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X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

(1) 

 

目 次 

ページ 

序文  1 

1 適用範囲  1 

2 引用規格  2 

3 用語及び定義  2 

4 プロセスアセスメントの概要  2 

4.1 はじめに  2 

4.2 アセスメントプロセス  2 

4.3 プロセス能力の測定の枠組み 3 

4.4 プロセス参照モデル  3 

4.5 プロセスアセスメントモデル 3 

4.6 アセスメントツール  4 

4.7 アセスメントチームの能力 4 

4.8 アセスメントの進め方  4 

4.9 プロセスアセスメントの成功要因 4 

5 アセスメント実施の要求事項の手引  5 

5.1 概要  5 

5.2 アセスメントプロセス活動 5 

5.3 役割及び責任  8 

5.4 アセスメント初期入力の定義 9 

5.5 アセスメント出力の記録  12 

5.6 文書化されたアセスメントプロセスの選択  12 

6 プロセス能力の測定の枠組み  14 

6.1 水準0 不完全なプロセス  14 

6.2 水準1 実施されたプロセス  14 

6.3 水準2 管理されたプロセス  15 

6.4 水準3 確立されたプロセス  18 

6.5 水準4 予測可能なプロセス  20 

6.6 水準5 最適化しているプロセス  23 

6.7 プロセス評定属性  25 

6.8 プロセス能力水準のモデル 26 

7 プロセス参照モデル  27 

7.1 プロセス参照モデルに対する要求事項の解釈  28 

7.2 プロセス参照モデルの選択 30 

8 プロセスアセスメントモデル  31 

8.1 プロセスアセスメントモデルに対する要求事項の解釈  31 


 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 目次 

(2) 

 

ページ 

8.2 プロセスアセスメントモデルの選択  34 

9 アセスメントツールの選択及び使用  36 

10 アセッサの能力の手引  38 

10.1 概要  38 

10.2 適格性の獲得及び維持  39 

11 適合性の検証についての手引  40 

11.1 プロセス参照モデルの適合性の検証  40 

11.2 プロセスアセスメントモデルの適合性の検証  40 

11.3 プロセスアセスメントの適合性の検証  41 

附属書A(参考)文書化されたアセスメントプロセスの事例  42 

附属書B(参考)指標の手引  47 

参考文献  49 

 

 


 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

(3) 

 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本

工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

JIS X 0145の規格群には,次に示す部編成がある。 

JIS X 0145-1 第1部:概念及び用語 

JIS X 0145-2 第2部:アセスメントの実施 

JIS X 0145-3 第3部:アセスメント実施の手引 

JIS X 0145-4 第4部:プロセス改善及びプロセス能力判定のための利用の手引 

 


 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 目次 

(4) 

 

 

白   紙 

 


 

 

  

 

日本工業規格          JIS 

 

X 0145-3:2011 

 

(ISO/IEC 15504-3:2004) 

情報技術−プロセスアセスメント− 

第3部:アセスメント実施の手引 

Information technology-Process assessment- 

Part 3: Guidance on performing an assessment 

 

序文 

この規格は,2004年に第1版として発行されたISO/IEC 15504-3を基に,技術的内容及び対応国際規格

の構成を変更することなく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある“注記”は,対応国際規格にはない事項である。 

注記 日本工業規格では,部で構成する規格がある場合,この部編成の規格全体を総称して,“規格群”

と呼ぶ。この規格では,日本工業規格になっていない国際規格を含めて,規格全体を総称する

場合は,“規格類”と呼ぶ。 

なお,JIS X 0145規格類には,JIS X 0145規格群のほか,次の規格を含む。 

− ISO/IEC 15504-5, Information technology−Process Assessment−Part 5: An exemplar 

Process Assessment Model 

 

適用範囲 

この規格は,JIS X 0145-2で規定したプロセスアセスメント実施に対する最小限の要求事項を満たすた

めの手引を提供する。 

この規格は,プロセスアセスメントの概要を提示し,次の項目に対する手引を示すことによってJIS X 

0145-2の要求事項を解釈している。 

a) アセスメントの実施 

b) プロセス能力を測定する枠組み 

c) プロセス参照モデル及びプロセスアセスメントモデル 

d) アセスメントツールの選択及び活用 

e) アセッサの能力 

f) 

適合性の検証 

この規格は,次の様式になっている。枠で囲った部分は,JIS X 0145-2から引用したもので,枠に続く

部分は,規定部分の手引である。引用した文に参照箇条を含む場合は,JIS X 0145-2を参照しているもの

と解釈する。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO/IEC 15504-3:2004,Information technology−Process assessment−Part 3: Guidance on 

performing an assessment(IDT) 

 


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)は適用しない。 

JIS X 0145-1:2008 情報技術−プロセスアセスメント−第1部:概念及び用語 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 15504-1:2004,Information technology−Process assessment−Part 1: 

Concepts and vocabulary(IDT) 

JIS X 0145-2:2008 情報技術−プロセスアセスメント−第2部:アセスメントの実施 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 15504-2:2003,Information technology−Process assessment−Part 2: 

Performing an assessment(IDT) 

 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS X 0145-1:2008による。 

 

プロセスアセスメントの概要 

4.1 

はじめに 

プロセスアセスメントは,組織単位の現在のプロセスの能力を理解するために実施する。プロセスアセ

スメントは,組織が使用するプロセスの全て又は一部を取り扱うことができる。例えば,プロジェクト管

理,開発,保守,構成管理などを取り扱うことができる。 

プロセスアセスメントは,一人以上のアセッサが実施し,その中の一人(適格アセッサ)がJIS X 0145-2

の要求事項に対するアセスメントの適合性を保証することに責任をもつ。 

組織単位のプロセスのアセスメントは,プロセス参照モデルに基づいたプロセスアセスメントモデルを

利用して行う。プロセス参照モデルとしては,例えば,JIS X 0160:2007がある。プロセス参照モデルは,

目的及び成果に関してプロセスを記述している。プロセスアセスメントモデルは,プロセス属性の達成度

を診断するために必要な詳細な指標を提供する。 

どのようなプロセスにも適用できる九つのプロセス属性があり,それらは,実行したプロセスの能力を

特徴付ける。JIS X 0145-2で,この九つのプロセス属性を定義している。 

プロセス属性は,プロセス能力の順序尺度を定義し,各プロセスの個々の改善に合理的な道筋を提供す

る能力水準に分類される。各プロセス属性が表している測定可能な特性は,プロセス目的の達成を支援し,

組織の事業目標の達成に貢献する。 

基本となるアセスメント出力は,診断対象プロセスの各々に関する最大九つのプロセス属性評定(この

プロセス属性をプロセスプロファイルと呼ぶ。)からなる。 

4.2 

アセスメントプロセス 

アセスメントは,アセスメントの目的を満たすことができる文書化されたプロセスに従って実施しなけ

ればならない。文書化されたアセスメントプロセスの重要な要素は,JIS X 0145-2の箇条4で定義した,

アセスメントを実施するための要求事項に密接に結び付いている。これらの要素の簡潔な概要は,この箇

条4の後ろの部分で示し,アセスメントを実施する活動を解釈することについての詳細な記述は,この規

格の箇条5で示す。しかし,提供する手引は,完全な,文書化されたアセスメントプロセスを構成してい


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

るわけではないことに注意する。その目的は,JIS X 0145-2の要求事項を解釈するための支援を提供する

こと,及び文書化されたアセスメントプロセスの選択又は作成の出発点を提供することにある。 

文書化されたアセスメントプロセスは,アセスメントを実施するための一連の指示である。文書化され

たアセスメントプロセスは,アセスメント実施の次の局面を取り扱う。 

− アセスメントへの入力(例えば,目的,範囲,制約及び使用する適合したプロセスアセスメントモデ

ルとの同一性)を定義する局面。 

− 基本となる役割及び責任を定義する局面。 

− 計画立案,データ収集,データの妥当性確認,プロセス属性評定及びアセスメント結果の報告につい

ての手引を提供する局面。 

− アセスメント出力を記録する局面。 

箇条5でアセスメントプロセスに対する要求事項についての手引を提供し,11.3でプロセスアセスメン

トの適合性の検証についての手引を提供する。さらに,附属書Aで文書化されたアセスメントプロセスの

事例を示す。 

4.3 

プロセス能力の測定の枠組み 

測定の枠組みは,その目的を達成することができないプロセス能力水準“0”からその実行を最適化する

プロセス能力水準“5”まで,プロセス能力の6段階の順序尺度で定義する。各プロセスには,プロセスプ

ロファイルを構成する一そろ(揃)いのプロセス属性評定がある。プロセス属性評定は,JIS X 0145-2で

定義したようなプロセス属性尺度を使用して表現される。プロセス能力水準モデルは,特定の水準を達成

するために達成する必要があるプロセス属性評定に関して記述している。箇条6にプロセス能力を測定す

る枠組みについての手引を提供している。 

4.4 

プロセス参照モデル 

プロセス参照モデルは,目的及び期待する成果の観点から,一つ以上のプロセスのセットを記述する。 

目的には,プロセスが達成することが望ましい高水準の目標を記述する。一方,関連する成果は,プロ

セスをうまく実施したことの期待される結果である。目的の記述においては,成果と関連して,何を達成

するかを記述するが,プロセスがその目標をどのように達成するのが望ましいかは指定しない。箇条7に

プロセス参照モデルに関する手引を提供し,11.1にプロセス参照モデルの適合性の検証に関する手引を提

供している。 

JIS X 0160:2007の附属書Fは,JIS X 0170:2004とともに,プロセス参照モデルを提供する。 

4.5 

プロセスアセスメントモデル 

この規格群で定義するプロセスアセスメントモデルは,JIS X 0145-2で規定された要求事項を満たすモ

デルである。要約すると,適合性のあるプロセスアセスメントモデルは,次の条件を満たすものである。 

− プロセスアセスメントの目的に合致している。 

− 関連する構成要素は,適合性のあるプロセス参照モデルで選択されたモデルに記述されたプロセスに

対応しており,かつ,JIS X 0145-2で定義する関連するプロセス属性に対応している。 

− プロセス及びプロセス属性についての情報を収集するために,アセスメントで使用する指標に基づい

ている。 

− JIS X 0145-2で規定したプロセスアセスメントモデルを使用して収集した情報を,JIS X 0145-2で定義

するプロセス属性評定で表現するための,公式で検証可能な仕組みに基づいている。 

箇条8にプロセスアセスメントモデルについての手引を提供し,11.2にプロセスアセスメントモデルの

適合性の検証についての手引を提供する。ISO/IEC 15504-5のモデルは,JIS X 0160:2007で定義するプロ


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

セス参照モデルに基づいたプロセスアセスメントモデルの例である。 

4.6 

アセスメントツール 

いかなるアセスメントにおいても,データを収集し,記録し,蓄積し,整理し,処理し,分析し,検索

し,提出する必要がある。これは,様々なツールによって支援される。アセスメントによっては,支援ツ

ールは,紙(用紙,質問票,チェックリストなど)であってもよい。場合によっては,アセスメント情報

の量及び複雑さは,コンピュータによる支援ツールを必要とすることがある。 

支援ツールの形式にかかわらず,その目的は,次のとおりである。 

− アセッサが,首尾一貫した信頼できるやり方でアセスメントを実施することを支援する。そのやり方

は,主観性を軽減し,妥当性があり有用で比較可能なアセスメント結果を達成することに貢献する。 

− アセスメントを更に効率よく実施する。 

これらの目標を達成するために,アセッサにとって,ツールをプロセスアセスメントモデル及びその指

標を利用しやすいようにする必要がある。 

箇条9は,アセスメントツールを選択し,使用する場合の手引を提供する。 

4.7 

アセスメントチームの能力 

アセスメントは,次のような人が実施する。 

− 関連するプロセスについての教育,訓練及び経験を適切な組合せで身に付けている人。 

− 定義したアセスメント活動を実施する方法についての適切な文書化された手引を利用できる人。 

− アセスメントを支援するために選択したツールを使用する能力がある人。 

適格アセッサは,アセスメントを実施するために役割及び責任を割り当てる前に,チームメンバの能力

を検証することが望ましい。 

依頼者は,適格アセッサの能力を検証する。 

箇条10は,アセッサの能力の手引を提供している。 

4.8 

アセスメントの進め方 

4.8.1 

自己アセスメント 

自組織のプロセス能力を診断するために,組織は,自己アセスメントを実行する。通常,自己アセスメ

ントの依頼者は,その組織単位の内部の人であり,アセスメントチームメンバもその組織単位の内部の人

である。 

4.8.2 

独立アセスメント 

独立アセスメントは,診断対象となる組織単位には属していないメンバからなるアセスメントチームが

実施するアセスメントをいう。独立アセスメントは,例えば,そのアセスメントプログラムが適切に機能

していることを独立に検証するときに,組織が自分自身のために実施することができる。この場合のアセ

スメント依頼者は,同じ組織に属しているが,必ずしも診断対象の組織単位に属していなくともよい。 

アセスメントの依頼者は,診断対象の組織単位の外部の人でもよい。例えば,プロセス能力の独自の決

定を取得したい取得者でもよい。しかし,独立の程度は,アセスメントの目的,範囲及び背景に応じて変

化してもよい。 

外部のアセスメント依頼者の場合には,アセスメント依頼者と診断対象組織との間の共通の合意が必要

となる。 

4.9 

プロセスアセスメントの成功要因 

プロセスアセスメントを成功するためには,次の要因が絶対に必要である。 

 


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

4.9.1 

確約 

依頼者の確約は,アセスメントの目標を満たすことを確実にするためには絶対に必要である。この確約

には,アセスメントを実行するために必要な資源,時間及び要員が利用できることを必要としている。適

格アセッサは,アセスメントを続行するために依頼者の確約を確認する。 

4.9.2 

動機 

組織の管理者の姿勢は,アセスメントの成果に重要な影響をもつ。したがって,組織の管理者は,参加

者が開放的で,建設的であるように動機付けることが必要である。プロセスアセスメントは,プロセスに

焦点を合わせており,プロセスを実行する組織単位のメンバの能力に焦点を合わせていない。プロセスア

セスメントの意図するところは,定められた事業目標を支援して,プロセスをより効果的にすることであ

り,個人を非難することではない。 

アセスメントの間,フィードバックを提供し,準備段階での発見事項について率直な議論を促す雰囲気

を維持することは,アセスメント出力が組織単位に有意義であることを確実にするために役立つ。組織は,

参加者がプロセスについて知識及び経験を十分にもっており,潜在的な弱点を識別するために適任の地位

にいることを認識する必要がある。 

4.9.3 

機密性 

アセスメントの間に集められた情報及び文書の出所に対する機密性を尊重することは,その情報を保護

するために不可欠である。面談又は議論を行う場合,出席者が機密性に関しておそれ又は心配を抱かない

ことを確実にするように考慮することが望ましい。提供された情報の幾つかは,その組織単位の専有物で

あってもよい。それゆえに,適切な管理によってこうした情報を扱うことが重要である。 

4.9.4 

妥当性 

組織単位のメンバは,アセスメントが,結果として,直接的又は間接的に自分たちに利益をもたらすと

確信できるようにすることが望ましい。 

4.9.5 

信頼度 

組織単位の依頼者,管理者及びスタッフの全員が,アセスメントがアセスメント範囲の客観的で代表的

な結果をもたらすことを信じることが望ましい。アセッサが,適切なアセスメント経験があり,十分に公

平で,アセスメントを実施するために組織単位及びその事業について適切に理解していることを全ての関

係者が確信できることが重要である。 

 

アセスメント実施の要求事項の手引 

5.1 

概要 

JIS X 0145-2で規定するアセスメントの実施に対する要求事項は,様々な進め方の信頼性を最大にし,

かつ,様々なアセスメントの結果同士を比較できるようにするために,プロセスアセスメントの進め方の

より一層の均一性の達成を目指している。是正対策を実施できるように,アセスメントの前及びアセスメ

ントの実施中に要求事項を確認することは価値があるかもしれない。 

5.2 

アセスメントプロセス活動 

アセスメント目的を満足することができる文書化したアセスメントプロセスに従って,アセスメントを

実施しなければならない。 

               [JIS X 0145-2の4.2.1] 

 

ここでは,プロセスアセスメントの二つの異なった局面を扱っている。 

− 文書化されたアセスメントプロセスは,アセスメント目的を満たさなければならない局面。 


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

− アセスメントは,文書化されたアセスメントプロセスに従って,実施しなければならない局面。 

アセスメント目的は,アセスメント入力の一つとして定義されている[JIS X 0145-2の4.4.2 b)]。この

規格群では,アセスメント目的を“アセスメント入力の一部として提供される記述。アセスメントを実施

する理由を定義している。”と定義している(JIS X 0145-1の3.10)。 

文書化されたアセスメントプロセスは,アセスメントの進め方が繰り返し行えることを裏付けている。

文書化されたアセスメントプロセスの選択の手引を5.6に提供している。 

5.2.1 

計画立案 

文書化されたアセスメントプロセスは,少なくとも次の活動を含んでいなければならない。 

a) 計画立案 少なくとも次の事項を含めて,アセスメント計画を作成し,文書化しなければならない。 

1) JIS X 0145-2で規定する必要な入力 

2) アセスメントを行うに当たって実施すべき活動 

3) この活動に割り当てる資源及び日程 

4) アセスメントにおける参加者の識別及び定義した責務 

5) JIS X 0145-2の要求事項を満たしていることを検証するための基準 

6) 計画したアセスメント出力に関する記述 

 

[JIS X 0145-2の4.2.2 a)] 

必要に応じて修正を加えられた,文書化されたアセスメントプロセスを選択することによって,実施す

べき活動を決定する。 

資源及び日程は,アセスメント範囲,アセスメント目的などのアセスメント入力に含まれる情報に強く

依存する。この情報は,計画立案の前に徹底的にレビューすることが望ましい。時期及び資源のニーズは,

プロセスアセスメント活動の期間中に変化してもよい。日程及び資源を維持するための監視及び是正活動

は,計画された活動の一つであることが望ましい。 

計画の初版では,情報に欠落があってもよいし,また,利用できなくてもよい(例えば,全ての参加者

の身元)。プロセスアセスメント活動を進めるにつれて,必要な情報で計画を更新する。 

箇条11は,この規格群の要求事項を満たしていることを検証するための基準の手引を提供する。 

アセスメント依頼者に手渡すアセスメント出力を識別し,概要を記述する。必要最小限の出力は,アセ

スメント記録である。[JIS X 0145-2の4.5.2 f)で示すように]追加情報は,計画の中で定義する必要がある。 

5.2.2 

データ収集 

b) データ収集 アセスメント範囲[JIS X 0145-2の4.4.2 c)参照]内のプロセスを評価するために必要な

データ及び追加情報[JIS X 0145-2の4.4.2 j)参照]は,体系的な方法で収集し,少なくとも次の要求

事項を満たさなければならない。 

1) データの選択・収集・分析の戦略及び技法,並びに評定の正当化の戦略及び技法を,明確に識別し,

具体的に示す。 

2) アセスメント範囲に明記した組織単位のプロセスとプロセスアセスメントモデルの構成要素との対

応を確立する。 

3) アセスメント範囲で識別した各プロセスを,客観的証拠に基づいて診断する。 

4) それぞれの診断対象プロセスの各属性について収集した客観的証拠は,アセスメントの目的及びア

セスメントの範囲を満たすために十分なものでなければならない。 

5) 収集した客観的証拠の識別情報を,評定の根拠の基準を提供するために記録し,維持する。 

 

[JIS X 0145-2の4.2.2 b)] 


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

データ収集は,例えば,面談,質問表,議論,作成物レビューなどの様々な方法で実施してもよい。デ

ータ収集を始める前に,組織単位のプロセスを,プロセスアセスメントモデルで定義したプロセスに対応

付けることが望ましい。 

サンプリングの仕組みは,選択したプロセスの組合せがアセスメント目的に適合していることを確実に

することが望ましい。サンプリング情報及び理論的根拠をもち続けることが望ましい。 

情報収集は,一つ以上のプロジェクトで使用している監視又は報告の仕組みの一部として体系化しても

よい。その代わりに,情報収集は,ツールを使って自動的又は半自動的に行ってもよい。ツールは,ライ

フサイクルを通じて継続的に利用できる。例えば,定義したマイルストンにおいて,プロセスに対する遵

守を測定するため,プロセス改善の進捗度を測定するため,又は将来のアセスメントを容易にするために

利用できる。 

5.2.3 

データの妥当性確認 

c) データの妥当性確認 収集したデータの妥当性確認のために,次の事項を行わなければならない。 

1) 収集した証拠が客観的であることを確認する。 

2) 客観的証拠がアセスメントの範囲及びアセスメントの目的を網羅するために十分で代表的なもので

あることを確実にする。 

3) データが全体として一貫していることを確実にする。 

[JIS X 0145-2の4.2.2 c)] 

収集したデータは,診断対象プロセスを的確に表すことが望ましい。このデータの妥当性確認には,選

択したサンプルの大きさが診断対象プロセスを代表しているかどうかの評価を含むことが望ましい。 

データの妥当性確認の支援には,次の仕組みが有用である。 

− 同じ組織単位の以前のアセスメントとの結果の比較 

− 連携した,又は関連したプロセス間の一貫性の探索 

− 準備段階での発見事項を組織単位にフィードバックする会議 

データを収集し,評価しながら,データ収集段階でデータ妥当性確認を行ってもよい。 

妥当性確認をやり遂げることができない場合,結果の妥当性が潜在的に欠けていることに関するリスク

分析とともに,プロセスアセスメント出力に事情を明確に記述することが望ましい。 

5.2.4 

プロセス属性評定 

d) プロセス属性評定 各プロセス属性の妥当性確認を行ったデータに基づいて,次のように評定を行わ

なければならない。 

1) 一連のプロセス属性評定は,定義している組織単位のプロセスプロファイルとして記録する。 

2) アセスメントを行う間,プロセス属性を評定するアセッサの判断を支援し,アセスメント相互間の

再現性の基準を提供するために,プロセスアセスメントモデルにおいて定義している一連のアセス

メント指標を使用する。 

3) 評定の判断を導き出すために使用した意思決定プロセスを記録する。 

4) 属性評定とその評定を決定するときに使用した客観的証拠との間の追跡可能性を維持する。 

5) 評定した各プロセス属性に対して,指標と客観的証拠との関係を記録する。 

[JIS X 0145-2の4.2.2 d)] 

評定は,基本的にアセッサの判断に基づいており,妥当性を確認した客観的証拠に基づいている。この

判断は,アセスメント目的及びアセスメント背景を考慮することが望ましい。 

使用したプロセスアセスメントモデルの評定要素が定義したプロセス属性(JIS X 0145-2の箇条5)と異


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

なっている場合,これらの評定をプロセスアセスメントモデル(8.1.3参照)で定義する仕組みに従って変

換することが望ましい。 

各評定記録が一意的に識別可能で,その記録に関連したプロセスをたどれるように,属性評定の妥当性

確認を行い,それを記録することが望ましい。各プロセス属性について評定を行い,診断対象組織単位の

プロセスプロファイルとして,一組のプロセス属性評定を提供する。プロセスアセスメントモデルが提供

するアセスメント指標を使用して収集した妥当性を確認した客観的証拠に基づいて,各プロセス属性を評

定する。 

診断対象属性の各々についての評定を決定する場合,アセッサの間での最大限の合意を得ることが望ま

しい。評定が全員一致ではない場合,意思決定プロセス(例えば,総意,多数決など)の規則を定めなけ

ればならない。合意した規則を記録することが望ましい。 

プロセスプロファイルは,その意味及び値を簡単に解釈できる形式で提供することが望ましい。プロセ

スアセスメントモデルを構築するための要求事項は,プロセス参照モデルにおけるプロセス目的及びプロ

セス成果の記述,並びにJIS X 0145-2の箇条5のプロセス属性に対して,指標が追跡可能であることを保

証している。ここでは,属性評定と使用した客観的証拠との間に,更なる追跡可能性が必要となる。この

ことは,アセッサの判断の正当化及び再現可能性の基準の提供のために必要である。言い換えれば,第三

者検証又は評定の再現が行われるとき,属性評定に関連する全ての証拠をたどることができ,多分同じ結

果に到達することができるようなものである。さらに,この追跡可能性を容易にするため及び指標が効果

的に存在することの信頼を提供するために,評定対象属性の各々に対して,指標と客観的証拠との間の関

連を記録することが必要となる。 

5.2.5 

報告 

e) 報告 少なくともJIS X 0145-2の4.5に規定した出力を含んだアセスメント結果を文書化し,アセス

メント依頼者又は依頼者が委任した人に報告する。 

[JIS X 0145-2の4.2.2 e)] 

アセスメント結果の報告は,内部アセスメントの場合には,簡単な発表の形式となることもあり,独立

した外部アセスメントの場合には,詳細な報告の形式となる。加えて,アセスメント目的及びアセスメン

トと同時にこの付加的な分析を実施するかどうかということによって,その他の成果及び提案された改善

活動計画を提示するために準備してもよい。結果は,絶対的に表現することもあるし,以前のアセスメン

ト結果との比較,ベンチマークデータ,事業ニーズとの比較などによって,相対的に表現することもある。 

改善計画を策定するための基準,又は必要に応じて能力及び関連したリスクを決定するための基準とし

て,通常は,アセスメント結果を利用する。この手引は,JIS X 0145-4で提供する。 

5.3 

役割及び責任 

5.3.1 

依頼者の責任 

アセスメントの依頼者は,次のことを実施しなければならない。 

a) アセスメントの適合性に責任をもつ個人が適格アセッサであることを検証する。 

b) アセスメントを実施するために資源を利用可能にすることを確実にする。 

c) アセスメントチームが関連する資源を利用することを確実にする。 

[JIS X 0145-2の4.3.1] 

依頼者は,適合するアセスメントを実施するために適切な資源及び能力が利用可能であることを確認す

る責任及び権限をもつ。アセスメントチームが利用する必要のある関係する資源の例には,次のものがあ

る。 


X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

− 面談対象の主要人物 

− アセスメントの期間中に必要な基盤 

− 調査すべき作業生産物 

特定の責任が組織単位の管理層に直接的に割り当てられていないとしても,依頼者の確約及び動機付け

は非常に重要である。このことは,依頼者が組織単位の管理層の一員ではない場合には,特に真実である。 

5.3.2 

適格アセッサの責任 

適格アセッサは,次のことを実施しなければならない。 

a) アセスメントを始めるために依頼者の責務を確認する。 

b) JIS X 0145-2の要求事項に従って,アセスメントを実施することを確実にする。 

c) アセスメントの参加者がアセスメントの目的,範囲及び進め方について概要説明を受けることを確実

にする。 

d) アセスメントチームの全員が,その役割に適切な知識及びスキル(技術)をもつことを確実にする。 

e) アセスメントチームの全員が,定義したアセスメント活動の実施方法について,適切に文書化した手

引を利用できることを確実にする。 

f) 

アセスメントチームが,アセスメントを支援するために選択したツールを使用する能力を備えている

ことを確実にする。 

g) 提出したアセスメント結果を依頼者が受領したことを確認する。 

h) アセスメントの完了時に,JIS X 0145規格類に対するアセスメントの適合性の程度を検証し,文書化

する(JIS X 0145-2の7.4も参照)。 

[JIS X 0145-2の4.3.2] 

適格アセッサは,アセスメントがその目的を達成すること及びそれがJIS X 0145-2の要求事項に適合し

ていることを確実にすることについて責任がある。したがって,適格アセッサが種々の文書化されたアセ

スメントプロセスの中から,適切なものを選択することは,必須となる。万一,この選択がアセスメント

依頼者によってなされた場合であっても,適格アセッサは,各アセッサがそのアセスメントプロセスを使

用するのに適任であることを確実にすることについて責任を依然として負っている。 

5.3.3 

アセッサの責任 

アセッサは,次のことを実施しなければならない。 

a) アセスメントに関連して,割り当てた活動を実行する。例えば,詳細計画作成,データ収集,データ

妥当性確認及び報告である。 

b) プロセス属性の評定を行う。 

[JIS X 0145-2の4.3.3] 

適格アセッサだけが評定作業を実施する。チームの他のメンバは,特定の専門知識を提供したり,又は

事務作業を手伝うアセスメントチームメンバとして参加してもよい。そのメンバは,アセッサの判断の策

定においてアセッサを支援してもよいが,プロセス属性の最終評定に責任を負うことはない。 

5.4 

アセスメント初期入力の定義 

アセスメント入力は,アセスメントのデータ収集段階に先立って定義し,アセスメントの依頼者又は依

頼者が委任した人によって承認されなければならない。 

[JIS X 0145-2の4.4.1] 

アセスメントを開始する前に,アセスメント入力として必要な全ての情報を,照合,レビュー,承認及


10 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

び文書化することが望ましい。アセスメントプロセスの推進の基となるので,アセスメント依頼者がアセ

スメント入力を承認することは,絶対不可欠となる。アセスメント入力を承認することによって,依頼者

も,アセスメント目的への関与及び責務を行動で示すことになる。 

少なくとも,アセスメント入力として,次のことを明記しなければならない。 

a) アセスメントの依頼者の識別及び診断対象組織単位に対する依頼者の関係  

[JIS X 0145-2の4.4.2 a)] 

依頼者は,通常は,組織内の個人であるが,必ずしも診断対象の組織単位に所属する必要はない。独立

アセスメントの場合には,依頼者は,例えば,アセスメント出力を独立して導き出すことを望む取得者の

ように,診断対象の組織単位外の法人であってもよい。 

b) アセスメントの目的 

[JIS X 0145-2の4.4.2 b)] 

異なった種別のアセスメントは,異なった目的をもっている。目的は,依頼者の事業目標,例えば,内

部プロセス改善の促進又は内部若しくは外部の供給者の選択によって,変化してもよい。 

c) 次を含むアセスメント範囲 

1) 組織単位において,調査すべきプロセス 

2) アセスメント範囲において,各プロセスに対して調査すべき最も高い能力水準 

3) プロセスを展開する組織単位 

4) 次を含む背景 

i) 

組織単位の規模 

ii) 組織単位の製品又はサービスの適用分野 

iii) 組織単位の製品又はサービスの主要な特性(例えば,規模,重要性,複雑さ及び品質) 

[JIS X 0145-2の4.4.2 c)] 

プロセス範囲は,アセスメントに含まれる最も高い能力水準とともに,一つ以上のプロセスを含んでも

よい。アセスメントに使用するプロセス及び能力水準の数を制限することは,調査に焦点を合わせるとい

う効果がある。例えば,依頼者は,一つ以上の重大なプロセス又は改善活動の候補であるプロセスに重点

を絞り込むことを望んでもよい。プロセス能力の決定方式において,取得者は,提供物又は契約要求事項

に関連するプロセスのためだけに,供給者の能力を評価することを望んでもよい。 

組織単位の選択は,アセスメント出力の依頼者の意図した使用を反映することが望ましい。例えば,出

力をプロセス改善のために使用する場合には,組織単位の範囲は,意図した改善努力の範囲に合致するこ

とが望ましい。組織単位の範囲は,一つのプロジェクトから組織全体まであり得る。 

実行されたプロセスの洗練度及び複雑度は,組織単位内におけるそのプロセス背景に依存する。例えば,

5人のプロジェクトチームに要求される計画は,50人のチームよりはるかに少ない。このプロセス背景は,

アセスメント入力で記録され,適格アセッサが実行されたプロセスに対してプロセス属性をどのように審

査判断し,評定することが望ましいかについて影響を与える。プロセス背景は,プロセス属性及び/又は

プロセス能力水準評定の間の比較可能性の度合いにも影響を与える。 

d) アセスメントの進め方 

[JIS X 0145-2の4.4.2 d)] 

この規格の4.8で,実行可能なアセスメントの進め方を示す。 

 


11 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

e) 少なくとも,次のことを考慮しているアセスメント制約 

1) 主な資源の利用可能性 

2) アセスメントに費やす最長期間 

3) アセスメントから除外する特定のプロセス又は組織単位 

4) アセスメントで調査する客観的証拠の量及び種類 

5) アセスメント出力の所有権及びこれらの使用上の制限 

6) 機密保持契約の結果として生じる情報の制御 

[JIS X 0145-2の4.4.2 e)] 

主要な資源が利用可能ではない場合,アセスメントの成功に影響を与えるかもしれない。通常の事業活

動の中断を最小限にするための考慮を必要とする。 

プロセス及び範囲は,利用可能時間に対応して修整してもよい。 

ライフサイクルの段階などに起因して組織単位のある部分を除外することが必要になってもよい。 

収集・調査した客観的証拠の量及び種別に制約を設けてもよい。例えば,面談者は,組織単位で高々20 %

にすると記述してもよい。また,文書の調査によってではなく,面談によってだけ,証拠を収集すること

が望ましいと記述してもよい。 

アセスメント範囲[JIS X 0145-2の4.4.2 c)]でアセスメントを行うプロセスを定義するので,制約とし

てのプロセスの除外は,冗長であると思われるかもしれない。しかしながら,上記で定義したアセスメン

ト範囲の中でプロセスのアセスメントを行う間に,特定の属性を理解する上で有用な,他の関連するプロ

セスを調査することが必要になるかもしれない。この場合,関連したプロセスは,明示的に除外されても

よい。それゆえ,調査しなくてもよい。 

f) 

JIS X 0145-2の6.3で定義する要求事項を満たすプロセスアセスメントモデルの識別(使用したプロセ

ス参照モデルの識別を含む。) 

1) プロセス参照モデルがシステムエンジニアリングプロセス又はソフトウェアエンジニアリングプロ

セスを含んでいる場合,これらのプロセスとJIS X 0170:2004又はJIS X 0160:2007の附属書Fとの

関連を定義する。 

[JIS X 0145-2の4.4.2 f)] 

簡単に適用できるように,単一のプロセスアセスメントモデルの使用を望んでもよい。しかし,アセス

メントの目的によっては,他のプロセスアセスメントモデルの一部分を選択して使用してもよい。 

システムエンジニアリングプロセス又はソフトウェアエンジニアリングプロセスのアセスメントを行う

場合,使用したプロセスアセスメントモデル及び関連したプロセス参照モデルは,JIS X 0160:2007及びJIS 

X 0170:2004に基づいていてもよいし,又は関連していてもよい。 

プロセス参照モデルとJIS X 0160:2007及びJIS X 0170:2004の二つの規格との間に存在する関係が,も

しあるのならば,アセスメント入力として記述する。関係がない場合には“関係なし”と記述する。  

g) 適格アセッサの特定 

h) アセスメントに責任を負うアセッサの適格性の判定基準 

[JIS X 0145-2の4.4.2 g)及びh)] 

箇条10でアセッサの能力に関する手引を提供する。文書化されたアセスメントプロセスでは誰が適格ア

セッサとしてふさわしいかということに関する特定の基準を提供することが望ましい。 

 


12 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

i) 

アセスメントに特定の責任を負う,アセスメント対象者,アセスメントチーム及びアセスメント支援

要員の特定及び役割  

[JIS X 0145-2の4.4.2 i)] 

アセッサの知識及び経験を結合することでアセスメント結果の信頼性を向上させるが,アセスメント活

動に従事するアセッサの数は変化してもよい。組織単位からのアセスメントチームのメンバは,プロセス

背景を提供することができるし,アセスメント結果の所有権及び信頼性を担保することができる。 

アセスメント対象者の選択は,診断対象の組織単位を代表することが望ましい。参加者が組織単位の代

表である場合には,アセスメント結果は,プロセス能力の正確な見方を提供する可能性が高い。 

j) 

プロセス改善又はプロセス能力判定を支援するために,アセスメント中に収集すべき追加情報。例え

ば,特定の事業目標を満たす組織の能力を数量化するために必要な特定のデータ(又は,測定結果)。

追加情報には,JIS X 0145-2の6.3.5及びその注記に詳述した情報を含めてもよい。 

[JIS X 0145-2の4.4.2 j)] 

改善の機会又は取得のリスクのような,プロセス背景を支援する情報を文書化することが望ましい。 

アセスメント入力での変更は,依頼者又は依頼者が委任した人と合意し,アセスメント記録の中に文書

化しなければならない。 

 [JIS X 0145-2の4.4.3] 

アセスメント実施中に,アセスメント入力の定義に変更が発生してもよい。変更は,依頼者又は依頼者

が委任した人が承認することが望ましい。この変更が日程及び資源に影響を及ぼす場合には,アセスメン

ト計画を適切に更新することが望ましい。 

アセスメント活動を再度繰り返すことが必要であるかどうかを決定するために,既に収集したデータに

対して,影響分析を実行することも望ましい。 

5.5 

アセスメント出力の記録 

依頼者又は依頼者が委任した人が保存するために,アセスメントに関係があり,かつ,アセスメントの

出力の理解を助ける情報を編集し,アセスメント記録に含めなければならない。 

少なくとも,アセスメント記録には,次のことを含めなければならない。 

a) アセスメント実施日 

b) アセスメント入力 

c) 収集した客観的な記録の特定 

d) 文書化したアセスメントプロセスの特定 

e) アセスメントに由来する一連のプロファイル(診断したプロセスごとに一つのプロファイル) 

f) 

JIS X 0145-2の4.4.2 j)で規定したようなアセスメント期間中に収集した追加情報の特定 

[JIS X 0145-2の4.5.1及び4.5.2] 

アセスメント出力の情報内容は,アセスメント結果の理解を助け,ベンチマーキング,第三者検証など

の活動の促進を意図している。記録は,様々な形式で,アセスメントを支援するために使用する環境及び

ツールによって紙の資料又は電子媒体として保存することができる。 

アセスメント入力で識別された守秘義務契約又はアクセス制約に基づいて,依頼者,適格アセッサ,組

織単位,又は他人若しくは他団体が保存する記録の項目は異なることがある。 

5.6 

文書化されたアセスメントプロセスの選択 

ここでは,JIS X 0145規格類に適合したプロセスアセスメントを実施する上で使用するために,文書化


13 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

されたアセスメントプロセスの選択及び使用するための手引を提供する。この手引は,主として,アセス

メントのアセッサ及び依頼者が使用することを意図している。この手引は,プロセスアセスメントモデル

の開発者を特に対象としているわけではないが,開発者にも役に立つかもしれない。 

文書化されたアセスメントプロセスをアセッサが選んでもよいし,アセスメント依頼者が条件として要

求してもよい(この場合,これを制約としてアセスメント入力に文書化することが望ましい。)。どちらの

場合にも,想定した使用に対して選択が適切であることを確実にすることを支援する基準がある。文書化

された特定のアセスメントプロセスは,特定のプロセス背景,特定のアセスメントの進め方及び特定のプ

ロセスに使用してもよい。これらの要因の全てが,文書化された特定のアセスメントプロセスを選択する

ための決定に影響を及ぼしてもよい。業界標準として資源の最も効果的な使用を確実にするために文書化

された特定のアセスメントプロセスを選択した場合,組織は,文書化された特定のアセスメントプロセス

を使用することを強制してもよい。 

使用するプロセス参照モデル及び/又はプロセスアセスメントモデルに事前に制約がある場合には,こ

のことを選択した文書化されたアセスメントプロセスの制約にしてもよい。 

文書化されたアセスメントプロセスを選択するときの主な考慮事項は,アセスメント目的を満たすこと

を確実にすることができることである。同様に,アセスメントの背景及び範囲に適合していることが非常

に重要である。その選択に影響を与える主な要因は,次のとおりである。 

− アセスメントの計画された目的 

− アセスメントの計画された範囲 

− 選択したアセスメントの進め方 

− 選択したプロセスのプロセス背景 

− アセスメント依頼者が受け取る結論の正確さについてのリスクの量 

特定のアセスメントの進め方を支援するために,特に開発した文書化されたアセスメントプロセスが存

在する場合,可能な限り,これらを使用することが望ましい。進め方の一貫性,能力の再利用などを確実

にするために,より大規模で複雑な組織は,その組織の事業活動の範囲を網羅することができる能力を備

えた,文書化されたアセスメントプロセスを選択することを強制してもよい。 

選択決定にも影響を与える多くの二次的な要因がある。これらの二次的な要因には,アセスメントを実

施するために必要な,費用,期間,その他の資源(例えば,アセッサ)の利用可能性などの,更に実務的

な問題に関係している。例えば,特別な資格を備えたアセッサの利用,アセスメントに関係する資料の利

用可能性など,文書化されたアセスメントプロセスの利用に関連する制約があってもよい。 

個別のアセスメントの特定のニーズに合致するように,文書化されたアセスメントプロセスを修整でき

ることが必要である。アセスメント目的,アセスメント範囲及びアセスメントの全般的な進め方は,必要

な活動を実施する方法に強い影響を与える。最低限の必要な一そろ(揃)いの活動を実施する場合には,

指定されたタスクの追加又は削除によって,特定のアセスメントのためのアセスメントプロセスを修整し

てもよい。修整指針を,次に示す。 

− 計画に要求される詳細さの水準 

− データの収集源及び手段 

− データの保存及び検索の仕組み 

− アセスメントの一部として実施する追加タスク 

− プロセス評定時の合意達成の手段 

− 結果報告の進め方 


14 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

プロセス能力の測定の枠組み 

測定の枠組みは,共通属性を備えているプロセスの概念に基づいている。このプロセス属性を定義し,

能力水準に割り当てる。 

次の細分箇条で能力水準の意味の解釈を提供するとともに,能力水準1から5までに割り当てた九つの

プロセス属性の達成を認識する方法を示す指針も提供する。 

6.1 

水準0 不完全なプロセス 

水準0:不完全なプロセス 

プロセスを実行していない又はそのプロセスの目的を達成していない。 

この水準では,プロセスの目的を,体系的に達成しているという証拠がほとんどないか又は全くない。 

[JIS X 0145-2の5.1] 

不完全なプロセスとは,全然実行されないプロセス,又はプロセス目的を体系的に達成したという証拠

がほとんどないプロセスをいう。体系的な達成は,プロセス目的を達成することを総合的に確実にする,

必要な活動の定期的な実行及び適切な入出力作業生産物の存在によって特徴付けられる。 

水準0は,唯一属性がない能力水準である。実際には,水準0とは,能力水準1又はそれ以上ではない

状態と考えることができる。したがって,プロセスが水準0であるという決定は,主として,水準1で実

施していると考えられる適切な客観的証拠の欠如に基づく。 

6.2 

水準1 実施されたプロセス 

水準1:実施されたプロセス 

実行したプロセスが,そのプロセスの目的を達成している。 

プロセスの次の属性が,この水準の達成を実証している。 

[JIS X 0145-2の5.2] 

実施されたプロセスは,プロセス目的を達成することを集合的に確実にする,必要な活動の実行及び適

切な入出力作業生産物の存在を通して,そのプロセス目的を達成する。 

水準1は,一つの属性をもつ唯一の能力水準である。 

水準1で唯一の属性は,(全てのプロセス属性がそうであるように)全てのプロセスに共通するように記

載されているが,実際には,その属性は,プロセス実行及びプロセスによって異なるプロセス成果の達成

に関係する。言い換えれば,水準1で唯一の属性を達成している証拠を実証する指標は,全てのプロセス

に共通ではなく,診断対象のプロセスに対して固有になっている。 

能力水準1は,プロセスに対して定義した成果の達成の程度に対してだけ注目する。プロセス成果は,

次のものを一つ以上記述する。 

− 作成物の生産 

− 状態の重要な変更 

− 例えば,要求事項,目標などの指定された制約を満たしている。 

上記の要素は,JIS X 0145-2の6.2.4に基づいている。 

したがって,アセッサは,考慮する特定のプロセス成果の性質に応じて,一つ以上の上記のプロセス成

果に関係する作業生産物及び活動に注目する必要がある。 

 

 

 


15 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

PA 1.1 プロセス実行属性 

プロセス実行属性は,プロセスの目的を達成する程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した

結果は,次のとおりである。 

a) プロセスは,定義された成果を達成している。 

[JIS X 0145-2の5.2.1] 

プロセス参照モデルは,各プロセスに対して,目的及び期待する成果を定義する。一方,プロセスアセ

スメントモデルは,プロセス実行及びプロセス能力の両者に対する指標を提供する。 

上記のPA1.1に関連する指標は,プロセス実行指標である。プロセス実行指標は,プロセスによって異

なるが,一般に,次のものから構成されている。 

− プロセスへの入力である作業生産物で識別されたもの 

− プロセスによって作られた作業生産物で識別されたもの 

− 入力作業生産物を出力生産物に変換するために実施された活動 

アセッサは,プロセスを実施する人がプロセス自身の目的を理解し,必要な活動を実施していることを

検証しようと試みる。活動の実施から得られる作業生産物は,入力作業生産物とともに,プロセス実行の

更なる証拠である。しかしながら,これらの作業生産物の単なる存在では十分でない。これらがプロセス

目的の達成に貢献していることを明らかにすることが望ましい。 

6.3 

水準2 管理されたプロセス 

水準2:管理されたプロセス 

ここでは,水準1の“実施されたプロセス”を,管理された方法(すなわち,計画し,監視し,調整し

た方法)で実行しており,その作業生産物も,適切に確立し,制御し,維持している。 

プロセスの次の属性は,水準1で定義する属性とともに,この水準の達成を実証している。 

[JIS X 0145-2の5.3] 

プロセス実行の識別された目標を満たすため,及び適切に識別され,文書化され,制御された作業生産

物を作成するために,管理されたプロセスを計画し,監視し,調整する。 

実施された水準との主な違いは,表明された要求事項を満たす作業生産物を引き渡すために,プロセス

実行を計画し,監視し,調整することにある。したがって,管理されたプロセスの不可欠な要素は,プロ

セス実行の管理,及び作業生産物の管理に明示的に関心を集中させることである。プロセスのこれら二つ

の観点の先を見越した管理が満たす重大な役割は,生産されるものが必要なものであるという保証,及び

更に予測可能な方法でプロセスを実行するという保証を高めることにある。 

プロセスの先を見越した管理は,作成物及び/又は検証可能な活動(例えば,計画立案及び/又は計画,

監視する仕組み及び/又はプロセスの計画値と実績値との比較結果に基づいたプロセスの調整活動)をも

たらす。 

 

 

 

 

 

 

 


16 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

PA 2.1 実行管理属性 

実行管理属性は,プロセスの実施を管理している程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した

結果は,次のとおりである。 

a) プロセスの実行の目標を識別している。 

b) プロセスの実行を計画し,監視している。 

c) プロセスの実行が計画を満たすように調整している。 

d) プロセスを実施するための責任及び権限を定義し,割り当て,伝達している。 

e) プロセスを実施するために必要な資源及び情報を識別し,利用可能にし,配分し,利用している。 

f) 

効果的な伝達及び明確な責任の割当ての両方を確実にするために,関係者間のインタフェースを管理

している。 

[JIS X 0145-2の5.3.1] 

実行管理属性は,プロセス実行目標を満たしていることを合理的に保証する基本的な管理手法の応用に

関連している。 

プロセス実行目標の識別は,この属性の達成のための重大な要求事項である。一般的に,実行目標は,

次の項目を含む。 

a) 生産作成物の品質 

b) プロセスサイクルタイム 

c) 資源の利用方法 

例えば,プロセス入力,プロジェクト全体及び/又は生産物に対する制約,特性などの他の考慮事項に

よって,プロセス実行目標が順々に推進されることに注意する。プロセス能力のこの水準では,プロセス

実行目標は,定性的な用語(例えば,ピアレビューは,理解及び実施が容易である。)又は定量的な用語(例

えば,ピアレビューによって,平均して,生産物の欠陥の少なくとも80 %を検出する。)のどちらで表現

してもよい。 

幾つかのプロセス(例えば,支援プロセス,組織プロセス及び管理プロセス)は,各事例に対して計画

を要求しなくてもよいが,常に準備した状態で,継続的に,実施してもよい。 

明確に定義した責任及び理解された一連の権限なしには,いかなる企業集団事業も始めから危険にさら

されている。それゆえに,管理されたプロセスの重要な側面は,プロセス実施のための責任及び権限を明

示的に割り当てることである。取り組まなければならない最も重要な側面は,プロセス実施のための責任

及び権限についての識別,割当て及び情報交換である。プロセスにおける全ての利害関係者(例えば,プ

ロセス所有者,プロセス実行者など)は,こうした活動について知らされることが望ましいことに注意す

る。 

識別したプロセス実行目標に従ってプロセスを実行するために必要な資源及び情報を,識別し,利用可

能にし,割り当て,利用する。必要に応じて,計画した実行からの逸脱に対応するために,プロセスの実

行を管理し,潜在的に調整しているので,利用可能になった資源及び情報に対して,適切な調整を行うた

めに準備することが特に重要である。 

プロセスを実施するために必要な資源の管理に関連するのは,効果的な情報交換及び明確な責任の割当

てを確実にするための関係者間のインタフェースの管理である。一般的に,考慮すべき利害関係者には,

次の幾つかの種別が存在する。 

− プロセス所有者 


17 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

− プロセス実行者 

− 必要な資源及び情報を提供する人 

− プロセスの上流に関係のある人 

− プロセスの下流に関係のある人 

− 潜在的に関係のある人 

プロセス実行においては,一見小さな変更でさえ,一人以上の利害関係者に重大な影響を与えるかもし

れないので,これら関係者間のインタフェースを計画し,監視し,適切に調整すること,及び明確で時機

を得た方法で情報交換をすることが極めて重要である。 

PA 2.2 作業生産物管理属性 

作業生産物管理属性は,プロセスによって作り出される作業生産物を適切に管理している程度を示す測

定量である。この属性を十分に達成した結果は,次のとおりである。 

a) プロセスの作業生産物に対する要求事項を定義している。 

b) 作業生産物の文書化及び制御に対する要求事項を定義している。 

c) 作業生産物を適切に識別し,文書化し,制御している。 

d) 計画した取決めに従って作業生産物をレビューし,必要であれば要求事項を満たすように調整してい

る。 

注記1 作業生産物の文書化及び制御に対する要求事項には,変更及び改訂状況の識別に対する要求

事項,作業生産物の承認及び再承認の識別に対する要求事項,並びに利用する時点で利用可

能で,適用可能な作業生産物の関連する版を作成することに対する要求事項を含めてもよい。 

注記2 JIS X 0145-2の5.3.2で参照している作業生産物は,プロセスの成果を達成することで得られ

るものである。 

[JIS X 0145-2の5.3.2] 

作業生産物の管理属性は,作成された作業生産物を適切に識別し,文書化し,制御するという合理的な

保証を提供するための基本的な管理手法の応用に関連している。6.3で言及する作業生産物は,プロセス成

果(例えば,能力水準1を達成しているプロセスに起因する成果)を達成した結果として得られるもので

ある。 

作業生産物は,プロセスの実行に関連する作成物である。したがって,作業生産物の性質は,プロセス

目的によって異なる。幾つかの作業生産物は,引き渡し可能な生産物の一部であってもよいが,そうでな

いものもある(例えば,個人記録などの品質記録又は会議議事録)。 

プロセスの作業生産物に対する要求事項を,それらの生成(検証も同様に)の基準を提供するために識

別する。作業生産物への要求事項は,プロセス自身に対する要求事項の実行に重大な影響を及ぼすことに

注意する。それゆえに,能力水準2の二つのプロセス属性は,相互に依存している。 

プロセス作業生産物への要求事項は,作業生産物属性に付随する機能的な要求事項(性能,規模など)

であってもよいし,作業生産物の属性に直接的に関連していない合意又は制約に付随する非機能的な要求

事項(引渡し日,包装など)であってもよいし,これらの組合せであってもよい。 

プロセス作業生産物の文書化及び制御への要求事項も定義する。これらは,作業生産物に対する要求事

項とは違うものとして考える。様々な変更管理又は構成管理は,作業生産物及び/又はプロジェクトの特

定の側面に適切に依存してもよい。 

プロセス作業生産物の文書化及び制御への要求事項は,作業生産物の適切な識別,文書化及び制御に対

する基準としてそのとき適用される。 


18 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

プロセスの実行の結果としてのプロセス作業生産物は,計画した取決めに従ってレビューし,要求事項

を満足するために,必要に応じて,調整する。レビューの範囲及び本質は,多くの要因に依存する。そし

て,その要因全ては,作業生産物管理の計画の一部として考えることが望ましい。 

6.4 

水準3 確立されたプロセス 

水準3:確立されたプロセス 

ここでは,水準2の“管理されたプロセス”は,プロセスの成果を達成することができる,定義された

プロセスを使用して実行している。 

プロセスの次の属性は,水準2までで定義する属性とともに,この水準の達成を実証している。 

 [JIS X 0145-2の5.4] 

確立されたプロセスは,そのプロセス成果を達成するために,定義されたプロセスとして,効果的に展

開される標準プロセスに基づいている。確立され,維持された標準プロセスを修整した,定義されたプロ

セスを使って,プロセスを実施する。標準プロセスは,プロセスの実行に必要な資源(人的資源及び社会

基盤資源の両方を)として識別する。これらの資源は,定義されたプロセスに組み入れられる。標準プロ

セス及び定義されたプロセスの両方を理解し,改善するための機会を識別するために,適切なデータを収

集する。 

管理された水準との主な違いは,確立された水準のプロセスは,標準プロセスを修整した,定義された

プロセスであることにある。 

能力水準3は,プロセス改善のための閉ループフィードバックサイクルの基準を提供するために必要な

基盤に加えて,修整され,効果的に展開されている標準プロセスを確立することによって,プロセス能力

の次の水準への進歩の基盤を提供する。 

PA 3.1 プロセス定義属性 

プロセス定義属性は,定義されたプロセスの展開を支援するために,標準プロセスを維持管理している

程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した結果は,次のとおりである。 

a) 定義されたプロセスに盛り込まなければならない基本要素を規定している標準プロセスを,適切な修

整の手引を含めて,定義している。 

b) 標準プロセスとその他のプロセスとの順序関係及び相互作用を定めている。 

c) プロセスを実施するために必要な適格性及び役割を,標準プロセスの一部として識別している。 

d) プロセスを実施するために必要な基盤及び作業環境を,標準プロセスの一部として識別している。 

e) プロセスの効果性及び適切性を監視するために適切な方法を定めている。 

注記 修整の手引が必要でないならば,定義されたプロセスを展開する場合,標準プロセスをそのま

まで利用してもよい。 

[JIS X 0145-2の5.4.1] 

プロセス定義属性は,標準プロセスの確立,定義されたプロセスを実行するための基準としての標準プ

ロセスの利用,及び標準プロセスを理解し改善するための基準としてのプロセス実行データの収集及び評

価に関係している。 

定義されたプロセスは,そのプロセスを展開する環境を構成する制約及び条件を考慮に入れて,標準プ

ロセスを修整することによって生成する。実際の問題として,この属性の達成は,次のことによって左右

される。 

− 標準プロセス及び関連する修整指針を,どの程度定義し,利用可能としているか。 


19 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

− 標準プロセスの適用を意図する適用の範囲に標準プロセスを適切に適合させるための明確な指示を,

修整指針がどの程度提供しているか。 

“定義されたプロセス”は,次のようなプロセスをいう。 

− 組織の修整指針に従って,組織の標準プロセス集合から修正したプロセス 

− 保守プロセスに関する記述を含んだプロセス 

− 作業生産物,測定量及び組織のプロセス資産へのその他のプロセス改善情報に貢献するプロセス 

プロジェクトの定義されたプロセスは,プロジェクトの作業及び活動の計画,実施及び改善の基準を提

供する。 

プロセスの修整は,特定の目的のためにプロセス記述の作成,変更又は適合することである。例えば,

プロジェクトは,プロジェクトの目的,制約及び環境に合うように,組織の標準プロセス集合を修整する

ことによって,定義されたプロセスを生成する。“修整の手引”は,組織が標準プロセスを様々な状況で展

開することを可能にするために使用する。組織の標準プロセス集合は,プロセスを実行するために直接的

に利用できないかもしれない一般的な水準で記述されている。修整の手引は,プロジェクトのための定義

されたプロセスを確立する人々を援助する。修整の手引は,修整できるのは何か,そして修整できないの

は何かを記述し,かつ,修整を実施するための候補となるプロセス構成要素を識別する。 

プロセスの順序及び相互作用は,必ずしも連続した実行を意味していない。それは,同時実行,周期的

フィードバック又は何かほかの相互作用を意味してもよい。 

標準プロセスについての有意義なフィードバックを得るための明白な前提条件は,厳密に定義されたプ

ロセスを利用することである。すなわち,プロセス実行者が,定義されたプロセスに従って行動している

ということである。実際に行われる作業を反映していない場合は,完璧に修整されたプロセスは永続的な

価値はない。 

プロセス利用のデータを収集するにつれて,標準プロセスの振る舞いを理解するための基準が蓄積され

る。この知識リポジトリは,標準プロセスの理解及び改善の基準を提供する。 

PA 3.2 プロセス展開属性 

プロセス展開属性は,定義されたプロセスとしてそのプロセスの成果を達成するために,標準プロセス

を効果的に展開している程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した結果は,次のとおりである。 

a) 適切に選択及び/又は修整された標準プロセスに基づいて,定義されたプロセスを展開している。 

b) 定義されたプロセスを実施するために必要な,役割,責任及び権限を,割り当て,伝達している。 

c) 定義されたプロセスを実施する要員に,適切な教育,訓練及び経験に基づいた適格性がある。 

d) 定義されたプロセスを実施するために必要な資源及び情報を,利用可能にし,割り当て,利用してい

る。 

e) 定義されたプロセスを実施するのに必要な基盤及び作業環境を利用可能にし,管理し,維持している。 

f) 

プロセスの振る舞いを理解するための根拠として,プロセスの適切性及び効果性を実証するため,並

びにプロセスの継続的改善を評価するために,適切なデータを収集し,分析している。 

注記 適格性は,教育,訓練及び経験を通して身に付けた知識,スキル(技術)及び個人の属性の組

合せに由来する。 

[JIS X 0145-2の5.4.2] 

プロセス展開属性は,組織単位が利用可能な一そろ(揃)いの標準プロセス資産を修整した,定義され

たプロセスの効果的な展開に関するものである。属性の定義において識別されるので,効果的な展開に寄

与する重大な側面が数多くある。 


20 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

この属性の達成は,特定の各事例に適用するために修整されるので,標準プロセスに対する忠実さに反

映される。また,この属性は,定義されたプロセスの実行に対する資源の効果的な展開,並びに定義され

たプロセスの振る舞いを理解し,精緻化するためのデータの収集及び分析に対する効果的な資源の展開を

反映する。 

このプロセス属性のもう一つの重大な側面は,定義されたプロセスをうまく展開(実行)するための実

現条件が存在することを確実にすることである。実現条件には,次の項目を含む。 

− プロセスを実行する人的資源に関する特定の属性の定義 

− 定義されたプロセスを実施するために必要なプロセス基盤及び作業環境の理解 

− 必要な人的資源及びプロセス基盤のうまい割付け及び展開 

− 定義されたプロセスを実施するための役割,責任及び能力の共通の定義された理解 

プロセス基盤は,定義されたプロセスを実行するために必要なツール,方法及び特別な設備を含む。 

定義されたプロセスの実行に関係する適切なデータの決定,収集及び分析は,定義されたプロセスの適

合性及び有効性の実証の基準を提供するとともに,定義されたプロセスの振る舞いの理解の基準を提供す

る。同様に,このことは,定義されたプロセスが基盤とする標準プロセス要素についての進行中の改善に

貢献する。 

6.5 

水準4 予測可能なプロセス 

水準4:予測可能なプロセス 

ここでは,水準3の“確立されたプロセス”は,プロセス成果を達成するために,定義する範囲内で運

用している。 

プロセスの次の属性は,水準3までで定義する属性とともに,この水準の達成を実証している。 

[JIS X 0145-2の5.5] 

予測可能なプロセスは,首尾一貫して,そのプロセス成果を達成するために定義された範囲内で機能す

る。加えて,関連する測定から導き出された定量的情報を通して,その実行を支援し,促進する。能力水

準4で機能するプロセスの実行は,定量的に管理され,総合的な事業目標を支持するために予測可能な方

法で機能する。実行における変動の特殊原因に対処する。 

確立された水準との主な違いは,定義されたプロセスが,そのプロセス成果を達成するために定義され

た範囲内で,現在も常に,実施されていることである。 

PA 4.1 プロセス計測属性 

プロセス計測属性は,プロセスの実施によって,定義している事業目標の下に,関連するプロセス実行

目標の達成を支援していることを確実にするために測定結果を利用している程度を示す測定量である。こ

の属性を十分に達成した結果は,次のとおりである。 

a) 関連する定義している事業目標の下に,プロセス情報ニーズを設定している。 

b) プロセス情報ニーズから,プロセス測定目標を導き出している。 

c) 関連する事業目標の下に,プロセス実行に関する定量目標値を設定している。 

d) プロセス測定目標及びプロセス実行に関する定量目標値に従って,測定量及び測定の頻度を識別し,

定義している。 

e) プロセス実行のための定量目標値を達成している程度を観測するために測定結果を収集し,分析し,

報告している。 

f) 

測定結果をプロセス実行の特徴付けに使用している。 


21 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

注記1 情報ニーズは,通常は,管理ニーズ,技術的ニーズ,プロジェクトニーズ,プロセスニーズ

又は製品ニーズを反映する。 

注記2 測定量はプロセスの測定量若しくは製品の測定量又はその両方であってもよい。  

[JIS X 0145-2の5.5.1] 

プロセス計測属性は,プロセスの実行及び作業生産物の品質に関連する測定量を収集するための効果的

なシステムの存在に関するものである。組織の事業目標の達成の程度を決定するために測定量を用いる。 

関連する事業目標を理解し,明確に識別して,事業目標と製品及びプロセスに対する特定の目標及び測

定量との間に何らかの形での対応を確立する。 

図1は,プロセス計測属性に関連する幾つかの重要な概念の関係を示す。 

 

 

図1−プロセス計測属性の概念の関係 

 

顧客が提供する詳細設計に基づいて,“ソフトウェア製造”プロセスを展開する組織単位が,“電子商取

引のためのソフトウェアなどの特定の隙間市場で,業績を急速に好転するために市場の先駆者となること”

を,“関連する事業目標”の例として示す。この例では,管理のための“情報ニーズ”は,次の項目となる

であろう。 

− (規模及び複雑性について正規化した)ソフトウェア単位を開発し,公表するのにどのくらいの期間

がかかるか。 

− (規模及び複雑性について正規化した)各ソフトウェア単位の開発費用はどのくらいか。 

− 各ソフトウェア単位は,要件満足度,欠陥密度,保守性及び美しさに関して,どのくらい受け入れる

ことができるか。 

“情報ニーズ”のこの例に基づいて,導出された“プロセス測定目標”は,次の項目を数値化してもよ

い。 

− 実際の開発の応答時間,規模及び複雑性 

− 実際の開発費用 

− 要件満足度の程度 

− 欠陥密度 

− 保守性 

− 美しさ 

この“プロセス測定目標”に合致する“測定量”は,次の項目でもよい。 

− 小数点以下1桁に丸めた正規化時間 

・ 実際の時間,規模及び複雑性 

 
 
 
 
 
 

確立したプロセスの

情報ニーズ 

 
 
 
 
 
 

関連する定義された 

ビジネスゴール 

 
 
 
 
 
 

プロセス実施に 

対する定量的目標 

 
 
 
 
 
 

プロセス測定の 

目標 

 
 
 
 
 
 

測定値, 

及び測定の頻度 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

測定結果 

導出 

対応 

対応 

監視に利用 

整合 

作成 

整合 


22 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

− 正規化した費用 

・ 実際の費用,規模及び複雑性 

・ 正規化した費用は,決められた範囲内である(はい又はいいえ)。 

− 受入れやすさ 

・ 識別された要件の百分率での要件満足度 

・ 100行当たりの欠陥数として正規化した欠陥密度 

・ 百分率表示で表した保守性 

・ 百分率表示で表した美しさ 

一方,関連する事業目標を支援するために,ソフトウェア製造プロセスの“プロセス実行の目標”は,

“決められた費用及び受入れ可能しきい(閾)値内でソフトウェア単位の開発時間を最小にすること”で

あってもよい。ここで,“受入れ可能しきい(閾)値”は,次の項目を参照してもよい。 

− 要件満足度の程度 

− 欠陥密度 

− コードの保守性 

− グラフィカルユーザインタフェースの美しさ 

これらのしきい(閾)値が定義されているとき,プロセス実行の目標は,“定量的目標”になる。 

この例でまだ示していなかった項目として,“プロセス実行のための定量的目標”を次の段落に示す。 

100行のソース行及び複雑性5(10段階評価で)の正規化単位に対する目標は,次のとおりである。 

− できるだけ少ない時間 

− 1 000ドルを超えない費用 

− 要件満足度が100 %以下でない 

− 不具合密度:Aクラスで0.01 %以上, Bクラスで0.1 %以上, Cクラスで1 %以上でない 

− 保守性の得点が85 %以上 

− 美しさの得点が65 %以上 

測定量を単に収集するだけでは十分ではなく,プロセス実行に対する定量的目標を達成している程度を

監視するため,測定量の分析及び報告が必要である。 

PA 4.2 プロセス制御属性 

プロセス制御属性は,定義する範囲内で,安定し,能力があり,予測可能であるプロセスを生み出すた

めに,そのプロセスを定量的に管理している程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した結果は,

次のとおりである。 

a) 適用可能ならば,分析技術及び制御技術を決め,適用している。 

b) 通常のプロセス実行に対して,変動の管理限界を設定している。 

c) 変動の特別な要因について,測定データを分析している。 

d) 変動の特別な要因について,是正処置を講じている。 

e) 必要であれば,是正処置に応じて管理限界を再設定している。 

[JIS X 0145-2の5.5.2] 

選択された分析技法及び制御手法は,診断対象の組織単位を取り巻く背景と同様にプロセスの性質によ

って影響される。例えば,全てのプロセスが等しく統計的管理に適合しているわけではなく,プロセスの

定量的な理解を明示する代替手法(例えば,パレート分析,特性要因図など)を選択することができる。 


23 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

識別された分析手法は,プロセス実行の変動の根本原因を識別する目的に適用することが望ましい。プ

ロセス実行の管理限界は,経験に基づいて定めることもできれば,実行に対する確立した目標の観点から

定めることもできる。 

特定の変動原因は,プロセスに固有ではなく,どちらかというとプロセスに附帯的なプロセスにおける

欠陥のせいである。これらは,一般的には,実行問題から起因する。 

プロセス実行の定量的管理は,識別された特定の変動原因を処理するために講じられた是正処置の効果

的な実行を暗示している。効果的に測定を使用している組織単位は,事業への利益の分配における下した

決定の影響に基づいて,その決定を正当化するため,測定及び分析を使用する。 

6.6 

水準5 最適化しているプロセス 

水準5:最適化しているプロセス 

ここでは,水準4の“予測可能なプロセス”を,関連する現在の事業目標及び計画した事業目標を満た

すように絶えず改善している。 

プロセスの次の属性が,水準4までで定義する属性とともに,この水準の達成を実証している。 

[JIS X 0145-2の5.6] 

最適化しているプロセスは,事業目標の変更に効果的に応えるため,順序よく意図的な方法で,変更し,

見直す。このこと(最適化しているプロセスの見直し)は,当該プロセス進行中に行われる。この水準の

プロセス能力(水準5)は,予測可能なプロセス(水準4)の特徴であるプロセス振る舞いの定量的理解に

基本的に依存する。 

能力水準5で機能するプロセスは,予測可能なプロセス(水準4)と最適化しているプロセス(水準5)

を区別する次の三つの重大な振る舞いを提示している。第一の重大な振る舞いは,組織単位の現在の事業

目標と計画された(関連する)事業目標との両者を達成するために,継続的な改善に事前に注力すること

である。すなわち,プロセスの有効性及び効率性を改善するための意図的で計画的な努力に注力する。第

二の重大な振る舞いは,プロセスに対する適切な変更を識別するため,及びプロセスの運用に対する望ま

しくない途絶を最小限に抑えるために変更を導入するために,順序立った,計画的な進め方をとることで

ある。最後の重大な振る舞いとして,実際の結果に対して変更の有効性を評価し,期待した製品及びプロ

セス目標を達成するために,必要に応じて調整を実施する。 

現在の事業目標及び計画された事業目標を達成するため,予測可能なプロセスの実施を継続的に改善す

る。プロセス実行の改善のための定量的目標を,組織単位の関連する事業目標に基づいて,確定する。ベ

ストプラクティス及び革新の機会を識別するために,データを収集し,分析する。すなわち,プロセス実

行での変動の共通要因を特定し,処置する。プロセスを最適化することは,予備的で革新的な考え及び技

術を伴い,定義されたゴール又は目標を達成できるように,効果的でないプロセスを変更することを伴う。 

予測可能な水準との主な違いは,定義され標準化されたプロセスを現在の事業目標及び計画された事業

目標に効果的に合致するように動的に変更し,適合させることである。 

 

 

 

 

 

 


24 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

PA 5.1 プロセス革新属性 

プロセス革新属性は,実行における変動の共通要因の分析,及びプロセスを定義し展開するための革新

的な進め方の調査によって,プロセスへの変更を識別する程度を示す測定量である。この属性を十分に達

成した結果は,次のとおりである。 

a) プロセスについて,ビジネスゴール事業目標を支援するプロセス改善の目標を定義している。 

b) プロセス実行における変動の共通要因を識別するために適切なデータを分析している。 

c) ベストプラクティス及び革新の機会を識別するために適切なデータを分析している。 

d) 新しい技術及びプロセスの概念から導き出された改善の機会を識別している。 

e) プロセス改善の目標を達成するための実行戦略を確立している。 

[JIS X 0145-2の5.6.1] 

プロセス革新属性は,組織単位の現在の事業目標と計画された(関連する)事業目標との両者を達成す

るために,継続的な改善に事前に注力することの存在に関係している。 

明示的に定義されたプロセス改善目標をもつことは,水準5の能力の基本となる。組織の現在の事業目

標及び計画された(関連する)事業目標と関連して,このことは,水準5に関連した全ての活動の推進力

を供給する。 

プロセス革新は,プロセス改善のもう一つの推進力であり,ベストプラクティス又は新しい技術の導入

に関連するデータの分析に由来してもよい。 

プロセス改善の目標によって誘発される潜在的なプロセス問題と同様に,既存のプロセス問題の源を理

解することは,提案しているプロセスの変更の重要な源を提供する。 

組織単位の現在の事業目標及び計画された(関連する)事業目標を考慮すると,提案されたプロセスの

変更は,既存のプロセスについての考慮に由来する。 

組織的展開の複雑性及び継続的改善の長期性は,能力水準5の達成に成功することを確実にするために

熟慮した戦略を必要とする。この戦略は,全体として,この能力水準からなる結果の達成を提供すること

が必要である。 

PA 5.2 プロセス最適化属性 

プロセス最適化属性は,そのプロセスの定義,管理及び実行に対する変更が,関係するプロセス改善目

標の達成という効果的な影響をもたらす程度を示す測定量である。この属性を十分に達成した結果は,次

のとおりである。 

a) 提案されたすべての変更の影響を,定義されたプロセス及び標準プロセスの目標に対して診断してい

る。 

b) プロセス実行に対するあらゆる混乱を理解し,対処することを確実にするために,すべての同意した

変更の実行を管理している。 

c) 結果が共通要因又は特別な要因によるかを判断するために,実際の実行に基づくプロセス変更の有効

性を,定義する製品の要求事項及びプロセスの目標に対して評価している。 

[JIS X 0145-2の5.6.2] 

プロセス最適化属性は,プロセスに対する適切な変更を識別し,プロセスの運用に対する望ましくない

途絶を最小限に抑えるためにその変更を取り入れる,順序立った計画的な進め方に関係する。プロセス変

更の有効性は,実際の結果に対して評価され,必要に応じて,関連するプロセス改善目標を達成するため

に,調整を実施する。 


25 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

利用可能な資源で最も可能性が高い改善を達成するため,提案された変更の影響を評価する。すなわち,

予測可能なプロセスの定量的な理解は,提案された変更の影響を診断するときに役に立つことを評価する。 

プロセス実行の途絶の期間を最小限にすることを確実にするため,実行の時機及び同意された変更の順

序付けを,注意深く計画する。この計画立案では,一般に,プロジェクトの重大性及び状況,プロセス変

更の有効性評価,新しい事業創生などの要因を考慮する。 

プロセス変更の実際の影響を理解することは,水準5の能力の重大な側面である。この知識は,閉ルー

プ型学習の基礎を提供する。 

6.7 

プロセス評定属性 

上記した能力水準及びプロセス属性は,JIS X 0145-2の5.1〜5.6で定義されているように,プロセス能

力評定の測定の枠組みの基本要素を提供する。この枠組みを組み上げるために,まず,プロセス属性の達

成度合いを評定するための尺度を定義する。 

プロセス属性評定の尺度 

プロセス属性の達成の程度は,次に定義する順序尺度を使用して測定する。 

プロセス属性評定値 

プロセス属性の達成の水準を表現するために,次に定義する評定の順序尺度を使用する。 

達成していない(Not achieved) 

診断対象プロセスにおいて定義する属性を達成しているという証拠がほとんどないか,又は全くない。 

部分的に達成している(Partially achieved) 

診断対象プロセスにおいて定義する属性に取り組んでいるという幾つかの証拠,及び定義する属性を

幾つか達成しているという証拠がある。この属性の達成の幾つかの側面は,予測不可能であってもよ

い。 

おおむね達成している(Largely achieved) 

診断対象プロセスにおいて定義する属性に取り組んでいるという幾つかの証拠,及び定義する属性を

かなり達成しているという証拠がある。この属性に関係する幾つかの弱みは,診断対象プロセスに存

在してもよい。 

十分達成している(Fully achieved) 

診断対象プロセスにおいて定義する属性に完全に,かつ,系統的に取り組んでいるという証拠,及び

定義する属性を十分に達成しているという証拠がある。この属性に関係する顕著な弱みは,診断対象

プロセスに存在しない。 

上記で規定した順序尺度の点は,達成の程度を表現するパーセンテージで表現した尺度に置き換えて理

解しなければならない。 

対応する値は,次のとおりである。 

達成していない 

0 %以上15 %までの達成 

部分的に達成している 

15 %を超え50 %までの達成 

おおむね達成している 

50 %を超え85 %までの達成 

十分達成している 

85 %を超え100 %までの達成 

[JIS X 0145-2の5.7.1及び5.7.2] 

評定水準の数値表現は,アセッサの判断を支援するために確固とした基準点を提供することを意図して

いる。それは,達成率を明示的に記録することが望ましいということを暗示してはいないが,示された値

によって,アセッサの評定作業の実施を導くことが望ましい。さらに,基準点を意図的に非等間隔に配置


26 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

したことに注意することが望ましい。このようにして,プロセス属性の評定値の更なる定義に備えている。

非等間隔の評定尺度を用いることで,(どの評定値にするかの判断が)より容易になり,より信頼できる識

別判断が可能になる。 

プロセス属性評定 

各プロセス属性は,JIS X 0145-2の5.7.2で定義する評定の順序尺度を使用して評定しなければならない。

プロセスは,アセスメント範囲で定義する最も高い能力水準までを含めて診断しなければならない。 

注記 プロセスに対する一連のプロセス属性評定をそのプロセスのプロファイルとする。アセスメン

トの出力は,すべての診断対象プロセスに対する一連のプロファイルを含んでいる。 

[JIS X 0145-2の5.7.3] 

診断対象プロセスの各々に対するプロセス属性評定の集合として診断結果を説明するために,公式で検

証可能な仕組みの利用によって,プロセス属性評定尺度の利用が可能となる。 

プロセス属性評定の参照 

各プロセス属性評定は,診断したプロセス名及びそのプロセス属性を記録した識別子を付与しなければ

ならない。 

注記1 その表示が,この参照方法に従って,個別の評定を特定することができるならば,評定はど

のような様式(例えば,二次元の表又はデータベースの一部である様式)で表現してもよい。 

[JIS X 0145-2の5.7.4] 

プロセスに対するプロセス属性評定の集合は,この規格群で定義した能力測定の結果を構成する。結果

を,そのプロセスに対するプロセスプロファイルと呼ぶ。どのアセスメントに対しても,評定結果は,ア

セスメント範囲内の各プロセスに対するプロセスプロファイルの集合から成っている。プロファイルは,

最大九つの評定(各プロセス属性に対して一つ)までを含んでもよいが,取り扱う能力水準に関してアセ

スメント範囲を限定する場合には,この数が減ることもある。何らかのプロセスアセスメントモデルを使

用してアセスメントを行う場合,プロセス能力の評価を一そろ(揃)いのプロセスプロファイルとして表

すための仕組みを提供することが望ましい。 

6.8 

プロセス能力水準のモデル 

プロセス能力水準の達成 

プロセスで達成された能力水準は,JIS X 0145-2の表1で定義するプロセス能力水準のモデルに従って,

そのプロセスのプロセス属性評定から導き出さなければならない。 

注記 この要求事項の目的は,プロセスに対するプロセス能力水準を引用するときに,意味の統一性

を確実にすることである。 

[JIS X 0145-2の5.8.1] 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


27 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

表1−能力水準の評定 

尺度 

プロセス属性 

評定 

水準1 

プロセス実行(PA 1.1) 

L(おおむね),又はF(十分) 

水準2 

プロセス実行(PA 1.1) 
実施管理(PA 2.1) 
作業生産物管理(PA 2.2) 

F(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 

水準3 

プロセス実行(PA 1.1) 
実施管理(PA 2.1) 
作業生産物管理(PA 2.2) 
プロセス定義(PA 3.1) 
プロセス展開(PA 3.2) 

F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 

水準4 

プロセス実行(PA 1.1) 
実施管理(PA 2.1) 
作業生産物管理(PA 2.2) 
プロセス定義(PA 3.1) 
プロセス展開(PA 3.2) 
プロセス計測(PA 4.1) 
プロセス制御(PA 4.2) 

F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 

水準5 

プロセス実行(PA 1.1) 
実施管理(PA 2.1) 
作業生産物管理(PA 2.2) 
プロセス定義(PA 3.1) 
プロセス展開(PA 3.2) 
プロセス計測(PA 4.1) 
プロセス制御(PA 4.2) 
プロセス革新(PA 5.1) 
プロセス最適化(PA 5.2) 

F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
F(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 
L(おおむね),又はF(十分) 

 

表1の要素は,JIS X 0145-2の5.8.1に基づいている。 

表1は,プロセス属性評定とプロセス能力水準との関係を定義している。関連するプロセス属性評定が

割り当てられると,表1は,対応するプロセス能力水準を明白に導き出すための仕組みを提供する。 

この変換表では,プロセスを水準2と評定するためには,水準2のプロセス属性がおおむね達成されて

いる又は十分達成されていると評定できるのと同時に,水準1のプロセス属性が十分達成されていると評

定されなければならないことを明確にしている。同様に,より高い能力水準についても,その水準でのプ

ロセス属性がおおむね達成されている又は十分達成されていると評定できるのと同時に,その下位の水準

において全てのプロセス属性が十分達成されていると評定されなければならない。 

 

プロセス参照モデル 

ここでは,適合するプロセス参照モデルの選択及び利用に関する手引を規定する。その前に必要ならば,

プロセス参照モデルに対する要求事項を解釈するための手引を規定する。プロセス参照モデルの提供者は,

主として要求事項の解釈の手引に関心をもつ。他方,プロセス参照モデルの利用者は,主としてプロセス

参照モデルの選択及び利用の手引に関心をもつ。 

 

 

 

 


28 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

7.1 

プロセス参照モデルに対する要求事項の解釈 

7.1.1 

プロセス参照モデルの内容 

プロセス参照モデルは,次の事項を含まなければならない。 

a) プロセス参照モデルの領域の宣言 

b) JIS X 0145-2の6.2.4の要求事項を満足する,プロセス参照モデルの適用範囲内のプロセスの記述 

c) プロセス参照モデルとそれを利用しようとしている背景との関係の記述 

d) プロセス参照モデルに定義しているプロセス間の関係の記述 

[JIS X 0145-2の6.2.3.1] 

この要求事項は,プロセス参照モデルの最小限の内容を規定している。補足的資料を提供してもよいが,

JIS X 0145-2に引用された内容だけを必須事項として取り扱うことができる(次を参照)。 

一般に,範囲の宣言は,適用する分野及び取り組んでいる分野の特定の側面を記述するという様式を採

っている。例えば,プロセス参照モデルは,ソフトウェア産業で利用するために作成されてもよいし,ソ

フトウェアライフサイクルプロセス(例えば,JIS X 0160:2007)に言及してもよい。一般的には,この範

囲の記述は,プロセス参照モデルを包含するプロセスの列挙を含む。 

上記の範囲の宣言とともに,プロセス参照モデルが包含するプロセスのそれぞれの記述がある。これら

のプロセスの記述は,この規格群が確立する枠組みの中で,使用性を確実にするために要求される追加事

項を規定する。JIS X 0145-2の6.2.4は,これらのプロセス記述の内容及び構造の特定の要求事項を規定す

る。 

一般に,特定の適用方法について実用性を提供するためにプロセスを分割する多くの方法があるが,プ

ロセス参照モデルも,プロセス参照モデルの意図した利用方法の宣言を規定する。 

プロセス参照モデルの意図した利用方法を正しく理解できることを確実にするため,プロセス参照モデ

ルで定義されたプロセスが他のプロセスとどのように関係しているかについて記述しなければならない。

一般に,この記述は,プロセス参照モデルの特定のプロセスを,そのプロセスを運用する分野の側面に関

係付けている。例えば,JIS X 0160:2007は,集合的にソフトウェア開発に取り組んでいる一式のプロセス

を定義している。個々のプロセスは,ソフトウェアを作成するために必要な活動に直接的に対応している。 

7.1.2 

プロセス参照モデルの内容の制約 

7.1.2.1 

関心のある人たちの合意 

プロセス参照モデルは,そのモデルに関心をもっている人たち及びその人たちの中で合意を得るための

行動を,次のように文書化しなければならない。 

a) 直接的に関心のある人たちを特徴付けるか,指定する。 

b) 合意の達成度合いを文書化する。 

c) 合意達成のための行動をとらない場合,その影響を文書化する。 

[JIS X 0145-2の6.2.3.2] 

ある分野をプロセスに明確に分割することの受容性及び実用性の一つの指標は,関心のある人たちの中

の利害関係者がプロセス参照モデルの定義に参加した度合いになる。関心のある人たちのほとんどは,(与

えられた分野に対して)比較的少数のプロセス参照モデルを積極的に利用できるだけなので,合意を得る

ためにプロセス参照モデルの提供者が採用した作業手順をあらかじめ知ることが,多くの人たちの最大の

関心事である。 

国際標準は,国際標準となる前に,複数のチェックポイントからなる定義されたプロセスに従って,進


29 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

捗していく。こうした手順は,国際的な合意についてかなりの程度で保証を本来的に提供する。同様に,

プロセス参照モデルの提供者は,プロセス参照モデルに関心のある人たちの中で合意を確実にするために

採用された測定を明確に文書化する。 

プロセス参照モデルの有用性について,関係者の合意があまり関係しないという特別な状況があること

を予想して,どの測定も採用されない場合,この効果に対する記述は,7.1.2の要求事項を満たすために適

切であるということを,JIS X 0145-2の6.2.3の要求事項は,規定している。こうした状況の例としては,

その実用性が何年もの経験によって証明されたプロセス群を組織が徐々に作り出すことである。その組織

がプロセス参照モデルをリバースエンジニアリングを行うことが有利になるということに気付いたならば,

この規格群の枠組みを利用することができ,その結果,ほとんど価値がないと考えられてもよい合意を形

成するために明確な手順を採用するようになる。 

7.1.2.2 

定義及び識別情報の一意性 

プロセス参照モデルで定義されたプロセスは,一意のプロセス記述及び識別情報をもっていなければな

らない。 

 

[JIS X 0145-2の6.2.3.3] 

この要求事項の目的は,自明である。与えられたプロセス参照モデルの状況の中で混乱を避けるためで

ある。プロセス参照モデルの中の二つのプロセスは,同じ定義又は識別情報をもつことができない。 

7.1.2.3 

規格の制約 

注記 JIS X 0145-2の6.2.3.3に含まないプロセス参照モデルの構成要素は,参考情報である。 

[JIS X 0145-2の6.2.3.3] 

一般に,プロセス参照モデルの開発者は,JIS X 0145-2の箇条6の要求事項によって指定されている以

上に,プロセス参照モデルに内容を追加する。JIS X 0145-2の6.2.3のこの部分の目的は,この規格群への

適合の決定について,JIS X 0145-2の箇条6が指定する内容だけが規定として扱うことができることを明

確にすることである。 

7.1.3 

プロセス記述 

プロセス参照モデルの基本的な構成要素は,そのモデルの適用範囲内でのプロセスの記述である。プロ

セス参照モデルでのプロセス記述は,プロセスの目的の十分な達成を実証する一連の成果とともに,プロ

セスを実施する全体的な目標を高い水準で記載したプロセスの目的の記述から成り立っている。これらの

プロセス記述は,次の要求事項を満足しなければならない。 

a) プロセスは,プロセスの目的及びプロセスの成果を記述する。 

b) どのプロセス記述においても,一連のプロセス成果はそのプロセスの目的を達成するために必要十分

である。 

c) プロセス記述は,JIS X 0145-2の箇条5の水準1を超えたところの測定の枠組みの側面を含んでいな

いし,また,暗示もしていない。 

成果の記述の項目には,次のいずれか一つを記述する。 

− 作業生産物の生産 

− 状態の重要な変化 

− 特定の制約条件(例えば,要求事項,目標など)の合致 

 

[JIS X 0145-2の6.2.4] 

 


30 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

JIS X 0145-2の6.2.4は,JIS X 0145規格類の枠組み内でプロセス参照モデルに基づくプロセスアセスメ

ントモデルの厳密な意味での機能化にとって重要な意味をもっている。JIS X 0145-2の6.2.4は,JIS X 0145

規格類が定義するプロセス能力の測定の枠組みと互換性があるように,プロセスがどのように構築されて

いるかについて基本的な仮定を示す。 

プロセス目的及びプロセス成果という用語がJIS X 0145-1で定義されていること,及びこれらの用語の

主要な側面が観察可能であることを重視していることに注意を要する。このことは,成功したアセスメン

トの実行可能性にとって極めて重要である。すなわち,アセッサが,プロセス実施の観察可能な側面に基

づいて評定を実施しているのであれば,アセッサは,繰り返し可能で信頼できる評定であることを期待す

ることだけが可能である。 

プロセス目的は,通常,プロセスを実施する目的を記載している一つの段落(一つ以上の文からなる。)

から構成されている。そのプロセスは,プロセスを実施する全体的な目標を高い水準でプロセスを記述し

ている。プロセス目的は,そのプロセスに関係する主要なプロセス成果の列挙によって補完される。プロ

セス成果は,プロセスの実行に成功したことの観察可能な結果である。プロセス成果は,通常,説明的な

文章で表される。 

通常は,各プロセスのプロセス成果を,“プロセスの実行に成功すると”という句のすぐ後に,各プロセ

スの記述の中に列挙する。プロセス成果の達成を評価することによって,アセッサは,プロセス能力の判

断を下すことができる。 

7.2 

プロセス参照モデルの選択 

理論上,一つのプロセス参照モデルを他と区別するために使用できる多くの要因がある。実際には,最

適な選択が明らかになる前に,少しの要因だけを考慮する必要がある。 

その要因を,背景的なもの,技術的なもの及び過去からの経緯によるものというグループに分けること

ができる。 

7.2.1 

背景的な選択要因 

背景的な選択要因は,組織単位からの影響がほとんどない要因である。この要因は,プロセス参照モデ

ルの技術的な利点が減り,組織に課せられた外部制約又は必要性が増える傾向がある。 

例えば,政府監督官庁が特定のプロセス参照モデルを使用するという要求を課すことは一つの事例にな

る。他方,ある商取引において,契約の条件及び/又は実行条件として,特定のプロセス参照モデルの使

用を要求する事業機会も事例となる。 

最後に,どのプロセス参照モデルが受入れ可能であるかを事実上決定する幾つかの工業分野の中に,業

界標準(デファクトスタンダード)が存在している。 

7.2.2 

技術的な選択要因 

技術的な選択要因は,組織単位の特定の性質及び利用背景によって決まるプロセス参照モデルの適合性

に関係する要因である。 

技術的な選択要因の中で最も重要なものの一つは,プロセス参照モデルがアセスメントを行う組織単位

のニーズに合致した一そろ(揃)いのプロセスを定義しているかどうかということである。組織単位は,

プロセス参照モデルが定義する全てのプロセスを優先的に採用する必要はないが,明らかに,プロセス参

照モデルは,組織が着目しているプロセスを含んでいることが望ましい。 

プロセス参照モデルが定義するプロセスの粒度は,重要な選択考慮事項である。特定の利用状況,例え

ば,ソフトウェアの構成管理を考えてみると,一般的には,プロセスの粒度の次元に従うのと同様に機能

的な向きに従って,プロセス分野を区分する複数の方法がある。この分野に対する一つのプロセス参照モ


31 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

デルが五つのプロセスを定義している場合もあれば,別のモデルでは15のプロセスを定義している場合も

ある。 この件については,考慮するトレードオフには,与えられたプロセス参照モデルに適合するプロセ

スアセスメントモデルを使用してアセスメントを実施するために,次のものを含む。 

− 必要な複雑さの度合い 

− 必要なアセスメント結果の精細さ 

− 許容範囲の水準の活動 

アセスメントを行う対象として,組織単位が要求又は選択した他のプロセス参照モデルとの互換性の度

合いを関連して考慮してもよい。 

7.2.3 

過去からの経緯による選択要因 

過去からの経緯による選択要因は,組織内でのプロセス改善活動の歴史に関係する要因である。過去に

おいてその組織単位で使用したアセスメントの進め方によって,プロセス参照モデルの選択が,実際に,

推進されるように,プロセス定義の特定の一まとまり又は特定のアセスメントの進め方の重要な専門知識

は,プロセス参照モデルの選択に影響を及ぼすかもしれない。プロセス改善をちょうど始めたばかりの組

織単位は,プロセスを選択において,このことを考慮する必要はない。 

初期にJIS X 0160を採用し,現在はJIS X 0160が網羅するプロセスのアセスメントに関与したいと思っ

ている組織単位が事例として挙げられる。 

 

プロセスアセスメントモデル 

8.1 

プロセスアセスメントモデルに対する要求事項の解釈 

ここでは,プロセスアセスメントを実施するための基礎として,プロセスアセスメントモデルの選択及

び利用の手引を規定する。この手引は,アセッサ及びアセスメント依頼者が利用することを意図している。

プロセスアセスメントモデルの開発者が利用することは特に意図していないが,開発者が利用してもよい。 

プロセスアセスメントモデルは,プロセス能力の観点から,組織がそのプロセスの状態を決定するため

の基礎を形成するために文書化されたアセスメントプロセスと連動して機能する。プロセスアセスメント

モデルは,客観的な証拠の収集のため,及びプロセス属性又はプロセス目的の達成程度の決定のための基

礎として使用する指標の参照集合を規定している。 

プロセスを記述し,規定し,実行するために利用可能な多くの異なる種類のモデリング手法が存在して

いる。プロセスアセスメントの目的のために特に開発されたわけではないモデルは,信頼に足る結果が得

られないかもしれない。この場合,目的に対する適合性は,モデルを選択する前に検証することが望まし

い。プロセス能力のアセスメントに使用するための適合性は,プロセスを実行するときの観察可能な側面

についてのモデルの指標への注目度合い,並びに関連するプロセス参照モデル及びプロセス能力の測定の

枠組みとのモデルの整合度合いの関数になる。適合性の検証のための基本的な方法は,JIS X 0145-2で提

案された関連する要求事項をモデル(及びそれに関連するプロセス参照モデル)が満足している程度にな

る。 

適用可能なソフトウェアエンジニアリングの原則は,そのプロセスアセスメントモデルの適用を意図し

た分野に特有のものである。すなわち,プロセス管理の原則は,プロセス能力の測定の枠組み(JIS X 0145-2

の箇条4)の中に埋め込まれている。 

 

 

 


32 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

8.1.1 

プロセスアセスメントモデルの適用範囲 

プロセスアセスメントモデルは,特定のプロセス参照モデルからの少なくとも一つのプロセスに関係し

なければならない。 

プロセスアセスメントモデルは,与えられたプロセスに対して,その適用範囲内での各プロセスに対す

るプロセス能力の測定枠組みの水準(水準1に始まる)のすべて,又は連続な部分集合を取り扱わなけれ

ばならない。 

注記 一つのモデルが,例えば,水準1だけを取り扱うこと,又は水準1,水準2及び水準3を取り

扱うことは許されるが,水準1がなくて,水準2及び水準3を取り扱うことは認められない。 

プロセスアセスメントモデルは,次の項目によって適用範囲の対象範囲を宣言しなければならない。 

a) 選択したプロセス参照モデル 

b) プロセス参照モデルから取り入れた,選択したプロセス 

c) 測定の枠組みから選択した能力水準 

[JIS X 0145-2の6.3.2] 

プロセス参照モデルは,着目している分野において効率的で効果的な運用に基本となると考えられる一

そろ(揃)いのプロセスを定義する。プロセス参照モデルに適合するために,プロセスアセスメントモデ

ルは,少なくとも,上記の適用範囲の一部を含まなければならない。プロセスアセスメントモデルのプロ

セス適用範囲は,プロセス参照モデルで定義されたプロセスの部分集合であってもよい。プロセスアセス

メントモデルは,プロセス参照モデルの適用範囲外の追加的なプロセスと一緒に定義されたプロセスの全

てを網羅しており,プロセス参照モデルの上位の集合であってもよい。 

プロセスアセスメントモデルが少なくとも一つのプロセスをプロセスアセスメントモデルから取り込ん

でいる場合,そのプロセスアセスメントモデルは,対応するプロセス参照モデルの外部のプロセスを含ん

でもよい。最終的には,プロセスアセスメントモデルの適用範囲は,プロセス参照モデルに直接的に同等

であってもよい。 

プロセスアセスメントモデルは,上記のように,適用範囲を明示的に宣言しなければならない。 

8.1.2 

プロセスアセスメントモデル指標 

プロセスアセスメントモデルは,選択したプロセス参照モデルにおいて定義されたように,プロセスア

セスメントモデルの適用範囲中ですべてのプロセスのプロセス目的及びプロセス成果を明示的に取り扱う

一連の指標に基づかなければならない。そして,プロセスアセスメントモデルの能力水準範囲の中でプロ

セス属性の達成を実証する一連の指標に基づかなければならない。指標は,モデルの適用範囲の中でプロ

セスの実行に着目している。 

[JIS X 0145-2の6.3.3] 

プロセスアセスメントモデルは,プロセス実行及びプロセス能力の一そろ(揃)いの指標を文書化しな

ければならない。その指標は,客観的な証拠にしっかりと基づいてプロセス能力を判定することを可能に

するものである。 

指標を,プロセスの実行を表す要因及びプロセス能力を表す要因という二つの種類に分類するという明

白な期待がある。プロセスアセスメントモデルを選択する場合,モデルの中での指標の利用,一そろ(揃)

いの指標の包括性,及び一そろ(揃)いの指標の適用容易性に十分留意することが望ましい。 

ISO/IEC 15504-5は,包括的な一そろ(揃)いの指標をもつ参照モデルを事例として規定している。そ

して,この指標は,JIS X 0160:2007の附属書Fで定義したプロセス参照モデルに期待される範囲の程度に

対して手引として供給されてもよい。この規格の附属書Bもまた指標についての手引を記載している。 


33 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

8.1.3 

プロセスアセスメントモデルのプロセス参照モデルへの対応付け 

プロセスアセスメントモデルは,そのモデルの関連する構成要素と選択したプロセス参照モデルのプロ

セスとの明示的な対応付け,及び測定の枠組みの関連するプロセス属性との明示的な対応付けを提供しな

ければならない。 

対応付けは,完全で,明確で,あいまいなところがないものでなければならない。プロセスアセスメン

トモデルでの指標の対応付けは,次のようでなければならない。 

a) 特定のプロセス参照モデルでのプロセスの目的及びプロセスの成果 

b) 測定の枠組みにおけるプロセス属性(各プロセス属性に対して一覧表示した達成の結果のすべてを含

める。) 

このことによって構造的に異なっているプロセスアセスメントモデルを,同じプロセス参照モデルに関

係付けることが可能となる。 

 

 

[JIS X 0145-2の6.3.4] 

対応付けに対する要求は,JIS X 0145規格類に適合するアセスメントからアセスメント評定の比較可能

性を可能にする共通様式に,結果を変換するための基盤を提供することによって,JIS X 0145規格類にお

いて重要な役割を果たしている。対応付けに対する要求は,次のことを明確に示す対応付けの詳細な集合

と同時に,プロセスアセスメントモデルに次のことを要求する。 

− プロセス実行の指標が指定されたプロセス参照モデルのプロセス目標及びプロセス結果に対してどの

ように範囲を規定しているか。 

− 測定の枠組み内で,プロセスアセスメントモデルの中でプロセス能力の指標が(プロセス属性の達成

結果の全てを含めて)プロセス属性に対してどのように範囲を規定しているか。 

アセッサがプロセスアセスメントモデルの要素のプロセス参照モデルへの詳細な対応付けを利用できる

ようにしておくことが重要である。プロセス参照モデルのプロセスがプロセスアセスメントモデルのプロ

セスと関係があり,かつ,プロセスアセスメントモデルが連続的な構造を採用しているISO/IEC 15504-5

で定義されているモデルの場合のように,対応付けは単純でよい。プロセスアセスメントモデルが他の構

造(例えば,段階的アーキテクチャなど)を採用している場合のように,モデルの構造がプロセス参照モ

デルと大きく異なっている場合には,対応付けは,多分,より複雑になる。 

アセッサは,例えば,モデルの最も低い水準の構成要素の幾つかをサンプルとして取り挙げて,それら

をプロセス参照モデルに当てはめることによって,すなわち,プロセスの要素として又はプロセス属性に

寄与するものとして当てはめることによって,対応付けが意味をもつことを確認することが望ましい。あ

る対応付けで,要素が二つ以上のプロセス属性の構成要素として識別されているという結果になった対応

付けは,モデル構造に問題があることを示しているのかもしれない。そして,それはアセスメント結果の

曖昧な変換をもたらす可能性がある。 

8.1.4 

アセスメント結果の表現 

プロセスアセスメントモデルは,特定のプロセス参照モデルから選択した各プロセスに対する一連のプ

ロセス属性評定としてアセスメントの結果を表現するための公式で検証可能な仕組みを提供しなければな

らない。 

注記 結果の表現は,プロセスアセスメントモデルの評定を,JIS X 0145-2で定義するプロセスプロ

ファイルへ直接変換してもよい。また,アセッサ側の更なる判断でアセスメントの間に収集し

たデータ(追加情報を含める可能性も込めて。)の変換を含めてもよい。 

[JIS X 0145-2の6.3.5] 


34 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

JIS X 0145規格類に適合したアセスメントからのアセスメント出力の重要な構成要素の一つは,一そろ

(揃)いのプロセスプロファイルであり,アセスメント範囲に含まれる各プロセスに対して一つ存在する。

プロセスプロファイルは,最高九つの評定の集まりであり,アセスメント範囲に含まれるプロセスの各プ

ロセス属性に対して一つ存在する。 

アセスメント結果の表現のための仕組みは,手作業,自動化されたもの,又は両者の組合せでもよい。

アセスメント結果の表現では,アセスメントの間に収集した追加的な情報を含めることを要求してもよい。

また,アセッサ側の追加的な判断を伴ってもよい。しかし,アセスメント結果を変換するための規則は,

明確で曖昧でないことが望ましく,モデルの開発者又は方法の提供者のどちらかによって提供される。 

モデルによってJIS X 0145-2で規定した様式で明示的に結果が提供されるならば,変換の仕組みは必要

とされない。 

8.2 

プロセスアセスメントモデルの選択 

一般的には,適格アセッサ又はアセスメント依頼者がアセスメントのためのモデルを選択する(その場

合には,このことは,制約として文書化することが望ましい。)。いずれの当事者が最終決定を下すかに関

係なく,その選定が想定された使用に適切であることを確実にすることに役立つことを考慮に入れるため

の要因がある。 

選択されたモデルがプロセス参照モデルとの互換性があるならば,モデルを選択するときの最も重要な

目標は,アセスメントの状況への適合性である。モデルの選択に影響を与える主な要因には次のものがあ

る。 

− アセスメントの計画範囲 

− 診断対象の組織単位の事業目標 

− 診断対象の組織単位の産業分野 

− アセスメントの焦点が当たっているソフトウェア構成要素の適用分野 

− 契約実行の条件として特定のプロセスアセスメントモデルの使用を要求してもよい事業機会 

− 組織単位のプロセス成熟度を向上させるための改善への道筋の包含 

− 他のアセスメント又は組織単位との説得力のある比較可能性に対する特定の要求事項 

特定の産業分野(例えば,通信,防衛,航空宇宙)での使用のために特に開発されたモデルが存在する

場合,又は特定の適用分野(例えば,高セキュリティシステム,安全性が重大なシステム,リアルタイム

組込みソフトウェア)のために特に開発されたモデルが存在する場合,適用可能であるならば,これらの

モデルの利用を考慮することが望ましい。 

組織の普通の分野を代表していない領域内でアセスメントを実施することを組織が望むときは,選択し

たモデルが適していることに注意することが望ましい。例えば,自分自身の内部管理システムの保守に責

任があるプロセスを診断することを望む航空宇宙産業組織は,業界特定のモデルがその業務に最も適して

いないことに気付くかもしれない。 

ISO/IEC 15504-5に定義されているモデルは,ソフトウェア産業向けの一般的なモデルで,全ての産業

分野及び適用分野にわたって適用可能であるように設計されている。 

最初に考慮しなければならない選択要因は,考慮対象のプロセスアセスメントモデルに対応するプロセ

ス参照モデルが存在するかどうかということである。対応するプロセス参照モデルが存在しない場合は,

適切なプロセス参照モデルを構築する必要があり,そのプロセス参照モデルがプロセス参照モデルに対す

る要求事項を満足しているという決定を下す必要がある。 

 


35 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

上記のようになっていれば,考慮しなければならない種々の選択要因は,同様にプロセス参照モデルの

選択要因(すなわち,背景的な要因,技術的な要因及び過去からの経緯による要因)についての要因に分

類することができる。 

8.2.1 

背景的要因 

8.2.1.1 

市場で受け入れられていること 

個々の組織が,通常は,比較的小さい影響しか及ぼさないような,重要な選択要因は,その市場部分が

既に確立されたデファクトのアセスメントの進め方を確立している程度になる。この場合には,個々の組

織は,多分このことが最も影響力のある選択要因になることに気付く。もちろん,このことは,組織が追

加的なアセスメントの進め方を使用することを拒否しない。しかし,多くの組織は,追加費用及び追加努

力を禁止していることに気付く。 

時間とともに,JIS X 0145規格類に適合するアセスメントの進め方の理解が進むにつれて,この要因は

小さくなり,アセスメント結果を一つのプロセス能力のプロファイルに変換されるので,この考え方はそ

れほどの要因とはならず,かつ,過去からの経緯による考え方は,あまり影響力をもたなくなる。 

8.2.1.2 

顧客要求 

事業機会によっては,入札の条件及び/又は契約実行の条件として,特定のプロセスアセスメントモデ

ルの使用を要求してもよい。 

8.2.2 

技術的要因 

8.2.2.1 

指標の粒度 

一般に,プロセスアセスメントモデルは,プロセスアセスメントモデルが規定するアセスメント指標の

数に基づいて,程度の異なる可視性をプロセスに提供する。プロセス提供範囲が同じと考えると,20のア

セスメント指標をもつプロセスアセスメントモデルは,10のアセスメント指標をもつプロセスアセスメン

トモデルよりも大きな可視性をプロセスに提供すると考えられる。そのため,選択時の重要な考慮点は,

要求された又は必要な可視性の程度である。一般に,より大きな可視性は,アセスメント評定におけるよ

り高い精度を暗示し,かつ,これに続くプロセス改善の活動に対して更に特定の入力も暗示する。もちろ

ん,この改善された可視性は,アセスメント指標に関するデータを引き出し,次にアセスメント評定を策

定するためにデータを処理するというアセスメント期間中の活動に関してより大きい費用となる。関連し

て考察すべき事柄は,プロセスアセスメントモデルの規範性に関して所与のプロセス範囲に対するアセス

メント指標の数が与える影響についてである。一般に,アセスメント指標の数が増加すると規範性の度合

いは増加する。この主張は,指標の集合が冗長でない指標集合であるという仮定に基づいている。 

8.2.2.2 

プロセスアーキテクチャ 

様々なアーキテクチャがJIS X 0145規格類と互換性をもってもよいが,それらのアーキテクチャは,潜

在的な利用者が理解することが望ましい様々な利用特性をもってもよい。全ての点で他のものより優れて

いるアーキテクチャはない。むしろ,アーキテクチャは,補足的な特徴を提示してもよい。したがって,

組織は,取り組むことが求められている特定のニーズと同様に組織内のプロセス能力全般に応じてより有

用になるものをそれらの中から見いだしてもよい。 

8.2.2.3 

意図した分野及びプロセス範囲 

プロセス参照モデルの選択が必ずしも一つの特定のプロセスアセスメントモデルの使用を意味しないの

で,一般にはまだ,組織は,選択したプロセス参照モデルに適合するプロセスアセスメントモデルの中か

ら選択を行う。選択要因の一つは,プロセスアセスメントモデルで対象とされたプロセスの集合である。

例えば,表2に示す状況は,(P1というプロセスからP10というプロセスまでを定義している。)特定のプ


36 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

ロセス参照モデルを選択するための決定が下された後, そこから選択できる三つのプロセスアセスメント

モデルがあることを示す。組織がプロセスP1,P2及びP5のアセスメントを行う必要があるということを

仮定する場合,そのとき,予測の範囲からは,プロセスアセスメントモデル2だけが必要なプロセスの範

囲を提供するので,プロセスアセスメントモデル2が選択モデルとなる(空白の欄は,プロセスアセスメ

ントモデルが関係するプロセスの範囲を提供していないことを意味する。)。 

 

表2−プロセスアセスメントモデルの選択 

プロセス 

プロセスアセスメント

モデル1 

プロセスアセスメント 

モデル2 

プロセスアセスメント 

モデル3 

P1 

 

P2 

 

P3 

P4 

 

P5 

P6 

 

P7 

 

P8 

 

P9 

 

P10 

 

 

 

アセスメントツールの選択及び使用 

どのようなアセスメントにおいても,情報を収集し,記録し,蓄積し,照合し,処理し,分析し,検索

し,提示する。診断対象プロセスの各々に対してプロセス属性に評定を与えるためにアセッサが使用する

証拠を照合するとき,及び一連のプロセスプロファイルとして評定を記録するとき,ツールは重要な支援

を提供することができる。 

ツールには,二つの基本型がある。紙面上のもの及び自動化されたもので,それらは異なる特性をもっ

ている。ツールの適合性は,計画した使用形態及びアセスメント方法論に依存する。効果的で効率的な実

行を確実にするために,ツールは,アセスメントプロセスに調和するように選択又は設計することが望ま

しい。 

アセスメントを支援するために,次に示す様々な形でツールを使用してもよい。 

− アセッサが情報を取得するため。 

− アセスメントの準備のため及びアセスメントに先立つ間,プロセス所有者又は組織単位の代表者がそ

の後の処理のために情報を取得するため。 

− 開発ライフサイクルの間中,かつ,定められたマイルストンにおいて,連続して,組織単位の代表者

が,プロセスの順守,プロセス改善の進捗状況を測定するため,又は将来のアセスメントを容易にす

るために情報を収集するため。 

− プロセス改善計画の策定又は能力判定のための分析を容易にするために,アセスメント終了後に,ア

セスメント情報を検索又は構造化するため。 

− 組織全体で自己アセスメントに対して分散した進め方を採る場合。 

− 面談などの現地でのアセスメント活動の開始に先立って,サンプルとして抽出された作業生産物及び

プロセス情報を徐々に収集し,レビューする場合。 

− 収集されたアセスメント情報の処理についてアセッサを支援するため。 


37 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

− プロセス改善計画の策定又は能力判定のための分析に対して,アセスメント結果をもっと利用しやす

くして,アセスメント結果を蓄積し,検索するため。 

− 過去の実行履歴に対するプロセス改善結果の分析,又は確立された目標プロファイルに対する供給者

のプロファイルの分析のようにアセスメント結果のアセスメント後の分析に関して,アセッサを支援

するため。 

− 徐々に増やしながら,分散した方法で情報を収集するため。 

− プロセスの実行において設定したマイルストン確認点又は多くの組織単位を徐々に増やしながらアセ

スメントを行うとき,情報を徐々に増やしながら収集するため。 

− 結果のプロファイルを生成するため,又はギャップ分析の実行を支援するため。 

選択したツールを使用する能力は,信頼性があり,繰り返しが可能な,適切な方法で,情報を収集し,

記録し,処理し,分析することを確実にするために重要な要因である。ツールを使用するアセッサ及び他

の参加者は,適切に訓練され,ツールを使用するために必要な経験をもつことが望ましい。ツールを操作

する能力に加えて,訓練又は経験することによって,プロセスアセスメントモデル,指標及び評定に関係

する基本的な原理の理論的な理解を深めることが望ましい。 

文書化されたアセスメントプロセスの一部として特定のツールを指定してもよい。その代わりに,将来

の利用者は,適切なツールを選択することが必要になってもよい。この手引では,アセスメントを通して,

利用者がツールを選択するときの考慮事項を意図的に強調している。この手引は,ワードプロセッサ,プ

レゼンテーションツールなどの一般的な支援ツールに関係する課題を記述していない。ワードプロセッサ

及びプレゼンテーションツールと一体になったアセスメントツール,並びにワードプロセッサ及びプレゼ

ンテーションツールを統合するためのアセスメントツールは,アセスメント出力の報告及び発表の準備に

おいてかなりの支援を提供する。 

ツールの種類の選択基準は,次の事項に影響されてもよい。 

− アセスメントの範囲及び目的 

− アセスメント入力の組立て及びアセスメント出力に転送するために適切な様式でのアセスメント入力

の記録を含めて,情報を収集及び蓄積するときの支援の要求 

− 少なくともアセスメントの範囲に対して,選択されたプロセスアセスメントモデルの支援 

− JIS X 0145-2で定義した評定の作成に使用することが要求された情報を取得する能力 

− アセスメント入力で定義した支援情報を取得し,維持する能力 

− JIS X 0145-2で定義した評定の仕組みの支援 

− プロセスプロファイルの意味及び価値の分かりやすい解釈を許容する形式でプロセスプロファイルの

表明の支援 

− プロセス改善又は能力判定でその後に使用するために,アセスメント結果を蓄積して検索する能力 

− 情報及びデータを異なる方法で利用又は配布することを可能にするために,異なる種類の情報及びデ

ータに適切に分離することの提供 

− 機密性の制約を満たすために,取得した情報を安全な状態に保つ能力 

− 特定の文化,組織,依頼者又はアセスメントのニーズを支援するための動的な範囲付け及び修整を行

う能力 

− ツール及び収集された結果の適切な構成制御の提供 

− プロセス及び役職によって分割する能力 

− 必要に応じて,プロセスアセスメントモデルを修整する能力 


38 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

− 可搬性の考慮事項(面談の有用性,分散入力,同時入力など) 

− 複数のアセッサの入力を扱う能力 

− 面談の有用性,自己アセスメントなど 

− 他のツール(評価指標,CASEなど)と統合するための能力 

− 情報の入力への利用の監査証跡を維持する能力 

− リアルタイム性能。すなわち,情報入力の速さ及び検索の速さ 

− 特定の面談に必要な練習を引き出す能力 

コンピュータを活用したツールの選択に関する手引及び規格として,JIS X 0152:1995及びJIS X 0133規

格群が利用可能である。 

 

10 アセッサの能力の手引 

10.1 概要 

 

 

図2−アセッサの適格性の実証及び妥当性確認 

 

注記 対応国際規格の図2は,矢印のとおりに単語を続けて読むと,次の例のように意味のある英語

の文章になる。これを,日本語に訳すと,図の意図を必ずしも反映することはできないので,

矢印部分は対応国際規格のとおりとした。 

例 左上の“アセッサ”から左下の“アセスメント”までに対して,矢印のとおりに単語を

並べる。 

Assessors demonstrate their competence to carry out assessments. 

 
 
 

プロセス及び適応分野の知識 

(Knowledge of the process and  

application domain) 

 
 
 

  

 

JIS X 0145規格類の基礎技術のスキル 

(Skills in the principle technologies of 

ISO/IEC 15504) 

 
 
 
 

効果的実施に役立つ個人の属性 

(Personal attributes that contribute to 

effective performance) 

 

 
 
 
 

アセッサ

(Assessors) 

 
 
 
 

適格性 

(Competence) 

demonstrate  
their 

to carry out 

 
 
 
 
 

アセスメント 

(Assessments) 

 

妥当性確認 

(Validation) 

indicates 

are subjected to 

 
 
 
 
 
 

経験 

(Experience) 

 
 
 
 
 
 

訓練 

(Training) 

 
 
 
 
 

教育 

(Education) 

results  
from 

is gained by 

are gained by 

is gained by 


39 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

アセッサは,アセスメントを実施する適格性を実行する。 

図2は,アセッサの適格性の実証及び妥当性の確認に関連する主要な関係を示している。これらは,次

のようにまとめてもよい。 

a) アセッサは,アセスメントを実施する適格性を実行する。 

b) 適格性は,次の項目の結果である。 

1) プロセスの知識 

2) プロセス参照モデル,プロセスアセスメントモデル,方法及びツール,並びにプロセス評定を含む

この規格群の基本的な技術に関する技能(スキル) 

3) 効果的な実行に寄与する個人の特性 

c) 知識,技能(スキル)及び個人の特性は,教育,訓練及び経験の組合せによって得られる。 

d) 適格性の実証についての代替手段は,将来のアセッサの教育,訓練及び経験の妥当性を確認すること

である。 

10.2 適格性の獲得及び維持 

10.2.1 準アセッサ 

準アセッサは,許容範囲の水準の教育,訓練及び経験に到達しているが,必ずしもこの規格群の規定に

従って実施されたアセスメントに参加してはいない。 

準アセッサは,プロセスと同様にプロセスアセスメントにおいて訓練され,経験することが望ましい。

準アセッサは,この規格群の手引を満たす訓練を受けていることが望ましい。準アセッサは,許容範囲の

水準の教育を受けた証拠ももっていることが望ましい。 

許容範囲の水準の教育には,次のものを含んでもよい。 

− 単科大学又は総合大学の提供するコース 

− 国内団体又は国際的団体によって組織された専門家向けのコース 

− ベンダの提供するコース 

− 雇用者の提供するコース 

許容範囲の水準の訓練には,次のものを含んでもよい。 

− 国内団体又は国際的団体によって提供された訓練 

− ベンダ及び訓練者によって提供された訓練 

許容範囲の水準の経験には,次のものを含んでもよい。 

− プロセス参照モデルの専門家領域での直接の“実践的な”経験 

− プロセス参照モデルの専門家領域を監督する管理経験 

10.2.2 適格アセッサ 

適格アセッサは,この規格群の規定に従って実施されたアセスメントに参加する。教育,訓練及び経験

を文書化し,維持することが望ましい。 

10.2.3 適格性の維持 

適格性を維持するために,アセッサは,この規格群の規定に従って実施されたアセスメントを更に実行

するだけでなく,教育,訓練,該当する専門的活動などの活動に従事することによって,知識,技能及び

個人の特性を最新のものにすることが望ましい。このことは,10.2.2で規定した記録に反映されることが

望ましい。 

 

 


40 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

11 適合性の検証についての手引 

JIS X 0145規格類の要求事項との適合性の検証は,JIS X 0145規格類の主要な目標の一つを実現するた

めの重大な側面である。その目標とは,プロセス能力の表現のための共通の測定の枠組みについての市場

の理解である。市場の理解は,共通の測定の枠組みを使用して表現されているので,JIS X 0145規格類に

適合するアセスメントからのアセスメント結果は,内容の妥当性(すなわち,アセスメント結果が説明す

ると主張していることをアセスメント結果が説明する。)があり,繰り返し可能で,信頼できるということ

に利用者が確信をもつことに依存する。 

11.1 プロセス参照モデルの適合性の検証 

プロセス参照モデルは,関係団体が提示する資料,関連する国際規格若しくは国内規格,又は公的に利

用可能な仕様でもよいので,このようなモデルがJIS X 0145-2の要求事項を満たす程度の検証は,適合性

の実証又は順守の実証のいずれかに従ってもよい。 

適合性の検証を実施する当事者は,プロセス参照モデルがJIS X 0145-2の6.2に示す要求事項を満たし

ているという客観的な証拠を得なければならない。適合性の客観的な証拠は,維持しなければならない。 

注記1 適合性とは,特定の要求事項をもつ製品,プロセス又はサービスを満たすことである。順守

とは,別の国際規格,標準報告書又は国際標準プロファイル(ISP: International Standard Profile)

(例えば,参照モデル及び方法論)によって満たされるべき要求事項を規定する,国際規格

及び標準報告書に含まれる要求事項を厳守することである。 

注記2 JIS X 0145-2は,組織のプロセス能力の認証・登録に関するいかなる仕組みにも使用するこ

とを意図していない。 

[JIS X 0145-2の7.2] 

11.2 プロセスアセスメントモデルの適合性の検証 

検証を実施する当事者は,プロセスアセスメントモデルがJIS X 0145-2の6.3に示す要求事項を満たし

ているという客観的な証拠を得なければならない。適合性の客観的な証拠は,維持しなければならない。 

[JIS X 0145-2の7.3] 

プロセスアセスメントモデルの適合性の検証は,プロセスアセスメントモデルの提供者が要求事項を取

り扱った方法をレビューすることで達成できる。検証作業を容易にするために,モデルの提供者は,プロ

セスアセスメントモデルに対する要求事項のそれぞれを取り扱った方法の記述及び/又は実証を行うこと

が望ましい。説明をしやすくするために,これらの記述の収集をプロセスアセスメントモデルの適合宣言

及び適合記述と呼ぶ。 

こうして,プロセスアセスメントモデルの適合性の検証は,対応するプロセスアセスメントモデルの適

合宣言及び適合記述の綿密な調査によって達成される。プロセスアセスメントモデルの適合宣言及び適合

記述で期待される情報の種類は,次の11.2.1〜11.2.4に記述する。 

11.2.1 プロセスアセスメントモデルの対応範囲 

JIS X 0145-2の6.3.2で確立された要求事項を取り扱うために必要な情報には,次の項目を含む。 

− プロセスアセスメントモデルに含まれるプロセスの列挙及び各プロセスが基づいているプロセス参照

モデルの識別。 

− 各プロセスに対する,測定の枠組みから選定した能力水準範囲の識別。 

11.2.2 プロセスアセスメントモデルの指標 

プロセスアセスメントモデルの指標がプロセスアセスメントモデルの中で実行される方法の概説を提供


41 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

することによって,かつ,もしあれば,指標の種類の定義(例えば,プロセス実行の指標,プロセス能力

の指標など)を提供することによって,この要求事項を満たす。 

11.2.3 プロセスアセスメントモデルのプロセス参照モデルへの対応付け 

この規格群で定義され,選択されたプロセス参照モデル及び測定の枠組みの主張する範囲を満たすこと

を示すプロセスアセスメントモデルの詳細な対応付けを規定することによって,この要求事項を満たす。

対応付けは,プロセス目的,プロセス成果及びプロセス属性の範囲の検証が目視検査によって検証できる

ような方法で作られることが望ましい。 

ほとんどの場合,対応付けの関係をまとめた表がプロセスアセスメントモデルの適合宣言及び適合記述

の大部分を構成するとよいと考えられている。また,対応付けデータの幾つかの観点が目視検査を実行可

能にするために必要になってもよいと考えられている。 

この対応付けによって,プロセスアセスメントモデルに対して宣言された範囲を具体化することが肝要

である。 

11.2.4 アセスメント結果の表現 

アセスメントの間に収集した客観的証拠から,一組のプロセス属性評定を導出する仕組みの詳細な定義

を提供することによって,この要求事項を満たす。このことは,必然的に,プロセスアセスメントモデル

に対応して収集したデータについてのある程度の説明,並びに,それらのデータと,プロセス目的,プロ

セス成果及びプロセス能力との関連性についてのある程度の説明を要求する。 

11.3 プロセスアセスメントの適合性の検証 

検証を実施する当事者は,アセスメントがJIS X 0145-2の箇条4に記載した要求事項に適合しているこ

とを確実にしなければならない。適合性の客観的な証拠は,維持しなければならない。 

[JIS X 0145-2の7.4] 

アセスメントがJIS X 0145規格類に適合していることの検証は,アセスメントの記録がJIS X 0145-2の

箇条4の要求事項に適合していることの綿密な調査,及びアセスメント計画の内容がJIS X 0145-2の4.4.2

で規定された内容になっていることの綿密な調査から構成されていることが望ましい。 

 


42 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

附属書A 

(参考) 

文書化されたアセスメントプロセスの事例 

 

この附属書は,文書化されたアセスメントプロセスの事例を含み,この規格群で要求している本来ある

べきプロセスの指針として役立つ。この事例の内容は,プロセス改善及び/又は能力判定に照らして利用

可能な文書化されたアセスメントプロセスの最低限の要素を含んでいる。この適用に関する追加情報は,

JIS X 0145-4にみることができる。この文書化されたアセスメントプロセスの事例はISO/IEC 15504-5に

文書化されたアセスメントモデルの事例に関連付けられている。 

この事例は,活動だけを含んでいるが,それらの記述は,暗黙のうちにプロセスを構成する他の要素(目

的,初期条件,終了条件,入力,出力並びに役割及び責任)を含んでいる。 

 

A.1 アセスメントプロセス活動の概要 

アセスメントプロセスは,次の活動から構成されている。 

1) 開始 

2) 計画立案 

3) 要旨説明 

4) データ収集 

5) データの妥当性確認 

6) プロセス属性評定 

7) アセスメントの報告 

 

A.2 アセスメントの開始 

A.2.1 概要 

アセスメントプロセスは,次によって開始する。 

− 依頼者の識別及びアセスメントの目的(なぜアセスメントを実施するのか。)の定義 

− アセスメントの範囲の定義(どのプロセスが診断対象であるのか。)及び,もしあれば,どのような制

約をアセスメントに適用するのかの定義 

− 収集する必要がある追加情報の識別 

− アセスメント参加者及びアセスメントチームの選定並びにチームメンバの役割の定義 

− 全てのアセスメント入力の定義及び依頼者の承認の獲得 

A.2.2 作業 

アセスメントの依頼者を識別する。 

アセスメントチームを先導し,かつ,任命された人々が必要な能力及びスキルを保有することを確実に

するアセスメントチームリーダを選定する。 

必要に応じて,事業目標に整合するアセスメントの目的を定義する。 

使用するプロセスアセスメントモデルを識別する。 

特に外部のコンサルタントを使う場合は,必要に応じて,機密保持協定の必要性を識別し,承認する。 

ローカルアセスメントコーディネータ(LAC)を選定する。ローカルアセスメントコーディネータは,


43 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

アセスメントの計画実行及び組織単位との連絡を管理する。 

ローカルアセスメントコーディネータにアセスメントの事前質問表を提出する。このアセスメントの事

前質問表(PAQs)は,組織単位及び診断対象単位のプロジェクトに関する情報を収集することによって,

現地での面談を行うために役立つ。 

アセスメントチームを確立し,チームの役割を割り当てる。通常は,チームは,(資源及び費用にもよる

が)二人のアセッサで構成することが望ましい。アセスメントチームメンバは,アセスメントを実施する

ために必要な釣合いのとれたスキル(技能)の組合せを確実にする。アセスメントチームリーダは適格ア

セッサであることが望ましい。 

背景を定義する。組織単位においてアセスメントプロセスに影響を与える要因を識別する。これらの要

因は,少なくとも次の項目を含む。 

− 組織単位の規模 

− 組織単位の製品又はサービスの適用分野 

− 製品又はサービスの規模,重要度及び複雑度 

− 製品の品質特性 

組織単位の中で調査するプロセス,アセスメント範囲内の各プロセスに対して調査する最も高い能力水

準,及びそれらのプロセスを展開する組織単位を含んだアセスメントの範囲を定義する。アセスメント範

囲は,アセスメントの実行中に再交渉してもよい。 

アセスメントを実施する上での制約を規定する。アセスメントの制約は,次の項目を含んでよい。 

− 主な資源の使用可能性 

− アセスメントに使用する最大所要時間 

− アセスメントから除外する特定のプロセス又は組織単位 

− アセスメントで要求しているサンプルの最小規模若しくは範囲,最大規模若しくは範囲,又は特定事

例の規模若しくは範囲 

− アセスメント出力の所有権及びそれらの使用上の制限 

− 機密保持協定に起因する情報の制御 

組織単位をプロセスアセスメントモデルに対応付ける。アセスメント範囲で指定された組織単位のプロ

セスとプロセスアセスメントモデルの中のプロセスとの間の対応関係を確立する。組織単位とプロセスア

セスメントモデルとの間で矛盾する用語を識別する。 

組織単位の内部からアセスメント参加者を選定する。参加者は,アセスメント範囲において,適切に,

プロセスの代表者であることが望ましい。 

責任を定義する。依頼者,適格アセッサ,アセッサ,ローカルアセスメントコーディネータ及び参加者

を含めて,アセスメントにおける,全ての個人参加者の責任を定義する。 

アセスメント記録の所有権及びアセッサのログを承認する責任者を識別する。 

依頼者がアセスメント実施中に収集することを要求する追加の情報を識別する。 

全ての入力をレビューする。 

依頼者から入力情報の承認を得る。 

 

A.3 アセスメントの計画立案 

A.3.1 概要 

アセスメントを実施する上で実施する全ての活動を記述したアセスメント計画をアセスメントの日程と


44 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

ともに作成し,文書化する。プロジェクト範囲を用いて,アセスメント実施に必要な資源を識別し,確保

する。アセスメントに必要な全ての情報を正しくそろ(揃)え,レビューし,妥当性を確認し,文書化す

る方法を決定する。最後に,組織単位の参加者との調整を計画する。 

A.3.2 作業 

アセスメントの活動を決定する。アセスメントの活動は,この文書化されたアセスメントプロセスに記

述している全ての活動を含むが,必要に応じて修整してもよい。 

アセスメントに必要な資源及び日程を決定する。プロジェクト範囲からアセスメント実施に必要な時間

及び資源を識別する。資源には,オーバーヘッドプロジェクタなどの機材の使用を含んでもよい。 

アセスメントツールに関連付けて,アセスメントデータをどのように収集し,記録し,格納し,分析し,

報告するかを定義する。 

アセスメントの計画した出力を定義する。アセスメント記録の一部として要求されるアセスメント出力

に加えて,依頼者が要望するアセスメント出力を識別し,記述する。 

要求事項に適合していることを検証する。アセスメントがどのように規格に規定された全ての要求事項

を満たすかを詳述する。 

リスクを管理する。アセスメント計画を通して,潜在的なリスク要因及びそれらを軽減する戦略を文書

化し,優先順位を付け,追跡する。識別した全てのリスクを,アセスメント期間を通して監視する。潜在

的なリスクには,アセスメントチームの変更,組織の変更,アセスメントの目的/範囲の変更,アセスメ

ントを実行する資源の不足,機密保持,データの優先度,ベースプラクティス及び指標の重要度,並びに

文書のような主な作業生産物の使用可能性を含めてもよい。 

アセスメントの計画実行についてローカルアセスメントコーディネータと調整する。技術的な装置の互

換性及び使用可能性を確実にし,識別した作業場所及び日程の要求事項を満たすことを確認する。 

計画をレビューし,その承認を得る。依頼者は,誰がアセスメント計画を承認するのかを識別する。ア

セスメントの日程及び現地訪問時のための計画の実施を含めて,計画をレビューし,承認する。 

アセスメントに取り掛かるために依頼者のコミットメントを確認する。 

 

A.4 要旨説明 

A.4.1 概要 

データ収集を行う前に,アセスメントチームのリーダは,アセスメントチームがアセスメント入力,ア

セスメントプロセス及びアセスメント出力を理解することを確実にする。アセスメントの実行について,

組織単位に説明する。 

A.4.2 タスク 

アセスメントチームに要旨を説明する。アセスメントチームが文書化されたプロセスで定義された進め

方,アセスメント入力及び出力を理解し,アセスメントツールの使用に熟達することを確実にする。 

組織単位に要旨を説明する。アセスメントの目的,範囲,制約及びモデルを説明する。機密保持の方針

及びアセスメント出力の便益を強調する。アセスメントの日程を提示する。アセスメントプロセスにおい

て,スタッフが請け負っていること及び役割を理解することを確実にする。彼らが抱くであろう質問又は

懸念に答える。潜在的な関係者及び最終結果の提示を見る人は,概要説明会に出席することが望ましい。 

 

 

 


45 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

A.5 データ収集 

A.5.1 概要 

アセスメントの範囲内でプロセスを評価するために必要なデータを体系的な方法で収集する。データの

選択,収集,分析及び評定の正当化のための戦略及び手法を明示的に識別し,実証できるようにする。ア

セスメント範囲で識別した各プロセスを客観的証拠に基づいてアセスメントを行う。診断対象プロセスの

各々に関する各属性について採集した客観的証拠は,アセスメントの目的及び範囲を満足させるために十

分なものでなければならない。プロセス属性評定についてのアセッサの判断を支援する客観的証拠をアセ

スメント記録に記録し,維持する。この記録は,評定を実証するための証拠及び要求事項に適合している

ことを検証するための証拠を提供する。 

A.5.2 作業 

範囲内の各プロセスに対するプロセス実行の証拠を収集する。証拠には,作業生産物及びその特性の観

測報告,プロセス実行者からの口述書,並びにプロセス実行のために構築された環境の観測報告を含んで

いる。 

範囲内の各プロセスに対するプロセス能力の証拠を収集する。プロセス能力の証拠は,プロセス実行の

証拠より抽象的であってもよい。ある場合には,プロセス実行の証拠をプロセス能力の証拠として使用し

てもよい。 

プロセス属性評定についてのアセッサの判断を支援する証拠への参照を記録し,維持する。 

データの完全性を検証する。診断対象プロセスの各々に対して,アセスメントの目的及び範囲を満たす

ために十分な証拠が存在することを確実にする。 

 

A.6 データの妥当性確認 

A.6.1 概要 

データが正確で,アセスメント範囲を十分に網羅していることを確実にするために活動を行う。これに

は,次のものを含む。 

− 直接に,独立した情報源から情報を探す。 

− 過去のアセスメント結果を使用する。 

− 収集した情報の妥当性を確認するために,(利用者などからの)フィードバック会議を開催する。 

データを収集しているときに,データの妥当性確認を行ってもよい。 

A.6.2 作業 

データを集めて,統合する。各プロセスについて,定義されたプロセス指標に証拠を関連付ける。 

データの妥当性を確認する。収集したデータが正確で客観的であること,及び妥当性確認を行ったデー

タがアセスメント範囲を完全に網羅していることを確実にする。 

 

A.7 プロセス属性評定 

A.7.1 概要 

診断対象プロセスの各々について,各プロセス属性に至るまで評定を割り当てる。評定には,アセスメ

ント範囲内で定義した最高の能力水準を含む。評定は,前のアクティビティで妥当性の確認を行ったデー

タに基づく。 

収集した客観的な証拠と割り当てたプロセス属性評定との間で,追跡可能性を維持しなければならない。 

評定対象プロセス属性の各々について,指標と客観的な証拠との関係を記録しなければならない。 


46 

X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

A.7.2 作業 

評定について合意に達するために使用した意思決定プロセスを確立し,文書化する(例えば,アセスメ

ントチームの合意又は多数決)。 

診断対象プロセスの各々について,各プロセス属性に評定を割り当てる。アセッサの判断を支援するた

めに,プロセスアセスメントモデルの中のアセスメント指標の定義された集合を使用する。 

プロセスプロファイルとしてプロセス属性評定の集合を記録し,能力水準評定の判断基準を使用して,

各プロセスに対する能力水準評定を算出する。 

 

A.8 アセスメント結果の報告 

A.8.1 概要 

この段階の間に,アセスメント結果を分析し,報告書に提出する。報告書には,アセスメント中に提起

された重要な事柄についても網羅する。例えば,気が付いた強み及び弱みの領域並びに高いリスクの所見。 

A.8.2 作業 

アセスメント報告書を準備する。(アセスメントの範囲内であるのならば)アセスメントで分かること,

プロセスプロファイルを強調すること,重要な結果,気が付いた強み及び弱み,識別したリスク要因並び

に潜在的な改善活動を要約する。 

関係者にアセスメント結果を提出する。診断対象プロセスの能力を定義することに提示の焦点を合わせ

る。 

依頼者にアセスメント結果を提示する。依頼者が指定した関係者(例えば,組織単位の管理者,作業実

行者など)ともアセスメント結果を共有する。 

アセスメント報告書を仕上げて,適切な関係者に配布する。 

要求事項に従ってアセスメントを実施したことを検証し,文書化する。 

アセスメント記録を整理する。維持及び保管のためにアセスメント記録を依頼者に提供する。 

アセッサ記録を準備し,承認する。個々のアセッサに対して,アセスメントの参加者であることを証明

する記録を作成する。依頼者又は依頼者が派遣した権限者が記録を承認する。 

アセスメントプロセスを改善するための方法として,アセスメントからのフィードバックを提供する。 


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X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

附属書B 

(参考) 

指標の手引 

 

B.1 

はじめに 

主観性の度合い及び多様な解釈を減らすために,プロセスアセスメントモデルは,プロセス目的に関す

るプロセス実行の指標の集合,及びプロセス属性に関するプロセス能力の指標の集合によって詳述しなけ

ればならない。これらのアセスメント指標は,詳細で具体的な作業生産物(プロセスの実行及び管理に関

連した入出力),作業生産物の特性又はプロセス能力の特性の集合を記述する。アセスメントの間,特定の

プロセス目的又はプロセス属性の満足に関する客観的証拠を集めるために,指標を使用する。その名前が

示すように,指標は,プロセスに対する要求事項を表しているのではない。それらは,アセスメントの共

通の出発点を表し,アセッサの判断の一貫性を増し,結果の再現性を強調する。組織は,製品を作成する

ために異なる手法を用いるので,状況によって,幾つかの指標の欠落は,重要でない場合がある。 

プロセスプロファイルの形式でのアセスメントの出力は,診断対象プロセスの各々に対して,九つのプ

ロセス属性のそれぞれの評定を示す。しかし,なぜ特定の評定を割り当てたかは示さない。指標は,プロ

セス又は作業生産物として何が存在するのか,又は欠けているのかの識別を助け,アセッサが,プロセス

又はプロセス属性を評定するときの手引を提供する。アセスメントの間に取得した,特定の指標の有無に

ついての詳細情報は,分析及びプロセス改善計画立案への貴重な入力を提供する。 

指標は,次を確実にするのに助けとなる,アセスメントのための枠組みを提供する。 

− アセッサは,プロセスアセスメントモデルに対して,プロセスについての組織単位の具体例を首尾一

貫して解釈する能力をもつ。 

− その後の分析のための情報を獲得する。 

− 組織単位がプロセス改善を計画し,実施するために必要な情報を獲得する。 

− アセスメント結果が,典型的で,信頼でき,反復可能である。 

B.1.1 プロセス実行の指標 

プロセス実行の指標は,どれほどよくプロセスがプロセス参照モデルで定義されたように目的に合致し

ているかをアセッサが判断するための手引を提供する。これらの指標は,作業生産物及びプラクティスが

産み出す作業生産物の特性と同様に,特定のプロセス内で実施されるプラクティスである。 

関連するプラクティスの実行は,実行されたプロセスが目的記述に合致していることの最初の指標にな

る。第二の指標は,プラクティスの実行による作業生産物の存在である。作業生産物の特性は,特定の種

類の作業生産物の意味のある具体例化にどのような要素を期待するかを,アセッサが理解することを助け

る。 

プラクティスの明らかな実施だけでは,十分満足できる実行の証拠を提供しない。プラクティスの実施

がプロセスの目的を満たしているという更なる証拠を,適切な作業生産物及びそれらの内容,又は作業生

産物の特性の存在から得る。アセッサは,指標の助けを借りて,適切な作業生産物を認識することが望ま

しい。 

B.1.2 プロセス能力の指標 

プロセス能力の指標は,能力水準2〜5の各プロセス属性と関連している。プロセス実行の指標と同様に,

これらは,プロセス属性によって記述された能力の達成を判断するためのアセッサの能力を補完する。こ


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X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

  

 

れらは,プロセスを効果的に管理するための,組織単位の能力を識別することを助ける。プロセス能力の

指標は,プロセス属性の特定の実行において,アセスメント記録の中に見いだしたことを記録する,構造

化された記録の方法を提供する。 

 

B.2 

指標及び情報の収集 

情報を集めるために使用可能な多くの方法がある。文書化されたアセスメントプロセス及び方法は,次

の事項を含む多くの要因に依存している。 

− 診断対象の組織単位の大きさ 

− アセスメントに含む組織単位の数 

− アセスメントの実施(情報の収集,適合の実証など)における組織的な参加の水準 

− 供給者と依頼者との関係の成熟度(組織単位と依頼者との間の信頼の水準) 

− 依頼者のニーズ 

− アセッサの専門的知識及び能力 

− 組織のニーズ 

どのような文書化されたアセスメントプロセスを使う場合も,互換性があるモデルの中での定義された

指標の集合は,情報収集の基礎を形作ることが望ましい。そして,定義された指標の集合は,プロセス属

性を評定するときにアセッサの判断を支援するために使われなければならない。アセスメントの範囲が小

さく,限定されている場合を除けば,一般的に,指標を一つのツールに組み込むことは有用である。この

ようにして,プロセスアセスメントモデル及びその指標は,アセスメントの期間中,アセッサに利用可能

にすることができる。また,ツールは,収集した情報及び証拠を記録し,まとめあげるための支援を提供

できる。 


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X 0145-3:2011 (ISO/IEC 15504-3:2004) 

 

 

参考文献 

 

1) JIS X 0129-1:2003 ソフトウェア製品の品質−第1部:品質モデル 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 9126-1:2001,Software engineering−Product quality−Part 1: Quality 

model(IDT) 

2) JIS X 0133(規格群) ソフトウェア製品の評価 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 14598 (all parts),Information technology−Software product evaluation 

(IDT) 

3) JIS X 0145-4 情報技術−プロセスアセスメント−第4部:プロセス改善及びプロセス能力判定のため

の利用の手引 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 15504-4:2004,Information technology−Process assessment−Part 4: 

Guidance on use for process improvement and process capability determination(IDT) 

4) JIS X 0152:1995 ソフトウェアパッケージ−品質要求事項及び試験 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 12119:1994,Information technology−Software packages−Quality 

requirements and testing(IDT) 

5) JIS X 0160 ソフトウェアライフサイクルプロセス 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 12207:1995,Information technology−Software life cycle processes及び

Amendment 1:2002(IDT) 

6) JIS X 0170:2004 システムライフサイクルプロセス 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 15288:2002,Systems engineering−System life cycle processes(IDT) 

7) ISO 9001:2000,Quality management systems−Requirements 

注記 ISO/IEC 15504-3:2004が発行された時点では,ISO 9001:2008(対応日本工業規格:JIS Q 

9001:2008)はまだ発行されていないので,参考文献としては,2000年版を記載する。