>サイトトップへ >このカテゴリの一覧へ

Z 9021 : 1998

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日

本工業規格である。これによって JIS Z 9021-1954 は改正され,また,JIS Z 9022-1959 及び JIS Z 9023-1963

は廃止され,この規格に置き換えられる。

今回の改正では,1991 年に第 1 版として発行された ISO 8258 Shewhart control charts,及び,1993 年に発

行された ISO 8258 の技術的訂正 (Technical Corrigendum 1) を基礎とし,それらの技術的内容を変更するこ

となく規定した。

JIS Z 9021

には,次に示す附属書がある。

附属書 A(参考)  原国際規格の序文

附属書 B(参考)  参考文献


Z 9021 : 1998

(1) 

目次

ページ

序文1

1.

  適用範囲 1

2.

  定義及び記号 1

3.

  シューハート管理図の概要 2

4.

  管理図の種類 4

4.1

  計量値管理図と計数値管理図 4

4.2

  標準値が与えられていない場合の管理図 4

4.3

  標準値が与えられている場合の管理図 4

5.

  計量値管理図 4

5.1

  計量値管理図の概要 5

5.2

  -R 管理図又は -s 管理図5

5.2.1

  標準値が与えられていない場合の -R 管理図の作成手順6

5.2.2

  -R 管理図の例:標準値が与えられていない場合8

5.2.3

  -R 管理図の例:標準値が与えられてる場合 11

5.3

  X 管理図 13

5.3.1

  X 管理図と移動範囲管理図の例:標準値が与えられていない場合14

5.4

  メディアン管理図 15

5.4.1

  メディアン管理図の例:標準値が与えられていない場合16

6.

  計数値管理図 17

6.1

  計数値管理図の概要 17

6.2

  p 管理図と np 管理図 18

6.2.1

  p 管理図と np 管理図の例:標準値が与えられていない場合19

6.2.2

  p 管理図の例:標準値が与えられていない場合21

6.3

  c 管理図と u 管理図 23

6.3.1

  c 管理図の例:標準値が与えられていない場合23

6.3.2

  u 管理図の例:標準値が与えられていない場合24

7.

  管理図の利用に関する諸注意( -R 管理図を中心として)24

7.1

  管理図を使うための準備 24

7.1.1

  品質特性の選択 25

7.1.2

  製造工程の解析 25

7.1.3

  群の合理的な選択 25

7.1.4

  サンプリング頻度,及び群の大きさ 25

7.1.5

  予備データの収集 26

7.2

  計量値管理図による管理の手順と解釈 26

7.3

  管理図の見方 27


Z 9021 : 1998

目次

(2) 

ページ

7.4

  工程管理と工程能力 28

附属書 A(参考)  原国際規格の序文 31

附属書 B(参考)  参考文献32


日本工業規格

JIS

 Z

9021

: 1998

シューハート管理図

Shewhart control charts

序文  この規格は 1991 年に第 1 版として発行された ISO 8258, Shewhart control charts を翻訳し,また,1993

年に発行された ISO 8258 の技術的訂正 (Technical Corrigendum 1) に従い修正して,技術的内容を変更する

ことなく作成した日本工業規格である。しかし,その構成は 1954 年に第 1 版として発行された JIS Z 9021

(管理図法)の構成を踏襲したものであり,原国際規格とは異なっている。この規格と ISO 8258 との構成

上の相違については,

解説で述べる。

なお,この規格で下線(点線)を施してある“参考”は原国際規格にはない事項である。

1.

適用範囲  この規格は,工程の統計的管理の方法としてのシューハート管理図の使い方と理解のため

の指針を規定する。

この規格の適用範囲は,シューハート管理図を用いた統計的工程管理法の取扱いに限られる。警戒限界

線の使い方,傾向パターンの分析,工程能力といったシューハートのアプローチに関連する幾つかの追加

情報も簡単に記す。しかし,そのほかにも様々な管理図手法があり,その概要は ISO 7870 に記されている。

2.

定義及び記号  この規格で用いる主な用語の定義及び記号は,次による。

a)

n  

群の大きさ:群単位の観測値の数

b)  k

群の数

c)

X

品質特性の測定値(X

1

X

2

X

3

,…,で表される個々の値)

の代わりに が用いられることも

ある。

d)

群平均値:

n

X

X

i

å

=

e)

群平均の平均

f)

µ

真の工程平均

g)

Me

群のメディアン。大きい順又は小さい順に並べた 個のデータ X

1

X

2

,…,X

n

において,が奇

数のとき中央の値がメディアンであり,が偶数のとき中央の二つ値の平均値がメディアンである。

h)

e

M

各群のメディアンの平均値

i)

R

群の範囲。群内の最大値と最小値の差

備考  管理図の場合,は移動範囲を表す。移動範囲とは連続する二つの値の差の絶対値であり,

X

1

X

2

|,|X

2

X

3

|,…である。

j)

すべての群の の平均値

k)

s  

標本標準偏差:


2

Z 9021 : 1998

1

)

(

2

å

=

n

X

Xi

s

l)

群内標準偏差の平均値

m)

σ

群内母標準偏差

n)

σ

ˆ   群内母標準偏差の推定値

o)

p  

各群の不適合品率:p=群内の不適合品数/群の大きさ

p)

不適合品率の平均: =すべての群における不適合品数の総数/検査個数の総数

q)

np  

各群の不適合品数

r)

c

各群の不適合数

s)

すべての群の 値の平均値

t)

u

群の単位当たりの不適合数

u)

  u

値の平均値: =不適合数の総和/検査個数の総数

3.

シューハート管理図の概要  シューハート管理図は,ほぼ規則的な間隔で工程からサンプリングされ

たデータを必要とする。間隔は,時間(例えば 1 時間ごと)又は量(例えばロットごと)によって定義し

てよい。通常,それぞれの群は,同じ測定単位で同じ群の大きさの同じ製品又はサービスから成る。各群

から,平均 と範囲 又は標本標準偏差 のような群についての一つ以上の特性値を得る。シューハート

管理図は,群番号の順に打点した群の特性値のグラフである。管理図には中心線 (CL) があり,打点され

る特性値に対する参照値として用いられる。統計的管理状態であるかどうかを評価する場合には,通常,

参照値は対象となるデータの平均値が用いられる。また,工程管理の場合,参照値は製品規格で規定され

ている特性の長期的な値,又は工程の過去の経験に基づき打点された特性値の公称値,若しくは製品又は

サービスの暗黙的な目標値による公称値である。管理図には,中心線の両側に統計的に求められた二つの

管理限界がある。これらは,上方管理限界 (UCL),下方管理限界 (LCL) (

図 参照)と呼ばれる。

図 1  管理図の概略図

シューハート管理図の管理限界線は,中心線から両側へ 3

σ

の距離にある。ここで,

σ

は打点された統計

量の群内母標準偏差である。群内変動は偶然変動の尺度として用いられる。

σ

の推定値は,標本標準偏差

又は定数倍された標本範囲から計算される。

σ

には群間変動は含まれず,群内の変動だけから成る。3

σ

理限界は,工程が統計的管理状態にある場合に,その限界内に近似的に 99.7%の打点値を含むことを意味

する。別の表現をするならば,工程が管理状態にあるとき,危険率がほぼ 0.3%である,又は平均して 1 000

回に 3 回で上方若しくは下方管理限界を外れることを意味する。

“近似的”という表現を用いたのは,デー

タの分布形状などの基本的な仮定からの逸脱が確率に影響を与えるからである。

専門家によっては,0.2%という名目的な確率,又は偽りの管理限界外れが平均して 1 000 回に 2 回にな

るように,3 の代わりに 3.09 という値を選ぶことがある。しかし,シューハートは,厳密な確率を考慮す


3

Z 9021 : 1998

ることを意識的に避けて,3 という数字を選んでいることを注意しておく。同様に,専門家によっては,

範囲や不適合品率のように正規分布以外の分布を基礎とした管理図に対して実際の確率値を用いることが

ある。シューハート管理図では,経験的な解釈を強調する観点から,確率限界の代わりに 3

σ

限界を用いる。

管理限界を超える可能性は,真の異常によるよりも,偶然事象によることのほうが小さくなるように配

慮されているので,点が管理限界外に現れたならば処置をとるべきである。このとき,処置が要求される

ので,3

σ

管理限界は処置限界とも呼ばれる。

2

σ

限界線も管理図に示しておいたほうが都合がよいことが多い。2

σ

限界を超えた打点は,管理外れにな

りそうであるという警戒として用いる。このため,2

σ

管理限界は警戒限界とも呼ばれる。

管理図の適用には,2 種類の誤りが起こり得る。一つは,第 1 種の誤りと呼ばれ,対象とする工程が管

理状態にあるにもかかわらず,点が偶然に管理限界外に落ちるときに起こる。その結果として,工程が管

理外れであると誤って判断され,存在しない問題の原因を探求するコストが発生する。

二つ目は,第 2 種の誤りと呼ばれ,対象とする工程が管理外れのときに,偶然に管理限界内に点が落ち

るときに起こる。この場合に,工程が管理状態にあると誤って結論付けてしまう。このとき,不適合品の

増加を検出できないことによるコストが発生する。

第 2 種の誤りの確率は,

次の三つの要素の関数となる。

管理限界の幅,工程の管理外れの程度,及び群の大きさである。これらの要素は,本質的には第 2 種の誤

りの確率の大きさについて一般化を可能とするものである。

参考  “不適合品の増加を検出できないことによるコストの発生”と同時に“不適合品の減少を検出

できないことによるコストの発生(機会損失)

”も考えられる。

シューハート管理図の体系では,第 1 種の誤りだけを考慮し,3

σ

限界を用いることによって,その大き

さを 0.3%としている。特定状況下で第 2 種の誤りのコストを求めることは,一般に非実用的であり,また,

4

又は 5 のような小さな群の大きさを選ぶことは簡便である。したがって,3

σ

限界を用いて,工程自体の

性能の管理と改善に注意を払うことは適切であり,かつ,実行可能なことである。

管理図は,工程が統計的管理状態にあるとき,工程には変化がなく統計的管理状態を保っているという

統計的帰無仮説の継続的な検定に相当している。工程の特性値が目標値から問題になるほど逸脱すること

について,普通は事前に第 2 種の誤りの確率を規定しないことと,適切な誤りの確率を満たすように群の

大きさが計算されていないことのため,シューハート管理図は,仮説検定という認識で検討されることは

望ましいことではない(ISO 7966 及び ISO 7870 参照)

。シューハートは,管理図が管理状態から逸脱した

ことを認識するのに経験上有効であることを強調したのであり,

確率的な解釈は強調しなかった。

ただし,

仮説検定的な解釈をする手段として動作特性曲線を調べている利用者もいる。

打点がどちらかの管理限界を外れるか,一連の打点が 7.3 で論じるような異常なパターンを示すとき,

もはや統計的管理状態とみなすことはできない。このようなことが起こったとき,突き止められる原因を

探すための調査が始められる。そして,工程を停止するか,又は調整しても差し支えない。原因が特定で

き除去できたならば,工程をすぐに稼働できる状態にする。上述したように,非常にまれではあるが,第

1

種の誤りのために突き止められる原因が分からないようなこともある。このとき,この管理限界外の点

は,非常にまれな事象が生起した,すなわち,工程が管理状態にあるとしても,偶然原因によって管理限

界を外れるような点が生起したと結論付けるのがよい。

管理図を工程に初めて適用するとき,工程が管理外れになっていることが多い。管理外れの工程から得

られたデータを基に計算された管理限界線は,これらの管理限界線が離れすぎているために,誤った結論

を導いてしまうことも考えられる。したがって,管理図のパラメータを定常的に確定する前に,管理外れ

の工程を管理状態に移行させることが常に必要である。管理図を設計する手順は,後の節で議論する。


4

Z 9021 : 1998

4.

管理図の種類  シューハート管理図には,基本的に計量値管理図と計数値管理図の二つのタイプがあ

る。それぞれについて次の二つの異なった状況がある。

a)

標準値が与えられていない場合

b)

標準値が与えられている場合

ここで,標準値とは,特定の要求値又は目標値のことである。

参考  標準値が与えられていない場合の管理図が解析用管理図,標準値が与えられている場合が管理

用管理図に対応すると考えてよい。詳細は

解説を参照のこと。

4.1

計量値管理図と計数値管理図  次のような管理図を対象とする。

a)

計量値管理図

1)

-R

管理図,又は -管理図

2)

X-R

(移動範囲)管理図

3)

メディアン管理図と 管理図

b)

計数値管理図

1)

不適合品率  (p)  管理図又は不適合品数  (np)  管理図

2)

不適合数  (c)  管理図又は単位当たりの不適合数  (u)  管理図

参考  不適合とは,規定された要求事項を満たさないことである。また,不適合品とは一つ以上の不

適合のあるアイテム,不適合数とは不適合箇所の数である。したがって,

不適合品率=

群の大きさ

不適合品数

,単位当たりの不適合数=

群の単位数

不適合品数

である。不適合品の例としては,外観検査において不適合とされた製品,不適合数の例とし

ては,一定長さ当たりのエナメル線のピンホール数があげられる。

4.2

標準値が与えられていない場合の管理図  この場合の目的は,管理特性の統計量,例えば ,  

どの観測値が,偶然原因だけに起因するばらつきよりも大きくばらついているかどうかを調べることであ

る。収集されたデータ自体から設計された管理図は,偶然原因以外による変動を検出するために用いられ

る。

4.3

標準値が与えられている場合の管理図  この場合の目的は,個の観測値から成る群の などの統

計量と標準値 X

0

(又は

µ

0

)などとの違いが,偶然原因だけによる予想されるばらつきの大きさより大きい

かどうかを区別することである。標準値が与えられている管理図と標準値が与えられていない管理図の違

いは,分布の中心の位置と工程変動に関する付加的な要求にある。標準とされる値は,事前情報をもたな

い管理図や特定の標準値をもつ管理図から得た経験に基づくこともある。標準とされる値は,サービスと

生産コストの検討に立脚した経済上の値を基に定められることもあり,製品規格から設定される公称値を

基に定められることもある。

むしろ,標準とされる値は,将来のすべてのデータと同一の母集団であることが仮定できる予備データ

調査を通じて決定することが望ましい。標準値は,管理図を有効に機能させるために内在する工程変動と

矛盾しないことが望ましい。このような標準値に基づく管理図は,工程を管理するため及び望ましい水準

で一様な製品を維持するために,特に生産とのオンラインで用いられる。

5.

計量値管理図


5

Z 9021 : 1998

5.1

計量値管理図の概要  計量値データは,対象とする群の各単位に対してある特性を数量で測定し記

録した観測値によって表現される。計量値の例としては,メートル単位で表された長さ,オーム単位で表

された抵抗,デシベル単位で表された騒音などがある。計量値管理図(特によく用いられる 管理図)

は,工程管理への管理図の適用の典型である。

計量値管理図は,以下の点で特に有用である。

a)

多くの工程やそこからのアウトプットは測定可能な特性をもつ。そのため応用の可能性は広い。

b)

測定値は,単純な YES-NO の 2 値データよりも多くの情報を含んでいる。

c)

製品規格を考慮することなしに工程能力を分析することができる。管理図は,まず工程自身の解析か

ら始まり,その工程が達成できる状態を表現し,さらに,工程を製品規格と比較する場合もあるし,

そうでない場合もある。

d)

計量値の測定データを得ることは,一般に 2 値データを得る場合よりコストがかかるが,計量値の場

合の群の大きさは,ほとんどの場合,計数値のそれと比べてかなり小さく,そのうえ,より効率的で

ある。このことは,検査の総コストの低減及び生産と是正処置との経過時間の短縮を容易にする。

参考  “検査の総コストの低減”は,“管理の総コストの低減”と考えたほうが妥当である。

この規格で取り上げるすべての計量値管理図の適用において,群内変動に正規分布を仮定する。この仮

定からの逸脱は,管理図の性能に影響するであろう。管理限界を計算するための係数は,正規性の仮定を

用いて導出されている。ほとんどの管理限界は,意思決定をする上で経験的に指針として用いられている

ので,正規性からのある程度の逸脱まで気に留める必要はない。どんな場合であっても,中心極限定理に

よって,たとえ個々の観測値が正規分布に従っていなくても,平均は正規分布に従う傾向がある。このこ

とは,管理状態を評価するためにサンプルサイズが 4 又は 5 程度であっても, 管理図における正規分布

の仮定を合理的なものとする。工程能力調査を目的として、個々の観測値を扱うときには,真の分布形が

重要となる。この仮定が引き続き有効であることを周期的にチェックすることは,特にデータが得られる

母集団に変化がないことを保証するために有用である。範囲や標準偏差の分布は正規分布ではないが,管

理限界を計算するための係数の設定に,近似として正規性が仮定されている。しかし,このことは,経験

的意思決定手順に何ら問題ない。

5.2

-R

管理図又は -管理図  計量値管理図は,ばらつき(個々の観測値のばらつき)と位置(工科

平均)によって工程データを記述することができる。このことから,計量値管理図では,分布の位置を管

理するための管理図とばらつきを管理するための管理図が対として用い解析されるのが常である。最も多

く用いられているのが -管理図である。

表 1,表 にそれぞれの管理限界の計算式と管理図を作成する

ための係数を示す。

表 1  計量値のシューハート管理図を求めるための管理限界の公式

統計量

標準値が与えられていない場合

標準値が与えられている場合

中心線 UCL と LCL

中心線 UCL と LCL

X

X

± A

2

R

又 は ±

A

3

X

0

又は

µ

X

0

±A

σ

0

R

D

4

R

D

3

R

0

又は d

2

σ

0

D

2

σ

0

D

1

σ

0

s

B

4

s

B

3

s

0

又は c

4

σ

0

B

6

σ

0

B

5

σ

0

備考  X

0

R

0

s

0

µ

σ

0

は標準値である。

参考  表 では,真の工程平均の標準値を

µとしている。これは ISO 8258 の編集上の誤りで

あると考えられる。他の標準値の記号から判断して,真の工程平均の標準値は

µ

0

とす

べきである。


6

Z 9021 : 1998

表 2  管理限界線を計算するための係数

管理限界のための係数

中心線のための係数

群 の大

きさ

n

A

A

2

A

3

B

3

B

4

B

5

B

6

D

1

D

2

D

3

D

4

c

4

 1/

c

4

d

2

 1/

d

2

2  2.121 1.880 2.659 0.000 3.267 0.000 2.606 0.000 3.686 0.000 3.267 0.797 9  1.253 3  1.128 0.886 5

3  1.732 1.023 1.954 0.000 2.568 0.000 2.276 0.000 4.358 0.000 2.574 0.886 2  1.128 4  1.693 0.590 7

4  1.500 0.729 1.628 0.000 2.266 0.000 2.088 0.000 4.698 0.000 2.282 0.921 3  1.085 4  2.059 0.485 7

5  1.342 0.577 1.427 0.000 2.089 0.000 1.964 0.000 4.918 0.000 2.114 0.940 0  1.063 8  2.326 0.429 9

6  1.225 0.483 1.287 0.030 1.970 0.029 1.874 0.000 5.078 0.000 2.004 0.951 5  1.051 0  2.534 0.394 6

7  1.134 0.419 1.182 0.118 1.882 0.113

1.806 0.204 5.204 0.076 1.924 0.959 4  1.042 3  2.704 0.369 8

8  1.061 0.373 1.099 0.185 1.815 0.179 1.751 0.388 5.306 0.136 1.864 0.965 0  1.036 3  2.847 0.351 2

9  1.000 0.337 1.032 0.239 1.761 0.232 1.707 0.547 5.393 0.184 1.816 0.969 3  1.031 7  2.970 0.336 7

10  0.949 0.308 0.975 0.284 1.716 0.276 1.669 0.687 5.469 0.223 1.777 0.972 7  1.028 1  3.078 0.324 9

11  0.905 0.285 0.927 0.321 1.679 0.313 1.637 0.811

5.535 0.256 1.744 0.975 4  1.025 2  3.173 0.315 2

12  0.866 0.266 0.886 0.354 1.646 0.346 1.610 0.922 5.594 0.283 1.717 0.977 6  1.022 9  3.258 0.306 9

13  0.832 0.249 0.850 0.382 1.618 0.374 1.585 1.025 5.647 0.307 1.693 0.979 4  1.021 0  3.336 0.299 8

14  0.802 0.235 0.817 0.406 1.594 0.399 1.563 1.118

5.696 0.328 1.672 0.981 0  1.019 4  3.407 0.293 5

15  0.775 0.223 0.789 0.428 1.572 0.421 1.544 1.203 5.741 0.347 1.653 0.982 3  1.018 0  3.472 0.288 0

16  0.750 0.212 0.763 0.448 1.552 0.440 1.526 1.282 5.782 0.363 1.637 0.983 5  1.016 8  3.532 0.283 1

17  0.728 0.203 0.739 0.466 1.534 0.458 1.511

1.356 5.820 0.378 1.622 0.984 5  1.015 7  3.588 0.278 7

18  0.707 0.194 0.718 0.482 1.518 0.475 1.496 1.424 5.856 0.391 1.608 0.985 4  1.014 8  3.640 0.274 7

19  0.688 0.187 0.698 0.497 1.503 0.490 1.483 1.487 5.891 0.403 1.597 0.986 2  1.014 0  3.689 0.271 1

20  0.671 0.180 0.680 0.510 1.490 0.504 1.470 1.549 5.921 0.415 1.585 0.986 9  1.013 3  3.735 0.267 7

21  0.655 0.173 0.663 0.523 1.477 0.516 1.459 1.605 5.951 0.425 1.575 0.987 6  1.012 6  3.778 0.264 7

22  0.640 0.167 0.647 0.534 1.466 0.528 1.448 1.659 5.979 0.434 1.566 0.988 2  1.011 9  3.819 0.261 8

23  0.626 0.162 0.633 0.545 1.455 0.539 1.438 1.710 6.006 0.443 1.557 0.988 7  1.011 4  3.858 0.259 2

24  0.612 0.157 0.619 0.555 1.445 0.549 1.429 1.759 6.031 0.451 1.548 0.989 2  1.010 9  3.895 0.256 7

25  0.600 0.153 0.606 0.565 1.435 0.559 1.420 1.806 6.056 0.459 1.541 0.989 6  1.010 5  3.931 0.254 4

出典:ASTM, Philadelphia, PA, USA.

参考  我が国では,管理図において n≦6 の場合,“LCL は存在しない”とされていた。したがって,表 における

n

≦6 の場合の D

3

には,0.000 ではなく“−”を記載している場合か多い。これに従うならば,

表 における n

≦5 での B

3

B

5

及び n≦6 での D

1

も 0.000 ではなく“−”と記載することになる。

表 の数値には,最後のけた(桁)の計算精度に若干の問題がある。 

5.2.1

標準値が与えられていない場合の -管理図の作成手順  標準値が与えられていない場合におけ

る -管理図の作成に含まれる手順を,以下の a)から f)に示す。それらは,5.2.2 に示す例と同じ形式で

記述されている。計算における係数が異なる(

表 1,表 を参照)だけで,他の管理図の作成方法は,基

本的には同じ手順である。

標準的な管理図の一般的様式を

図 に示す。工程管理の個別の事情に合わせて,

この形式を修正してもよい。


7

Z 9021 : 1998

図 2  管理図の一般様式

a)

もし予備データが事前の計画に従った群からとられていなかったならば,7.1.3 で述べる合理的な群の

基準に合うように,観測値の全集合を連続する群に分けなければならない。群は同じ構造と大きさで

あることが必要である。同一群内のデータでは,重要と思われる要因が共通している(例えば,ほぼ

同時期に生産されたもの若しくは同じ原材料によるもの又は同じ場所からもってこられたものなど)

ことが望ましい。異なった群では,違いの存在の可能性があるといった程度のものでもよいが,工程

に関する何らかの違い,例えば,異なる時期,異なる原材料又は異なる位置などを反映していること

が望ましい。

b)

各群について平均 ,範囲 を計算する。

c)

すべての観測値の総平均 と範囲の平均 を計算する。

d)

適当な様式又はグラフ用紙上に, 管理図と 管理図を並べる。左側の縦軸スケールに 及び 

とり,横軸には群番号をとる。計算した を 管理図に打点し,を 管理図に打点する。

e)

各管理図に と を表す水平線を実線で引く。

f)

これらの管理図に管理限界を引く。 管理図には, ±A

2

R

のそれぞれに破線を水平方向に引く。R

管理図には,D

3

R

と D

4

R

のそれぞれに破線を水平方向に引く。ここで,A

2

D

3

D

4

は群の大きさ n


8

Z 9021 : 1998

によって決まる値で,

表 に与えられている。が 6 以下の場合は,D

3

の値が 0 であるので,管理

図の LCL は必要ない。

5.2.2

-R

管理図の例:標準値が与えられていない場合  プラグの外側半径の測定値を表 に示す。20

個のサンプルについて,四つの測定値が 30 分ごとにとられ,各群は四つの測定値から成る。各群の平均値

と範囲も

表 に示した。規格値は 0.219dm と 0.125dm である。目的は,工程のパフォーマンスを評価する

こと,及び規格に合致するように平均の位置とばらつきに関して工程を管理することである。

20

0

848

.

3

k

X

X

å

=0.192 4

20

4

573

.

0

k

R

R

å

=0.028 7

まず

R

管理図を作成し,その管理状態を評価する。

R

管理図

中心線=

R

=0.028 7

UCL

D

4

R

=2.282×0.028 7=0.065 5

LCL

D

3

R

=0×0.028 7(

n

が 6 以下であるので,LCL は示されない。

係数である

D

3

D

4

n

=4 に対する値は

表 2

から求められる。

表 3

R

の値は,

R

管理図の管理限界

内に入っているため,

R

管理図は,統計的管理状態であることを示している。この結果,

X

管理図の管理

限界を計算するために

R

の値を用いることが可能となる。

X

管理図

中心線=

X

=0.192 4

UCL

X

A

2

R

=0.192 4+ (0.729×0.028 7)  =0.213 3

LCL

X

A

2

R

=0.192 4− (0.729×0.028 7)  =0.171 5

参考

5.2.2 -R

管理図の例

で記述されている規格値と管理線の有効けた数に関して,我が国では通常,

次のように処理されている。規格値は測定値と同じけたまで表記する(この規格の例では,0.219

0dm

,0.125 0dm とする)

X

は測定値の一けた下まで(この規格の例ては,小数点以下 5 けた

まで)

X

X

管理図の ULC,LCL は測定値の二けた下まで(この規格の例では,小数点以

下 6 けたまで)

,また,

R

R

管理図の ULC,LCL は群の範囲の一けた下まで(この規格の例

では,小数点以下 5 けたまで)求める。

係数

A

2

n

=4 に対する値は,

表 2

から求められる。

X

-

R

管理図を

図 3

のように作成する。

X

管理図を

検討すると,最後の 3 点が管理限界を外れていることが分かる。これは,突き止められる原因によるもの

かもしれない。もし,過去の予備データから管理限界が計算されていたとしたならば,群 No.18 の時点で

何らかの処置がとられていたであろう。

この時点で,その原因を取り除き,再発を防止するために,適切な是正処置がとられる。管理図作成上

の手続は,管理限界を外れた点,すなわちサンプル No.18,19,20 の値を取り除き,管理限界を修正する

ことによって続けられる。

X

R

の値と管理限界線は,次のように再計算される。

修正された

17

4

345

.

3

k

X

X

å

=0.196 8

修正された

17

2

527

.

0

k

R

R

å

=0.031 0

修正された 管理図


9

Z 9021 : 1998

中心線= =0.196 8

UCL

R

A

X

2

+

=0.196 8+ (0.729×0.031 0)  =0.219 4

LCL

R

A

X

2

=0.1968− (0.729×0.031 0)  =0.174 2

修正された 管理図

中心線= =0.031 0

UCL

D

4

R

=2.282×0.031 0=0.070 7

LCL

D

3

R

=0×0.031 0(が 6 以下のため,LCL は示されない。

修正された管理図を

図 に示す。

表 3  プラグ外側半径の製造データ

群番号

X

1

X

2

X

3

X

4

平均

範囲

R

1

0.189 8

0.172 9

0.206 7

0.189 8

0.189 8

0.033 8

2

0.201 2

0.191 3

0.187 8

0.192 1

0.193 1

0.013 4

3

0.221 7

0.219 2

0.207 8

0.198 0

0.211 7

0.023 7

4

0.183 2

0.181 2

0.196 3

0.180 0

0.185 2

0.016 3

5

0.169 2

0.226 3

0.206 6

0.209 1

0.203 3

0.057 1

6

0.162 1

0.183 2

0.191 4

0.178 3

0.178 8

0.029 3

7

0.200 1

0.192 7

0.216 9

0.208 2

0.204 5

0.024 2

8

0.240 1

0.182 5

0.191 0

0.226 4

0.210 0

0.057 6

9

0.199 6

0.198 0

0.207 6

0.202 3

0.201 9

0.009 6

10

0.178 3

0.171 5

0.182 9

0.196 1

0.182 2

0.024 6

11

0.216 6

0.174 8

0.196 0

0.192 3

0.194 9

0.041 8

12

0.192 4

0.198 4

0.237 7

0.200 3

0.207 2

0.045 3

13

0.176 8

0.198 6

0.224 1

0.202 2

0.200 4

0.047 3

14

0.192 3

0.187 6

0.190 3

0.198 6

0.192 2

0.011 0

15

0.192 4

0.199 6

0.212 0

0.216 0

0.205 0

0.023 6

16

0.172 0

0.194 0

0.211 6

0.232 0

0.204 9

0.060 0

17

0.182 4

0.179 0

0.187 6

0.182 1

0.182 8

0.008 6

18

0.181 2

0.158 5

0.169 9

0.168 0

0.169 4

0.022 7

19

0.170 0

0.156 7

0.169 4

0.170 2

0.166 6

0.013 5

20

0.169 8

0.166 4

0.170 0

0.160 0

0.166 6

0.010 0


10

Z 9021 : 1998

図 3  表 のデータの -管理図

図 4  表 のデータの修正された -管理図

参考  我が国では,管理図上に群の大きさを明示することが一般的である。

修正された管理限界に関して工程が統計的管理状態を示したので,

工程能力を評価することができる

(詳

細は,7.4 を参照せよ)

PCI

工程のばらつき

規定された公差

σ

ˆ

6

LTL

UTL

)−下方許容限界(

上方許容限界(


11

Z 9021 : 1998

ここで,

σ

ˆ は

2

d

R

=0.031 0/2.059=0.015 1 による推定値である。

定数 d

2

の n=4 に対する値は

表 から求められる。

したがって,

PCI

1

015

.

0

6

0

125

.

0

0

219

.

0

×

0

091

.

0

0

094

.

0

1.033 0

PCI

1

以上であるので,工程には能力があると考えられる。しかし,詳細に検討すると,工程平均は,

規格の中心に対してずれており,それゆえ,個々の製品の約

11.8%

は上側の規格限界を超えていることが

分かる。したがって,長期的に管理図のパラメータを決めてしまう前に,統計的管理状態を維持しながら

工程平均のずれを解決するように試みることが望ましい。

参考

ここで用いられている単位

dm

[デシメートル]は

10

-1

m (10cm)

である。

5.2.3

-R

管理図の例:標準値が与えられている場合  紅茶輸入会社の製造課長は,包装後の平均重量

100.6g

になるように包装工程を管理したいと思っている。同様の梱包工程の経験から,標準偏差は

1.4g

であると仮定される。

標準値(X

0

100.6

σ

0

1.4

)が与えられているので, X

-

R

管理図は,

表 に与えた公式と表 の n

5

の Ad

2

D

2

D

1

を使ってすぐに構成することができる。

X

管理図

中心線=X

0

100.6

UCL

X

0

A

σ

0

100.6

 (1.342

×

1.4)

102.5

LCL

X

0

A

σ

0

100.6

 (1.342

×

1.4)

98.7

R

管理図

中心線=d

2

σ

0

2.326

×

1.4

3.3

UCL

D

2

σ

0

4.918

×

1.4

6.9

LCL

D

1

σ

0

0

×

1.4

6

以下であるので,

LCL

は示されない。

群の大きさ

5

の群が

25

個採取されたならば,各群の平均と範囲の値が計算され(

表 参照),上で計算

された管理限界とともに打点される(

図 参照)。

図 に示された管理図は,工程が好ましいレベルに管理されていない状態であることを示している。な

ぜなら, 管理図では中心線の下に

13

点連続して現れ,管理図では中心線の上に

16

点が連続して現れ

ているためである。このような平均値の低い長い連の原因を調査し取り除かなければならない。


12

Z 9021 : 1998

表 4  紅茶の包装工程のデータ

群番号

群平均

範囲

R

1 100.6 3.4

2 101.3 4.0

3 99.6

2.2

4 100.5 4.5

5 99.9

4.8

6 99.5

3.8

7 100.4 4.1

8 100.5 1.7

9 101.1 2.2

10 100.3 4.6

11 100.1 5.0

12 99.6

6.1

13 99.2

3.5

14 99.4

5.1

15 99.4

4.5

16 99.6

4.1

17 99.3

4.7

18 99.9

5.0

19 100.5 3.9

20 99.5

4.7

21 100.1 4.6

22 100.4 4.4

23 101.1 4.9

24 99.9

4.7

25 99.7

3.4


13

Z 9021 : 1998

図 5  表 のデータの -管理図

5.3

X

管理図  工程管理の状況によっては,合理的な群を形成することが不可能であったり,実用的で

はないことがある。一つの観測値の計測に要する時間やコストが,繰り返して観測値をとることが考えら

れないほど大きいといった状況がある。これらは,計測コストが高い場合(例えば破壊検査)

,又はアウト

プットが比較的均一である場合に起こり得る。装置の読み値や原材料バッチの特性などのように,得られ

る値が一つしかないという状況もある。このような状況では,工程管理を個々の観測値に基づいて行うこ

とか必要である。

X

管理図の場合,バッチ内変動の推定値を与える合理的な群が存在しないため,普通,管理限界は二つ

の観測値の移動範囲から得られるばらつきに基づいて設定される。移動範囲とは,連続する隣り合った対

の観測値の差の絶対値である。すなわち,一つ目の観測値と二つ目の観測値との差をとり,二つ目の観測

値と三つ目の観測値との差をとり,これを続ける。移動範囲から移動範囲の平均 を計算し,管理図の作

成に用いる、同様に,全データから総平均 を計算する。

表 に 管理図の管理限界の公式を示す。

表 5  管理図の管理限界の計算式

標準値が与えられていない場合

標準値が与えられている場合

統計量

中心線 UCL と LCL

中心線 UCL と LCL

個々の値 X

X

R

E

X

2

±

X

0

又は

µ

X

0

±3

σ

0

移動範囲 R

D

4

R

D

3

R

0

又は d

2

σ

0

D

2

σ

0

D

1

σ

0

備考1.  X

0

R

0

µ

σ

0

は与えられた標準値である。

2.

R

は n=2 の観測値の移動範囲の平均を表す。

3.

d

2

D

1

D

2

D

3

D

4

の値は

表 の n=2 から直接に,E

2

=  (=3/d

2

)

の値は間接的で

はあるが

表 の n=2 から求めることができる。

参考

表 では,真の工程平均の標準値を

µ

としている。これは ISO 8258 の編集上の誤りであると考

えられる。他の標準値の記号から判断して,真の工程平均の標準値は

µ

0

とすべきである。

X

管理図に関して,注意すべき点を示す。


14

Z 9021 : 1998

a)

X

管理図は, X

-

R

管理図ほど工程の変化に敏感でない。

b)

工程の分布が正規分布に従わないならば,管理図の解釈には注意を要する。

c)

X

管理図は,工程の併行変動

 (repeatability)

を分離できない。群間を構成する時間間隔を大きくして

も,小さなサンプルサイズ(

2

から

4

)で通常の 管理図を適用したほうがよい場合がある。

5.3.1

X

管理図と移動範囲管理図の例:標準値が与えられていない場合  スキムミルクパウダーの製造ロ

ットから連続した

10

ロットを選び,サンプルの“水分率”の試験室分析値を

表 に示す。スキムミルクパ

ウダーのサンプルは,そのロットを代表するものとして,脂肪,水分,酸性度,溶解性指数,固形分,バ

クテリア,乳タンパク質など様々な特性が試験室で分析される。この工程では,水分率を

4%

以下に管理

するつもりであった。

1

ロット内のサンプリング誤差は,無視してよいことが分かっていたため,ロット

当たりの

1

個の観測値をとること,連続ロットの移動範囲に基づいて管理限界を設定することが決められ

た。

%

45

.

3

10

5

.

34

10

5

.

3

2

.

3

9

.

2

+

+

+

Λ

X

%

38

.

0

9

4

.

3

9

1

.

0

4

.

0

3

.

0

+

+

+

Λ

R

移動範囲 の管理限界線

中心線= 

0.38

UCL

D

4

R

3.267

×

0.38

1.24

LCL

D

3

R

0

×

0.38

6

以下であるので,

LCL

は示されない。

n

2

に対する D

3

と D

4

の値は,

表 から求められる。移動範囲管理図が統計的管理状態を示しているの

で,管理図を作成できる。

X

管理図の管理限界線

中心線= 

3.45

UCL

R

E

X

2

+

3.45

 (2.66

×

0.38)

4.46

LCL

R

E

X

2

3.45

 (2.66

×

0.38)

2.44

管理限界の公式及び E

2

の値は,

表 と表 から求められる。管理図を図 に示す。この管理図は,工程

が統計的管理状態にあることを示している。

参考

ISO 8258

では,移動範囲と範囲の記号を区別していない。我が国では従来から,移動範囲の記

号に R

s

を用いている。

表 6  スキムミルクパウダーの連続した 10 サンプルの水分率

ロット番号  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

X

:水分率

(%)

2.9 3.2 3.6 4.3 3.8 3.5 3.0 3.1 3.6 3.5

R

:移動範囲

  0.3 0.4 0.7 0.5 0.3 0.5 0.1 0.5 0.1


15

Z 9021 : 1998

図 6  表 のデータの 管理図及び移動範囲の管理図

5.4

メディアン管理図  メディアン管理図は,計測データが得られる工程を管理するための X

-

R

管理図

の代替手法である。メディアン管理図は, X

-

R

管理図と同じような結論を導くが,幾つかの特有な利点が

ある。使用が容易であり,計算をあまり必要としない。このため,製造現場での管理図の利用を増やすこ

とができる。

(メディアンと同時に)個々の値も打点するので,メディアン管理図は工程のアウトプットの

ばらつきを示し,また,工程変動を時系列的にとら(捉)えることができる。

メディアン管理図の管理限界の算出には,二つの方法がある。一つは,群のメディアンのメディアンと

範囲のメディアンを用いる方法である。もう一つは,群のメディアンの平均と範囲の平均を用いる方法で

ある。この規格では,より容易で便利である後者の方法を対象とする。

管理限界は,次のように計算できる。

中心線=群のメディアンの平均

e

M

UCL

Me

e

M

R

A

4

LCL

Me

e

M

R

A

4

R

管理図は,5.2.1 の 管理図や 管理図と同様に作成される。係数 A

4

の値を

表 に与える。

3

σ限界を用いたメディアン管理図は,管理図ほど管理外れに対して敏感ではないということに注意を

しておく。

R

管理図は,5.2.2 と同様な手順で作成する。

R

管理図:

中心線=すべての群の範囲の平均値 R

UCL

R

R

D

4

LCL

R

R

D

3

係数 D

3

と D

4

は,

表 に与えられる。


16

Z 9021 : 1998

表 7  A

4

の値

n 2 3 4 5 6 7 8 9 10

A

4

  1.88 1.19 0.80 0.69 0.55 0.51 0.43 0.41 0.36

参考  A

4

の値は,JIS Z 9022: 1959(メジアン管理図)では m

3

A

2

として係数表が与

えられていた。

5.4.1

メディアン管理図の例:標準値が与えられていない場合  製品規格の厚さが

0.007

0.016cm

の電

子ディスクを生産している。サイズ

5

のサンプルが

30

分おきに抜き取られ,

表 に示すように厚さが

10

2

cm

単位で測定されている。品質を管理するために,メディアン管理図を用いることが決定された。

表 8

にはメディアンと範囲も示されている。

群のメディアンの平均と範囲は,次のように計算する。

e

M

=群のメディアンの平均=

15

11

12

10

12

+

+

+

+

Λ

15

172

11.47

R

=範囲の平均=

15

7

7

5

6

+

+

+

+

Λ

15

86

5.73

R

管理図は,次のように計算する。

R

管理図

中心線= 

5.73

UCL

R

D

4

2.114

×

5.73

12.11

LCL

R

D

3

0

×

5.73

6

以下であるので,

LCL

は示されない)

n

5

に対する定数 D

3

と D

4

の値は,

表 から求められる。管理図が管理状態であるので,メディアン

管理図の管理線が計算できる。

メディアン管理図

中心線=

e

M

11.47

UCL

e

M

R

A

4

11.47

 (0.69

×

5.73)

15.42

LCL

e

M

R

A

4

11.47

 (0.69

×

5.73)

7.52

n

5

に対する A

4

の値は,

表 から求められる。グラフは図 のように打点される。管理図から明らか

なように,工程は統計的管理状態を示している。


17

Z 9021 : 1998

表 8  電子ディスクの厚さのデータ

値は

0.001cm

単位

厚さ

群番号

X

1

X

2

X

3

X

4

X

5

メデイアン

Me

範囲

R

1

14 8

12

12 8

12

6

2

11 10 13  8 10

10

5

3

11 12 16 14  9

12

7

4

16 12 17 15 13

15

5

5

15 12 14 10  7

12

8

6

13 8

15

15 8

13

7

7

14 12 13 10 16

13

6

8

11 10  8 16 10

10

8

9

14

10

12 9 7

10

7

10

12 10 12 14 10

12

4

11

10 12  8 10 12

10

4

12

10 10  8  8 10

10

2

13

8 12 10  8 10

10

4

14 13

8

11

14

12 12

6

15 7

8

14

13

11 11

7

図 7  表 のデータによるメディアン管理図と 管理図

6.

計数値管理図

6.1

計数値管理図の概要  計数値データは,対象とする群に含まれるそれぞれのユニットがある特性(又

は属性)をもっているか否かを示し,その属性をもつ又はもたないユニットの数,若しくはユニット,群,

又は領域の中にそのような事象がどの程度の頻度で起こるかを数えることによって得た観測値を表す。計

数値データは一般的に早く獲得でき,かつ,コストがあまりかからない。また,特別なデータ収集技術を

必要としないことが多い。

表 に計数値管理図の管理限界の公式を示す。


18

Z 9021 : 1998

表 9  計数値のシューハート管理図の管理限界の公式

標準値が与えられていない場合

標準値が与えられている場合

統計量

中心線

3

シグマ管理限界

中心線

3

シグマ管理限界

p

n

p

p

p

/

)

1

(

3

±

 

p

0

n

p

p

p

/

)

1

(

3

0

0

0

±

np

p

)

1

(

3

p

p

n

p

n

±

 np

0

)

1

(

3

0

0

0

p

np

np

±

c

c

c

3

±

 

c

0

0

0

c

c

±

u

n

u

u

/

3

±

 

u

0

n

u

u

/

3

0

0

±

備考  p

0

np

0

c

0

u

0

は与えられた標準値である。

計量値管理図では,平均の管理のための管理図と,ばらつきの管理のための管理図の一対の管理図を用

いることが通常の運用の仕方である。基礎とする分布が二つのパラメータによって決まる正規分布である

ため,このことは必要である。しかし,計数値管理図の場合,仮定する分布が平均水準を表す唯一のパラ

メータしかもたないので,一つの管理図で十分である。管理図と np 管理図は二項分布を基礎とし,一方

c

管理図,管理図はポアソン分布を基礎とする。

これらの管理図の計算方法は,群の大きさの変動が影響を及ぼす場合を除いて同じである。群の大きさ

が一定の場合,すべての群に対して,同じ上方,下方管理限界の対を使うことができる。しかし,もしそ

れぞれの群によって検査する製品数が変動するならば,各群に対して別々の管理限界を計算しなければな

らない。したがって,np 管理図と 管理図は,サンプルサイズが同じ場合に合理的であるのに対して,p

管理図と 管理図は,サンプルサイズが一定でない場合に用いることかできる。

サンプルごとにサンプルサイズが変わる場合には,それぞれのサンプルに対してそれぞれ管理限界を計

算する。群の大きさが小さくなるほど管理限界幅は広くなり,またこの逆も成り立つ。もし群の大きさが

それほど変化しない場合には,群の大きさの平均値に基づく一組の上方,下方管理限界を用いることがで

きる。実用的には,群の大きさが基準とする群の±

25%

以内である場合には十分である。

サンプルサイズが大きく変化するような場合においては,の代わりに標準化した変量を用いる手順が

ある。例えば,の代わりに標準化した変量として

n

p

p

p

p

Z

/

)

1

(

0

0

0

又は

n

p

p

p

p

Z

/

)

1

(

を標準値が規定されているか否かに応じて用いる。この場合,管理限界と同様に中心線も群の大きさに依

存せず一定となり,以下のように与えられる。

中心線=0

UCL

=3

LCL

=−3

p

管理図は,ある一定期間における平均不適合品率を求めるために使用される。平均不適合品率は,作

業者及び管理者に不適合品率の変動について注意を喚起する。その工程は,-管理図と同様な方法で統

計的管理状態の判断がなされる。もし,すべての打点が突き止め得る原因の存在を示唆することなく,こ

の管理限界線内に入ったならば,工程は管理状態であるといわれる。このような場合,平均不適合品率 

不適合品率の標準値 p

0

として用いられる。

6.2

p

管理図と np 管理図


19

Z 9021 : 1998

6.2.1

p

管理図と np 管理図の例:標準値が与えられていない場合  表 10 のデータは,自動検査装置によ

る小型スイッチの全数検査によって検出した機能不調に関する 1 時間当たりの不適合品数である。スイッ

チは,自動組立ラインで作られている。機能不調は重大な問題であるので,組立ラインが管理状態でなく

なった時期を明らかにするために不適合品率が用いられる。

予備データとして 25 群のデータを収集するこ

とによって 管理図が準備された(

表 10 参照)。

中心線と管理限界は,次のように計算し,

図 のようにプロットされる。

p

管理図

中心線= 

25

000

4

14

14

8

×

+

+

+

Λ

000

100

269

=0.002 7=0.27%

UCL

n

p

p

p

/

)

1

(

3

+

=0.002 7+

000

4

/

)

7

002

.

0

1

(

7

002

.

0

3

=0.005 2=0.52%

LCL

n

p

p

p

/

)

1

(

3

=0.002 7−

000

4

/

)

7

002

.

0

1

(

7

002

.

0

3

=0.000 2=0.02%

不適合品率があまりに大きいかもしれないが,管理図は,スイッチの品質が統計的管理状態にあること

を示している。これらの管理限界は,工程が改善されるまで,又は工程が統計的管理状態から外れるまで,

以後の群に対して使用することができる。工程が統計的管理状態にあるので,工程を変えることなしに改

善ができることはほとんどないことを留意すべきである。

“もっと注意を”

と関係者にいうだけでは十分で

はない。

工程の改善がなされたならば,変化した工程のパフォーマンスを反映するために,今後の群に対して異

なった管理限界を計算する必要がある。もし,工程が改善された場合(の値が小さくなった場合)には,

新しい限界を用いるべきであり,工程が悪化した場合(の値が大きくなった場合)には,さらに,突き

止められる原因を探求すべきである。

このデータは,すべての群の大きさが等しいので,np 管理図を用いることができることを注意しておく,

np

管理図のための計算を次に示す。管理図を

図 に示す。

np

管理図

中心線= p

n

25

14

14

8

+

+

+

=10.76

UCL

)

1

(

3

p

p

n

p

n

+

=10.76+

)

7

002

.

0

1

(

76

.

10

3

=20.59

LCL

)

1

(

3

p

p

n

p

n

=10.76−

)

7

002

.

0

1

(

76

.

10

3

=0.93


20

Z 9021 : 1998

表 10  スイッチの予備データ

群番号

検査個数

n

不適合品数

np

不適合品率

p

1 4

000

8

0.200

2 4

000

14

0.350

3 4

000

10

0.250

4 4

000

4

0.100

5 4

000

13

0.325

6 4

000

9

0.225

7 4

000

7

0.175

8 4

000

11 0.275

9 4

000

15

0.375

10 4

000

13

0.325

11 4

000

5

0.125

12 4

000

14

0.350

13 4

000

12

0.300

14 4

000

8

0.200

15 4

000

15

0.375

16 4

000

11 0.275

17 4

000

9

0.225

18 4

000

18

0.450

19 4

000

6

0.150

20 4

000

12

0.300

21 4

000

6

0.150

22 4

000

12

0.300

23 4

000

8

0.200

24 4

000

15

0.375

25 4

000

14

0.350

計 100

000 269

図 8  表 10 のデータによる 管理図


21

Z 9021 : 1998

図 9  表 10 のデータによる np 管理図

6.2.2

p

管理図の例:標準値が与えられていない場合  トランジスタの製造工程に,不適合品率の 管理

図を導入することが決められた。1 か月にわたってデータが収集され分析された。各日の生産から,1 日の

最後にランダムなサンプルが収集され,不適合品の数が調べられた。そのデータを

表 11 に示す。

各群ごとに算出された不適合品率の値も

表 11 に示す。1 か月間の平均不適合品率は,次のように計算さ

れる。

p

総検査個数

純不適合品数

893

3

233

=0.060

群の大きさが異なるため,次の式から UCL と LCL が各群ごとにそれぞれ算出される。

n

p

p

p

)

1

(

3

±

ここに,は群の大きさである。

これらの値も

表 11 に示される。各群に対して UCL と LCL を提示することは,手間がかかる作業である

ことが分かる。しかし,

表 11 から,No.17 と No.26 の群の不適合率は,対応する上方管理限界の外に出て

いることが分かる。これら二つの群は,他の群とは異なった変動によるものと考えられるので,データか

ら除去される。それらを計算に含めるということは,結果として過大な工程平均を導き,真の偶然変動を

反映してない管理限界を算出することになる。これらの高い値の原因は,再発防止のために是正処置がと

られるように追求されるべきである。

修正された平均不適合品率は,

残りの 24 個のデータから算出される:

p

596

3

195

=0.054

修正された を用いて,各群に対応する改訂された UCL と LCL を計算すれば,すべての不適合品率が

管理限界内に入ることが認められた。今後,修正された が管理図を運用するための標準不適合品率とし

て用いられる。したがって,p

0

=0.054 となる。

前述したように,各群の大きさのばらつきに対応した上方管理限界を引くことは,手間がかかる作業で

ある。個々の群の大きさが,その平均 150 からそれほど変動していないので,修正後の 管理図(p

0

=0.054

を用いた)に,群の大きさの平均として n=150 による上方管理限界を用いてもよい。

以上のことから,修正後の 管理図の管理線は,次のように算出される。


22

Z 9021 : 1998

修正後の 管理図

中心線=p

0

=0.054

UCL

n

p

p

p

)

1

(

3

0

0

0

+

=0.054+

150

946

.

0

054

.

0

3

×

=0.109

LCL

n

p

p

p

)

1

(

3

0

0

0

=0.054−

150

946

.

0

054

.

0

3

×

(負の値は実現しないので,下方管理限界値は示されない。

修正後の 管理図が

図 10 にプロットされている。工程は統計的管理状態を示している。

表 11  トランジスタ:管理図(予備データ)

群番号

検査個数

不適合品数

np

不適合品率

p

UCL LCL

1 158 11 0.070

0.117

0.003

2

140

11  0.079 0.120 0.000

3

140

8  0.057 0.120 0.000

4

155

6  0.039 0.177 0.003

5 160  4 0.025

0.116

0.004

6 144  7 0.049

0.119

0.001

7 139 10 0.072

0.120

0.000

8 151 11 0.073

0.118

0.002

9 163  9 0.055

0.116

0.004

10 148  5 0.034

0.119

0.001

11 150  2 0.013

0.118

0.002

12 153  7 0.046

0.118

0.002

13 149  7 0.047

0.118

0.002

14 145  8 0.055

0.119

0.001

15 160  6 0.038

0.116

0.004

16 165 15 0.091

0.115

0.005

17 136 18 0.132

0.121

0.000

18 153 10 0.065

0.118

0.002

19 150  9 0.060

0.118

0.002

20 148  5 0.034

0.119

0.001

21

135

0  0.000 0.121 0.000

22 165 12 0.073

0.115

0.005

23 143 10 0.070

0.120

0.000

24

138

8  0.058 0.121 0.000

25 144 14 0.097

0.119

0.001

26 161 20 0.124

0.116

0.004

3

893

233

 


23

Z 9021 : 1998

図 10  表 11 のデータに対する修正した 管理図

6.3

c

管理図と 管理図

6.3.1

c

管理図の例:標準値が与えられていない場合  ビデオテープの製造会社は,ビデオテープのきず

不適合数を管理しようとしている。ビデオテープは,4 000m の長さで生産されている。以下のデータは,

ビデオテープの端から 350m の長さの 20 巻のビデオテープの表面を連続して検査することによって検出さ

れたきず不適合数を示している。

この工程を管理するために,きず不適合数をプロットする c 管理図の適用が検討されている。

表 12 に与

えられた 20 巻のデータは,管理図を準備するための予備のデータとして利用される。

中心線と管理限界は,次のように計算され,

図 11 のようにプロットされる。

c

管理図

中心線= 

20

6

1

7

+

+

+

Λ

20

68

=3.4

UCL

c

c

3

+

3.4

4

.

3

3

8.9

LCL

c

c

3

3.4

4

.

3

3

(負の値は実現しないので,下方管理限界は示されない。

予備のデータは,工程が統計的管理状態にあることを示している。

表 12  ビデオテープの予備データ

巻番号  1 2 3 4 5 6 7

8

9

10 11 12 13 14 15 16 17

18

19

20

不適合数 7 1 2 5 0 6 2

0

4

4

6

3

3

3

1

6

3 1 5 6 68

図 11  表 12 のデータの 管理図


24

Z 9021 : 1998

6.3.2

u

管理図の例:標準値が与えられていない場合  タイヤ製造工場では,

30

分ごとに

15

個のタイヤ

が検査され,総不適合数と単位当たりの不適合数が記録されている。工程の管理状態を調べるために,単

位当たりの不適合数の

u

管理図を導入することが決められた。

表 13 にそのデータが示されている。

参考

ここでは,タイヤの検査項目を特定していない。例えば,タイヤの突起状の外観不適合を考え

ればよい。

u

の値の平均は,

表 13 から次のように計算される。

c

の値の行からの)総不適合数を検査された総単位数(この場合

14

×

15

)で割る:

u

n

c

å

å

15

14

55

×

0.26

u

管理図

中心線=

u

0.26

UCL

u

n

u

3

0.26

15

26

.

0

3

0.65

LCL

u

n

u

3

0.26

15

26

.

0

3

(負の値は実現しないので,下方管理限界は示さない。

データと管理線は,

図 12 のようになる。

管理図は,工程が統計的管理状態にあることを示している。

この例の場合は,群の大きさが一定なので,

c

管理図も利用することができることに注意されたい。

表 13  タイヤ製造工場:単位当たりの不適合数(サブグループ当たりの検査された単位数,n15

群番号

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

11

12

13

14

c

:不適合数  4 5 3 6 2 1 5 6 2 4 7 5 2 3 55

u

:単位当たり

    の不適合数

0.27 0.33 0.20 0.40 0.13

0.07

0.33

0.40

0.13

0.27

0.47

0.33 0.13 0.20

図 12  表 13 のデータに対する 管理図

7.

管理図の利用に関する諸注意(

X

-R

管理図を中心として)

7.1

管理図を使うための準備


25

Z 9021 : 1998

7.1.1

品質特性の選択  管理計画のための品質特性を選択する。通常,製品又はサービスの性能に影響を

及ぼす特性を第一に検討することが望ましい。これらは提供されるサービスの局面の特性であったり,又

は使用された材料,製品の要素部品や納入された最終製品の特性である場合がある。管理図が,タイムリ

ーにプロセスの情報を提供することに役立ち,その結果として工程が是正され,より良い製品やサービス

が提供されるような状況に,管理の統計的方法の基本的な導入がなされることが望ましい。製品やサービ

スの品質特性は,製品やサービスの品質に決定的な影響を与えるもの,及び工程の安定を保証するものを

選ぶべきである。

7.1.2

製造工程の解析  製造工程の詳細な解析は,以下の事項を求めるためになされることが望ましい。

a)

不規則変動を引き起こす原因の種類及び場所

b)

製品規格を認定することの効果

c)

検査の方法及び実施位置

d)

製造工程に影響を与える要因のすべて

製造工程の安定性,製造と試験設備の精確さ,生産される製品又はサービスの品質,及び不適合のタイ

プと原因間の相関のパターンを求めるためにも解析を行うとよい。製造工程と設備を調整し,また,必要

ならば製造工程の統計的管理の計画を考案するためには,操業条件と製品品質を取り決めることが必要と

なる。これは,管理状態を確立するために最適な条件を絞り込むことに,また,製造工程の異常な挙動を

すぐに特定し,工程への迅速な是正処理を可能にすることに役立つであろう。

7.1.3

群の合理的な選択  管理図の基本として,観測値を“合理的な群”と呼ばれる群に分割するという

シューハートの基本的な考えがある。これは,群内の変動は偶然原因だけによるものとなり,群間の違い

は管理図で検出が意図される突き止められる原因によるものとなる,群への観測値の分類である。

群の合理的な選択は,技術的知識及び製造条件とデータがとられた条件への精通度合いに依存する。時

間又は空間によって群を決めることによって,うまくいけば,トラブルの原因を容易に追跡でき,是正処

置をとることができる。データ採取の順序が分かっている検査及び試験の記録は,時間に関する群分けの

基礎を与えてくれる。このことは,生産工程の要因体系を時間的に一定に保つことが重要である製造工程

にとって広く有用なことである。

データ採取の計画を立てるとき,

各群のデータが異なった合理的な群として適切に扱えるように,

また,

このことを可能にするような方法で群が識別されるようにサンプリングに注意するならば,解析がかなり

容易になることを常に意識しておくとよい。また,可能な限り,群の大きさ

n

は計算や解釈の妨げとなら

ないように一定に保つことが望ましい。しかし,シューハート管理図の原理は,

n

が変化しても同様に適

用することが可能であることを注意しておく。

7.1.4

サンプリング頻度,及び群の大きさ  サンプリング頻度,及び群の大きさに一般的な規則はないか

もしれない。頻度は,サンプリングコストとサンプルの分析コストに依存し,群の大きさは,実用上の問

題に依存すると考えられる。例えば,大きな群はあまり頻繁な間隔でとられていなくても,工程平均の小

さなシフト変化をより確度よく検出できるであろう。しかし,より頻繁な間隔でとられた小さな群は,工

程平均の大きなシフト変化をより早く検出することができるであろう。群の大きさは

4

又は

5

であること

が多く,一方,一般的にサンプリング頻度は初期段階では頻度が高く,ひとたび管理状態に達したならば

低くなる。予備的な推定のためには,通常,

4

又は

5

のサイズの群が

20

から

25

あれば十分であると考え

られる。

サンプリング頻度,統計的管理及び工程能力を同時に考える必要があることを認識しておくことは価値

がある。その理由は,次のとおりである。平均範囲の はしばしば

σ

の推定に用いられる。変動の原因の


26

Z 9021 : 1998

数は,群内のサンプリング間隔が大きくなるに従って増加する。したがって,時間空間上で群を広げるこ

とは

σ

の推定値を大きくし,管理限界を広くする。その結果,工程能力指数が低い値になる。逆に,連続

する製品をサンプリングすることによって, 

σ

の推定値を小さくし,工程能力指数を上げるようなこ

とも可能である。しかし,この場合,管理状態に到達することが難しくなる。

7.1.5

予備データの収集  管理すべき品質特性,サンプリング頻度,群の大きさを決めた後,管理図の中

心線と管理限界線を決めるときに必要とする予備的な管理図を与える目的で,幾つかの初期検査データ又

は測定値を採取し解析しなければならない。予備データは,製造工程の連続稼働から

20

25

群が得られる

まで,群ごとに収集されることが考えられる。この初期データの収集中に,供給される原材料の供給の切

換え,作業,設備の設定変更などのような外的要因によって,工程が断続的に影響を受けないように注意

すべきである。言い換えると,初期データが収集されている間,工程は安定状態でなければならない。

7.2

計量値管理図による管理の手順と解釈  シューハート管理図の体系では,次のことを強調している。

個々の製品ごとの変動や工程平均が,

(各々,

P

X

で推定されるような)現在の水準を維持しているの

であれば,個々の群の範囲

  (R)

と平均

( )

は偶然にばらつくだけで,管理限界を超えることはほとんど

ない。同様に,確率的に偶然発生する事象を超えるような明らかな傾向やパターンはない。

X

管理図は,工程平均の位置を示し,工程の安定性を示す。また,工程平均に関する限り,

X

管理図は

望ましくない群間変動を抽出する。

R

管理図は,望ましくない群内変動を明らかにし,対象とする工程変

動の大きさを示す道具となる。これは工程の均一性,又は一様性の尺度となる。もし群内変動が本質的に

同じならば,

R

管理図は管理状態を示す。もし

R

管理図が管理状態を示さないならば,若しくはその水準

が大きくなったならば,群によって異なった処理が施されているか,又は幾つかの異なった原因・結果の

メカニズムが工程で運用されているかのどちらかであることを示唆していると考えられる。

X

管理図は,

R

管理図における管理外れの影響を受ける可能性がある。群の範囲か,又は群の平均のど

ちらかを分析する能力は,個々の製品ごとの変動の推定値に依存するため,まず

R

管理図から分析する。

その後の管理手順は次のように行うとよい。

a)

データを収集,分析し,平均,範囲を計算する。

b)

まず

R

管理図をプロットし,管理限界に対して管理外れの点,又は異常なパターン若しくは傾向をチ

ェックする。範囲のデータが示す突き止められる原因が存在する徴候に対して,原因を見つけるため

の工程の操業の分析を行う。そして,操業条件を是正し,再発防止の処理をとる。

c)

同定された突き止められる原因の影響を受けた群をすべて外す。そして,新たな範囲の平均

( )

管理限界を再計算し,それらを管理図上に引く。必要ならば,原因の特定,工程の是正処置,再計算

の一連を繰り返し,新たな管理限界と比較し,すべての範囲のプロットが統計的管理状態を示すかを

確認する。

d)

同定された突き止められる原因によって,もし,ある群が

R

管理図から外されたとき,その群は

X

理図からも外さなければならない。そして,

X

管理図の予備管理限界

X

±

A

2

R

を再計算するために修

正された

R

X

を用いる。

備考

管理外れ状態を示す群を解析から外すことは,決して“悪いデータは捨てなさい”ということ

ではない。むしろ特定できた突き止められる原因に影響を受けた点を解析から外すことによっ

て,偶然原因によって起こる変動の未知の水準のよりよい推定値を得ることができる。また,

このことは,突き止められる原因の将来の発生を最も効果的に検出するために用いる管理限界

に対して最も適切な基盤を与える。

e)

範囲が統計的管理状態にあるとき,工程のばらつき(群内変動)は安定していると考える。その後,


27

Z 9021 : 1998

工程平均が時間とともに変化しているかどうかをみるために,平均を解析することができる。

f)

そこで

X

管理図に打点し,管理限界に対して管理外れの点,又は異常なパターン,又は傾向をチェッ

クする。

R

管理図の場合と同様に,あらゆる管理外れ条件を分析し,是正処置をし,予防措置をとる。

特定された突き止められる原因の影響を受けた群をすべて外す。そして,新たな工程平均

( )

X

と管理

限界を再計算し,それらを管理図上に引く。必要ならば,原因の特定,工程の是正処置,再計算の一

連を繰り返し,新たな管理限界と比較し,すべてのデータが統計的管理状態を示すかを確認する。

g)

管理限界の参照値を設定するための初期のデータが,一貫して予備の管理限界内に常に含まれている

とき,将来にわたってその管理限界を延長する。そして,

X

管理図,又は

R

管理図が管理外れの状態

を示すならば,敏速な態度で対応する責任者(作業者及び/又は監督者)によって,これらの管理限

界は引き続いて工程管理に用いられなければならない。

参考

ある期間管理を続けていると,工程の状態が変わって,今までの管理線(中心線及び管理限界

線)では処置の規準として適切でなくなる場合がある。このような状態になったら,最近のデ

ータを予備データとみなして,新しく管理線を計算し直すことが望ましい。管理線は,製造工

程の条件が変わった場合にも,また,製造工程の条件が変わらなくても定期的に計算し直すこ

とが望ましい。詳細は,

解説を参照のこと。

7.3

管理図の見方  シューハート管理図での点の動きのパターンを解釈するために用いる八つの判定基

準を

図 13 に示す(これらの詳しい内容については,参考文献[5][6]を参照)。

図 13 に示したルールを基本的な判定の基準として採用することができる。しかし,解析者は,工程に特

有な原因による影響を示唆する特徴的な点の動きのあらゆるパターンに対して注意を払うのがよい。した

がって,突き止められる原因が存在することが示唆されたときは常に,これらのルールは,アクションの

ための簡単で実用的なルールとみなすことが望ましい。このルールで規定されている状態は,すべて工程

の診断と是正がなされなければならない突き止められる原因の存在の兆候を示している。

上方管理限界と下方管理限界は中心線から

3

σ

の距離にある。以下のルールを適用するために管理図をそ

れぞれ

1

σ

間隔で六つの領域に分ける。中心線について対称に,順次

A

B

C

C

B

A

とする。以下の

ルールは

X

管理図と

X

管理図に適用できる。これらの基準は正規分布を仮定している。


28

Z 9021 : 1998

図 13  突き止められる原因による変動の判定ルール

参考

図 13 に示した判定ルールは,一つのガイドラインである。判定ルールを決める際には,工程固

有の変動を考慮して決めることが望ましい[

解説 3.2.2 d)参照]。

7.4

工程管理と工程能力  工程管理システムの機能は,変動の突き止められる原因が存在するとき,統

計的な信号を与えることである。過大な変動を生む突き止められる原因を永続的な確たる努力によってシ

ステマティックに除去することは,工程を統計的管理状態へと導く。一たび工程が統計的管理状態になっ

たならば,そのパフォーマンスを予測でき,また,製品規格に見合った能力であるか否かを評価できる。

工程能力は,偶然原因に起因する全変動,すなわち,すべての突き止められる原因が除去された後達成

される最小の変動によって決まる。工程能力は,工程が統計的管理状態で操業されているときに発揮され

るその工程固有のパフォーマンスを表す。このように,能力を評価する前に,まず工程を統計的管理状態

にもっていく必要がある。したがって,工程能力の評価は,

-R

管理図が示す管理上の問題を解決した後

に,すなわち,突き止められる原因を特定し,解析し,是正し,そして再発防止をし,少なくとも過去の


29

Z 9021 : 1998

25

群に対して統計的管理状態が保持されている工程であることをその後の管理図が示した後に始められ

る。一般的には,工程のアウトプットの分布を技術的な製品規格と比較し,それらの製品規格に一貫して

合致しているかどうかを調べる。

工程能力は.一般的に以下に示した工程能力指数

PCI (C

p

)

の値によって評価される。

PCI

工程の散布度

規定された公差

σˆ

6

LTL

UTL

ここで,

 UTL

は,上方許容限界;

 LTL

は,下方許容限界;

σˆ

は,群内変動の平均から推定され,

/c

4

又は

/d

2

で求められる。

PCI

1

以下であると,工程能力が不足していることを示し,また,

PCI

1

は工程能力がぎりぎりであ

ることを示す。実際には,

PCI

1.33

のときを一般的に許容できる最小の値とする。なぜならば,ある程

度のサンプリング変動は常に存在し,いかなるときでも,完全に統計的管理状態にある工程は存在しない

からである。

しかし,

PCI

尺度は,単に許容限界と工程のばらつきとの関係であり,工程平均の位置は考慮されてい

ないことに注意する必要がある。

PCI

が高い値であったとしても,製品規格限界外に出る割合をどんな高

い率にもすることかできるであろう。この理由から,工程平均と工程平均と近い方の製品規格限界との基

準化された距離を考慮することは重要である。この問題に関するより進んだ議論は,この規格の範囲を超

える。

上述の議論から,

図 14 にフローチャートで示した手順を,工程管理及び工程改善への基本的なステップ

を説明する指針として用いることができる。


30

Z 9021 : 1998

図 14  工程改善のための方策


31

Z 9021 : 1998

附属書 A(参考)  原国際規格の序文

製造で用いられていた(品質保証の)従来のアプローチは,その製造工程,及び最終製品を検査し,製

品規格に合致しない製品を選別する品質管理に依存したものであった。このような検出の方法は,むだな

生産が既に行われた後での事後検査を必要とするので,無駄があり不経済であることが多い。これに対し

て,結局は使用できない生産物を初めから生産しないことで無駄を省く予防方法を構築することは非常に

効果的である。これは,工程情報を収集,解析し,その結果として工程自体にアクションをとることによ

って達成され得る。

管理図は,統計的有意性の考え方を製造工程の管理に適用した図的手法として,

1924

年にシューハート

(Dr. Walter Shewhart)

によってはじめて考案された

 [1]

。管理図の理論では二つの変動を考慮する。一つは

“偶然原因”によるランダムな変動である。これは,恒常的に存在するものであり,簡単には特定できな

い様々な原因による変動である。これら各々の変動は,全体の変動のうち非常に小さな部分であり,有意

な大きさではない。それにもかかわらず,これらすべての特定できない偶然原因による変動の加わったも

のは計量可能であり,工程に内在する固有の変動として仮定される。偶然原因の除去又は改善には,工程

やシステムを変更するために経営資源を割り当てる経営上の意思決定を必要とする。

二つ目の変動は,工程の真の変化を表している。このような変化は,幾つかの特定できる原因によるも

のであり,これらは工程に内在する変動ではなく,少なくとも理論的には排除できるものである。これら

の特定できる原因は,変動の“突き止められる原因”又は“異常原因”と呼ばれている。それらは材料の

均一性の欠如,工具の故障,作業者の技量又は作業手順若しくは製造設備若しくは試験設備の異常による

ものかもしれない。

管理図は,繰り返される工程からとられたデータの変動に異常なパターンを検出するのに有用であり,

また,統計的管理状態の欠如の検出基準を与える。変動がランダムな原因だけの結果である場合には,工

程は統計的管理状態にある。

この許容できる変動の水準が決められると,

この水準からのいかなる逸脱も,

同定され除去又は縮小されるべき突き止められる原因の結果であると仮定する。

統計的工程管理の目的は,許容できる安定した水準に工程を改善し,維持することに貢献することであ

る。その結果として,製品やサービスが規定された要求に適合することを保証する。これを実施するため

に使用される主要な統計的方法が管理図である。管理図とは,工程の現状を表す時系列データを基にした

情報を提示し,そして,工程の固有な変動から導出された限界と比較する図示的な方法である。管理図は,

まず工程が適切な水準で統計的管理状態に到達しているか否か,維持されているか否かを評価し,そして

次に,生産が進行している間,常に製品の品質を記録し続けることによって,製品又はサービスの重要な

特性の管理と高度な一様性に到達し維持することに役立つ。管理図を用い注意深く解析することは,工程

のよりよい把握と改善を導く。


32

Z 9021 : 1998

附属書 B(参考)  参考文献

[1]

ISO 7870

 : 1993 Control charts

General guide and introduction

[2]

ISO 7873

 : 1993 Control charts for arithmetic average with warning limits

[3]

ISO 7966

 : 1993 Acceptance control charts

[4]

 Shewhart,

W.A.,

Economic Control of Quality of Manufactured Product. D.Van Nostrand, Co., New York, 1931

[5]

  Nelson, L.S., The Shewhart Control Chart

Tests for Special Causes. Journal of Quality Technology, 16, No.4,

October 1984, pp.237-239.

[6]

  Nelson, L.S., Interpreting Shewhart   Control Charts. Journal of Quality Technology, 17, No.2, April 1985,

pp.114-116.


33

Z 9021 : 1998

管理図部会  構成表

(部会長)

坂  元  平  八

(幹事)

三  浦      新

石  川      馨

大  竹  理  三

葛  野  友  一

茅  野      健

隈  元      基

桑  原  善  一

木  暮  正  夫

松  島  康  夫

水  沢  敏  雄

水  野      滋

森  口  繁  一

山  本  徳太郎

渡  辺  英  造

管理図規格分科会

(主査)

三  浦      新

(委員)

石  川      馨

伊  東  静  男

木  村  卓  平

水  沢  敏  雄

品質管理分野国際整合化分科会

(主査)

尾  島  善  一

東京理科大学工学部

(委員)

青  木  茂  雄

財団法人日本科学技術連盟

今  井  秀  孝

工業技術院計量研究所

柿  田  和  俊

財団法人日本鉄鋼連盟

加  藤  洋  一

日本電信電話株式会社

門  山      允

元東京国際大学

兼  子      毅

武蔵工業大学工学部

椿      広  計

筑波大学社会工学系経営システム専攻

仁  科      健

名古屋工業大学工学部

野  澤  昌  弘

東京理科大学経営学部

三佐雄  武  雄

 QC

コンサルタント

宮  津      隆

帝京科学大学理工学部

山  田      秀

東京都立科学技術大学工学部

横  尾  恒  雄

 QC

コンサルタント

大  島  清  治

工業技術院標準部

(事務局)

竹  下  正  生

財団法人日本規格協会

安  田  順  子

財団法人日本規格協会

備考

○印は管理図法 JIS 原案作成

WG

の委員を兼ねる。