T 8116
:2005
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本保安
用品協会(JSAA)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの
申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が改正した日本工業規格
である。
これによって,JIS T 8116:1998 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本
工業標準調査会は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願
公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
JIS T 8116
には,次に示す附属書がある。
附属書 1(規定)耐劣化性試験
附属書 2(参考)化学防護手袋完成品の耐透過性試験
T 8116
:2005
目 次
ページ
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
定義
1
4.
性能
2
4.1
耐透過性
2
4.2
耐浸透性
2
4.3
耐劣化性
2
5.
品質
3
5.1
外観
3
5.2
寸法
3
6.
材料
3
7.
表示
3
8.
取扱説明書
4
9.
製品技術情報
4
附属書 1(規定)耐劣化性試験
5
附属書 2(参考)化学防護手袋完成品の耐透過性試験
7
日本工業規格
JIS
T
8116
:2005
化学防護手袋
Protective gloves for use against chemicals
1.
適用範囲 この規格は,酸,アルカリ,有機薬品,その他の気体及び液体又は粒子状の有害化学物質
(以下,化学物質という。
)を取り扱う作業に従事するときに着用し,化学物質の透過及び/又は浸透の防
止を目的として使用する手袋(以下,化学防護手袋という。
)について規定する。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構
成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その
最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS T 8030
化学防護服−防護服材料の耐透過性試験
JIS Z 4810
放射性汚染防護用ゴム手袋
JIS Z 9015-1
計数値検査に対する抜取検査手順−第 1 部:ロットごとの検査に対する AQL 指標型抜
取検査方式
ISO 13996:1999
Protective clothing−Mechanical properties−Determination of resistance to puncture
3.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a)
化学防護手袋材料(chemical protective glove material) 化学防護手袋本体に使用される材料(以下,
材料という)
。
b)
縫合部(seam) 材料間の恒久的な接合部分
c)
結合部(assembly) 化学防護手袋と化学防護服などの間の恒久的な接合部分又はガーメント間の恒
久的な接合部分。
d)
連結部(joint) 化学防護手袋と化学防護服などの間の非恒久的な接合部分又はガーメント間の非恒
久的な接合部分。
e)
開閉部(closure) ジッパー,面ファスナーなど,着脱時に使用する化学防護手袋の開閉部分。
f)
接合部(connection) 結合部(assembly)及び連結部(joint)の総称。
g)
透過(permeation) 材料の表面に接触した化学物質が,吸収され,内部に分子レベルで拡散を起こ
し,裏面から離脱する現象。
h)
浸透(penetration) 化学防護手袋の開閉部,縫合部,多孔質材料及びその他の不完全な部分などを
通過する化学物質の流れ。
i)
劣化(degradation) 化学物質との接触によって,化学防護手袋材料の 1 種類以上の物理的特性が悪
化する現象。
2
T 8116
:2005
4.
性能
4.1
耐透過性 化学防護手袋の耐透過性は JIS T 8030 で試験し,標準透過速度 0.1 µg/cm
2
/min
で測定さ
れた材料及び縫合部の平均標準破過点検出時間を求め,
表 1 に示すクラスに分類し,結果を 9. b)
で報告
する。
備考 耐透過性データは,少なくとも JIS T 8030 の附属書 A に記載の標準試験化学物質について報告
することが望ましい。
参考 化学防護手袋は,附属書 2 によって製品の耐透過性を評価することが望ましい。
表 1 耐透過性の分類
単位 min
クラス
平均標準破過点検出時間
6
>480
5
>240
4
>120
3
> 60
2
> 30
1
> 10
4.2
耐浸透性 化学防護手袋の耐浸透性は,ピンホール試験(水密性試験)で評価する。ピンホール試
験(水密性試験)は JIS Z 4810 で試験し,JIS Z 9015-1 に規定する方法によって,品質許容水準[以下,
AQL
(acceptable quality level)という。
]で
表 2 に示すクラスに分類し,結果を 9. c)
で報告する。
表 2 耐浸透性の分類
クラス
品質許容水準(AQL)
4 4.0
3 2.5
2 1.5
1
0.65
4.3
耐劣化性 化学防護手袋の耐劣化性は,附属書 1 で試験したとき,試験した各化学物質に対する物
理性能の変化率から,
表 3 に示すクラスに分類し,結果を 9. b)
で報告する。ただし,この耐劣化性は任意
項目とする。
備考1. 耐劣化性の評価は,試験材料,試験装置に応じ,突刺強さのほか,引張強さ又は引裂強さで
評価してもよい。
2.
耐劣化性データは,少なくとも 4.1 耐透過性試験を行った試験化学物質と同じ試験化学物質
について報告することが望ましい。
表 3 耐劣化性の分類
単位 %
クラス
変化率
4
≦20
3
≦40
2
≦60
1
≦80
3
T 8116
:2005
5.
品質
5.1
外観 化学防護手袋の外観は,次の各項に適合しなければならない。
a)
形状,肉厚ともに均整である。
b)
きず,気泡,変形,その他使用上有害な欠点がない。
c)
手袋を膨らませたとき,著しく片膨れがない。
5.2
寸法
5.2.1
サイズ 化学防護手袋のサイズは,着用者の手の寸法(手首の周囲長,手の長さ及びその他の手の
寸法)範囲から製造業者が指定する。このサイズは,着用者の目的に応じた作業を妨げるものであっては
ならない。
備考 手の長さは,手を平らな面に置いた状態での,手首中心部から中指の先端までの距離とする。
5.2.2
手袋製品寸法の測定 化学防護手袋製品の寸法の測定は,次による。
a)
全長 全長は,図 1 に示すように中指の先端から手袋の下端までとする。
b)
掌部の幅 掌部の幅は,図 1 に示すように平らな面に置いて押さえた状態の掌部の指方向に直角の寸
法をいう。
図 1 手袋の全長及び掌部の幅の計測部位
6.
材料 材料は,次の各項に満足しなければならない。
a)
皮膚に有害な影響を与えないもの。
b)
通常の取扱いにおいて,き裂,変形,その他の異常を生じないもの。
c)
材料の主な組成は 9. a)
で報告する。
7.
表示 化学防護手袋には,本体の見やすい場所に次の事項を表示する。ただし,1 枚ごとの包装に表
示してもよい。
a)
サイズ
b)
製造業者名又はその略号
c)
製品の名称及び/又は型番号
4
T 8116
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d)
製造年又はその略号
e)
材料の主な組成
f)
化学防護手袋は,化学物質からの防護を目的とするものであり,かつ,製造業者の取扱説明書を読ま
なければならないことを示す記述又は図記号。
8.
取扱説明書 化学防護手袋には,次の各項の内容を含む取扱説明書を添付しなければならない。
a)
取扱上の注意事項(使用可能分野,使用不可能分野)
b)
使用方法,使用上の注意事項及び警告
c)
点検及び保管方法
d)
除染及び洗浄方法
e)
廃棄の基準及び考慮すべき事項
9.
製品技術情報 製造業者はこの規格に規定する試験結果の数値,該当する表 1〜3 によるクラス分類
及び合格/不合格についての情報を次によって示さなければならない。この情報は,8.
に加えて示しても
よい。
a)
製品の一般情報 材料,構成部,縫合部及び接合部についての説明。
b)
化学物質情報 4.
の事項について,試験した材料又は縫合部別に結果を表で示した化学物質の情報。
データには,試験化学物質名(化学物質及び濃度)並びに照会先(例えば,製造業者の電話及びファ
ックス番号)を記載する。
備考 耐透過性データは,平均標準破過点検出時間及び各試験化学物質に対するクラス分類を記載す
る。耐透過性データの,平均最高透過速度又は定常状態の透過速度の報告は任意とする。
c)
その他の情報 この規格に規定する 5.
及び 6.
のすべての情報。
5
T 8116
:2005
附属書 1(規定)耐劣化性試験
1.
適用範囲 化学防護手袋の化学物質による耐劣化性を測定する試験方法について規定する。
2.
化学防護手袋の化学物質による耐劣化性を測定する試験方法 化学防護手袋の化学物質による耐劣化
性を測定する試験方法は,次による。
2.1
原理 化学防護手袋の表面に化学物質を接触させ,突刺強さの変化を評価する。
2.2
装置
2.2.1
共通
a)
抜き型(直径 12 mm 以上)
b)
精度±1
%で圧縮力を測定するセル付動力計
c)
試験錘(ISO 13996 の 5.1.2)
d)
ビーカー(150 ml)
e)
使い捨てトランスファピペット
f)
ヒュームフード
2.2.2
薄手の手袋用装置
a) 4
又は 5 ml フラスコ
b) 12
mm
の穴が 18 個ある板紙
c)
フラスコ台
2.2.3
厚手の手袋用装置 附属書 1 図 1 参照
2.3
試験条件 測定時の条件は,次のとおりとする。
a)
試験片 3 枚の手袋の代表部分から各 5 枚の試験片を抜き型で採取し,各 3 枚を試験用,各 2 枚をブ
ランク用とする。
b)
温度によるコンディショニング 23±2
℃,相対湿度(50±5)%で 24 時間以上。
2.4
手順
2.4.1
A
法(薄手手袋試験) 2 ml の試験液をフラスコに入れ,試験片をフラスコの口に手袋表面を内側
に向け取り付ける。次いで,フラスコの口を板紙の穴に合わせ,裏返しの状態で 1 時間放置する。3 分間
に 1 試験片の割合で,試験用 9 枚とブランク用 6 枚をセットする。1 時間後に試験液が試験片の表面を完
全に覆っていない場合は,試験片を取り替え,多量の試験液で試験を再開する。
2.4.2
B
法(厚手手袋試験) 試験時間中,試験片を完全に覆う十分な量の試験液をテストセルに入れ,
試験片を装置に取り付ける。次いで,装置を裏返し 1 時間放置する。3 分間に 1 試験片の割合で,試験用 9
枚とブランク用 6 枚をセットする。試験片と実験台との間は,10 mm 以上の空げきを作る。
2.5
突刺強さ試験 100 mm/min の速度で突刺強さ試験を行い,セル付動力計によって突刺し時の応力を
記録する。
2.6
評価
a)
各 3 枚の手袋の耐劣化性は特定の化学物質ごとに,次の式によって求める。
(
) (
)
[
]
100
OP
RP
OP
DR
X
X
X
X
×
−
=
6
T 8116
:2005
ここに,
DRx
:
手袋試験片
x
の試験した試験液に対する耐劣化性(%)
OPx
:
非暴露
2
試験片の平均突刺強さ(
N
)
RPx
:
暴露
3
試験片の平均突刺強さ(
N
)
b
)
試験液に対する試験片の耐劣化性は,次の式によって求める。
(
)
3
DR3
DR2
DR1
DR
+
+
=
ここに,
DR
:
試験液に対する試験片の耐劣化性(%)
DR1
:
試験液に対する手袋
1
試験片の耐劣化性(%)
DR2
:
試験液に対する手袋
2
試験片の耐劣化性(%)
DR3
:
試験液に対する手袋
3
試験片の耐劣化性(%)
附属書 1 図 1 劣化及び突刺強さ試験用セル
関連規格
ISO/CD22613.2
:2002
Protective clothing
−
General test methods and performance requirements for
hand-protection
7
T 8116
:2005
附属書 2(参考)化学防護手袋完成品の耐透過性試験
この附属書は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
1.
適用範囲 この附属書は,化学防護手袋完成品の,液体化学物質の耐透過性を測定する試験方法につ
いて記述する。
2.
化学防護手袋完成品の耐透過性試験方法 化学防護手袋完成品の耐透過性試験方法は,次による。
2.1
原理 シールホルダーに手袋のすそ(裾)口を挟み,ボルトで均等に締め付けて密閉し試験容器に
装着して,手袋の皮膜を隔壁とする内側セルと外側セルの隔室を作る。試験液を溶剤注入口から外側セル
に一定量注入し,内側セルに透過した試験液の蒸気をシールホルダーの採取口から採取する。試験液を注
入したときから経時的に透過量を積算しグラフに記し破過時間を求める。
2.2
装置 附属書 2 図 1 に示す装置は,試験する手袋を装着したシールホルダーを円筒形の試験容器に
装着する,非破壊の手袋透過試験装置である。この装置の外側セルには試験液の注入口を密封装着し,オ
ーバーフロー管は試験液の液面を常圧に保つため空気浄化装置を通過した後,装置外に放出する。試験手
袋の内側の各指先には,パイプを取り付けて外側セルの液圧にかかわりなく試験液の採取経路を確保でき
る構造である。シールホルダーのエア供給口から供給された一定量の清浄空気は,エアパイプを通して内
側セルに供給される。内側セルに透過した試験液蒸気は,供給空気とともに各指のパイプの先端などから
シールホルダーの内壁に集合する。試験液蒸気は採取口から採取する。
2.3
試験条件 試験条件は,次による。
a
)
試験製品
3
点
b
)
試験温度 温度
23
±
3
℃,相対湿度(
60
±
10
)%
c
)
試験液量 オーバーフロー管から過剰試験液が回収できる液量(約
1.5 L
)
。
d
)
気体捕集媒体 乾燥空気又は不活性ガス(窒素,ヘリウムなど)。
e
)
分析装置の感度
0.1 µg/cm
2
/min
f
)
気体捕集媒体の流量
1 000
±
100 mL/min
2.4
手順 手順は,次による。
a
)
シールホルダーに試験手袋を取り付ける。
b
)
試験容器の内側と手袋外側に試験溶剤を注入する。
c
)
気体捕集媒体をエア供給口から定量供給し,シールホルダーの採取口から捕集媒体を採取し分析する。
2.5
評価 評価は,次による。
a
)
積算量のグラフから,破過時間を求める。
b
)
標準透過速度
0.1µg/cm
2
/min
で測定された化学防護手袋材料の平均標準破過点検出時間を求める。
8
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:2005
単位 mm
附属書 2 図 1 透過試験装置
9
T 8116
:2005
附属書 2 図 2 分析用機器配置の一例
①エアポンプ
②流量計
③エア供給口
④ガス(試験液蒸気)採取口
⑤シールホルダー
⑥試験手袋
⑦試験容器
⑧記録計
⑨分析装置
⑩試験溶剤注入口
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
通気口
空気
⑩