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日本工業規格

JIS

 Z

9204

-1991

有効エネルギー評価方法通則

General rules for energy evaluation method

by available energy

1.

適用範囲  この規格は,エネルギーに関係する工業設備について有効エネルギー評価を行う場合の原

則について規定する。

備考  この規格の引用規格を,次に示す。

JIS Z 9202

  熱勘定方式通則

2.

用語の定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。

(1)

状態  圧力,温度,密度,組成など熱力学的状態量で定まる状態。

(2)

系  物体又は物体の集合体が,その状態の変化に伴い,他の系に対し仕事 だけを与え(熱の交換は

しない。

,周囲環境に対し仕事 L’及び熱 Q’を与えるもの(

図 1)。

図 1  系

備考1.  図2(境界線 I の範囲内)に系の具体例を示す。

2.

一般に,一つの系を幾つかの部分系に分けることができる(

図 1,図 2)。この際,部分系と

部分系の間に熱の交換(伝熱)のあるような分割が必要な場合は,これらの部分系をまとめ

て一つの部分系(他の系と熱の交換をしない。

)としたものに対して通常の系の法則が適用で

きる。

3.

仕事 は,機械的仕事,電力,その他一切の力学的仕事をいう。


 

2

Z 920

4-19

91

図 2  系(境界線 内)及び部分系(境界線 II内)の具体例


3

Z 9204-1991

3)

有効エネルギー  ある与えられた状態にある系(物体)のもつ有効エネルギーとは,その系がその

状態から周囲環境と平衡するまで変化するとき,他の系に与え得る最大の仕事 L

max

をいい,L

max

は可

逆変化の場合に得られる。

参考

(1)

  周囲環境状態を固定すれば,与えられた系の状態から出発して,どのような可逆変化の

経路を経ても L

max

の値はみな同じになる。したがって,与えられた状態にある系(物体)

の有効エネルギーは,その与えられた状態だけによって定まる。

(2)

  周囲環境状態と平衡状態にある系の有効エネルギーは,常に零である。

(4)

不可逆損失  状態 1,2 間の不可逆損失 I

r

とは,現実の系が状態 1,2 の間で不可逆変化を行うときに

生じる損失(利用の可能性のある力学的仕事の損失)をいい,次の,系の基本変化①∼③,及び部分

系の状況例④,⑤に示すようにして定められる。

 

他の系に仕事 を与える系(状態 1の変化)  表 1-①に示す不可逆変化過程上にある状態 1,

2

の有効エネルギーE

1

E

2

は,状態 1,2 を状態 0 とつなぐ任意の可逆変化を考えて定まり[2.(3)

参考(2)参照],状態 1→2 の不可逆変化で系が他の系に仕事 を与えるとき,常に E

1

E

2

あって,不可逆損失 I

r

I

r

=  (E

1

E

2

)

 (1)

他の系と仕事 の授受のない系(状態 1の変化)  表 1-②の不可逆変化 1→2 において,他の

系と仕事 の授受のない場合は,常に E

1

E

2

>0 であって,不可逆損失 I

r

I

r

E

1

E

2

 (2)

他の系から仕事 を受ける系(状態 2の変化)  表 1-③の不可逆変化 2→1 においては,常に

E

1

E

2

であって,不可逆損失 I

r

I

r

L−  (E

1

E

2

)  (3)

他の系と仕事 の授受のない系内における部分系の状況例  表 1-④は,部分系 と部分系 から

成る一つの系を示す。ここで部分系 H の状態 H1→H2 の変化,及び部分系 の状態 C2→C1 の変

化に対し,両部分系の間で熱量 が交換されるとき,不可逆損失 I

r

は,式(2)によって

I

r

E

1

E

2

 (4)

ここに,E

1

E

2

は系全体(部分系 H+部分系 C)の状態 1,2 の有効エネルギーで

E

1

E

H1

E

C2

E

2

E

H2

E

C1

 (5)

他の系に仕事 を与える系内における部分系の状況例  表 1-⑤において,部分系 の状態 H1→

H2

の変化,部分系 の状態 C2→C1 の変化の間で熱量 を交換,さらに部分系 の状態 C1→C3

の変化の間で他の系に仕事 を与えるとき,この系全体の不可逆損失 I

r

は,式(1)によって

I

r

=  (E

1

E

2

)

 (6)

ここに,E

1

E

2

は系(部分系 H+部分系 C)の状態 1,2 の有効エネルギーで

E

1

E

H1

E

C2

E

2

E

H2

E

C3

 (7)

備考1.  表1には,上記の各系①∼⑤について,系の具体例,熱収支と共に式(1)(7)などの結果を表

示する。ここで,不可逆損失及び有効エネルギー収支[2.(6)参照]は,同じ内容とする。

2.

表 には,上記の各系①∼⑤について,有効率

εをも表示する。有効率εは次のようにして定

める。系の基本変化①∼③では,有効エネルギー入力 E

1

E

2

に対する出力仕事 L,又は入力

仕事 に対する有効エネルギー出力 E

1

E

2

の比,また④では有効エネルギー入力 E

H1

E

H2

に対する有効エネルギー出力 E

C1

E

C2

の比,さらに⑤では,入力と出力の対応がいろいろ取

り得るので,ボイラ伝熱面に対する

ε

b

,タービンに対する

ε

t

動力サイクルに対する

ε

などが


4

Z 9204-1991

ある。


 

5

Z 920

4-19

91

表 1  系の基本変化及び部分系の状況例

熱収支

不可逆損失

有効エネルギー収支

有効率

H

1

H

2

LQ

I

r

=  (E

1

E

2

)

L

(タービン)

E

1

E

2

LI

r

2

1

E

E

L

=

ε

2

1

1

E

E

I

r

=

U

1

U

2

LL

Q

L

P

0

 (V

2

V

1

)

I

r

=  (E

1

E

2

)

L




L



(内燃機関)

E

1

E

2

LI

r

2

1

E

E

L

=

ε

2

1

1

E

E

I

r

=

H

1

H

2

Q

I

r

E

1

E

2

他の

系と

仕事

授受

(管路)

E

1

E

2

I

r

ε=0


 

6

Z 920

4-19

91

熱収支

不可逆損失

有効エネルギー収支

有効率

H

2

LH

1

Q

I

r

L−  (E

1

E

2

)

(ポンプ)

E

2

LE

1

I

r

L

E

E

2

1

=

ε

2

1

1

1

E

E

I

r

+

=

U

2

LL

U

1

Q

L

P

0

 (V

2

V

1

)

I

r

L−  (E

1

E

2

)

他の系から仕事

を受け

る系

(空気圧縮機)

E

2

LE

1

I

r

L

E

E

2

1

=

ε

2

1

1

1

E

E

I

r

+

=

他の系と仕事

の授受のな

系内

(熱交換器)

Q

H

H1

H

H2

H

C1

H

C2

I

r

E

1

E

2

=  (E

H1

E

H2

)

−  (E

C1

E

C2

)


 

7

Z 920

4-19

91

熱収支

不可逆損失

有効エネルギー収支

有効率

E

1

E

2

I

r

(E

H1

E

C2

E

H2

E

C1

I

r

)

2

1

2

1

H

H

C

C

E

E

E

E

=

ε

2

1

1

H

H

r

E

E

I

=

ボイラ伝熱面

Q

H

H1

H

H2

H

C1

H

C2

タービン

H

C1

H

C3

L

系全体

H

H1

H

C2

H

H2

H

C3

L

ボイラ伝熱面

I

rb

=  (E

H1

E

H2

)

−  (E

C1

E

C2

)

タービン

I

rt

=  (E

C1

E

C2

)

L

系全体

I

r

=  (E

1

E

2

)

L

=  (E

H1

E

H2

)

+  (E

c2

E

c3

)

L

I

rb

I

rt

事 

(ボイラ伝熱面−タービン系)

ボイラ伝熱面

E

H1

E

C2

E

H2

E

C1

I

rb

タービン

E

C1

E

C3

LI

rt

系全体

E

1

E

2

LI

r

(E

H1

E

C2

E

H2

E

C3

LI

r

)

ボイラ伝熱面

H

H

rb

H

H

C

C

E

E

I

E

E

E

E

=

=

1

2

1

2

1

1

ε

タービン

3

1

3

1

1

C

C

rt

C

C

t

E

E

I

E

E

L

=

=

ε

動力サイクル

2

1

C

C

E

E

L

=

ε


8

Z 9204-1991

(5)

定温槽  系を構成する部分系のなかで,熱 の授受があっても温度一定の状態を保つもの。定温槽の

場合は,これも可逆カルノー機関と組み合わせて系を作るとき,最大の仕事 L

max

を与える。したがっ

て,温度 の定温槽が熱 の授受をするとき,温度 T

0

の周囲環境をベースとする定温槽の有効エネ

ルギーE

R

の変化は,次による。

(a)

  T

T

0

の定温槽の場合

○放熱(状態 R1→R2)変化:

○受熱(状態 R2→R1)変化:

=

T

T

Q

E

E

R

R

0

2

1

1

 (8)

(b)

  T

T

0

の定温槽の場合

○受熱(状態 R1→R2)変化:

○放熱(状態 R2→R1)変化:

=

1

0

2

1

T

T

Q

E

E

R

R

 (9)

備考  定温槽は理想化された概念であるが,十分にこれで近似できるときは,計算の簡便化のため使

ってよいものとする。

(6)

有効エネルギー収支  状態 1,2 における有効エネルギーE

1

E

2

に関し,状態 1,2 間に出入する仕事

L

及び不可逆損失 I

r

を考慮したとき,常に収支がバランスすること。2.(4)の①∼⑤の場合に対し,式

(1)

(2)(3)(4)(6)からそれぞれ直ちに

①,⑤の場合:E

1

E

2

LI

r

(10)

②,④の場合:E

1

E

2

I

r

(11)

③    の場合:E

2

LE

1

I

r

(12)

備考  系を構成する部分系の有効エネルギーを用いて有効エネルギー収支を書くこともできる。2.(4)

の④の場合は,式(4)(5),また⑤の場合は,式(6)(7)から直ちに

④の場合:E

H1

E

C2

E

H2

E

C1

I

r

⑤の場合:E

H1

E

C2

E

H2

E

C3

LI

r

3.

有効エネルギー評価の基準  有効エネルギー評価を行う場合の周囲環境状態については,原則として

外気条件(温度,圧力,湿度など)とする。

備考  外気条件が複数のもの(例えば水と空気の温度が異なる場合)から成り一義的に確定し得ない

場合は,系に対し支配的な作用をもつ方の条件をとるものとする。

4.

有効エネルギー評価を行う系の状態  有効エネルギー評価を行う系の状態は,開いた系については定

常状態の,ある操作を行う閉じた系についてはその操作の,全工程又は工程内の指定された一部の工程に

ついて行う。

備考1.  ここにいう開いた系とは,系の入口から物質の流入,系の出口からの物質の流出が連続的に

生じている系をいい,閉じた系とは,それのない系をいう。


9

Z 9204-1991

2.

開いた系の場合,系の入口から出口までの間だけが評価の対象となる。したがって,その入

口以前又は出口以降において,作動物質に起こる状態変化(周囲環境との混合なども含む。

などは,評価の対象にはならない。

5.

有効エネルギー評価の結果の表示  有効エネルギー評価の結果の表示は,次による。

(1)

周囲環境状態その他の条件  有効エネルギー評価に使用した周囲環境状態を明示し,かつ対象とする

設備の熱収支(JIS Z 9202 による。

)及び物質収支の成立を示したうえで,有効エネルギー評価の結果

を 5.(3)の評価表によって表す。

(2)

評価の範囲の設定及び有効エネルギー収支  有効エネルギー評価を行うときは,対象とする設備をフ

ローシート(

図 参照)上に区分し,その境界線を流入・流出する有効エネルギー量,仕事量並びに

不可逆損失量を設計値又は計測値に基づいて算定し,流入及び流出の 2 項目にまとめる。

流入には,有効エネルギー評価を行う設備(又はその一部工程)に外から入る物質がその状態でも

つ有効エネルギーE,外から入る仕事 をとる。

流出には,有効エネルギー評価を行う設備(又はその一部工程)から外へ出る物質がその状態でも

つ有効エネルギーE,外へ出る仕事 並びに不可逆損失 I

r

をとる。

(3)

有効エネルギー評価表  系を適当な項目に分け,流入及び流出を各項目ごとに数量で示すとともに,

流入項目についてはその合計  (EL)  に対する百分率 (%),流出項目についてはその合計  (ELI

r

)

に対する百分率 (%) で示し,表にまとめる。ただし,流入合計と流出合計は,常に等しいものとする。

備考1.  一工程内の不可逆損失 I

r

の総量は,有効エネルギーの収支関係から容易に定まるが,なお不

可逆損失を可能な限り細分し,損失の原因ごとに示すこととする。

2.

設備内部で循環する有効エネルギーがある場合は,この循環ぶんを評価表に記入せず,別項

として付記する。

なお,評価表の流入合計(流出合計に等しい)に対する循環ぶんの百分率 (%) を付ける。


10

Z 9204-1991

解説表 1  有効利用熱エネルギー評価方法通則原案作成委員会

氏名

所属

主査

甲  藤  好  郎

東京大学工学部

幹事

斎  藤  孝  基

東京大学工学部

委員

阿  部  俊  夫

財団法人電力中央研究所

池  田  忠  治

新日本製鉄株式会社

市  川  道  雄

工業技術院公害資源研究所

内  田  幹  和

株式会社日立製作所

大  野      俊

日本セメント株式会社

岡  田  英  武

日本酸素株式会社

甲  斐      貞

旭化成工業株式会社

河  村  友  槌

三菱重工業株式会社

木  村  元  雄

三菱石油株式会社

黒  河  亀千代

工業技術院標準部材料規格課

佐  川  悠  三

日本鋼管株式会社

佐  藤  光  雄

東京芝浦電気株式会社

城  子  克  夫

千代田化工建設株式会社

智  田  喜久二

神奈川大学工学部

千  葉  孝  男

新日本空調株式会社

長  島      昭

慶応義塾大学工学部

西  川  兼  康

九州大学工学部

沼  島  恭  太

日本鉱業株式会社

野  崎  幸  雄

財団法人省エネルギーセンター

服  部  達  雄

東京ガス株式会社

土  方  邦  夫

東京工業大学工学部

森      康  夫

東京工業大学工学部

山  家  譲  二

石川島播磨重工業株式会社

吉  田  研  治

三井東圧化学株式会社

吉  田  邦  夫

東京大学工学部

事務局

武  藤  茂  春

社団法人  日本機械学会