作動することを確認する。
1.2)
非常止め装置が作動したままの状態で,次の1.2.1) 及び1.2.2) について検査する。
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1.2.1) 機械装置及び調速機ロープにはなんらかの損傷を受けていないこととする。
1.2.2) 非常止めは,左右両側とも均等に作用し,かごの床の水平度は,水準器を用いて測った場合,い
ずれの部分でも1/30以内とする。
2) 1) 以外のものについては,定格積載量の100 %の負荷を載せて,次の2.1) 及び2.2) の事項と1) の場
合の1.2) について検査する。
2.1) かごを下降運転にて徐々にキャッチ作動速度まで増速し,調速機のキャッチを作動させ,かごを
いったん停止させた後,更に,かごを下降させるように巻上機を操作する。綱車が回転しても,
かごが下降しなくなることによって,非常止め装置が作動したことを確認する。又はブレーキを
開放してもかごが下降しなくなることによって,非常止め装置が作動したことを確認する。
2.2) 非常止め作動時の減速度 次第ぎき非常止め装置が作動した状態の平均減速度が9.8 m/s2以内で
あることを,レール面上に付く四つのこん跡から確認する。こん跡から停止距離を測り,その平
均値が図1-1又は図1-2の最大と最小の停止距離範囲内であればよい。最大停止距離は式(1),最
小停止距離は式(2)による。ただし,クランプ式非常止め装置などすべりを許容する型式装置の場
合は,すべり分を考慮し確認する。
)
(
・
)
(
m
2
60
/
min
2
max
g
α
V
S
=
·································································· (1)
)
(
・
)
(
m
2
60
/
max
2
min
g
α
V
S
=
·································································· (2)
ここに, Smax: 最大停止距離(m)
Smin: 最小停止距離(m)
V: 調速機の作動速度(m/min)
g: 重力加速度(9.8 m/s2)
αmin: Smax時の相当減速度[0.2(G)]
αmax: Smin時の相当減速度[1.0(G)]
図 1-1 次第ぎき非常止め装置の停止距離(その1)
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図 1-2 次第ぎき非常止め装置の停止距離(その2)
g) はかり装置が,機械室に設けてある場合は,5.1.4 t) の規定による。
5.1.2
かご室内で行う検査
a) 出入口の床先とかごの床先との水平距離は,4 cm以下であり,乗用エレベーター及び寝台用エレベー
ターにあっては,かごの床先と昇降路との水平距離は12.5 cm以下とする。
b) 用途,定格積載量及び定員の表示が見えやすい位置にあり,その記載内容が適正であることとする。
c) かごのドア・スイッチの作動状態が良好であることとする。
d) 操作設備の取付け及び作動状態が良好であり,特に操作ハンドルやレバーは自動的に運転休止の位置
に復し,また,かご内停止のスイッチの作動状態が良好であることとする。
e) 外部に連絡する装置の作動状態が良好であることとする。
f)
乗用エレベーター及び寝台用エレベーターにあっては,停電の場合において床面で1 lx以上の照度を
確保する停電灯が設けてあり点灯状態が良好であることとする。
g) 床合せ補正装置が設けられている場合は,7.5 cm以内で補正し着床状態に異常がないことを確認す
る。また,再床合せゾーンを超えてかご床が変動している場合には,かごが停止することを確認す
る。
h) かごの戸が開いている状態で,ドアゾーンを超えて走行しようとした場合,かごを自動的に停止させ
る装置が確実に作動することとする。
i)
非常用エレベーターにあっては,中央管理室と連絡する電話装置の作動が良好であることとする。
j)
非常用エレベーターにあっては,非常の用に供する装置[非常運転灯,一次消防スイッチ(2)及び二次
消防スイッチ(3)]の作動状態が良好であることとする。
注(2) 一次消防スイッチとは,非常の場合に消防活動専用に切り替えるスイッチをいう。
(3) 二次消防スイッチとは,かご及び昇降路のすべての出入口が閉じていなければ,かごを昇降さ
せることができない装置の機能を停止させ“かごの戸を開いたままかごを昇降させることがで
きる”スイッチをいう。
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5.1.3
かご上で行う検査
a) つるべ式エレベーターの頂部すき間(TC1)の関係寸法は,表4の数値以上とする。又は,機器頂部
すき間(TC2)が油入緩衝器の場合は式(3)の計算した数値(H),それ以外は,式(4)によって計算した
数値(H),巻胴式エレベーターにおいては式(5)の計算式による数値(H)以上となっていることを確
認する。図2に頂部すき間と機器頂部すき間との関係を示す。
図 2 頂部すき間と機器頂部すき間との関係
C
V
R
S
H
+
+
+
=
068
1
2
(cm) ························································ (3)
C
V
R
S
H
+
+
+
=
720
2
(cm) ························································· (4)
ここに, TC1: かご枠上端から昇降路はり下端又は昇降路上端までの
垂直距離(頂部すき間)
TC2: かご最大突起物と昇降路はり下端又は昇降路上端まで
の垂直距離(機器頂部すき間)
S: つり合おもり側の緩衝器のストローク又は緩衝材の厚
さ(cm)
R: かごが最上階に停止した場合におけるつり合おもりと
つり合おもり側の緩衝器又は緩衝材のすき間の垂直距
離(cm)
V: かごの定格速度(m/min)
C: かご上で運転をする場合で頂部安全距離1.2 m以上を確
保し,かつ,頂部安全距離以上のかごの上昇を自動的
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に停止するリミットスイッチを設けた場合又はかご上
で運転をしない場合においては2.5 cm,それ以外の場
合においては60 cm
C
L
K
H
+
+
=
(cm) ································································· (5)
ここに,
K: かごが最上階に停止した位置から過巻きスイッチが作
動する位置までの垂直距離(cm)
L: かご上又は昇降路頂部に緩衝器又は緩衝材を設けた場
合の,緩衝器のストローク又は緩衝材の厚み(cm)
C: かご上で運転をする場合で頂部安全距離1.2 m以上を
確保し,かつ,頂部安全距離以上のかごの上昇を自動的
に停止するリミットスイッチを設けた場合又はかご上
で運転をしない場合においては2.5 cm,それ以外の場
合においては60 cm
表 4 定格速度と頂部すき間
定格速度
m/min
頂部すき間
m
45以下
1.2以上
45を超え 60以下
1.4以上
60を超え 90以下
1.6以上
90を超え120以下
1.8以上
120を超え150以下
2.0以上
150を超え180以下
2.3以上
180を超え210以下
2.7以上
210を超え240以下
3.3以上
240を超える場合
4.0以上
b) 頂部すき間の関係寸法を表4によって確認する場合は,かごが最上階に水平に停止している場合のつ
り合おもりと緩衝器の距離に緩衝器のストローク及び飛び上がり代の2分の1を加えた値は,かごの
機器頂部すき間より小さいこととする。
c) 頂部すき間が1.2 m未満の場合は,かご上に乗って点検を行う際,頂部すき間1.2 mを超えてかごが
上昇しようとするとき,自動的にかごを停止させるリミットスイッチが作動し,頂部安全距離1.2 m
以上を確保することとする。
d) 天井救出口が設けられている場合は,かご内から開けられず,かご外から簡単な操作で開くことがで
きることとする。また,この救出口が開いているときは,エレベーターの運転を不能とするスイッチ
が適確に作動することとする。
e) かごのドア・スイッチの取付けが堅固であることとする。
f)
かご上の安全スイッチの作動状態が良好であることとする。
g) そらせ車のある場合,その取付けが良好であり,主体部にひび割れがないこととする。
h) 調速機ロープの取付けが確実であることとする。
i)
非常止めの連結機構がかご上部に設けられている場合,その取付けが良好であり,確実に作動するこ
ととする。
j)
上部リミットスイッチ類の取付けが強固で,確実に作動する取付位置にあり,その作動が適確である
こととする。
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なお,上部リミットスイッチはドアゾーン内にて作動することとする。
k) 主索及び調速機ロープは,かご上において,かごを小刻みに昇降しながら検査し,かご上で検査でき
ない部分は,機械室及びピットにおいて検査し,次の1)〜9) の規定に適合していることとする。
1) 主索端部がバビット詰め止め金具の場合は,各よりが平均に開き,確実に折り曲げてあり,バビッ
トが十分に回っていることとする。また,各よりを折り曲げたことが明らかに見られるようになっ
ていることとする。
2) 主索端部がくさび(楔)式止め金具の場合は,止め金具に正しくソケッティングされていることとす
る。また,ウェッジの割ピン穴には,正しく割ピンが取付けられていることとする。
3) 主索端部が据え込み式止め金具の場合は,ダイスにより確実に圧縮締結され締結部の割ピンが正し
く取り付けられていることとする。
4) 主索端部がクランプ止めの場合は,ドラムに巻かれたロープ端部が適確にロープ押さえによって押
さえボルトで固定されていることとする。
5) 主索の引止め金具は,二重ナットを固く締め付け,かつ,割ピンが正しく取り付けられていること
とする。
6) すべての主索は,ほぼ均等な張力を受けていることとする。
7) 主索の疲労破壊及び摩損の状態は,次の規定に適合していることとする。
7.1) 疲労破壊の状態については,素線の破断が表5の規定に適合していることとする。
7.2) 摩損の状態については,摩耗部分の鋼索の直径は,摩耗していない部分の直径の90 %以上とす
る。
表 5 素線の破断数
素線の破断状態
基準
素線の破断が平均に分布している場合
1構成より(ストランド)の1よりピッチ内での破
断数4以下
破断素線の断面積が,元の素線の断面積の70 %以
下(4)となっているか,又は,さびが甚だしい場合
1構成より(ストランド)の1よりピッチ内での破
断数2以下
素線の破断が1か所又は特定のよりに集中している
場合
素線の破断総数が1よりピッチ内で6より鋼索では
12以下,8より鋼索では16以下
注(4) 破断素線の断面積が70 %以下かどうかは,図3のl1,l2の素線の摩耗長さを測定し,ワイヤロー
プ(l1)の場合は表6,異形線ロープ(l2)の場合は表7の数値以上であることで判定できる。
図 3 摩耗長さ
表 6 素線の摩耗長さ(ワイヤロープ)
単位 mm
10
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単位 mm
主索直径
ロープの構成記号及び摩耗長さ(l1)
8×S(19)
6×W(19)
8×Fi(25)
8
2.8
3.2
2.6
10
3.6
4.0
3.3
12
4.2
4.8
4.0
14
4.9
5.6
4.4
16
5.6
6.3
5.4
18
6.3
7.2
6.2
20
7.1
8.1
6.5
備考 ロープの構成記号は,JIS G 3525による。
表 7 素線の摩耗長さ(異形線ロープ)
単位 mm
主索直径
ロープの構成記号及び摩耗長さ(l2)
8×P・S(19)
8×P・Fi(25)
10
4.3
3.7
12
5.2
4.5
14
6.1
5.2
16
6.9
6.0
18
7.8
6.7
備考 ロープの構成記号は,JIS G 3546による。
8) ロープ心入りワイヤロープ(鋼心ロープ)で鋼心部分を設計強度に含む場合は,ロープ損傷検出器
(ロープテスタ)を併用し検査することとする。
9) 巻胴式エレベーターにあっては,主索が緩んだ場合において動力を自動的に切る装置が良好に作動
することとする。
l)
つり合ロープ又はつり合チェーンがある場合は,その取付状態は適確であること。また,すべてのロ
ープはほぼ均等な張力を受けていることとする。
m) レール及びブラケットの取付状態は,地震その他の振動に対しても強固であり,著しいさび(錆),変
形又は甚だしい摩耗が認められないこととする。
n) はかり装置が,かご上に設けてある場合は,5.1.4 t) の規定による。
o) 乗り場の戸のロック及びスイッチの取付状態は強固であり,作動状態が確実であることとする。
p) 乗り場の戸のガイドシューの取付状態は強固であり,しきい溝に十分入っていることとする。
なお,しきい溝がない場合には,その取付状態が適切であること。また,ドアハンガーのおどり止
めの取付状態は適切であることとする。
q) 昇降路救出口がある場合は,救出口戸の開口部幅が75 cm以上,高さは1.2 m以上であり,防火区画
の基準に適合した防火設備とする。また,昇降路の内側及び外側のいずれからもかぎ(鍵)を使用し
なければ開けることができず自閉機能は良好であることとする。
r) 昇降路内には,平成17年国土交通省告示第570号に基づく昇降機の昇降路内に設けることができる配
管設備の構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの以外の配管,配線などがないこ
ととする。
s)
各出入口のしきい下部は,乗り降りのときに,人又は物が挟まれる危険のない構造とする。
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t)
非常用エレベーターにあっては,かご上の各電気装置には水除けカバー,水抜き孔などが設けられて
いることとする。
u) 非常用エレベーターにあっては,電線管,ボックス類には水がたまらない構造とする。
v) かご及びつり合おもりのガイドシューは取付けが強固で,地震その他の振動によってレールから外れ
ない措置が施されており,つり合おもり片の固定状態も適切であることとする。
w) 昇降路内に不要なボルト,鉄線などの突出物がなく,鋼索又はテールコード機能に支障が生じるおそ
れがあり保護措置が講じられている場合は,その取付状態が適確であることとする。
x) かご枠材相互の締付状態は,良好であることとする。
y) 遮煙性をもつ乗り場の戸にあっては,気密材にき裂,破損などがないこととする。
5.1.4
ピットで行う検査
a) ピットに漏水がなく清潔であることとする。
b) 下部リミットスイッチ類の取付けは強固で,確実に作動する取付位置にあり,その作動状態が適確で
あることとする。
なお,下部リミットスイッチはドアゾーン内にて作動することとする。
c) ピットの深さが1.2 m未満の場合は,ピットで点検を行うとき,かごとピット床の間に1.2 m以上の
垂直距離を確保する安全スイッチを設け,作動は確実であることとする。
d) かごが最下階に水平に停止している場合の,かごと緩衝器の距離に緩衝器のストローク及び飛び上が
り代の2分の1を加えた値は,つり合おもりの頂部すき間より小さいこととする。
e) 緩衝材や緩衝器の取付けは強固で,その機能は良好に維持されていること。ばね緩衝器の場合は,著
しいさび(錆),腐食などの欠点がなく,油入緩衝器の場合は,更に油量が適切であることとする。
f)
かごが最上階に水平に停止しているときのつり合おもりと緩衝器との距離及びかごが最下階に水平に
停止しているときのかごと緩衝器の距離は,表8の数値に適合していることとする。
なお,つり合おもりと緩衝器間の最大距離は,次の計算式から得られた数値以下とする。
1) 油入緩衝器の場合
C
V
S
TC
R
−
−
−
068
1
2
2
=
(cm)
2) 1) 以外の場合
C
V
S
TC
R
−
−
−
720
2
2
=
(cm)
備考 各記号は,5.1.3 a) 参照。
表 8 かご,つり合おもりと緩衝器の距離
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定格速度
m/min
最小距離 mm
かご,つり合おもり側
・交流1段制御
・交流2段制御
・交流帰還制御
・直流制御
・可変電圧可変
周波数制御
ばね緩衝器
緩衝材
7.5以下
7.5を超え15 以下
15 を超え30 以下
30 を超えるもの
75
150
225
300
38
75
115
150
油入緩衝器
すき間があること
g) 下部ファイナルリミットスイッチ(5)は,かごが緩衝器に達する以前に作動することとする。ただし,
緩衝器が自動復帰式油入型の場合は,そのストロークの1/2以内で下部ファイナルリミットスイッチ
が作動することを確認する。
注(5) ファイナルリミットスイッチとは,かごが端階を行き過ぎると作動し,かごの昇降を自動的に
制止させるリミットスイッチをいう。
h) 移動ケーブルの取付けは強固で,かご昇降時に損傷のおそれがないこととする。
i)
調速機ロープのテンション装置,その他のテンション装置は適確に機能していることとする。
j)
非常用エレベーターのピットには水に浮くものがないこととする。
k) 非常用エレベーターにあっては,最下階床面以下に設けられるスイッチ類は,消防運転(一次,二次
消防)の用に供しているときは,切り離されることとする。
l)
ピットの深さ(6)の寸法は,表9の数値に適合していることとする。ただし,1)〜3) に規定する緩衝器
を設置することができる数値以上とすることができる。
注(6) ピットの深さは,最下階の床面からかごの水平投影面にある床面か地中ばりなどまでの最短距
離をいう。
表 9 定格速度とピット深さ
定格速度
m/min
ピットの深さ
m
45以下
1.2以上
45を超え 60以下
1.5以上
60を超え 90以下
1.8以上
90を超え120以下
2.1以上
120を超え150以下
2.4以上
150を超え180以下
2.7以上
180を超え210以下
3.2以上
210を超え240以下
3.8以上
240を超える場合
4.0以上
1) かごの定格速度が30 m/min以下で,かごの降下する毎分の速度が定格速度に相当する速度の1.4倍
を超えないうちに,かごの降下を自動的に制止する装置を設けたエレベーターにあっては,適切な
緩衝材又は緩衝器とすることができる。
2) ばね緩衝器で,ストロークがかごの定格速度に応じ,次の表の数値以上とする。
表 10 ばね緩衝器のストローク
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定格速度
m/min
ストローク
cm
30以下
3.8
30を超え45以下
6.6
45を超え60以下
10.0
3) 油入緩衝器で,ストロークがかごの定格速度に応じ,次の式で求める数値以上とする。
534
2/
=V
L
(cm)
ここに,
L: ストローク(cm)
V: 定格速度(m/min)
m) つり合ロープ又はつり合チェーンがあるときは,その取付状態は適確であることとする。
n) つり合ロープ用綱車は,地震その他の振動によってつり合ロープが外れないように措置されているこ
こととする。また,タイダウン装置がある場合は,その機能は良好に維持されていることとする。
o) 非常止めがドラム操作式のものでは,その非常止めロープの巻取状態は正常であることとする。
p) 非常止め試験後,非常止め装置に損傷がないこと。また,正常に復帰していることとする。
q) 非常止めの連結機構がかご下部に設けられている場合,その取付けが良好であり,確実に作動するこ
ととする。
r) 移動ケーブルの取付部は強固で,かご昇降時に損傷のおそれがないこととする。
s)
かご枠材相互の締付状態は,良好であることとする。
t)
はかり装置(7)が,かご下に設けてある場合は,その作動状態は良好であることとする。
注(7) はかり装置の作動値は,定格積載量の105〜110 %を標準とする。
5.1.5
乗り場で行う検査
a) 乗り場の戸のスイッチ及び施錠の状態は,かごの戸を閉じ操作装置を運転状態にして各階乗り場の戸
を次第に全閉位置に近づけて,かごが起動する際の戸の出入口枠又は他の戸の最前縁との距離を測定
し,次のいずれかに適合することとする。
1) 上下開き戸及び中央開き戸の場合は,5 cm以内まで閉じたとき起動し,かつ,乗り場からは5 cm以
上開けられないこととする。
2) 1) 以外の戸の場合は,2 cm以内まで閉じたとき起動し,かつ,乗り場からは2 cm以上開けられな
いこととする。ただし,かご内でだけ運転可能な方式のエレベーターで,かごの戸と乗り場の戸が
同時に動力で開閉される場合は,次の2.1) 及び2.2) による。
2.1) 5 cm以内まで閉じたとき起動し,かつ,乗り場からは5 cm以上開けられないこととする。
2.2) 乗り場の戸に戸閉め装置を備え,かつ,閉じ終わろうとする戸を乗り場側から開こうとしても10
cm以上開かないものでは,10 cm以内まで閉じたとき起動することとする。
b) 乗り場の戸に変形がなく,戸の開閉が確実であることとする。
c) 非常解錠装置を設けてある乗り場においては,特殊な鍵を用いなければ戸のロックを解放できないこ
ととする。
d) 自動的に動力で戸が閉じる方式で,戸閉め安全装置を設けてある場合においては,その作動は良好で
あることとする。
e) 乗り場位置表示器がある場合の表示は,正確であることとする。
f)
自動式エレベーターで,乗り場呼ボタンを操作したとき,かごはその階に正確に到着することとする。
g) かご内と外部の所定の場所との非常連絡装置は,正常であることとする。
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h) 非常用エレベーターにあっては,避難階又はその直上階若しくはその直下階の乗降ロビーにかごを呼
び戻す装置が取り付けてあり,その作動が良好で,かつ,適確であることとする。
i)
非常用エレベーターにあっては,各階に非常用標識及び表示灯が設けられていることとする。
5.1.6
中央管理室で行う検査 非常用エレベーターにあっては,次のa) 及びb) の非常用に供する装置が
取り付けてあり,それらの作動が良好で適確であることとする。
a) 呼び戻しキースイッチを操作するとかごは,直ちに避難階に直行し待機する。
b) 非常運転灯は,非常運転に供されているときに点灯し,点灯時は赤色とする。
5.2
機械室なしエレベーター(ホームエレベーター含む)
5.2.1
かご室内で行う検査 かご室内で行う検査は5.1.2のa)〜h) による。ただし,5.1.2 f) においてホー
ムエレベーターの場合,かご外への連絡装置の操作ができる程度の明るさを確保できるものでよい。
なお,ホームエレベーターとして検査する場合は,次の事項に適合していることを確認する。
a) 住戸内だけを昇降するもの。
b) 昇降行程は,10 m以下とする。
c) かごの床面積は,1.1 m2以下とする。
5.2.2
かご上で行う検査 次のa)〜h) 以外は,5.1.3のa)〜f),h)〜j),l),m),o)〜s) 及びv)〜y) による。
a) 主索及び調速機ロープは,かご上において,かごを小刻みに昇降しながら検査し,かご上で検査でき
ない部分は,ピットにおいて検査し,5.1.3 k) の1)〜9) の規定に適合していることとする。
b) 綱車及びそらせ車の取付けが良好であり,主体部にひび割れがないこととする。
c) かご上又は,主索端末部(2:1ローピングの場合)にはかり装置が設置されている場合は,その作動
状態は良好であることとする。
d) 駆動装置が昇降路に設置されている場合は,次の1)〜4) 以外は5.1.1 c) による。
1) 駆動装置を設ける場所には,換気上有効な開口部,換気設備又は空気調和設備を設けていることと
する。ただし,機器の発熱により電動機を設けた場所の温度が7 ℃以上上昇しないことが計算によ
って確かめられた場合においては,この限りでない。
2) かご又はつり合おもりが緩衝器に衝突した場合にあっても,かご及びつり合おもりが駆動装置に触
れないものとする。
3) 駆動装置から昇降路の壁又は囲いまでの水平距離は,50 cm以上とする。ただし,駆動装置の保守点
検を行う必要のない部分にあっては,この限りでない。
4) 駆動装置の点検などのために,かごを固定する装置が設けてある場合は,その機能が良好であるこ
ととする。
e) 受電盤・主開閉器,制御盤が昇降路に設置されている場合は,次の1)〜3) 以外は5.1.1 b) の2)〜5) に
よる。
1) 受電盤・主開閉器は,安全かつ容易に操作できることとする。
2) 非常の場合に,昇降路外からかごの移動などによりかご内の乗客を安全に救出できる装置が設けて
あり,その機能は良好であることとする。
3) 制御盤を点検する際,制御盤扉などをかごの投影面積内に引き出して行う場合は,かごを停止させ
る装置が設けてあり,その機能は良好であることとする。
f)
調速機が昇降路に設置されている場合は,5.1.1 e) による。
g) 調速機が昇降路に設置されている場合の非常止め装置の作動状態は5.1.1 f) による。
h) 巻胴式エレベーターにあっては,主索が緩んだ場合において動力を自動的に切る装置が良好に作動す
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ることとする。
5.2.3
ピットで行う検査 次のa)〜d) 以外は,5.1.4のa)〜i) 及びl)〜t) に準じて検査を行うこととする。
ただし,ホームエレベーターなど,かごが最下階に水平に停止しているときのかごと緩衝器との最小間げ
きが別に認定されている場合は,その規定値としてもよい。
a) ピット内に駆動装置が設置されている場合は,次の1)〜3) 以外は5.2.2のb) 及びd) による。ただし,
2) 及び3) についてはホームエレベーターを除く。
1) かごの降下により作業者が挟まれないよう次の装置が設けてあり,その機能は良好であることとす
る。ただし,点検を行う者がかご又はつり合おもりと昇降路の底部に挟まれるおそれのない場合に
おいては,この限りでない。
1.1) ピットスイッチ(ピットに入るときに,エレベーターを停止させるスイッチ。自己保持型)
1.2) かご降下防止装置
2) ピットに浸水検知装置が設置されている場合は,その機能は良好であることとする。
3) 主索出入口部以外は,綱車と主索間に異物の混入を防止するカバーが強固に取り付けられているこ
ととする。
b) ピット周辺に受電盤・主開閉器,制御盤が設置されている場合は,安全かつ容易に操作,確認できる
こととする。これ以外は5.2.2 e) に準じて検査を行う。
c) 調速機がピット内に設置されている場合は,5.1.1 e) による。
d) 非常止め装置の作動状態は5.1.1 f) による。
5.2.4
乗り場で行う検査 次のa) 及びb) 以外は,5.1.5のa)〜g) による。
a) 負荷試験においては,5.1.1 d) による。
b) 制御盤を乗り場三方枠の一部に収納し,乗り場において制御盤の点検,修理を行うものについては,
制御盤の扉に施錠装置を設けてあることとする。
5.3
油圧エレベーター(直接式,間接式及びパンタグラフ式)
5.3.1
機械室で行う検査
a) 機械室の構造及び設備 次の1)〜5) 以外は,5.1.1 a) の3),4),6) による。
1) 油圧パワーユニット,油タンク,冷却装置及び制御盤は,柱及び壁から原則として50 cm離れてい
ることとする。ただし,保守管理に支障がない場合は,この限りでない。
2) 機械室は,耐火構造,準耐火構造又は防火構造の壁,天井で区画され,床は作動油が浸透しない構
造とする。
3) 機械室の戸は,自閉式錠付鋼製戸とする。
4) 機械室出入口近くに消火器又は消火砂が見やすい位置に設けられており,表示が正しくされている
こととする。
5) 機械室内に,火気厳禁の標識が掲示されていることとする。
b) 受電盤,制御盤,電気配管及び配線 検査は5.1.1 b) の1)〜5) による。
c) 油圧パワーユニット,圧力配管及び高圧ゴムホース
1) 油圧パワーユニットの取付けは確実で,地震その他の振動によって移動,転倒しない措置が施され
ていることとする。
2) 油圧パワーユニットの運転状態は,良好であることとする。
3) かごの上昇時に油圧が異常に増大した場合,作動圧力が常用圧力の150 %を超えないようにする安
全弁が設けられていることとする。
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4) 油圧パワーユニットの逆止弁は,作動が確実であることとする。
5) 手動下降弁を全開したときの速度は,定格下降速度以下とする。
6) 作動油温度が5 ℃以下又は60 ℃以上となることが予測される場合は,これを抑制する装置が設けら
れており,冷却に水を使用する場合には,その管は,飲料水系統に直結していないこととする。
7) ポンプ用電動機の空転を防止する装置は,確実に作動することとする。
8) 圧力配管には圧力計が設けられていることとする。
なお,圧力計は圧力センサーの出力値を表示する装置としてもよい。
9) 圧力配管は,有効な腐食防止のための措置が講じられており,確実に支持されていて,継手の接続
は確実で油漏れがないこととする。
10) 圧力配管には,地震その他の振動及び衝撃を緩和する装置が設けられており,壁などを貫通する部
分にはスリーブなどが設けてあることとする。
11) 油圧ゴムホースの継手の接続は確実で油漏れがなく,その最小曲げ半径は,JIS B 8360又はJIS B
8364に準拠していることとする。
12) 圧力配管及び油圧ゴムホースは,可動部と接触していないこととする。
13) かごに救出口を設けていない場合は,常用の電源を使用せずに手動下降弁などによって,かごを階
床レベル又は救出可能な位置まで移動し,かご内の乗客を安全に救出できることとする。
d) 負荷試験
1) 次の二つの場合につき,それぞれ定格電圧及び定格周波数のもとで速度,電流及び作動圧力を測定
し,表11の規定に適合していることとする。
1.1) 定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
1.2) 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
表 11 速度,電流及び作動圧力
項目
定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
速度
上昇,下降の際速度が設計図書に記載された
速度の90 %以上105 %以下
上昇,下降の際速度が設計図書に記載された
速度の85 %以上110 %以下
電流
電動機の定格電流値の135 %以下
電動機の定格電流値の140 %以下
作動圧力
設計値の115 %以下
設計値の120 %以下
2) かごの定格積載量の1.25倍(乗用及び寝台用以外でフォークリフトなどがかご停止時に乗り込むエ
レベーターにあっては,1.5倍)の負荷を載せた場合においても,かごの位置が7.5 cm以上変動し
ないこと。又は床合せ補正装置によって,着床面を基準として7.5 cm以内の位置に補正できること
とする。
5.3.2
かご室内で行う検査 かご室内で行う検査は,5.1.2のa)〜h) による。
5.3.3
かご上で行う検査 次のa)〜h) 以外は,5.1.3のc)〜k),m)〜s),v)〜y) による。
a) 綱車又はスプロケットの取付けが良好であり,主体部にひび割れがないこととする。
b) 主索,鎖又は調速機ロープは,次の1) 及び2) 以外は,5.1.3 k) の1)〜6) 及び8) による。
1) ロープの摩損状態は,摩損の最も甚だしい部分で検査し,表5の規定に適合していることとする。
2) 鎖は端部を1本ごとに確実に緊結され,ほぼ均等な張力を受けていることとする。また,鎖の伸び
は基準長さに対して1.5 %未満とする。
c) かご上運転の場合,頂部安全距離1.2 m以上を確保し,それ以上のかごの上昇を自動的に制御するた
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めの装置が確実に作動することとする。
d) かごを最上階より微速で上昇させ,プランジャーが離脱防止装置で停止したとき,かご最上部の機器
との頂部すき間(8)は,次の値以上とする。
間接式
cm
706
5.2
2
V
+
, 直接式2.5 cm
注(8) Vは,かごの上昇定格速度(m/min)
e) 間接式油圧エレベーターのジャッキには,プランジャー離脱防止装置が当たる前に作動する停止スイ
ッチが設けられ,取付け及び作動が確実であることとする。
f)
油圧シリンダは,確実に取り付けられていることとする。
g) シリンダパッキングからの油漏れは,適切に処理されていることとする。
h) かご及びプランジャーのガイドシューは取付けが強固で,地震その他の振動によってレールから外れ
ない措置が施されていることとする。
5.3.4
ピットで行う検査 次のa)〜d) 以外は5.1.4のa)〜c),e),g)〜i),l) 及びo)〜t) による。
a) かごが最下階に水平に停止しているときのかごと緩衝器との距離は,自動車運搬用を除き表12の規定
に適合していることとする。
表 12 かごと緩衝器との距離
下降定格速度 m/min
最小距離 mm
最大距離 mm
30以下
70
600
30を超えるもの
150
b) 油圧シリンダは,確実に取り付けられていることとする。
c) ロープを用いる間接式油圧エレベーターにあっては,地震その他の振動などによって主索に緩みを生
じた場合,綱車の溝から主索が離脱しないこととする。
d) 調速機 調速機が設けられた場合は,5.1.1 e) に準じて検査を行う。ただし,表3の定格速度は,下降
定格速度(9)と読みかえるものとする。
注(9) 下降定格速度とは,設計図書に記載された速度で,定格積載量の100 %の負荷を載せて下降す
る場合の毎分の最高速度をいう。
e) 間接式油圧エレベーターの非常止め装置の作動状態 次の1) 又は2) によって検査を行う。
1) 工場試験その他によって事前にその安全性が認められたものについては,無負荷(作業関係者を除
く。)で可能な限り低い速度で,次の1.1) 及び1.2) の事項を検査する。
1.1) 次の1.1.1) によって行う。ただし,調速機を備えていない方式については1.1.2),スラックロープ
式については5.1.1 f) 1.1.3) によって行う。
1.1.1) かごの下降中,調速機のキャッチを作動させ,かごを停止させた後,更にかごを下降させるよう
に油圧パワーユニットを操作する。プランジャーが下降してもかごが下降しなくなることによっ
て非常止め装置が作動したことを確認する。
1.1.2) かごを固定した後プランジャーを下降させ,かごの主索又は鎖を緩めてから,かごの固定を解除
してもかごが下降しないことによって非常止め装置が作動したことを確認する。
1.2) 非常止め装置の作動後の検査は,5.1.1 f) 1.2) による。
2) 1) 以外のものについては,定格積載量の100 %の負荷を載せて高速で,次の2.1)〜2.3) の事項を検
査する。
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2.1) かごを下降運転にて徐々に増速し,調速機のキャッチを作動させ,かごをいったん停止させた後,
更にかごを下降させるように油圧パワーユニットを操作する。プランジャーが下降してもかごが
下降しなくなることによって,非常止め装置が作動したことを確認する。
2.2) 非常止め装置の作動後の検査は,5.1.1 f) 1.2) による。
2.3) 非常止め装置の作動の最初から完全停止までの距離は,5.1.1 f) 2.2) による。
5.3.5
乗り場で行う検査 乗り場で行う検査は,5.1.5のa)〜g) による。
5.4
エスカレーター(動く歩道を含む)(10)
注(10) 動く歩道の検査項目は,エスカレーターの検査項目に準じて行うものとし,非該当項目には,
※印を記す。
5.4.1
機械室で行う検査 次のa)〜d) 以外は,5.1.1 b) の1)〜3),5) による。
a) 絶縁抵抗は,各回路ごとに,それぞれ表13の規定に適合することとする。ただし,絶縁抵抗は,開閉
器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに検査ができる。
表 13 回路の絶縁抵抗
単位 MΩ
回路の用途
回路の使用電圧
絶縁抵抗値
電動機主回路
300 V以下のもの
300 Vを超えるもの
0.2以上
0.4以上
制御回路
信号回路
照明回路
150 V以下のもの
150 Vを超え300 V以下のもの
0.1以上
0.2以上
備考 エスカレーターの側面などを照明する瞬時起動熱陰極蛍光電灯
(いわゆるスリムラインランプと称されるもの)の回路の使用
電圧区分は,一次側(低圧側)の電圧とする。
b) 負荷試験は,無負荷で検査を行い,踏段速度は昇降口において設計図書に記載された速度の110 %以
下,電流は定格電流値の120 %以下とする。
c) 駆動装置及び制動機
1) 駆動装置の取付けは確実で,地震その他の振動によって移動,転倒しない措置が施されていること
とする。
2) 駆動装置の運転状態は良好で異常な発熱,振動や異音がないこととする。
3) 制動機の取付けは確実であることとする。
4) 駆動装置の制動機の作動は適切であり,その強さは無負荷状態で上昇している踏段の停止距離が次
の計算式で求められた数値以上で,かつ,こう(勾)配が15度を超えるもの又は踏段と踏段の段差
が4 mmを超えるものにあっては,60 cm以下とする。
000
9
2/
=V
S
ここに,
S: 踏段停止距離(m)
V: 定格速度(m/min)
d) 駆動用鎖の切断停止装置の機能は良好であることとする。
5.4.2
上下乗り場及び踏段で行う検査
a) 踏段用鎖が異常に伸びた場合又は切断した際に作動する停止スイッチの取付けは強固で,作動は確実
であることとする。
b) 乗り場に近接して設けられた防火シャッターなどが閉まり始めると,エスカレーターの昇降が停止す
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ることとする。
c) 上下乗り場の起動スイッチ,停止スイッチ,非常停止ボタン,警報スイッチなどの作動は良好である
こととする。
d) ハンドレールが踏段と同一方向でほぼ同一速度で昇降することとする。
e) ハンドレールは下降運転中,上部乗り場で約150 Nの人力で水平に引っ張っても止まらないこととす
る。
f)
ハンドレールの入込口には適切な保護装置があり,ハンドレール入込口スイッチの作動は確実である
こととする。
g) 踏段と上下乗り場のくしのかみ合いが十分で,容易に物が挟み込まれないこととする。
h) 踏段相互間及びスカートガードと踏段とのすき間は,エスカレーターの全長にわたって接触すること
なく5 mm以下とする。
※i)
動く歩道の場合は,踏段と踏段との段差は4 mm以下とする。
※j) スカートガードスイッチの作動状態は,確実であることとする。
k) 踏段上の注意標識(11)は,明りょうになっていることとする。
注(11) 注意標識の色は,黄色又は黄赤色。
l)
ハンドレール停止検出スイッチが設けられている場合は,そのスイッチの作動は確実であることとす
る。
m) エスカレーターと交さする天井など(隣接エスカレーターの側下面を含む。)の下面の端部がハンドレ
ール外縁から水平距離で50 cm以内に近接する場合は,保護装置が設けてあり,取付状態は確実であ
ることとする。
なお,固定保護板は,次の1)〜5) による。
1) 固定保護板は,交差部の下面に設けられ,前縁はハンドレール上面から鉛直上方に30 cm,下方に
20 cm以上の寸法とする。ただし,鉛直下方に伸ばせない場合は,上部デッキボードに保護板が載
っていてもよい。
2) 固定保護板の取付けは確実であることとする。ただし,交差部の構造によって固定できない場合は
交差部から強固につ(吊)り下げられ,かつ,下端を鎖などによって固定されていて保護板が大き
く外れないこととする。
3) 固定保護板は,厚さ6 mm以上で前縁は角がないもの,又は直径50 mm以上の円筒とする。
4) 固定保護板の取付金物は,交さする天井など(隣接エスカレーターの側下面を含む。)より極端に突
出していないこと。
5) 固定保護板の前方に可動警告板を設けている場合は,厚さ3 mm以上で前縁の円筒部は直径50 mm
以上とし,円筒部がハンドレールを乗り越えない寸法とする。
n) 踏段から鉛直距離で,2.1 m以内に危険なはりなどがないこととする。
o) 安全さく(柵),仕切板及び落下物防止網が設けてある場合は,その取付状態が確実であることとす
る。
5.5
小荷物専用昇降機
5.5.1
機械室で行う検査
a) 機械室内機器の点検に支障がないこととする。
b) 絶縁抵抗の検査は,5.1.1 b) 4) による。
c) 駆動装置及び制動機の検査は,5.1.1 c) の1)〜4) による。
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d) 負荷試験は,5.1.1 d) による。
5.5.2
出し入れ口での検査
a) 最上階の出し入れ口での検査
1) 使用されている主ロープは設計図書と相違なく,取付方法は適切であることとする。
2) 上部リミットスイッチの作動状態は,良好であることとする。
3) 使用されているガイドレールは設計図書と相違なく,取付方法は適切であることとする。
4) かごのガイドシューは強固に取り付けられていることとする。
b) 各階ドア・スイッチ及び信号装置の作動は,良好であることとする。
c) 各階ドアつ(吊)りロープの取付状態は,確実であることとする。
d) 各階出し入れ口の見やすい位置に,積載量,人の搭乗禁止などを明示した標識が掲示されていること
とする。
e) 最下階の出し入れ口での検査
1) 下部リミットスイッチの作動状態は,良好であることとする。
2) ピットに漏水がなく清潔であることとする。
3) つり合おもりのガイドシューの取付けは強固であり,つり合おもり片の固定状態も適切であること
とする。
4) かご内の各寸法は設計図書と相違ないこととする。
5) かご内の見やすい位置に,積載量,人の搭乗禁止などを明示した標識が掲示されていることとする。
f)
フロアータイプにおいては,出し入れ口にドアロックが設けてあり,その構造と取付けは強固で,作
動は適確であること。
g) 手動開閉式の出し入れ口戸にあっては,戸開放防止ブザーなどが設けてあり,その警報は適切である
こと。
5.6
段差解消機 この規格は,駆動方式が,ロープ式(巻胴式を含む。),油圧式(直接式,間接式)ラ
ックピニオン式,チェーンスプロケット式,チェーンラックピニオン式及びスクリューナット式(ボール
ねじ式を含む。)の段差解消機を対象とする。
5.6.1
駆動装置及びその付近で行う検査(油圧式以外)
a) 受電盤・主開閉器,制御盤,電気配管及び配線 受電盤・主開閉器は,原則として駆動装置近くに設
置され,安全,かつ容易に操作できること。これ以外は5.1.1 b) の2)〜4) による。
b) 駆動装置及び制動機 次の1)〜5) 以外は5.1.1 c) 3) による。
1) 駆動装置の取付けは確実で,地震その他の振動によって移動及び転倒しない措置が施されているこ
ととする。
2) 外観異常,損傷がないこととする。
3) 駆動装置の運転状態は良好で異常な発熱,振動及び異音がないこととする。
4) 摩擦抵抗型制動機の場合,動力が遮断したときにかごを10 cm以内で停止させることができること
とする。
5) 駆動部が,チェーンなどによる間接駆動の場合,間接駆動の連結機構が断たれた場合,非常止めが
確実に作動することとする。
c) 駆動装置
1) ロープ式(巻胴式を含む。)の場合は,次の1.1)〜1.4) 以外は,5.1.1 c) の1)〜5) による。
1.1) そらせ車のある場合,その取付けが良好であり,主体部にひび割れがないこととする。
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1.2) 巻胴式にあっては,主索が緩んだ場合,自動的に動力を切ることとする。
1.3) 巻胴式にあっては,主索が一定以上巻き過ぎた場合,動力を切ることとする。
1.4) 主索及びその取付部は,5.1.3 k) の1)〜7) の規定による。
2) ラックピニオン式の場合は,次の2.1) 及び2.2) を検査する。
2.1) ラック及びピニオンは取付けが強固で,固定部の緩みなどがないこととする。
2.2) ラック及びピニオンの外観異常,損傷及び著しい摩耗がないこととする。
3) チェーンスプロケット式の場合は,次の3.1)〜3.4) を検査する。
3.1) チェーン及びスプロケットは,取付けが強固で固定部の緩みなどがないこととする。
3.2) チェーン及びスプロケットは,摩耗,変形,さび(錆)及び腐食の著しい発生がないこととする。
3.3) チェーンは,走行に支障のない張力であることとする。
3.4) チェーンの伸びは,基準長さに対して1.5 %未満とする。
4) チェーンラックピニオン式の場合は,次の4.1)〜4.3) を検査する。
4.1) チェーン,ラック及びピニオンは取付けが強固で,固定部の緩みなどがないこととする。
4.2) チェーン,ラック及びピニオンの外観異常,損傷及び著しい摩耗がないこととする。
4.3) チェーンの伸びは基準値に対して1.5 %未満とする。
5) スクリューナット式の場合は,次の5.1)〜5.3) を検査する。
5.1) ねじ軸及びナットは,取付けが強固で,固定部の緩みなどがないこととする。
5.2) ねじ軸及びナットは,摩耗,変形,さび(錆)及び腐食の著しい発生がないこととする。
5.3) 走行時に異常音がなく,円滑な回転であることとする。
d) 非常救出装置
1) 非常救出装置を設けている場合は,その装置が確実に機能することとする。
2) 救出装置を設けない場合で,救出用具を用いるものにあっては,その用具が整備されていることと
する。
e) 負荷試験 次の二つの場合につき,定格電圧及び定格周波数のもとで速度及び電流を測定し,表14
の規定に適合していることとする。ただし,つり合おもりがある場合は5.1.1 d) 1) による。
1) 定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
2) 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
表 14 速度及び電流
項目
定格積載量の100 %の負荷を載せた場合 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
速度
設計図書に記載された速度の85 %以上
125 %以下
設計図書に記載された速度の125 %以下
電流
電動機の定格電流値の110 %以下
電動機の定格電流値の120 %以下
5.6.2
駆動装置及びその付近で行う検査[油圧式:直接式(パンタグラフ式を含む)及び間接式]
a) 受電盤・主開閉器,制御盤,電気配管及び配線 検査は,5.6.1 a) による。
b) 油圧パワーユニット,圧力配管及び高圧ゴムホース 検査は,5.3.1 c) による。
c) 非常救出装置 検査は,5.6.1 d) による。
d) 負荷試験 次の二つの場合につき,定格電圧及び定格周波数のもとで速度,電流及び作動圧力を測定
し以下の表15の規定に適合していることとする。ただし,つり合おもりがある場合は5.1.1 d) 1) によ
る。
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1) 定格積載量の100 %の負荷を載せた場合
2) 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
表 15 速度,電流及び作動圧力
項目
定格積載量の100 %の負荷を載せた場合 定格積載量の110 %の負荷を載せた場合
速度
設計図書に記載された速度の85 %以上
110 %以下
設計図書に記載された速度の110 %以下
電流
電動機の定格電流値の135 %以下
電動機の定格電流値の140 %以下
作動圧力 設計値の115 %以下
設計値の120 %以下
備考 パンタグラフ式など構造的に等速走行が難しい昇降機の速度とは,全昇降行程を所要時
間で除した数値をいう。
5.6.3
かご室内で行う検査
a) かごの側壁及び床
1) 側壁,床などには著しい変形,腐食がないこととする。
2) 昇降行程が1 mを超える場合は,側壁又は手すりの高さは床面より1 m以上で,手すりには床面よ
り高さ15 cm以上の立ち上がり部(せき)が設けられていることとする。ただし,車いすに座った
まま使用する1人乗りのものにあっては,側壁又は手すりの高さは床面より65 cm以上で,手すり
には床面より高さ7 cm(出入口の幅が80 cm以下の場合にあっては,6 cm)以上の立ち上がり部(せ
き)が設けられていること。
なお,鉛直型段差解消機で昇降行程がおおむね2.5 mを超える場合,かごの側壁は高さ1.1 m以
上の丈夫なパネル状のものとする。
3) 昇降行程が1 m以下の場合は,かご内又はかご内から容易に手が届き,かつ昇降行程全域にわたり
手が挟まるおそれのない位置に,手すりが設けられていることとする。
4) 床下にスカートガードを設けた場合は,その取付けが確実であり,著しい変形,腐食がないことと
する。
b) 戸又は遮断棒 昇降行程が1 mを超える場合の戸又は遮断棒は,次の1)〜3) によって検査を行う。
1) 戸又は遮断棒には著しい変形,腐食がないこととする。
2) 戸又は遮断棒は確実に開閉することとする。
3) 戸又は遮断棒が閉じていなければ,かごは昇降しないこととする。
c) 操作盤のスイッチ及び表示器 操作盤のスイッチ及び表示器は,次の1)〜3) によって検査を行う。た
だし,5.6.3 a) 2) の車いすに座ったまま使用する1人乗りのものにあっては,かご室内に操作盤を設け
ていないこととする。
1) スイッチの作動は,円滑で固定部の緩みなどがないこととする。
2) スイッチ接点には,劣化損傷がないこととする。
3) 表示器がある場合の表示は,正確であることとする。
d) リモ−トコントロール操作盤 リモートコントロール操作盤が設けられている場合は,次の1)〜3) に
よって検査を行う。
1) 非常停止スイッチが,設けられていることとする。
2) スイッチの作動状態は,良好であることとする。
3) かご操作盤ボタンの停止機能が優先することとする。
e) 外部への連絡装置 外部への連絡装置がある場合又は鉛直型段差解消機で昇降行程がおおむね2.5 m
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を超える場合に設ける連絡装置(インターホン)は,5.1.2 e) による。
f)
非常停止スイッチ
1) スイッチを操作することによって,かごは確実に停止することとする。
2) スイッチから手を放しても,再起動しないこととする。
g) 標識 用途,積載量,最大定員及び用途に応じた注意事項の表示が見えやすい位置にあり,その記載
内容が適正であることとする。
h) 車止め 車止めが設けられている場合は,かご床に確実に固定されており,著しい変形,損傷がない
こととする。
i)
渡し板及びその跳ね上げ機構 渡し板が設けられている場合は,次の1)〜3) によって検査を行う。
1) 出入口床先とかごの床先との水平距離は4 cm以下とする。ただし4 cmを超える場合は,渡し板が
設けられており,その取付けが確実で作動状態が良好であることとする。
2) 渡し板のこう(勾)配は,1/12以下とする。ただし,高低差が16 cm以下にあっては1/8以下でも
よい。
3) 渡し板は著しい変形,損傷がないこととする。
j)
非常止め装置 非常止め装置が設けられている場合は,次の1) 及び2) によって検査を行う。
1) 非常止め装置の取付けは強固で,固定部の緩みなどがないこととする。また,可動部の作動は円滑
であることとする。
2) 非常止め装置の作動状態を,次の2.1) 又は2.2) によって検査する。
2.1) 工場試験その他によって事前にその安全性が認められたものについては,可能な限り低い速度か
つ無負荷(作業関係者を除く。)で,装置に対応する手順にて非常止めを作動させ,かごの下降が
確実に静止されることを確認する。
2.2) 2.1) 以外のものについては,定格積載量の100 %の負荷を載せ,下降定格速度で装置に対応する
手順にて非常止めを作動させ,かごの下降が確実に静止されることを確認する。
k) ガイドローラー
1) ガイドローラーの取付けが強固で,固定部の緩みなどがないこととする。
2) ローラー外観上に著しい摩耗,きずなどがないこととする。
3) 昇降時に異常音がなく円滑な回転を行うこととする。
5.6.4
乗り場及び昇降路で行う検査
a) 乗り場操作盤スイッチ 乗場操作スイッチの作動状態は,良好であることとする。
b) 乗り場の戸又は遮断棒 戸又は遮断棒が設けられている場合は,次の1)〜3) によって検査を行う。
1) 戸又は遮断棒及び開閉機構には著しい変形,腐食がないこととする。
2) 戸又は遮断棒は確実に開閉することとする。
3) 昇降行程が1 mを超える場合は,戸又は遮断棒がすべて閉じていなければ,かごは昇降しないこと
とする。
c) ドアロック ドアロックを設けている場合は,かごが乗り場に停止していないすべての戸が確実にロ
ックされていることとする。
d) 非常停止スイッチ 非常停止スイッチは,5.6.3 f) による。
e) リミットスイッチ リミットスイッチの取付けは強固で,作動状態が良好であることとする。
f)
移動ケーブル,トロリー及びその取付部
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1) ケーブル被覆及び端部に損傷がないこととする。
2) 可動時に外部部品との干渉がないこととする。
3) トロリーは,通電部に容易に触れることのできない構造とする。
g) 昇降路側壁などの囲い
1) 囲いの取付けは強固で,破損がないこととする。
2) 斜行型段差解消機のかごの底部に人又は物が挟まれるおそれのある場合,囲いは高さが階段部分に
あっては踏み面先端,床にあっては床面から1.1 m以上とする。
3) 鉛直型段差解消機の場合,次の3.1)〜3.4) による。
3.1) 昇降行程がおおむね2.5 m以下で,かごの底部に人又は物が挟まれるおそれのある場合,囲いの高
さが下階床面から1.8 m以上とする。昇降行程がおおむね2.5 mを超える場合,昇降行程全域にわ
たり丈夫な壁又は囲いを設けていることとする。また,昇降路にガラスなどを用いる場合は利用
者が高所による恐怖感を抱かないように配慮されていることとする。
3.2) かご内側壁(手すり)から建物の床,はり(梁)などの水平距離が50 cm以下の場合,昇降全域
を連続した段差のない壁又は囲いであることとする。
3.3) 上階部分は,乗り場出入口を除き,床面から高さ1.1 m以上の手すりなどが設けられていることと
する。
3.4) かごの出入口が遮断棒の場合,上部乗り場から下部乗り場停止位置まで出入口全幅にわたり,段
差のない壁又はフェッシャープレートを全域に設けていることとする。昇降行程がおおむね2.5 m
を超える場合,かごの出入口は高さ1.1 m以上の戸とすることとする。
4) かごの昇降行程全体にわたり,かごの床面から建物の天井及びはり(梁)下までの高さが2 m未満
の場合は,当該高さが1.8 m以上で,かつ,注意喚起材が適切に取り付けられているなどの措置が
なされていることとする。
5) パンタグラフ式の場合は,次の5.1)〜5.3) を検査する。
5.1) フレームの取付けが確実であることとする。
5.2) アーム機構に変形及び著しい摩耗がないこととする。
5.3) 摺動部及び軸部は,円滑で適切な給油がされていることとする。
h) ガイドレール及びブラケット ガイドレール及びブラケットは取付けが強固で,著しい摩耗,さび(錆),
腐食,変形がないこととする。
i)
カバー ガイドレール,駆動装置などのカバーは損傷がなく,取付けは確実であることとする。
j)
障害物検知装置 障害物検知装置が設けられている場合,次の1)〜3) による。
1) 接触式(機械式)検知器の場合,かご床下の障害物検知装置は確実に作動し,かごは確実に停止す
ることとする。
2) 非接触式検知器の場合,かご床下の障害物検知装置は人や物がかごに触れる前に,かごは確実に停
止することとする。
3) 障害物検知装置が作動した場合,障害物を除去したのち,再び操作ボタンを押さない限りかごが昇
降しないこととする。
k) 折りたたみレール 折りたたみレールが設けられている場合は,次の1)〜3) によって検査を行う。
1) 使用状態でジョイント部にすき間や段差がないこととする。
2) 進入防止用安全スイッチの機能をもっている場合は,スイッチの作動位置が適切であり,取付けに
緩みやスイッチ機能の劣化がないこととする。
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3) 進入防止用ストッパーがある場合,取付けに緩みがないこととする。
5.7
いす式階段昇降機 この規格は,駆動方式がロープ式,ラックピニオン式,チェーンスプロケット
式,チェーンラックピニオン式のいす式階段昇降機を対象とする。
5.7.1
駆動装置及びその付近で行う検査
a) 受電盤・主開閉器,制御盤,電線配線及び配管 検査は,5.6.1 a) による。
b) 駆動装置及び制動機 検査は,5.6.1 b) の1)〜5) による。
c) 駆動装置
1) ロープ式の場合は,5.6.1 c) 1) による。
2) ラックピニオン式の場合は,5.6.1 c) 2) による。
3) チェーンスプロケット式の場合は,5.6.1 c) 3) による。
4) チェーンラックピニオン式の場合は,5.6.1 c) 4) による。
5) 駆動装置の回転部などに指や手が挟まれるおそれがある場合,カバーを設けるなどの対策が講じら
れていることとする。
d) 非常止め装置 検査は,5.6.3 j) による。
e) ガイドローラー 検査は,5.6.3 k) による。
f)
リミットスイッチ 検査は,5.6.4 e) による。
g) バッテリー バッテリーがある場合は,次の1)〜4) について検査する。
1) 所定の電圧が得られることとする。
2) バッテリー本体及び端子部分の取付けに,緩みが発生していないこととする。
3) 電解液漏れや外観異常が,発生していないこととする。
4) 給電部に容易に触れることのない構造とする。
h) 負荷試験 検査は,5.6.1 e) による。
5.7.2
いす関係
a) いす部 いす部は取付けが強固で,著しいひび割れ,変形,さび(錆)などがないこととする。
b) いす操作盤のボタン又はレバー及び表示器
1) 押しボタン又はレバーから手を放すと確実にかごが停止することとする。
2) スイッチの作動は,円滑で固定部の緩みなどがないこととする。
3) スイッチ接点には,劣化損傷がないこととする。
4) 表示器がある場合の表示は,正確であることとする。
c) いす回転装置 いす回転装置がある場合は,座席が定位置で確実にロックでき,ロックされていなけ
ればかごは昇降しないこととする。
d) 標識 検査は,5.1.2 b) による。
e) 障害物検知装置
1) 障害物が瞬間的又は継続的に狭まった場合,スイッチの作動が円滑でかごがただちに停止すること
とする。
2) 障害物を除去したのち,操作ボタンを押さない限りかごが昇降しないこととする。
f)
運転キースイッチ 運転キースイッチは取付けが強固で,接点の劣化損傷がないこととする。
g) 安全ベルト 安全ベルトなどは帯部の変形,損傷がないこととする。また,ベルト固定部の著しい変
形,さび(錆)がなく確実に固定されるものであることとする。
h) いす折りたたみ機構 いす折りたたみ機構がある場合は円滑で安全上支障がなく,著しい変形,摩耗
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及び腐食などがないこととする。
5.7.3
乗り場及び階段
a) 乗り場呼び,送りボタン
1) ボタンから手を放すと確実にかごが停止することとする。
2) スイッチの作動状態は,良好であることとする。
b) リモートコントロール操作盤 リモートコントロール操作盤が設けられている場合は,次の1)〜3) に
よって検査を行う。
1) ボタンから手を放すと,確実にかごが停止することとする。
2) スイッチの作動状態は,良好であることとする。
3) かご操作盤ボタンの停止機能が優先することとする。
c) ガイドレール及びブラケット 検査は,5.6.4 h) による。
d) 折りたたみレール 折りたたみレールが設けられている場合は,検査は5.6.4 k) による。
e) 移動ケーブル,トロリー及びその取付部 検査は,5.6.4 f) による。
f)
電源部 電源部(コンセントなど)は,差し込みが抜けるおそれがないこととする。
g) 充電装置 充電装置がある場合は,接触子に著しい変形,さび(錆),腐食がないこととする。
5.7.4
階段の状態 走行及び昇降に障害となるものがないこととする。
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