令和2年10月26日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標準化法の用語に合わせ,規格中“日本
工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
A 1311-1994
建築用防火戸の防火試験方法
Method of fire protecting test of fire door for buildings
1. 適用範囲 この規格は,建築物の開口部に設ける防火戸の防火試験方法について規定する。
備考1. 6.に規定する衝撃試験及び7.に規定するしゃ煙試験は,必要に応じて行う。
2. 防火戸は,次に示す区分によって表示する。
加熱試験の級別
防火用(1) 1級,2級,3級
耐火用(2) 30分加熱,1時間加熱,2時間加熱
しゃ熱力の有無
A種(3) 5.8に合格のもの
B種(3) 5.9に合格のもの
その他の試験の有無
衝撃試験 S
しや煙試験 G-○○
記号例:防火A種2S
防火2級加熱試験に合格し,しゃ熱力があり,衝撃試験にも合格したもの
耐火1時間B種SG-1.2
耐火1時間加熱試験に合格し,非しゃ熱性で衝撃試験に合格し,しゃ煙試験における通気
量が1.2m3/min・m2以下のもの
注(1) 防火用は,建築物の外壁に用いる防火戸に適用する。
(2) 耐火用は,主に建築物の屋内防火区画に用いる防火戸に適用する。
(3) A種は木造建築物のように防火戸の内側に木造部分がある場合に適用し,B種はそれ
以外の場合に適用する。
3. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS A 5413 石綿セメントパーライト板
JIS C 1602 熱電対
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条
4. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考値である。
2. 試験体
2.1
試験体は,防火戸及び枠を含めて実際のものと同一に製作し,部分によって防火力に差がある場合
は,防火上弱点と思われる部分を含ませる。
2
A 1311-1994
2.2
試験面の大きさは,実際のものと同一とする。ただし,実際のものの大きさが200cm×250cm以上
のときは200cm×250cmとすることができる。厚さは,実際のものと同一とする。
2.3
試験体は,通風のよい室内で,おおむね表1の期間乾燥させる。ただし,人工乾燥によって前記以
上の乾燥状態とした場合,又は気乾状態であることを適当な試験方法で確かめた場合は,この期間を短縮
することができる。
また,金属,ガラス製品などは乾燥の必要がない。
表1
区分
夏
冬
コンクリート,モルタル塗など湿式工法によるもの
2箇月
3箇月
石綿スレート張など乾式工法によるもの
1箇月
1箇月
3. 加熱炉
3.1
加熱炉は,4.に示す加熱温度の時間的変化を,試験面の全面にほぼ一様に与えられるようなものとす
る。
3.2
加熱炉の熱源は,都市ガス,プロパン,重油その他適当な燃料とし,その炎は,直接試験体に十分
に達しうるものとする。
3.3
試験体取付用枠は,耐熱性のものとし,試験面を所定の位置に保持できるような構造のものとする。
3.4
試験体は,鉛直位置で片面から加熱する。
4. 加熱等級
4.1
防火用の加熱温度は,表2及び付図1の標準曲線によるものとし,その加熱等級は,加熱温度によ
って,1級,2級及び3級とする。
表2 防火標準加熱温度
単位℃
加熱区分 (min)
経過時間
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
1級加熱
100
150
260
410
660
910 1 060 1 120 1 120 1 090 1 010 920
850
780
2級加熱
75
120
190
310
500
680
790 840 840 820 760
690
640
585
3級加熱
25
55
100
180
300
410
500 550 550 525 490
450
400
365
加熱区分 (min)
経過時間
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
1級加熱
720
660
610
560
530
480
450
410
380
350
320
290
260
230
200
2級加熱
540
495
460
420
395
360
340
310
285
260
240
220
195
175
150
3級加熱
330
305
280
260
240
225
210
190
175
160
150
140
125
110
100
備考 2分目までは,常温から漸増させる。
4.2
耐火用の加熱温度は,表3及び付図2の標準曲線によるものとし,加熱等級は,加熱時間が30分,
1時間及び2時間のものを,それぞれ30分加熱,1時間加熱及び2時間加熱という。
3
A 1311-1994
表3 耐火標準加熱温度
経過時間 (min)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
加熱温度 (℃)
100
220
330
440
540
600
640
665
685
705
715
730
経過時間 (min)
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
加熱温度 (℃)
740
750
760
770
775
785
790
795
800
805
810
815
経過時間 (min)
25
26
27
28
29
30
35
40
45
50
55
60
加熱温度 (℃)
820
825
830
835
838
840
860
880
895
905
915
925
経過時間 (min)
65
70
75
80
85
90
95
100
110
120
加熱温度 (℃)
935
945
955
965
975
980
985
990
1 000 1 010
5. 加熱試験
5.1
試験面以外の部分は,火炎をしゃ断するように耐火れんがその他の材料で覆い,更にこれらの間が
すいていて試験面以外の部分が加熱されるおそれがある場合は,石綿その他のものを充てんするなど,適
当に処理して加熱する。
5.2
試験体の加熱側の炉内気圧が大気圧より大となるような加熱方法をとる。このため,試験面にマノ
メータ類を取り付け,少なくとも加熱面の約21が大気圧より高い炉内気圧を受けていることを確かめるも
のとする。
5.3
加熱温度は,JIS C 1602に規定する0.75級以上の性能をもつ径1mmのCA熱電対によって測定する。
加熱温度を測定する熱電対の熱接点は,付図3のように試験面の中心及び中心と端部との中間に,合計
9箇所以上を標準として設置する。
防火用加熱試験における加熱温度測定用熱電対の熱接点の設置方法は,付図4のようにモルタル表面温
度で測定する。付図4のモルタル表面温度で測定することが困難な場合には,あらかじめ付図4に規定す
るモルタル表面に熱接点を設けて,規定の温度を示す加熱条件を付図5に示す方法で測定しておき,これ
をその加熱炉の特性加熱温度として標準温度に代えて付図5の方法で測定することができる。
耐火用加熱試験における加熱温度測定用熱電対は,内径約1cmの先端を封じた石英,鉄又は磁性保護管
に入れ,その熱接点をそれぞれ試験面から約3cm離した位置で10cm以上試験面に平行するように置く。
5.4
加熱は,5.3に規定した熱電対の示す温度を4.に規定した標準曲線に沿わせるように行う。
5.5
防火用加熱試験における加熱温度の測定は,1分以内ごとに行うものとし,次に規定するAが0.9K
以下又は1.1K以上の場合は,試験回数には算入しない。ただし,Aが1.1K以上で5.8の規定に合格の場合
又は0.9K以下で不合格の場合は,それぞれ合格又は不合格とする。
A:実施した加熱時間温度曲線と260℃線との囲む面積(単位100℃min)
K:付図1に示す標準曲線上のAに対応する面積で表4のとおりとする。
表4
単位100℃min
加熱級別
1級加熱
2級加熱
3級加熱
加熱時間温度面積
96
56
19
5.6
耐火用加熱試験における加熱温度の測定は,30分までは2分以内ごとに,30分以後は5分以内ごと
に行う。炉内平均温度の標準曲線に対する許容差は,加熱時間温度面積で加熱時間1時間までは±10%,2
時間までは±7.5%,2時間を超えるものは±5%以内とする。ただし,その許容誤差以上の高温で5.8又は
5.9の規定に合格した場合は,この限りでない。
4
A 1311-1994
5.7
防火戸の弱点部と思われる裏側表面(さんがあるときはさん表面)から3cm離した位置に,JIS H 3100
に規定する厚さ0.2mm,面積約4cm2のタフピッチ銅板の表面をすすで黒くし,大きさ5cm×5cmのJIS A
5413に規定する厚さ1cmの0.8石綿パーライト板に密着させたものを5か所以上裏面に平行に置き,その
銅板の温度を測定する。銅板の温度は,JIS C 1602に定める0.75級以上の性能をもつ径0.65mmのCA又
はCC熱電対を銅板に銀ろう付けして測定する。ただし,B種にあってはこの測定を省略する。
5.8
加熱試験の結果,試験体が次の条件に適合するものを,A種に合格とする。
(1) 防火上有害と認められる変形・破壊・脱落などの変化を生じないこと。
備考 局部的な爆裂で表層のはく離にとどまるもの,及び積層材料又はしん材が,これらに該当しな
いものは合格とする。
(2) 防火上有害と思われる火炎を裏側に通さないこと。
備考 試験体の裏面側から,加熱炎が目視できるすき間又は孔を生じたときは火炎が裏面側に通った
ものとみなす。
(3) 加熱試験中付図6に示す防火戸周辺各部の長さl (cm) の中間における反り又はたわみが,l2/6 000を
超えないこと。ここで,lとは付図6のl1,l2,l3,l4,l5,l6,l7をいう。
(4) 構成材料のいずれからも防火上有害と認められる発炎をせず,加熱終了後5分間以上,火気が残存し
ないこと。
備考 ガラスを止めるパテなどの燃焼による火炎及び塗料の燃焼による火炎は,防火上支障ないもの
とみなす。
(5) 5.7に規定した銅板温度が260℃を超えないこと。
5.9
加熱試験の結果,試験体が5.8(5)を除いた各項に適合するものを,B種に合格とする。
6. 衝撃試験
6.1
衝撃試験は,5.に規定する加熱試験終了後30分以内の試験体を用い,試験体の裏面から6.2に規定
する衝撃を与えて行う。
6.2
衝撃は,付図7に示すように,試験体裏面側直上からロープでつり下げられた質量10kg,直径20cm
の球状砂袋を,衝撃箇所に対して鉛直距離50cmの高さから落下させて行う。
6.3
試験体の衝撃箇所は,構造上弱点と思われる部分を3箇所選び,それぞれ1回ずつ行う。
6.4
衝撃試験の結果,戸が破壊したり,すき間を生じたり,開いたりしないものを合格とする。
7. しゃ煙試験
7.1
2.の試験体を用い,5.の試験方法によって30分(耐火30分加熱のものは15分)以上加熱した後7.2
の試験装置によって,試験体両面における空気の圧力差が9.8Pa {1kgf/m2},19.6Pa {2kgf/m2} 及び29.4Pa
{3kgf/m2} のときの通気量を測定する。
7.2
試験装置は,付図8に示すように,圧力箱,送風機,圧力調整機,気密箱及び圧力計で構成され,
試験体の全面に空気圧で等分布荷重を加えることができるものとする。
7.3
しゃ煙試験の結果,圧力差19.6Pa {2kgf/m2} における試験体全面についての単位面積 (m2) ・単位時
間 (min) 当たりの通気量を標準状態(空気温度20℃,1気圧)に換算し,これをしゃ煙試験における試験
体の通気量とし,有効数字2けたで表す。この場合,各圧力差における測定値とほかの圧力差における測
定値との間に著しい特性変化がないこと。
備考 従来単位による試験機又は計測器を用いて試験する場合の,国際単位系 (SI) による数値への
5
A 1311-1994
換算は,次による。
1kgf=9.80N
8. 判定及び報告
8.1
5.の加熱試験体及び6.の衝撃試験は2回,7.のしゃ煙試験は1回とし,それぞれ合格しなければなら
ない。
8.2
試験結果の報告書には,構造種類の名称,使用材料の詳細(比重,含水率その他の品質を含む。),
試験体の形状・寸法・加熱等級,熱源,加熱温度,裏面温度及びその平均値などとその測定位置,最高値
とこれに達した時間,防火上重要な観察事項,衝撃試験後の試験体の状況,しゃ煙試験の各圧力差におけ
る通気量,結果の判定とその理由,燃料消費量,試験期間,試験機関名及び試験担当者名を記載する。
付図1
6
A 1311-1994
付図2
付図3
付図4
付図5
7
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付図6
付図7
付図8 試験装置(水平断面図)
8
A 1311-1994
建築部会 防火試験方法専門委員会 構成表(昭和50年1月16日改正のとき)
氏 名
所 属
(委員会長)
岸 谷 孝 一
東京大学工学部
斉 藤 光
千葉大学工学部
森 脇 哲 男
東京理科大学
阿 部 寛
農林省林業試験場
矢筈野 義 郎
自治省消防庁
木 原 滋 之
通商産業省生活産業局
市 橋 利 明
工業技術院標準部
今 泉 勝 吉
建設省建築研究所
斉 藤 文 春
建設省建築研究所
中 山 実
東京消防庁
高 野 孝 次
財団法人建材試験センター
正法院 陽 三
財団法人日本建築総合研究所
佐 藤 温
建設省住宅局
秋 田 実
東京都建築材料検査所
(事務局)
田 村 尹 行
工業技術院標準部材料規格課
松 本 大 治
工業技術院標準部材料規格課
小 林 秋 穂
工業技術院標準部材料規格課