Z 3268 : 1998
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによって JIS Z 3268-1988 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登録出願に抵触
する可能性があることに注意を喚起する。主務大臣及び日本工業標準調査会は,このような技術的性質を
もつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認に
ついて,責任はもたない。
日本工業規格
JIS
Z
3268
: 1998
真空用貴金属ろう
Precious brazing filler metals for vacuum service
序文 この規格は,JIS Z 3268-1988(真空用貴金属ろう)を元に作成し,1992 年に第 2 版として発行され
た ISO 3677, Filler metal for soft soldering, brazing and braze welding−Designation を取り入れて改正した日本
工業規格である。従来からの JIS の規定事項に加えて,ISO 3677 で規定している 種類の呼び方及び記号
について,その技術的内容を変更することなく採用し,整合化を図った。
1.
適用範囲 この規格は,主として電子管,高真空機器・装置などのろう付けに使用する真空用貴金属
ろう(以下,ろうという。
)について規定する。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。こ
れらの規格はその最新版を適用する。
JIS H 0321
非鉄金属材料の検査通則
JIS Z 3900
貴金属ろうのサンプリング方法
JIS Z 3901
銀ろう分析方法
JIS Z 3904
金ろう分析方法
JIS Z 3906
パラジウムろう分析方法
3.
種類
a)
ろうの種類は,化学成分によって,
表 1 のとおり 15 種類に分類する。
2
Z 3268 : 1998
表 1 種類
種類
化学成分 (mass%)
温度(参考)
℃
記号 A
記号 B(
1
) Ag
Au
Cu
Ni
Sn
Pd
In
固相線 液相線 ろう付温度
BVAg-0 BV-Ag100-961
99.95
以上
− 0.05 以下
−
−
−
−
約 961 約 961 961〜1 080
BVAg-6B BV-Cu50-780/870
49.0
〜51.0
−
残部
−
−
−
−
約 780 約 870 870〜 980
BVAg-8 BV-Ag72Cu-780
71.0
〜73.0
−
残部
−
−
−
−
約 780 約 780 780〜 900
BVAg-8B BV-Ag71CuNi-780/795
70.5
〜72.5
−
残部
0.3
〜0.7
−
−
−
約 780 約 795 795〜 900
BVAg-18 BV-Ag60CuSn-600/720
59.0
〜61.0
−
残部
− 9.5〜10.5
−
−
約 600 約 720 720〜 840
BVAg-29 BV-Ag61CuIn-625/710
60.5
〜62.5
−
残部
−
−
− 14.0〜15.0 約 625 約 710 710〜 790
BVAg-30 BV-Ag68CuPd-805/810
67.0
〜69.0
−
残部
−
− 4.5〜5.5
−
約 805 約 810 810〜 930
BVAg-31 BV-Ag58CuPd-825/850
57.0
〜59.0
−
残部
−
− 9.5〜10.5
−
約 825 約 850 850〜 890
BVAg-32 BV-Ag54PdCu-900/950
53.0
〜55.0
−
残部
−
− 24.5〜25.5
−
約 900 約 950 950〜 990
BVAu-1 BV-Cu63Au-990/1015
− 37.0〜38.0
残部
−
−
−
−
約 990 約 1015 1 015〜1 095
BVAu-2 BV-Au80Cu-890
− 79.5〜80.5
残部
−
−
−
−
約 890 約 890 890〜1 010
BVAu-3 BV-Cu62AuNi-975/1030
− 34.5〜35.5
残部
2.5
〜3.5
−
−
−
約 975 約 1030 1 030〜1 090
BVAu-4 BV-Au82Cu-950
− 81.5〜82.5
−
残部
−
−
−
約 950 約 950 955〜1 005
BVAu-11 BV-Cu50Au-955/970
− 49.5〜50.5
残部
−
−
−
−
約 955 約 970 970〜1 020
BVAu-12 BV-Au75CuAg-880/895
12.0
〜13.0 74.5〜75.5
残部
−
−
−
−
約 880 約 895 895〜 950
注(
1
)
記号 B は,ISO 3677による規定で,ろうの記号の表示方法(表示の中にろうの基本成分,化学成分,
固相線温度,液相線温度を記載)である。
なお,記号 B の V は ISO 3677 にはないが,他のろうと区別するために付記した。
b)
ろうの等級は,不純物によって区分し,
表 2 のとおりとする。
表 2 ろうの等級
不純物 %
等級
Zn Cd Pb
その他の元素
a
0.001
以下
0.001
以下
0.002
以下
各 0.001 以下
b
0.002
以下
0.002
以下
0.002
以下
各 0.002 以下
備考 その他の元素とは,存在が予知される元素をい
う。
4.
品質 品質は,次による。
a)
ろうは,品質が均一で,使用上有害な欠陥があってはならない。
b)
ろうの化学成分は,6.の方法によって試験を行ったとき,
表 1 に適合しなければならない。
5.
形状,寸法及び許容差 形状,寸法及び許容差は,次による。
a)
ろうの形状は,帯状,線状,棒状,粒状,粉末状及びプリホームとし,帯状は R,線状は W,棒状は
B
,粒状及び粉末状は P,プリホームは F で表す。
b)
ろうの寸法及び許容差は,受渡当事者間の協定による。
6.
化学分析試験 ろうの化学分析試験は,JIS Z 3901,JIS Z 3904 及び JIS Z 3906 による。ただし,BVAg-0
及び BVAg-29 の化学成分並びに各種類中の Zn,
Cd
,
Pb
などの不純物及びその他の元素の化学分析試験は,
受渡当事者間の協定による。
7.
検査 検査は,次による。
3
Z 3268 : 1998
a)
ろうは,品質,形状及び寸法が 4.及び 5.の規定に適合しなければならない。ただし,受渡当事者間の
協定によって化学分析試験の一部を省略することができる。
b)
その他の一般事項は,JIS H 0321 及び JIS Z 3900 による。
8.
包装 ろうは,輸送中及び貯蔵中に起こる汚染又は損傷を防ぐために,適切な包装をしなければなら
ない。
9.
製品の呼び方 製品の呼び方は,ろうの種類(記号),等級,形状及び寸法(帯状は厚さ及び幅,線状
は径,棒状は径及び長さ,粒状及び粉末状は粒度)による。また,プリホームは,受渡当事者間の協定に
よる。
例
10.
表示
10.1
ろうには,その包装ごとに次の事項を明確に表示しなければならない。
a)
種類(記号及び/又は ISO 3677 による表示のいずれかを採用する。
)
b)
形状及び寸法
c)
質量(正味質量)
d)
製造番号
e)
製造年月又はその略号
f)
製造業者名又はその略号
10.2
包装には,ろうの使用に際して発生するヒューム,金属アレルギーなどに対する注意を表示しなけ
ればならない。
4
Z 3268 : 1998
JIS
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
有 賀 正
東海大学工学部
(幹事)
柏 木 孝 三
田中貴金属工業株式会社
(委員)
恩 澤 忠 男
東京工業大学工学部
林 明 夫
通商産業省基礎産業局
大 嶋 清 治
工業技術院標準部
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会
雀 部 謙
科学技術庁金属材料技術研究所
乾 昌 弘
乾庄貴金属化工株式会社
米 谷 宗 捷
橋本貴金属工業株式会社
藤 本 潤
石福金属興業株式会社
堀 仁
水野ハンディーハーマン株式会社
渡 辺 治
株式会社徳力本店
松 忠 男
東京ブレイズ株式会社
堀 泰 治
東神物流株式会社
布 施 俊 明
株式会社東芝重電技術研究所
服 巻 孝
株式会社日立製作所日立研究所
山 下 満 夫
富士重工業株式会社生産技術研究所
和 田 宏 一
三菱重工業株式会社技術本部
(事務局)
池 原 平 晋
社団法人日本溶接協会