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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

(1)

目  次

ページ

序文 

1

1

  適用範囲

6

2

  用語及び定義 

7

3

  社会的責任の理解

11

3.1

  組織の社会的責任:歴史的背景

11

3.2

  社会的責任の最近の動向 

11

3.3

  社会的責任の特徴

12

3.4

  国家と社会的責任

15

4

  社会的責任の原則

16

4.1

  一般

16

4.2

  説明責任 

16

4.3

  透明性

16

4.4

  倫理的な行動 

17

4.5

  ステークホルダーの利害の尊重

18

4.6

  法の支配の尊重

18

4.7

  国際行動規範の尊重

18

4.8

  人権の尊重 

19

5

  社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント

19

5.1

  一般

19

5.2

  社会的責任の認識

20

5.3

  ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント 

22

6

  社会的責任の中核主題に関する手引 

25

6.1

  一般

25

6.2

  組織統治 

27

6.3

  人権

28

6.4

  労働慣行 

38

6.5

  環境

45

6.6

  公正な事業慣行

52

6.7

  消費者課題 

55

6.8

  コミュニティへの参画及びコミュニティの発展 

64

7

  組織全体に社会的責任を統合するための手引

72

7.1

  一般

72

7.2

  組織の特性と社会的責任との関係 

72

7.3

  組織の社会的責任の理解 

73

7.4

  組織全体に社会的責任を統合するための実践

76


Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)  目次

(2)

ページ

7.5

  社会的責任に関するコミュニケーション 

78

7.6

  社会的責任に関する信頼性の向上 

81

7.7

  社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

83

7.8

  社会的責任に関する自主的なイニシアチブ

85

附属書 A(参考)社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの例

89

附属書 B(参考)略語 

101

附属書 JA(参考)社会的責任に関する追加的なイニシアチブ及びツールの例

102

参考文献

104

 

図 1−この規格の図式による概要

4

図 2−組織,そのステークホルダーと社会との関係 

20

図 3−七つの中核主題

26

図 4−社会的責任の組織全体への統合

72

ボックス 

ボックス 1  −  この規格の利用者のための要約情報 

5

ボックス 2  −  男女の平等と社会的責任 

13

ボックス 3  −  この規格と中小規模の組織(SMO) 

14

ボックス 4  −  “加担”を理解する

19

ボックス 5  −  組織にとっての社会的責任の利点 

26

ボックス 6  −  国際人権章典及び主要な人権関連文書 

28

ボックス 7  −  児童労働 

37

ボックス 8  −  国際労働機関 

38

ボックス 9  −  労使合同安全衛生委員会 

44

ボックス 10  −  気候変動への適応行動の例 

51

ボックス 11  −  国連消費者保護ガイドライン 

56

ボックス 12  −  消費者紛争解決

61

ボックス 13  −  ミレニアム開発目標 

65

ボックス 14  −  組織の中核活動を通したコミュニティの発展への貢献

66

ボックス 15  −  社会的責任に関する報告 

80

ボックス 16  −  認証可能なイニシアチブ,及び商業的又は経済的利害に関係するイニシアチブ

87

ボックス 17  −  この規格はイニシアチブを是認しているわけではない

90


Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

(3)

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本

工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 Z

26000

:2012

(ISO 26000

:2010

)

社会的責任に関する手引

Guidance on social responsibility

序文 

この規格は,2010 年に第 1 版として発行された ISO 26000 を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項及び

附属書 JA は,対応国際規格にはない事項であ

る。

世界中の組織及びそのステークホルダーは,社会的に責任ある行動の必要性,及び社会的に責任ある行

動による利益をますます強く認識するようになっている。社会的責任の目的は,持続可能な発展に貢献す

ることである。

組織が活動する社会,及び組織が環境に与える影響と関係する組織のパフォーマンスは,その組織の全

体的なパフォーマンス及び効果的に活動を続ける能力を測定する上で不可欠な部分となっている。

これは,

一つには,健全な生態系,社会的平等及び組織統治の確保の必要性に対する認識の高まりを反映するもの

である。長い目で見れば,全ての組織の活動は世界の生態系の健全性に依存している。組織は様々なステ

ークホルダーによるこれまで以上に厳しい監視の下に置かれている。社会的責任に関する組織のパフォー

マンスの認識及び現状は,特に次の事項に影響力を及ぼす可能性がある。

−  組織の競争上の優位性

−  組織の評判

−  労働者若しくは構成員,顧客,依頼主又は利用者を引き付け,とどめておく組織の能力

−  従業員のモラル,コミットメント及び生産性の維持

−  投資家,所有者,資金寄与者,スポンサー及び金融界の見解

−  組織と,会社,政府,メディア,供給者,同業者,顧客及び組織が活動するコミュニティとの関係

この規格は,社会的責任の原則,社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント,社会的責

任に関係する中核主題及び課題(

表 参照),並びに組織に社会的に責任ある行動を統合する方法(図 1

参照)に関する手引を提供する。この規格では,結果の重要性及び社会的責任に関するパフォーマンスの

改善を重要視している。

この規格は,組織の大小を問わず,先進国,途上国のどちらで活動するかを問わず,民間,公的及び非

営利のあらゆる種類の組織に役立つように意図している。この規格の全ての部分が全ての種類の組織に対

して同等に用いられるわけではないだろうが,中核主題は全て,あらゆる組織と関連性をもつ。中核主題

は全て,数多くの課題から成っており,その組織が取り組むにふさわしい関連性及び重要性をもつ課題が

何であるかを,独自の検討及びステークホルダーとの対話を通じ特定することは,個々の組織の責任であ

る。


2

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

政府組織も他のあらゆる組織と同様に,この規格の使用を望むことができる。ただし,この規格は,国

家の義務を代替したり,改変したり,いかなる方法でも変更することを意図してはいない。

あらゆる組織がこの規格を活用することによって,これまで以上に社会的に責任を果たすことが奨励さ

れる。

各組織の社会的責任の理解及び統合の程度は様々であることを認識しつつ,この規格は,社会的責任に

取り組み始めた組織にも,その実施により経験のある組織にも,活用できるように意図されている。初心

者にとっては,この規格を社会的責任の入門書として読み,適用することが有益かもしれないし,また,

経験のある利用者は,現行の慣行を改善し,社会的責任を更にその組織に統合するためにこの規格を利用

することを望むかもしれない。この規格は全体をまとめて読み,利用するためのものであるが,社会的責

任に関する特定の情報を求める読者には

表 の概要が役に立つかもしれない。ボックス は,この規格を

利用する人のために要約情報を示している。

この規格は,利用者に手引を示すものであり,認証を目的としたものではなく,認証のために使用する

ことは適切ではない。この規格の認証を授けるといういかなる申し出も,又はこの規格の認証を取得した

という主張も,この規格の意図及び目的を正確に表していない。

この規格が

附属書 でいかなる自主的なイニシアチブ又はツールに言及していても,それはこの規格が

そのイニシアチブ若しくはツールを承認したり,又は特別な資格を与えたりするものではない。

社会的責任に関する追加的なイニシアチブ及びツールの例を,

附属書 JA に示す。

表 1−この規格の概要

箇条のタイトル

箇条 
番号

箇条の内容の説明

適用範囲

この規格で取り上げる主題を定義し,制限又は除外項目がある場合はそれらを特定
する。

用語及び定義

この規格で使用する重要な用語を特定し,その定義を示す。これらの用語は,社会

的責任を理解し,この規格を利用する上で基本的に重要なものである。

社会的責任の理解

これまで社会的責任の発展に影響力をもち,その性質及び慣行に今なお影響し続け

る重要な要素及び条件について記述する。社会的責任の概念そのものについても,
それが何を意味し,どのように組織に適用されるかについても提示する。この箇条
は,この規格の使用に関する中小規模の組織のための手引を含む。

社会的責任の原則

社会的責任の原則を紹介し,説明する。

社会的責任の認識及び
ステークホルダーエン
ゲージメント

社会的責任の二つの慣行を取り扱う:組織の社会的責任の認識,並びに組織による
ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント。この箇条は,組
織,そのステークホルダーと社会との関係,社会的責任の中核主題及び課題の認識,

並びに組織の影響力の範囲についての手引を示している。

社会的責任の中核主題
に関する手引

社会的責任に関連する中核主題及びそれに関連する課題について説明する(

表 

照)。中核主題ごとに,その範囲,その社会的責任との関係,関連する原則及び考

慮点,並びに関連する行動及び期待に関する情報が提供されている。

組織全体に社会的責任

を統合するための手引

社会的責任を組織内で慣行とするための手引を提供する。これには次の手引が含ま

れる:組織の社会的責任の理解,社会的責任の組織全体への統合,社会的責任に関
するコミュニケーション,社会的責任に関する組織の信頼性の向上,進捗の確認及
びパフォーマンスの向上,並びに社会的責任に関する自主的なイニシアチブの評

価。

社会的責任に関する自

主的なイニシアチブ及
びツールの例

附属
書 

社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの限定的なリストを提示す

る。これらの自主的なイニシアチブ及びツールは,一つ以上の中核主題又は組織へ
の社会的責任の統合の側面に関わるものである。


3

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 1−この規格の概要(続き)

箇条のタイトル

箇条 
番号

箇条の内容の説明

社会的責任に関する追
加的なイニシアチブ及
びツールの例

附属

書 JA 

社会的責任に関する追加的なイニシアチブ及びツールの例を示す。これらの追加的
なイニシアチブ及びツールは,一つ以上の中核主題又は組織への社会的責任の統合
の側面に関わるものである。

略語

附属
書 

この規格で使用する略語。

参考文献

この規格の本文で出典として参照された権威ある国際的な文書,並びに JIS 及び

ISO

規格への参照を含む。

表 2−社会的責任の中核主題及び課題

中核主題及び課題

掲載されている細分箇条

中核主題:組織統治

6.2 

中核主題:人権

6.3 

課題 1:デューディリジェンス

6.3.3 

課題 2:人権が脅かされる状況

6.3.4 

課題 3:加担の回避

6.3.5 

課題 4:苦情解決

6.3.6 

課題 5:差別及び社会的弱者

6.3.7 

課題 6:市民的及び政治的権利

6.3.8 

課題 7:経済的,社会的及び文化的権利

6.3.9 

課題 8:労働における基本的原則及び権利

6.3.10 

中核主題:労働慣行

6.4 

課題 1:雇用及び雇用関係

6.4.3 

課題 2:労働条件及び社会的保護

6.4.4 

課題 3:社会対話

6.4.5 

課題 4:労働における安全衛生

6.4.6 

課題 5:職場における人材育成及び訓練

6.4.7 

中核主題:環境

6.5 

課題 1:汚染の予防

6.5.3 

課題 2:持続可能な資源の利用

6.5.4 

課題 3:気候変動の緩和及び気候変動への適応

6.5.5 

課題 4:環境保護,生物多様性,及び自然生息地の回復

6.5.6 

中核主題:公正な事業慣行

6.6 

課題 1:汚職防止

6.6.3 

課題 2:責任ある政治的関与

6.6.4 

課題 3:公正な競争

6.6.5 

課題 4:バリューチェーンにおける社会的責任の推進

6.6.6 

課題 5:財産権の尊重

6.6.7 

中核主題:消費者課題

6.7 

課題 1:公正なマーケティング,事実に即した偏りのない情報,及び公正な契約慣行

6.7.3 

課題 2:消費者の安全衛生の保護

6.7.4 

課題 3:持続可能な消費

6.7.5 

課題 4:消費者に対するサービス,支援,並びに苦情及び紛争の解決

6.7.6 

課題 5:消費者データ保護及びプライバシー

6.7.7 

課題 6:必要不可欠なサービスへのアクセス

6.7.8 

課題 7:教育及び意識向上

6.7.9 


4

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 2−社会的責任の中核主題及び課題(続き)

中核主題及び課題

掲載されている細分箇条

中核主題:コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

6.8 

課題 1:コミュニティへの参画

6.8.3 

課題 2:教育及び文化

6.8.4 

課題 3:雇用創出及び技能開発

6.8.5 

課題 4:技術の開発及び技術へのアクセス

6.8.6 

課題 5:富及び所得の創出

6.8.7 

課題 6:健康

6.8.8 

課題 7:社会的投資

6.8.9 

図 1−この規格の図式による概要

図 はこの規格の概要を示すものであり,この規格の使用方法について,組織の理解を助けるためのも

のである。この規格の使用上の手引は次のとおりである。

−  社会的責任の特徴,及び社会的責任と持続可能な発展との関係(箇条 3)を考えた後,組織は箇条 4

で説明している社会的責任の原則を確認すべきことを勧める。社会的責任を実践するとき,組織はそ

れぞれの中核主題(箇条 6)に特有の原則とともに,これらの原則を尊重し,取り組むべきである。

−  社会的責任の中核主題及び課題,並びにそれぞれの関連する行動及び期待(箇条 6)を分析する前に,

組織は社会的責任の二つの基本的慣行を考えてみるべきである。すなわち,自らの影響力の範囲にお

ける社会的責任を認識すること,及び自らのステークホルダー(箇条 5)を特定し,エンゲージメン

社会的責任の組
織全体への統合 

組織の特性と社会的

責任との関係

組織の社会的責任の

理解

社会的責任に関する
組織の行動及び慣行

の確認及び改善

社会的責任に関する

信頼性の向上

社会的責任に関する
コミュニケーション

社会的責任に関する自

主的なイニシアチブ

組織全体に社会的責任 
を統合するための実践

箇条 7




















適用範囲      箇条 
組織の規模及び所在地
を問わず,あらゆる種
類の組織のための手引

用語及び定義  箇条 
重要な用語の定義

社会的責任の理解

箇条 3

歴史及び特徴,並びに
社 会 的 責 任 と 持 続 可
能な発展との関係

社会的責任の原則   

箇条 

・説明責任 
・透明性 
・倫理的な行動 
・ステークホルダーの

利害の尊重

・法の支配の尊重 
・国際行動規範の尊重 
・人権の尊重

附属書:社会的責任に関する自主的な

イニシアチブ及びツールの例

参考文献:権威ある出典及び追加的な手引

社会的責任の認識

社会的責任の二つの基本的な慣行 

ステークホルダーの特定及び

ステークホルダーエンゲージメント

箇条 5

組織統治

社会的責任の

中核主題 

人権

労働慣行

環境

公正な事業

慣行

消費者課題

コミュニティへの参
画及びコミュニティ

の発展

関連する行動及び期待

箇条 6


5

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

トを行うことである。

−  原則が理解でき,社会的責任の中核主題及び関連性のある重要な課題が特定できたら,組織は,箇条

7

の手引を使って自らの決定及び活動の全てに社会的責任を統合するよう努力すべきである。これに

は,次の慣行が含まれる。社会的責任をその組織の方針,組織文化,戦略及び業務に導入すること,

内部に社会的責任の力量を確立すること,社会的責任に関する内外とのコミュニケーションをとるこ

と,並びにこれらの社会的責任に関連する行動及び慣行を定期的に確認することである。

−  社会的責任の中核主題及び統合の慣行についての更なる手引を,権威ある情報源(

参考文献),並びに

様々な自主的なイニシアチブ及びツール(そのうちの世界的な例を

附属書 で紹介している。)から

入手することができる。

社会的責任に取り組み,実践するとき,組織にとっての最も重要な目標は,持続可能な発展への貢献を

最大化することである。

ボックス 1  −  この規格の利用者のための要約情報 

規格は,与えられた状況において最適な秩序を達成することを目的に,共通的に繰り返して使用するた

めに,活動若しくはその結果に関する規則,指針又は特性を規定する文書であって,合意によって確立し,

一般に認められている団体によって承認されているものと定義されている。

JIS Z 8002:2006

[39]

,定義

3.2

専門用語(JIS Z 8301:2008 の附属書 に基づく)

この規格は,要求事項を含むものではないので,JIS の用語では要求事項を意味する“しなければなら

ない”

(shall)という語は使っていない。推奨事項は,

“…すべきである”

(should)という語を使っている。

この規格の一部の推奨事項が法に組み込まれている場合には,法的に義務となる。

注記  通常,規格では,should を“…することが望ましい”又は“…するのがよい”と訳しているが,

この規格では“…すべきである”としている。これは,この規格で参照されている国際労働機

関(ILO)の国際労働基準においては,should を“…すべきである”と訳していることによる

もので,この規格においても“…すべきである”としている。検討の過程では,

“…するのがよ

い”と“…すべきである”とを文中で使い分ける案もあったが,利用者の便宜を考慮し,規格

全体にわたって should を“…すべきである”に統一することとした。

“してもよい”

(may)という語は,許容されている事柄に使用されている。“できる”

(can)という語

は,可能な事柄,つまり,組織又は個人が何事かを行うことができる場合を示している。

手引を規定する規格は,要求事項は含まないが,推奨事項を含んでもよい。

JIS Z 8301:2008

では,推奨事項を次のように定義している。

“幾つか選択できる中で,これが特に適し

ている事項又はこれが好ましいが必ずしも要求事項とはしない事項”

箇条 において定義されていない用語は,辞書に載っている意味で用いられており,その言葉の一般的

な意味で使われている。

参考のための附属書の目的(JIS Z 8301:2008 の 5.2.6 に基づく)


6

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

この規格の参考のための

附属書 は,この規格の理解及び利用を助けることを目的とする追加的な情報

を提示しており,それ自体が手引の一部ではなく,この規格の本文中に言及されてもいない。

附属書 は,

社会的責任に関する既存の自主的なイニシアチブ及びツールの限定的なリストを提示している。この附属

書は,読者が自らの慣行を他の組織の慣行と比較することができるように,これらの自主的なイニシアチ

ブ及びツールの例を提示するとともに,利用可能な更なる手引に関心を向けている。

附属書 にイニシア

チブ又はツールが掲載されていても,そのイニシアチブ又はツールがこの規格によって是認されたという

意味ではない。

参考文献

参考文献は,この規格の不可欠の部分であり,この規格の本文で参照している文書を特定し,検索する

ための情報を提供している。

参考文献は,この規格の推奨事項にとっての権威ある出典と考えられる国際

的な文書の出典から成る。これらの文書は,追加的な役に立つ手引及び情報を提供しているかもしれない。

この規格の利用者には,社会的責任をよりよく理解し実施するために,これらの文書を参考にすることを

勧める。

参考文献は,本文中で角括弧の中に上付き文字の数字で示している。

注記  参照番号は,本文中にその文書が参照された順番にはなっていない。初めに JIS 及び ISO 文書

が,次にその他の文書が,発行組織名のアルファベット順に並べられている。

ボックス

ボックスは,補足的な手引又は図解によって例を示している。ボックスの中に書いてあるからといって,

本文中の文章に比べて重要でないと考えるべきでない。

適用範囲 

この規格は,その規模又は所在地に関係なく,あらゆる種類の組織に対して,次の事項に関する手引を

示す。

a)

社会的責任に関する概念,用語及び定義

b)

社会的責任の背景,潮流及び特徴

c)

社会的責任に関する原則及び慣行

d)

社会的責任に関する中核主題及び課題

e)

その組織全体及びその組織の影響力の範囲における,その組織の方針及び慣行を通じた,社会的に責

任ある行動の統合,実施及び推進

f)

ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント

g)

社会的責任に関するコミットメント,パフォーマンス,その他の情報の伝達

この規格は,持続可能な発展への貢献において組織を助けることを意図している。この規格は,法令順

守はあらゆる組織の基本的な義務であり,組織の社会的責任の基礎的な部分であるとの認識に立って,組

織が法令順守以上の活動に着手することを奨励することを意図している。この規格は,社会的責任の分野

における共通の理解を促進することを意図し,社会的責任に関する他の文書及びイニシアチブを補完する

ことを意図しているものであり,それらに取って代わろうとするものではない。

この規格を適用する際に,組織は,国際行動規範との整合性をとりつつ,経済状況の違いに加えて,社

会,環境,法,文化,政治及び組織の多様性を考慮に入れることが望ましい。


7

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

この規格は,マネジメントシステム規格ではない。この規格は,認証目的,又は規制若しくは契約のた

めに使用することを意図したものではなく,それらに適切なものでもない。この規格の認証を授けるとい

ういかなる申し出も,

又は認証を取得したという主張も,

この規格の意図及び目的を正確に表しておらず,

この規格を誤用していることになる。この規格は要求事項を含むものではないため,上記のような認証は

この規格への適合を表すことにはならない。

この規格は,社会的責任に関する手引を組織に提供することを意図しており,公共政策の一部として利

用することができる。しかしながら,この規格は,ある措置が世界貿易機関(WTO)に基づく義務に則し

ているという推測又は判断材料の根拠を提供することを意図していない。また,国際的訴訟,国内におけ

る訴訟を問わず,あらゆる訴訟における訴え,苦情の申立て,弁護,その他の主張のための根拠を提供す

ることも意図しておらず,国際慣習法の変化の証拠として引用されることも意図していない。

この規格は,より具体的な,より厳しい,又は異なる種類の国家規格の作成を阻むことを意図していな

い。

注記 1  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 26000:2010

,Guidance on social responsibility(IDT)

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“一致している”

ことを示す。

注記 2  通常,規格では,should を“…することが望ましい”又は“…するのがよい”と訳している

が,この規格では“…すべきである”としている。これは,この規格で参照されている国際

労働機関(ILO)の国際労働基準においては,should を“…すべきである”と訳しているこ

とによるもので,この規格においても“…すべきである”としている。検討の過程では,

“…

するのがよい”と“…すべきである”とを文中で使い分ける案もあったが,利用者の便宜を

考慮し,規格全体にわたって should を“…すべきである”に統一することとした。

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。

2.1

説明責任(accountability)

決定及び活動に関して,組織の統治機関,規制当局及びより広義にはそのステークホルダーに対して,

責任のある対応のとれる状態。

2.2

消費者(consumer)

資産,製品又はサービスを私的な目的で購入又は使用する,一般社会のメンバーである個人。

2.3

顧客(customer)

資産,製品又はサービスを商業的,私的又は公的な目的で購入する,一般社会のメンバーである組織及

び個人。

2.4

デューディリジェンス(due diligence)

あるプロジェクト又は組織の活動のライフサイクル全体において,

組織の決定及び活動によって社会面,

環境面及び経済面に引き起こされる現実の及び潜在的なマイナスの影響を回避し軽減する目的で,マイナ


8

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

スの影響を特定する包括的で先行的かつ積極的なプロセス。

2.5

従業員(employee)

国の法又は慣行によって“雇用関係”にあるとみなされる個人。

注記  従業員の定義は,労働者(2.27)の定義より狭い。

2.6

環境(environment)

大気,水,土地,天然資源,植物,動物,人,宇宙空間及びそれらの相互関係を含め,組織がその中で

活動する周辺自然環境。

注記  ここでいう周辺自然環境とは,組織内から地球規模のシステムにまで及ぶ。

2.7

倫理的な行動(ethical behaviour)

特定の状況において正しい又はよいと一般に認められた原則に従っており,

国際行動規範(2.11)との

整合性がとれた行動。

2.8

男女の平等(gender equality)

男女の同等の取扱い。

注記 1  これには,権利,恩恵,義務及び機会に関して,平等な取扱い,又は場合によっては,差異

はあるが対等とみなされる取扱いを含む。

注記 2  この規格では,gender equality を“男女の平等”とし,gender が単独で出てくる場合には“性

別”と訳した。

2.9

組織の影響(impact of an organization)

影響(impact)

全体的又は部分的に,組織の過去及び現在の決定及び活動の結果として生じる,社会,経済又は

環境(2.6

へのプラス又はマイナスの変化。

2.10

社会的責任に関するイニシアチブ(initiative for social responsibility)

イニシアチブ(initiative)

明らかに

社会的責任(2.18)に関係する特定の目的の達成に専念しているプログラム又は活動。

注記  社会的責任に関するイニシアチブは,あらゆる種類の組織によって,開発されたり,出資され

たり,運営され得る。

2.11

国際行動規範(international norms of behaviour)

国際慣習法,一般に受け入れられている国際法の原則,又は普遍的若しくはほぼ普遍的に認められてい

る政府間合意から導かれる,社会的に責任ある組織の行動に対する期待。

注記 1  政府間合意には条約及び協定も含まれる。

注記 2  国際慣習法,一般に受け入れられている国際法の原則,及び政府間合意は,主として国家に

向けられるものではあるが,あらゆる組織が目指すことのできる目標及び原則を表現してい

る。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

注記 3  国際行動規範は時間とともに進化する。

2.12

組織(organization)

責任,権限及び関係の取決め,並びに明確な目的をもった,事業体,又は人々及び施設の集まり。

注記 1  この規格の目的においては,法を作り,施行し,司法権力を行使し,公共の利益のために政

策を定め,国家の国際的義務を履行するという主権を行使するところの政府は,組織に含ま

れていない。

注記 2  中小規模の組織(SMO)の明確な意味は,3.3 に規定する。

2.13

組織統治(organizational governance)

組織(2.12)がその目的を追求する上で,決定を下し,実施するときに従うシステム。

2.14

原則(principle)

意思決定又は行動のための根本的基礎。

2.15

製品(product)

販売のために

組織(2.12)から提供される,又は組織によるサービスの一部である物品若しくは物質。

2.16

サービス(service)

需要又はニーズを満たすための

組織(2.12)の行動。

2.17

社会対話(social dialogue)

経済社会政策に関する共通の関心事項についての,政府,雇用主,及び労働者の代表の三者間又は二者

間の交渉,協議又は単なる情報交換。

注記  この規格の目的においては,社会対話という用語は,国際労働機関(ILO)が適用している意

味においてだけ使用される。

2.18

社会的責任(social responsibility)

組織(2.12)の決定及び活動が社会及び環境(2.6)に及ぼす影響(2.9)に対して,次のような透明かつ

倫理的な行動(2.7)を通じて組織が担う責任。

−  健康及び社会の福祉を含む

持続可能な発展(2.23)に貢献する。

ステークホルダー(2.20)の期待に配慮する。

−  関連法令を順守し,

国際行動規範(2.11)と整合している。

−  その

組織(2.12)全体に統合され,その組織の関係の中で実践される。

注記 1  活動は,製品,サービス及びプロセスを含む。

注記 2  関係とは,組織の影響力の範囲(2.19)内の活動を指す。

2.19

影響力の範囲(sphere of influence)

組織(2.12)が個人又は組織の決定又は活動に対して影響を与える力をもつ,政治,契約,経済,その

他の関係の領域・程度。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

注記 1  影響力をもつということは,それだけでは,影響力を行使する責任を意味してはいない。

注記 2  この規格においてこの用語が出てきたときには,常に 5.2.3 及び 7.3.3 の手引の意味で理解さ

れることを意図している。

2.20

ステークホルダー(stakeholder)

組織(2.12)の何らかの決定又は活動に利害関係をもつ個人又はグループ。

2.21

ステークホルダーエンゲージメント(stakeholder engagement)

組織の決定に関する基本情報を提供する目的で,

組織(2.12)と一人以上のステークホルダー(2.20

との間に対話の機会を作り出すために試みられる活動。

2.22

サプライチェーン(supply chain)

組織(2.12)に対して製品(2.15)又はサービス(2.16)を提供する一連の活動又は関係者。

注記  サプライチェーンという用語は,バリューチェーン(2.25)と同義であると理解される場合が

ある。しかし,この規格の目的においては,サプライチェーンは上記の定義に従って使用され

る。

2.23

持続可能な発展(sustainable development)

将来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすことなく,現状のニーズを満たす発展。

注記  持続可能な発展とは,質の高い生活,健康及び繁栄という目標を,社会的正義及び地球の生命

の多様な状態での維持と統合することである。これらの社会的,経済的及び環境的な目標は相

互に依存し,相互に補強し合っている。持続可能な発展は,社会全体のより広い期待を表現す

る方法だと考えることができる。

2.24

透明性(transparency)

社会,経済及び

環境(2.6)に影響を与える決定及び活動に関する公開性,並びにこれらを明確で,正確

で,時宜を得て,正直で,かつ完全な方法で伝えようとする意欲。

2.25

バリューチェーン(value chain)

製品(2.15)又はサービス(2.16)の形式で価値を提供するか又は受け取る,一連の活動又は関係者の全

体。

注記 1  価値を提供する関係者には,供給者,外注労働者(2.27),請負者,その他が含まれる。

注記 2  価値を受け取る関係者には,顧客(2.3),消費者(2.2),依頼主,メンバー,その他の利用者

が含まれる。

2.26

社会的弱者(vulnerable group)

差別を受けるベースとなりうる,又は社会的,経済的,文化的,政治的若しくは健康面において不利な

立場におかれやすい一つ又は複数の特徴をもつ個人のグループであり,このことによって,自らの権利を

行使したり,平等な機会を享受するための手段の欠如がもたらされるもの。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

2.27

労働者(worker)

従業員(2.5)であるか,自営であるかにかかわらず,労働を行う人。

社会的責任の理解 

3.1 

組織の社会的責任:歴史的背景 

社会的責任の様々な側面は,19 世紀後半,場合によってはそれ以前から,組織及び政府による行動の主

題となっていたが,社会的責任という用語が広く用いられるようになったのは 1970 年代前半からである。

社会的責任が注目されたのは,従来までは主に企業を対象としたものだった。ほとんどの人々にとって

“企業の社会的責任(CSR

”という用語のほうが,いまだに“社会的責任”よりもなじみが深い。

実業界の組織だけでなく,様々な種類の組織が,自らも持続可能な発展に寄与する責任を負うと認識す

るようになり,社会的責任が全ての組織に当てはまるという考え方が出現するようになった。

社会的責任の要素は,ある特定の時期の社会の期待を映し出すものであり,それ故に,絶え間なく変化

する。社会の関心が変化するにつれ,組織に対する社会の期待も,それらの関心を映し出して変化する。

初期の社会的責任の観念は,慈善事業を行うなどの慈善活動が中心だった。労働慣行及び公正な事業慣

行といった主題が登場したのは,一世紀以上前のことである。人権,環境,消費者保護,汚職防止などの

その他の主題は,やがてこれらの主題がより大きな注目を集めるにつれ,追加された。

この規格で特定される中核主題及び課題は,現時点での優れた実践例の見方を反映したものである。優

れた実践例の見方も将来変化するであろうことは疑いなく,更に別の課題が社会的責任の重要な要素とみ

なされるようになるかもしれない。

3.2 

社会的責任の最近の動向 

組織の社会的責任に関する意識の高まりには,幾つかの理由がある。

グローバリゼーション,ますます容易になる移動及びアクセス,並びに即時のコミュニケーションの利

用可能性の増大によって,

世界中の個人及び組織は,

近隣及び遠隔地における組織の決定及び活動に関し,

ますます容易に知識を得られるようになったことに気付いている。これらの要因は,組織に対して,物事

の進め方及び問題解決の新しい方法を学習し,そこから利益を得る機会を与えている。これは,組織の決

定及び活動が,多様なグループ及び個人によるますます強化された監視の対象になったことを意味してい

る。様々な場所の組織が適用する方針又は慣行は,容易に比較することができるようになった。

一部の環境及び衛生問題のグローバルな性質,貧困救済に対する世界的な責任の認識,ますます進む金

融及び経済の相互依存,並びにますます地理的に分散したバリューチェーンは,組織に関連性がある課題

が,その組織の所在する場所の近接区域を越えて広がるかもしれないことを意味している。社会的状況,

経済的状況を問わず,組織が社会的責任に取り組むことが重要である。環境と開発に関するリオ宣言

[158]

持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言

[151]

,ミレニアム開発目標

[153]

,労働における基本的原則及び

権利に関する ILO 宣言

[54]

などの文書は,こうした世界的な相互依存性を浮き彫りにしている。

ここ数十年間,グローバリゼーションは,コミュニティ及び環境に対する民間,NGO,及び政府を含む

様々な種類の組織の影響の拡大をもたらしている。

NGO

及び企業は,特に政府が難題及び制約に直面し,衛生,教育及び福祉のような分野でサービスを

提供することができない国々において,通常は政府によって提供される多くのサービスの提供者となって

いる。国の政府の能力が拡大するにつれ,政府及び民間部門の組織の役割は変化している。

経済金融危機のときにあっても,組織は,社会的責任に関連した活動の持続を求めるべきである。この


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

ような危機は社会的弱者に重大な影響を与えているため,社会的責任へのニーズはこれまで以上に高まっ

ているといえる。このような危機は,方針の改正,並びに組織の決定及び活動に,社会,経済及び環境に

対する配慮をより効果的に統合する特別な機会を提供してもいる。このような機会を実現させる上で,政

府は非常に重要な役割を担っている。

消費者,顧客,資金寄与者,投資家及び所有者は,様々な方法で,社会的責任に関して組織に対して資

金的な影響力を行使している。組織のパフォーマンスに関する社会の期待は高まり続けている。多くの場

所で“コミュニティの知る権利”に関する法律が成立し,人々は一部の組織の決定及び活動に関する詳細

な情報にアクセスすることが可能になった。今では,その組織のパフォーマンスに関する情報に対するス

テークホルダーの要求を満たすために,ますます多くの組織が,社会的責任に関する報告書を発行するな

ど,自らのステークホルダーとのコミュニケーションを行うようになっている。

これらの要因及びその他の要因が,社会的責任の背景を形成し,組織に対してその組織の社会的責任を

実証するよう求める一因となっている。

3.3 

社会的責任の特徴 

3.3.1 

一般 

社会的責任(2.18)の本質的な特徴は,社会及び環境に対する配慮を自らの意思決定に組み込み,自ら

の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して説明責任を負うという組織の意欲である。これは持

続可能な発展に寄与し,関連法令を順守し,国際行動規範との整合性がとれた透明かつ倫理的な行動を意

味する。また,社会的責任がその組織全体に統合され,その組織の関係の中で実践され,ステークホルダ

ーの利害に配慮していることを意味する。

ステークホルダーは,組織の決定及び活動によって影響を受ける可能性のある一つ以上の利害をもって

いる。この利害によって,その当事者はその組織に“ステーク(利害関係)

”をもつことになり,この“ス

テーク”がその組織との関係を作り出す。この関係は正式なものである必要もないし,そのステークホル

ダー又はその組織によって認知される必要もない。ステークホルダーは“利害関係者”という呼び方をさ

れることがある。どのステークホルダーの利害を認識するかを決定する際に,組織は,それらの利害の合

法性及び国際行動規範との整合性を考慮すべきである。

3.3.2 

社会の期待 

社会的責任は,社会の幅広い期待の理解を必要とする。社会的責任の根本原則は,法の支配の尊重及び

法的拘束力をもつ義務の順守である。しかし,社会的責任は,法令順守を超えた行動及び法的拘束力のな

い他者に対する義務の認識も必要とする。これらの義務は,広く共有される倫理,その他の価値観から発

生する。

社会的に責任ある行動として何が期待されるかは国及び文化によって異なるであろうが,組織は,世界

人権宣言

[156]

,持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言

[151]

,その他の文書に規定された国際行動規範

を尊重すべきである。

箇条 では,社会的責任の中核主題を検討する。これらの各中核主題には,組織が社会へのその主要な

影響を特定することを可能にするであろう様々な課題が含まれている。各課題の考察において,これらの

影響に取り組むための行動についても記述する。

3.3.3 

社会的責任におけるステークホルダーの役割 

ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメントは,

社会的責任の基本である。

組織は,

自らの影響を理解し,それへの対処方法を理解できるように,自らの決定及び活動に利害関係をもつのは

誰かを特定すべきである。ステークホルダーは,組織が特定の事項と自らの決定及び活動との関連性を特


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

定する手助けができるが,行動の規範及び期待を特定する上でより広義の社会の代わりにはならない。組

織が意見を聞いたステークホルダーによって具体的に特定されない場合でも,ある事項は組織の社会的責

任との関連性があるかもしれない。これに関する更なる手引は,4.5 及び箇条 に示す。

3.3.4 

社会的責任の統合 

社会的責任は,組織の決定及び活動の潜在的かつ現実の影響に関係するものであるため,その組織の継

続中の,通常の日常活動は,対処すべき最も重要な行動を成す。責任及び説明責任がその組織のあらゆる

適切な階層に割り当てられ,社会的責任がその組織の中核的な戦略の不可欠な部分となるべきである。社

会的責任は意思決定に反映され,活動の実施においても考慮されるべきである。

慈善活動(ここでは慈善事業への寄付とする。

)は,社会にプラスの影響を与えることができる。しかし,

組織はこれを,その組織への社会的責任の統合に代わるものとして利用すべきでない。

組織の決定又は活動の影響は,他の組織との関係に大きく影響されることがある。組織は,その責任に

取り組むために,他者と共同で仕事をする必要があるかもしれない。これには,同業組織,競争相手(反

競争的行動を避けるように配慮しつつ)

,バリューチェーンの一部,又はその組織の影響力の範囲内のその

他の関係者が含まれることがある。

ボックス は,男女の平等の重要性及びそれが社会的責任とどのような関係があるかを示したものであ

る。

ボックス 2  −  男女の平等と社会的責任 

全ての社会において,男女は性別による役割を与えられている。性別による役割とは,どのような行動

及び責任が男性的であり,女性的であるとみなされるかを条件付ける,学習された行動である。このよう

な性別による役割は,女性を差別することもあるが,男性に対する差別になることもある。どのような場

合でも,性別による差別は,個人,家族,コミュニティ及び社会の潜在的可能性を制限してしまう。

男女の平等と経済的及び社会的発展との間にはプラスの関係があることが明らかである。だからこそ,

男女の平等はミレニアム開発目標の一つになっている。組織の活動及び主張において男女の平等を推進す

ることは,社会的責任の重要な構成要素である。

組織は,性別による偏見をなくし,男女の平等を推進するために,自らの決定及び活動を確認すべきで

ある。その領域には,次の事項が含まれる。

−  より進んだ同等を達成し,性別の壁をなくすことを目的とした,その組織の統治構造及びマネジメン

トにおける男女混在

−  採用,仕事の割当て,訓練,昇進の機会,報酬及び雇用の終了における男女の労働者の平等な取扱い

−  同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬

[57]

−  職場及びコミュニティの安全衛生に関し,男女に対して異なる可能性がある影響

−  男女のニーズに等しい考慮を払うその組織の決定及び活動(例えば,特定の製品又はサービスの開発

から男女に対し異なる影響が生じるかどうか調査したり,その組織のコミュニケーション及び広告に

現れる男女のイメージを確認する。

−  どちらかの性別が不利な条件に置かれている分野を是正するために特別な注意を払い,コミュニティ

の発展に対するその組織の主張及び貢献によって,男女双方に恩恵を与える。

ステークホルダーエンゲージメントにおける男女の平等は,組織の活動における男女の平等を実現する


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

上で重要な手段である。

男女の平等を促進するためには,性別の課題に取り組む際に専門家の助けを求めることも,組織にとっ

て役に立つかもしれない。

体系的なやり方で男女の平等の実現の進捗をモニタリングするために,組織は,指標,目標及び最良実

施例の参照を利用することが奨励される

[133][149]

ボックス は,この規格が中小規模の組織(SMO)の活動をどのように扱っているかを示したものであ

る。

ボックス 3  −  この規格と中小規模の組織(SMO 

SMO

とは,従業員の数又は資金的な活動の規模が一定の限度に達しない組織のことである。規模の境

界値は国によって様々である。この規格の目的においては,SMO は“零細”組織と呼ばれる非常に小さ

な組織も含んでいる。

SMO

への社会的責任の統合は,実用的,単純かつ費用効果の高い行動で行うことができ,複雑だった

り,費用のかかるものである必要はない。SMO は規模が小さく,より柔軟性があって革新的である可能

性が高いことから,社会的責任を果たす上では実際のところ特別によい機会を生むかもしれない。SMO

は一般に,組織のマネジメントにおいて,より柔軟性があり,地元のコミュニティと密接なつながりがあ

ることが多く,通常,経営層はその組織の活動に対して,より直接的な影響力をもっている。

社会的責任では,組織の活動及び影響の管理に統合的な手法を採用することが不可欠である。組織は,

その組織の規模及び影響の両方を考慮に入れた方法によって,自らの決定及び活動が,社会及び環境に与

える影響に対処し,モニタリングすべきである。組織が自らの決定及び活動によるマイナスの結果の全て

を即座に改善することは不可能かもしれない。ときには,選択し,優先課題を設定することが必要になる

場合がある。

次の事項は,考慮の参考となるかもしれない。SMO は,次の事項を行うべきである。

−  SMO においては,内部管理の手順,ステークホルダーへの報告,その他のプロセスが大規模な組織

よりも柔軟で形式ばらないものであるかもしれないことを考慮に入れる。ただし,適切なレベルの透

明性を維持する必要がある。

−  七つの中核主題の全てを確認し,関連性がある課題を特定するときに,中核主題の全てがあらゆる組

織と関連性があるが,必ずしも全ての課題があらゆる組織に関連性があるわけではないであろうこと

を認識しつつ,その組織自身の背景,状況,資源及びステークホルダーの利害を考慮に入れるべきで

あることに注意する。

−  持続可能な発展にとって最大の重要性をもつ課題及び影響に最初に焦点を合わせる。SMO は,残り

の課題及び影響についても,時宜を得た取組みの計画を立てるべきである。

−  関連政府当局,集団組織(業界団体,統括組織,同業組織など)及び国家標準化機関の支援を求めて,

この規格を活用するための実用的な指針及びプログラムを作成する。このような指針及びプログラム

は,その SMO 及びそのステークホルダーに特有の性質及びニーズに合わせて作成すべきである。

−  資源を節約し,行動する能力を強化するために,適宜,単独ではなく,同業者及び業界団体と共同で

行動する。例えば,同じ状況及び業界で活動する組織の場合,ステークホルダーの特定及びステーク

ホルダーエンゲージメントは,共同で行うほうが効果的な場合がある。


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社会的な責任を果たすことによって,SMO は,この規格の他の部分で言及している様々な理由によっ

て,恩恵を受ける場合が多い。SMO は,関係をもっている他の組織が,その SMO の努力に支援を提供す

ることを自らの社会的責任の一部であると考えていることに気付くかもしれない。

社会的責任においてより高い能力及び多くの経験をもつ他の組織が,社会的責任の課題及び優れた実践

例についての認識を高めるなどの方法で,SMO への支援を考慮することもあり得る。

3.3.5 

社会的責任と持続可能な発展との関係 

多くの人が社会的責任と持続可能な発展という用語とをほとんど同じ意味で使用しており,この二つの

用語の間には密接な関係があるが,両者は異なる概念である。

持続可能な発展は,国連の環境と開発に関する世界委員会の 1987 年の報告書“我ら共有の未来”

[174]

降,国際的に認識され,広く受け入れられた概念であり,指針となる目的である。持続可能な発展とは,

地球の生態学的限界の範囲内で生活し,未来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすこ

となく,社会のニーズを満たすことである。持続可能な発展には,経済,社会及び環境という三つの側面

があり,これらは相互に依存している。例えば,貧困を撲滅するためには,社会正義及び経済発展の促進,

並びに環境保護が欠かせない。

これらの目的の重要性は,1987 年以来,何年にもわたり多くの国際的なフォーラムで繰り返されてきた。

例えば,1992 年の環境と開発のための国連会議,2002 年の持続可能な開発に関する世界首脳会議などであ

る。

社会的責任は,組織に焦点を合わせたもので,社会及び環境に対する組織の責任に関わるものである。

社会的責任は,持続可能な発展と密接に結び付いている。持続可能な発展は,全ての人々に共通の経済,

社会及び環境に関する目標であるから,責任ある行動を取ろうとする組織が考慮に入れる必要のある,社

会のより広い期待を総括する方法として用いることもできる。したがって,組織の社会的責任の包括的な

目的は,持続可能な発展に貢献するものであるべきである。

この規格のこれ以降の箇条で記述している原則,慣行及び中核主題は,組織による社会的責任の実践的

な実施及び持続可能な発展への貢献のための基礎を形づくる。社会的に責任ある組織の決定及び活動は,

持続可能な発展に意義ある貢献を果たすことができる。

持続可能な発展の目的は,社会全体及び地球のために持続可能性を実現することである。それは,特定

の組織の持続可能性又は継続的な存続可能性を問題にしているのではない。個々の組織の持続可能性は,

統合された方法で社会的,経済的及び環境的側面に取り組むことによって達成する社会全体の持続可能性

と,両立するかもしれないし,両立しないかもしれない。持続可能な消費,持続可能な資源利用及び持続

可能な生計は,全ての組織に関連性があり,社会全体の持続可能性と関係する。

3.4 

国家と社会的責任 

この規格は,公共の利益のために行われる国家の義務を代替したり,改変したり,いかなる方法でも変

更することはできない。この規格は,何を法的拘束力のある義務の対象とすべきであるかに関する手引を

提供しない。また,政治制度を通じてだけ正当に解決することができる問題を取り扱うことも意図しては

いない。国家は法を作り,施行するという独自の権限をもつため,組織とは異なっている。例えば,人権

を保護するという国家の義務は,この規格で取り扱う人権に関する組織の責任とは異なる。

国家が正しく機能することは,持続可能な発展のために不可欠である。国家の役割は,法令順守の文化

を育てるために,法規制の効果的な適用を確保する上で必須である。政府組織は,他のあらゆる組織と同

様に,社会的責任の諸側面に関する自らの政策,決定及び活動を伝えるために,この規格の使用を望むこ


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Z 26000

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とができる。政府は,社会的責任の認識及び促進など,様々な意味で社会的に責任のあるやり方で活動し

ようという組織の努力を支援することができる。しかしながら,組織の社会的責任を促進することは,国

家の義務及び責任の効果的行使に代わるものではなく,それに代わることもできない。

社会的責任の原則 

4.1 

一般 

この箇条では,社会的責任の七つの原則についての手引を示す。

組織が社会的責任に取り組み,実践するとき,その包括的な目的は持続可能な発展に最大限に貢献する

ことである。この目的に関して社会的責任の原則を網羅した明確なリストは存在しないが,組織は,箇条

6

で記述する各中核主題に特有の原則とともに,次に述べる七つの原則を尊重すべきである。

組織は,たとえそれが困難だと思われる場合でも,具体的な状況において,正しい又はよいと一般に認

められている行動の原則と一致した基準,指針及び規範に基づいて行動すべきである。

この規格を適用する際に,組織は,国際行動規範との整合性をとりつつ,経済状況の違いに加えて,社

会,環境,法,文化,政治及び組織の多様性を考慮に入れることが望ましい。

4.2 

説明責任 

原則:組織は,自らが社会,経済及び環境に与える影響について説明責任を負うべきである。

この原則によれば,組織は,適切な監視を受け入れ,監視に対応する義務を受け入れるべきである。

説明責任によって,経営層はその組織の支配権をもつ人々に対して説明する義務を負い,また,その組

織は法規制に関し,規制当局に対して説明する義務を負う。また,組織の決定及び活動が社会及び環境に

与える全体的な影響の説明責任とは,組織が自らの決定及び活動によって影響を受ける人々及び一般に社

会に対して,報告を行う義務が,その影響及び状況の性質によって変わることを意味している。

説明責任を果たすことは,その組織及び社会の双方に対してプラスの影響を及ぼすだろう。説明責任の

程度は様々かもしれないが,常に,権限の大きさ又は範囲に対応しているべきである。最大の権限をもつ

組織は,自らの決定及び監督の質に関してより細心の注意を払うのが一般的である。説明責任には,不正

行為が行われた場合の責任をとること,その不正行為を正すために適切な措置をとり,不正行為が繰り返

されないよう予防するための行動をとることも含まれる。

組織は,次の事項に説明責任を負うべきである。

−  自らの決定及び活動が,社会,環境及び経済に及ぼした影響。特に,それらがもたらした重大なマイ

ナスの結果

−  故意ではなく,かつ,予想できなかったマイナスの影響の再発を防ぐためにとる行動

4.3 

透明性 

原則:組織は,社会及び環境に影響を与える自らの決定及び活動に関して,透明であるべきである。

組織は,社会及び環境に対する既知の影響及び起こり得る影響を含めて,自らが責任をもつ方針,決定

及び活動について,明確で,正確かつ完全な方法によって,適切かつ十分な程度まで,情報を開示すべき

である。これらの情報は,その組織によって重大な影響を受けた人々,又は重大な影響を受けるかもしれ

ない人々に直ちに提供し,それらの人々が直接入手し,理解できるようにしておくべきである。その組織

の決定及び活動がステークホルダーそれぞれの利害に与える影響について,ステークホルダーが正確に評

価することができるように,情報は,時宜にかなった,事実に基づいたもので,明確かつ客観的な方法で

提示すべきである。

透明性の原則は,機密情報の開示を要求するものではなく,また,部外秘の情報,又は公表すると法的


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

な義務,商業上の義務,安全上の義務若しくは個人のプライバシーに関する義務に違反することになるよ

うな情報の提供を要求するものでもない。

組織は,次の事項について透明であるべきである。

−  組織の活動の目的,性質及び場所

−  組織の活動の経営権をもつ者の身元

−  組織が決定を下し,それを実施し,確認する方法。組織内の各部署の役割,責任,説明責任及び権限

の定義も含む。

−  組織が社会的責任に関する自らのパフォーマンスを評価するときに用いる標準及び基準

−  社会的責任に関連性があり重要な課題に関するその組織のパフォーマンス

−  組織の資金の出所,金額及び使途

−  組織の決定及び活動が,そのステークホルダー,社会,経済及び環境に与える既知の影響及び起こり

得る影響

−  組織のステークホルダー,及びステークホルダーを特定し,選択し,エンゲージメントを行うときに

用いる,基準及び手続

4.4 

倫理的な行動 

原則:組織は,倫理的に行動すべきである。

組織の行動は,正直,公平及び誠実という価値観に基づくべきである。これらの価値観は,人々,動物

及び環境に対する配慮,並びに自らの活動及び決定がステークホルダーの利害に与える影響に対処するた

めに努力するというコミットメントを意味している。

組織は,次のように,倫理的な行動を積極的に促進すべきである。

−  その組織の中核的な価値及び原則を特定し,表明する。

−  その組織の意思決定及び他者との交流において,組織内で倫理的な行動を促進できるような統治構造

を構築し,活用する。

−  その組織の目的及び活動にふさわしく,同時にこの規格に要約されている原則にも則した,倫理的な

行動の基準を特定し,導入し,適用する。

−  その組織の倫理的な行動の基準の順守を奨励し,促進する。

−  その土地の文化的アイデンティティを維持しつつ,自らの統治構造,人員,供給者,請負人,またそ

れが適切である場合には,所有者及び管理者,並びに,特にその組織の価値観,文化,誠実さ,戦略

及び運営に重大な影響力をもつ機会のある人々,及びその組織を代表して行動する人々,から求めら

れる倫理的な行動の基準を定義し,伝える。

−  その組織全体を通して,非倫理的な行動につながる可能性のある利益相反を予防したり,解決する。

−  倫理的な行動をモニタリングし,支持し,強化するため,監督の仕組み及び管理方法を確立し,維持

する。

−  報復を恐れることなく非倫理的な行動を報告できる仕組みを確立し,維持する。

−  現地の法規制が存在しない,又は現地の法規制が倫理的な行動と対立するような状況を認識し,対処

する。

−  人間を被験者とする研究を行う場合は,国際的に認められた倫理的な行動の基準を採用し,適用する

[165]

−  動物の生命及び生存に影響を与える場合,動物福祉に配慮する。適正な状態で動物の飼育,繁殖,生

産,輸送及び使役を行うことを含む

[175]


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

4.5 

ステークホルダーの利害の尊重 

原則:組織は,自らのステークホルダーの利害を尊重し,よく考慮し,対応すべきである。

組織の目的は,その組織の所有者,メンバー,顧客又は構成員の利害に限定されることがあるが,その

他の個人又はグループも,権利,主張又は特定の利害をもっていることもあり,この点を考慮すべきであ

る。このような個人又はグループは,全員がその組織のステークホルダーに含まれる。

組織は,次の事項を行うべきである。

−  誰がその組織のステークホルダーかを特定する。

−  自らのステークホルダーの利害及び法的権利を認識し,当然払うべき注意を払う。また,それらのス

テークホルダーが懸念を表明した場合はそれに対応する。

−  一部のステークホルダーがその組織の活動に重大な影響を与える可能性があることを認識する。

−  その組織に接触し,関与し,影響力を及ぼすステークホルダーの相対的な能力を評価し,考慮に入れ

る。

−  自らのステークホルダーの利害と社会のより幅広い期待及び持続可能な発展との関係,並びにそのス

テークホルダーとその組織との関係の性質を考慮に入れる(3.3.1 も参照)

−  そのステークホルダーがその組織の統治において正式な役割をもたなかったり,自らの利害を認識し

ていない場合でも,組織の決定又は活動によって影響を受ける可能性のある利害をもつステークホル

ダーの見解を考慮する。

4.6 

法の支配の尊重 

原則:組織は,法の支配を尊重することが義務であると認めるべきである。

法の支配とは,法の優位,特に,いかなる個人も組織も法を超越することはなく,政府も法に従わなけ

ればならないという考え方を指す。法の支配は,専制的な権力の行使の対極にある。一般に法の支配には,

法令及び規制が成文化され,公示され,定められた手続によって正しく執行されていることが暗黙の前提

となっている。社会的責任に照らして考えた場合,法の支配の尊重とは,組織は全ての関連法令及び規制

に従うという意味である。これはまた,関連法令及び規制を知り,組織内でこれらの関連する法規制を順

守しなければならないことを通知し,それらの措置を実施すべきであるということを意味している。

組織は,次の事項を行うべきである。

−  その組織が活動する全ての法的管轄区域において,たとえその法令及び規則制が適切に執行されてい

ない場合であっても,法的要求事項を順守する。

−  自らの関係及び活動が,想定された,適用される法的枠組みを確実に順守するようにする。

−  全ての法的義務を把握しておく。

−  関連する法規制の順守の状況を定期的に確認する。

4.7 

国際行動規範の尊重 

原則:組織は,法の支配の尊重という原則に従うと同時に,国際行動規範も尊重すべきである。

−  国内の法又はその施行によって,環境又は社会を守るための適切な保護手段がとられていない状況に

おいては,組織は少なくとも国際行動規範を尊重するよう十分努力すべきである。

−  国内の法又はその施行が国際行動規範と対立する国々において,組織は,国際行動規範を最大限尊重

するよう十分努力すべきである。

−  法又はその施行が国際行動規範と対立し,しかもその規範に従わないことによって重大な結果がもた

らされると考えられる場合に,組織は,可能で適切な場合,その法的管轄内における活動及び関係の

性質及び活動を確認すべきである。


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:2012 (ISO 26000:2010)

−  組織は,法又はその施行におけるこのような対立を解決するために,関連組織及び関連当局に影響力

を及ぼすための合法的な機会及び経路を探すべきである。

−  組織は,国際行動規範とは整合しない他組織の活動に加担することを避けるべきである。

ボックス 4  −  “加担”を理解する 

加担には,法的な意味と法的でない意味とがある。

法的な意味における加担とは,一部の管轄地域では,犯罪のような違法行為と知りながら,又は違法行

為をほう(幇)助する意図をもちながら,その違法行為の実行に実質的な効果を及ぼす行為又は不作為を

行うことの一端を担うこととして定義されている。

加担とは,違法行為又は不作為を支援し,唆すという概念に関連している。

法的でない意味においては,加担は,行動に対する広範な社会期待から派生している。このような意味

においては,組織は,国際行動規範とは整合しない,又はこれを無視した他者の不法行為で,デューディ

リジェンスを用いることで,社会,経済又は環境に重大なマイナスの影響を及ぼす可能性があることをそ

の組織が知っていた,又は知っていたはずの違法行為を助けた場合に,加担したものとみなされるかもし

れない。また,組織は,こうした不法行為に対して沈黙していた場合,又はこうした不法行為から利益を

得た場合にも,加担したものとみなされるかもしれない。

4.8 

人権の尊重 

原則:組織は,人権を尊重し,その重要性及び普遍性の両方を認識すべきである(6.3 の中核主題におけ

る人権についての部分も参照)

組織は,次の事項を行うべきである。

−  国際人権章典に規定されている権利を尊重し,可能な場合は,促進する。

−  あらゆる国,文化及び状況において不可分に適用されるこれらの権利の普遍性を尊重する。

−  人権が保護されていない状況では,

人権を尊重するための措置をとり,

このような状況を悪用しない。

−  法又はその施行によって人権が適切に保護されていない状況では,国際行動規範の尊重の原則を守る

4.7 参照)

社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント 

5.1 

一般 

この箇条では,社会的責任の二つの基本的な慣行を取り上げる。つまり,組織による自らの社会的責任

の認識,並びにその組織のステークホルダーの特定及びそのステークホルダーとのエンゲージメントであ

る。箇条 で記述した原則と同様に,これらの慣行も,箇条 で記述する社会的責任の中核主題に取り組

むときに心に留めておくべきである。

社会的責任の認識には,組織の決定及び活動の影響によって引き起こされる課題を特定するとともに,

持続可能な発展に貢献できるようにするためにはその課題にどう取り組むべきであるかを特定する必要が

ある。

社会的責任の認識には,組織のステークホルダーの認識も含まれる。4.5 で記述したとおり,組織は自ら

の決定及び活動の影響を受けるであろうステークホルダーの利害を尊重し考慮すべきであるというのが,

社会的責任の基本的原則である。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

5.2 

社会的責任の認識 

5.2.1 

影響,利害及び期待 

組織が社会的責任に取り組む上で,次の三つの関係を理解すべきである(

図 参照)。

組織と社会  組織は,自らの決定及び活動が社会及び環境にどのような影響を及ぼすかを理解し,認

識すべきである。組織は,また,これらの影響に関して,責任ある行動として社会が何を期待してい

るかを理解すべきである。これは,社会的責任の中核主題及び課題を検討することによって行うべき

である(5.2.2 参照)

組織とそのステークホルダー  組織は,様々なステークホルダーを認識しているべきである。ステー

クホルダーとは,自らの利害がその組織の決定及び活動によって影響を受ける可能性のある個人又は

グループのことである(3.3.1 参照)

ステークホルダーと社会  組織は,その組織の影響を受けるステークホルダーの利害と社会の期待と

の関係を理解すべきである。ステークホルダーは社会の一部ではあるが,社会の期待とは一致しない

利害をもっているかもしれない。ステークホルダーはその組織に対して個別の利害をもっており,こ

れはある課題について社会が期待する社会的に責任のある行動とは区別されることがある。例えば,

支払いを受ける供給者の利害と,契約を守ることにおける社会の利害とは,同じ課題についても異な

る視点をもつこともある。

注記  ステークホルダーは,社会の期待とは一致しない利害をもっているかもしれない。

図 2−組織,そのステークホルダーと社会との関係

自らの社会的責任を認識する上で,組織は,この三つの関係の全てを考慮する必要があるだろう。組織,

そのステークホルダー及び社会はそれぞれの目的をもっているかもしれないので,異なる視点をもつ可能

性が高い。個人及び組織が多くの多様な利害をもっているかもしれないということを認識しておくべきで

あり,そのような利害は,ある組織の決定及び活動の影響を受ける可能性がある。

社会 

及び環境

組織 

利害

影響

影響

期待

ステークホルダー 


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5.2.2 

社会的責任の中核主題及び関連性のある課題の認識 

組織が自らの社会的責任を特定するための効果的な方法は,次の七つの中核主題における社会的責任に

関する課題をよく知ることである。七つの中核主題とは,組織統治,人権,労働慣行,環境,公正な事業

慣行,消費者課題,並びにコミュニティへの参画及びコミュニティの発展である(6.26.8 参照)

これらの中核主題は,組織が対処すべき最も起こりそうな経済的,環境的及び社会的な影響を取り上げ

ている。これらの中核主題のそれぞれについては,箇条 で考察する。各中核主題についての考察では,

組織が自らの社会的責任を特定するときに考慮すべき具体的な課題について説明する。

全ての中核主題は,

あらゆる組織に何らかの関係性があるが,全ての課題があらゆる組織と関連性があるわけではない。

組織がとるべき行動,及び組織がどのように行動すべきと期待されているかについて,課題ごとに幾つ

か提示する。組織は,自らの社会的責任を考察する際に,自らの決定及び活動に関連性のある課題,並び

にそれに関係する行動及び期待を特定すべきである。課題をどう特定するかについては,7.2 及び 7.3 に補

足的な手引を示す。

これらの課題を視野に入れて組織の決定及び活動の影響を考慮すべきである。また,これらの中核主題

及びそれぞれの課題は,様々な方法で記述し,分類することができる。安全衛生,経済,バリューチェー

ンなど重要な検討事項は,箇条 において複数の中核主題で取り上げる。

組織は,全ての中核主題を確認して,どの課題が関連性があるか特定すべきである。関連性のある課題

の特定に続いて行うべきであるのは,その組織の影響の重大性の評価である。関係するステークホルダー

との関連と,その影響が持続可能な発展にどのような影響を与えるかの関連との両方で,影響の重大性を

考慮すべきである。

組織が自らの社会的責任の中核主題及び課題を認識するとき,他の組織との相互関係を考えることが有

用である。組織は,また,自らの決定及び活動のステークホルダーへの影響を考えるべきである。

自らの社会的責任を認識しようとする組織は,法的拘束力をもつ義務と存在するその他の義務との両方

を考慮すべきである。法的拘束力をもつ義務には,関連する法規制だけでなく,法的強制力のある契約に

記載されているかもしれない社会的,経済的又は環境的課題に関する義務も含まれる。組織は,自らが行

った社会的責任についてのコミットメントを考慮すべきである。このようなコミットメントは,倫理的な

行動規範又は指針にある場合もあれば,加盟する団体の会員規約にある場合もある。

社会的責任の認識は,継続的なプロセスである。新規の活動の計画段階で,決定及び活動の結果起こり

得る影響を判断し,考慮すべきである。進行中の活動については,自らの社会的責任への取組みが引き続

き行われていることをその組織が確信できるよう,また,新しい課題を考慮する必要があるかどうかを判

断することができるよう,必要に応じて確認すべきである。

5.2.3 

社会的責任と組織の影響力の範囲 

組織は,自らが正式に,及び/又は,

事実上

,コントロールできる決定及び活動の影響に責任がある(

実上

のコントロールとは,組織が法的又は正式にはそのような権限をもたないにしても,他者の決定及び

活動を命令する能力をもつような場合を指す。

。このような影響は広範囲に及ぶ可能性がある。組織は,

自らの決定及び活動に責任をもつだけでなく,場合によっては,関係をもつ組織/他者の行動に影響を与

える能力をもつかもしれない。このような場合は,組織の影響力の範囲内と考えられる。

組織の影響力の範囲には,組織のバリューチェーン内における,及びバリューチェーンを超えた関係が

含まれる。しかし,組織のバリューチェーンの全てが影響力の範囲にあるとは限らない。影響力の範囲は,

組織が参加する公式及び非公式の団体,並びに同業組織又は競争相手を含むことがある。

組織は,他者に影響力を与える能力があるからといって,必ずしも影響力を行使する責任があるわけで


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

はない。例えば,他の組織に対して一定の影響力をもつかもしれない場合でも,その組織の引き起こす影

響が自らの決定及び活動の引き起こす結果ではない場合は,その組織の引き起こす影響に責任を問われる

ことはない。しかし,組織が影響力を行使する責任をもつ場合もあるだろう。そのような場合とは,組織

の関係がそのマイナスの影響に関与する程度によって決まってくる。

組織が影響力を行使する責任はないものの,自主的に影響力を行使しようと希望する場合,又はそうす

るように依頼される場合もあるだろう。

組織は,他の組織と関係をもつか否かについて,また,その関係の性質及び程度について,決定しても

よい。組織は,他の組織の決定及び活動が与える影響に対して警戒し,そのような組織との関係によって

もたらされるマイナスの影響を避けたり又は軽減する手段を講じる責任を負う場合があるだろう。

自らの影響力の範囲を判断し,自らの責任を決定するときに,組織は,その組織の関係を通してマイナ

スの影響の一因となることを避けるために,デューディリジェンスを用いるべきである。更に詳しい手引

は 7.3.3 に記述する。

5.3 

ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント 

5.3.1 

一般 

ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメントは,組織の社会的責任の取組みの中心

である。

5.3.2 

ステークホルダーの特定 

ステークホルダーとは,組織の何らかの決定又は活動に一つ以上の利害をもつ組織又は個人のことであ

る。これらの利害は組織によって影響を受ける可能性があるため,その組織との関係が生まれる。この関

係は必ずしも正式なものである必要はない。また,当事者がその関係の存在を認識していなくても,この

利害によって生じる関係は存在する。組織は,自らのステークホルダーを特定するよう努力すべきである

が,その全てを知っているとは限らないかもしれない。同様に,多くのステークホルダーも,ある組織が

自分たちの利害に影響を与える可能性に気付いているとは限らないかもしれない。

ここでいう利害とは,組織がステークホルダーに対して負うべき義務の履行を要求したり,ステークホ

ルダーの権利を尊重することを要求することの根拠となる,又はそうなり得るものを指す。要求といって

も,金銭の請求又は法的な権利を伴うとは限らない。単に意見を聞いてもらう権利の場合もある。利害の

関連性又は重要性は,持続可能な発展との関係によって決定するのが最適である。

組織の決定及び活動によって個人若しくはグループがどのような影響を受けているか,又はどのような

影響を受ける可能性があるかを理解すれば,その組織との関係を構築する利害を特定することが可能にな

るだろう。したがって,自らの決定及び活動の影響を特定することが,その組織の最も重要なステークホ

ルダーの特定を容易にするだろう(

図 参照)。

組織には多くのステークホルダーがいるかもしれない。しかも,それぞれのステークホルダーの利害は

様々であり,ときには利害が対立することもある。例えば,コミュニティ居住者の利害は,組織の及ぼす

プラスの影響(例えば,雇用)を含むこともあれば,同じ組織によるマイナスの影響(例えば,環境汚染)

を含むこともある。

ステークホルダーの中には,その組織の不可分の一部と考えられる者もいる。これには,その組織のメ

ンバー,従業員又は所有者が含まれる。これらのステークホルダーは,その組織の目的及び成功に共通の

利害をもっている。しかし,このことは,それらのステークホルダーのその組織に関する利害が全て同一

であることは意味しない。

大部分のステークホルダーの利害は,その組織の社会的責任に関連がある可能性があり,社会の利害に


23

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

極めて近い場合が多い。新しい汚染源によって資産の価値が減少してしまう資産所有者の利害はその一例

である。

組織のステークホルダーの全てが,特定の組織に対する利害を代表する目的で結成されたグループのメ

ンバーになっているわけではない。多くのステークホルダーは全く組織化していないかもしれず,このた

め不当に見過ごされたり,無視されたりするかもしれない。この問題は,社会的弱者及び未来の世代につ

いて特に重要になるかもしれない。

社会的な主張又は環境に関する主張を掲げるグループも,組織の決定及び活動がそれらの主張に関連性

があり重大な影響を与えるような組織にとっては,ステークホルダーとなるかもしれない。

組織は,特定のステークホルダーを代表して,又は特定の主張を掲げて活動するグループの,代表権及

び信頼性をよく検討すべきである。場合によっては,重要な利害を直接代表することが不可能なこともあ

るだろう。例えば,子どもたちが組織化されたグループを所有したり,管理したりしていることはまれで

ある。また,野生動物にはそれは不可能である。このような場合,組織は,このような利害の保護のため

に活動している信頼のおけるグループの見解に注意を払うべきである。

ステークホルダーを特定するために,組織は,次の質問を自問すべきである。

−  その組織は誰に対して法的義務があるのか

−  その組織の決定又は活動によって,プラスの又はマイナスの影響を受ける可能性があるのは誰か

−  その組織の決定及び活動に懸念を表明する可能性があるのは誰か

−  過去において同様の課題に取り組まなければならなかったとき,関わりがあったのは誰か

−  特定の影響に対処する場合,その組織を援助できるのは誰か

−  その組織が責任を果たす能力に影響を与えられるのは誰か

−  エンゲージメントから除外された場合,不利になるのは誰か

−  バリューチェーンの中で影響を受けるのは誰か

5.3.3 

ステークホルダーエンゲージメント 

ステークホルダーエンゲージメントには,その組織と一人又は一組以上のステークホルダーとの間の対

話が必要である。ステークホルダーエンゲージメントは,自らの決定に関し,情報に基づいた根拠を提供

することによって,その組織の社会的責任の取組みを助ける。

ステークホルダーエンゲージメントは様々な形態を取り得る。組織の側から開始することもあれば,一

人又は一組以上のステークホルダーへの組織からの応答として開始されることもある。非公式な会合又は

公式な会合の形で行うこともできる。活動の形式としては,個人的な会合,会議,ワークショップ,公聴

会,円卓会議,諮問委員会,定期的かつ組織的な情報提供・諮問手続,団体交渉,インターネット上の討

論会など,様々なものが考えられる。ステークホルダーエンゲージメントは,相互作用的であるべきであ

り,ステークホルダーの意見を聞く機会を設けることを目的としている。その本質的な特徴は,双方向の

コミュニケーションを必要とすることである。

組織にとって,ステークホルダーエンゲージメントを求める理由は様々である。ステークホルダーエン

ゲージメントは,次の事項に役立てることができる。

−  組織は,自らの決定及び活動が特定のステークホルダーに対してもたらすであろう結果について,理

解を高める。

−  自らの決定及び活動の有益な影響を増大させ,悪影響を減らすにはどうするのが最もよいかを判断す

る。

−  その組織の社会的責任についての主張が信頼できるものだと見られているかどうかを判断する。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  組織が改善することができるよう,自らのパフォーマンスを確認することを助ける。

−  自らの利害,自らのステークホルダーの利害及び社会全体の期待が絡む紛争を調停する。

−  ステークホルダーの利害及びその組織の責任と社会全体との関係に対処する。

−  その組織の継続的学習に役立てる。

−  法的義務(例えば,従業員に対する法的義務)を果たす。

−  その組織とそのステークホルダーとの,又はステークホルダー同士の利害の対立に対処する。

−  多様な観点を得ることの利点をその組織に与える。

−  自らの決定及び活動の透明性を向上させる。

−  相互に有益な目的を果たすためにパートナー関係を形成する。

ほとんどの場合,組織は,社会から自らの影響にその組織がどのように対処すべきと期待されているか

を既に認識しているだろうし,又は簡単に知ることができる立場にある。このような場合には,これらの

期待を理解するために特定のステークホルダーのエンゲージメントに頼る必要はないが,ステークホルダ

ーエンゲージメントのプロセスは,他の利点をもたらす可能性がある。社会の期待は,また,法規制,一

般に受け入れられている社会的又は文化的な期待,及び特定の課題について広く定評のある基準又は最良

実施例の中に見出すことができる。

ステークホルダーの利害に関する期待については,

箇条 において様々

な課題の記述の後の“関連する行動及び期待”で説明する。ステークホルダーエンゲージメントを通じて

確立される期待は,既に確立している組織の行動に関する期待に取って代わるものというよりは,それを

補足するものであるべきである。

最も関係性のあるステークホルダーとのエンゲージメントに基づいて,公正で適切なプロセスを作り出

すべきである。ステークホルダーと認められた個人又は組織の利害(又は複数の利害)は,真正のもので

あるべきである。ステークホルダーを特定するプロセスでは,それらのステークホルダーが何らかの決定

及び活動によって影響を受けたことがあるか,又は影響を受ける可能性があるかを究明すべきである。ま

た,それが適切でかつ実践的である場合は,その利害を最もよく代表する組織とエンゲージメントを行う

べきである。効果的なステークホルダーエンゲージメントは誠意に基づいたものであり,単なる広報活動

を超えたものである。

ステークホルダーエンゲージメントを行うとき,組織は,他のグループより“友好的”であるからとい

う理由で,又は組織の目的を支持してくれるという理由だけで,特定の組織化されたグループを優先させ

るべきでない。組織は,そのステークホルダーが発言しないからという理由で,ステークホルダーエンゲ

ージメントを怠るべきでない。組織は,対話の相手が存在すると見せかける目的で,本当は独立したグル

ープではない特定のグループを結成したり,支援すべきでない。真正のステークホルダーとの対話は独立

したグループと行われるものであり,財政的又はそれに類似した援助関係がある場合はそれを率直に開示

するものである。

組織は,自らの決定及び活動が自らのステークホルダーの利害及びニーズに与える効果を自覚すべきで

ある。組織は,自らのステークホルダー,並びにそれらのステークホルダーがその組織と接触し,エンゲ

ージメントを行う上での様々な能力及びニーズに適切な配慮を払うべきである。

次の要素が備わっている場合,ステークホルダーエンゲージメントは有意義なものになる可能性が高

い:そのエンゲージメントの明確な目的を理解している。そのステークホルダーの利害がはっきり特定さ

れている。これらの利害がその組織とステークホルダーとの間に生じさせる関係が,直接的又は重要であ

る。そのステークホルダーの利害が持続可能な発展に関連性があり,かつ重要な意味をもつ。自らの決定


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

を行うために必要な情報及び理解をそのステークホルダーがもっている。

社会的責任の中核主題に関する手引 

6.1 

一般 

自らの社会的責任の範囲を定義し,関連性のある課題を特定し,その優先順位を設定するために,組織

は,次の中核主題に取り組むべきである(

図 参照)。

−  組織統治

−  人権

−  労働慣行

−  環境

−  公正な事業慣行

−  消費者課題

−  コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

安全衛生及びバリューチェーンに関する側面だけでなく,経済的な側面は,これらの七つの中核主題の

全てにおいて,適切なところで扱っている。七つの中核主題のそれぞれにおいて,男女が異なった形で影

響を受ける可能性があることにも考慮している。

それぞれの中核主題には,社会的責任の様々な課題が含まれている。これらは,関連する行動及び期待

とともに,この箇条で記述している。社会的責任は,ダイナミックなものであり,社会的,環境的及び経

済的な関心の進化を反映して,更なる課題が将来現れてくるかもしれない。

これらの中核主題及び課題に関する行動は,社会的責任の原則及び慣行に基づいているべきである(箇

条 及び箇条 を参照)

。それぞれの中核主題について,組織は,自らの決定及び活動に関連性のある又は

重要なこれら全ての課題を特定し,

取り組むべきである

(箇条 参照)

課題の関連性を評価するときには,

短期的及び長期的な目的を考慮に入れるべきである。しかし,組織がこれらの中核主題及び課題に取り組

むべきあらかじめ決められた順序はない。順序は,その組織によって,また,その状況及び背景によって

異なるだろう。

全ての中核主題は相互に関連し,補完し合うものだが,組織統治の性質はそれ以外の中核主題とはいく

らか異なる(6.2.1.2 参照)

。効果的な組織統治が行われていれば,その組織は他の中核主題及び課題につ

いても行動を起こし,箇条 で説明した原則を実施することも可能になる。

組織は,これらの中核主題を全体的な視点で見るべきである。つまり,一つの課題に集中するのではな

く,全ての中核主題及び課題,並びにそれらの相互依存性を考慮すべきである。組織は,一つの課題に取

り組むことが,他の課題への取組みと両立しないかもしれないことを承知しておくべきである。ある特定

の課題だけに的を絞って,個々の改善が他の課題に悪い影響を及ぼしたり,その組織の製品若しくはサー

ビスのライフサイクル,ステークホルダー又はバリューチェーンに悪影響を生じさせたりすべきでない。

社会的責任の統合については,箇条 に手引を示す。


26

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:2012 (ISO 26000:2010)

図 3−七つの中核主題

これらの中核主題及び課題に取り組み,自らの決定及び活動に社会的責任を統合することによって,組

織は重要な利益を達成することができる(

ボックス 参照)。

ボックス 5  −  組織にとっての社会的責任の利点 

社会的責任は,組織に多くの利点を与えることができる。これらの利点には次の事項が含まれる。

−  社会の期待,社会的責任に関連する機会(法的リスクのより良い管理を含む。

,及び社会的責任を果

たさないことのリスクに対する理解の向上によって,より情報に基づいた意思決定を促進する。

−  その組織のリスクマネジメント慣行を向上させる。

−  その組織の評価を上げ,社会的な信頼を促進させる。

−  組織が活動する上での社会的な認可を支える。

−  技術革新を引き起こす。

−  資金へのアクセス及び好ましいパートナーの地位を含む,その組織の競争力を高める。

−  その組織のステークホルダーとの関係を強化することによって,その組織は新しい視点を経験し,

様々

なステークホルダーと接触することができる。

−  従業員の忠誠心,関与,参画及び士気を高める。

−  女性労働者及び男性労働者の安全衛生を向上させる。

−  その組織の新規採用の能力及びその組織の従業員の意欲を高め,勤続を奨励する能力にプラスの影響

を与える。

−  生産性及び資源効率を向上し,エネルギー及び水の消費を減らし,廃棄物を減らし,価値のある副産

物を回収することによって,節約を行う。

−  責任ある政治的関与,公正な競争,及び汚職をしないことによって,取引の信頼性及び公正性を高め

る。

6.3 

人権

6.4 

労働慣行

6.5 

環境

6.6 

公正な事業

慣行

6.7 

消費者課題

6.8 

コミュニティへ
の参画及びコミ
ュニティの発展

組織

6.2

 組織統治


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:2012 (ISO 26000:2010)

−  製品又はサービスに関する消費者との紛争の可能性を予防し,減少させる。

6.2 

組織統治 

6.2.1 

組織統治の概要 

6.2.1.1 

組織と組織統治 

組織統治とは,組織がその目的を追求する上で,決定を下し,実施するときに従うシステムのことであ

る。

組織統治は,規定された構造及びプロセスに基づいた正規の統治の仕組みと,その組織のリーダーであ

る人々の影響力を受けることの多い,その組織の文化及び価値と関連して現れる非正規の仕組みとの両方

から構成され得る。組織統治は,組織内における意思決定の枠組みであるから,あらゆる種類の組織の中

核的な機能である。

統治のシステムは,組織の大きさ及び種類によって,並びに活動の背景となる環境的,経済的,政治的,

文化的及び社会的背景によって異なる。そのシステムは,その組織の目的を達成する権限及び責任をもっ

た個人又は個人のグループ(所有者,メンバー,構成員など)によって指揮されている。

6.2.1.2 

組織統治と社会的責任 

組織統治は,組織が自らの決定及び活動の与える影響に責任をもち,社会的責任をその組織全体及び自

らの関係に統合することを可能にする最も決定的な要素である。

社会的責任という文脈で考えたときの組織統治は,組織が行動するときに従うべき中核主題であると同

時に,他の中核主題との関連で社会的に責任ある行動をとるための組織の能力を高める手段でもあるとい

う特殊な性格をもっている。

この特殊な性格は,社会的に責任ある行動を目指す組織は,その組織が監督を行い,箇条 で説明した

社会的責任の原則を実践することを可能にするような,組織統治のシステムをもっているべきであるとい

うことから生じる。

6.2.2 

原則及び考慮点 

効果的な統治は,意思決定及び実施に社会的責任の原則(箇条 参照)を組み込むことに基づいている

べきである。これらの原則とは,説明責任,透明性,倫理的な行動,ステークホルダーの利害の尊重,法

の支配の尊重,国際行動規範の尊重及び人権の尊重である(箇条 参照)

。これらの原則に加えて,組織は,

自らの統治システムを構築し確認するときに,

社会的責任の慣行,

中核主題及び課題を検討すべきである。

組織全体への社会的責任の統合についての更なる手引は,箇条 に記述している。

リーダーシップも効果的な組織統治に不可欠である。

これは,意思決定について当てはまるだけでなく,

社会的責任を実践し,

社会的責任を組織文化に統合しようとする従業員の意欲を高める上でも当てはまる。

デューディリジェンスは,組織が社会的責任の課題に取り組む上で役立つ手法になり得る(更なる手引

については 7.3.1 参照)

6.2.3 

意思決定のプロセス及び構造 

6.2.3.1 

課題の説明 

社会的責任に前向きな意思決定のプロセス及び構造とは,箇条 及び箇条 で記述した原則及び慣行の

活用を促進するようなプロセス及び構造である。

全ての組織に意思決定のプロセス及び構造がある。それらは,正規かつ精巧で法規制に従っている場合

もあり,また,非正規で,かつその組織の文化及び価値に根ざしたものである場合もある。全ての組織は,

社会的責任の原則及び慣行の適用を可能にするようなプロセス,システム,構造,その他の仕組みを整備


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

すべきである

[126][159]

6.2.3.2 

関連する行動及び期待 

組織の意思決定のプロセス及び構造は,次の事項を可能にすべきである。

−  社会的責任への自らのコミットメントを表す戦略,目的及び目標を作り上げる。

−  リーダーシップのコミットメント及び説明責任を表明する。

−  社会的責任の原則(箇条 参照)が実践される文化及び環境を作り出し,醸成する。

−  社会的責任に関するパフォーマンスに対して,金銭的及び非金銭的なインセンティブのシステムを創

設する。

−  財政資源,天然資源及び人的資源を効率よく利用する。

−  これまでその組織で上級職への就任が足りなかったグループ(女性,

並びに人種及び民族集団を含む。

に対して公平な上級職への昇進の機会を促進する。

−  その組織のニーズとそのステークホルダーのニーズとのバランスを図る。これには,差し迫ったニー

ズ及び将来の世代のニーズの両方が含まれる。

−  意見の一致している分野及び一致していない分野を特定し,紛争を解決するための交渉を行うことで,

そのステークホルダーとの双方向のコミュニケーションのプロセスを確立する。

−  その組織の社会的責任に関する活動に,あらゆるレベルの従業員の効果的な参加を奨励する。

−  その組織を代表して決定を行う人々の権限,責任及び能力のレベルのバランスをとる。

−  決定されたことが社会的に責任のある方法で行われるようにし,それがプラスのものであるかマイナ

スのものであるかを問わず,その組織の決定及び活動の結果の説明責任を判断するために,決定事項

の実施の経過を追跡する。

−  その組織の統治プロセスを定期的に確認し,評価する。確認の結果に従ってプロセスを調整し,その

変更をその組織全体に知らせる。

6.3 

人権 

6.3.1 

人権の概要 

6.3.1.1 

組織と人権 

人権とは,全ての人に与えられた基本的権利である。人権には,大きく分けて二つの種類がある。一つ

目は市民的及び政治的権利に関するもので,自由及び生存の権利,法の下の平等,表現の自由などの権利

が含まれる。二つ目は経済的,社会的及び文化的権利に関するもので,労働権,食糧権,到達可能な最高

水準の健康に対する権利,教育を受ける権利,社会保障を受ける権利などが含まれる。

多様な道徳的,法的及び知的規範は,人権が法又は文化的伝統を超越するという前提に基づいている。

人権の優位性は,国際社会によって国際人権章典及び主要な人権関連文書において強調されてきた(

ボッ

クス で記述)。更に広く考えれば,組織は,権利及び自由を完全に実現できる社会的及び国際的秩序か

ら便益を得るだろう。

人権法の大半は国家と個人との関係に関連しているが,非国家組織も個人の人権に影響を及ぼす可能性

があることから,人権を尊重する責任があるというのが一般的な認識である

[42][43]

ボックス 6  −  国際人権章典及び主要な人権関連文書 

世界人権宣言(世界宣言)

[156]

は,1948 年に国連総会で採択され,最も広く認識されている人権関連文

書である。これは人権法の基礎となっており,その要素は,全ての国家,個人及び組織に対して拘束力を


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もつ国際慣習法を表している。世界宣言では,社会の全ての個人及び組織が人権の確保に貢献することを

要求している。市民的及び政治的権利に関する国際規約,並びに経済的・社会的及び文化的権利に関する

国際規約は,各国による批准のために 1966 年に国連総会で採択された条約で,1976 年に発効した。国際

人権章典は,世界人権宣言,市民的及び政治的権利に関する国際規約

[143]

,経済的・社会的及び文化的権利

に関する国際規約

[144]

,並びにこれらの規約に対する選択議定書(このうちの一つは死刑廃止を目的として

いる

[152]

)で構成されている。

さらに,七つの主要な国際人権の関連文書が国際人権法の一部となり,次について取り上げている。あ

らゆる形態の人種差別の撤廃

[141]

,女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃

[133]

,拷問及び他の残虐な,非

人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を防止及び撤廃するための手段

[132]

,児童の権利

[135]

,武力紛

争における児童の関与

[147]

,児童の売買,児童買春及び児童ポルノ

[148]

,移民労働者及びその家族の保護

[78][79][80][142]

,強制失踪からのすべての人の保護

[140]

,並びに障害者の権利

[134]

。これら全ての文書が,普遍的

人権の国際基準の基礎となっている。これらの文書は,それを批准した国家に対して拘束力をもつ。一部

の文書は,選択議定書に記述された手続規則に従い,個々の苦情の申立てを認めている。

6.3.1.2 

人権と社会的責任 

人権を認識し,これを尊重することは,法の支配,並びに社会的な正義及び公正の概念に不可欠であり,

司法制度のような社会の最も基本的な制度の基礎となるものと広くみなされている。

国家には,人権を尊重し,保護し,満たす義務及び責任がある。また,組織は,自らの影響力の範囲内

を含む,人権を尊重する責任を負う。

6.3.2 

原則及び考慮点 

6.3.2.1 

原則 

人権とは,固有の権利で奪うことはできず,普遍的,不可分で,かつ相互依存的なものである。

−  人権は,人であるが故に全ての人に属するという点で,固有なものである。

−  人権は,人々がそれを放棄することには同意できず,政府であっても他の機関であってもそれを人々

から

奪することはできないという点で,絶対的なものである。

−  人権は,地位にかかわらず全ての人に適用されるという点で,普遍的なものである。

−  人権は,選択的に無視することができないという点で,不可分なものである。

−  人権は,一つの人権を実現することが他の人権の実現に貢献するという点で,相互依存的なものであ

る。

6.3.2.2 

考慮点 

国家は,人権侵害に対して個人及びグループを保護し,その管轄内で人権を尊重し実現させる義務を負

っている。最近では,自らの管轄に拠点を置く組織に対し,その管轄外で活動する場合であっても人権を

尊重するよう奨励する措置を講じる国家が増えている。組織及び個人は,直接的及び間接的に人権に影響

を及ぼす可能性があり,また,実際に影響を及ぼしているということは広く認識されている。国家が人権

保護の義務を実現できない,又は実現するのを欲しないということにかかわらず,組織には全ての人権を

尊重する責任がある。そもそも,人権を尊重するということは,他者の権利を侵害しないということであ

る。このような責任においては,組織は,人権侵害を受動的に容認したり,積極的に関与するのを回避す

ることを確実にするための積極的な措置を講じる必要がある。人権尊重の責任を果たすには,デューディ

リジェンスが必要である。国家が人権保護の責務を果たせない場合には,組織は,人権を尊重するという

その責任を確実に果たすために特に気を配るべきである。人権のデューディリジェンスが,通常の事業活


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動に不可欠なこと以上の行動の必要性を指摘するかもしれない。

刑事法の基本的規範の中には,国際的人権の深刻な侵害については国家だけでなく個人及び組織に対し

ても法的な説明責任を課すものがある。拷問,人道に対する犯罪,奴隷制度,集団虐殺の禁止などである。

国際的に認識された犯罪を理由に,組織が国内の法律に基づく起訴の対象となっている国もある。人権関

連文書には,人権並びにその実施及び施行方法に関して組織の法的義務の範囲を定めているものもある。

非国家組織の基本的な責任は,人権を尊重することである。だが,組織が人権を尊重する以上の行動を

とったり,

人権の実現に貢献してもよいのではないか,

と期待するステークホルダーもいるかもしれない。

影響力の範囲という概念は,組織が,様々な権利保有者の中で人権を支援するための機会の範囲を把握す

るのに役立つ。つまりこの概念は,組織が,他者に影響力を及ぼし,これに働きかける自らの能力,自ら

が最も影響を及ぼす可能性のある人権問題,及び当該権利保有者を分析するのに役立つかもしれない。

組織が人権を支援する機会は,自らの業務及び従業員の中で最大となることが多いだろう。また,組織

は,その供給者,同業者,その他の組織及びより広範な社会と協力する機会をもっているだろう。場合に

よっては,組織が他の組織及び個人と協力することでその影響力を強化したいと望むこともあるだろう。

行動し,影響力を強化する機会の評価は,その組織に固有の状況,その組織が活動する環境に固有の状況

など,各々の状況によって異なる。しかし,組織は,他の組織に影響力を及ぼそうとするときにマイナス

の結果又は意図しない結果が生じる可能性を常に考慮すべきである。

権利保有者及びこれらに影響を及ぼす可能性のある人物に対し,人権についての認識を高めるために,

組織は,人権教育の促進を検討すべきである。

6.3.3 

人権に関する課題 1:デューディリジェンス 

6.3.3.1 

課題の説明 

人権を尊重するため,組織は,デューディリジェンスを用いて,自らの行動又は自らと関係のある他者

の活動から発生する人権への,現実の又は潜在的な影響を特定し,これらを防止し,これらに対処する責

任を負っている。その組織が関与する人権侵害の原因が他者にあるかもしれないような場合には,デュー

ディリジェンスが,その他者の行動に影響力を及ぼす責任を組織に自覚させることもあるかもしれない。

6.3.3.2 

関連する行動及び期待 

デューディリジェンスは,人権などあらゆる中核主題に適用されるため,デューディリジェンスについ

ての詳細な手引を 7.3.1 に記述している。人権に特定すれば,デューディリジェンス手順は,その組織の

規模及び状況に適した形で,次のような要素を含むべきである。

−  その組織内の当事者及びその組織に密に関連している当事者に有意義な手引を示せるような,その組

織の人権方針

−  既存の及び提案されている活動が人権にどう影響するかを評価するための手段

−  その組織全体に人権方針を統合するための手段

−  優先順位及び取組みに必要な調整を加えられるよう,長期にわたってパフォーマンスを追跡するため

の手段

−  自らの決定及び活動のマイナスの影響に対処するための行動

6.3.4 

人権に関する課題 2:人権が脅かされる状況 

6.3.4.1 

課題の説明 

組織が人権に関する課題及びジレンマに直面する可能性が高く,また,人権侵害の危険性が増大するか

もしれない,特定の状況及び環境がある。こうした特定の状況及び環境には,次の事項が含まれる。

−  紛争

[129]

又は極端な政情不安,民主主義体制又は司法制度の破綻,政治的又は市民的権利の欠如


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−  貧困,干ばつ,極端な健康問題又は自然災害

−  水,森林,大気などの天然資源に重大な影響を及ぼし,コミュニティを混乱させる可能性がある採取

活動,その他の活動への関与

−  業務活動と先住民族のコミュニティとが近接する場合

[75][154]

−  児童に影響する又は児童を巻き込む可能性のある活動

[81][82][116][117][135][147][148]

−  汚職の文化

−  法的保護のないまま事業が非公式に行われる複雑なバリューチェーン

−  家屋,その他の資産の安全を確保するために,広範な措置を講じる必要性

6.3.4.2 

関連する行動及び期待 

上記の状況に対処する場合には,組織は特別な注意を払うべきである。このような状況では,デューデ

ィリジェンスのプロセスを強化し,人権の尊重を確保しなくてはならないかもしれない。これは,例えば,

自主的な人権への影響の評価を通じて行うことができる。

これらの状況の一つ以上が当てはまる環境で業務を行う場合,組織は,どう行動したらよいかについて

困難かつ複雑な判断を迫られる可能性が高い。これに対しては単純な公式又は解決策は存在しないかもし

れないが,組織は,人権尊重という主要責任に基づいて判断を下すとともに,人権の総合的な実現の推進

及び擁護に貢献すべきである。

対応する際,組織は,人権尊重という目的が実際に達成されるよう,自らの行動の潜在的な結果につい

て考慮すべきである。特に他の人権侵害を悪化させたり発生させたりしないことが重要である。状況の複

雑さを,行動しない言い訳にすべきではない。

6.3.5 

人権に関する課題 3:加担の回避 

6.3.5.1 

課題の説明 

加担には,法的な意味と法的でない意味とがある。

法的な意味における加担とは,一部の管轄地域では,犯罪のような違法行為と知りながら,又は違法行

為をほう(幇)助する意図をもちながら,その違法行為の実行に実質的な効果を及ぼす行為又は不作為を

行うこととして定義されている。

加担とは,違法行為又は不作為を支援し,唆すという概念に関連している。

法的でない意味においては,加担は,行動に対する広範な社会期待から派生している。このような意味

においては,組織は,国際行動規範とは整合しない,又はこれを無視した他者の不法行為で,デューディ

リジェンスを用いることで,社会,経済又は環境に重大なマイナスの影響を及ぼす可能性があることをそ

の組織が知っていた,又は知っていたはずの違法行為を助けた場合に,加担したものとみなされるかもし

れない。また,組織は,こうした不法行為に対して沈黙していた場合,又はこうした不法行為から利益を

得た場合にも,加担したものとみなされるかもしれない。

その境界線は不明確で変動的ではあるが,加担には次の三つの種類があり得る。

直接的な加担  これは,組織が意図的に人権侵害を支援した場合に発生する。

受益的加担  これは,組織又は支配下にある組織が,他者が行った人権侵害から直接的に利益を得る

ことを含む。治安部隊が組織の決定及び活動に対する平和的抗議を鎮圧するためにとった行動,又は

組織の施設を守りながら講じた抑圧的措置を,組織が黙認したり,供給者が労働における基本的権利

を侵害したことから組織が経済的な利益を得ることなどがその例である。

暗黙の加担  これには,組織が,特定のグループをターゲットとした雇用法における組織的差別に対

して明確に反対しないなど,組織的又は継続的な人権侵害の問題を関係当局に提起しないことが含ま


32

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:2012 (ISO 26000:2010)

れ得る。

6.3.5.2 

関連する行動及び期待 

人権侵害における潜在的な加担の重要な部分は,保安に関する取決めに関連している。この点について

は特に,組織は,自らの保安に関する取決めが人権を尊重していること,また,法の執行に関する国際規

範及び基準と整合していることを検証すべきである。保安要員(雇用,契約又は下請契約した要員)は,

人権に関するこれらの基準に従うことも含め,十分に訓練されているべきであり,保安に関する手続,又

は保安要員についての苦情は,迅速に,また適宜独立して対処し,調査すべきである。さらに,組織は,

公の治安部隊による人権侵害に関与したり,人権侵害を促したり,人権侵害から便益を得たりしないよう

にするためにデューディリジェンスを用いるべきである。

さらに,組織は,

−  人権を侵害するために物品又はサービスを利用する事業体に対しては,これらを提供すべきでない。

−  パートナーシップとの関連で,又は契約事業の実施において,人権を侵害するようなパートナーと正

式な又は非公式のパートナーシップ又は契約関係を取り結ぶべきでない。

−  購入対象となる物品及びサービスが生産される社会的及び環境的条件について把握しておくべきであ

る。

−  国内法及び国際規範に従って実施されるものでない限り,その土地から人々を強制退去させることに

加担しないようにすべきである。これには,あらゆる代替解決策を模索すること,及び影響を受けた

当事者が十分な補償を得ることを確実にすることも含まれる。

−  関係国での雇用において発生する差別行為などの人権侵害を容認しない旨を公にすること,又はその

旨を示すその他の行動をとることを検討すべきである。

−  反社会的活動に関与している事業体との関係を回避すべきである。

組織は,法的及び社会的基準に共通する特徴を自らのデューディリジェンスのプロセスに統合すること

で,加担の危険性を認識し,防止し,これに対処することができる。

6.3.6 

人権に関する課題 4:苦情解決 

6.3.6.1 

課題の説明 

機関が最適の状態で活動している場合でも,組織の決定及び活動が人権に及ぼす影響をめぐって紛争が

起こることがあるかもしれない。人権保護という国家の責務においては,効果的な苦情対応の仕組みが重

要な役割を果たす。同様に,人権尊重という責任を果たすには,組織は,人権が侵害されたと考える人々

が侵害された事実をその組織に知らせ,救済措置を求めるための仕組みを確立すべきである。このような

仕組みは,可能な法的手段を利用する権利を害するべきでない。国家によらない仕組みは,国家機関,特

に司法の仕組みの強化を弱めるべきでないが,償還及び救済措置を求める追加的な機会を提供することは

可能である。

6.3.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,自らの,及びそのステークホルダーの利用のための救済の仕組みを定めるか,又は救済の仕組

みの利用可能性を確保すべきである。これらの仕組みが効果的であるためには,次のようにあるべきであ

る。

合法的である  これには,特定の苦情対応手順の当事者がその手順の公正な処理に干渉できないよう

にするための,明確で,透明で,かつ十分に独立した統治構造が含まれる。

利用しやすい  こうした制度の存在を広く知らしめ,言語,非識字,認識の欠如,資金不足,遠隔地,


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障害,報復のおそれなど,これらの制度を利用するときに困難に直面するかもしれない被害者のため

に十分な支援を提供すべきである。

予測可能である  手続は,明確かつ既知のもので,それぞれの段階についての明確な時間枠が定めら

れ,提供できる手順及び結果の種類が明解で,結果の実施をモニタリングする手段が定められている

べきである。

公平である  被害者は,公正な苦情対応手順に関与するのに必要な情報源,助言及び専門知識を十分

に利用できるべきである。

権利と両立可能である  結果及び救済措置は,国際的に認められた人権関連基準と合致しているべき

である。

明確かつ透明である  機密性が適切な場合もあるが,手順及び結果は公に対して十分に明らかにすべ

きであり,公益を十分に考慮すべきである。

対話及び仲裁を基礎とする  苦情対応手順は,両当事者間のエンゲージメントを通じて相互に合意し

た苦情解決策を追求すべきである。裁定が求められる場合は,両当事者は,別の独立した仕組みを通

じてこれを求める権利を保持しているべきである。

6.3.7 

人権に関する課題 5:差別及び社会的弱者 

6.3.7.1 

課題の説明 

差別とは,平等な取扱い又は機会均等を無にする結果をもたらす区別,排除又は優先傾向をいい,その

動機は合法的な根拠ではなく偏見に基づいている。違法な差別の根拠には,人種,皮膚の色,性別,年齢,

言語,財産,国籍若しくは出身国,宗教,民族的若しくは社会的出身,カースト,経済的背景,障害,妊

娠,先住民族の出自,労働組合への加入,政治的所属,又は政治的見解若しくはその他の見解が含まれる

(ただし,これに限定されない。

。最近の違法な差別の根拠には,配偶者の有無,家族状況,個人的関係,

HIV

/エイズへの感染の有無などの健康状態も含まれる。差別の禁止は,国際的な人権法の最も基本的な

原則の一つである

[71][78][133][134][136][137][138][139][141][143][149][150][156]

社会的弱者を含む全てのグループが全面的かつ効果的に社会に参加し,これに包含されれば,関連当事

者だけでなく全ての組織に対して機会が与えられ,また,こうした機会も増加する。機会均等を確保し,

全ての個人を尊重するための積極的な取組みを行えば,組織が得るものも大きい。

慢性的に不利な状態へと結び付く恒久的な差別を受けている人々は,

より一層の差別を受けやすいため,

組織による保護及び尊重という点からも,このような人々の人権は特別な配慮の対象となるべきである。

一般に社会的弱者には,6.3.7.2 に記述されているような人々が含まれるが,組織が活動する特定のコミュ

ニティには,この他の社会的弱者が存在するかもしれない。

差別は間接的に行われる可能性もある。間接的な差別は,一見,中立的な規定,基準又は慣行でも,そ

れらが合法的な目的によって客観的に正当化されず,その目的を達成する手段が適切でなく,かつ必要と

されていない限り,それらによって特定の属性をもつ人々を他の人々よりも不利な状態にしてしまう場合

に生じる。

6.3.7.2 

関連する行動及び期待 

組織は,従業員,パートナー,顧客,ステークホルダー,メンバー,及び組織自らが接触する又は影響

を及ぼす可能性のある人物,を差別することのないよう注意を払うべきである。

組織は,直接的又は間接的な差別が存在するか否かを判断するため,自らの業務及び影響力の範囲内に

いる他者の業務を分析すべきである。また,組織は,自らの活動に関連する関係を通じて差別的な慣行に

関与しないようにすべきである。この場合,組織は,差別を防ぐという責任において,その他の当事者を


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促し,支援すべきである。それがうまくいかない場合,組織はそのような組織との関係を再考すべきであ

る。例えば,男性と比較した場合の女性への一般的な接し方を分析し,この点に関する方針及び決定が客

観的であるか,又は固定的先入観を反映しているかを判断してもよい。人権に関する専門知識を備えた現

地の又は国際的な組織に助言を求めてもよい。組織は,国際的又は全国的なモニタリング手順又は調査手

順による判明事項及び推奨事項に従ってもよい。

組織は,社会的弱者の自らの権利に対する認識向上を促進することを検討すべきである。

組織は,また,実行可能な場合は,差別又は過去の差別の名残を是正するよう努力すべきである。例え

ば,これまでに差別されてきたグループの人々を雇用し,又はこうした人々が運営する組織と取引を行う

よう努力すべきである。また,可能な場合には,全面的な機会を拒否されてきた人々のために,教育,イ

ンフラ又は社会福祉を受ける機会を増やす努力を支援すべきである。

組織は,自らが関係する人々の多様性について肯定的かつ建設的な観点に立つことができる。組織は,

人権に関連した側面だけでなく,多様な人的資源及び関係を全面的に構築することで価値が付加されると

いう意味で自らの業務にもたらされる利益をも考慮することができる。

次の社会的弱者の例を,関連する具体的な行動及び期待とともに説明する。

女性及び女児  世界の人口の半分を占めているが,男性及び男児と同条件で資源及び機会を利用する

のを拒否されることが多い。女性は,教育を受ける権利,雇用される権利,経済的及び社会的活動の

権利,結婚及び家庭の事情について決定する権利,自らの性及び生殖に関する健康について決定する

権利など,あらゆる人権を差別なく享受する権利をもつ。組織の方針及び活動は,女性の権利を尊重

し,経済的,社会的及び政治的分野における男女平等を推進すべきである

[133][149]

障がい者  その技能に関する誤解も原因となって,社会的弱者となることが多い。組織は,障がい者

(男女とも)に尊厳,自立性及び社会への全面的な参加が確実に認められるよう,貢献すべきである。

差別禁止の原則を尊重すべきであり,組織は,施設の利用に関して適切な規定を定めることを検討す

べきである。

児童  特に弱い存在であり,これは依存的な立場にあることも一因となっている。児童に影響を及ぼ

す可能性のある行動をとる場合は,児童にとって最善の利益をもたらすことを中心に考慮すべきであ

る。差別の禁止,生存,発達,自由な表現に対する児童の権利などを含んだ,子どもの権利条約の原

則を常に尊重し,考慮すべきである

[81][82][116][117][135][147][148]

。組織は,その従業員が児童の性的搾取,そ

の他の児童の搾取に関わることを妨ぐための方針をもつべきである。

先住民族  植民地化,所有地からの追放,他の市民から隔離される立場,人権侵害などの組織的差別

の経験から,社会的弱者とみなすことができる。集団的権利を享受し,先住民族に属する個人は,普

遍的な人権,特に平等な待遇及び機会を獲得する権利を共有する。集団的権利には次が含まれる。自

決権

(自らのアイデンティティ,

政治的立場及び自らが望む発展方法を決定する権利)

伝統的な土地,

水及び資源を利用し,これらを管理する権利。自らの習慣,文化,言語及び伝統的な知識を差別され

ることなく維持し,享受する権利。自らの文化的及び知的財産を管理する権利

[75][154]

。組織は,決定を

下し活動を行うときには,先住民族の権利を認識し尊重すべきである。組織は,決定を下し活動を行

うときには,無差別原則及び先住民族に属する個人の権利を認識し尊重すべきである。

移民,移民労働者  移民,移民労働者及びその家族も,非合法又は在留登録がない移民の場合には特

に,その出身国又は出身地域を理由に,社会的弱者となるかもしれない。組織は,移民,移民労働者

及びその家族の人権を尊重し,これらの人権を尊重する風潮を推進するよう努力すべきである

[78][79][80][142]


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カーストをはじめとする家系を根拠に差別されている人々  何億人もの人々が,世襲的な身分又は家

系によって差別を受けている。このような形の差別は,生まれた時点で属していたグループが不浄で

ある又は尊敬に値しないと見られる人々がいるとの不法な概念に正当化された権利侵害の歴史を根拠

にしている。組織は,このような慣行を忌避し,可能な場合には,こうした偏見をなくすよう努力す

べきである。

人種を根拠に差別されている人々  人種,文化上のアイデンティティ,及び種族的出身によって差別

されている人々がいる。皮膚の色又は文化を根拠に劣った人々がいるとの不法な概念に正当化された

権利侵害の歴史がある。人種差別は,奴隷の歴史又は他の人種グループによって迫害を受けた歴史を

もつ地域に多く存在する

[141][150][156]

その他の社会的弱者  例えば,高齢者,強制退去させられた人々,貧しい人々,非識字者,HIV/エ

イズ感染者,少数民族,宗教団体などが含まれる。

6.3.8 

人権に関する課題 6:市民的及び政治的権利 

6.3.8.1 

課題の説明 

市民的及び政治的権利には,生存権,尊厳をもって生きる権利,拷問を受けない権利,身体の安全に対

する権利,財産権,身体の自由及び完全性に対する権利,刑事責任に問われた場合に適正な法手続及び公

正な聴取を受ける権利など,絶対的な権利が含まれている。また,言論及び表現の自由,平和的集会及び

結社の自由,宗教を選び信仰する自由,信条をもつ自由,プライバシー,家族,自宅又は通信への恣意的

な介入を受けない権利,名誉又は名声の毀損を受けない自由,公的サービスを受ける権利,参政権なども

含まれている

[143][152]

6.3.8.2 

関連する行動及び期待 

組織は,個人の市民的及び政治的権利の全てを尊重すべきである。例としては,次のような権利が挙げ

られる(ただし,これらに限定されない。

−  個々人の生存権

−  言論及び表現の自由。組織は,ある人物が内外でその組織を明確に批判した場合でも,その人物の見

解又は意見を抑圧すべきでない。

−  平和的集会及び結社の自由

−  国にかかわらず,何らかの手段を通じて情報及びアイデアを求め,受け取り,伝える自由

−  単独の又は他者と共有の財産権,及び恣意的に財産を

奪されない権利

−  内部で懲戒処分を受ける前に,適正な手続を利用し,公平な聴取を受ける権利。懲戒処分は,相応な

ものであるべきであり,身体的罰則,非人道的扱い又は品位をきずつける取扱いを伴うべきでない。

6.3.9 

人権に関する課題 7:経済的,社会的及び文化的権利 

6.3.9.1 

課題の説明 

全ての人は,社会の一員として,自らの尊厳及び個人的成長に必要な経済的,社会的及び文化的権利を

もっている。これらには,次に関する権利が含まれている。教育,公正かつ好ましい労働条件,結社の自

由,適切な健康水準,自身及びその家族の身体・精神の健康及び幸福に適した生活水準。食事,衣類,住

居,医療,自らが制御できない状況において解雇,疾病,身体障害,寡居,高齢,その他の生計手段の欠

如に陥った場合の保障をはじめとする必要な社会的保護。宗教及び文化の実践,並びにこれらの権利に関

して肯定的な慣行を支持し,否定的な慣行を阻止するような意思決定に差別なく参加する純粋な機会

[144]

6.3.9.2 

関連する行動及び期待 

経済的,社会的及び文化的権利を尊重するために,組織は,デューディリジェンスを用いて,これらの


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

権利の享受を侵害したり,妨害したり,阻止するような活動に関与しないように配慮する責任を負う。次

の事項は,これらの権利を尊重するために組織がなすべき事項の例である。組織は,自らの決定,活動,

製品及びサービス並びに新規プロジェクトが地元住民の権利を含むこれらの権利に対して及ぼす可能性の

ある影響について,評価すべきである。また,組織は,水のような必要不可欠な製品又は資源の利用を,

直接的又は間接的に制限又は拒否すべきでない。例えば,生産工程が乏しい飲用水資源の供給を危うくす

べきでない。組織は,必要不可欠の物品及びサービスの配分が阻害されている場合,特定の方針を採用又

は維持して,それらを効率的に確実に供給することを適宜考慮すべきである。

社会的に責任ある組織は,これらの権利の規定に関しては,政府,その他の組織の役割及び能力がそれ

ぞれ異なることに留意しつつ,これらの権利の実現に適宜貢献することもできる。

例えば,組織は,次のような事項を検討してもよい。

−  コミュニティのメンバーのために教育及び生涯学習の利用を促し,可能な場合には,こうした教育及

び生涯学習のための支援及び便宜を提供する。

−  経済的,社会的及び文化的権利の尊重及び実現を支援する他の組織及び政府団体と協力する。

−  自らの中核的な業務活動に関連して,これらの権利の実現に貢献するための方法を模索する。

−  物品又はサービスを貧しい人々の購買能力に合わせる。

経済的,社会的及び文化的権利は,他の権利と同様,現地の事情に照らして考慮すべきである。関連す

る行動及び期待についての詳細な手引は,コミュニティへの参画及びコミュニティの発展に関する 6.8 

記述されている。

6.3.10 

人権に関する課題 8:労働における基本的原則及び権利 

6.3.10.1 

一般 

労働における基本的原則及び権利では,労働問題に重点を置いている。これらは,国際社会が基本的人

権として採用しており,人権の部分に記述されている。

6.3.10.2 

課題の説明 

国際労働機関(ILO)は,労働における基本的権利を明らかにしている

[54]

。これには次の事項が含まれ

る。

−  結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認

−  あらゆる形態の強制労働の禁止

−  児童労働の実効的な廃止

−  雇用及び職業における差別の排除

6.3.10.3 

関連する行動及び期待 

これらの権利については多くの管轄で法律が制定されているが,組織は,独自に,次の事項への取組み

を確実にすべきである。

結社の自由及び団体交渉

[62][103]

  労働者及び雇用主は,事前の許可を受けることなしに,自ら選択する

団体を設立し,及びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利をいかなる差別

もなしに有する。労働者が結成又は加入した代表団体は,団体交渉のために認識されるべきである。

労働者が希望した場合には,雇用条件は,自主的な団体交渉によって決定してもよい。労働者代表に

は,自らの仕事を効果的に行い,自らの役割を干渉されずに果たせるような適切な便宜を与えるべき

である。労働協約には,紛争解決のための条項を含めるべきである。また,労働者代表には,有意義

な交渉に必要な情報が提供されるべきである(結社の自由,並びに結社の自由及び団体交渉が社会対


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話とどのように関係するかについての詳細な情報は,6.4 参照)

強制労働

[49][60]

  組織は,強制労働を行わせ,強制労働から利益を得るべきでない。処罰の脅威の下に

人に作業又はサービスを強要すべきでなく,自発的に行われていない作業又はサービスを強要すべき

でない。囚人が法廷で有罪判決を受け,公の機関の監督管理の下で労働が行われない限り,組織は,

囚人労働を行わせ,囚人労働から利益を得るべきでない。また,自主的に行われ,それが,とりわけ,

公正かつ適切な雇用条件によって証明されない限り,民間組織は囚人労働を利用すべきでない。

機会均等及び差別の禁止

[55][57][58]

  組織は,自らの雇用方針に,人種,皮膚の色,性別,宗教,国民的

出身,社会的出身,政治的見解,年齢,障害などに基づく差別が含まれていないことを確認すべきで

ある。最近の違法な差別の根拠には,配偶者の有無,家族状況,個人的関係,HIV

/エイズ感染の有

無などの健康状態も含まれる。これらは,採用の方針及び慣行,所得,雇用条件,訓練及び昇進の機

会,並びに雇用の終了はその職務の要件だけに基づいて決定されるべきであるとの一般原則に従って

いる。また,組織は,職場でのいやがらせを防止するために,次の措置を講じるべきである。

−  組織は,自らの方針及び活動が機会均等及び差別の禁止の推進に及ぼす影響について定期的に評価

する。

−  社会的弱者の保護及び地位向上のための積極的な行動をとる。これには,障がい者のための職場を

確立し,彼らが適切な条件下で生計を立てるのを支援すること,若年層及び高齢者雇用の推進,女

性のための雇用機会均等,上級管理職におけるバランスの取れた男女比率などの問題に取り組むプ

ログラムを制定したり,又はこうしたプログラムへ参加したりすることなどが含まれる。

児童労働

[81][82][116][117]

  就業の最低年齢は,国際文書によって決定されている(

ボックス 参照)。組織

は,児童労働を行わせたり,児童労働から利益を得るべきでない。組織が,自らの業務又は影響力の

範囲内において児童労働を行わせている場合には,できる限り,その児童を労働から解放するだけで

なく,その児童が適切な代替措置,特に教育を受けられるように確保すべきである。児童に害を及ぼ

さない軽易な業務,登校又は児童の十分な発達に必要なその他の活動(レクリエーション活動など)

の妨げにならない軽易な業務は,児童労働とはみなされない。

ボックス 7  −  児童労働 

ILO

の条約

[81][116]

では,就業又は就労が許可される最低年齢を規定する国内法のための枠組みを提供し

ているが,この年齢は,義務教育が終了する年齢を下回っていてはならず,いかなる場合でも 15 歳を下回

っていてはならないとされている。経済及び教育施設が十分に発展していない国では,最低年齢を 14 歳と

することができる。

“軽易な業務”についての 13 歳又は 12 歳という例外も認められているかもしれない

[81][82]

。危険な業務,つまり業務の性質又はそれが実施される環境によって,その児童の健康,安全又は道

徳を害するおそれのある性質をもつ業務の最低年齢は,全ての国について 18 歳と定められている

[116][117]

(次の表を参照)

“児童労働”という用語は,

“若年雇用”又は“学生の労働”と混同すべきでない。これらはどちらも,

関連する法規制に従った純粋な実習又は訓練プログラムの一部として実施されるのであれば,合法的であ

り望ましいかもしれない。

児童労働は,人権を侵害する搾取の一形態である。児童労働は,児童の身体的,社会的,知的,心理的

及び精神的な発達を損なうものであり,児童らの幼少時代及び尊厳を奪うものである。児童は,教育の機

会を奪われ,家族から引き離されるかもしれない。基礎教育を終えられなかった児童は,読み書きができ


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ないまま成長することが多く,近代経済の発展に貢献できるような仕事を得るのに必要な技能を取得する

こともかなわない。つまり児童労働は,未熟練で資格をもたない労働者を生み出し,労働力の将来的な技

能向上,並びに将来の経済的及び社会的発展を脅かすことになるのである。児童労働によって,若年労働

者及び成人労働者の仕事が奪われ,賃金が引き下げられるかもしれない。

組織は,あらゆる形態の児童労働を撤廃するよう努力すべきである。ただし,最悪の形態の児童労働を

撤廃する努力が,他の形態の児童労働を正当化するのに利用されるべきでない。予防措置及び矯正措置の

対象を明確にし,これらの効果を発揮できるようにするため,組織は,男児及び女児の置かれている異な

る環境,並びに民族集団又は差別されている人々の子どもたちが様々に影響を受けている状況を分析すべ

きである。職場に法定就労年齢に達しない児童がいた場合には,それらの児童をその仕事から引き離すた

めの措置を講じるべきである。また,職場からも家庭からも引き離された児童については,組織は,その

児童が他で働くか搾取され,以前と同等又はより劣悪な状況に陥ることのないようにすることを確実にす

るために,その児童が十分なサービス及び実行可能な代案を利用できるようにできる限り支援すべきであ

る。

児童労働を効果的に撤廃するには,社会における幅広い協力が必要である。児童を労働から解放し,質

の高い無償の全日制教育を受けさせるため,組織は,他の組織及び政府機関と協力すべきである。

先進国 

途上国 

通常業務 15 歳以上 14 歳以上

危険業務 18 歳 18 歳

軽易な業務 13 歳 12 歳

6.4 

労働慣行 

6.4.1 

労働慣行の概要 

6.4.1.1 

組織と労働慣行 

組織の労働慣行には,組織内で,組織によって又は下請労働を含めその組織に代わって行われる労働に

関連する全ての方針及び慣行が含まれる。

労働慣行は,組織とその直接の従業員との関係,又は組織が所有する若しくは直接管理する職場でもつ

責任を超えて適用される。

労働慣行には,労働者の採用及び昇進,懲戒及び苦情対応制度,労働者の異動及び配置転換,雇用の終

了,訓練及び技能開発,健康,安全及び産業衛生,並びに労働条件(特に労働時間及び報酬)に影響を及

ぼすあらゆる方針又は慣行が含まれる。労働慣行には,労働者組織の承認,並びに雇用に関する社会的課

題に取り組むための団体交渉,社会対話及び三者協議(

ボックス 参照)への,労働者及び雇用主の両組

織の代表者選出及び参加も含まれる。

ボックス 8  −  国際労働機関 

国際労働機関(ILO)は,国際労働基準を設定する目的で設立された三者構成(政府,労働者,雇用主)

をもつ国連機関である。この最低限度の基準は,労働における普遍的な基本原則及び権利を規定した法律

文書であり,あらゆる種類の組織で働いている,あらゆる場所での労働者に適用され,かつ,搾取及び悪

弊による不正競争を予防することを目的としている。ILO 基準は,政府,労働者,雇用主という三者構成

による世界的レベルでの交渉によって策定されており,この三者の投票によって採択されている。


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ILO

基準は,見直し手続,並びに ILO 基準の意味及びその適切な適用を解釈する公式の監督機構という

法的制度によって,常に更新されている。ILO 条約及び勧告,1998 年の労働における基本的原則及び権利

に関する ILO 宣言

[54]

,並びに 1977 年の ILO 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(2006 年

に最新の改定)

[74]

は,労働慣行,その他の重要な社会的課題に関して最も権威のある手引となっている。

ILO

は,男女が生産的なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を得る機会を促進す

ることを目指している。生産的なディーセント・ワークとは,ILO の定義では,自由,公平,安全及び人

間の尊厳が存在する状況下で遂行される労働である。

6.4.1.2 

労働慣行と社会的責任 

雇用創出及び行った仕事に対して支払われる賃金,その他の報酬は,組織が与える最も重要な経済的及

び社会的貢献である。有意義かつ生産的な労働は,人材育成における必要不可欠な要素である。生活水準

は完全かつ安定した雇用を通じて改善される。

その欠如は社会問題の主な原因の一つである。

労働慣行は,

法の支配の尊重及び社会に存在する公正意識に大きな影響を及ぼす。社会的に責任のある労働慣行は,社

会の正義,安定及び平和に必要不可欠だからである

[67]

6.4.2 

原則及び考慮点 

6.4.2.1 

原則 

労働は商品ではない,という基本的原則が ILO の 1944 年フィラデルフィア宣言

[72]

でうた(謳)われた。

つまり,労働者を生産の要素としたり,商品に適用する場合と同様の市場原理の支配下にあるものとして

扱ったりすべきでないということである。労働者固有のぜい(脆)弱性及び労働者の基本的権利を保護す

る必要性は,世界人権宣言並びに経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約に反映されている

[144][156]

関連する原則には,全ての人が自由に選択した労働によって生活の糧を得る権利,及び公正かつ好ましい

労働条件を得る権利を含む。

6.4.2.2 

考慮点 

ILO

が労働における基本的権利を構成するものとして認識している人権については,6.3.10 で取り上げ

ている。その他多くの ILO の条約及び勧告は,世界人権宣言,及び

ボックス に記載したその二つの規約

条項の様々な規定を補足し,裏付けるものであり,かつ,多様な人権の意味を解説する実質的な手引の情

報源としても利用できる。

労働者のために公正かつ公平な処遇を確実にする主たる責任は,政府にある。これは次によって達成さ

れる。

−  世界人権宣言及び関連する ILO の労働基準との整合性がとれた法律を採択する。

−  国内労働監督制度の整備,当該制度への資金提供などによって,その法律を施行する。

−  労働者及び組織が司法に対する必要なアクセス手段をもつことを確実にする。

労働法及び慣行は,国によって異なるだろう。

政府がそれらの法を制定できていない場合,組織は,これらの国際文書の基礎となっている原則を順守

すべきである。その国内法が適切である場合,たとえ政府による施行が不適切であっても,組織は,その

国内法を順守すべきである。

政府の国家機関としての役割と雇用主としての役割とを区別することが重要である。政府機関又は国営

組織は,その労働慣行に対して,他の組織が負う責任と同じ責任を負う。


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6.4.3 

労働慣行に関する課題 1:雇用及び雇用関係 

6.4.3.1 

課題の説明 

人材育成のための雇用の重要性は普遍的に認められている。雇用主として,組織は,社会で最も広範囲

に認められた目的の一つ,すなわち完全かつ安定した雇用及びディーセント・ワーク(働きがいのある人

間らしい仕事)を通じた生活水準の改善に貢献する。

全ての国は,労使間の関係を調整する法的枠組みを提供する。雇用関係の存在の有無を判断するための

細かな検査及び基準は国によって異なるが,契約当事者の力は平等ではなく,したがって,従業員が更な

る保護を必要とする事実は普遍的に認められており,労働法の基礎となっている。

雇用関係は,組織及び社会両方の利益のために,雇用主及び従業員の両方に対し,権利を与え,義務を

課す。

全ての労働が雇用関係の範囲内で行われるというわけではない。労働及びサービスは自営の男女によっ

ても行われる。このような場合,契約当事者はお互いに独立しているとみなされ,より平等で,より営利

性が強い関係となる。雇用関係と取引関係との違いは必ずしも明確ではなく,誤った認識をすることもあ

るため,労働者は当然受ける権利がある保護及び権利を必ずしも受けているわけではない。社会及び労働

を履行している個人の両方が,適切な法的及び制度的枠組みを認識し適用することが重要である。雇用契

約又は商業契約のいずれの下での労働にかかわらず,

全ての契約当事者は,

自身の権利及び責任を理解し,

契約条件が尊重されない場合には,適切に償還請求する権利をもつ

[56]

この文脈において,労働は,報酬の対価として行われる作業と理解されており,純粋なボランティアに

よって行われる活動は含まない。しかし,ボランティアが関与する場合には,組織は,自らの賠償責任及

び注意義務に対処するための方針及び措置を採用すべきである。

6.4.3.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を行うべきである。

−  行われる全ての労働が,従業員である又は自営であると法的に認められた男女によって履行されるこ

とを確実にする。

−  法の下では,雇用関係であると認められる関係を偽って,法が雇用主に課している義務を回避しよう

としない。

−  個々の労働者及び社会の両方にとって安定した雇用の重要性を認識する。有効な労働力計画を使用し,

場当たり的な労働力の使用又は臨時雇いの労働力の過度な使用を回避する。ただし,労働の性質が純

粋に短期的又は季節的なものである場合を除く。

−  雇用に影響を及ぼす閉鎖などの組織運営の変更を検討する場合,合理的な通知及び時宜にかなった情

報を与え,労働者代表が存在する場合は,共同で悪影響を可能な限り最小限に抑える方法を検討する

[107][108]

−  全ての労働者に平等の機会を確保し,あらゆる労働慣行において直接的又は間接的に差別しない。

−  恣意的又は差別的な解雇慣行があれば,それを排除する

[107][108]

−  労働者の個人データ及びプライバシーを保護する

[52]

−  法的に認められた組織,又は雇用主の責任を引き受け,ディーセントな(働きがいのある人間らしい)

労働条件を提供する意思がある組織とだけ,契約又は下請契約することを確保するための方策を講じ

る。組織は,法的に認められている労働仲介者だけを使用すべきであり,かつ,労働遂行のためのそ

れ以外の手配が労働遂行者に法的権利を与える場合に限定する

[95][96]

。在宅労働者は,その他の賃金労

働者より劣悪に取り扱わないようにすべきである

[68]


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:2012 (ISO 26000:2010)

−  在宅労働者を含め,提携先パートナー,供給者又は下請業者の不公正,搾取的又は虐待的な労働慣行

から利益を得ない。高水準の影響力を及ぼすためには往々にしてその影響力に見合う高水準の責任を

負うということを認識しつつ,組織は,自らの影響力の範囲内において諸組織に対し,責任ある労働

慣行に従うよう奨励するために,相応の努力をすべきである。状況及び影響力に応じて,相応の努力

には,

供給者及び下請業者に対して契約上の義務を生じさせる,予告なしの訪問及び立入検査を行う,

並びに請負人及び仲介人の監督においてデューディリジェンスを用いることを含む。供給者及び下請

業者が労働慣行の規範に準拠することを期待されている場合,

規範は,

世界人権宣言及び関連する ILO

の労働基準の基礎となる原則と整合性がとれているべきである(影響力の範囲における責任に関する

追加的情報については,5.2.3 を参照)

−  国際的に活動している場合,受入国の国民の雇用,職業能力開発,昇進及び昇格を推進する努力をす

る。これには,実行可能な場合に現地の企業を通して調達及び流通を行うことを含む

[74]

6.4.4 

労働慣行に関する課題 2:労働条件及び社会的保護 

6.4.4.1 

課題の説明 

労働条件には,賃金,その他の形態の報酬,労働時間,休憩時間,休日,懲戒及び解雇慣行,母性保護,

並びに安全な飲料水,衛生設備,社員食堂,医療サービスの利用などの福利厚生に関わる課題が含まれる。

労働条件の多くは,国内の法規制,又は労働の受益者及び労働を行う者を法的に拘束する協定によって決

定する。雇用主は,労働条件の多くを決定する。

労働条件は,労働者及びその家族の生活の質,並びに経済的及び社会的発展に大きく影響を及ぼす。労

働条件の質について公正かつ適切な検討をすべきである。

社会的保護とは,業務上の負傷,病気,妊娠,親子関係,老齢,失業,障害又は財政的困難の場合にお

ける収入の減少又は喪失を軽減し,かつ,医療及び家族手当を供与するためのあらゆる法的保障,組織の

方針及び慣行を指す。社会的保護は,人間の尊厳を守り公正及び社会正義の意識を確立する上で重要な役

割を果たす。一般的に,社会的保護の主たる責任は,国家にある。

6.4.4.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を行うべきである。

−  労働条件が国内の法規制に従っており,関連する国際労働基準と整合性がとれていることを確実にす

る。

−  労働協約などの,適用できる法的拘束力をもつその他の法律文書を通して制定される,より高度な水

準の規定を尊重する。

−  特に国内の法律がまだ採用されていない場合,少なくとも ILO の国際労働基準で定義された最低限度

の規定に従う。

−  賃金

[83][84][97][98]

,労働時間

[61][65][66][85][86][102]

,週休,休日

[63][64][109][110][111]

,安全衛生,母性保護

[76][77][106]

び業務上の責任と家族的責任を両立する能力

[114][115]

に関してディーセントな(働きがいのある人間ら

しい)労働条件を与える。

−  可能な限り,国の又は宗教的な伝統及び慣習を守ることを許可する。

−  全ての労働者に,最大限可能な限り,ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が取れる労働

条件,及び関係する地域における類似の雇用主から与えられる条件と同等の労働条件を与える

[74]

−  国内の法規制又は労働協約に従って,賃金,その他の形態の報酬を与える。組織は,少なくとも労働

者及びその家族の必要のため十分な賃金を支払うべきである。その場合は,その国の賃金,生計,社

会保障給付の一般的なレベル及び他の社会集団の関連生活水準を考慮に入れるべきである。経済的発


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

展の要件,生産性のレベル,並びに高いレベルの雇用を達成及び維持することの望ましさ,といった

経済的な要素をも考慮に入れるべきである。これらの考慮事項を反映させた賃金及び労働条件を決定

するときには,労働者が希望する場合は,団体交渉の国内制度に従い,組織は,労働者又はその代表

者,とりわけ,労働組合と団体交渉を行うべきである

[74][103]

−  同一価値の労働に対して同一の賃金を支払う

[57][58]

−  法規制又は労働協約で許可された規制,又は控除だけに従い,関係する労働者に対して直接賃金を支

払う

[97][98][99]

−  組織が活動している国における労働者の社会的保護の規定に関する義務を順守する

[74]

−  法規制又は労働協約で設定される,

所定の又は同意した労働時間を順守する労働者の権利を尊重する。

また,労働者に週休及び年次有給休暇も与えるべきである

[63][64][109][110]

−  妥当な労働時間,育児休暇,及び可能な場合,労働者が適切なワーク・ライフ・バランスを達成する

ことができるよう支援する保育施設,その他の施設を提供することによって,家庭における労働者の

責任を尊重する。

−  労働者に対し,法規制又は労働協約に従って時間外労働の報酬を与える。労働者に時間外労働を要請

する場合,組織は,関係労働者の利害,安全及び福祉,並びに労働に内在するあらゆる危険を考慮に

入れるべきである。組織は,強制的な無償時間外労働を禁止する法規制を守り

[83][84][97][98][99]

,強制労働

に関する労働者の基本的人権を常に尊重すべきである

[60]

6.4.5 

労働慣行に関する課題 3:社会対話 

6.4.5.1 

課題の説明 

社会対話には,経済問題及び社会問題に関わる共通の利害のある事項に関する,政府,雇用主及び労働

者の代表者間で行われるあらゆる種類の交渉,協議又は情報交換を含む。社会対話は,雇用主と労働者代

表者との間で双方の利害に影響を与える事項について行われる可能性がある。また,法律及び社会的政策

のようなより広範な要素が関わる場合,政府をも含める可能性がある。

社会対話は,独立した当事者を必要とする。国内の法規制又は労働協約に従い,労働組合員又は関連の

労働者のいずれかによって労働者代表が自由に選出されるべきである。労働者代表を政府又は雇用主が指

定すべきでない。組織レベルでは,社会対話は,情報及び協議の仕組み[例えば,ワーカーズカウンセル

(労使協議会)

,団体交渉など,様々な形態をとる。労働組合及び使用者団体は,それぞれの選ばれた代

表として,社会対話において特に重要な役割を果たす。

社会対話は,雇用主及び労働者は競合する利害と共通する利害の両方をもつという認識に基づき,多く

の国の労使関係,政策立案及び統治に重大な役割を果たしている。

効果的な社会対話は,雇用主及び労働者双方の優先事項及びニーズを考慮に入れた方針策定及び問題解

決のための仕組みを提供し,その結果,組織及び社会の両方にとって有意義で長く持続する結果を導く。

社会対話は,職場における参加及び民主主義の原則を確立し,その組織及びその組織の作業に携わる人々

が互いに対する理解を深め,健全な労使関係の構築に貢献することができ,故に費用のかかる労働争議に

訴えることを最小限に抑える。社会対話は,効果的に変更を管理する手段である。社会対話は,人材育成

に貢献し,生産性を強化する技能開発プログラムの設計のために,又は組織の運営変更による社会的な悪

影響を最小限に抑えるために利用できる。社会対話は,下請業者の社会的状況の透明性をも含む可能性が

ある。

社会対話は,様々な形態をとることがあり,様々なレベルで成し得る。労働者は,より広範な職種内グ

ループ,職種間グループ又は地域グループを形成してもよい。雇用主及び労働者は,最適レベルの社会対


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話を合同で決定し得る最も有利な立場にいる。その一つの方法は,国内法又は慣行に従って地域の組織レ

ベルの協定で補完された枠組み協定を採択することである。

社会対話は,ときに論争的な事項を取り扱うかもしれず,その場合,当事者は紛争解決プロセスを構築

することができる。また,社会対話は,特に労働における基本的原則及び権利が適切に保護されていない

国においては,苦情に関係する可能性もあり,苦情対応の仕組みが重要となる。このような苦情対応の仕

組みは,下請け労働者にも適用されるかもしれない。

国際的な社会対話は拡大する傾向にあり,これには,国際的に活動する組織と国際労働組合組織との地

域的及び国際的な対話及び協定が含まれる。

6.4.5.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を行うべきである

[53][59][113]

−  組織にとって国際レベルを含めた社会対話機関及び適用される団体交渉の構造が重要であることを認

める。

−  自らの利害を改善したり,又は団体交渉するために,自らの組織を結成し,参加する労働者の権利を

常に尊重する。

−  自らの組織を結成する又はそれに参加する,また,団体交渉を行おうとする労働者を,例えば,報復

行為として解雇若しくは差別することで,又は直接的若しくは間接的に脅迫して,威嚇若しくは恐怖

の雰囲気を醸すなどの方法で,妨害しない。

−  組織運営の変更が雇用に大きな影響を及ぼす可能性のある場合は,悪影響を可能な限り最小限に抑え

るために,組織運営の変更と雇用への影響との関係が合同で調査されるよう,適切な政府当局及び労

働者代表に対して妥当な通知を行う。

−  可能な限り,及び合理的で,かつ妨害的なものでない限り,正式に指定された労働者代表に,権限を

もつ意思決定者へのアクセス,職場へのアクセス,代表者が代表している労働者らへのアクセス,代

表者がその役割を果たすために必要な施設へのアクセス,並びに代表者がその組織の財政及び活動に

関して正確で公正な状況を把握することを可能にする情報へのアクセスを与える。

−  国際的に認められている結社の自由及び団体交渉の権利の行使を制限するよう政府に働きかけないよ

うにする。例えば,組織は,国内法が結社の自由の権利を認めているにもかかわらず,その権利が制

限又は禁止されている産業特区に支配下にある組織を設置したり,そのような地域に所在する企業か

ら調達したりすることを避けるべきであり,また,このような規制に基づく奨励制度への関与を慎む

べきである。

組織は,適宜,関連する使用者団体への参加を社会対話の機会を生み出す手段として,また,そのよう

な窓口を介して社会的責任に対する自らの表現方法を拡大する手段として,検討してもよい。

6.4.6 

労働慣行に関する課題 4:労働における安全衛生 

6.4.6.1 

課題の説明 

労働における安全衛生は,労働者の高次な身体的,精神的及び社会的福祉を促進し維持すること,並び

に労働条件によって生じる健康被害を防止することに関係する。また,健康への害を及ぼすリスクから労

働者を保護すること,並びに職場環境を労働者の生理的及び精神的要求に適応させることにも関係する。

業務上の疾病,傷害及び死亡によって社会が負う経済的及び社会的負担は大きい。労働者にとって有害

である偶発的及び慢性的な汚染,その他の職場災害は,コミュニティ及び環境に対しても影響を及ぼすか

もしれない(環境災害に関する詳細は,6.5 を参照)

。安全衛生の問題は,危険な設備,プロセス,慣行及


44

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

び(化学的,物理的及び生物的)物質から発生する。

6.4.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を行うべきである

[50][51][70][72][86][87][88][89][90][99][100][101][103][104][105][112]

−  優れた安全衛生基準及び組織のパフォーマンスは互いに補完し補強し合うものであるという原則に基

づく業務上の安全衛生に関わる方針を策定し,実施し,維持する。

−  除去,置換,技術管理,運営管理,作業手順,個人保護具などの管理階層を含めた安全衛生管理の原

則を理解し,適用する。

−  自らの組織の活動に伴う安全衛生リスクを分析し,管理する。

−  労働者は常にあらゆる安全慣行に従うべきであるという要件を伝え,労働者が適切な手順に確実に従

うようにする。

−  個人保護具を含め,業務上の傷害,疾病及び不慮の事故の防止,並びに非常事態の対応に必要な安全

用具を提供する。

−  あらゆる安全衛生の偶発事象及び問題を最少化又は除去するために,それらの偶発事象及び問題を記

録し,調査する。

−  (妊娠中,最近出産した,授乳中などの)女性,男性,又は障害のある人々,未熟練労働者,若年層

労働者など特定の状況にいる労働者が,様々に異なる労働安全衛生(OSH)上のリスクの影響を受け

る,そのような特定の状態に対処する。

−  パートタイマー,臨時雇い及び下請業の労働者に平等な安全衛生保護策を提供する。

−  ストレス及び疾病を引き起こす原因となる職場の心理社会的な災害の除去に努める。

−  全ての職員に対し,関連性のある全ての事項に関わる適切な訓練を提供する。

−  職場の安全衛生対策について労働者が金銭的な支出を行うべきでない旨の原則を尊重する。

−  関係する労働者による関与を組織の安全衛生環境システムの基礎とし(

ボックス 参照),労働者の次

の権利を認識し尊重する。

−  安全衛生リスク及びこれらのリスクに対処するために用いられる最良実施例に関係する完全かつ正

確な情報が適時に得られる。

−  自らの労働に関連する安全衛生の全ての側面において自由に問い合わせし,相談が受けられる。

−  労働者の生命若しくは健康,又は他の人々の生命及び健康に,緊急又は深刻な危険を呈すると合理

的に考えられる労働を拒否する。

−  労使団体,その他の専門家の外部の助言を求める。

−  安全衛生問題を関係当局に報告する。

−  偶発事象,事故の調査などの,安全衛生に関わる決定及び活動に関与する。

−  上記いずれかの行為を行うことによる,報復の脅威がない

[18][19][36][38][55][56][57][58][68][69][72][73][80]

ボックス 9  −  労使合同安全衛生委員会 

効果的な労働安全衛生プログラムは,労働者の関与に左右される。労使合同安全衛生委員会は,組織の

安全衛生プログラムの最も価値のある存在になり得る。同委員会は次の事項を行うことができる。

−  情報の収集

−  安全マニュアル及び訓練プログラムの策定及び普及

−  事故の報告,記録及び調査


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  労働者又は経営層が引き起こした問題の検査及び対応

このような委員会の労働者代表は,経営層によって任命されるべきでなく,労働者自身によって選出さ

れるべきである。こうした委員会のメンバーシップは,経営層と労働者代表との間で等分に配分されるべ

きであり,可能な限り男女を含むべきである。委員会は,その組織のあらゆるシフト,部門及び配置を代

表するのに十分な規模であるべきである。委員会は,ワーカーズカウンセル(労使協議会)又は労働者組

織の代わりとして機能すると考えるべきではない。

6.4.7 

労働慣行に関する課題 5:職場における人材育成及び訓練 

6.4.7.1 

課題の説明 

人材育成には,人間の能力及び職務能力を拡大することによって人々の選択範囲を広め,これによって

男女が長く健康的な人生を送り,知識をもち,適切な生活水準を維持することを可能にするためのプロセ

スを含む。人材育成は,創造的かつ生産的であるための,並びに自尊心,コミュニティへの帰属意識及び

社会への貢献意識を享受するための政治的,経済的及び社会的な利用機会も含む。

組織は,差別との戦い,家庭における責任のバランス,健康・福祉の推進,その従業員の多様化の推進

などの重要な社会問題に取り組むことで,職場の方針及びイニシアチブを利用して,人材育成を促進する

ことができる。組織は,個人の能力及び就業能力(エンプロイアビリティ)を高めるためにも,職場の方

針及びイニシアチブを利用できる。就業能力とは,ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕

事)を確保し維持するための個人の能力を高める経験,力量及び資格を指す。

6.4.7.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を行うべきである

[69][70][74][91][92][93][94]

−  労働経験を問わず,あらゆる労働者に対し,平等に差別なく,技能開発,訓練及び実習を利用する機

会,並びにキャリアアップする機会を与える。

−  必要に応じて,余剰とされた労働者が,新たな雇用,訓練及び相談のための支援を利用する機会を確

実に得られるようにする。

−  健康及び福祉を推進する労使合同プログラムを確立する。

6.5 

環境 

6.5.1 

環境の概要 

6.5.1.1 

組織と環境 

組織が行う決定及び活動は,その組織の所在地を問わず常に環境に影響を与える。それらの影響は,そ

の組織による資源の利用,その組織の活動の実施場所,汚染及び廃棄物の発生,並びにその組織の活動が

自然生息地へ及ぼす影響に関連するかもしれない。そのような環境影響を軽減するため,組織は,自らの

決定及び活動が経済,社会,健康及び環境に与える直接的及び間接的な関係を考慮した統合的な手法を導

入すべきである。

6.5.1.2 

環境と社会的責任 

社会は,天然資源の枯渇,汚染,気候変動,生息地の破壊,種の減少,生態系全体の崩壊,都市部及び

地方の人間居住の悪化など,多くの環境問題に直面している。世界人口及び消費の増加に伴い,そのよう

な変化が人間の安全保障並びに社会の健康及び福祉に対する脅威として拡大している。生産及び消費に関

して持続不可能なボリューム及びパターンを軽減し排除するための選択肢を特定し,一人当たりの資源消

費量を確実に持続可能なものとする必要がある。環境問題は,局地的,地域的及び世界的なレベルで相互


46

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

に結び付いている。それらに取り組むためには,包括的で,系統的で,かつ全体的な手法が必要である。

環境に関する責任は,人類の存続及び繁栄のための前提条件である。したがって,環境責任は,社会的

責任の重要な側面である。

環境問題は他の社会的責任に関する中核主題及び課題と密接に結び付いている。

環境教育及び能力開発は,持続可能な社会,及びライフスタイルの発展を推進する上での基礎である。

JIS Q 14000

ファミリー及び ISO 14000 ファミリーの規格

[7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26]

[27][28][29][30][31][32][33]

などの関連する技術的ツールは,体系的な方法で環境問題に取り組む組織を支援する包

括的な枠組みとして利用できる。このような技術的ツールは,環境パフォーマンス評価,温室効果ガス排

出量の定量化及び報告,並びにライフサイクルアセスメント,環境適合設計,環境ラベル及び環境コミュ

ニケーションにおいて,考慮すべきである。

6.5.2 

原則及び考慮点 

6.5.2.1 

原則 

組織は,次の環境原則を尊重し,促進すべきである。

環境責任  法規制の順守に加えて,組織は,地方又は都市部,及びより広範囲な環境において行う自

らの活動が引き起こす環境影響に対して責任を負うべきである。組織は,生態学的限界を認識し,自

らのパフォーマンスの改善に加えて,自らの影響力の範囲で,他者のパフォーマンスの改善を行うべ

きである。

予防的アプローチ  環境と開発に関するリオ宣言

[158]

,並びにその後の宣言及び合意

[130][145][172]

に基づ

く。これらの宣言及び合意は,環境又は人間の健康に対する重大な害又は不可逆的な害が生じるおそ

れがある場合,十分な科学的確実性がないことを理由にして環境劣化又は健康被害を予防する費用効

果の高い対策を先延ばしにすべきでないとする考え方を前進させたものである。組織がある対策の費

用効果を考える場合には,その組織にとっての短期的な経済費用だけでなく,その対策の長期的な費

用便益を考えるべきである。

環境リスクマネジメント  組織は,リスク及び持続可能性の観点から,環境リスク及び自らの活動か

らの影響を評価し,回避し,軽減し,及び緩和するプログラムを実施すべきである。組織は,事故に

よる環境及び安全衛生上の影響負荷を軽減・緩和し,環境事故に関する情報を関係当局及び地域コミ

ュニティに伝えるため,啓発活動及び緊急時の対応手順を策定して実施すべきである。

汚染者負担  組織は,自らの活動によって汚染が発生した場合には,社会に対する環境影響の範囲及

び必要な救済措置,又は汚染が許容レベルを超えた程度,のいずれかに応じた汚染費用を負担すべき

である(リオ宣言の原則 16 を参照

[158]

。組織は,

“汚染者負担”の原則に基づき自らの影響を緩和す

ることに優先して,汚染費用を負担し,汚染防止の経済的及び環境的便益を数値化する努力をすべき

である。組織は,重大な環境事故の費用を負担する引当金などの経済的手法を他者と協力して推進す

ることを選択してもよい。

6.5.2.2 

考慮点 

組織は,その環境管理活動において,次に示す手法及び戦略の関連性を評価し,また,適宜それらを用

いるべきである。

ライフサイクルアプローチ  ライフサイクルアプローチの主な目的は,製品及びサービスの環境影響

を軽減し,また,原料搾取及びエネルギー生成に始まり,生産及びその使用を経て,耐用年数経過後

に廃棄又は回収されるまでのライフサイクル全体にわたる社会経済的パフォーマンスを改善すること

である。組織は,法令順守だけではなく,技術革新に注目すべきであり,自らの環境パフォーマンス

を継続的に改善することに専念すべきである。


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

環境影響評価  組織は,新たな活動又はプロジェクトを開始する前に環境影響を評価し,自らの評価

結果を意思決定プロセスの一部として使用すべきである。

クリーナープロダクション及び環境効率  これは,資源をより効率的に使用し,汚染及び廃棄物の発

生をより減少させることによって,人間のニーズを満たす戦略である。重要な点は,プロセス又は活

動の最後ではなく,最初から改善を行うことにある。クリーナープロダクション,より安全な生産及

び環境効率の手法には,メンテナンス慣行の改善,新しい技術又はプロセスへの改善又は導入,材料

及びエネルギー使用量の削減,再生可能エネルギーの使用,水利用の合理化,有毒及び有害物質,並

びに廃棄物の排除又は安全管理,製品及びサービスの設計改善が含まれる。

製品サービスシステムアプローチ  これは,製品の販売又は提供(すなわち,一回限りの販売又はリ

ース/レンタルを通じた所有権の移転)から,

(多様なサービス提供及び納品の仕組みによって)製品

及びサービスが相まって顧客のニーズを満たすことができるシステムの販売又は提供へと市場の相互

作用の焦点をシフトさせるために利用することができる。製品サービスシステムは,製品のリース,

製品のレンタル又は共有,製品の備蓄及び受益者負担によるサービスの提供を含むことがある。この

ようなシステムでは,材料の使用量を削減し,材料の流れから収益を切り離し,製品及び関連サービ

スのライフサイクルを通じて拡大生産者責任を促進する場合に,ステークホルダーを関与させること

ができる。

環境にやさしい技術及び慣行の採用  組織は,環境にやさしい技術及びサービスを採用し,適宜,そ

れらの開発及び普及を促進するよう努めるべきである(リオ宣言の原則 9 を参照

[158]

持続可能な調達  自らの購入の決定において,組織は,調達する製品又はサービスのライフサイクル

全体を通じた環境的,社会的及び倫理的側面のパフォーマンスを考慮に入れるべきである。可能な場

合,組織は,エコラベリング,監査活動などの,確実で効果的な,自主的に検証したラベリング制度,

その他の検証制度を利用し,影響を最小限に抑えた製品又はサービスを優先すべきである。

学習及び啓発  組織は,啓発し,適切な学習を促進し,組織内及び自らの影響力の範囲で環境に関わ

る取組みを支援すべきである。

6.5.3 

環境に関する課題 1:汚染の予防 

6.5.3.1 

課題の説明 

組織は,次に示す汚染防止措置によって,その環境パフォーマンスを改善することができる。

大気への排出  鉛,水銀,揮発性有機化合物(VOC),硫黄酸化物(SOx),窒素酸化物(NOx),ダ

イオキシン,粒子状物質,オゾン層破壊物質などの汚染物質の,組織による大気への排出は,個々人

に対してそれぞれ異なる影響をもつ環境上及び健康上の影響を与える可能性がある。こうした排出は,

組織の施設及び活動から直接行われるか,組織の製品及びサービスの使用若しくはこれらの製品及び

サービスの耐用年数経過後の処理,又は組織が消費するエネルギーを生成するときに,間接的に行わ

れるかもしれない。

排水  組織による直接的,意図的又は偶発的な水面への排出(海洋環境,意図的ではない地表水への

排出,地下水への浸透など)は,水汚染を引き起こすかもしれない。これらの排出は,組織の施設か

ら直接行われるか,組織の製品及びサービスの使用によって間接的に行われるかもしれない。

廃棄物管理  組織による管理が不適切な場合,その活動によって,大気,水,土地,土壌,及び外部

空間の汚染の原因となるかもしれない液体又は固体の廃棄物の発生につながるかもしれない。責任あ

る廃棄物管理とは,廃棄物の発生回避を目指すものである。この管理は,廃棄物削減の段階的手順,

すなわち設計段階での廃棄物の発生抑制,再使用,再資源化,再加工,廃棄物処理及び廃棄物処分に


48

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

従って行われる。廃棄物削減の段階的手順は,ライフサイクルアプローチに基づく柔軟な方法で用い

るべきである。放射性廃棄物などの有害廃棄物は適切で透明性のある方法で取り扱うべきである。

有毒及び有害化学物質の使用及び廃棄  (自然発生的及び人為的な)有毒で有害な化学物質を使用又

は生産している組織は,その排出又は放出の結果,生態系及び人の健康に急性的(緊急)又は慢性的

(長期的)な影響によって悪い影響を及ぼす可能性がある。これらは,年齢及び性別の異なる個々人

にそれぞれ異なる影響を与える可能性がある。

その他の特定可能な汚染  組織の活動,製品及びサービスは,コミュニティの健康及び福祉にマイナ

スの影響を及ぼし,個々人にそれぞれ異なる影響を与える可能性がある,他の形態の汚染を発生させ

るかもしれない。そのような汚染形態として,騒音,悪臭,視覚的印象,光害,振動,電磁波放射,

放射線,感染因子(例えば,ウイルス又は細菌)

,拡散又は分散された源泉からの排出及び生物学的危

害(例えば,侵入生物種)がある。

6.5.3.2 

関連する行動及び期待 

組織は,その活動による汚染の防止を強化するため,次の事項を実施すべきである。

−  自らの決定及び活動が周囲環境に及ぼす側面及び影響を特定する。

−  自らの活動に関連する汚染源及び廃棄物を特定する。

−  重大な汚染源及び汚染の軽減,水消費量,廃棄物生成,並びにエネルギー消費量に関して,測定,記

録及び報告を行う。

−  廃棄物管理の段階的手順を用い,汚染防止及び廃棄物防止を目指した対策を実施し,やむを得ない汚

染及び廃棄物の適切な管理を確実にする

[118]

−  現実の及び潜在的な汚染排出及び廃棄物,関連する健康リスク,並びに現実の及び考えられる汚染緩

和策に関して,地域コミュニティとともに取り組む。

−  特に環境に配慮した製品及びサービスを早急に取り入れる取組みを展開し促進することで,自らのコ

ントロール又は影響力内で,直接的及び間接的な汚染を段階的に削減し最小化する対策を実施する。

−  通常の業務で,また偶発的に,排出された有毒及び有害物質による既知の健康リスク,環境リスクな

どを含め,使用され排出された関連する重要な有毒及び有害物質の量及び種類を公開する。

−  次の使用を体系的に特定及び防止する。

−  国内法で定義されている禁止化学物質,又は国際条約に記載されている不要化学物質

−  可能な場合,学術団体,その他のステークホルダーが明確で合理的な根拠をもって懸念があると特

定した化学物質。また,組織は,組織によるこれらの化学物質の使用を自らの影響力の範囲で防止

するよう努力すべきである。回避すべき化学物質は,オゾン層破壊物質

[166]

,残留性有機汚染物質

POP

[172]

,ロッテルダム条約に記載されている化学物質

[173]

,有害な化学物質及び駆除剤(世界

保健機関による定義)

(たばこ製品からの煙への暴露を含む)発がん(癌)性若しくは突然変異原

性があると認められた化学物質,生殖に対して影響のある化学物質,内分泌かく乱性化学物質,又

は残留性,蓄積性,毒性を有する化学物質(PBT)若しくは高残留性・高生体蓄積性化学物質(vPvBs

を含むが,これらに限定されない。

−  環境的事故の予防・準備プログラムを実施し,施設内外での事故及び偶発事象を対象とし,労働者,

パートナー,当局,地域コミュニティ,その他関連性のあるステークホルダーも関与する緊急対策を

準備する。このようなプログラムには,とりわけ,危害特定・リスク評価,周知手順・回収手段,コ

ミュニケーションシステム,並びに一般への啓蒙及び情報を含めるべきである。


49

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:2012 (ISO 26000:2010)

6.5.4 

環境に関する課題 2:持続可能な資源の利用 

6.5.4.1 

課題の説明 

資源が将来にも利用可能であることを確実にするには,現在の生産及び消費のパターン及びボリューム

が地球の環境許容範囲内に収まるように変更する必要がある。再生可能資源の持続可能な利用とは,自然

による補填の速度を超えない範囲又は同等の範囲で資源を利用することを意味する。

再生不可能な資源

(化

石燃料,金属,鉱物など)の長期的な持続可能性を維持するには,再生可能な資源との代替が可能な速度

を超えない範囲で再生不可能な資源を利用する必要がある。組織は,電気,燃料,原料及び加工材料,並

びに土地及び水の利用に責任をもつことによって,また,例えば,革新的技術を使用して再生不可能な資

源を持続可能で再生可能な資源と組み合わせることによって,又は持続可能で再生可能な資源に代替する

ことによって,持続可能な資源を利用する方向へ進展することができる。効率性を改善するための四つの

重要な領域は,次のとおりである。

エネルギー効率  組織は,エネルギー効率プログラムを実施し,建物,輸送,生産プロセス,器具及

び電子機器,サービス提供,その他の目的における必要エネルギーを削減すべきである。エネルギー

利用効率の改善によって,太陽エネルギー,地熱エネルギー,水力発電,潮力・波力エネルギー,風

力及びバイオマスといった再生可能資源の持続可能な利用促進の取組みを補完すべきである。

水の保全,水の利用及び水へのアクセス  安全で信頼できる飲料水及び公衆衛生サービスへのアクセ

スは,人間の基本的ニーズであり基本的人権である。ミレニアム開発目標(

ボックス 13 参照)には,

安全な飲料水への持続可能なアクセスの提供が含まれている。組織は,自らの業務において水を保全

し,水の使用を低減し,再利用して,自らの影響力の範囲内で水の保全を促進すべきである。

材料の使用効率  組織は,材料効率プログラムを実施し,生産プロセスで使用される原材料,又は自

らの活動若しくはサービスの提供で利用する最終製品に使用される原材料による環境影響を軽減すべ

きである。材料効率プログラムは,組織の影響力の範囲で原材料の使用効率を改善する方法を特定す

ることに基礎を置いたものである。材料の使用は,例えば,採鉱及び林業による生態系への影響,並

びに材料の使用,輸送及び加工による排出への影響に関連し,直接又は間接を問わず,非常に多くの

環境影響をもたらす。

製品の資源所要量の最小限化  最終製品の使用中の資源所要量に配慮すべきである。

6.5.4.2 

関連する行動及び期待 

組織は,そのあらゆる活動に関して,次の事項を実施すべきである。

−  エネルギー源,水源,その他使用する資源の供給源を特定する。

−  エネルギー,水,その他資源の顕著な使用に関して,測定,記録及び報告を行う。

−  最良実施例の指標,その他のベンチマークを考慮し,エネルギー,水,その他資源の使用を削減する

ための資源効率に関する対策を実施する。

−  再生不可能な資源を,可能な場合,持続可能で,再生可能で,かつ影響の低い代替資源で補完し,又

はそうした代替資源に置換する。

−  可能な限り,再生材を使用し,水を再利用する。

−  流域内の全ての利用者にとって公正なアクセスが確実となるよう,水資源を管理する。

−  持続可能な調達を促進する。

−  拡大生産者責任の適用を検討する。

−  持続可能な消費を促進する。


50

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6.5.5 

環境に関する課題 3:気候変動の緩和及び気候変動への適応 

6.5.5.1 

課題の説明 

二酸化炭素(CO

2

,メタン(CH

4

,亜酸化窒素(N

2

O

)など,人間の活動による温室効果ガス(GHG

排出は,世界的な気候変動を引き起こす可能性のある原因の一つであり,それは自然環境及び人間環境に

重大な影響を及ぼすことが認識されている

[48]

。観察され予期される動向として,気温の上昇,降雨傾向の

変化,異常気象の頻繁な発生,海面上昇,水不足の悪化,生態系,農業及び漁場への変化などがある。気

候変動が臨界点を超えれば,

変化がより強烈に感じられるようになり,

対処することがより困難になるが,

気候変動がそのような臨界点を超えることが予想される。

全ての組織は,

(間接的又は直接的に)GHG 排出に何らかの責任があり,気候変動による何らかの影響

を受けるだろう。つまり,GHG 排出の抑制(緩和)及び気候変動のための対策(適応)が,組織に求め

られている。気候変動への適応は,健康,繁栄及び人権への影響という形で社会的意味合いをもつ。

6.5.5.2 

関連する行動及び期待 

6.5.5.2.1 

気候変動の緩和 

組織は,気候変動によるその活動への影響の緩和のため,次の事項を実施すべきである。

−  直接的及び間接的な累積 GHG 排出源を特定し,自らの責任の境界線(範囲)を決定する。

−  国際的に合意された基準で規定されている方法をできる限り用いて,顕著な GHG 排出に関して,測

定,記録及び報告を行う

[47]

GHG 排出に関わるイニシアチブ及びツールの例については,

附属書 A

も参照)

−  自らのコントロールの範囲で,直接的及び間接的な GHG 排出を徐々に削減し最小化する最適な対策

を実施し,自らの影響力の範囲で同様の行動を促進する。

−  プログラムを実施して効率性及び有効性を改善するために,組織内で顕著に使用する燃料の量及び種

類を確認する

[146]

。低排出技術及び再生可能エネルギーの利用を考慮する場合でも,GHG 排出の純減

を確実にするために,ライフサイクルアプローチをとるべきである。

−  土地利用及び土地利用の変更,加工,又は(これに限定しないが)暖房,換気及び空調設備を含む装

置からの GHG 排出(特にオゾン層破壊も引き起こすもの)を,防止したり低減する。

−  組織内で,可能な限り,エネルギー効率の高い物品の購買,エネルギー効率の高い製品及びサービス

の開発などの,省エネルギーを実現する。

−  例えば,透明性をもって実施される信頼性の高い排出削減プログラム,炭素回収・貯留又は炭素固定

化を支持することなどによって,残留 GHG 排出を相殺するための対策を実施し,カーボンニュート

ラルを目指すことを検討する。

6.5.5.2.2 

気候変動への適応 

組織は,気候変動に対するぜい(脆)弱性を低下させるために,次の事項を実施すべきである。

−  将来の世界的及び局地的な気候予測を考慮してリスクを特定し,気候変動への適応を自らの意思決定

に統合する。

−  気候変動に関連する損害を回避したり最小限に抑える機会を特定し,可能な場合,状況の変化に適応

する機会を活用する(

ボックス 10 参照)。

−  既に確認された影響又は予想される影響への対策を実施し,自らの影響力の範囲内でステークホルダ

ーが適応するための能力開発に貢献する。


51

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

ボックス 10  −  気候変動への適応行動の例 

気候変動への適応行動の例は,次のとおりである。

−  気候変動と更に不確実な気候状況との関係,洪水,暴風,干ばつ,水不足,酷暑などの気候悪化に至

る可能性を考慮しつつ,土地利用,都市区画及びインフラの設計・維持を計画する。

−  飲料水,公衆衛生,食品及び人間の健康に極めて重要なその他の資源の安全を確保し,農業,産業,

医学,その他の様々な技術及び技法を開発し,それらを必要としている人々が入手できるようにする。

−  洪水に対するぜい(脆)弱性を低下させるための地域的な措置を支援する。これには,洪水制御の一

助となり得る湿地帯の復元,都市部での通水性に乏しい地表面の使用の削減などが含まれる。

−  教育,その他の手段を通じて,回復力のある社会への適応策及び予防策の重要性について意識を高め

るための広範な機会を提供する。

6.5.6 

環境に関する課題 4:環境保護,生物多様性,及び自然生息地の回復 

6.5.6.1 

課題の説明 

1960

年代以降,歴史上の他のどの期間よりも人間の行動は,より急速かつ広範に生態系を変化させた。

天然資源への急激な需要の高まりは,地球上の生息地及び生命の多様性に対し,甚大かつしばしば不可逆

的な損失をもたらした

[119]

。地方から都市部に至る広大な範囲が,人間の行動によって変化してきている。

組織は,環境を保護し,自然生息地及び生態系が提供する様々な機能及びサービス(食糧,水,気候調

整,土壌形成,レクリエーションの機会など)を回復するように行動することによって,社会に対してよ

り責任ある存在となることができる

[119]

。この課題の重要な側面には,次が含まれる。

生物多様性の評価及び保護  生物多様性は,全ての形態,レベル及び組合せにおける生命の多様性で

ある。これには,生態系多様性,種多様性及び遺伝子多様性を含む

[167]

。生物多様性の保護は,陸生種

及び水生種,遺伝的多様性,並びに自然生態系の存続を確実にすることを目指している

[168][169]

生態系サービスの評価,保護及び回復  生態系は,食糧,水,燃料,洪水制御,土壌,授粉媒介者,

天然繊維,レクリエーション,汚染及び廃棄物の吸収などのサービスを提供することによって,社会

の繁栄に貢献する。生態系がきずついたり破壊されると,これらのサービスを提供する能力は失われ

る。

土地及び天然資源の持続可能な使用  組織による土地利用プロジェクトは,生息地,水,土壌及び生

態系を保護したり悪化したりするかもしれない

[170][171]

環境にやさしい都市開発及び地方・村落開発の推進  組織の決定及び活動は,都市環境又は地方・村

落環境,及びそれに関連する生態系に重大な影響を与える可能性がある。このような影響には,例え

ば,都市計画,建築・建設,交通システム,廃棄物及び下水の管理,農業技術などが関連する可能性

がある。

6.5.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,その活動全般に関連して,次の事項を実施すべきである。

−  生物多様性及び生態系サービスに及ぼす潜在的悪影響を特定し,それらの影響を排除又は最小限に抑

える対策を講じる。

−  実現可能で適切な場合,自らの環境影響の費用を負担する市場の仕組みに参加し,生態系サービスを

保護することで,経済的価値を創出する。

−  自然生態系の喪失回避を最優先し,次に生態系の回復を優先し,最後に,上記の二つの行動が可能で


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

ない場合又は十分に効果的でない場合には,長期にわたり生態系サービスに純益をもたらすような行

動を通じて喪失を埋め合わせる。

−  社会的に公正な方法で保全及び持続可能な使用を推進するような,陸,水及び生態系の管理のための

統合戦略を策定し,実施する。

−  悪い影響を受けるかもしれない固有種,絶滅の危機にある種又は生息地を保存するための対策をとる。

−  農地開発及び都市開発に関連した決定を含め,土地利用に関する決定が引き起こし得る環境影響を最

小限に抑える手段として,計画,設計及び業務慣行を実施する。

−  自然生息地,湿地帯,森林,野生動物のための人工のう(迂)回路,保護地域及び農地の保護を,建

築・建設工事の開発に組み入れる

[128][169]

−  例えば,主要な規格及び認証制度で規定されているような,動物福祉に関連する側面を含めた持続可

能な農業,漁業及び林業慣行を採用する

[37][175]

−  持続可能な技術及びプロセスを利用している供給者からの製品の使用を段階的に拡大する。

−  野生動物及びその生息地が我々の自然生態系の一部であるため,それを評価し,保護し,動物福祉に

配慮すべきであるということを考慮する。

−  生存を脅かし,又は世界的,地域的若しくは局地的な種の絶滅につながる取組み,又は侵入生物種の

分布若しくは拡散を許すような取組みを回避する。

6.6 

公正な事業慣行 

6.6.1 

公正な事業慣行の概要 

6.6.1.1 

組織と公正な事業慣行 

公正な事業慣行は,組織が他の組織と取引を行う上での倫理的な行動に関係する事項である。このよう

な関係には,組織とそのパートナー,供給者,請負人,顧客,競合他社,及びその組織がメンバーとして

加わっている団体との関係だけでなく,組織と政府機関との関係も含まれる。

公正な事業慣行に関する問題は,汚職防止,公的領域への責任ある関与,公正な競争,社会的に責任あ

る行動,他の組織との関係,及び財産権の尊重の分野で生じる。

6.6.1.2 

公正な事業慣行と社会的責任 

社会的責任の分野において,公正な事業慣行は,組織がプラスの結果を出すために他の組織との関係を

どのように利用するかに関係する。

プラスの結果は,

組織の影響力の範囲全体でリーダーシップを発揮し,

また,社会的責任をより幅広く受け入れることによって実現することができる。

6.6.2 

原則及び考慮点 

組織間に合法的かつ生産的な関係を構築し維持するためには,倫理的に正しく行動することが不可欠で

ある。したがって,倫理的な行動の基準の順守,促進及び推奨は,全ての公正な事業慣行の基礎を成す。

汚職防止及び責任ある政治的関与は,法の支配の尊重,倫理的基準の順守,説明責任及び透明性にかかっ

ている。公正な競争及び財産権の尊重は,組織が互いに正直に,公平に,かつ誠実に取引を行わない限り,

不可能である。

6.6.3 

公正な事業慣行に関する課題 1:汚職防止 

6.6.3.1 

課題の説明 

汚職とは,

私的な利益を得るために与えられた権限を乱用することである。汚職は様々な形をとり得る。

汚職の例としては,公務員又は民間部門の人間を巻き込んだ贈収賄(現金又は現物による賄賂の要求,提

供又は受領)

,利益相反,詐欺行為,マネーロンダリング,横領,隠匿及び司法妨害,影響力を不当に行使

した取引などが挙げられる。


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:2012 (ISO 26000:2010)

汚職は,組織の有効性及び倫理的評価を損なう。また,組織が民事処分及び行政処分を下されたり,刑

事訴追されたりすることもあり得る。汚職は,人権侵害,政治的プロセスの崩壊,社会の貧困化及び環境

へ の害 を引き 起こ す可 能 性 があ る 。ま た , 競 争, 富 の 配 分 及び 経済 成長 をゆ がめ る可能 性も あ る

[41][44][45][46][120][121][131]

6.6.3.2 

関連する行動及び期待 

組織は,汚職を防止するため,次の事項を実施すべきである。

−  汚職のリスクを認識し,汚職及び強要を防止するための方針及び慣行を実施し,維持する。

−  トップが汚職防止の模範となり,汚職防止に関する方針の実施に関するコミットメントを表明し,こ

れを奨励し,監督するようにする。

−  自らの従業員及び代表が,贈収賄及び汚職の根絶に取り組む際に,これを後押しし,訓練を行うとと

もに,取組みの進展を促すための奨励策を提供する。

−  汚職及びその防止策について,自らの従業員,代表,請負人及び供給者の意識を高める。

−  自らの従業員及び代表の報酬が適切であり,かつ合法的な業務に対してだけ支払われていることを確

実にする。

−  汚職防止のための効果的なシステムを確立し,維持する。

−  報復を恐れることなく報告及びフォローアップ行動がとれるような仕組みを採用することによって,

自らの従業員,パートナー,代表及び供給者に対して,その組織の方針に対する違反,並びに非倫理

的処遇及び不公平な処遇を報告するよう促す。

−  刑法に抵触する行為については,適切な法執行機関に届け出る。

−  その組織が業務関係をもつ相手を促し,同様の汚職防止の慣行を導入させることによって,汚職の防

止に努める。

6.6.4 

公正な事業慣行に関する課題 2:責任ある政治的関与 

6.6.4.1 

課題の説明 

組織は,公的な政治プロセスを支援し,社会全体の利益になる公共政策の策定を促すことができる。組

織は,過度の影響力を行使することを禁じ,公的な政治プロセスを阻害する可能性のある不正操作,脅迫,

強制などの行動を避けるべきである。

6.6.4.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  責任ある政治的関与及び貢献,並びに利益相反への対処方法について,自らの従業員及び代表を教育

し,意識を高める。

−  ロビー活動,政治献金及び政治的関与に関連する方針及び活動に関して透明性をもつ。

−  その組織の代表として意見を述べることを職務として雇用される者の活動を管理するための方針及び

指針を定め,実施する。

−  特定の立場に有利になるように,政治家又は政策立案者を誘導することを目的とした政治献金,又は

政治家若しくは政策立案者に不当な影響力を及ぼすと認識される可能性のある政治献金を行わない。

−  誤った情報,不当表示,威嚇又は強制を伴う活動を禁止する。

6.6.5 

公正な事業慣行に関する課題 3:公正な競争 

6.6.5.1 

課題の説明 

公正かつ広範な競争は,イノベーションを促進し,効率を高め,製品及びサービスのコストを抑制し,

あらゆる組織に平等な機会を与えるとともに,新規の又は改良された製品又はプロセスの開発を促し,長


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:2012 (ISO 26000:2010)

期的に経済成長を促し,生活水準を高める。反競争的行為は,ステークホルダーが抱く組織への評価をき

ずつける危険性があり,また,法的な問題を生むかもしれない。組織が反競争的行為への関与を拒否すれ

ば,そうした行為が許されないような環境の構築に貢献することができる。そして,それは全ての者にと

って有益である。

反競争的行為は,様々な形で行われる。例えば,関係者が示し合わせて同じ製品又はサービスを同じ価

格で販売する価格協定,関係者が示し合わせて競争入札を操作する談合,競争相手を市場から追い出し競

争相手に不当な制裁を科す目的で,製品又はサービスを極めて安い価格で販売する略奪的価格形成などが

挙げられる。

6.6.5.2 

関連する行動及び期待 

組織は,公正な競争を促すため,次の事項を実施すべきである。

−  競争法規制に則したやり方で活動し,関係当局に協力する。

−  反競争的行為への関与又は加担を防止するための手続,その他の防止策を定める。

−  競争法の順守及び公正な競争の重要性について,従業員の意識を高める。

−  反トラスト及び反ダンピングの慣行,並びに競争を促す公共政策を支援する。

−  組織が活動する社会的背景に配慮し,貧困などの社会的状況を利用して競争上の優位性を不当に享受

することを避ける。

6.6.6 

公正な事業慣行に関する課題 4:バリューチェーンにおける社会的責任の推進 

6.6.6.1 

課題の説明 

組織は,自らの調達及び購入の意思決定を通じて,他の組織に影響力を及ぼすことができる。組織は,

バリューチェーンに沿ってリーダーシップ及び指導力を発揮することによって,社会的責任の原則及び慣

行の導入及び支援を促すことができる。

組織は,自らの調達及び購入に関する意思決定が他の組織にもたらす潜在的影響又は意図しない結果を

考慮し,マイナスの影響が及ばないように,又はマイナスの影響を最小限に抑えるように,しかるべき注

意を払うべきである。同時に,組織は,社会的に責任ある製品及びサービスの需要を喚起することができ

る。

これらの行動は,

法規制を実施し執行するという当局の役割に取って代わるものとみなすべきでない。

バリューチェーンに含まれる全ての組織が,関連する法規制を順守する責任,並びに自らが社会及び環

境に及ぼす影響に対する責任を負う。

6.6.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,そのバリューチェーンにおいて社会的責任を推進するため,次の事項を実施すべきである。

−  社会的責任に関する目的との整合性を高めるため,自らの購入,流通及び契約に関する方針及び慣行

に,倫理的基準,社会的基準,環境的基準及び男女の平等に関する基準,並びに安全衛生を統合する。

−  他の組織に対し,同様の方針を導入するよう促す。ただし,その過程で反競争的行為を行わない。

−  社会的責任に対するその組織のコミットメントについて妥協しないようにするため,関係をもつ相手

の組織について,適切なデューディリジェンス及びモニタリングを行う。

−  社会的に責任ある目的を達成するため,社会的責任の課題についての意識向上,並びに最良実施例及

び追加支援(例えば,技術支援,能力開発又はその他の資源)を含めた,SMO への支援提供を検討

する。

−  社会的責任の原則及び課題について,その組織が関係する組織の意識向上に積極的に参加する。

−  社会的に責任ある目的を達成するため,可能な限り,そのバリューチェーンにおける組織の能力を高

めるなど,バリューチェーン全体で社会的に責任ある慣行を実施することの費用及び便益を公正に,


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

かつ実践的に取り扱うよう促す。これには,公正な対価が支払われること,並びに適切な納期及び安

定した契約があることを確実にするなどの適切な購買慣行が含まれる。

6.6.7 

公正な事業慣行に関する課題 5:財産権の尊重 

6.6.7.1 

課題の説明 

財産を所有する権利は,世界人権宣言において認められた人権である。財産権は,物質的財産及び知的

財産の両方を包含し,土地所有権,その他の物的資産の所有権,著作権,特許,地理的表示,資金,道徳

的権利,その他権利を含む。同時に,財産権には,先住民族などの特別な集団がもつ伝統的知識,又は従

業員その他の者の知的財産といったより幅広い財産請求権への配慮も含むかもしれない。

財産権の認識は,創造性を高め,技術革新を促すばかりでなく,投資,並びに経済的及び物理的安全を

高める。

6.6.7.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  財産権及び伝統的知識の尊重を促す方針及び慣行を実施する。

−  財産の使用又は処分が可能な合法的所有権をもっていることを明確にするため,適切な調査を実施す

る。

−  支配的地位の乱用,偽造,著作権侵害など,財産権を侵害する活動に関与しない。

−  自らが取得又は使用する財産に対して,公正な対価を支払う。

−  自らの知的及び物的所有権を行使し保護するときに,社会の期待,人権,及び個人の基本的ニーズを

考慮する。

6.7 

消費者課題 

6.7.1 

消費者課題の概要 

6.7.1.1 

組織と消費者課題 

製品及びサービスを顧客及びその他の消費者に提供する組織は,それらの消費者及び顧客に対して責任

を負う。商業的な目的で購入する顧客に主として適用される課題については,6.6 で取り上げている。この

箇条では,主に,私的な目的で購入する者(消費者)に関する課題を取り扱う。ただし,6.6 及びこの箇条

の特定の部分は,顧客又は消費者のいずれか一方だけに当てはまる場合がある。

組織の責任には,教育及び正確な情報の提供,公正で,透明で,かつ有用なマーケティング情報及び契

約プロセスの使用,持続可能な消費の促進,並びにあらゆる人々にアクセスを提供し,適宜,社会的弱者

及び恵まれない人々に配慮した製品及びサービスを設計することが含まれる。消費者とは,その組織の意

思決定及び活動の成果を使用する個人又はグループを指し,必ずしも製品及びサービスに対して金銭を支

払う消費者を意味していない。同時に,組織の責任には,設計,製造,流通,情報提供,支援サービス,

並びに回収手続及びリコール手続を通じ,製品及びサービスの使用による危険性を最小限に抑えることも

含まれる。多くの組織は,個人情報の収集又は処理を行っており,係る情報の安全及び消費者のプライバ

シーを保護する責任を負っている。

この箇条の原則は,消費者に便益を提供するという役割をもつ全ての組織に適用されるが,組織の種類

(民間組織,公益団体,地域の福祉機関,その他の種類)及び状況によって,課題の関連性は全く異なる

かもしれない。組織は,製品及びサービスの提供,並びに使用,修理及び廃棄に関する情報提供を通じて,

持続可能な消費及び持続可能な発展に貢献する重要な機会を与えられている。

6.7.1.2 

消費者課題と社会的責任 

社会的責任に関する消費者課題は,特に公正なマーケティング慣行,安全衛生の確保,持続可能な消費,


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

紛争解決及び救済,データ及びプライバシーの保護,主要な製品及びサービスへのアクセス,弱い立場に

ある消費者及び不利な立場にある消費者のニーズへの対応,並びに教育と関係している。国連消費者保護

ガイドライン

[155]

には,消費者課題及び持続可能な消費に関する基本情報が示されている(

ボックス 11 

照)

ボックス 11  −  国連消費者保護ガイドライン 

国連消費者保護ガイドラインは,消費者保護の領域における最も重要な国際文書である。国連総会は,

1985

年に全会一致でこの文書を採択した。1999 年にガイドラインは拡充され,持続可能な消費に関する条

項が盛り込まれた。このガイドラインは,国家に対し,安全衛生に対する危険から消費者を保護する,消

費者の経済的利益を保護し推進する,消費者が情報を得た上で選択を行えるようにする,消費者教育を提

供する,効果的な消費者救済を提供する,持続可能な消費パターンを推進する,及び消費者団体結成の自

由を保証することを求めている

[155]

消費者保護の原則は,国連ガイドライン本文全体にわたって詳述されている。消費者保護の原則は,一

般に“消費者の権利”と呼ばれる

[144]

6.7.2 

原則及び考慮点 

6.7.2.1 

原則 

国連消費者保護ガイドライン

[155]

,並びに経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約

[144]

は,生活

に必須なものの充足,十分な食料,衣服及び住宅を含む相当な生活水準,並びに生活状態の継続的改善及

び金融を含む必要不可欠な製品及びサービスの入手可能性に関して全ての人がもつ権利など,消費者の正

当な権利に関する社会的に責任ある慣行を導くべき原則を示している。これらには,正当で,公平で,か

つ持続可能な経済的及び社会的発展,並びに環境保護を推進する権利も含まれる。これらの正当な権利に

は,次のものがある。

安全の権利  消費者が安全な製品を入手する権利,並びに製造工程,製品及びサービスに起因する安

全衛生への危険から保護される権利

知らされる権利  消費者が各自の要望及びニーズに応じて選択することができるように,十分な情報

を入手する権利,及び不正な又は虚偽的な,広告又は表示から保護される権利

選択する権利  満足のいく品質であることが保証され,競争価格で提供される一連の製品及びサービ

スの中から選択できることを含め,消費者の経済的利益を促進し保護する権利

意見が聞き入れられる権利  消費者,その他の関連団体又は組織を設立する自由,特に政府の政策立

案及び実施,並びに製品及びサービスの開発において,これらの組織に影響を及ぼす意思決定の過程

で,自らの意見を表明する機会

救済される権利  特に,不当表示,粗悪品又は不満足なサービスの損害賠償を含め,正当な要求の公

正な解決という形で効果的な消費者救済を受けられる権利

教育を受ける権利  消費者の選択が及ぼす環境的,社会的及び経済的影響を含む消費者教育は,消費

者が,自らの権利及び責任並びにそれに基づく行動のあり方を認識しつつ,製品及びサービスに関し

て情報を得た上で独自の選択を行うことを可能にする。

健全な生活環境の権利  これは,現世代及び次世代の福祉が脅かされることのない環境である

[160]

。持

続可能な消費には,経済的,社会的,並びに環境的に持続可能な形で製品及びサービスに関する,現


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

世代及び次世代のニーズを充足することが含まれる。

追加原則には,次の事項が含まれる。

プライバシーの尊重  世界人権宣言第 12 条に基づく

[156]

。何人も,自己の私事,家族,家庭若しくは

通信に対して,ほしいままに干渉され,又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。また,

人は全て,このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。

予防的アプローチ  環境と開発に関するリオ宣言

[158]

,並びにその後の宣言及び合意

[130][145][172]

に基づ

く。これらの宣言及び合意は,環境又は人間の健康に対する重大な害又は不可逆的な害が生じるおそ

れがある場合,十分な科学的確実性がないことを理由にして環境劣化又は健康被害を予防する費用効

果の高い対策を先延ばしにすべきでないとする考え方を前進させたものである。組織がある対策の費

用効果を考える場合には,その組織にとっての短期的な経済費用だけでなく,その対策の長期的な費

用便益を考えるべきである。

男女の平等及び女性の社会的地位の向上  世界人権宣言及びミレニアム開発目標に基づく(ボックス

2

ボックス 及びボックス 13 を参照)。消費者課題を分析し,性別についての固定観念を断ち切るた

めのよりどころとなる追加的根拠(

ボックス 12 も参照)。

ユニバーサルデザインの推進  できる限りの範囲で,翻案又は特殊設計の必要性を伴うことなく,あ

らゆる人々が使用できる製品及び環境の設計。ユニバーサルデザインの七原則は,公平な使用への配

慮,使用における柔軟性の確保,簡単で明解な使用法の追求,あらゆる知覚による情報への配慮,事

故の防止及び誤作動への受容,身体的負担の軽減,並びに使いやすい使用空間及び条件の確保である

[40][134]

6.7.2.2 

考慮点 

生活に必須のものが満たされる権利を確保する基本的責任は国家にあるが,組織もまた,この権利の実

現に貢献することができる。特に,国家が人々の生活に必須のものを十分に満たせない地域においては,

組織の活動が人々の生活に必須のものを満たす能力に及ぼす影響に細心の注意を払うべきである。また,

組織は,生活に必須のものを満たす人々の能力を危険にさらすような行動を避けるべきである。

社会的弱者の能力はそれぞれ異なり,消費者としての社会的弱者(6.3.7.2 参照)には,対応すべき特別

なニーズがあり,ときには,特別に作られた製品及びサービスを必要とする可能性がある。社会的弱者が

特別なニーズをもつのは,自らの権利及び責任について不知であるからかもしれないし,又は自らの知識

に基づいて行動できないからかもしれない。また,社会的弱者は,製品又はサービスに付随する潜在的リ

スクに気付かず,又は潜在的リスクを評価できず,そのためにバランスのとれた判断ができないのかもし

れない。

6.7.3 

消費者課題 1:公正なマーケティング,事実に即した偏りのない情報,及び公正な契約慣行 

6.7.3.1 

課題の説明 

公正なマーケティング,事実に即した偏りのない情報,及び公正な契約慣行を通じて,消費者が理解で

きるよう製品及びサービスに関する情報が提供される。これによって,消費者は,情報を得た上で消費及

び購買に関する決定を下したり,異なる製品及びサービスの特徴を比較することができるようになる。公

正な契約プロセスの目的は,供給者及び消費者双方の正当な利益を保護し,当事者間の交渉力の不均衡を

克服することである。責任あるマーケティングを行うためには,ライフサイクル及びバリューチェーン全

体における社会的,経済的及び環境的影響に関する情報の提供が必要となるかもしれない。供給者によっ

て提供される製品及びサービスの詳細情報は,消費者が容易に入手できる唯一のデータである可能性があ


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:2012 (ISO 26000:2010)

るため,この情報は購買の意思決定において重要な役割を果たす。不公正,不完全,誤解を招く又は虚偽

的なマーケティング及び情報は,消費者のニーズを満たしていない製品及びサービスの購入という結果を

もたらし,資金,資源及び時間の浪費

[122][124]

につながる可能性があるだけでなく,消費者又は環境を害す

るかもしれない。また,消費者が誰を又は何を信頼してよいのか分からなくなるため,消費意欲の低下に

つながる可能性もある。これは,より持続可能な製品及びサービスに向けた市場の成長に悪い影響を及ぼ

す可能性がある。

6.7.3.2 

関連する行動及び期待 

組織は,消費者とコミュニケーションをとる場合に,次の事項を実施すべきである。

−  重大な情報の省略を含め,欺まん(瞞)的,虚偽的,詐欺的若しくは不公正,不明確,又は不明瞭な

慣行に関与しない。

−  消費者が十分な情報に基づいて選択できるようにするために,関連性のある情報をアクセスが容易で

比較が可能な透明な方法で共有することについて同意する。

−  宣伝及びマーケティングの内容を明確にする。

−  総価格及び税金,製品及びサービスの諸条件(及び使用に際して必要な附属品)

,並びに配送費を開示

する。消費者金融を提供する場合には,分割払いに必要な全費用,支払金額,支払回数及び支払期日

だけでなく,実質年率(APR)の詳細を提示する。

−  要求に応じて,根拠となる事実及び情報を提示することによって,要求又は主張を立証する。

−  性別,宗教,民族,障害又は個人的関係に関する定型化された観念を固定化させる文章,音声又は画

像を使用しない。

−  広告及びマーケティングを行う際には,児童を含む社会的弱者の最善の利益を第一に考え,社会的弱

者の利益を害する活動に関与しない。

−  販売地の公用言語又は販売地で一般に使用される言語で比較可能な,正確で理解しやすい情報を,適

用される規則に従って十分に提供する。こうした情報には,次のような内容が含まれる。

−  金融商品及び投資商品を含め,製品及びサービスに関連する全ての重要な情報。ライフサイクル全

体を考慮に入れることが理想である。

−  標準化された試験方法を用いて決定された製品及びサービスの重要な品質側面。可能な場合は,平

均的性能又は最良実施例と比較する。こうした情報の提供は,適切かつ実用的であり,更に消費者

の助けになる場合に限るべきである。

−  潜在的に有害な使用方法,有害物質,製品に含まれる又は製品のライフサイクルで製品によって放

出される有害化学物質などの,製品及びサービスの安全衛生に関する情報

−  製品及びサービスの入手に関する情報

−  インターネット販売,電子商取引,又は通信販売を含む国内又は海外向け遠隔販売の場合は,その

組織の所在地,現住所,電話番号,電子メールアドレスなどの情報

−  契約の場合には,

−  明確で読みやすく,理解しやすい言語で書かれた契約書を使用する。

−  不当な免責,価格及び条件を一方的に変更する権利,倒産リスクの消費者への転嫁,過度に長い契

約期間などの,不公正な契約条件を含まない契約書を使用し,不当な貸付利率などの略奪的融資慣

行を避ける。

−  価格,機能,諸条件,費用,契約期間及びキャンセル期間に関して,明確かつ十分な情報が記載さ

れた契約書を使用する。


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6.7.4 

消費者課題 2:消費者の安全衛生の保護 

6.7.4.1 

課題の説明 

消費者の安全衛生を守るためには,安全で,かつ使用時又は消費時に許容できない害を及ぼす危険性の

ない製品及びサービスを提供することが必要である。安全保護は,意図された用途及び予見される誤使用

の両方を対象にすべきである

[124][155]

。組立て及び保守を含めた安全な使用のための明確な取扱説明書も,

安全衛生を確保する上で重要である。

組織の評判は,その製品及びサービスが消費者の安全衛生に及ぼす影響によって直接左右されるかもし

れない。

安全に関する法的要求事項が整備されているか否かにかかわらず,製品及びサービスは安全であるべき

である。安全の確保には,危害又は危険を避けるための潜在的リスクの予測が含まれる。全てのリスクを

予測したり排除することは不可能なため,製品回収及びリコールのための仕組みを,安全保護策に盛り込

むべきである。

6.7.4.2 

関連する行動及び期待 

消費者の安全衛生を保護する際に,組織は,次のような行動をとり,潜在的な危険性を認識したり評価

する能力をもたないかもしれない社会的弱者に対して特別な注意を払うべきである(児童には特に注意を

払う。

。組織は,次の事項を実施すべきである。

−  通常の使用条件及び当然予想される使用条件の下で,

利用者及びその他の人,

それらの人たちの財産,

並びに環境にとって安全な製品及びサービスを提供する。

−  安全衛生のあらゆる側面に対処するため,安全衛生に関する法,規格,その他の仕様の妥当性を評価

する

[1][2][3][34][35]

。最低限の要求事項に適合する製品若しくはサービスによる事故の発生によって,又は

事故の頻度若しくは重大性を軽減できる製品若しくは製品設計によって示されるように,要求事項を

更に強化すれば保護が著しく改善されることについて確証がある場合,組織は,最低限の安全要求事

項以上のことをすべきである。

−  ある製品が予想しなかった危険性が市販開始後に現れた場合,重大な欠陥があった場合,又は誤解を

招く情報若しくは虚偽の情報を含む場合は,そのサービスを停止するか,又はまだ流通網にある全て

の製品を回収するのがよい。組織は,その製品を購入した人又はそのサービスを利用した人に周知す

るために適切な措置及びメディアを利用して製品をリコールし,消費者が被った損失を補償すべきで

ある。バリューチェーンにおいて,トレーサビリティを確保するための措置が適切かつ有用かもしれ

ない。

−  製品設計における危険性を最小限に抑えるために,

−  予想される利用者グループ,プロセス,製品又はサービスの使用目的及び当然予想される誤使用,

並びに製品又はサービスのあらゆる使用段階及び使用条件の下で生じる危険を明確化し,場合によ

っては特別に作られた製品及びサービスを社会的弱者に提供する。

−  特定された危険要因に起因して,

妊婦など特定された利用者又は接触グループへの危険性を予測し,

評価する。

−  本質的に安全な設計,保護装置,利用者への情報の順に優先順位を付け危険性を軽減する。

−  特に,

与えられた情報の処理に要する時間の点で,

消費者によってニーズ及び能力が異なっていたり,

能力が限られているため,それらに留意し,製品及びサービスに関する適切な情報開示のデザインを

確約する。

−  製品開発においては,発がん(癌)性,突然変異原性,生殖毒性をもつ物質,又は残留性・蓄積性の


60

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

物質を含む(ただし,これらに限定されない。

)有害な化学物質の使用を避ける。このような化学物質

を含む製品を販売する場合は,明確にラベル表示すべきである。

−  新しい物質,新しい技術又は生産方法の導入に先立ち,製品及びサービスが人体の健康に及ぼす危険

性の評価を適宜実施する。また,適宜,文書で消費者に公開できるようにする。

−  可能な限り,文書による情報のほかに,望ましくは国際的に合意された図記号を使用して,安全に関

する重要な情報を消費者に伝える。

−  消費者に製品の適切な使用方法を指示し,意図された用途又は通常予想可能な用途に付随する危険性

を消費者に警告する。

−  製品が消費者の手元にある間に,不適切な取扱い又は保管によって危険な状態にならないようにする

ための措置を講じる。

6.7.5 

消費者課題 3:持続可能な消費 

6.7.5.1 

課題の説明 

持続可能な消費とは,持続可能な発展に即した速度で,製品及び資源を消費することである。この概念

は,環境と開発に関するリオ宣言

[158]

の原則 8 で奨励されている。この原則には,国家は,全ての人々のた

めに持続可能な発展及び高い生活の質を達成するために,持続可能でない生産及び消費の様式を減らし取

り除くべきである,と記されている。持続可能な消費の概念には,動物の身体的健全性を尊重し,残酷な

行為を避けることによって,動物福祉に配慮することも含まれる

[175]

持続可能な消費における組織の役割は,その組織が提供する製品及びサービス,それらのライフサイク

ル及びバリューチェーン,並びに消費者に提供される情報の性質の中において見いだすことができる。

現在の消費速度は明らかに持続不可能であり,環境破壊及び資源枯渇を助長している。消費者は,選択

及び購買の意思決定の際に,正確な情報に基づいて倫理的,社会的,経済的及び環境的要因を考慮するこ

とを通じ,持続可能な発展において重要な役割を果たす。

6.7.5.2 

関連する行動及び期待 

組織は,持続可能な消費に寄与するため,次の事項を適宜実施すべきである。

−  効果的な教育を推進し,自らの製品及びサービスの選択が自らの福祉及び環境に与える影響を理解す

る能力を消費者に与える。消費パターンを変える方法及び必要な変化を起こす方法について実践的助

言を与えることができる。

−  ライフサイクル全体を考慮しながら,社会的,環境的に有益な製品及びサービスを消費者に提供し,

社会及び環境への悪影響を抑制するために次の事項を行う。

−  可能であれば,製品及びサービスが健康及び環境に与えるマイナスの影響を除去する,又は最小限

に抑える。また,有害性が低く効率性が高い代替製品及びサービスが存在する場合は,社会及び環

境への悪効果が小さい製品又はサービスを選択できるようにする。

−  簡単に使用したり,再利用したり,修理したり,再生利用することができるように製品及び包装を

設計する。また,可能であれば,再生利用サービス及び処理サービスを提供する。又はこのような

サービスについて助言する。

−  持続可能な発展に貢献できる供給者を優先する。

−  製品寿命の長い高品質の製品を手頃な価格で提供する。

−  バリューチェーンを考慮に入れた上で,その製品又はサービスの生産及び配送に関連する環境要因

及び社会要因について,資源効率に関する情報を適宜含め,科学的に信頼でき,一貫性があり,真

実であり,正確であり,比較可能であり,及び検証可能である情報を消費者に提供する

[12][13][14][15]


61

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  消費者に製品及びサービスに関する情報を提供する。このような情報には,性能,健康に及ぼす影

響,原産国,エネルギー効率(該当する場合)

,内容物又は原材料(適宜,遺伝子組換え生物及びナ

ノ粒子の使用に関する言及を含む。

,動物福祉に関連する側面(適宜,動物試験の使用を含む。

並びに製品及びその包装の安全な使用・保守・保管及び処分に関する情報が含まれる。

−  例えば,エコラベル,監査活動など,信頼できかつ効果的で,中立的に検証されたラベリング体系,

及びその他の検証体系を活用し,

製品及びサービスがもつ環境的にプラスの側面,エネルギー効率,

その他の社会的,環境的に有益な特性を伝える

[13][14][15]

6.7.6 

消費者課題 4:消費者に対するサービス,支援,並びに苦情及び紛争の解決 

6.7.6.1 

課題の説明 

消費者に対するサービス,支援,並びに苦情及び紛争の解決は,製品及びサービスが販売された後又は

提供された後で,消費者のニーズに対応するために組織が用いる仕組みである。こうした仕組みには,返

品,修理及び保守の提供のほか,適切な設置,補償及び使用に関する技術支援が含まれる。

欠陥又は故障によって,又は誤用の結果,満足のいく性能が得られない製品及びサービスは,消費者の

権利の侵害につながるだけでなく,資金,資源及び時間を浪費する結果を招くかもしれない。

製品及びサービスの提供者は,高品質の製品及びサービスを提供することによって,消費者の満足感を

高め,苦情を減らすことができる。製品及びサービスの提供者は,適切な使用方法,及び性能不良のため

の払戻し又は救済方法について,消費者に明確な助言を与えるべきである。また,製品及びサービスの提

供者は,利用者を対象とした調査を行うことによって,自らのアフターサービス,サポート及び紛争解決

手続の有効性をモニタリングすることもできる

[124][127]

6.7.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  遠隔販売で製品を入手した者を含む消費者に対し,所定の期間内に製品を返品するか又はその他の適

切な救済策を受けるかの選択肢を提供し,苦情防止策を講じる

[4]

−  苦情内容を見直し,苦情対応の慣行を改善する。

−  適宜,法によって保証される期間より長く,予想製品寿命に適した保証を提供する。

−  紛争解決及び救済の仕組みだけでなく,アフターサービス及びサポートの利用方法についても消費者

に明確に伝える

[5][6]

−  適切かつ効率的なサポートシステム及びアドバイスシステムを提供する。

−  適正な価格で,また利用可能な場所で保守及び修理を提供し,製品の補修部品の今後の入手可能性に

関する情報を手軽に入手できるようにする。

−  国家規格又は規格に基づき,消費者の費用負担がゼロ又は最小限に抑えられ,かつ,消費者が法的手

段を講じる権利を放棄する必要のない裁判外紛争処理,紛争解決及び救済手続を活用する

[5][6]

ボックス 12  −  消費者紛争解決 

JIS

の品質マネジメント規格ファミリーには,

(苦情発生の可能性を低減することを目的とした)顧客満

足規定,苦情対応,及び(組織内部で紛争を解決できない場合の)外部における紛争解決に関する三つの

指針規格がある。これら三つの規格は,総合的に,顧客からの苦情の防止及び苦情の取扱い,並びに紛争

解決のための体系的な手法を提供する。組織は,それぞれのニーズ及び状況に応じて,これらの中から一

つ又は複数の規格を使用することもできる。これらの規格に示された指針は,消費者を救済し,消費者に


62

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

意見が聞き入れられる機会を与えるという義務を組織が果たす上で役立つ。これら三つの規格は,次のと

おりである。

−  JIS Q 10001,品質マネジメント−顧客満足−組織における行動規範のための指針

[4]

。この規格は,組

織が効果的で公正かつ正確な行動規範を策定し,実施する上で役立つ。

−  JIS Q 10002,品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針

[5]

。この規格は,組

織がどのようにすれば自らの製品及びサービスに関する苦情に公正かつ効果的に対処できるかについ

ての指針を提供する。

−  JIS Q 10003,品質マネジメント−顧客満足−組織の外部における紛争解決のための指針

[6]

。この規格

は,組織が内部の苦情対応の仕組みで苦情を解決できなかった場合を取り扱っている。

6.7.7 

消費者課題 5:消費者データ保護及びプライバシー 

6.7.7.1 

課題の説明 

消費者データ保護及びプライバシーは,収集される情報の種類,並びに情報の取得,使用及び保護の方

法を限定することによって,消費者のプライバシー権を保護することを目的としている。大容量データベ

ースの拡充,並びに(金融取引を含む)電子通信及び遺伝子検査の利用増加に伴い,特に個人を特定でき

る 情報 に関し ,ど の よ う に し て 消 費 者 の プ ラ イ バ シ ー を 保 護で きる のか とい う問 題が 生 じ て い る

[36][123][124][125]

組織は,消費者データの取得,使用及び保護のための厳格なシステムの使用を通じて,自らの信頼性及

び消費者の信用の維持に寄与することができる。

6.7.7.2 

関連する行動及び期待 

個人データの収集及び処理によってプライバシーが侵害されないよう,組織は,次の事項を実施すべき

である。

−  収集する個人データを,製品及びサービスの提供に不可欠な情報,又は消費者が情報を与えられ,自

発的に同意した上で提供された情報に限定する。

−  サービス利用,又は特別価格の条件として,データの望ましくない利用への同意をマーケティング目

的で消費者に求めることは控える。

−  合法的かつ公正な手段だけを用いてデータを入手する。

−  個人データの収集前又は収集時にデータの収集目的を定める。

−  消費者が情報を与えられ,自発的に同意した場合,又は法によって義務付けられる場合を除き,個人

データを開示,公開,又はマーケティングを含めた所定の目的以外で使用しない。

−  法の定めに従い,その組織が自分に関するデータを保有しているか否かを検証する権利,及び係るデ

ータに異議を申し立てる権利を消費者に与える。異議申立てが認められた場合には,係るデータは,

適宜,消去したり,修正したり,完結したり,又は変更すべきである。

−  十分な安全保護策によって個人データを保護する。

−  個人データに関わる開発,慣行及び方針を明示して,個人データの存在,性質及び主な用途を速やか

に開示する方法を設ける。

−  組織内でデータ保護責任者(データ管理者という場合がある。

)の氏名及び通常の勤務場所を開示し,

上記の措置及び関連法を順守する責任をこの者に負わせる。

6.7.8 

消費者課題 6:必要不可欠なサービスへのアクセス 

6.7.8.1 

課題の説明 


63

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

生活に必須のものが満たされる権利の尊重を確保することは国家の責任だが,国家によってこの権利の

保護が確保されない場所又は状況も数多く存在する。たとえ医療など,生活に必須のものの充足が部分的

に保護されていたとしても,電気,ガス,水道,廃水処理,排水,下水,通信など,必要不可欠な公共サ

ービスを受ける権利が完全には保護されていないかもしれない。組織は,この権利の充足に貢献すること

ができる

[155]

6.7.8.2 

関連する行動及び期待 

必要不可欠なサービスを提供する組織は,次の事項を実施すべきである。

−  料金不払いに対し,

支払いを行うための合理的な時間をその消費者又は消費者の層に与えることなく,

必要不可欠なサービスを打ち切らない。支払いの有無にかかわらず,全ての消費者に不利益を与える

全面的サービス打切りという手段をとるべきでない。

−  価格及び料金の設定に当たっては,可能な限り,困窮者に助成を与えるような料金を提示する。

−  価格及び料金の設定に関する情報を提供し,透明な活動を行う。

−  サービス提供対象を拡大し,全ての消費者の層に対して差別なく同品質及び同レベルのサービスを提

供する。

−  供給の制限又は中断は,公平に管理し,いかなる消費者の層に対しても差別を行わない。

−  サービスの中断を避けるため,自らのシステムの保守及び改善を行う。

6.7.9 

消費者課題 7:教育及び意識向上 

6.7.9.1 

課題の説明 

教育及び意識向上を図る活動によって,消費者は,自らの権利及び責任を十分に知り,意識することが

できるようになる。それどころか,消費者は,積極的な役割を担い,そう(聡)明な購入の意思決定を下

し,責任をもって消費できるようになるものと思われる。低所得の消費者及び識字レベルの低い消費者を

含め,地方においても都市部においても不利な立場にある消費者に対しては,特に教育及び意識向上を図

る必要がある。組織と消費者との間に正式な契約がある場合,組織は,その消費者に適用される全ての権

利及び義務が十分に知らされているかどうかを検証すべきである。

消費者教育の目的は,知識を伝達するだけでなく,こうした知識に基づいて行動するための力を消費者

に与えることでもある。

製品及びサービスの評価,

並びに比較を行うための技能の開発もそれに含まれる。

また,消費に関する選択が,他者及び持続可能な発展に及ぼす影響について認識を深めることも目的の一

つである

[154]

。消費者が製品及びサービスの使用中に危害を受けた場合,組織は教育を行ったことを理由に

責任を回避することはできない。

6.7.9.2 

関連する行動及び期待 

組織は,消費者を教育する際に,適宜,次の事項に取り組むべきである。

−  製品ハザードを含む安全衛生

−  適切な法規制,救済を受ける方法,並びに消費者保護のための機関及び組織に関する情報

−  製品及びサービスのラベル表示,並びにマニュアル及び取扱説明書において提供される情報

−  質量及び寸法,価格,品質,信用状態,並びに必要不可欠なサービスが利用できることに関する情報

−  使用に付随する危険性及び必要な防止策に関する情報

−  金融商品及び金融サービス,並びに投資商品及び投資サービス

−  環境保護

−  材料,エネルギー及び水の効率的な利用

−  持続可能な消費


64

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  包装,廃棄物及び製品の適切な処分

6.8 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展 

6.8.1 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の概要 

今日,組織が自らの活動場所であるコミュニティと関係があることは,広く理解されている。こうした

関係は,コミュニティの発展への貢献を目的としたコミュニティへの参画を基礎とすべきである。コミュ

ニティへの参画は,単独での参画であっても,公共の利益の向上に向けた連携を通じた参画であっても,

市民社会の強化を後押しする。コミュニティ及びコミュニティの機関を尊重する姿勢で関与する組織は,

民主主義的で市民の立場に立った価値観を映し出しながら,こうした価値観を強化する。

この箇条で述べるコミュニティとは,組織の所在地に物理的に近接する,又は組織が影響を及ぼす地域

内にある住居集落,

その他の社会的集落を指す。

組織の影響を受ける地域及びコミュニティのメンバーは,

状況によって,また,特に組織の影響の大きさ及び影響の性質によって異なるだろう。ただし,一般的に

コミュニティという言葉は,例えば,特定の問題に関する“仮想の”コミュニティなど,特定の共通特性

をもつ人々の集団を意味するとも理解できる。

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展は,ともに持続可能な発展に不可欠な要素である。

コミュニティへの参画は,

組織の活動が及ぼす影響という面で関わりのあるステークホルダーを特定し,

ステークホルダーエンゲージメントを行うことだけにとどまらない。コミュニティの支援及びコミュニテ

ィとの関係構築もまた,コミュニティへの参画に含まれる。特に,コミュニティへの参画においては,コ

ミュニティの価値観を認めることが必要である。組織によるコミュニティへの参画は,その組織がそのコ

ミュニティの中の一つのステークホルダーであり,そのコミュニティと共通の利害を共有しているという

認識から生まれるべきである。

コミュニティの発展に対する組織の貢献は,そのコミュニティの福祉の向上を後押しすることができる。

コミュニティの発展とは,一般に,住民の生活の質を高めることである。コミュニティ開発は直線的なプ

ロセスではない。加えて,それは,ぶつかり合う多様な利害が存在するであろう長期的なプロセスである。

歴史的及び文化的特性が各コミュニティに独自性を与え,そのコミュニティの未来が抱く可能性に影響力

を及ぼしている。すなわち,コミュニティの発展は,社会的,政治的,経済的及び文化的特性によっても

たらされるものであり,そこに関わる社会的な力の特徴によって左右される。コミュニティのステークホ

ルダーは,

(ときに相反する)様々な利害をもつかもしれない。共通の目的としてコミュニティの福祉を増

進するためには,責任を分かち合うことが必要である。

組織が貢献できるコミュニティの発展の課題として,経済活動及び技術開発の拡大及び多様化を通じた

雇用創出が挙げられる。組織は同時に,地域の経済発展活動を通じた富及び所得の創出,教育プログラム

及び能力開発プログラムの拡大,文化及び芸術の普及及び保存,並びにコミュニティ医療サービスの提供

及び/又は推進といった社会的投資を通じても貢献することができる。コミュニティの発展には,コミュ

ニティ,そのコミュニティの集団及び全体的な討議の場の制度的強化,文化プログラム,社会プログラム

及び環境プログラム,並びに複数の機関が参加する地域のネットワークが含まれるかもしれない。

一般に,コミュニティの発展は,コミュニティの中の社会的な力が住民の参加を促す方向に強く働き,

全ての市民に差別なく平等な権利及び尊厳ある生活水準を求めたときに前進する。コミュニティ開発は,

現在の関係を考慮に入れ,権利の享受を妨げる障害を克服する,コミュニティ内部のプロセスである。コ

ミュニティの発展は,社会的に責任ある行動によって推進される。

コミュニティの発展に貢献する社会的投資は,組織とそのコミュニティとの関係を維持し促進すること

ができる。社会的投資は,組織の中核的な事業活動に関係しているかもしれないし,関係していないかも


65

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

しれない(6.8.9 参照)

この箇条で述べた行動の一部の側面は慈善活動と解釈できるが,

3.3.4 で論じたように)社会的責任を

組織に統合するという目的は,慈善活動だけで達成されるものではない。

6.8.2 

原則及び考慮点 

6.8.2.1 

原則 

箇条 で述べた社会的責任の原則に加え,次のような具体的原則がコミュニティへの参画及びコミュニ

ティの発展に適用される。組織は,次の事項を行うべきである。

−  コミュニティへの参画及びコミュニティの発展を目指す上で,自らがそのコミュニティの一員であり,

コミュニティと切り離された存在ではないと考える。

−  コミュニティの構成員が自らのコミュニティに関係する決定を下し,コミュニティのメンバー自らが

選択した方法で自らの資源及び機会を最大化する道を追求する権利を認め,その権利を尊重する。

−  コミュニティと交わるときには,例えば,文化,宗教,伝統,歴史など,そのコミュニティの特性を

認め,これを尊重する。

−  経験,資源及び活動を共有しながら連携して活動することの大切さを認識する。

6.8.2.2 

考慮点 

コペンハーゲン宣言

[157]

は,

“深刻な社会問題,特に貧困,失業及び社会的疎外に関する緊急の取組みの

必要性”を認めている。コペンハーゲン宣言及び行動計画は,貧困撲滅,完全に生産的で十分な報酬が与

えられ,自由に選択できる雇用という目標,及び社会的統合の推進を,開発の最重要目的とすることを国

際社会に誓った。

国連ミレニアム宣言には,もしそれが達成できたならば,世界の主な開発課題の解決に寄与するであろ

う目標が掲げられている(

ボックス 13 参照)。開発は基本的に公共政策によって主導され,けん(牽)引

されるべきであるが,開発プロセスはあらゆる組織の貢献に依存している,と国連ミレニアム宣言

[153]

は強

調している。コミュニティへの参画は,これらの目標の達成に地域レベルで貢献する。

環境と開発に関するリオ宣言

[158]

は,アジェンダ 21 を取り入れた。これは,人間活動が社会及び環境に

影響を及ぼす各分野において,組織が現地で実施できる総合的行動計画を策定するプロセスである。

ボックス 13  −  ミレニアム開発目標 

ミレニアム開発目標(MDGs

[153]

は,世界の主な開発課題に対応することを目的として 2015 年までに

達成すべき八つの目標である。MDGs は,ミレニアム宣言が掲げる行動及び目標から集められた。

八つの MDGs は,次のとおりである。

1.

極度の貧困及び飢餓を撲滅する。

2.

初等教育の完全普及を達成する。

3.

男女の平等及び女性の地位向上を推進する。

4.

乳幼児死亡率を低減させる。

5.

妊産婦の健康を改善する。

6.

HIV

/エイズ,マラリアその他の疾病を撲滅する。

7.

環境の持続可能性を確保する。

8.

開発のためのグローバル・パートナーシップを推進する。


66

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

MDGs

は,18 の定量的目標に分類される。さらに,これらの目標は,48 の指標によって測定される。

組織は,コミュニティと関わるとき,関連する公共政策の支援を検討すべきである。これは,発展の優

先順位に対する共通のビジョン及び共通の理解,並びにパートナーシップを通じて持続可能な発展が推進

されるという,望ましい結果を最大化する機会をもたらすかもしれない。

組織は,自らの利害を守り利益を追求するために協力活動に参加したり,他者と関わりをもったりする

ことが多い。しかし,こうした連携は,他の集団及び個人が同じ行動をとる権利を尊重することを建前と

してそのメンバーの利害を代弁すべきであり,常に法の支配及び民主主義的な手続の尊重を重視する形で

進められるべきである。

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の手法を決定する前に,組織は,そのコミュニティへの

自らの潜在的影響を調査した上で,マイナスの影響を緩和し,プラスの影響を最大化するための方法を計

画するべきである。

組織は,コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の計画を立案するとき,幅広いステークホルダ

ーと関わる機会を求めるべきである(4.55.3 及び箇条 を参照)

。さらに,社会的弱者,社会的に取り残

された集団,被差別集団,又は非主流集団を特定し,これらの集団と意見を交換し,可能な場合は支援す

ることが重要である。

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の最も重要な部分は,当該コミュニティ,並びに各組織

がそのコミュニティにもたらす特有の知識,資源及び能力によって左右されるだろう。

組織の活動の中には,明らかにコミュニティの発展への貢献を意図したものもあれば,私的な目的を目

指しながら,間接的に全体的な発展を促そうとするものもあるかもしれない。

コミュニティへの参画の概念をその組織の決定及び活動と統合することによって,組織は,マイナスの

影響を最小限に抑制又は回避し,そのコミュニティ内におけるこれらの活動及び持続可能な発展の便益を

最大化することができる。組織は,その組織が本来もっているスキルベースをコミュニティへの参画のた

めに活用することができる(

ボックス 14 参照)。

ボックス 14  −  組織の中核活動を通したコミュニティの発展への貢献 

組織の中核活動がコミュニティの発展に貢献できる事例には,次のようなものがある。

−  農機具を販売する企業は,農業技術に関する教育訓練を提供することができる。

−  連絡道路の建設を計画する会社は,計画段階でコミュニティを関与させ,その道路がそのコミュニテ

ィのニーズも同時に満たせるようにするにはどうしたらよいかを明確にすることができる(例えば,

地元の農家が道路を利用できるようにするなど)

−  労働組合は,その加盟企業のネットワークを駆使し,優れた健康慣行についての情報をコミュニティ

に広めることができる。

−  水を大量に消費する企業が自社用浄水場を建設する場合には,同時にコミュニティにも清浄水を供給

することができる。

−  辺ぴ(鄙)な地域で活動する環境保護団体は,地元の商店及び生産者から,その活動に必要な物資を

購入することができる。

−  レクリエーションクラブは,コミュニティの非識字成人を対象とした教育活動に,そのクラブの施設

を開放することができる。


67

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

組織は,コミュニティの生活に支障を生じ,コミュニティの社会問題及び経済問題を悪化させるだけで

なく,人権侵害のリスクを高めるかもしれない人道的な危機その他の状況に直面することがあるかもしれ

ない(6.3.4 参照)

。こうした状況の例には,食糧安全保障の非常事態,洪水,干ばつ,津波,地震などの

天災,住民の強制移転及び武力紛争が含まれる。

影響を受ける地域において活動を行う組織,パートナーその他のステークホルダーをもつ組織は,こう

した状況の緩和に貢献することを検討すべきであり,又は単なる博愛心から貢献したいと願うこともある

かもしれない。組織は,災害救助から復興活動に至るまで,様々な形で貢献することができる。いずれの

場合も,その状況の下で最も弱い立場にある人,及び女性,子どもなど,住民全体の中で最も弱い立場に

ある人に対して特に注意を払いながら,人的被害に対処すべきである。全ての被害者の尊厳及び権利が尊

重され,支持されるべきである。

危機的状況においては,調和のとれた対応を行うことが大切である。したがって,公的機関,及び場合

によっては国際的な人道主義的組織,その他の適切な団体と協力することが重要となる。

6.8.3 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 1:コミュニティへの参画 

6.8.3.1 

課題の説明 

コミュニティへの参画は,組織がそのコミュニティに対して率先して行う働きかけである。コミュニテ

ィへの参画は,問題の防止及び解決,地域の組織及びステークホルダーとの協調関係の強化,並びにコミ

ュニティの良き組織市民を目指すことを目的としている。コミュニティへの参画によって,社会及び環境

への影響に対して責任を負う必要がなくなるわけではない。組織は,市民団体への参加及び支援,並びに

市民社会を構成する団体及び個人のネットワークへの参加を通じて,

それぞれのコミュニティに貢献する。

コミュニティへの参画は,また,組織による発展その他の取組みを,そのコミュニティ及び社会の取組

みと両立させるため,組織がコミュニティのニーズ及び優先事項を詳しく知る上でも役立つ。組織は,例

えば,地方自治体及び住民団体が設けた討論の場への参加,又はこうした討論の場の創設を通じて,参画

することができる。

伝統的なコミュニティ若しくは先住民族のコミュニティ,自治会,又はインターネット上のネットワー

クの中には,正式な“組織”を構成しない意見集団もある。組織は,公式,非公式の別を問わず,発展に

貢献し得る様々な種類の集団が存在することを認識すべきである。組織は,これらの集団の文化的,社会

的及び政治的権利を尊重すべきである。

コミュニティへの参画のための行動は,法の支配の尊重,及び他者が自己の利害を表明しその利害を守

る権利を尊重し,その信念を十分顧慮するような参加プロセスの尊重を堅持することが重要である。

6.8.3.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  社会的投資及びコミュニティの発展活動の優先順位を決定する際には,コミュニティの代表集団と協

議する。社会的弱者,被差別集団及び社会的に取り残された集団,代表権を全くもたない集団及び代

表権が軽視されている集団に特に配慮すべきであり,これらの集団の選択肢を広げ,権利を尊重でき

るような形で関与させる。

−  先住民族を含むコミュニティに影響を及ぼす開発の条件については,これらのコミュニティに助言を

求め,コミュニティに適応する。助言は開発の前に求めるべきである。また,完全で,正確で,かつ

入手しやすい情報に基づいて助言を求めるべきである

[154]

−  公共の利益及びコミュニティの発展目標に貢献することを目的とし,可能かつ適切な範囲で地域団体

に参加する。


68

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  地方自治体の職員及び地方議会議員との透明な関係を維持し,贈収賄又は不適切な影響力を避ける。

−  地域社会活動のボランティアになるよう人々を促し,支援する。

−  政策策定及び発展計画の作成,実施,モニタリング及び評価に協力する。その場合には,組織は,他

者が自己の利害を表明し,利益を守る権利を尊重し,その信念に十分に注意を払うべきである。

6.8.4 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 2:教育及び文化 

6.8.4.1 

課題の説明 

教育及び文化は,社会的及び経済的発展の基礎であり,コミュニティの独自性の一部を構成する。人権

尊重を旨とする文化の保護及び振興,並びに教育の普及は,社会的一体性及び社会の発展にプラスの影響

を及ぼす

[151]

6.8.4.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  あらゆるレベルで教育を普及し,支援する。教育の質を改善し,教育を受ける機会を広げ,地域の知

識を高め,非識字率がゼロになるよう後押しするための行動に関与する。

−  特に社会的弱者又は被差別集団に学習機会を広げる。

−  児童の就学を促し,児童が教育を受けることを妨げる障害(児童労働など)の排除に貢献する

[135]

−  文化活動を適宜推進し,人権尊重の原則に則して,地域の文化及び文化的伝統を認め,評価する。歴

史的に恵まれない集団に力を与える文化活動を支援する行動が,差別根絶の手段として特に重要であ

る。

−  人権教育及び意識向上の推進を検討する。

−  特にその組織の活動が文化遺産に影響を及ぼす場合は,それらの文化遺産の保存及び保護に協力する

[161][163][164]

−  先住民族コミュニティの伝統的知識及び技術の利用を適宜推進する

[75]

6.8.5 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 3:雇用創出及び技能開発 

6.8.5.1 

課題の説明 

雇用は,経済的及び社会的発展に関わる国際的に認められた目的である。規模の大小を問わず,全ての

組織は,雇用創出によって,貧困の緩和,並びに経済的及び社会的発展の推進に貢献することができる。

雇用主は雇用を創出する上で,6.3 及び 6.4 に示された関連する手引に注目すべきである。

技能開発は,雇用を促進し,人々が適切で生産的な職を確保できるよう支援するために不可欠な要素で

あり,また,経済的及び社会的発展にも欠かすことができない。

6.8.5.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  自らの投資決定が雇用創出に及ぼす影響を分析する。経済的に実行可能な場合は,雇用創出を通じて

貧困を緩和するための直接投資を行う。

−  技術選択が雇用に及ぼす影響を検討する。また,長期的に採算が取れる場合は,雇用機会が最大にな

るような技術を選択する。

−  決定を下す組織の内部において,また,決定によって影響を受ける外部組織において,外注が雇用創

出に及ぼす影響を検討する。

−  臨時雇用契約を利用することによって,直接雇用を創出することのメリットを考える。

−  実習プログラム,特定の恵まれない集団を対象としたプログラム,生涯教育プログラム,技能認定制

度,認証制度など,地域的及び全国的な技能開発プログラムへの参加を検討する。


69

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  技能開発プログラムが不十分な場合は,できればそのコミュニティ内の他の組織と協力し,そのコミ

ュニティにおける技能開発プログラムの整備又は改善を支援することを検討する。

−  雇用及び能力開発に関しては,社会的弱者に特に配慮する。

−  雇用創出に必要な枠組み条件の普及に協力することを検討する。

6.8.6 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 4:技術の開発及び技術へのアクセス 

6.8.6.1 

課題の説明 

経済的及び社会的発展を推進するため,コミュニティ及びそのメンバーは,最新技術の十分かつ安全な

利用を特に必要としている。組織は,人的資源の開発及び技術の普及が図れるような形で専門知識,技能

及び技術を導入することによって,組織が活動するコミュニティの発展に貢献することができる。

情報技術及び通信技術は,現代生活の重要な特徴であり,多くの経済活動において有益な基盤となって

いる。情報の入手は,諸国間,地域間,世代間,性別などに存在する格差を克服するための鍵である。組

織は,教育訓練,パートナーシップ,その他の行動を通じて,これらの技術の利用促進に貢献することが

できる。

6.8.6.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  地域コミュニティにおける社会的課題及び環境課題の解決に貢献し得る画期的技術の開発に貢献する

ことを検討する。

−  模倣が容易で,貧困及び飢餓の根絶に高いプラスの影響を及ぼす廉価な技術の開発に貢献することを

検討する。

−  採算性がある場合は,潜在する現地の伝統的知識及び技術に対するコミュニティの権利を保護しつつ,

係る知識及び技術を発展させることを検討する。

−  コミュニティのパートナーとの科学的及び技術的開発を推進するため,大学,研究機関などの組織と

連携することを検討し,地域の人々をこの業務に採用する

[124]

−  採算性がある場合は,技術の移転及び普及が図れるような慣行を採用する。適用可能な場合には,組

織は,地域発展に貢献するためのライセンス又は技術移転に関して,妥当な条件を適宜定めるべきで

ある。また,そのコミュニティの技術管理能力を考慮し,高めるべきである。

6.8.7 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 5:富及び所得の創出 

6.8.7.1 

課題の説明 

どのコミュニティにおいても,競争力のある多様な企業及び協同組合は,富の創出に欠かすことができ

ない。組織は,起業家精神が育まれ,コミュニティに永続的利益をもたらすような環境の形成に貢献する

ことができる。組織は,経済的福利及び社会的福利を促進したり,又はコミュニティの利益を形成する経

済的資源及び社会的関係を強化するための幅広い取組みだけでなく,起業プログラム,現地供給者の育成

及びコミュニティのメンバーの採用を通じても,富及び所得の創出に積極的に貢献することができる。さ

らに,組織は,地域レベルで富及び所得の創出を後押しし,コミュニティのメンバーに経済的利益がバラ

ンスよく配分されるよう促すことによって,貧困の緩和に向けて重要な役割を果たすことができる。女性

の社会的地位の向上が社会の福祉に大きく貢献することは広く認められている。したがって,女性を対象

とした起業プログラム及び協同組合は,特に重要である。

富及び所得の創出は,また,経済活動がもたらす利益が公平に分配されることが前提である。政府は,

組織の納税義務の履行に頼り,重要な発展の問題に取り組むための税収を得ている。

多くの場合,コミュニティの物理的,社会的及び経済的孤立が,発展の障害になり得る。組織は,地域


70

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

の人々,集団及び組織を自らの活動又はバリューチェーンに組み入れることを通じ,コミュニティの発展

において積極的な役割を果たすことができる。このように,コミュニティの発展に関する考慮事項は,組

織の中核活動と切り離せない部分になり得る。

組織は,法規制の順守を通じて発展に貢献する。場合によっては,コミュニティ集団が意図された法的

枠組みの中で活動しない原因が,貧困又は発展条件にあることも考えられる。こうした場合,法的枠組み

の外で活動する集団に関与する組織は,貧困の緩和及び発展の促進を目指すべきである。同時に組織は,

これらの集団が,特に経済的関係に関して,より一層の法順守,更には,最終的には完全な法順守を達成

できるような機会を作ることを目指すべきである。

6.8.7.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  そのコミュニティの持続可能な発展に必要な基本的資源への影響を含め,コミュニティへの参入又は

コミュニティからの撤退の経済的及び社会的影響を考慮する。

−  そのコミュニティの既存の経済活動の多様化を促すために,適切なイニシアチブを支援することを検

討する。

−  可能な限り地元の製品及びサービス供給者を優先し,また,地元の供給者の育成に貢献することを検

討する。

−  そのコミュニティ内の恵まれない集団への特別の配慮をもって,地元に本拠を置く供給者がバリュー

チェーンに貢献できるよう,その能力を高め,機会を広げるためのイニシアチブに着手することを検

討する。

−  適切な法的枠組みの中で活動する組織の支援を検討する。

−  次の条件に適合する場合に限り,まだ低レベルの発達段階にあるために法的要求事項を満たすことが

困難な組織との経済活動に関与する。

−  活動の目的が貧困への取組みである。

−  これらの組織の活動が人権を尊重し,また,これらの組織が適切な法的枠組みの中での活動実施に

向けて着実に前進していくことが合理的に期待される。

−  生産性の向上及び起業の促進を通じて,コミュニティのメンバー,特に女性その他の社会的に不利な

人々の集団及び社会的弱者の集団の企業設立及び協同組合の設立を支援するような,持続的なプログ

ラム及びパートナーシップへの協力を検討する。例えば,事業計画立案に関する教育訓練,マーケテ

ィング,供給者になるために必要な品質基準,経営支援及び技術支援,資金調達,並びに合弁事業の

促進を提供するプログラムが考えられる。

−  家畜の十分な世話を含め,利用可能な資源の効率的利用を奨励する。

−  例えば,技術仕様書に適合するための能力開発,及び調達機会に関する情報の開示を通じて,コミュ

ニティの組織が調達機会を容易に利用できるようにするための適切な方法を検討する。

−  そのコミュニティの福祉に有益であるならば,必須の製品及びサービスをコミュニティに提供する組

織及び個人の支援を検討する。これによって,地元,地域及び都市の市場とのつながりが生まれるだ

けでなく,現地で雇用を創出することができる。

−  コミュニティに基盤を置く起業家団体の育成を支援するための適切な方法を検討する。

−  自らの納税義務を履行し,納付税額を適正に決定するために,必要な情報を当局に提出する。

−  従業員の退職金及び年金への資金拠出を検討する。

6.8.8 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 6:健康 


71

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

6.8.8.1 

課題の説明 

健康は,社会生活の必須要素であり,人間の権利として認められている。公衆衛生への脅威は,コミュ

ニティに深刻な影響を及ぼす可能性があり,また,その発展を妨げる可能性がある。したがって,全ての

組織は,規模の大小を問わず,健康な生活を送る権利を尊重すべきであり,組織がとり得る手段の範囲で

適宜,健康を増進し,健康への脅威及び疾病を防止し,コミュニティへの害を軽減することに貢献すべき

である(6.4.66.5 及び 6.7.4 も併せて参照)

。これには,公衆衛生キャンペーンへの参加が含まれるかも

しれない。組織は,適宜,また可能な限り,特に公共サービスの強化及び支援を通じて,公共医療サービ

スの利用改善に貢献すべきである。公共医療制度の提供が国家の役割である国においても,あらゆる組織

がコミュニティの健康衛生への貢献を検討することができる。健全なコミュニティは,公共部門の負担を

軽減し,全ての組織に良い経済的及び社会的環境をもたらす。

6.8.8.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  その組織が提供する生産プロセス,製品又はサービスが,健康に及ぼすマイナスの影響をなくすよう

に努力する。

−  例えば,医薬品及びワクチン入手への協力,運動及び良好な栄養状態を含む健康的なライフスタイル

の奨励,疾病の早期発見,避妊法に対する意識の向上,並びに不健康な製品及び物質の摂取防止によ

って,健康増進を促すことを検討する。児童の栄養には特に注意を払うべきである。

−  HIV

/エイズ,がん(癌),心疾患,マラリア,結核,肥満などの健康への害及び主要な疾病,並びに

それらの防止についての意識向上を検討する。

−  疾病防止の手段として,必須の医療サービス,並びに清潔な水及び十分な衛生設備の恒久的で普遍的

な利用を支援することを検討する。

6.8.9 

コミュニティへの参画及びコミュニティの発展の課題 7:社会的投資 

6.8.9.1 

課題の説明 

組織が,コミュニティの生活の社会的側面を改善するためのイニシアチブ及びプログラムに自らの資源

を投資するとき,それを社会的投資と呼ぶ。社会的投資には,教育,訓練,文化,医療,所得創出,イン

フラ開発,情報へのアクセス改善,又は経済的若しくは社会的発展を促すであろうその他の活動に関係す

るプロジェクトが含まれるかもしれない。

社会的投資の機会を特定する際に,組織は,地方及び国の政策決定者が定めた優先順位を念頭に置き,

組織が活動するコミュニティのニーズ及び優先順位に合わせた貢献を考えるべきである。情報共有,協議

及び交渉は,社会的投資の特定及び実施に向けた参加形の取組みの有益な手段である。

社会的投資は,慈善活動(例えば,助成,ボランティア,寄付など)を排除するものではない。

組織は,同時にコミュニティがプロジェクトの設計及び実施に関与するよう促すべきである。それによ

って,

その組織が関与しなくなっても,

それらのプロジェクトが存続し発展できるようになるからである。

社会的投資は,長期的に実現可能であり,持続可能な発展に貢献するプロジェクトを優先すべきである。

6.8.9.2 

関連する行動及び期待 

組織は,次の事項を実施すべきである。

−  社会的投資プロジェクトの計画において,コミュニティの発展の促進を考慮に入れる。いずれの行動

も,地域の発展を支援するため,例えば,現地調達及び現地外注の拡大によって,市民のための機会

を広げるべきである。

−  コミュニティがその組織の慈善活動,継続的な存在又は支援に永遠に頼るような行動は避ける。


72

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  組織自身の既存のコミュニティ関連活動を評価し,そのコミュニティ及び組織内部の人間に対して報

告を行うとともに,改善可能な部分を明確化する。

−  相乗効果を最大化し,補完的な資源,知識及びスキルを活用するため,政府,企業又は NGO を含む

他の組織との連携を検討する。

−  社会的弱者の又は差別を受けている低所得の集団及び個人の,能力,資源及び機会の拡大に貢献する

ことの重要性を考慮した上で,食糧,その他の必需品を,これらの集団及び個人に提供するプログラ

ムへの協力を検討する。

組織全体に社会的責任を統合するための手引 

7.1 

一般 

この規格のこれまでの箇条では,社会的責任の原則,中核主題及び課題について記述した。この箇条は,

社会的責任を組織内で実践するための手引である。一部の活動は,新たな方法で,又はより幅広い要因を

考慮した上で,実践しなければならない可能性があるが,多くの場合,組織は,その組織の既存のシステ

ム,方針,構造及びネットワークを土台として社会的責任を実践することができる。

新しい取組みを自らの意思決定及び活動に取り入れる方法,並びにコミュニケーション及び内部確認の

ための効果的なシステムを,既に確立している組織もあるかもしれない。また,組織統治又は社会的責任

のその他の側面に関して,

システムの構築が遅れている組織もあるかもしれない。

この箇条に示す手引は,

出発点のいかんを問わず,あらゆる組織が社会的責任をその運営に統合することを手助けすることを目的

としている(

図 参照)。

図 4−社会的責任の組織全体への統合

7.2 

組織の特性と社会的責任との関係 

組織全体に社会的責任を統合するための情報に基づく基盤を構築する上で,自らの主要な特性が社会的

社会 

及び環境

確認

改善

組織 

社会的責任の戦略,

行動計画,統合,

コミュニケーション

ステークホルダー

エンゲージメント 

社会的責任の

認識

(中核主題,

課題及び期待)

持続可能な発展に

貢献


73

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

責任とどのように関係するかを判断することは,その組織にとって有益である(箇条 参照)

。この確認作

業は,個々の中核主題における社会的責任の関連性のある課題を判断し,その組織のステークホルダーを

特定する場合にも役立つであろう。この確認作業には,次の要素を適宜含めるべきである。

−  その組織の種類,目的,活動の性質及び規模

−  その組織が活動する場所。例えば,

−  社会的責任に関係する決定及び活動の多くを規制する強固な法的枠組みが存在するかどうか。

−  組織が活動する地域の社会的,環境的及び経済的特性

−  社会的責任に関するその組織の過去のパフォーマンスについての情報

−  請負労働者を含むその組織の要員又は従業員の特性

−  その組織が参加する業界団体。例えば,

−  これらの団体が取り組む社会的責任に関連する活動

−  これらの団体が奨励する社会的責任に関連する規範,その他の要求事項

−  その組織自身の使命,ビジョン,価値観,原則及び行動規範

−  社会的責任に関連し,内部及び外部のステークホルダーが抱く懸念

−  その組織内部における意思決定の構造及び性格

−  その組織のバリューチェーン

社会的責任に対する組織のトップの現在の姿勢,コミットメントの強さ,及び理解を組織が認識するこ

とも重要である。社会的責任の原則,中核主題及び便益を十分に理解することは,その組織及び自らの影

響力の範囲全体に社会的責任を統合する上で大いに役立つであろう。

7.3 

組織の社会的責任の理解 

7.3.1 

デューディリジェンス 

社会的責任という背景の中でのデューディリジェンスは,組織の決定及び活動によって社会面,環境面

及び経済面に引き起こされる現実の及び潜在的なマイナスの影響を回避し軽減する目的で,これらの影響

を特定する包括的で先行的かつ積極的なプロセスである。

他者が人権その他の侵害の原因であることが判明し,その組織がそれに関わっているかもしれない場合

には,他者の行動に影響力を及ぼすことも,デューディリジェンスに含まれるかもしれない。

あらゆるデューディリジェンスのプロセスにおいて,組織は,その組織が活動を行う国の背景,自らの

活動が及ぼす潜在的及び現実の影響,並びにその活動がその組織の活動と深く関わっている他の事業体又

は個人の行動によってマイナスの結果が生じる可能性を考慮すべきである。

その組織の規模及び状況に適した方法で,次の要素をデューディリジェンスのプロセスに含めるべきで

ある。

−  関連性のある中核主題に関する組織の方針。これらの方針は,組織内部の者及びその組織と密接な関

係をもつ者に有意義な手引を与える。

−  現在の活動及び提案されている活動が,それらの方針の目標にどのような影響を及ぼすかを評価する

手段

−  社会的責任に関する中核主題をその組織全体に統合する手段

−  パフォーマンスを長期にわたって追跡する手段。これによって,優先順位及び取組みに必要な調整を

加えることができる。

−  自らの決定及び活動が及ぼすマイナスの影響に対処するための適切な行動


74

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

組織は,行動の対象となり得る分野を明確にする際に,被害を受け得る個人及び集団の視点に立って,

難問及びジレンマを深く理解するよう努力すべきである。

こうした自己評価に加え,組織は,社会的責任に関するパフォーマンスを高める方向に向けて他の事業

体の行動に影響力を及ぼそうとすることが可能であり,かつ適切であると判断できる場合があることに気

付くかもしれない。特に,組織がその事業体と密接なつながりをもつ場合,又はその課題が非常に切迫し

ている若しくはその状況に関連性があるとその組織が考えた場合である。社会的責任に関する自らのパフ

ォーマンスの向上において組織が経験を積むにつれ,他の事業体に介入し,この目的を提言しようとする

能力及び意欲は高まるかもしれない。

7.3.2 

組織にとっての中核主題及び課題の関連性及び重要性の判断 

7.3.2.1 

関連性の判断 

全ての中核主題は,あらゆる組織に関係性があるが,必ずしも全ての課題があらゆる組織に関連性があ

るわけではない。組織は,全ての中核主題を確認し,どの課題が関係するのかを特定すべきである。

特定するプロセスを開始するに当たって,組織は,適宜,次の事項を行うべきである。

−  自らの活動範囲の全てを列挙する。

−  ステークホルダーを特定する(5.3 参照)

−  組織自身の活動,及び自らの影響力の範囲にある他の組織を特定する。供給者及び請負人の決定及び

活動が,その組織の社会的責任に影響を及ぼす可能性がある。

−  全ての関連する法律を考慮した上で,その組織及びその影響力の範囲及び/又はバリューチェーンの

中の他者がそれらの活動を遂行する場合に,どの中核主題及び課題が生じるかを判断する。

−  その組織の決定及び活動が,ステークホルダー及び持続可能な発展にどのような影響を生じる可能性

があるかを幅広く分析する。

−  ステークホルダー及び社会的責任に関する課題が,その組織の決定,活動及び計画にどのような影響

を生じる可能性があるかを分析する。

−  日々の活動に関係する社会的責任の全ての課題とともに,非常に特異な状況の下で時折しか発生しな

いような課題も併せて特定する。

組織自身は自らの社会的責任を理解しているつもりであるかもしれないが(5.2.3 参照)

,組織は,中核

主題及び課題についての視点を広げるために,特定するプロセスにステークホルダーを関与させることを

検討すべきである。ただし,ステークホルダーが課題を特定できない場合でも,その課題が関連性をもつ

かもしれないということを認識することが重要である。

組織が社会的責任の中核主題を取り扱う法が設けられている地域で活動しているために,法さえ順守し

ていればそれらの中核主題に関連性のある全ての課題への取組みを確実にすることができるだろうと決め

てかかる場合があると思われる。しかし,箇条 に掲げた中核主題及び課題を慎重に確認した結果,関連

性のある課題の一部が規制されていない,定められている規制が十分に執行されていない,条文が明確で

ない,又は記述が不十分であることが判明するかもしれない。

法の対象となっている中核主題又は課題についても,法の精神に応えようとすれば,単なる順守を超え

た行動が必要になるかもしれない。

例えば,

環境上の法規制が大気汚染物質又は水質汚濁物質の排出量を,

一定の量又はレベルに制限していても,組織は,最良実施例を駆使してこれらの汚染物質の排出を更に削

減するか,又は採用するプロセスを変更してその排出をゼロにすることを目指すべきである。この他に,


75

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

学校が雨水をトイレ用として自発的に再利用する例が挙げられる。また,病院は,労働慣行に関する法を

順守するだけでなく,その職員のワーク・ライフ・バランスを支援するための特別プログラムを立ち上げ

ることができる。

7.3.2.2 

重要性の判断 

自らの決定及び活動に関連性がある幅広い課題が特定された段階で,組織は,特定された課題を慎重に

検討し,どの課題がその組織にとって最大の意義をもち,最も重要かを判断するための基準を策定すべき

である。考えられる基準には,次のようなものがある。

−  その課題がステークホルダー及び持続可能な発展に及ぼす影響の程度

−  その課題に関して行動をとったことによる,又は行動をとらなかったことによる潜在的効果

−  その課題に対してステークホルダーが抱く懸念の程度

−  これらの影響に関して,社会がどのような責任ある行動を期待しているかの特定

一般に重要と考えられる課題は,法の不順守,国際行動規範との不整合,潜在的な人権侵害,生命又は

健康を脅かすおそれのある慣行,及び環境に深刻な影響を及ぼすおそれのある慣行である。

7.3.3 

組織の影響力の範囲 

7.3.3.1 

組織の影響力の範囲の評価 

組織の影響力は,例えば,次の要因から生じる。

所有及び統治  これには,関連組織の統治機構に対する所有権又は代表権(存在する場合)の性質及

び範囲が含まれる。

経済的関係  これには,経済的関係の深さ,及びそれぞれの組織にとってその関係がもつ相対的重要

性が含まれる。一方の組織にとっての重要性が高いほど,他方の組織にとっての影響力は大きくなる

可能性がある。

法的/政治的権限  これは,例えば,法的拘束力のある契約の条項に基づく権限,又は他者に対して

特定の行動を強制する能力をその組織に与える法律的命令の存在に基づく。

世論  その組織が世論に及ぼすことのできる影響力,及び組織が影響力を及ぼそうとする相手に対す

る世論の影響

組織の影響力は,物理的な近さ,関係の範囲,長さ及び深さなど,多数の要因に左右されるかもしれな

い。

7.3.3.2 

影響力の行使 

組織は,持続可能な発展へのプラスの影響を高めるため,マイナスの影響を最小化するため,又はその

両方を目的として,他者への影響力を行使することができる。組織は,自らの影響力の範囲を評価し,自

らの責任を判断するときに,デューディリジェンスを用いるべきである。

影響力の行使には,次のような方法がある。

−  契約上の規定又はインセンティブを設ける。

−  その組織による公の発言

−  コミュニティ,政治指導者,その他のステークホルダーとエンゲージメントを行う。

−  投資決定を下す。

−  知識及び情報を共有する。

−  共同プロジェクトを実施する。


76

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  責任あるロビー活動を行い,メディアとの関係を利用する。

−  優れた実施例を促進する。

−  業界団体,組織,その他との協力関係を醸成する。

組織は,関係のある組織又は関係をもとうとする組織の環境的側面,社会的側面,組織統治の側面,及

び社会的責任を考慮すべきである。

組織は,自らの決定及び活動,並びにこれらの決定及び活動の根拠に関してステークホルダーに提供す

る情報を通じて,自らのステークホルダーに影響力を及ぼすことができる。

組織の影響力の行使は,常に,倫理的な行動,並びに社会的責任に関するその他の原則及び慣行にのっ

とっているべきである(箇条 及び箇条 参照)

。影響力を行使するとき,組織は,まず社会的責任に対す

る意識の向上を目的とした対話への関与,及び社会的に責任ある行動の推奨を検討すべきである。対話が

効果的でない場合は,関係の性質を変えることを含めた他の行動を検討すべきである。

組織が他者を

事実上

コントロールしている場合,その行動の責任は,その組織が正式にコントロールす

る活動において負う責任と似ている可能性がある。

事実上

のコントロールとは,組織が法的又は正式には

そのような権限をもたないにしても,他者の決定及び活動を命令する能力をもつような場合を指す。

7.3.4 

課題に取り組むための優先順位の決定 

組織は,その組織全体及びその日々の慣行に社会的責任を統合するための自らの優先順位を決定し,責

任をもって実行すべきである。重要で関連性が高いと考えられる課題の中で優先順位を定めるべきである

7.3.2 参照)

。ステークホルダーが優先順位の明確化に関与すべきである(5.3 参照)

。優先順位は時間の

経過とともに変化する可能性が高い。

組織は,次の事項を考慮に入れ,課題に取り組むための行動について優先順位が高いかどうかを判断す

べきである。

−  法令順守,規格,国際行動規範,最新かつ最良の実施例に関するその組織の現在のパフォーマンス

−  その課題がその組織の重要な目的の達成能力に著しく影響を及ぼす可能性があるかどうか。

−  実施に必要な資源と,関連行動の潜在的効果との対比

−  望ましい結果を得るためにかかる期間

−  速やかに対処しなかった場合,コストに重大な結果が生じる可能性があるかどうか。

−  実施の容易さ及び迅速さ。これによって,その組織内部において社会的責任に関する行動に対する意

識及びモチベーションが高まるかもしれない。

優先順位は,組織によって異なるだろう。

直ちに起こす行動の優先順位を決定することに加えて,組織は,ビル建設,新スタッフの雇用,請負人

の採用,資金調達活動の実施など,組織が将来実行することが予想される決定及び活動に関連性のある課

題を検討するための優先順位を決定することができる。その場合,優先順位の検討は,これらの将来の活

動の計画に含まれることになるだろう。

優先順位は,その組織に適した間隔で確認し,更新すべきである。

7.4 

組織全体に社会的責任を統合するための実践 

7.4.1 

社会的責任に関する意識の向上及び力量の確立 

組織のあらゆる側面に社会的責任を組み込むためには,その組織のあらゆるレベルでのコミットメント

及び理解が必要である。社会的責任に関する組織の取組みが初期の段階では,原則,中核主題及び課題を


77

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

含む,社会的責任の側面の理解を深めることに,意識向上の焦点を置くべきである。

コミットメント及び理解は,その組織のトップを起点にすべきである。その組織にとって社会的責任が

もたらす便益を理解することは,その組織のトップがコミットメントを形成する上で大きな役割を果たし

得る。したがって,その組織のトップに社会的責任の意味及び便益を十分に理解させるための取組みを進

めるべきである。

組織の一部の従業員及び一部の部署が,他の従業員及び部署よりも,社会的責任に関する行動をとるこ

とに対して深い関心及び理解を示すことがあるだろう。組織は,このように理解を示す部門を通じて,社

会的責任の意味するところを実践的に示すことに,初期の取組みの重点を置くことが有用と気付くかもし

れない。

組織内部に社会的責任の文化を形成するには,かなりの時間がかかるかもしれないが,体系的に進める

こと,並びに既存の価値観及び文化を生かすことは,これまで多くの組織において効果的であった。

社会的責任の慣行を実施するための力量確立には,ステークホルダーエンゲージメントなど幾つかの活

動分野において,また,中核主題の応用についての知識及び理解を深めることにおいて,技能の強化又は

開発が必要になるかもしれない。

その組織内部の人材が既にもっている知識及び技能を活用すべきである。

適切であれば,これらの取組みに,サプライチェーンの管理者及び労働者の力量確立及び教育訓練を含め

るべきである。一部の課題については,特別な教育訓練が有用であるかもしれない。

社会的責任を効果的に統合するために,組織は,新しい取組み及び発想を提案する自由,権限及び動機

を拡大するような意思決定プロセス及び統治の変更の必要性を特定するとよい。組織は,また,自らのパ

フォーマンスの一部の側面をモニタリングし,測定するためのツールを改善する必要があると考えるかも

しれない。

教育及び生涯学習は,社会的責任に関する意識向上及び力量確立の柱である。この点で,持続可能な開

発のための教育は,積極的かつ前向きな行動を育てるような価値観への十分な配慮を奨励することによっ

て,新しい方向性を定め,社会的責任に関する課題に取り組む力を人々に与えている

[162]

7.4.2 

社会的責任に関する組織の方向性の決定 

組織のトップの発言及び行動,並びにその組織の目的,願望,価値観,倫理観及び戦略が,その組織の

方向性を決定する。社会的責任をその組織の機能の重要かつ効果的な部分とするために,組織のこれらの

側面に社会的責任を反映させるべきである。

組織は,社会的責任を,その組織の方針,組織文化,戦略,構造及び業務活動とは切り離せないものに

することによって,自らの方向性を定めるべきである。組織がそのために講じることのできる手段として

は,次の事項が例として挙げられる。

−  その組織の願望又はビジョンステートメントの中で,社会的責任を自らの活動にどのように影響力を

もちたいかについて言及する。

−  自らの目的又はミッションステートメントの中に,その組織の活動のあり方を定める上で有用な社会

的責任の原則及び課題を含めた社会的責任の重要な側面を,具体的に,明確に,かつ簡潔に組み込む。

−  原則及び価値観を,適切な行動について述べた文章に書き表すことによって,社会的責任に対するそ

の組織のコミットメントを明記した行動規範書又は倫理規定書を導入する。これらの規範は,箇条 4

の社会的責任の原則及び箇条 の手引に準拠すべきである。

−  社会的責任を,システム,方針,プロセス及び意思決定行動に統合することによって,社会的責任を

その組織の戦略の主要要素として含める。

−  中核主題及び課題に関する行動の優先順位を,戦略,過程及びスケジュールを含む管理可能な組織の


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:2012 (ISO 26000:2010)

目的に移しかえる。目的は具体的で,測定可能又は検証可能であるべきである。このプロセスを後押

しする上で,ステークホルダーの意見は貴重なものとなり得る。責任,スケジュール,予算及びその

組織の他の活動への効果を含めた目的達成のための詳細計画が,目的及びその達成のための戦略を定

める上で重要な要素となるべきである。

7.4.3 

組織の統治,システム及び手順への社会的責任の組込み 

組織全体に社会的責任を統合する手段として重要かつ効果的なのは,その組織の統治を通じてそれを行

う方法である。組織統治とは,組織がその目的を追求する上で,決定を下し,実施するときに従うシステ

ムである。

組織は,機会及びプラスの影響を最大化すると同時に,社会的及び環境的な害が生じる危険性を最小限

にとどめるため,各中核主題に関係する自らの影響を誠実にかつ入念に管理し,自らの影響力の範囲でそ

の組織が与える影響をモニタリングすべきである。組織が,新たな活動に関する決定を含め,決定を下す

ときは,これらの決定がステークホルダーに及ぼす可能性の高い影響を考慮すべきである。その場合,組

織は,自らの活動が及ぼす有害な影響を最小限に抑え,自らの行動が社会及び環境に及ぼす有益な影響を

拡大するための最善策を検討すべきである。決定を下すときは,この目的のために必要な資源及び計画を

考慮に入れるべきである。

組織は,社会的責任の原則(箇条 参照)が自らの統治に生かされ,自らの構造及び文化に反映されて

いることを確認すべきである。組織は,その組織の社会的責任への配慮が確実に行われるよう,適切な間

隔で手順及びプロセスを確認すべきである。

有益な手順としては,次の事項があるかもしれない。

−  確立されたマネジメント慣行が,その組織の社会的責任を反映し取り扱うことを確実にする。

−  社会的責任の原則,並びに中核主題及び課題が,その組織の様々な部分にどのように生かされている

かを確認する。

−  その組織の規模及び性質にふさわしい場合には,運営手法が社会的責任の原則及び中核主題と整合す

るように,これらの手法を確認し改めるための部署又はグループを組織内に設ける。

−  その組織の業務活動を行うときは,社会的責任を考慮に入れる。

−  購買及び投資の慣行,人的資源の管理,その他の組織機能に社会的責任を組み込む。

組織の既存の価値観及び文化は,その組織全体に社会的責任を十分に統合することのできる難易度及び

速度に重大な効果を及ぼす可能性がある。既に価値観及び文化が社会的責任と密接にかみ合っている組織

では,社会的責任を統合するプロセスは極めて簡単かもしれない。その他の組織においては,組織の一部

で社会的責任の利点が認識されていないかもしれず,変化に対して抵抗があるかもしれない。これらの分

野で社会的に責任ある取組みを統合するためには,長期にわたる体系的な取組みが必要かもしれない。

組織全体に社会的責任を統合するプロセスは,全ての中核主題及び課題について一度に,又は同じ速度

で生じるわけではないという点を認識することも重要である。社会的責任に関する一部の課題には短期的

に取り組み,また,一部の課題には長期にわたって取り組むための計画を立案することが有益かもしれな

い。こうした計画は現実的であるべきである。さらに,その組織の能力,利用可能な資源,並びに課題及

び関連行動の優先順位を考慮に入れるべきである(7.3.4 参照)

7.5 

社会的責任に関するコミュニケーション 

7.5.1 

社会的責任におけるコミュニケーションの役割 

社会的責任に関する多くの慣行には,

何らかの形で内部及び外部のコミュニケーションが必要であろう。


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コミュニケーションは,次のような社会的責任の様々な機能に欠かすことができない。

−  組織内外で,社会的責任に関するその組織の戦略及び目的,計画,パフォーマンス,並びに問題点に

ついての認識を深める機能

−  箇条 に記述した社会的責任に関する原則を尊重していることを示す機能

−  ステークホルダーとの対話に関与し,また,対話の場の創出を後押しする機能

−  社会的責任に関係する情報の開示に関する法的要求事項,その他の要求事項に対応する機能

−  その組織が社会的責任に対する自らのコミットメントをどのように果たし,ステークホルダーの利害

及び社会全体の期待にどのように対応しているかを示す機能

−  時間の経過に伴う影響の変化の詳細を含め,その組織の活動,製品及びサービスがもたらす影響につ

いての情報を提供する機能

−  従業員,その他の者を社会的責任に関するその組織の活動の支援に関与させ,動機付けを与えられる

よう手助けする機能

−  同業組織との比較を円滑化する機能。これによって,社会的責任に関するパフォーマンスの改善を促

すことができる。

−  その組織に対するステークホルダーの信頼を高めるため,社会的に責任ある行動,開放性,誠実さ及

び説明責任に関する組織の評価を高める機能

7.5.2 

社会的責任に関する情報の特性 

社会的責任に関係する情報は,次の条件を備えるべきである。

完全である  情報は,社会的責任に関係する全ての重要な活動及び影響を取り扱うべきである。

理解しやすい  情報は,コミュニケーションに関与するであろう人々の知識,並びに文化的,社会的,

教育的及び経済的背景を考慮した上で提供されるべきである。使用する言語及び編成の方法を含めた

資料の記述方法は,その情報を受け取るはずであるステークホルダーが理解できるものであるべきで

ある。

敏感である  情報は,ステークホルダーの関心に敏感であるべきである。

正確である  情報は,事実に基づき正確であるべきである。また,その目的に役立ち,目的に適うよ

う十分詳細であるべきである。

バランスが取れている  情報は,バランスが取れ,公正であるべきである。また,組織の活動の影響

に関する必要な否定的情報を省くべきでない。

時宜を得ている  古い情報は誤解を招く可能性がある。情報が特定期間の活動に関する内容である場

合,対象期間を明示することによって,ステークホルダーは,その組織のパフォーマンスを過去のパ

フォーマンス及び他の組織のパフォーマンスと比較することができるだろう。

入手可能である  特定の課題に関する情報を,関係するステークホルダーに開示すべきである。

7.5.3 

社会的責任に関するコミュニケーションの種類 

社会的責任に関するコミュニケーションには,様々な種類がある。次のような例が挙げられる。

−  ステークホルダーとの会合又は対話

−  社会的責任に関する特定の課題又はプロジェクトについてのステークホルダーとのコミュニケーショ

ン。

可能でかつ適切な場合は,

ステークホルダーとの対話をコミュニケーションに含めるべきである。

−  社会的責任及び関連活動に関する一般的な意識向上,並びに社会的責任及び関連活動の支援を目的と

した,その組織の経営層,及び従業員又はメンバーとのコミュニケーション。このようなコミュニケ

ーションは,一般に対話を含めた場合が最も効果的である。


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−  その組織全体に社会的責任を統合することに重点を置いたチーム活動

−  その組織の活動に関係する社会的責任に関わる主張についてのステークホルダーとのコミュニケーシ

ョン。こうした主張は,内部確認及び保証によって検証可能である。信頼性を高めるため,これらの

主張を外部による保証によって検証してもよい。コミュニケーションには,ステークホルダーへのフ

ィードバックの機会を適宜含めるべきである。

−  社会的責任に関係する調達の要求事項に関する供給者とのコミュニケーション

−  社会的責任によくない結果をもたらす緊急事態に関する市民へのコミュニケーション。緊急事態が起

きるまでは,意識向上及び準備態勢の強化にコミュニケーションの目的を置くべきである。緊急事態

発生中は,ステークホルダーへの連絡を絶やさず,適切な行動に関する情報を提供すべきである。

−  製品表示,製品情報,その他の消費者情報など,製品に関連するコミュニケーション。フィードバッ

クの機会を設けることで,こうした形態のコミュニケーションを改善することができる。

−  同業組織をターゲットとして,雑誌又はニュースレターに掲載する社会的責任の側面に関する記事

−  社会的責任のある側面を広めることを目的とした広告,その他の公の声明

−  政府機関又は市民からの照会に対する提出物

−  ステークホルダーへのフィードバックの機会を伴う定期的な公開報告(

ボックス 15 参照)

コミュニケーションに利用してもよい方法及び媒体は,多数存在する。これらの方法及び媒体には,会

合,公開イベント,討論会,報告書,ニュースレター,雑誌,ポスター,広告,手紙,ボイスメール,ラ

イブパフォーマンス,ビデオ,ウェブサイト,ポッドキャスト(インターネットによる音声放送)

,ブログ

(ウェブサイトでの対話)

,製品挿入物及びラベルが含まれる。プレスリリース,インタビュー,論説及び

記事を使い,メディアを通じてコミュニケーションを行うことも可能である。

ボックス 15  −  社会的責任に関する報告 

組織は,影響を受けるステークホルダーに対し,社会的責任に関する自らのパフォーマンスを,適切な

間隔で報告すべきである。自らのステークホルダーに対して,社会的責任に関する自らのパフォーマンス

を定期的に報告する組織が増えている。ステークホルダーへの報告は,ステークホルダーとの会合,一定

期間にわたるその組織の社会的責任関連活動について述べた手紙,ウェブサイトでの情報提供,社会的責

任についての定期報告書など,様々な方法で行うことができる。

ステークホルダーへの報告を行う際に,組織は,社会的責任の中核主題及び関連性のある課題に関する

その組織の目的及びパフォーマンスについての情報を含めるべきである。組織は,社会的責任に関するそ

の組織の報告にステークホルダーがいつ,どのように関与してきたかを明示すべきである。

組織は,達成事項及び不足事項,並びに不足事項への対処方法を含め,社会的責任に関する自らのパフ

ォーマンスを公正かつ網羅的に示すべきである。

組織は,その活動全体を一度に網羅しても,特定の場所又は現場における活動について分けて報告して

もよい。コミュニティの集団は,組織全体に関する報告よりも,特定の場所に関する狭い範囲の報告のほ

うが有益だと考えることが多い。

社会的責任に関する報告書の発表は,社会的責任に関する組織の活動の重要な側面になり得る。組織が

社会的責任に関する報告書を作成する際に,次の考慮事項を念頭に置くべきである。

−  組織の報告書の範囲及び規模は,その組織の規模及び性質に合わせるべきである。


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−  その組織がこのような報告にどの程度の経験をもつかによって,報告書の詳細さは異なるかもしれな

い。組織が,幾つかの側面だけを取り扱った限定的な報告書から取組みを開始し,次年度以降に,経

験を得て,より幅広い報告書のよりどころとなる十分なデータを入手した時点で,報告書の範囲を広

げる場合もある。

−  報告書では,取り扱われる課題についてその組織がどのように決定を下したか,また,これらの課題

にどのように取り組むかを示すべきである。

−  報告書では,持続可能な発展の文脈で,その組織の目標,業務上のパフォーマンス,製品及びサービ

スについて記述すべきである。

−  報告書は,その組織の性質及び自らのステークホルダーのニーズに応じて,様々な形で作成すること

ができる。報告書の形態には,報告書の電子的提供,ウェブベースの対話式バージョン又はハードコ

ピーが含まれるかもしれない。また,独立した文書又は組織の年次報告書の一部であるかもしれない。

社会的責任に関する報告についての追加的な情報は,

附属書 のグローバルレベル,各国レベル又は特

定セクターのレベルにおける報告に関するイニシアチブ及びツールから得ることができる(社会的責任に

関するイニシアチブ評価についての手引については,7.8 も併せて参照)

7.5.4 

社会的責任に関するコミュニケーションについてのステークホルダーとの対話 

組織は,自らのステークホルダーとの対話を通じて,ステークホルダーの見解について直接的な情報を

受け取り,交換することから利益を得ることができる。組織は,次の事項を行うために,自らのステーク

ホルダーとの対話を模索すべきである。

−  コミュニケーションの内容,媒体,頻度及び範囲を必要に応じて改善できるよう,その適切性及び有

効性を評価する。

−  今後のコミュニケーションの内容について,優先順位を決定する。

−  報告した情報のステークホルダーによる検証を確実にする(もしこの検証方法を用いる場合)

−  最良実施例を特定する。

7.6 

社会的責任に関する信頼性の向上 

7.6.1 

信頼性向上の方法 

組織が信頼を確立する方法には,様々な方法がある。その一つが,ステークホルダーとの対話を伴うス

テークホルダーエンゲージメントである。こうしたステークホルダーエンゲージメントは,全ての関係者

の利害及び意思が理解されていることの確信を強めるための重要な手段である。このような対話は信頼感

を形成し,信頼性を高めることができる。ステークホルダーエンゲージメントは,組織自らのパフォーマ

ンスに関する主張の検証にステークホルダーを巻き込むための土台になり得る。組織及びステークホルダ

ーは,ステークホルダーが組織のパフォーマンスがもつ側面を定期的に確認したり,又はモニタリングす

るための取決めを設けることができる。

特定の課題に関わる信頼性は,特定の認証制度への参加を通じて高めることができる。製品の安全性を

認証するため,又はそれらの環境影響,労働慣行及び社会的責任のその他の側面に関して製造工程又は製

品を認証するためのイニシアチブが整備されている。これらの制度は,中立で,それ自体が信頼できるも

のであるべきである。組織が独立した第三者を組織の活動に関与させ,信頼性を保証する場合もある。そ

の一例が,信頼できるということで選任された者で構成される諮問委員会又は検討委員会の設置である。

組織が同業組織の組合に参加し,自らの活動範囲の中で,又はその個々のコミュニティの中で,社会的


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に責任ある行動を確立し推進する場合もある。

組織は,自らの影響に関する必要なコミットメントを定め,適切な行動をとるとともに,パフォーマン

スを評価し,進捗状況及び欠点を報告することによって,自らの信頼性を高めてもよい。

7.6.2 

社会的責任に関する報告及び主張の信頼性向上 

社会的責任に関する報告及び主張の信頼性を高める方法には,様々な方法がある。こうした方法には,

次の事項が含まれる。

−  報告書の性質が,その組織の種類,規模及び能力によって異なるであろうことを認識した上で,社会

的責任に関わるパフォーマンスについての報告書を長期にわたって比較できるようにし,かつ,同業

組織が作成した報告書とも比較できるようにする。

−  報告書で省かれたテーマについて,そのテーマを取り上げなかった理由を簡単に説明し,その組織が

あらゆる重要事項を網羅しようと努めたことを示す。

−  データ及び情報を信頼できるソースまで追跡し,そのデータ及び情報の正確性が検証できるような,

厳格で責任ある検証プロセスを採用する。

−  組織内の者又は外部の者で,報告書の作成過程に関わらない人物(一名又は複数)の助けを借りて検

証作業を行う。

−  報告書の一部として検証を証明する声明を発行する。

−  ステークホルダーの集団を活用し,その組織に関連性があり重要な問題がその報告書に反映されてい

るかどうか,報告書がステークホルダーのニーズに対応しているかどうか,また,取り組んだ課題が

全て網羅されているかどうかを判断させる。

−  透明性を高めるための追加的手段として,他者が容易に検証できる種類及び形態の情報を提供する。

例えば,組織は,単にパフォーマンスに関する統計を報告するだけではなく,情報源及び統計作成に

当たって採用したプロセスを併せて詳しく開示することもできる。場合によっては,組織が活動を行

った場所を列挙することによって,組織がサプライチェーンに関して行った主張の信頼性を高めるこ

とも可能である。

−  外部の組織が定めた報告指針への適合性を報告する。

7.6.3 

組織とそのステークホルダーの間の紛争又は意見の不一致の解決 

社会的責任に関する活動の過程で,組織は,個々のステークホルダー又はステークホルダーの集団との

紛争又は意見の不一致に直面するかもしれない。具体的な紛争の種類の例及びこれらの紛争に対処するた

めの仕組みについては,人権(6.3.6 参照)及び消費者課題(6.7.6 参照)の説明の中で触れた。紛争又は

意見の不一致を解決するための公式な方法は,労働契約の一部に組み込まれていることも多い。

組織は,ステークホルダーとの紛争又は意見の不一致を解決するため,紛争又は意見の不一致の種類に

ふさわしく,かつ,影響を受けるステークホルダーにとって有用な仕組みを立案すべきである。このよう

な仕組みには,次の方法を含めてもよい。

−  影響を受けるステークホルダーとの直接的な話合い

−  誤解に対処するための文書情報の提供

−  ステークホルダー及びその組織が自らの見解を表明し,解決策を探ることができる話合いの場

−  公式な苦情対応手続

−  調停又は仲裁の手続

−  報復を恐れることなく不正行為を届け出ることができるシステム

−  その他の種類の苦情解決のための手続


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組織は,紛争及び意見の不一致の解決に利用できる手続についての詳しい情報を,そのステークホルダ

ーが入手できるようにすべきである。これらの手続は,公平かつ透明であるべきである。人権及び消費者

課題に関連する手続についての具体的情報については,箇条 において,これらの中核主題について述べ

た部分で触れている。

7.7 

社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善 

7.7.1 

一般 

社会的責任に関し,効果的なパフォーマンスを示すことができるかどうかは,コミットメント,入念な

監督,実行された活動の評価及び確認,進捗状況,明確化された目的の達成,使用された資源,その組織

のその他の取組みの側面にある程度かかっている。

社会的責任に関する活動の継続的なモニタリング又は観察は,基本的に,活動が意図されたとおりに進

行していることを確認し,危機又は異常事態発生を発見し,また,行動方式を変更することを目的として

いる。

適切な間隔でのパフォーマンスの確認は,社会的責任についての進捗を判断し,プログラムの焦点を絞

り,変更が必要な部分を特定し,パフォーマンスを向上するために利用してもよい。ステークホルダーは,

社会的責任に関する組織のパフォーマンスを確認する上で重要な役割を果たし得る。

組織は,現在の活動を確認することに加え,条件又は期待事項の変化,社会的責任に影響を及ぼす法律

又は規制の動き,

及び社会的責任に関する組織の取組みを強化する新たな機会に精通しているべきである。

この細分箇条では,組織が社会的責任に関する自らのパフォーマンスをモニタリングし,確認し,改善す

るために採用することができる幾つかの技法について述べる。

7.7.2 

社会的責任に関する活動のモニタリング 

組織のあらゆる部分で,社会的責任が効果的かつ効率的に実践されているという確信を得るためには,

中核主題及び関連性のある課題に関係する活動についての継続的パフォーマンスをモニタリングすること

が重要となる。この取組みの広さが,取り扱われる中核主題の範囲,その組織の規模及び性質,その他の

要因によって異なることは明らかであろう。

モニタリングすべき活動を決定するとき,組織は,重要な活動に重点を置き,モニタリングの結果が理

解しやすく,信頼でき,時宜を得ており,ステークホルダーの懸案事項に対応するものになるよう努める

べきである。

社会的責任に関するパフォーマンスのモニタリングに使用できる方法は,適切な間隔での確認,ベンチ

マーキング,及びステークホルダーからのフィードバック入手を含めて様々ある。組織は,自らのプログ

ラムの特性及びパフォーマンスを他の組織の活動と比較することによって,自らのプログラムの本質を理

解することができる場合が多い。こうした比較は,特定の中核主題に関係する行動に焦点を絞っても,そ

の組織全体に社会的責任を統合するためのより幅広い取組みに重点を置いてもよい。

より一般的な方法の一つに,指標に照らした測定がある。指標とは,その組織に関わる結果又は成果に

ついての質的又は量的情報である。指標は比較可能であり,時間の経過とともに変化する。例えば,時間

の経過に伴うプロジェクトの目的達成度をモニタリング又は評価する場合に指標を使用することができる。

指標は,明確で,参考になり,実用的で,比較可能で,正確で,信ぴょう(憑)性があり,かつ信頼でき

るものであるべきである。指標の選定及び使用は,社会的責任及び持続可能性に関する多くの文献で広く

詳しく取り上げられている。

結果が数量で表される指標は,比較的簡単に使用できるが,社会的責任の全ての側面を取り扱うには不


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十分かもしれない。例えば,人権の分野では,男女が公平に処遇されているかどうかについての女性及び

男性の見解は,差別に関する幾つかの定量的指標よりも有意義である可能性がある。調査結果又はフォー

カスグループの討議に関する定量的指標を,見解,傾向,状態又は状況を表す定性的指標と併用してもよ

い。社会的責任は,汚染の低減及び苦情への対応といった測定可能な活動の具体的達成度だけでは表せな

いことを認識することも重要である。社会的責任は,価値観,社会的責任の原則の適用及び姿勢に基づく

ものであるため,モニタリングには,インタビュー,観察,行動及びコミットメントを評価するその他の

技法など,より主観的な取組みが必要となる可能性がある。

7.7.3 

社会的責任に関する組織の進捗及びパフォーマンスの確認 

組織は,社会的責任に関連する活動を日常的に監督しモニタリングするだけでなく,適切な間隔で確認

を行い,

自らの社会的責任の目標及び目的に照らして組織がどの程度実績を上げたかを判断するとともに,

プログラム及び手続において必要とされる変更点を特定すべきである。

一般に,これらの確認では,社会的責任の中核主題全般にわたるパフォーマンスと,過去の確認の結果

とを比較して進捗状況を判断し,自らの目標及び目的に照らして達成度を測定することが必要である。さ

らに,確認には,社会的責任に対する姿勢,その組織全体への社会的責任の統合,原則,運営理念及び慣

行の順守など,

測定しにくいパフォーマンスの側面の調査を含めるべきである。

このような確認作業では,

ステークホルダーの参加が役に立つ可能性がある。

確認作業において問われる論点には,次の事項が含まれる。

−  目的及び目標は,想定したとおりに達成されたか。

−  戦略及びプロセスは,目的に合っていたか。

−  何が効果を上げたか。それはなぜか。何が効果を上げなかったか。それはなぜか。

−  目的は,適切だったか。

−  もっと実績を上げられたはずの事項は何か。

−  全ての関係者が参加しているか。

組織は,自らの確認の結果に基づき,欠陥を修復し,社会的責任に関するパフォーマンスの改善をもた

らすようなプログラムの変更点を特定すべきである。

7.7.4 

データ及び情報の収集及び管理の信頼性向上 

政府,非政府組織,他の組織又は公衆に対しパフォーマンス・データを提出しなければならない組織,

又は機密情報を含むデータベースを保守するためにパフォーマンス・データを提出しなければならない組

織は,システムを詳しく確認することによって,自らのデータの収集システム及び管理システムの信頼性

を高めることができる。このような確認作業は,次の事項を目的とすべきである。

−  組織が他者に提供するデータが正確であるという点について自らの自信を高める。

−  データ及び情報の信頼性を高める。

−  データのセキュリティ及びプライバシーを適宜保護するため,システムの信頼性を確認する。

こうした詳細な確認作業は,温室効果ガス排出又は汚染物質に関するデータ公表についての法的要求事

項,その他の要求事項,出資団体又は監督機関へのプログラム・データ提出に関する要求事項,環境ライ

センス又は環境許可の条件,及び財務データ,医療データ,個人データなどの個人情報保護に関する配慮

によって促されるかもしれない。

こうした確認作業の一環として,組織内部又は外部の中立の第三者又は中立のグループが,組織による


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データの収集方法,記録方法又は保存方法,処理方法,及び使用方法を検査すべきである。こうした確認

作業は,エラーによるデータ汚染又は無許可の者によるアクセスを可能にするようなデータ収集システム

及びデータ管理システムのぜい(脆)弱性を発見する上で役立つ可能性がある。また,確認作業の結果は,

その組織が自らのシステムの強化及び改善を図る上で役立つ可能性がある。データの正確性及び信頼性の

向上は,データ収集担当者の十分な教育訓練,データの正確性に対する明確な説明責任,エラーを起こし

た者への直接的なフィードバック,並びに報告されたデータと過去のデータ及び似たような状況で得られ

たデータとの比較を行うデータ品質保持プロセスによっても図ることができる。

7.7.5 

パフォーマンスの改善 

組織は,定期的な確認又はその他の適切な間隔での確認に基づき,社会的責任に関する自らのパフォー

マンスが改善できる方法を検討すべきである。確認の結果は,組織の社会的責任の継続的改善を図るため

に使用すべきである。

改善のためには,

状況の変化又はより高度な目標達成に向けた意欲を反映するよう,

目標及び目的を修正することが必要な場合がある。社会的責任に関連する活動及びプログラムの範囲は,

拡大することができる。社会的責任に関連する活動のための資源追加又は別の資源提供も検討対象の一つ

である。改善には,新たに発見された機会を利用するプログラム又は活動も含まれることがある。

確認作業の過程で表明されたステークホルダーの見解は,組織が新たな機会及び期待事項の変化を特定

する上で役立つかもしれない。これは,組織が社会的責任に関する自らの活動のパフォーマンスを改善す

る上で役立つものであるべきである。

組織の目標及び目的の実現を促すため,社会的責任に関する具体的な目的の達成を,上級管理者及び管

理者の年次のパフォーマンスの確認,又は定期的なパフォーマンスの確認と結び付けている組織もある。

こうした手順によって,社会的責任に関するその組織の行動が,真剣なコミットメントであることが強調

される。

7.8 

社会的責任に関する自主的なイニシアチブ 

7.8.1 

一般 

多くの組織は,より社会的に責任を果たそうとする他の組織を支援するための自主的なイニシアチブを

展開している。社会的責任に関するイニシアチブが,実際に社会的責任の様々な側面に表立って取り組む

ために設立された組織の形で行われることもある。結果として,社会的責任に関心をもつ組織が実行でき

るイニシアチブは極めて多様である。

他の組織に参加する組織もあれば,

他の組織を支援する組織もある。

こうした社会的責任に関するイニシアチブの中には,一つ若しくは複数の中核主題又は課題の側面に取

り組むものもある。また,社会的責任を組織の決定及び活動に統合することのできる様々な方法に取り組

むイニシアチブもある。社会的責任に関するイニシアチブの中には,組織全体に社会的責任を統合するた

めに用いることができる特定のツール又は実践的手引を,作成又は推進するものもある。社会的責任に関

する最小限の期待事項を作成し推進するイニシアチブもある。これらの期待事項は,行動規範,提言,指

針,原則の宣言,運営理念など,様々な形をとり得る。あるセクターに特有の課題の幾つかに取り組むた

め,様々なセクターが展開してきたイニシアチブもある。特定のセクターにおいて社会的責任に関するイ

ニシアチブが存在するからといって,そのセクターがより重い責任を負っていること,又は潜在的により

有害であることを意味しない。

7.8.2 

参加の自主的な性格 

組織が社会的責任を果たすために,

社会的責任に関するこれらのイニシアチブのいずれかに参加したり,

又はこれらのツールのいずれかを使用する必要はない。さらに,あるイニシアチブへの参加又はあるイニ

シアチブのツールの使用自体が,組織の社会的責任を示す信頼性の高い指標とはならない。組織は,社会


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Z 26000

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的責任に関するイニシアチブを評価する際には,必ずしも全てのイニシアチブが,ステークホルダーの見

地から好ましく又は信頼できるものとして映っていないことを認識すべきである。組織は,また,特定の

イニシアチブが自らの社会的責任への取組みに役立つかどうか,また,そのイニシアチブが主に広報活動

の一形態なのか,それともメンバー又は参加組織の評判を守る手段なのかを客観的に判断すべきである。

社会的責任は,単なるリスクマネジメントの一形態として取り扱うべきでない。社会的責任に関するイニ

シアチブを評価する場合に特に重要となる考慮点は,そのイニシアチブが,既に確立され,認識されてい

る責任ある行動への期待事項を独自に解釈し直したものかどうかである。

単一のセクター又は一種類の組織のために開発されたイニシアチブが,単一のステークホルダーによる

統治構造をもつかもしれないことを考えると,ステークホルダーとの効果的なエンゲージメント,並びに

複数のステークホルダーが参加する統治及び開発のシステムは,社会的責任に関する一部のイニシアチブ

と他のイニシアチブの違いを際立たせる重要な特性である。そのイニシアチブが,関係する組織及び対象

となる可能性の高いステークホルダーからのインプット及び関与の下で開発されたものかどうかを考慮す

べきである。

組織は,社会的責任に関する一つ若しくは複数のイニシアチブに参加したり,又はそのツールを使用す

ることが有益と考えるかもしれない。イニシアチブへの参加は,いずれにしても,他者の支援を得ること,

他者から学ぶことなど,組織内での具体的な行動につながるものであるべきである。組織がそのイニシア

チブに付随するツール又は実践的手引を使用し又は活用し始めるとき,

参加は特に有益なものとなり得る。

組織は,何らかの形の認定を求めるために社会的責任に関するイニシアチブを利用してもよい。社会的

責任に関するイニシアチブの中には,特定の慣行又は特定の課題に関するパフォーマンス又は順守が公に

認められるための信頼できる根拠として幅広く認められているものもある。社会的責任に関するこれらの

イニシアチブが提供する実践的手引は,自己評価のためのツールから第三者による検証まで様々であり得

る。

7.8.3 

考慮点 

社会的責任に関するイニシアチブに参加するか,

又はイニシアチブを利用するかどうかを判断する際に,

組織は,次の要素を検討すべきである。

−  そのイニシアチブは,箇条 に述べられた原則に則しているか。

−  そのイニシアチブは,その組織が特定の中核主題又は課題に取り組み,及び/又は自らの活動全体に

社会的責任を統合することができるよう支援するための重要かつ実践的な手引を提供しているか。

−  そのイニシアチブは,ある特定の種類の組織又はそのような組織が関心をもつ領域を対象としたもの

か。

−  そのイニシアチブは,その土地又は地域に適用可能なのか,グローバルな活動範囲をもつのか,又は

あらゆる種類の組織に適用されるのか。

−  そのイニシアチブは,その組織が特定のステークホルダー集団に手を差し伸べる上で役立つか。

−  そのイニシアチブを開発し,管理する,一つ又は複数の組織の種類(政府,NGO,労働組合,民間部

門,学術団体など)

−  そのイニシアチブを開発し,管理する,一つ又は複数の組織の評判。その組織の信頼性及び誠実さを

考慮する。

−  そのイニシアチブが開発され,管理されるプロセスの性質。例えば,そのイニシアチブは,先進国及

び途上国の参加者が加わり,複数のステークホルダーによる透明で開放された,誰でも参加できるプ

ロセスを通じて開発されたか,又はそのようなプロセスによって管理されているか。


87

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

−  そのイニシアチブの参加しやすさ。例えば,参加のために組織は契約を結ばなければならないのか,

又はそのイニシアチブへの参加に費用はかかるのか。

これらの要素,その他の要素を検討する際に,組織は,その結果をどのように解釈するのかを慎重に考

慮すべきである。例えば,あるイニシアチブが幅広く受け入れられていることは,そのイニシアチブの要

件があまり厳格でないことの表れであるかもしれないが,そのイニシアチブの実行可能性,価値,評価又

は関連性を示すものかもしれない。これに対し,価値及び実行可能性がまだ証明されておらず,新しくあ

まり広く使われていないイニシアチブが,より革新的であったり意欲的であるかもしれない。さらに,無

償で利用できるイニシアチブは一見魅力的かもしれないが,有償で利用するイニシアチブのほうが最新状

態に保たれており,長期的にはより価値が高いかもしれない。したがって,あるイニシアチブ又はツール

が無償又は有償で利用できるという事実が,その特定のイニシアチブ又はツールの価値を示すとは考える

べきでない。

選択したイニシアチブの価値,関連性及び/又は適用可能性を定期的に確認することが重要である。

7.8.4 

附属書 に関する注記 

附属書 は,社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールを,限定的に列挙したものである。

これらのイニシアチブ及びツールは,この規格の対応国際規格である ISO 26000 を作成する過程で,ISO 

26000

ワーキング・グループに参加する専門家によって,

附属書 に記載された特別な基準を用いて特定

された。これらの基準は,

附属書 に列挙された社会的責任に関するイニシアチブ又はツールの価値又は

有効性に対するこの規格の判断を示すものではない。さらに,社会的責任に関するイニシアチブ又はツー

ルが

附属書 において示されたということは,そのイニシアチブ又はツールをこの規格が何らかの形で是

認したことを意味するものではない。この規格の適用範囲において客観的に測ることができないイニシア

チブの重要な特性(その有効性,信頼性,合法性,代表性など)は,ここでは考慮に入れていない。こう

した特性については,そのイニシアチブ又はツールの使用を検討している者が直接評価すべきである。イ

ニシアチブを評価する上で考慮すべき他の重要な側面に関する指針を

ボックス 16 に示す。

ボックス 16  −  認証可能なイニシアチブ,及び商業的又は経済的利害に関係するイニシアチブ 

附属書 に列挙された社会的責任に関するイニシアチブの中には(全てではないが),そのイニシアチ

ブに対する中立の第三者による認証の可能性が含まれるものがある。認証がそのイニシアチブの利用の条

件になっている場合もある。あるイニシアチブに認証の可能性,又は認証のための要求事項が含まれるか

らといって,それがそのイニシアチブの価値を示すものであるとは考えるべきでない。認証を伴うものを

含め,

附属書 に列挙されたツール又はイニシアチブの実施を,この規格への適合を主張するため,又は

この規格の採用若しくは実施を示すために使用することはできない。

“営利”組織によって展開されているのか,又は“非営利”組織によって展開されているのかにかかわ

らず,一部のイニシアチブ又はツールは,使用料,会費,又は検証サービス若しくは認証サービスの料金

を課すという点で商業的又は経済的利害に結び付いている。製品又は組織を普及するためにイニシアチブ

又はツールを使用することも,こうした商業的関係の一つの例である。こうした利害の存在そのものが,

社会的責任に関するイニシアチブの否定的側面であるというわけではない。例えば,そのイニシアチブ又

はツールを統括する組織にとって,その費用及び活動をカバーすることが必要なのかもしれないし,それ

が製品又は組織の関連特性をステークホルダーに知らしめるための合法的手段なのかもしれない。しかし


88

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

ながら,こうした利害に結び付いているイニシアチブ又はツールを評価するとき,この規格の利用者は,

付随する商業的利害及び利害の対立の潜在的可能性を考慮すべきである。例えば,社会的責任に関するイ

ニシアチブを統括する組織が,認証の付与によって収入を得ることを必要以上に優先し,係る認証に必要

な要求事項を検証するときに正確性が損なわれることがあるかもしれない。したがって,イニシアチブ又

はツールが商業的又は経済的利害と結び付いている場合には,これらのイニシアチブ又はツールを統括す

る組織の信頼性を評価することが非常に重要である。


89

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

附属書 A

(参考)

社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの例

この附属書を使用する際に,この規格はマネジメントシステム規格ではないことを念頭に置くことが重

要となる。この規格は,認証目的,又は規制若しくは契約のために使用することを意図したものではなく,

それらに適切なものでもない。認証を授けるといういかなる申し出も,又はこの規格の認証を取得したと

いう主張も,この規格の意図及び目的を正確に表していない。この附属書の情報の目的は,あくまでも社

会的責任に関する,利用可能な自主的な手引の例を追加的に示すことにすぎない。これらのイニシアチブ

は,社会的責任に関する有用な手引を提供するかもしれないが,組織がこれらのイニシアチブへ参加した

り,これらのツールを使用すべきであることは,社会的に責任のある組織になるための前提条件とはなら

ない。

この附属書には,社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの限定的なリストを記載してい

る。この附属書の目的は,社会的責任の中核主題及び社会的責任の統合慣行に関する追加的な手引を提供

するかもしれない,現存するイニシアチブ及びツールの例を挙げることにある。

社会的責任をよりよく理解し実施するために,利用者がこの規格の不可分の部分である

参考文献を参考

とすることも勧める。

参考文献は,この規格の推奨事項にとっての権威ある出典と考えられる国際的な文

書の出典を含んでいる。

この規格において,社会的責任に関するイニシアチブとは,

“明らかに社会的責任に関係する特定の目的

の達成に専念しているプログラム又は活動”

2.10)のことをいう。社会的責任に関するツールとは,社会

的責任に関する特定のイニシアチブに関連し,組織による社会的責任に関する特定の目的の達成を支援す

ることを目的とするシステム,方法又は類似する手段のことをいう。

この附属書には,複数のセクターに適用される(

表 A.1“セクター横断的な”)イニシアチブ及びツール,

並びに特定の公共・民間セクターだけに適用される(

表 A.2“セクター別”)イニシアチブ及びツールに関

する二つの表が記載されている。

表 A.1 に記載の社会的責任のためのセクター横断的なイニシアチブには,(政府間組織によって開発及

び運営される)

“政府間のイニシアチブ”

(マルチ・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営さ

れる)

“マルチ・ステークホルダー・イニシアチブ”

,並びに(シングル・ステークホルダーのプロセスに

よって開発又は運営される)

“シングル・ステークホルダー・イニシアチブ”の三つの種類がある。

表 A.2 に記載の社会的責任のためのセクター別イニシアチブとは,(農業,IT,公共サービス,旅行・観

光業などの)特定のセクターの特定の課題に取り組んでいるセクターによって開発されたイニシアチブの

ことをいう。

この附属書にはイニシアチブを開発したセクターが全て記載されているわけではなく,

また,

表 A.2 に記載のセクターのイニシアチブが全て含まれているわけでもない。特定セクターにイニシアチブ

が存在するからといって,そのセクターがより重い責任を負っていること,又はより有害であるというこ

とを意味しない。

記載されている各イニシアチブ又はツールには,それを開始した単一又は複数の組織名,及びそれに関

連するこの規格の中核主題又は社会的責任を統合するための慣行に関する情報が記載されている。表には

その他,インターネット・アドレス,そのイニシアチブ又はツールの使用目的及び潜在的利用者に関する

簡単な説明,並びにそのイニシアチブ又はツールの利用に会員資格が求められているか否かが記載されて


90

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

いる。

イニシアチブ又はツールの開発又は運営への政府間組織及びステークホルダーの関与に関わる情報,

並びにそのイニシアチブ又はツールが認証目的か否かも記載されている。

この附属書の情報は,この規格の起草に参加した専門家によって提供された。この情報は,この規格の

完成時点での状況を反映しており,

この規格の対応国際規格が改正される際には,

見直される予定である。

この附属書の情報はあくまで限定的な内容にとどまっている点,及び社会的責任の理念は常に発展し続け

ている点を踏まえ,

複数のイニシアチブ又はツールの使用の可能性を検討している組織は,

それぞれの国,

地域及びセクターに適切なイニシアチブについて,

他の情報源から最新情報の取得に努めることも勧める。

この附属書に記載された社会的責任に関する自主的なイニシアチブ又はツールは,次の全ての基準を満

たすものに限られている。

−  一つ以上の中核主題の側面又は社会的責任の統合側面に対応している(この規格の箇条 5∼箇条 

記載)

−  単一の一国,又は(海外で運営の場合でも)単一の国の組織による使用だけを目的としていない。

−  現在複数の国で使用されている。

−  単一の組織又は複数の組織グループ(つまり,共通の所有者又はパートナーを介してつながりのある

複数組織のこと)による使用を目的としていない。

−  ツール又は手引として無償で公開されている(

注記:そのイニシアチブ又はツールに責任をもつ組織

が,会費,サービス料など,利用者の経費負担を含むその他の活動を行っているかもしれないが,そ

の経費がそのイニシアチブ又はツールにある意味で関連しているか否かにかかわらず,そのイニシア

チブ又はツールがこのリストから除外されることはない。

−  主に金銭上の利益獲得を目的とする“営利”民間組織によって運営されていない。

−  ISO の公用語の中の一つ以上の言語で利用可能である。

ボックス 17  −  この規格はイニシアチブを是認しているわけではない 

上記の基準は,この附属書に列挙された社会的責任に関するイニシアチブ又はツールの価値又は有効性

に対するこの規格の判断を示すものではない。この基準の意図は,あくまで多くの組織に適用可能なイニ

シアチブ及びツールの例を特定するための客観的な基準を示すことである。

これらのイニシアチブ又はツールの使用を決定する際には,組織は,7.8 に記載されている検討事項を留

意すべきである。この附属書には認証を必要とする社会的責任に関するイニシアチブも幾つか記載されて

いるが,この規格の手引に従っているとみなされるために,必ずしもこれらのイニシアチブの認証を取得

する必要はない(

ボックス 16 参照)。

社会的責任に関するイニシアチブ又はツールが

附属書 において示されたということは,そのイニシア

チブ又はツールをこの規格が何らかの形で是認したことを意味するものではない。また,この規格の適用

範囲において客観的に測ることができないイニシアチブの重要な特性(その有効性,信頼性,合法性,代

表性など)は,ここでは考慮に入れていない。こうした特性については,そのイニシアチブ又はツールの

使用を検討している者が直接評価すべきである。


91

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.1−セクター横断的なイニシアチブの例

(複数のセクターの活動に適用。7.8 及び

附属書 の序文も参照)

この附属書の情報は,この規格の完成時点での状況を反映している。この附属書に含まれる情報はあくまで限定的

な内容にとどまっている点,及び社会的責任の理念は常に発展し続けている点を踏まえ,他の情報源から最新情報の
取得に努めることを勧める。

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4 6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクション 1:政府間のイニシアチブ

(国連機関などの政府間団体の直接責任の下で運営されるイニシアチブ及びツール)

OECD

統治の弱い地域で活動
する多国籍企業のため
のリスク認識ツール

(Risk Awareness Tool 
for Multinational 
Governance Zones

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

統治の弱い国々での潜在的活動に関するリスク及び
倫理的ジレンマを調査する上で使用するチェックリ
ストを企業向けに提供する。www.oecd.org/

UNCTAD

会計・報告の国際基準
に関する専門家による

政府間作業部会

ISAR)

X

X

X

X

X

X

X

企業の透明性及び企業レベルでの会計上の課題を専
門とする作業部会。企業会計及び報告で取り組まれる
課題には,国際財務報告基準(IFRS)の実施,中小
企業による会計,企業統治の開示,企業責任報告,環
境報告などがある。ステークホルダーのグループは年
次会合において,当該グループが取り扱う諸課題への
取組みを討議し,合意する。全ての組織が利用できる。
会費は不要。www.unctad.org/isar

UNEP

CN

ネットワーク

X

X

X

X

X

全ての組織が利用できる UNEP 傘下のイニシアチブ。
組織がどのようにしたら温室効果ガス排出削減を達
成できるかに関する情報交換を促す。海外の任命ステ
ークホルダーによる理事会が同プログラムを監督。
http://www.unep.org/climateneutral/

UNEP

ライフサイクル

イニシアチブ

X

X

X

X

X

X

X

ライフサイクルマネジメントの分野で活動的な組織
に属する専門家が利用できるイニシアチブ。年会費が
必要。ライフサイクルアプローチにおける能力向上及
び教育訓練向上を目指す国連事務局員及びステーク
ホルダー参加者で構成するタスクフォース。国連環境
プログラムの関連イニシアチブ。

http://lcinitiative.unep.fr/

国連グローバル・コン

パクト(UNGC

X

X

X

X

X

事業組織を対象とする国連によるイニシアチブ。全て
の組織が利用でき,参加組織は自らの戦略及び事業を
人権,労働,環境及び汚職防止に関する 10 の原則に
整合させるよう専念し,国連の広範な目標を支援する
行動をとる。自発的な発表として,組織は,方針及び
慣行を通じた 10 の原則の実施の努力に関する報告を
年ごとに行う必要がある。UNGC は参加組織を支援
するためにあらゆる方針分野のツール及び手引資料
を作成している。会費は不要。

www.unglobalcompact.org/

UNGC

UNDP

UNITAR

国連パートナーシップ

評価ツール

X

X

X

官民間のパートナーシップの持続可能な発展への影
響及び貢献を強化するための自己評価計画ツール。全
ての組織に無料配布。世界中の組織に向けた CSR 
ネジメントの手法/技術を普及するためのコンサル
タントを UNIDO が訓練する。

www.unglobalcompact.org/Issues/partnerships/pat.html

UNIDO 

責任ある企業家達成

プログラム

Responsible 

Entrepreneurs 

Achievement 

Programme

 

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

中小企業向けに UNIDO が支援するイニシアチブ。会
員登録及び会費不要。CSR に関する中小企業支援の
ための体系的枠組み及び分析ソフトウェアの提供。
www.unido.org/reap


92

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.1−セクター横断的なイニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベッ

ト順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクション 2:マルチ・ステークホルダー・イニシアチブ

(マルチ・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営されるイニシアチブ又はツール)

アカウンタビリティ

AccountAbility

AA1000

シリーズ

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

全ての組織及び個人が利用できる会員制組織。会費必
要。持続可能性及び社会的責任報告の保証,並びにス
テークホルダーエンゲージメントをテーマとする。全
ての組織が利用できる三つの基準が定められている。
・  AA 1000APS−Accountability 原則基準

・  AA 1000AS−保証基準

・  AA 1000SES−ステークホルダーエンゲージメン

ト基準

www.accountability21.net

アムネスティ・ 

インターナショナル

企業のための人権の

原則

X

X

X

人権尊重推進を目指す個人が利用できる会員制組織。
特定国の人権尊重に関する情報源。出版物“企業のた
め の 人 権 の 原 則 ( Human Rights Principles for 
Companies

”には,チェックリストが記載されている。

www.amnesty.org

ビジネス倫理

イニシアチブ

BSCI

X

X

X

X

X

X

X

 X

 

主に大規模小売業者のサプライチェーンの労働慣行
に取り組む企業イニシアチブ。会員は供給者の行動規
範順守の監査に同意する小売業者及び販売会社が大
半を占める。会費要。同イニシアチブが監査人を認証
する。

www.bsci-eu.org

ビジネス倫理 

センター(ZfW

価値マネジメント

システム

(Values Management

System

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

ドイツ及び欧州におけるビジネス倫理の向上を目指
した活動に従事している組織。法的,経済的,生態学
的,社会的課題に関する“統治フレームワーク”など
の教育訓練ツール及び管理ツールを提供している。
www.dnwe.de/wertemanagement.php

(ドイツ語)

セリーズ(Ceres

セリーズ原則

X

X

X

主として環境及び統治課題への企業の関与を目的と
した資本市場の活用を探る環境関連組織及び投資家
の会員制組織。企業はセリーズ原則を是認することが
求められている。セリーズ原則の実施には,監査及び
公開報告が含まれる。会費要。会員企業は,環境課題
及びその管理に関する技術的な支援を利用できる。
www.ceres.org

CSR360

グローバル・パートナ

ー・ネットワーク

(Global Partner Network)

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

国際的な CSR 情報交換を推進する。

“パートナー組

織”となるには寄付及び承認が必要。英国を拠点とし
て活動する BITC(Business in the Community)によっ
て取りまとめられている。

www.csr360.org

欧州品質マネジメン

ト財団(EFQM

CSR

及びエクセレン

スモデルのための枠
組み(Framework for

CSR and Excellence

Model

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

CSR

マネジメントにおける利用のために作成された

“自己評価”ツール。EFQM は,企業,政府及び非
営利団体に開かれた会員制の組織である。会費要。情
報交換を円滑にし,会員へのサービスを提供してい
る。

www.efqm.org

ETI

エシカル・トレーディ

ング・イニシアチブ 

X

X

X

X

X

X

X

X

X

企業,NGO 及び特定の労働組合が参加できる会員制
組織。調達企業が NGO 及び労働組合と連携し,サプ
ライチェーン労働慣行規範の実施の最善策を学ぶこ
とを目的としている。企業は会費が必要で,その供給
者への労働慣行規範の適用に合意し,活動報告をし,
その他の要求事項を順守することが求められる。

www.ethicaltrade.org/

欧州企業倫理

ネットワーク

EBEN

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

年会費が必要な会員制組織。ビジネス倫理の推進を専
門とする。会議の主催及び出版物の刊行に携わる。企
業倫理担当者,その他の専門家のための国内ネットワ
ーク及び特定のテーマに関わるネットワークも主催
する。

www.eben-net.org


93

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.1−セクター横断的なイニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベッ

ト順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクション 2:マルチ・ステークホルダー・イニシアチブ

(マルチ・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営されるイニシアチブ又はツール)

公正労働協会

FLA

X

X

X

X

X

X

X

X

X

サプライチェーン労働慣行に取り組むために設立さ
れたマルチ・ステークホルダーのイニシアチブ。調達
企業,大学及び NGO が参加。参加企業は,その供給
者の労働条件のモニタリング及び検証を支援する必
要がある。FLA は公開報告書を発行している。

www.fairlabor.org/

FORÉTICA

SGE 21

倫理及び CSR

マネジメントシステ

(SGE 21 Ethical and

CSR Management

System

X

X

X

X

X

X

倫理及び社会的責任に関するマネジメントシステム
の構築,実施及び評価に関わる基準を定めるイニシア
チブ。

www.foretica.es

(スペイン語)

グローバル・ 

レポーティング・ 

イニシアチブ

GRI

持続可能性の報告に 
関するガイドライン

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

UNEP

及びセリーズ(この

附属書 に記載あり)が

開発したイニシアチブで,持続可能性に関する報告に
利用できる基準指標,ガイドライン及び補足文書を提
供する。世界の組織ステークホルダーが手引及び統治
を提供している。ガイドライン,補足文書及び附属書
は,GRI のウェブサイトで無料配布されている。そ
の他関連するトレーニング教材が有料だが少額で提
供されている。ツールには次が含まれる。

サステナビリティレポーティングガイドライン(指標
及び原則)

建設,通信,公的機関など,様々な業種別補足文書
バウンダリー・プロトコル(Boundary Protocol)

(影

響力の範囲,及び影響の分析)

www.globalreporting.org

デンマーク人権研究所

人権コンプライアン

ス評価

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

この研究所は国営の人権関連組織で,様々な国におけ
る人権情勢の情報を提供する人権及び事業プロジェ
クトに携わっている。また,管理ツール及びガイドを,
場合によっては有料で提供している。“人権コンプラ
イアンス評価”はウェブサイトから有料で入手できる
非常に詳細なツールである。より簡単な“HRCA Quick 
Check

”は無料提供されている。

www.humanrightsbusiness.org

国際社会環境認定

表示連合

ISEAL

X

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X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

国際的な,社会,環境関連基準制定組織のための会員
制組織。社会的課題及び環境課題の自主的基準及び適
合性評価を促進。基準制定及び評価のツールを提供。
会員登録費を要する。

www.isealalliance.org

アーティクルマネジ

メント推進協議会

JAMP

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

製品が含有する化学物質に対する法的要求事項に適
合するよう組織を支援するための,有料の会員制情報
交換プログラム。製品が含有する化学物質に関わる情
報の記載,伝達のためのデータシート様式,及びデー
タシート交換のための IT インフラを提供。同プログ
ラムの普及のための教育研修を実施。

http://www.jamp-info.com/english/

国際枠組協約 

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

多国籍企業(TNE)と国際産業別労働組合組織(GUF
との間の協約。主に,特定の多国籍企業の事業におけ
る労働慣行に関連する問題に国際レベルで取り組む
方法の提供を目的とする。

http://www.global-unions.org/spip.php?rubrique70

レインフォレスト・

アライアンス 

X

X

X

X

X

X

X

X

社会及び環境に関わる基準の制定,並びに林業,農業
及び旅行・観光業に携わる業者への認定書発行を目的
に設立された会員制組織。

レインフォレスト・アライアンスによる認証取得のた
めの活動に携わる業者に対する教育訓練及び技術支
援を提供している。

www.rainforest-alliance.org


94

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.1−セクター横断的なイニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベッ

ト順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクション 2:マルチ・ステークホルダー・イニシアチブ

(マルチ・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営されるイニシアチブ又はツール)

企業倫理研究センター

R-bec

倫理法令遵守

マネジメント・

システム

X

X

倫理法令遵守マネジメントシステムの開発を希望す
る全ての組織のための無料のマネジメントシステム
規格。

http://r-bec.reitaku-u.ac.jp/

(日本語)

SIGMA

プロジェクト

サステナビリティ統
合マネジメントシス

テムガイドライン

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

持続可能な発展への貢献方法を組織に勧告する指針
文書。無料。

http://www.projectsigma.co.uk/Guidelines/default.asp

Responsabilidad Social 

Empresarial

Caja de Herramientas

para America Latina

X

X

X

X

X

  X

 

ラテンアメリカ地域の中小企業を支援し,その社会的
責任イニシアチブ及び慣行の改善を促す,一連の分析
及び教育訓練ツール。

www.produccionmaslimpia-la.net/herramientas/index.htm
(スペイン語)

ソーシャル・ 

アカウンタビリティ・ 

イニシアチブ

SAI

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

労働慣行に取り組むマルチ・ステークホルダーのイニ
シアチブ。事業所向けの監査可能な SA8000 基準を制
定。社会的に責任のあるサプライチェーン管理システ
ム実施のためのハンドブック,その他ツールを作成し
ている。パートナーを組み,監査人,労働者,供給者,
顧客に教育訓練及び技術支援を提供している。独立組
織であるソーシャル・アカウンタビリティ認定サービ
ス(SAAS)が SA8000 認証機関を認定する。

www.sa-intl.org

ナチュラル・ 

ステップ・ 

インターナショナル

TNS

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X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

持続可能な発展を目的とする国際的な非営利組織。
TNS

は複雑なシステムを計画するためのモデル,及

び自由に利用可能なツールを提供して,個人及び組織
が持続可能な発展を学び,持続可能な発展に貢献でき
るようにしている。

www.thenaturalstep.org

トランスペアレンシー・ 

インターナショナル

TI

様々なツール

X

X

X

X

X

汚職撲滅に取り組むグローバルな会員制 NGO。組織,
特定の経済部門及び政府機関に向けた,ツール及びデ
ータの提供を行っている。ツールには次が含まれる。
贈収賄撤廃のための事業原則,マルチ・ステークホル
ダーによって策定された自主的規範

・  世界汚職報告書

・  汚職認識指数

・  贈賄指数

・  世界汚職バロメーター

・  誠実協定

www.transparency.org

セクション 3:シングル・ステークホルダー・イニシアチブ

(シングル・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営されるイニシアチブ及びツール)

コー円卓会議

企業の行動指針

X

X

X

X

X

X

X

倫理原則,並びに企業の管理職,官僚及び市民の間の
協力及び対話の推進を目指す企業人から成る,国別支
部をもつネットワーク。企業の行動指針では,事業を
倫理的に実施する際に従うべき原則宣言が示されて
いる。www.cauxroundtable.org

国際消費者機構

グローバル企業のた

めの消費者憲章

X

X

X

X

X

X

消費者団体の国際連合。憲章には消費者の関心分野に
おける最良のビジネス慣行及び消費者の権利が定め
られている。会員登録は有料。会員は規範及び憲章制
定の投票権をもつ。www.consumersinternational.org

CSR Europe

ツールボックス

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

欧州の企業及び各国 CSR 組織を対象とする,会員制,
会費制のイニシアチブ。プロジェクトの実施,会議の
主催,及び出版物の発行を行っている。ツールボック
スとは,会員及びそのステークホルダーが携わるテー
マ別に整理されたプロジェクトを通じて作成された
一連の指針,その他資料をまとめたもので,ウェブか
らアクセスできる。www.csreurope.org/


95

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.1−セクター横断的なイニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベッ

ト順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクション 3:シングル・ステークホルダー・イニシアチブ

(シングル・ステークホルダーのプロセスによって開発又は運営されるイニシアチブ及びツール)

エトス研究所

エトス CSR 指標

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X

X

X

X

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X

X

企業セクターにおける社会的責任の促進に重点的に
取り組むブラジルの組織。一連の CSR 指標を含む,
幾 つ か の CSR ツ ー ル の 提 供 を , 無 償 で 実 施 。
www.ethos.org.br

社会的責任に関する

グローバル・サリバン

原則 

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X

X

X

X

X

X

X

社会,経済及び環境に関わるパフォーマンスの,世界
規模の自主的な行動規範。組織は,組織内の政策立案,
教育研修及び報告の原則に従うことを約束する。行動
規範の使用は無償で,会員登録も不要。行動規範の具
体化にステークホルダーエンゲージメントは不要。
www.thesullivanfoundation.org/

国際ビジネス・リーダ

ーズ・フォーラム

IBLF

人権影響評価指針

X

X

X

X

X

持続可能な発展への企業貢献を推進する,大規模事業
組織に支援されている非営利財団。

“解釈される人権

−企業のための参考ガイド(Human Rights Translated: 
A Business Reference Guide

”など,多様な出版物及び

ツールを作成している。2007 年,IBLF は世銀グルー
プの国際金融公社(IFC)と共同で“人権影響評価及
び管理ガイ ド−ロー ドテスト 案(Guide to Human 
Rights impact Assessment and Management Road Testing 
Draft

”を発行。http://www.iblf.org/resources/guides.aspx

国際商業会議所(ICC

様々なツール及びイ

ニシアチブ

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

企業の利害を代表する,会員制かつ会費制の国際的な
ビジネス組織。社会的責任に関する,次を含む多数の
イニシアチブ及びツールの提供を行っている。

・  宣伝及びマーケティングコミュニケーション慣

行に関する ICC 規約

・  責任あるビジネス慣行に向けた九つの ICC ステ

ップ

・  サプライチェーンの責任に関する ICC の手引

・  責任ある調達に関する ICC の指針

・  持続可能な発展を目的とした ICC ビジネス憲章
www.iccwbo.org

反汚職パートナー・イ

ニシアチブ(PACI

贈収賄防止のための

事業原則

X

署名した企業が,いかなる贈収賄も許さない措置を講
じることが要求される贈収賄撤廃慣行のための自発
的な行動規範。会員制だが,会費は不要。三つの作業
部会及び一つの管理者理事会を通じ,ステークホルダ
ーが管理している。

http://www.weforum.org/en/initiatives/paci/index.htm

持続可能な開発のた
めの世界経済人会議

WBCSD

様々なイニシアチブ

及びツール

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X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

主に大企業を対象とした会員制組織。年会費が必要。
一般市民による利用が可能な,次を含む多数のイニシ
アチブ及びツールを開発している。

・  グローバル・ウォーター・ツール

・  ステークホルダーエンゲージメントの向上:影響

の測定

・  組織統治:課題管理ツール

・  持続可能な開発:学習用ツール

・  特定の社会的課題及び環境課題に関する,その他

多数の手引文書,イニシアチブ及びツール

www.wbcsd.org

WBCSD

及び世界資源

研究所(WRI

温室効果ガス議定書

X

X

“気候変動に関する国際連合枠組条約”の京都議定書
に含まれる六つの温室効果ガス排出に関する報告を
行うための,企業向けに無償で公開されている会計基
準及び報告基準。企業が自らの排出量を算出するため
の様々な支援ツールを提供。

www.ghgprotocol.org


96

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.2−セクター別イニシアチブの例

(一つの特定セクターの活動に適用。7.8 及び

附属書 の序文も参照)

この附属書の情報は,この規格の完成時点での状況を反映している。この附属書に含まれる情報はあくまで限定的

な内容にとどまっている点,及び社会的責任の理念は常に発展し続けている点を踏まえ,他の情報源から最新情報の
取得に努めることを勧める。

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクター:農業

ベター・シュガーケー

ン・イニシアチブ

BSI

X

X

X  X

X

X

X

X

砂糖小売業者,投資家,取引業者,生産者及び NGO
の組織で,砂糖生産に関わる様々な社会的課題及び環
境課題に取り組むための原則及び基準を制定した。運
営委員,作業部会に対する特別顧問,又は作業部会会
員への登録には会費が必要。

www.bettersugarcane.org

コーヒーコミュニテ
ィ協会のための行動

規範(4C

行動規範

X

X

X

X

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X

X

X

コーヒー生産者,(小売業者,ブランドマーケッター,
生産者などの)

“取引及び業者”の組織,及び(NGO

労働組合などの)市民社会のための会員制組織。コー
ヒー生産における社会面,環境面及び経済面での状況
改善の推進を目的として設立。同プログラムには,コ
ーヒーコミュニティ協会のための行動規範(4C

“検

証システム”,生産者向け技術支援などが含まれる。
会員は統治及び検証のイニシアチブに参加する。

www.4c-coffeeassociation.org/

国際フェアトレード 
ラベル機構(FLO

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X

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X

認証組織及び製造者のネットワークを通じ,20 か国
で展開するラベリングイニシアチブ(各国のラベル認
証機関)の統括組織。フェアトレード基準によって,
一般認証又は特定セクターの認証を行う。認証された
加盟者は,認証マークを使用し,総会及び理事会に参
画することができる。

www.fairtrade.net

グローバルギャップ
GLOBALG.A.P.

X

X

X

X

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X

X

GAP

とは,Good Agricultural Practice(優れた農業慣

行)を意味する。農産物及び農業慣行の自主的な認証
基準を規定する非営利団体。会員はこれらの基準策定
に参画する際に会費を支払う。

www.globalgap.org

国際ココア・ 
イニシアチブ 

X

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X

X

X

X

X

X

X

X

カカオ栽培における児童労働,その他の虐待的労働慣
行の問題に対抗する組織。参加組織には,主なチョコ
レート製造業者,ココア加工業者,NGO 及び労働組
合が含まれる。

www.cocoainitiative.org

レインフォレスト・ 

アライアンス

持続可能な農業ネット

ワーク(SAN)基準

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X

X

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X

X

X

輸出用の熱帯作物を耕作する農家及び生産者グルー
プで構成される会員制組織。農家に SAN の基準の順
守を促し,取引業者及び消費者に持続可能性への支援
を動機付けることで,農業バリューチェーンを通じた
最良のマネジメント慣行の促進を目指す。

www.rainforest-alliance.org/agriculture.cfm?id=standards

UTZ CERTIFIED 

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X

責任ある農業慣行及び効率的な農家管理の社会及び
環境に関わる基準を規定する行動規範に基づく認証
イニシアチブ。第三者監査人を置く。現在は,コーヒ
ー,ココア,紅茶及びパーム油の製造に関わる基準に
重点的に取り組んでいる。提供するサービスには,生
産者から加工業者までの製造チェーンを通じて認証
済み製品を追跡し,購買者に製品の出所情報を提供す
る追跡調査システムなどがある。www.utzcertified.org

世界カカオ財団 

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X  X

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X

チョコレート製造企業,ココア加工業者/取引業者,
及びココア業諸団体の,会費制会員組織。持続可能で
環境にやさしい農業,コミュニティの発展,労働基準,
及び改善されかつ公正な収益を促進するプログラム
を支援する。

www.worldcocoafoundation.org


97

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.2−セクター別イニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクター:アパレル

クリーン・クローズ・
キャンペーン(CCC

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X

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X

X

服飾産業の労働条件改善,及び変革を求める同業界の
労働者保護に取り組む欧州 12 か国の組織で構成され
る国際団体。CCC は特別な事例に関わる活動を行い,
企業及び関係当局と連携して解決に当たっている。ま
た,服飾業の労働条件及び労働慣行に関する情報を提
供し,基準規範をもつ。

www.cleanclothes.org

公正な衣料財団

FWF

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X

X

X

X

X

X

X

X

服飾・靴産業セクターのサプライチェーン労働慣行に
関わる問題に取り組むために設立されたマルチ・ステ
ークホルダーの組織。供給元である企業は,毎年の寄
付,労働慣行規範の採用,その他の要求事項を満たす
ことによって FWF の会員となる。企業は行動規範へ
の順守を毎年評価される。

www.fairwear.nl

(オランダ語)

ファー・フリー・リテ

イラー・プログラム

Fur Free Retailer 

Program

X

X

X

消費者に対し,小売業者の毛皮に対する政策に関わる
情報提供を目的とするイニシアチブ。このイニシアチ
ブは,毛皮不使用政策に書面で誓約する小売業者を支
援することで,小売業全体を通じ,毛皮製品販売の撤
廃を目指している。

www.infurmation.com/ffr.php

セクター:バイオ燃料

持続可能なバイオ燃

料の円卓会議 

X

X

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X  X

X

X

X

X

会費制かつ会員制の組織。バイオ燃料生産の原則及び
基準を策定するステークホルダーが関与する討議を
円滑化させる。

http://cgse.epfl.ch/page65660.html

セクター:建設

UNEP

持続可能な建築及び

気候変動イニシアチブ

X

X

X

X

建築・建設業に関わる全ての組織が参加できる。年会
費制。ライフサイクルの視点から,持続可能な建築及
び建設を推進するための共通活動プログラムに携わ
る。会員は活動プログラムに参加し,ツール及びイニ
シアチブを開発して活動プログラムを支援する。国連
環境プログラムと連携している。

www.unepsbci.org

セクター:化学

国際化学工業協会

協議会

レスポンシブル・ケア

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化学関連企業のための会費制かつ会員制の組織。製品
及びプロセスの安全衛生及び環境影響に焦点を当て
ている。製品管理責任プログラムは,化学製品の製造
及び使用,並びにそのサプライチェーンを対象として
いる。

www.responsiblecare.org

セクター:消費財・小売

ビジネス倫理 
イニシアチブ

BSCI

X

X

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X

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X

X

サプライチェーンの労働慣行に取り組む業界団体。小
売業者及び貿易業者,販売業者などが会員である。会
員は,その供給者が BSCI 行動規範を順守しているこ
とを監査することが期待される。BSCI が監査人を認
証する。

www.bsci-eu.org

セクター:電子

電子業界 CSR 

アライアンス

電子業界行動規範

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X  X

     X

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会員制組織。年会費は企業の収益及び会員資格によっ
て異なる。正会員には行動規範の実施が求められる。
業界ステークホルダーで構成される理事会が同組織
の手引及び概要を提供している。

www.eicc.info/

Zentralverband der 

Deutschen Elektro-und 

Elektronikindustrie

企業の社会的責任に

関する行動規範

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X

X

X

会員制組織。行動規範には,電子業界における,経済,
社会及び環境に関わるパフォーマンスの改善に向け
た指針が含まれている。

www.zvei.de

(ドイツ語)


98

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.2−セクター別イニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクター:エネルギー

国際水力協会

IHA

IHA

持続可能性指針

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

水力発電業の業界団体。一般に利用可能な多様なツー
ル及び出版物を作成し,出版している。IHA 持続可
能性指針は,経済的課題,社会的課題及び環境課題に
関わる行動の推奨事項である。

www.hydropower.org

セクター:天然資源

採取産業透明性 

イニシアチブ

EITI

X

X

石油・ガス・鉱業セクターの企業支出及び政府歳入の
開示及び検証を支援する政府,企業,市民社会組織及
び投資家で構成されるマルチ・ステークホルダーのイ
ニシアチブ。会員企業は,

政府への支出報告に合意し,

実施する側の政府は企業から得た収入報告に合意す
る。市民社会組織は,特定計画の策定及びモニタリン
グに参加する。

http://eiti.org

国際石油産業 
環境保全連盟

IPIECA

様々なツール及び

イニシアチブ

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

石油及びガス生産会社のための業界団体。一般市民に
よる利用が可能な,次を含む多数の出版物及びツール
を作成している。

・  石油・ガス業界向け人権関連トレーニングツール

キット

・  自主的な持続可能性に関 する報告に 関わる石

油・ガス業界向け手引

・  温室効果ガス排出量の報告に関する石油業界向

け指針

・  石油・ガス業界の紛争エリアにおける活動に関す

るガイド

www.ipieca.org

国際金属・鉱業評議会

ICMM

持続可能な発展の

枠組み

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

金属・鉱業企業及び関連業界の組織。会員は,10 の
原則で構成される“持続可能な発展の枠組み”の採択
を約束する。

http://www.icmm.com/our-work/sustainable-development-
framework

安全保障及び人権に 

関する自主原則 

X

X

X

X

X

米英政府主導による原則は,企業及び NGO による人
権及び安全保障のリスク問題の特定のための手引を
含んでいる。国家及び民間の安全保障組織との連携に
関する更に詳細な手引も含まれている。これらの原則
の利用には寄付が必要である。

www.voluntaryprinciples.org

セクター:金融・投資

赤道原則 

X

X

X

プロジェクトの資金調達における社会リスク及び環
境リスクを特定し,評価し,管理するための,金融業
界を対象とした基準。

www.equator-principles.com

ESG

報告及び財務分

析への ESG の統合に

関するガイドライン 

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

ESG

(環境・社会・ガバナンス)問題のための報告指

針,及び ESG の分析への統合方法に関する金融分析
基準。

www.dvfa.de/die_dvfa/kommissionen/non_financials/dok/
35683.php

(ドイツ語)

責任投資原則

PRI

X

X

X

X

X

X

X

X

X

環境課題,社会的課題及び企業統治課題を適切に考慮
しながら,投資家による自らの信託義務(又は同等の
義務)の遂行を促すための,フレームワークの提供。
同フレームワークは,指名を受けた専門家であるステ
ークホルダー団体が策定する。会員制。自主的な寄付
を推奨。

www.unpri.org/


99

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.2−セクター別イニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクター:金融・投資

カーボン・ 

ディスクロージャ
ー・プロジェクト

CDP

X

X

X

X

会員制の非営利組織。企業,その他の組織にその事業
による炭素排出の算出方法及び開示方法,並びにその
気候変動リスクへの暴露の評価方法を無償で提供す
る。企業はこの方法を利用し,情報を提供できるよう
になる。情報は CDP ウェブサイトで今後入手できる
予定。CDP ウェブサイトは,金融機関が自らの資金
調達及び投資に起因する炭素排出量を決定する際に
利用できる。

www.cdproject.net

国連環境計画・ 

金融イニシアチブ

UNEP FI

X

X

X

X

X

金融セクターの全ての組織が参加できる会員制かつ
会費制のイニシアチブ。参加組織との密接な協力関係
を通し,環境,持続可能性及び金融パフォーマンス間
のつながりの構築及び促進に努める。ステークホルダ
ーがプロジェクト提案を行い,プロジェクト開発に参
画する。

www.unepfi.org/

ウォルフスバーグ・ 

グループ

ウォルフスバーグ

マネーロンダリング

防止原則

X

X

X

X

X

X

   X

X

 X

汚職及びマネーロンダリングに対抗するための金融
サービス業界基準及び原則を策定する,世界中の銀行
の会員制組織。ステークホルダー代表が基準及び原則
を策定し,一般に公開。

http://www.wolfsberg-principles.com/index.html

セクター:水産業

海洋管理協議会 

X

X

X

X

X

X

持続可能な漁業慣行のための認証及び環境安全ラベ
ルを提供するためのイニシアチブ。このイニシアチブ
には次が含まれる。

責任ある漁業のための行動規範

社会的基準及び環境基準の設定のための優れた実施
例の基準

海洋捕獲漁業による魚介及び漁業製品への環境安全
ラベルの付与に関する指針

認証料及びラベル使用料が必要。

www.msc.org

セクター:林業

森林管理協議会

FSC

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

個人及び組織が利用できる会費制かつ会員制組織。会
員は統治及び政策立案を支援する。FSC は,責任あ
る林業に関心のある企業,組織及びコミュニティに対
し,国際基準規定,商標保証及び認定サービスを提供
する認証システムである。

http://www.fsc.org/

森林認証プログラム

PEFC

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

PEFC

は,林業の持続可能な管理に関わる認証スキー

ムを相互承認するための統括組織である。各国の国家
組織が会員グループの管理及び承認を行う。

http://www.pefc.org

セクター:IT

UNEP

及び国際電気 

通信連合(ITU

グローバル・

e

サステナビリティ・

イニシアチブ(GeSI

X

X

X

X

X

X

情報通信技術産業に携わる全ての企業及び関連組織
が参加できる会費制で,会員制の組織。その会員の持
続可能なパフォーマンス改善のための手引及び評価
ツールを提供している。

www.gesi.org

セクター:輸送

国際道路輸送連盟

持続的な発展憲章

X

X

X

道路輸送に関わる国際代表者団体。同憲章は,同産業
における社会的責任の推進を目的としている。

www.iru.org/index/en_iru_com_cas


100

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 A.2−セクター別イニシアチブの例(続き)

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベット

順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

セクター:旅行及び観光

旅行及び観光業関連 

組織連合

旅行及び観光において
児童を性的搾取から保
護するための行動規範

X

X

X

組織に,旅行及び観光セクターにおける児童に対する
性的搾取の防止を目的とする六つの基準の実施を要
求する自発的な行動規範。これら基準を実施するため
の 無 償 の ト レ ー ニ ン グ キ ッ ト を 提 供 し て い る 。
ECPAT USA

が事務局を提供。

www.ecpat.net

www.thecode.org

レインフォレスト・ 

アライアンス, 

その他パートナー

持続可能な観光基準

グローバル・パートナ

ーシップ

X

X

X

X

X

レインフォレスト・アライアンス,国連環境プログラ
ム,国連基金及び国連世界観光機関によるイニシアチ
ブ。様々な旅行・観光業関連団体及び NGO が含まれ
ている。“持続可能な観光基準”の目的は,持続可能
な観光の共通理解のための基盤となることである。
www.sustainabletourismcriteria.org


101

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

附属書 B

(参考)

略語

APR

年率

CH

4

メタン

CO

2

二酸化炭素

CSR

企業の社会的責任

GHG

温室効果ガス

HIV

/エイズ  ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群

ILO

国際労働機関

MDG

ミレニアム開発目標

NGO

非政府組織

NOx

窒素酸化物

N

2

O

亜酸化窒素

OSH

労働安全衛生

PBT

残留性,蓄積性,毒性を有する物質

POP

残留性有機汚染物質

SMO

中小規模の組織

SOx

硫黄酸化物

UN

国際連合

UNFCCC

気候変動に関する国際連合枠組条約

VOC

揮発性有機化合物

vPvB

高残留性・高生体蓄積性

WTO

世界貿易機関


102

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

附属書 JA

(参考)

社会的責任に関する追加的なイニシアチブ及びツールの例

附属書 JA は,附属書 に含まれていないが,国内で作成され,広く活用されている社会的責任に関す

る自主的なイニシアチブ及びツールの例を示す。

なお,これらのイニシアチブ又はツールの選定に当たっては,

附属書 の七つの選定基準のうち,少な

くとも次を満たすものとした。

−  一つ以上の中核主題の側面又は社会的責任の統合側面に対応している(この規格の箇条 5∼箇条 

記載)

−  単一の組織又は複数の組織グループ(つまり,共通の所有者又はパートナーを介してつながりのある

複数組織のこと)による使用を目的としていない。

−  ツール又は手引として無償で公開されている(

注記:そのイニシアチブ又はツールに責任をもつ組織

が,会費,サービス料など,利用者の経費負担を含むその他の活動を行っているかもしれないが,そ

の経費がそのイニシアチブ又はツールにある意味で関連しているか否かにかかわらず,そのイニシア

チブ又はツールがこのリストから除外されることはない。

−  主に金銭上の利益獲得を目的とする“営利”民間組織によって運営されていない。

注記  上記の基準では,附属書 の選定基準から次が除外されている。

−  現在複数の国で使用されている。

−  単一の一国,又は(海外で運営の場合でも)単一の国の組織による使用だけを目的として

いない。

−  ISO の公用語の中の一つ以上の言語で利用可能である。


103

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

表 JA.1−追加的なイニシアチブの例

(追加的なイニシアチブの例。7.8 及び

附属書 の序文も参照)

この附属書の情報は,この規格の完成時点での状況を反映している。この附属書に含まれる情報はあくまで限定的

な内容にとどまっている点,及び社会的責任の理念は常に発展し続けている点を踏まえ,他の情報源から最新情報の
取得に努めることを勧める。

対応する細分箇条に含まれている側面又は課題の一つ以上に関連す

るイニシアチブ/ツールには 印が記されている。

これは,この規格との整合,又はこの規格による是認を意味するもの

では

ない。 

中核主題*

社会的責任を統合するための 

慣行*

組織

イニシアチブ

又はツール

(セクターごとに,

組織のアルファベッ

ト順に記載)

6.2  6.3  6.4

6.5  6.6  6.7  6.8 5.2 5.3 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7

追加情報

(イニシアチブ/ツールに関する簡単な客観的説明,

その統治へのステークホルダーの参加,

対象及びアクセス条件,認証目的か否か,

詳細参照用ウェブサイトを含む。

注*

この規格の細分箇条:6.2 組織統治,6.3 人権,6.4 労働慣行,6.5 環境,6.6 公正な事業慣行,6.7 消費者課題,6.8 コミュニティへの参画及びコミ
ュニティの発展,5.2 社会的責任の認識,5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント,7.2 組織の特性と社会的責任との
関係,7.3 組織の社会的責任の理解,7.4 組織全体に社会的責任を統合するための実践,7.5 社会的責任に関するコミュニケーション,7.6 社会的
責任に関する信頼性の向上,7.7 社会的責任に関する組織の行動及び慣行の確認及び改善

環境省/生物多様性
民間参画パートナー

シップ事務局

生物多様性民間参画

パートナーシップ

X

X

X

生物多様性の保全及び持続可能な利用など,生物多様
性条約の実施に関して企業,NPO などの民間セクタ
ーの参画を推進するプログラム。

“行動指針”の趣旨

に賛同し,同指針一項目以上の実施及び今後の取組拡
充の意思をもつことが参加条件。

http://www.bd-partner.org/project/

日本の民間金融機関

のイニシアチブ

持続可能な社会の形
成に向けた金融行動

原則

(21 世紀金融行動原則)

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

グローバルな動きも踏まえつつ,日本の金融機関全体
で一つのプラットフォームのもとに持続可能な発展
への取組みを進めるためのイニシアチブ。共通の基本
原則,並びに“預金・貸出・リース”,“運用・証券・
投資銀行”及び“保険”の三区分による業態別ガイド
ラインから構成される。

http://www.env.go.jp/policy/kinyukoudougensoku/

日本経済団体連合会

企業行動憲章及び

企業行動憲章実行の

手引き

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

X

我が国の代表的な企業,製造業,サービス業などの主
要な業種別全国団体,地方別経済団体などから構成さ
れる総合経済団体。

“企業行動憲章”は,企業が広く社会にとって有用な
存在であるために,国の内外において,人権を尊重し,
関係法令,国際ルール及びその精神を遵守しつつ,持
続可能な社会の創造に向けて,高い倫理観をもって社
会的責任を果たすために,その規範となる原則。

“実

行の手引き”では,企業行動憲章に基づき,企業が社
会的責任を果たしていくための,基本的心構え・姿勢,
具体的なアクションプランの例を課題ごとに示して
いる。

www.keidanren.or.jp/japanese/policy/rinri.html

日本労働組合総連合会

ワーカーズキャピタル

責任投資ガイドライン

X

X

X

X

日本労働組合総連合会(連合)は,日本の労働組合の
ナショナル・センター(中央労働団体)であり,加盟
組合員は約 680 万人。

“ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン”は,
ワーカーズキャピタル(年金基金など,労働者が拠出
した,又は労働者のために拠出された基金)の運用に
際し,労働者(労働組合)が,ワーカーズキャピタル
の所有者責任及び権限に鑑み,その運用を委託するに
際して,本ガイドラインに基づいた責任投資に取り組
むことで,社会的責任に配慮した企業行動及び金融取
引を促し,公正かつ持続可能な社会形成に貢献するた
めの手引である。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/kurashi/sekinin_toushi/index.h
tml


104

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

参考文献

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JIS Q 9000

,品質マネジメントシステム−基本及び用語

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JIS Q 9001

,品質マネジメントシステム−要求事項

[3]

JIS Q 9004

,組織の持続的成功のための運営管理−品質マネジメントアプローチ

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JIS Q 10001

,品質マネジメント−顧客満足−組織における行動規範のための指針

[5]

JIS Q 10002

,品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針

[6]

JIS Q 10003

,品質マネジメント−顧客満足−組織の外部における紛争解決のための指針

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,環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引

[8]

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,環境マネジメントシステム−原則,システム及び支援技法の一般指針

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, Environmental management systems − Guidelines for the phased implementation of an

environmental management system, including the use of environmental performance evaluation

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ISO 14006

,Environmental management systems−Guidelines for incorporating ecodesign

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,環境マネジメント−用地及び組織の環境アセスメント(EASO)

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JIS Q 14020

,環境ラベル及び宣言−一般原則

[13]

JIS Q 14021

,環境ラベル及び宣言−自己宣言による環境主張(タイプ II 環境ラベル表示)

[14]

JIS Q 14024

,環境ラベル及び宣言−タイプ I 環境ラベル表示−原則及び手続

[15]

JIS Q 14025

,環境ラベル及び宣言−タイプ III 環境宣言−原則及び手順

[16]

JIS Q 14031

,環境マネジメント−環境パフォーマンス評価−指針

[17]

JIS Q 14040

,環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組み

[18]

JIS Q 14044

,環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−要求事項及び指針

[19]

ISO/DIS 14045

,Environmental management−Eco-efficiency assessment of product systems−Principles,

requirements and guidelines

[20]

ISO/TR 14047

,Environmental management−Life cycle impact assessment−Examples of application of

ISO 14042

[21]

ISO/TS 14048

,Environmental management−Life cycle assessment−Data documentation format

[22]

ISO/TR 14049

,Environmental management−Life cycle assessment−Examples of application of ISO

14041 to goal and scope definition and inventory analysis

[23]

JIS Q 14050

,環境マネジメント−用語

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ISO 14051

,Environmental management−Material flow cost accounting−General framework

[25]

TR Q 0007

,環境適合設計

[26]

JIS Q 14063

,環境マネジメント−環境コミュニケーション−指針及びその事例

[27]

JIS Q 14064-1

,温室効果ガス−第 1 部:組織における温室効果ガスの排出量及び吸収量の定量化及

び報告のための仕様並びに手引

[28]

JIS Q 14064-2

,温室効果ガス−第 2 部:プロジェクトにおける温室効果ガスの排出量の削減又は吸

収量の増加の定量化,モニタリング及び報告のための仕様並びに手引

[29]

JIS Q 14065

,温室効果ガス−認定又は他の承認形式で使用するための温室効果ガスに関する妥当性

確認及び検証を行う機関に対する要求事項

[30]

ISO 14066

, Greenhouse gases− Competence requirements for greenhouse gas validation teams and

verification teams


105

Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

[31]

ISO/DIS 14067

, Carbon footprint of products − Requirements and guidelines for quantification and

communication

[32]

(欠番)

注記:ISO 14067 は,ISO 26000 発行時には二部構成で作成されていたが,その後 ISO における審

議過程で構成の変更があり,現時点では一つの規格として作成されている。

[33]

ISO/WD TR 14069

,Greenhouse gases (GHG)−Quantification and reporting of GHG emissions for

organizations (Carbonfootprint of organization)

−Guidance for the application of ISO 14064-1

[34]

JIS Q 19011

,マネジメントシステム監査のための指針

[35]

ISO 22000

,Food safety management systems−Requirements for any organization in the food chain

[36]

JIS Q 27001

,情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティマネジメントシステム−要求事項

[37]

ISO 10993-2:2006

,Biological evaluation of medical devices−Part 2: Animal welfare requirements

[38]

ISO Guide 64

,Guide for addressing environmental issues in product standards

[39]

JIS Z 8002:2006

,標準化及び関連活動−一般的な用語

[40]

JIS Z 8071:2003

,高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針

[41]

African Union Convention on Preventing and Combating Corruption, 2003

[42]  A/HRC/8/5 United Nations, 7 April 2008, Protect, Respect and Remedy: a Framework for Business and

Human Rights; Report of the Special Representative of the Secretary-General on the issue of human rights

and transnational corporations and other business enterprises, John Ruggie

[43]  A/HRC/8/16 United Nations, 15 May 2008, Clarifying the Concepts of “Sphere of influence” and

“Complicity”; Report of the Special Representative of the Secretary-General on the Issue of Human Rights

and Transnational Corporations and other Business Enterprises, John Ruggie

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Council of Europe Criminal Law Convention on Corruption. 1998

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European Union, Convention drawn up on the basis of Article K.3 (2) (c) of the Treaty on European Union on

the fight against corruption involving officials of the European Communities or officials of Member States of

the European Union

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IPCC

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:強制労働の廃止に関する条約(第 105 号)

,1957 年

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国際労働機関(ILO

:職場における化学物質の使用の安全に関する条約(第 170 号)

,1990 年

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国際労働機関(ILO

:職場における化学物質の使用の安全に関する勧告(第 177 号)

,1990 年

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国際労働機関(ILO

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(第 129 号)

,1967 年

[54]

国際労働機関(ILO

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国際労働機関(ILO

:雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第 111 号)

,1958 年

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国際労働機関(ILO

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100

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国際労働機関(ILO):同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する勧告(第


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

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:企業内における苦情の解決のための苦情の審査に関する勧告(第 130 号)

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:強制労働に関する条約(第 29 号)

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:労働時間を 1 週間 40 時間に短縮することに関する条約(第 47 号)

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国際労働機関(ILO

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,1948 年

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国際労働機関(ILO

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,1970 年

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国際労働機関(ILO

:有給休暇に関する勧告(第 98 号)

,1954 年

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国際労働機関(ILO

:工業的企業における労働時間を 1 日 8 時間かつ 1 週 48 時間に制限する条約

(第 1 号)

,1919 年

[66]

国際労働機関(ILO

:商業及び事務所における労働時間の規律に関する条約(第 30 号)

,1930 年

[67]

国際労働機関(ILO

:社会正義に関する ILO 宣言,2008 年

[68]

国際労働機関(ILO

:在宅形態の労働に関する条約(第 177 号)

,1996 年

[69]

国際労働機関(ILO

:人的資源の開発における職業指導及び職業訓練に関する条約(第 142 号)

1975

[70]

国際労働機関(ILO

:人的資源の開発(教育,訓練及び生涯学習)に関する勧告(第 195 号)

,2004

[71]

国際労働機関(ILO

HIV

/エイズと働く世界に関する ILO 行動規範,2006 年

[72]

国際労働機関(ILO

ILO 憲章(フィラデルフィア宣言を含む)

,1944 年

[73]

国際労働機関(ILO

:安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン,2001 年

[74]

国際労働機関(ILO

:多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言,第三版,2006 年

[75]

国際労働機関(ILO

:独立国における原住民及び種族民に関する条約(第 169 号)

,1989 年

[76]

国際労働機関(ILO

:1952 年の母性保護条約(改正)に関する改正条約(第 183 号)

,2000 年

[77]

国際労働機関(ILO

:1952 年の母性保護勧告に関する改正勧告(第 191 号)

,2000 年

[78]

国際労働機関(ILO

:劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に

関する条約(第 143 号)

,1975 年

[79]

国際労働機関(ILO

:移民労働者に関する勧告(第 151 号)

,1975 年

[80]

国際労働機関(ILO

:移民労働者に関する条約(1949 年改正)

(第 97 号)

,1949 年

[81]

国際労働機関(ILO

:就業が認められるための最低年齢に関する条約(第 138 号)

,1973 年

[82]

国際労働機関(ILO

:就業の最低年齢に関する勧告(第 146 号)

,1973 年

[83]

国際労働機関(ILO

:開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第 131 号)

1970

[84]

国際労働機関(ILO

:開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する勧告(第 135 号)

1970

[85]

国際労働機関(ILO

:夜業に関する条約(第 171 号)

,1990 年

[86]

国際労働機関(ILO

:夜業に関する勧告(第 178 号)

,1990 年

[87]

国際労働機関(ILO

:職業衛生機関に関する条約(第 161 号)

,1985 年

[88]

国際労働機関(ILO

:職業衛生機関に関する勧告(第 171 号)

,1985 年

[89]

国際労働機関(ILO

:職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第 155 号)

,1981 年

[90]

国際労働機関(ILO

:職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する勧告(第 164 号)

,1981 年


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Z 26000

:2012 (ISO 26000:2010)

[91]

国際労働機関(ILO

:高齢労働者に関する勧告(第 162 号)

,1980 年

[92]

国際労働機関(ILO

:有給教育休暇に関する条約(第 140 号)

,1974 年

[93]

国際労働機関(ILO

:パートタイム労働に関する条約(第 175 号)

,1994 年

[94]

国際労働機関(ILO

:パートタイム労働に関する勧告(第 182 号)

,1994 年

[95]

国際労働機関(ILO

:民間職業仲介事業所に関する条約(第 181 号)

,1997 年

[96]

国際労働機関(ILO

:民間職業仲介事業所に関する勧告(第 188 号)

,1997 年

[97]

国際労働機関(ILO

:賃金の保護に関する条約(第 95 号)

,1949 年

[98]

国際労働機関(ILO

:賃金の保護に関する勧告(第 85 号)

,1949 年

[99]

国際労働機関(ILO

:使用者の支払不能の場合における労働者債権の保護に関する条約(第 173 号)

1992

[100]

国際労働機関(ILO

:就業の場所における労働者の健康の保護に関する勧告(第 97 号)

,1953 年

[101]

国際労働機関(ILO

:職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第 155 号)の 2002 年

の議定書,1981 年

[102]

国際労働機関(ILO

:労働時間の短縮に関する勧告(第 116 号)

,1962 年

[103]

国際労働機関(ILO

:団体権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(第 98 号)

,1949

[104]

国際労働機関(ILO

:農業における安全及び健康に関する条約(第 184 号)

,2001 年

[105]

国際労働機関(ILO

:農業における安全及び健康に関する勧告(第 192 号)

,2001 年

[106]

国際労働機関(ILO

:社会保障の最低基準に関する条約(第 102 号)

,第八部,第 46 条∼第 52 条,

1952

[107]

国際労働機関(ILO

:使用者の発意による雇用の終了に関する条約(第 158 号)

,1982 年

[108]

国際労働機関(ILO

:使用者の発意による雇用の終了に関する勧告(第 166 号)

,1982 年

[109]

国際労働機関(ILO

:商業及び事務所における週休に関する条約(第 106 号)

,1957 年

[110]

国際労働機関(ILO

:商業及び事務所における週休に関する勧告(第 103 号)

,1957 年

[111]

国際労働機関(ILO

:工業的企業に於ける週休の適用に関する条約(第 14 号)

,1921 年

[112]

国際労働機関(ILO

:労働者の福祉施設に関する勧告(第 102 号)

,1956 年

[113]

国際労働機関(ILO

:企業における労働者代表に与えられる保護及び便宜に関する条約(第 135 条)

1971

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国際労働機関(ILO

:家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約(第 156

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,1981 年

[115]

国際労働機関(ILO

:男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する

勧告(第 165 号)

,1981 年

[116]

国際労働機関(ILO

:最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第

182

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,1999 年

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国際労働機関(ILO

:最悪の形態の児童労働の禁止及び撲滅のための即時の行動に関する勧告(第

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,1999 年

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:廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条

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国際連合(UN

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国際連合(UN

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国際連合(UN

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国際連合(UN

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:文化遺産の意図的破壊に関するユネスコ宣言,2003 年

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国連教育科学文化機関(UNESCO

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国連教育科学文化機関(UNESCO

:無形文化遺産の保護に関する条約,2003 年

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国連教育科学文化機関(UNESCO

:文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約,2005 年

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国連教育科学文化機関(UNESCO

:生命倫理と人権に関する世界宣言,2006 年

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国連環境計画(UNEP

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国連環境計画(UNEP

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国連環境計画(UNEP

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国連環境計画(UNEP

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,国連環境計画(UNEP

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