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日本工業規格

JIS

 W

7001

-1991

 (I

1540

: 1984

)

航空宇宙−航空機電気系統の特性

Aerospace

−Characteristics of aircraft electrical systems

日本工業規格としてのまえがき

この規格は,1984 年第二版として発行された ISO 1540 (Aerospace−Characteristics of aircraft electrical

systems)

を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にない事項である。

1.

適用範囲

1.1

この規格は,航空機搭載機器の端子に供給する電源の特性について規定し,また,他の機器に供給

する電源の特性に悪影響を及ぼすことがある利用機器の諸元に関する限界について定める。

この規格の目的は,航空機搭載利用機器と航空機電源との間の適合性を達成することである。地上支援

電源は,別の規格(

1

)

で取り扱う。

(

1

)  ISO 6858

  Aircraft−Ground support electrical supplies−General requirements

備考  JIS W 7007-1991(航空機−地上支援電源−一般要求事項)が,ISO 6858 : 1982 と一致している。

1.2

この規格で規定する特性は,次の仮定に基づく。

(1)

系統容量は,1.5kW 以上とする。

(2)

系統の標準負荷は、電源系統容量の 5%と 85%との間にあるものとする。

(3)

交流系統の負荷平衡は,定常状態では,どの電源でも線電流の最大差が,その電源の定格電流の 15%

を超えないものとする。

(4)

交流系統の力率は,定格負荷の 30%と 85%との間の負荷では,遅れが 0.8 と 1.0 との間に,また,定

格負荷の 5%と 30%との間の負荷では,遅れが 0.5 と 1.0 との間にあるものとする。

2.

定義

2.1

電気系統 (electrical system)  [又は単に“系統 (system)”という。]電源と主要配電点に接続した利

用機器との組合せ。

備考  各系統に 2 以上の電源があることもあり,また,一つの航空機電気装備に 2 以上の系統がある

こともある。

2.2

電源系統容量  (power system capacity)    航空機の規定した運用及び環境条件で,ある系統の電源の

全公称容量。並列運転で利用可能な電力のどのような減少に対しても,適切な余裕が取られている。

2.3

主電源 (main power source)   航空機の正常な運用中に,電力が供給できるように装備した発電機

(通常,1 台の航空エンジンで駆動する。

)又は電力変換装置(利用機器の一部を形成するものではない)

2.4

非常電源  (emergency power source)    飛行中の電気的非常状態の間に,不可欠な電力を供給するた

め装備した発電機,電力変換装置(利用機器の一部を形成するものではない。

)又は蓄電池。


2

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

2.5

系統の正常動作  (normal system operation)    航空機の運用期間中に,電気系統が種々の意図した動

作をするとき,及び故障が起こらないときの状態。そのような動作例には,利用機器のスイッチング,エ

ンジン回転速度の変更,電源バスのスイッチング及び電源の並列運転がある。

2.6

系統の異常動作 (abnormal system operation)   電圧及び/又は周波数の制御の機能低下又は喪失

によって生じる状態。外乱の大きさ及び継続時間は,保護回路によって制限する。この状態は,まれにし

か起こらず,また,不規則に起こる。

備考  限られた故障が起こった場合には,系統の定常電圧は,異常定常限界 (ASSL) 内のどこかにあ

る可能性がある。理由は,これらの ASSL は,保護系統の動作限界を定めるからである。この

ような故障は,極めてまれであって,系統電圧の点検によってしか明らかにはならないであろ

うし,この点検には,多分,航空機に通常装備してあるものより高い精度をもつ計器が必要と

なるであろう。

2.7

系統の非常動作  (emergency system operation)    飛行中に,主電源が十分な又は適正な電力を供給で

きないときに起こり,制限された非常電源の使用が必要となる状態。

2.8

定常状態 (steady-state conditions)   固有又は自然の変化だけしか起こらないとき(すなわち,故障

が起こらず,また,系統のどのような部分も故意に変化させないとき)の任意の固定負荷で落ち着いてい

る状態。

2.9

利用機器 (utilization equipment)   全体的に,電力を受けるあらゆる個別の装置,又は装置のあら

ゆる機能グループ。

備考  簡単化のために,この規格では,航空機用電気機器の大多数に適用できる数値だけを規定する。

これらの数値は,望ましい値とみなさなければならない。

しかし,特別の用途については,より狭いか又は逆により広い電圧範囲で機器が動作するこ

とが必要な場合がある。このような特別の用途については,定常電圧の適切な最小値及び電圧

の階段関数を,航空機又は機器の関連仕様書で規定しなければならない。

2.10

アース(接地) [earth (ground)]   航空機の一次構造は,通常,大地とみなし,また,発電系統及

び電力利用系統での交流の中性点及び直流の負極となる。

2.11

交流相電圧  (a. c. phase voltage)    この規格で述べる交流電圧は,利用機器に供給する電圧の任意の

相に対するものであって,相は,機器の端子において中性点(接地)基準の線回路である。電圧値は,特

に指示がない限り,実効値とする。

2.12

平均実効値  (average r. m. s. value)    相電圧の個別の実効値の算術和を相の数で割って得た値。

2.13

過渡状態 (transient)   ある特性が定常限界を超えて進み,規定の時間内に定常限界に戻るその特性

の短時間に変化する状態。この規格の目的に対しては,電圧の過渡状態をサージとスパイクとに分ける。

2.14

サージ (surge)   電源系統の固有の調整と調整器による矯正動作とによって生じる,制御された定

常電圧レベルからの特性の変動。

2.15

スパイク (spike)   誘導負荷のスイッチングによって生じる,サージレベル又は制御された定常電

圧レベルからの特性の変動。このような動作は,通常,一連のスパイクを発生し,その各々は極端に短い

時間に大きい振幅に達する。

2.16

全調波成分  (total harmonic content)    複雑な波形の基本波成分を除去したときに残る,全電圧又は

電流の実効値。


3

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

2.17

周波数変調 (frequency modulation)   電気系統の定常動作中に,平均周波数の周りに周波数が繰り

返し及び/又は不規則に変動すること。これは,通常,狭い周波数帯域内にあり,しばしば非正弦波形を

示す。

2.18

周波数変調繰り返し率  (frequency modulation repetition rate)    周波数変調波形の周期の逆数。

2.19

周波数ドリフト (frequency drift)   制御された周波数レベルが定常状態の限界内で緩やかに,しか

も不規則に変化すること。

2.20

電圧変調 (voltage modulation)   電気系統の定常動作中に,例えば,電圧調整又は回転速度変動に

よって生じる交流電圧のピーク値が,平均値周りに繰り返し及び/又は不規則に変動すること。電圧変調

包絡線は,基本電圧波形の連続するピークを結ぶ連続曲線によって形成される。

2.21

電圧変調周波数成分 (voltage modulation frequency components)   電圧変調包絡線を形成する個別

周波数の成分。

2.22

電圧リプル (voltage ripple)   電気系統の定常動作中に,直流電圧が,平均値周りに繰り返し及び/

又は不規則に変動すること。

2.23

等価階段関数 (equivalent step-function)   電気系統において記録した実際のサージと,この規格で

規定する要求事項とを比較するとき,明確な根拠を与えるために,この規格で使用する数学的関数。

2.24

波高率 (crest factor)   交流電圧波形の波高率とは,ピーク値の実効値に対する比をいう。

備考  この規格では,次の略語を使用する。

(1)

正常定常限界  (normal steady-state limits) : NSSL

(2)

異常定常限界  (abnormal steady-state limits) : ASSL

(3)

非常定常限界  (emergency steady-state limits) : ESSL

3.

一般要求事項

3.1

電源系統

3.1.1

一般  あらゆる電源系統は,それを装備している航空機が遭遇すると予想される運用及び環境条件

の全範囲にわたって,通常の整備・点検によって,規定の特性を確実に維持できるように設計しなければ

ならない。電源は,利用機器端子での電源特性がこの規格の要求事項に確実に従うように設計し,制御し

なければならず,また,どの電源の故障及び電源系統からの断線も,残りの電源の性能を害することを続

いて引き起こさないように,装備し,保護しなければならない。

3.1.2

交流電源  交流電源系統は,公称電圧 115/200V,公称周波数 400Hz 及び相順 A-B-C(付図 参照)

をもつ,三相,4 線で星形結線されたものでなければならない。通常,各電源の中性点を,第 4 線とみな

すアース(2.10 参照)に接続しなければならない。補助単相電源を備えている場合には,それは,この規

格で示す中性点基準の線路要求事項を満足しなければならない。

3.1.3

直流電源  直流電源系統は,公称電圧 28V をもつ二線方式でなければならない。通常,各電源の

負極を,第二線とみなすアースに接続しなければならない。

3.2

利用機器

3.2.1

利用機器は,この規格で詳細に示す範囲の特性をもつ電源で給電するときは,規定の性能を維持し

なければならず,また,電源特性をその限界を超えて低下させてはならない。ここに規定するものとは異

なる特性又はより厳しい許容差をもつ電源の使用が必要な場合には,利用機器の側を,他の特性又はより

厳しい許容差のものに変換しなければならない。


4

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

3.2.2

利用機器に対する個別仕様書には,もしあれば,系統の正常,異常及び非常動作の規定範囲内で許

容される性能低下の程度を示さなければならない。

4.

定周波交流電源系統の特性

備考  特に指示がない限り,下記の特性を,利用機器端子での電源に適用する。

電圧特性を,中性点基準の線路電圧に適用する。線間の特性は,示されている中性点基準の

線路電圧と結果的に同じであることが望ましい。

特に指示がない限り,すべての交流電圧値は,実効値とする。

過渡サージ電圧の実効値は,ピーク値の記録から求める。

4.1

定常特性

4.1.1

電圧  個々の相電圧及び三相電圧の平均値は,付表 に規定する限界内になければならない。

4.1.2

位相差  波形上の対応するゼロ点間の位相差は,118∼122°の範囲内になければならない。

4.1.3

電圧不平衡  個々の相電圧の間の最大差は,正常動作で 3V 以下,非常動作で 4V 以下でなければ

ならない。

4.1.4

電圧波形(附属書 も参照)  電圧波形は,次の基準をすべて満足するものでなければならない。

(1)

波高率は,1.31∼1.51 の間にあること。

(2)

全調波成分の実効値は,基本波電圧実効値の 5%以下であること。

(3)

どの個別調波成分も,基本波電圧の 4%以下であること。

(4)

等価正弦波の縦座標と対応する波形の縦座標との差異は,

測定電圧実効値の (15.5+5.5 cos 2

θ

)

%以下

であること。ここに,等価正弦波の式は,V

p

sin

θ

である。

4.1.5

電圧変調  相電圧の変調(周波数変調の影響を含めて)は,少なくとも 1 秒間にわたって,変調包

絡線上に達したピーク電圧の最大値と最小値との間の山と谷の差として測定したとき,3.5V 以下でなけれ

ばならない。変調包絡線波形の周波数成分は,

付図 に示す限界内になければならない。

4.1.6

周波数  主電源の周波数は,正常限界の 380∼420Hz の範囲内,又は異常限界の 370∼430Hz の範

囲内に維持し,非常電源の周波数は,非常限界の 360∼440Hz の範囲内に維持しなければならない。

備考1.  多くの系統が,定常周波数限界を,はるかに厳しい許容差に維持していることは事実である。

これらの限界を適用するときには,それを関連の仕様書に示すことが望ましい。

2. 360Hz

未満の周波数で非常系統の使用が必要な場合には,電圧が f/3 で与えられる値(ここで,

f

は Hz で示す周波数)以下であるように制御しなければならない。例えば,300Hz では,電

圧は 100V 以下でなければならない。

4.1.7

周波数ドリフト  制御された周波数のドリフトによる変動は,±5Hz 以下,周波数ドリフト率は,

15Hz/min

以下でなければならない。

4.1.8

周波数変調  変調による周波数の変動は,平均周波数からの偏移が付図 に定める限界内にあるも

のでなければならない。

4.2

過渡特性(附属書 も参照)

4.2.1

電圧

4.2.1.1

一般  サージ電圧は,等価の段階関数(8.1 参照)に変換したとき,航空機系統のすべての運用

に対して,

付図 の限界内になければならない。この要求事項との適合性を確認するときには,最も過酷

な相の過渡状態を用いなければならない。

サージ電圧に加えて,機器のスイッチング時にスパイク電圧が生じる。機器がスパイク電圧に耐えるこ


5

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

とができることを実証する試験を,

附属書 に規定する。

4.2.1.2

系統の正常動作

4.2.1.2.1

負荷を電源系統容量の 5%から 85%に,そして 5%に切り換えるときには,

付図 の限界 5 及

び限界 6 を適用する。負荷を 10%から 170%に,そして 10%に切り換えるときには,限界 3 及び限界 4 を

適用するが,この状態は,電動機負荷を含む負荷の切換えを示す。

4.2.1.2.2

電源バスのスイッチング又は切換えの状態では,交流電源の遮断が起こりやすい。厳密なこの

遮断時間は,個別の系統仕様書で定めるが,0∼200ms であればよい。この間,電圧は,ゼロと適用定常限

界との間の任意の値でよい遮断が終わったときには,電圧過渡状態の等価階段関数は,

付図 の限界 3 及

び限界 4 以内になければならない。

4.2.1.3

系統の異常動作  付図 の限界 1 及び限界 2 を適用する。

4.2.2

周波数

4.2.2.1

一般  周波数過渡状態は,航空機系統のすべての運用に対して,付図 の限界内になければなら

ない。

4.2.2.2

系統の正常動作  負荷を電源系統容量の 5%から 85%に,そして 5%に切り換えるときには,付

図 の限界 5 及び限界 6 を適用する。負荷を 10%から 170%に,そして 10%に切り換えるときには,限界

3

及び限界 4 を適用するが,この状態は,電動機負荷を含む負荷の切換えを示す。

4.2.2.3

系統の異常動作  付図 の限界 1 及び限界 2 を適用する。

5.

可変周波数交流電源系統の特性(回転翼航空機への適用を含む。)

備考  下記の特性を,発電機の入力回転速度比が 1 : 1.5 の可変周波数系統の利用機器端子における電

源に適用する。回転速度が顕著に異なる場合には,関連航空機系統又は機器の仕様書で,特性

の適切な修正値を規定しなければならない。

電圧特性を,中性点基準の線路電圧に適用する。線間の特性は,示されている中性点基準の

線路電圧と結果的に同じであることが望ましい。

特に指示がない限り,すべての交流電圧値は,実効値とする。

過渡サージ電圧の実効値は,ピーク値の記録から求める。

5.1

定常特性

5.1.1

電圧  4.1.1 と同じ。

5.1.2

位相差  4.1.2 と同じ。

5.1.3

電圧不平衡  4.1.3 と同じ。

5.1.4

電圧波形  4.1.4 と同じ。

5.1.5

電圧変調  4.1.1.5 と同じ。

5.1.6

周波数  電源の周波数は,320∼480Hz の範囲内に維持しなければならない。

5.2

過渡特性(附属書 も参照)

5.2.1

電圧

5.2.1.1

一般  サージ電圧は,等価階段関数(8.1 参照)に変換したとき,航空機系統のすべての運用に

対して,

付図 の限界内になければならない。この要求事項との適合性を確認するときには,最も過酷な

相の過渡状態を用いなければならない。

サージ電圧に加えて,機器のスイッチング時にスパイク電圧を生じる。機器がスパイク電圧に耐えるこ

とができることを実証する試験は,

附属書 に規定する。


6

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

5.2.1.2

系統の正常動作

5.2.1.2.1

負荷を電源系統容量の 5%から 85%に,そして 5%に切り換えるときには,

付図 の限界 5 及

び限界 6 を適用する。負荷を 10%から 170%に,そして 10%に切り換えるときには,限界 3 及び限界 4 を

適用するが,この状態は,電動機負荷を含む負荷の切換えを示す。

5.2.1.2.2

電源バスのスイッチング又は切換えの状態では,交流電源の遮断が起こりやすい。厳密なこの

遮断時間は,個別の系統仕様書で定めるが,0∼200ms であればよい。この間,電圧は,ゼロと適用定常限

界との間の任意の値でよい。遮断が終わったときには,電圧過渡状態の等価階段関数は,

付図 の限界 3

及び限界 4 以内になければならない。

5.2.1.3

系統の異常動作  付図 の限界 1 及び限界 2 を適用する。

5.2.2

周波数  周波数の変化は,周波数変化率が 65Hz/s 以下となるものでなければならない。

6.

直流電源系統の特性

備考  下記の特性を,利用機器端子での電源に適用する。

特に指示がない限り,すべての直流電圧値は,平均値とする。

6.1

定常特性

6.1.1

電圧  電圧は,付表 に示す限界内になければならない。

備考1.  直流のエンジンスタータを用いる航空機では,通常,始動サイクル中は直流系統電圧が

低くなる。このサイクル中に動作するか,オンにしたままにすることが必要な機器は,

個別仕様書でそれを明確にし,適切な電圧レベルも定めることが望ましい。

2.

内蔵の充電器を備えた蓄電器系統によって動作する機器は,

付表 の値を超えた電圧を

受けることがある。個別機器仕様書で,適切な電圧レベルを規定することが望ましい。

6.1.2

電圧リプル  蓄電池が接続されていない状態では,直流電源のリプルは,8.2 の要求事項に従って

測定したとき,平均直流電圧レベルからの最大の偏差が 2V 未満となるものでなければならない。

リプルの個々の繰返し成分の実効値は,

付図 に示す値以下でなければならない。

6.2

過渡特性

6.2.1

電圧

6.2.1.1

一般  サージ電圧は,その等価階段関数に変換したとき,航空機系統のすべての運用に対して,

付図 の限界内になければならない。この要求事項との適合性を確認するときには,最も過酷な過渡状態

を用いなければならない。

サージ電圧に加えて,機器のスイッチング時に,スパイク電圧を生じる。機器がスパイク電圧に耐える

ことができることを実証する試験を,

附属書 に規定する。

6.2.1.2

系統の正常動作

6.2.1.2.1

負荷を電源系統容量の 5%から 85%に,そして 5%に切り換えるときには,

付図 の限界 5 及

び限界 6 を適用する。負荷を 10%から 170%に,そして 10%に切り換えるときには,限界 3 及び限界 4 を

適用するが,この状態は,電動機負荷を含む負荷の切り換えを示す。

6.2.1.2.2

電源バスのスイッチング又は切換えの状態では,直流電源の遮断が起こりやすい。厳密なこの

遮断時間は,個別系統仕様書に定めるが,0∼200ms であればよい。この間,電圧は,ゼロと適用定常限界

との間の任意の値でよい。遮断が終わったときには,電圧過渡状態の等価階段関数は,

付図 の限界 3 及

び限界 4 以内になければならない。

6.2.1.3

系統の異常動作  付図 の限界 1 及び限界 2 を適用する。


7

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

備考  付図 は,回転速度範囲が広い直流発電機か又は可変周波数交流系統から電力を受ける変圧整

流器かを電源とする直流系統における過渡サージを示す。電源が,定周波数交流系統から電力

を受ける変圧整流器である場合には,過渡サージは低下して,

付図 に示す結果となる。

7.

利用機器

備考  この箇条は,他の機器に電力を供給する電源の特性に,悪影響を及ぼすことがある利用機器の

諸元に対する限界を詳述する。

7.1

電源要求事項  利用機器の仕様書には,この規格に示す電源の種類のうち,必要とするものを示さ

なければならない。交流及び直流の両方の電源を使用することが,信頼性,費用又は重量について顕著に

有利でない限り,利用機器は,一種類の電源からだけ電力を受けることが望ましい。交流及び直流の両方

の入力電源を使用する機器については,交流及び直流の電源が,4.又は 5.及び 6.に示す限界内で同時に変

動するときの性能を規定しなければならない。どちらかの電力供給がなくなったときに,安全でない状態

が生じてはならない。

7.2

変換  主電源の特性とは異なる特性をもつ電源を必要とする機器は,この規格で定める電力を受け

て,それを利用機器又は系統と一体化した装置か,又は補助的装置によって変換しなければならない。

7.3

性能  機器は,3.4.5.及び 6.で規定する特性範囲をもつ適切な電力を供給したとき,規定した性

能を示さなければならない。ただし,機器の個別仕様書で系統動作の特定領域内での性能低下を許容して

いる場合は除く。0.2s までの任意の時間の入力電力の遮断から生じるあらゆる機能不良を,明確に示さな

ければならない。機器は,損傷なしに,異常定常電圧限界(

付表 及び付表 参照)に耐えることができ,

さらに,系統が正常定常限界 (NSSL) に戻ったときには,自動的に正常動作に戻らなければならない。

三相電源の一相の故障,又は三相電源から電力を受ける機器の故障が,安全でない状態を生じてはなら

ない。個別仕様書では,安全でない状態を生じる特性を明確にしなければならない。

機器は,

附属書 に規定する過渡電圧試験に耐えなければならない。

7.4

電気系統に及ぼす影響  入力端子での電源特性を 4.5.及び 6.で規定する限界を超えさせようとする

利用機器の影響を制限するために,

(1)

交流機器の線電流が 5A を超える場合には,その線電流は,特に航空機系統設計者と合意しない限り,

全調波成分の実効値が基本波電流実効値の 10%以下となるものでなければならない。

(2)

負荷がパルス状の機器に対しては,電流変動の率及び大きさは,最小とし,さらに,航空機系統設計

者と合意しなければならない。

(3)

機器は,できれば,電源系統に直流をフィードバックしないように設計しなければならない(例えば,

相電源の半波整流)

。この要求事項から逸脱する場合には,航空機系統設計者と合意しなければならな

い。

7.5

交流電源

7.5.1

三相  定格が 500V・A 以上の負荷に対しては,特に航空機系統設計者と合意しない限り,三相電源

を用いなければならない。

7.5.2

単相  定格が 500V・A 未満の負荷に対しては,通常,単相電源を用いなければならない。500V・A

を超える電力を消費する機器は,電源要求では本来単相であっても,できれば,三つの単相負荷に内部的

に分割することによって,三相電源を要求として示さなければならない。単相負荷は,通常,線路と中性

点との間に接続しなければならない。


8

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

7.5.3

相負荷平衡  三相機器は,可能な限り,等しい相ボルトアンペアを必要とするものでなければなら

ない。相負荷間に顕著な差異がある場合には,その限界について,航空機系統設計者と合意しなければな

らない。

7.5.4

力率  定常状態では,交流機器の力率は,実用上ほぼ 1 でなければならない。最悪の相の全負荷力

率でも,

付図 10 に示すもの以上でなければならない。

7.6

待機(予熱)電力  機器が性能を発揮する必要はないが,機器を即応状態に維持するために電力を

必要とする動作モードに対しては,電力必要表を最少に保つことが望ましい。

8.

注記

8.1

電圧過渡状態  この規格で示す幾つかの電圧過渡状態曲線は,実際のサージを表すことを意図する

ものではない。これらの曲線は,すべてのサージらしいものに対する階段関数の包絡線であって,この包

絡線から,設計及び/又は試験のための電圧レベルを決めることができる。

附属書 に示すスパイク電圧波形は,実際のスパイクを表すことを意図するものではなくて,設計及び

試験のために,すべてのスパイクらしいものがその中に包まれていると仮定してよい包絡線である。

8.2

電圧リプル  電源に現れる電圧リプルは,校正ずみの広帯域オシロスコープ(最小 10MHz)を使用

し,掃引時間は 2.5ms で測定しなければならない。オシログラムを作成しなければならない。リプル電圧

のピーク値は,どちらの極性に対しても,平均直流電圧の 2V 以内になければならない。

8.3

過渡サージの等価階段関数  等価階段関数は,過渡電圧サージと等価の妥当な実効値である。その

曲線は,全サージと同じ影響を与えるために,実際のサージのピーク電圧を加えることが望ましい持続時

間を示す。過渡サージを等価階段関数に変換する代表的な例を,

付図 11 に示す。

8.4

定常電圧限界  付表 及び付表 は,利用機器が定常動作中に受ける電圧の正常,異常及び非常値

を定める。

これらの電圧限界は,次の要因を考慮している。

(1)

平衡負荷状態での電源バス電圧の制御限界。

(2)

系統の不平衡負荷が電源バス電圧に及ぼす影響。

(3)

利用機器電源ケーブルでの電圧降下に対する余裕。

備考  不平衡負荷をもつ三相機器については,7.5.3 も参照のこと。

異常定常限界については,不足電圧及び過電圧保護装置の極限を考慮する(2.6 

備考も参照のこと。)。

これらの許容差の累積結果を,

付表 及び付表 に示す。

付表 1  交流電圧限界の根拠

交流機器

主系統

V

非常系統

V

電源バス電圧 112∼118 108∼122

電圧降下

−4,+0

−4,+0

正常定常限界

(NSSL)

108

∼118

不足電圧及び過電圧

−10,+14

トリップ帯域限界

異常定常限界

(ASSL)

98

∼132

非常定常限界

(ESSL)

− 104∼122


9

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付表 2  直流電圧限界の根拠

直流機器

主系統

V

非常系統

V

電源バス電圧 26∼29 20∼29

電圧降下

−2,+0

−2,+0

正常定常限界

(NSSL)

24

∼29

不足電圧及び過電圧

トリップ帯域限界

±3

異常定常限界

(ASSL)

21

∼32

非常定常限界

(ESSL)

− 18∼29

付表 3  定常交流電圧限界

個別相

3

個別相平均

正常

(NSSL)

V

異常

(ASSL)

V

非常

(ESSL)

V

正常

(NSSL)

V

異常

(ASSL)

V

非常

(ESSL)

V

108

∼118 98∼132 104∼122 109.5∼116.5 100∼130 106∼120

付表 4  定常直流電圧限界

正常

(NSSL)

V

異常

(ASSL)

V

非常

(ESSL)

V

24

∼29 21∼32 18∼29

付図 1  相順及び線路の呼び方の図 


10

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 2  電圧変調包路線の成分電圧実効値


11

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 3  交流周波数変調の特性

付図 4  交流サージの階段関数の包絡線(定周波数系統)


12

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 5  交流電源における周波数過渡状態の包絡線

備考 1ms 未満の範囲で起こる周波数過渡状態は,重要でないので,定めていない。電源バス切換え中に,電源が遮断

されることがある(詳細は 4.2.1.2.2 参照)

付図 6  交流サージの階段関数の包絡線(可変周波数系統)


13

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 7  直流系統のリプルの周波数特性

付図 8  直流サージの階段関数の包絡線


14

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 9  直流サージの階段関数の包絡線 

(直流電源が定周波数交流電源から電力を受ける変圧整流器である場合)

付図 10  交流機器の力率限界


15

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 11  過渡電圧サージの等価階段関数への変換


16

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

附属書 A  電圧波形の測定

A.1

設計及び試験のための手引として,次の負荷を,航空機の重畳負荷を広範囲に代表するものとして提

案する。

ここで,は系統容量 (kW) であり,系統は,負荷(1)(2)及び(3)に同時に電力を供給しなければなら

ない。

(1)

遅れ力率 0.8 の平衡三相負荷 0.6CkW。

(2)

三角星形変圧器を通して接続し,0.3×

C

P

H

のインダクタンスをもつ,直列に接続した平滑チョークコ

イル付きの 0.1CkW を消費する抵抗負荷に給電する三相全波ブリッジ整流器。

(3)

三角星形変圧器を通して接続し,1.3×

P

C

µF のキャパシタンスをもつ,並列に接続した平滑コンデンサ

付きの 0.05CkW を消費する抵抗負荷に給電する三相全波ブリッジ整流器。

備考1.

(

)

73000

2

整流器出力電圧

=

P

(これは,三角星形変圧器の線電圧比が1 : 1のとき,1となる。

2.

試験負荷の一部として用いるインダクタンスは,磁束密度が飽和レベル未満となるように設

計しなければならない。

A.2

付図 12

に示す回路は,正弦波の縦座標値からの対応波の縦座標値の,極めて小さい差異もオシロスコ

ープに直接表示する。基本原理は,電源波形のサンプルを取り,それをその基本波に等しい純正弦波と比

較することである。このとき,二つの波形は同期させ,同位相に保つ。

正弦波は,供試電源から低域フィルタを通して得る。位相調整器(シンクロが使用可能)は,フィルタ

の前に置き,その出力電圧と電源電圧との間の位相角の細密な調整を行う。サンプル電圧の一線路を,正

弦電圧の一線路と共通に作り,二つの空き線をオシロスコープ,及び電源周波数に同調した調波分析器に

接続する。二つの基本波の間の位相角及び振幅の差は,分析器における読みゼロを表示するように調整す

る。その後,オシロスコープに現れる電圧は,すべての座標で正弦値からの電源波形の差異を示す。スイ

ッチによって,正弦波のピーク値の一定の百分率を表示することができ,また,これが振幅の差異を測定

する基準を与える。


17

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 12  オシロスコープヘの入力回路図


18

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

附属書 B  過渡電圧点検試験

過渡電圧要求事項を満足しているかどうかを点検するために推奨する形式の試験である。多数の異なるレ

ベルの電圧を,一様でない時間加えて,機器を試験することが実行不可能であるため,下記に示すとおり,

一つのサージ値及び一つのスパイク値で試験を行わなければならない。試験

B.1

は,すべての電気又は電

子機器に適用し,試験

B.2

は,それに追加して,半導体その他の電圧受感素子を含むあらゆる機器に適用

しなければならない。これらの試験中に,重要な構成部品が過渡状態にある間,電気的超過ストレスを受

けていないことを確認するために,これらの構成部品の両端に現れる電圧を監視しなければならない。個

別機器仕様書で特に指示がない限り,試験室の通常の周囲条件で,試験を行わなければならない。

B.1

印加電圧サージの影響に対する試験

B.1.1

過電圧サージ

B.1.1.1

正常定常限界内の電源で動作している機器については,機器の電源入力端子で測定した電圧を,下

記のとおり上げなければならない。

(1)

交流機器(定周波数方式)  180V(実効値)を 100ms の間。

(2)

交流機器(可変周波数方式)  210V(実効値)を 100ms の間。

(3)

直流機器(一般)  80V を 100ms の間。

(4)

直流機器(定周波数電源から給電される変圧整流器電源を使用するもの)  45V を 100ms の間。

B.1.1.2

このように加えられた電圧サージで,機器のどのような機能不良も生じてはならず,また,機器内

のどの構成部品にも安全でない電圧を加えることになってはならない。

B.1.2

不足電圧サージ

B.1.2.1

正常定常限界内の電源で動作している機器については,機器の電源入力端子で測定した電圧を,下

記のとおり下げなければならない。

(1)

交流機器  58V(実効値)を 50ms の間。

(2)

直流機器(一般)  8V を 50ms の間。

(3)

直流機器(定周波数電源から給電される変圧整流器電源を使用するもの)  13V を 50ms の間。

B.1.2.2

このように加えられた電圧サージで,機器のどのような機能不良も生じてはならず,また,機器内

のどの構成部品にも安全でない電圧を加えることになってはならない。

B.2

電圧スパイク試験(

1

)

B.2.1

試験の目的

  この試験は,電源リード線に乗って機器に到達することがある交流又は直流の電圧ス

パイクの影響に,機器が耐えることができることを確認するためである。予想できる主な悪影響は,次の

とおりである。

(a)

永久損傷  トランジスタの焼損,絶縁破壊

(b)

妨害感受性  機器の性能低下又は性能変化

B.2.2

試験用配置−回路

付図 13

に,代表的試験回路を示す。図示するスパイク発生器は,適切なもので

ある。しかし,波形が

付図 14

に適合するものであれば,その他のスパイク発生方法を用いてもよい。

B.2.3

試験手順

B.2.3.1

供試機器の接続を切り離し,S

2

を開にして,過渡波形を確認しなければならない。


19

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

0

∼350V の可変直流電源を用いて調整を行う。過渡状態の極性は,端子 1 及び端子 2 を逆にすると反転

する(

付図 13

参照)

(

1

)

こ の 試 験 は ,

ISO 7137

Aircraft

− Environmental conditions and test procedures for airborne

equipment

で述べている電圧スパイク伝導試験と同じである。

参考

JIS W 7002

(一般航空機用電子機器環境試験方法)の

17.

電圧スパイク伝導試験

参照。

機器を設計電圧で動作させたまま,各一次電源入力に,

付図 14

に示す一連の正及び負のスパイクを加え

る。正及び負のスパイクは,

付図 13

に示すのと同様の方法で作り出し,監視することが望ましい。それぞ

れの極性について,1 分間以内に 50 回の過渡電圧を加える。機器の各動作モード又は機能に対して試験を

繰り返す。

B.2.3.2

このように加えられた電圧スパイクで,機器のどのような機能不良も生じてはならず,また,機器

内のどの構成部品にも安全でない電圧を加えることになってはならない。

付図 13  代表的電圧スパイク試験用配置図

備考  電源インピーダンスを確認するためには,供試機器の代わりに 50

Ωの抵抗を接続する。


20

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

付図 14  電圧スパイク波形

備考  波形発生回路のインピーダンスは,50

Ωでなければならない。

また,規定の電圧及び持続時間は,開回路状態だけに対するものである。機器を接続した場合には,ピ

ーク電圧は実質的に低下することがある。試験器の電源インピーダンスは,50

Ωの負荷抵抗を入れて試験

すれば確認することができ,規定電圧の

2

1

の±10%の電圧を生じることが望ましい。


21

W 7001-1991 (ISO 1540 : 1984)

平成元年度航空規格原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

竹  中  規  雄

日本大学理工学部

(副委員長)

播  磨  克  彦

富士重工業株式会社航空機工場

太  田  信一郎

通商産業省機械情報産業局

伊  東      厚

工業技術院標準部

北  田  彰  良

運輸省航空局技術部

結  城  昭  治

海上保安庁装備技術部

石  川  安  男

防衛庁装備局

山  根  晧三郎

科学技術庁航空宇宙技術研究所

久木田  実  守

社団法人日本航空技術協会

白  浜  洋  海

日本航空株式会社技術研究所

福  西  嘉  夫

全日本空輸株式会社整備本部技術部

山  内      清

株式会社日本エアシステム整備本部技術部

藤  嶋  敏  夫

航空規格調査会

前  田  辰  三

三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所

足  立  三  郎

川崎重工業株式会社航空機事業本部

池  山  和  生

石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部

植  田  隆  之

住友精密工業株式会社航機技術部

本  間  邦  彦

三菱電機株式会社鎌倉製作所

(主査)

渡  辺      繁

株式会社東芝小向工場

司  馬  康  男

株式会社島津製作所航空機器事業部

幸  田  慶  治

横浜ゴム株式会社航空部品事業部

(事務局)

冨  田      泉

社団法人日本航空宇宙工業会

浮  田  尚  家

社団法人日本航空宇宙工業会