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日本工業規格

JIS

 Z

2279

 - 1992

金属材料の高温低サイクル

疲労試験方法

Method of high temperature low cycle fatigue

testing for metallic materials

1.

適用範囲  この規格は,金属材料の高温における低サイクル疲労寿命を求めることを目的とした一定

ひずみ範囲制御下の一軸引張−圧縮疲労試験方法について規定する。

2.

用語(記号)の定義  この規格で用いる主な用語(記号)の定義は,次による。

(1)

応力  (

σ

  試験片の軸荷重を試験片原断面積で割った値。次の式で算出する。

0

A

P

=

σ

ここに,

σ

応力[(MPa)  又は (N/mm

2

)

P

軸荷重 (N) (引張りを正,圧縮を負にとる。

A

0

試験片原断面積 (mm

2

)

(2)

全ひずみ  (

ε

t

  試験片の変形後の標点距離と初期の標点距離との差を,試験片の初期の標点距離で割

った値。次の式で算出する。

0

0

l

l

l

t

=

ε

ここに,

ε

t

:  全ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

l

:  試験片の変形後の標点距離 (mm)

l

0

:  試験片の初期の標点距離 (mm)

備考  ここで,試験片の初期標点距離 l

0

は,試験片に伸び計を取り付け,試験温度にまで加熱した後

の標点距離をとることを原則とするが,それが正確に測定できない場合には,室温における値

を用いてもよい。

全ひずみの最大値及び最小値は,

ε

t max

及び

ε

t min

で表す。

(3)

弾性ひずみ  (

ε

e

  全ひずみのうちの弾性成分であって,応力

σ

を縦弾性係数(ヤング率)で割った値。

次の式で算出する。

E

e

σ

ε =

ここに,

ε

e

弾性ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

σ

応力[(MPa)  又は (N/mm

2

)

E

縦弾性係数(ヤング率)

[(MPa)  又は (N/mm

2

)

備考  弾性ひずみの最大値及び最小値は,

ε

e max

及び

ε

e min

で表す。

(4)

非弾性ひずみ  (

ε

in

  全ひずみから弾性ひずみを差し引いた値。次の式で算出する。


2

Z 2279 - 1992

ε

in

ε

t

ε

e

ここに,

ε

in

非弾性ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

t

全ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

e

弾性ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

備考  非弾性ひずみの最大値及び最小値は,

ε

in max

及び

ε

in min

で表す。

(5)

引張ピーク応力  (

σ

max

  応力の最大値。

(6)

圧縮ピーク応力  (

σ

min

  応力の最小値。

(7)

応力範囲  (

σ

  引張ピーク応力から圧縮ピーク応力を引いた値。次の式で算出する。

σ

σ

max

σ

min

ここに,

σ

応力範囲[(MPa)  又は (N/mm

2

)

σ

max

応力の最大値[(MPa)  又は (N/mm

2

)

σ

min

応力の最小値[(MPa)  又は (N/mm

2

)

(8)

平均応力  (

σ

m

  引張ピーク応力と圧縮ピーク応力の平均値。次の式で算出する。

2

min

max

σ

σ

σ

+

=

m

ここに,

σ

m

平均応力[(MPa)  又は (N/mm

2

)

σ

max

応力の最大値[(MPa)  又は (N/mm

2

)

σ

min

応力の最小値[(MPa)  又は (N/mm

2

)

(9)

ヒステリシスループ  疲労試験中の応力とひずみの関係を表すループ。

(10)

全ひずみ範囲  (

ε

t

  全ひずみの最大値から最小値を引いた値。次の式で算出する。

ε

t

ε

t max

ε

t min

ここに,

ε

t

全ひずみ範囲[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

t max

全ひずみの最大値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

t min

全ひずみの最小値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

(11)

弾性ひずみ範囲  (

ε

e

  弾性ひずみの最大値から最小値を引いた値。次の式で算出する。

ε

e

ε

e max

ε

e min

ここに,

ε

e

弾性ひずみ範囲[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

e max

弾性ひずみの最大値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

e min

弾性ひずみの最小値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

備考  縦弾性係数が不明で弾性ひずみが求められない場合には,全ひずみ範囲からヒステリシスルー

プで求める非弾性ひずみ範囲を引いた値として求めることができる。

ε

e

ε

t

ε

in

ここに,

ε

e

弾性ひずみ範囲[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

t

全ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

in

非弾性ひずみ[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

(12)

非弾性ひずみ範囲  (

ε

in

  非弾性ひずみの最大値から最小値を引いた値。

ε

in

ε

in max

ε

in min

ここに,

ε

in

非弾性ひずみ範囲[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

in max

非弾性ひずみの最大値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

ε

in min

非弾性ひずみの最小値[(mm/mm)  (無次元)又は (%)]

備考  縦弾性係数が不明で非弾性ひずみが求められない場合には,応力 0 に対するヒステリシスルー

プの幅を非弾性ひずみ範囲とすることができる。

(13)

ひずみ波形  一定の最大値と最小値の間を単純に,かつ,周期的に変動する全ひずみの時間に対する

変化形状。


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(14)

ひずみ速度  (

ε

&

t

  全ひずみ範囲を

2

1

周期の所要時間で除した値。単位は,1/s 又は%/s で表す。

(15)

繰返し応力−ひずみ曲線  ひずみ範囲の異なる数組のヒステリシスループのピーク応力を結んで得ら

れる応力とひずみの特性曲線。

(16)

繰返し数  (N)    疲労試験中のひずみの繰返し回数。

(17)

周波数(又は f)  単位時間当たりの繰返し数。繰返し速度ともいう。単位は,Hz(回/秒)又は

cpm

(回/分)で表す。

(18)

破損繰返し数  (N

f

  試験片が破損するまでの繰返し数。破損寿命ともいう。

(19)

破断繰返し数  (N

rup

  試験片が完全に分離破断するまでの繰返し数。破断寿命ともいう。

3.

試験材料  試験材料は,その製造履歴,化学成分,熱処理条件,圧延方向,製品内での位置などが明

らかなものを用いる。

また,材料の強度特性をより詳細に把握し,試験結果の解析,評価を容易にするために,同一の試験材

料について引張試験やクリープ試験の結果など,他の強度特性をも求めることが望ましい。

4.

試験片  試験片は,次による。

(1)

試験片採取位置の記録  板材,管材,その他の製品から試験片を採取する場合,採取位置や材料の圧

延方向に対する試験片軸の方向をスケッチし,記録に残さなければならない。

(2)

試験片の形状及び寸法  原則として中実丸棒試験片とし,その標準形状及び寸法は,図 による。

図 1  試験片の標準形状及び寸法

(3)

試験片の加工及び仕上げ  試験片を切削又は研削によって機械加工する場合には,試験片に大きな加

工ひずみを生じないように,また,試験片が加熱されないように注意しなければならない。機械加工

後の試験片は,切削又は研削による条こんを除去するために,順次細かい粒度の研磨布又は研磨紙を

使用し,最終的には応力の方向と平行に 400 番より細かいものを使用して研磨し,応力と直角な方向

の条こんが残らないように仕上げるものとする。

(4)

試験片の精度  試験片直径の仕上げ寸法の呼び寸法に対する許容差は,±0.05mm 以内とする。平行

部の仕上げ寸法の偏径差(平行部内の最大直径と最小直径の差)は,0.03mm 以内とする。

また,試験片は,0.02mm 以上の湾曲や偏心があってはならない。

(5)

試験片の直径及び原断面積  試験片の直径は,互いに直交する 2 方向について測定し,その平均値を


4

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直径とする。試験片の原断面積は,最小断面部において測定した断面積とする。

(6)

試験片の保存  試験片は,製作後及び試験後にさびたり,きずつけたりしないように十分注意して取

り扱い,保存しなければならない。

5.

試験機

5.1

負荷装置  負荷装置は,全ひずみの最大値,最小値及び全ひずみ範囲が試験中一定となるように,

引張荷重及び圧縮荷重を繰り返し与えることができるものを用いる。

引張り及び圧縮時にバックラッシュがないように設計されたものでなければならない。

また,荷重軸の傾き,試験片つかみ部の軸心のずれが生じないようにしなければならない。

軸荷重計測装置は,各レンジのフルスケールの±1%以内の静的精度をもつものでなければならない。

停電,その他の理由によって試験機が停止した場合には,試験片に過大な荷重がかからないように,速

やかに除荷するための機構を備えていることが望ましい。

5.2

ひずみ計測装置  ひずみ計測装置は,各レンジのフルスケールの±2.5%以内の静的精度をもつもの

でなければならない。

また,ひずみ計は,試験片標点間のひずみを制御することができる軸ひずみ計を用い,試験片加熱によ

る温度の影響や負荷装置などの振動の影響を受けないように注意しなければならない。

5.3

加熱装置  加熱装置は,試験片ひずみ計測のための標点距離内及びその部分の断面内で温度分布が

できる限り均一となり,かつ,温度の経時変化がないように自動制御できるものでなければならない。

6.

試験方法

6.1

試験片の取付け方法  試験片の試験機への取付けは,偏心を避け,試験中緩むことがないように強

固に行う。ただし,取付けに際し,試験片平行部に大きな軸荷重及び曲げ荷重がかからないように注意し

なければならない。

6.2

ひずみ計の取付け方法  ひずみ計の試験片への取付けは,試験中に試験片から外れたり,ずれたり

しないように行う。ただし,ひずみ計の取付け位置から  き裂が発生しないように注意する。

試験片の標点距離がひずみ計の取付け時に変化する場合には,ひずみ計を取り付けた後に読取顕微鏡な

どによって計測しておく必要がある。

6.3

温度計測方法及び温度許容範囲  温度の計測には,熱電対を標点距離内の試験片表面に直接取り付

けて行うことを原則とする。ただし,熱電対取付け位置から  き裂が発生しないように注意する。

試験片標点間の軸方向温度分布は,規定の試験温度の±5℃以内になるよう,また,温度の経時的変化は

規定の試験温度の±5℃以内になるようにしなければならない。

6.4

負荷方法  負荷方法は,次による。

(1)

負荷開始前に試験片の加熱を行う。加熱は,試験片の標点間軸方向及び断面内に急激な温度こう配が

生じないよう,また,規定の試験温度を超えないように注意しなければならない。

(2)

試験は,全ひずみの最大値と最小値の絶対値とが等しい両振りひずみ制御試験であり,全ひずみ範囲

ε

t

が所定の一定値に保たれるように繰り返し荷重を加える。繰返しひずみの制御精度は,全ひずみ範

囲の±3%以内でなければならない。

(3)

ひずみ波形は,対称的な三角波(

図 参照。)を原則とする。

(4)

ひずみ速度

ε

&

t

は,0.1%/s を原則とする。


5

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図 2  ひずみ波形

6.5

破損繰返し数の求め方  試験片の破損繰返し数の求め方は,次による。

(1)

引張ピーク応力が,ほぼ一定となる疲労寿命中期における値の

4

3

に低下した時点の繰返し数。

(2)

応力の定常状態が明確に認められない場合には,引張ピーク応力が,き裂発生以前の引張ピーク応力

変化傾向の外挿線から

4

3

に低下した時点の繰返し数,又は引張ピーク応力が,圧縮ピーク応力の絶対

値の

4

3

に達した時点の繰返し数を破損繰返し数としてもよい。

6.6

試験中の記録事項  試験中の記録事項は,次による。

(1)

試験中の荷重又は応力,変位又はひずみ,温度は,連続的に測定し,記録することが望ましい。

(2)

試験中のヒステリシスループは,試験開始後 10 サイクル程度までは連続的に,その後も断続的に記録

することが望ましい。

また,疲労寿命の中期における定常状態のヒステリシスループは,記録しなければならない。

(3)

試験を中断した場合には,その理由,時期(繰返し数)

,中断時間とその間の試験片の保持状態を記録

しておかなければならない。

7.

報告

7.1

試験結果報告書  試験結果報告書は,次の事項を記載しなければならない。

(1)

試験機関名,試験者名,試験年月日

(2)

試験装置

(a)

負荷装置の種類と負荷容量

(b)

ひずみ計の種類

(c)

加熱装置の種類

(3)

試験材料

(a)

名称

(4)

試験片

(a)

形状,寸法及び標点距離(図示してもよい。

(b)

素材からの試験片採取位置と方向

(c)

試験片番号

(5)

試験条件

(a)

試験温度

(b)

環境(大気中又はそれ以外は,雰囲気の種類と条件。

(c)

ひずみ波形


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(d)

ひずみ速度又は周波数(繰返し速度)

(e)

試験を中断した場合は,その理由,時期,中断時間と試験片の保持状態。

(6)

試験結果

(a)

試験片の初期標点距離  (

l

0

)

の測定方法

(b)

全ひずみ範囲  (

ε

t

)

(c)

弾性ひずみ範囲  (

ε

e

)

(d)

非弾性ひずみ範囲  (

ε

in

)

(e)

応力範囲  (

σ

)

(f)

引張ピーク応力  (

σ

max

)

,圧縮ピーク応力  (

σ

min

)

(c)(f)は,破損繰返し数の

2

1

又はその近傍での値。

(g)

破損繰返し数  (

N

f

)

。ただし,破損繰返し数が定められない場合は,破断繰返し数  (

N

rup

)

(h)

破損位置。ただし,破損位置が定められない場合は,破断位置(標点間内を 4 区間に分け,中央 2

区間を A,その外側各 1 区間を B,標点間外を C,ひずみ計押し当て部を D,その他熱電対取付け

部)

(i)

全ひずみ範囲  (

ε

t

)

,弾性ひずみ範囲  (

ε

e

)

及び非弾性ひずみ範囲  (

ε

in

)

と破損繰返し数  (

N

f

)

の関

係を両対数グラフで図示する。

なお,破損繰返し数が定められない場合は,破断繰返し数  (

N

rup

)

との関係を示す。

ニューマテリアルセンター  高温低サイクル疲労試験方法規格委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

田  村  今  男

京都大学名誉教授

(幹事)

大  谷  隆  一

京都大学工学部

金  澤  健  二

科学技術庁金属材料技術研究所

池  田      要

工業技術院標準部

福  井      寛

株式会社日立製作所日立研究所

中  澤  崇  徳

新日本製鐵株式会社第 2 技術研究所

河  合  久  孝

三菱重工業株式会社高砂研究所

時  政  勝  行

住友金属工業株式会社研究開発本部鉄鋼技術研究所

横  幕  俊  典

株式会社神戸製鋼所機械研究所

新  田  明  人

財団法人電力中央研究所狛江研究所

宮  崎  松  生

株式会社東芝重電技術研究所

岩  永  真一郎

住友金属鉱山株式会社伸銅事業部

辻  井  忠  生

株式会社島津製作所第 2 科学計測事業部

藤  岡  順  二

川崎重工業株式会社明石工場技術研究所

植  松  美  博

日新製鋼株式会社周南研究所

田  村      学

日本鋼管株式会社鉄鋼研究所

西          正

宇部興産株式会社機械事業本部

藤  井      勉

株式会社東京衡機製造所技術本部

中  野  善  文

川崎製鉄株式会社技術研究本部鉄鋼研究所

北  川  正  樹

石川島播磨重工業株式会社技術研究所

(事務局)

後  藤  康  夫

財団法人大阪科学技術センター付属 
ニューマテリアルセンター

脇  坂  啓  司

財団法人大阪科学技術センター付属 
ニューマテリアルセンター