T 4206:2018
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 種類······························································································································· 2
5 材料······························································································································· 3
6 性能······························································································································· 4
6.1 最大許容誤差 ················································································································ 4
6.2 目盛 ···························································································································· 4
6.3 機構 ···························································································································· 4
6.4 留点のかたさ ················································································································ 4
6.5 零点示度変化量 ············································································································· 4
7 試験······························································································································· 4
7.1 器差試験 ······················································································································ 4
7.2 アルカリ溶出試験 ·········································································································· 5
7.3 振り下げ試験 ················································································································ 6
7.4 零点示度変化量試験 ······································································································· 6
8 検査······························································································································· 7
9 表示······························································································································· 7
9.1 体温計本体 ··················································································································· 7
9.2 包装 ···························································································································· 7
10 附属文書 ······················································································································· 7
10.1 一般事項 ····················································································································· 7
10.2 記載項目 ····················································································································· 8
附属書A(規定)計量法におけるガラス製体温計の要求事項························································· 9
附属書B(規定)使用中検査 ································································································· 13
附属書C(参考)感温液に水銀を用いた体温計の取扱い ····························································· 14
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大
臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS T 4206:2014は改正され,この規格に置き換えられ
た。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の
特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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ガラス製体温計
Clinical glass thermometers with maximum device
序文
この規格の附属書A及び附属書Bは,計量法第57条に基づく譲渡等制限がある特定計量器であるガラ
ス製体温計として要求される要件のうち,構造及び性能に係る技術上の基準,検定,使用中検査の方法な
どを規定するが,これらの附属書の適合だけをもって計量法で定める検定に合格したことにはならない。
さらに,附属書Cには,改正前の規格JIS T 4206:2014に基づき製造・輸入される,感温液に水銀が封
入されているガラス製体温計の取扱いについて記載した。感温液に水銀が封入されているガラス製体温計
の製造は,“水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成27年法律第42号)”,輸入は,“輸入貿易管
理令(昭和24年政令第414号)”に基づき2020年12月31日をもって禁止されるが,その使用に規制はな
く,今後も使用され又は廃棄されるため,留意事項を附属書Cにまとめた。
1
適用範囲
この規格は,人の体温を測定するガラス製体温計(以下,体温計という。)について規定する。この規格
は,次の機能及び構造をもつ体温計に適用できる。
a) 留点付きで感温液に水銀以外の液体金属が封入されているもの
b) 温度の計量単位がセルシウス度(℃)のもの
なお,計量法上の特定計量器である体温計は,附属書A及び附属書Bを適用する。
警告 この規格に基づいて試験を行う場合は,通常の実験室の作業に精通していることを前提とする。
この規格は,その使用に関連して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。
この規格の利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置を取らなければな
らない。
注記 2020年12月31日までに製造・輸入される,感温液に水銀が封入されている体温計にはJIS T
4206:2014を適用することができる。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 1604 測温抵抗体
JIS Z 8103 計測用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8103によるほか,次による。
2
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3.1
留点
温度が下降しても,毛細管内の感温液が計られた最高温度の位置に保たれるよう毛細管の一部を狭くし
た部分。
3.2
毛細管
封入された感温液が上昇又は下降する細い管。
3.3
感温液
温度に対応する膨張の度合いによって,毛細管中で温度を指示する体温計の球部に封入された液体。
3.4
液切れ
気泡などによって,毛細管内の感温液が切れて不連続になっている状態。
3.5
計量値
計量器の表示する物象の状態の量の値。
3.6
経年変化
同じ温度に対する体温計の計量値が,年月の経過とともに変化する状態。
3.7
器差
計量値から真実の値を減じた値。
3.8
目盛標識
計量値又はそれに関連する値を表示するための数字,点,線又はその他の記号。
3.9
目幅
二つの隣接する目盛標識の中心間の長さ。
3.10
目量
隣接する目盛標識のそれぞれが表す物象の状態の量(温度)の差。
3.11
排卵指示値,OV値(Ovulation index)
医療分野で使われる基礎体温の基本的な指標で35.5 ℃〜38 ℃を50等分(0〜50 ov)した値。
4
種類
体温計の種類は,構造及び用途によって分類し,表1及び表2による。
3
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表1−構造による種類
種類
構造
平形
毛細管及び目盛板を外管に封入したもの(図1参照)。
棒状
毛細管に直接目盛を付けたもの(図2参照)。
表2−用途による種類
種類
用途
一般用
通常目的の体温測定に使用する。
婦人用
婦人の基礎体温の測定に使用する。
図1−平形
図2−棒状
5
材料
5.1
ガラス
ガラスは,次による。
a) 経年変化をしにくい材料を使用しなければならない。
b) 7.2によって試験したとき,ガラスの粉末試料2.5 gにつき,アルカリ溶出量が0.7 mg以下の材料を使
用しなければならない。
5.2
感温液 体温計として正しい機能が確保できないような不純物1) を含有してはならない。
注1) 感温液が合金の場合には,混合を意図しない金属をいう。
5.3
目盛板 材質は,安定した,変化の少ない材質でなければならない。
4
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6
性能
6.1
最大許容誤差
最大許容誤差は,7.1の器差試験を行ったとき,一般用では±0.1 ℃,婦人用では±0.05 ℃とする。
6.2
目盛
目盛は,次による。
a) 目盛は,目盛線の太さの中心によって温度を示すように目盛られていなければならない。
b) 測温範囲は,一般用では35 ℃〜42 ℃,婦人用では35.5 ℃〜38 ℃を含まなければならない。
c) 目量は,一般用では0.1 ℃,婦人用では0.05 ℃でなければならない。
d) 目幅は,0.5 mm以上でなければならない。
e) 目盛線の太さは,目幅の1/3を超えてはならない。ただし,一般用では0.5 ℃の倍数,婦人用では0.25 ℃
の倍数を表す目盛線については,目幅の1/2以下としてもよい。
f)
目盛線は,体温計の管軸に対して直角でなければならない。
g) 主な目盛線には,それが表す温度又はその数値を表記する。婦人用では,OV値を併記してもよい。
h) 相互に対応する目盛線の長さ及び太さは,均一にする。ただし,目盛線の長さは,一般用では0.5 ℃
の倍数,婦人用では0.25 ℃の倍数を表す目盛線にあっては,他の目盛線より長くしてもよい。
i)
目盛線は,感温液の最上部による示度によって,目盛らなければならない。
6.3
機構
機構は,次による。
a) 目盛線,文字などの表示は,鮮明で誤認のおそれがなく,容易に消滅してはならない。
b) 留点部を除き,液切れを生じてはならない。
c) 測温範囲内では,毛細管内の感温液及び目盛線が明瞭に見え,かつ,同一視野内で示度の視定ができ
なければならない。
d) 毛細管は,示度の誤認,液切れ又は器差の変化を生じるおそれがある欠点(内壁の汚れ,水分,ちり,
気泡の混入など)があってはならない。
e) 球部,毛細管及び外管は,通常の使用状態で破損するおそれがある不完全な継ぎ目,気泡,すじ,き
ず,ひずみなどがあってはならない。
f)
形状は,直線上でなければならない。
g) 毛細管は,二本以上あってはならない。
h) 平形体温計は,毛細管と目盛板との位置関係が容易に変化してはならない。
i)
体温計の端部は,滑らかな丸みをもち使用時に皮膚を傷付けてはならない。
6.4
留点のかたさ
体温計を37 ℃以上最大目盛までの任意の温度にした後,常温に放置し,体温計本体が常温になってか
ら7.3の振り下げ試験を行ったとき,毛細管内の感温液が最小目盛以下に下がらなければならない。
6.5
零点示度変化量
7.4に規定する零点示度変化量試験を行ったとき,その零点示度変化量が0.07 ℃を超えてはならない。
7
試験
7.1
器差試験
7.1.1
器差試験の条件
器差試験の条件は,次による。
5
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a) 器差試験を行う目盛標識 次によって,低温から高温へと順次行う。
1) 測温範囲の最高温度を表す目盛標識
2) 測温範囲の最低温度を表す目盛標識
3) 37 ℃付近又は1)〜2) の温度範囲の任意の1点以上の目盛標識
なお,1) 及び/又は2) で試験を行うことが困難な場合には,できるだけそれに近い目盛標識で行
う。
b) 標準温度計 次のいずれかを用いる。
1) 計量法第103条第1項の規定によって基準器検査に合格し,かつ,有効期間にある基準ガラス製温
度計
2) JIS C 1604に基づく測温抵抗体,サーミスタ温度計又はガラス製温度計のうち,計量法第144条第
1項の登録事業者が特定標準器によって校正したもの,又はこれに連鎖して段階的に温度計の校正
したものを用いて定期的に校正したものであって,精度±0.02 ℃のもの又はこれと同等以上のもの
c) 試験槽 試験槽は,水温槽を用い,水温槽の温度が一定に保持できる状態又は極めて徐々に上昇する
状態で,かつ,水温槽内部の温度が常に均一になるように水をかくはんできるもの。
注記 水温槽は,JIS B 7414の8.1.2(温槽)に規定する±0.02 ℃の温度分布の性能をもつことが望
ましい。
7.1.2
器差試験の方法
器差試験の方法は,次による。
a) 試験は,同一の水温槽に60秒間以上浸せきした試験体温計と標準温度計との示度を比較することによ
って行い,試験体温計の示度から標準温度計の示度を減じて器差を求める。ただし,標準温度計に器
差があるときは,補正を行う。
b) 試験温度を標準温度計の表す目盛線の位置まで同一の温度とした状態で行う。ただし,試験槽の構造
及びその他のやむを得ない事由によって,目盛線の位置まで同一の温度とすることができないときは,
7.1.3による補正値を加える。
c) 試験体温計の示度の視定は,試験体温計を水温槽から取り出した後,速やかに目盛面に対して視線が
垂直になる位置から最上部を視定して行う。
7.1.3
試験温度の補正
温度の補正値は,次の式によって算出する。
(
)K
t
T
n
C
−
=
1
ここに,
C1: 補正値(℃)
n: 露出部(試験を行う目盛線とそれに対応する温度に保持した
箇所との間の部分をいう。)の長さをその目盛面における
1 ℃に相当する長さで除した値
T: 試験槽の温度(℃)
t: 露出部の平均温度(℃)
K: ガラスに対する感温液の見掛けの膨張係数(感温液が水銀の
場合は,K=1/6 300を用いることができる。)
7.2
アルカリ溶出試験
アルカリ溶出試験は,棒状体温計の球部及び棒部,並びに平形体温計にあっては,毛細管のガラス又は
それと同一の材質をもつ部分のガラスについて行い,次による。
a) 試料 ガラス片を鉄製又はめのう製の乳鉢によって粉砕したガラス粉末(目開きが0.4 mmの標準網
6
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ふるいを通り,0.3 mmの標準網ふるいを通らないガラス粉末に限る。)であって,温度15 ℃以下に
おいて濃度が体積分率99 %以上のエチルアルコールで3回洗浄した後,温度105 ℃以上で乾燥した
ものを2.5 g使用する。
b) 試験装置 試験装置は,石英ガラス又はパイレックス級ガラスで作った還流冷却器付きフラスコを使
用する(図3参照)。
単位 mm
図3−アルカリ溶出試験装置(例)
c) 試験手順 試験手順は,次による。
1) 蒸留水をあらかじめ5分間以上沸騰させた後,沸騰した蒸留水50 cm3と試料とをフラスコに入れる。
2) そのフラスコを,沸騰している水の中に入れて,還流冷却をしながら1時間保持する。
3) 1時間経過後フラスコを,流水に入れて中の内容液が常温に戻るまで冷却する。
4) フェノールフタレンの混合率が0.2 %のアルコール溶液を指示薬として常温に戻ったフラスコ内の
内溶液を1 m3中に10 molの量の塩酸の水溶液で滴定する。
d) 算出方法 塩酸消費量を立法センチメートル(cm3)で表した値に0.31を乗じて得たミリグラム(mg)
で表した酸化ナトリウムの相当量をアルカリ溶出量とする。
7.3
振り下げ試験
振り下げ試験は,遠心機などによって球部の底部に約600 m/s2の大きさの加速度を加え,感温液柱頂部
の位置を調べる。
7.4
零点示度変化量試験
零点示度変化量試験は,次による。
a) 試験用ガラス製温度計 次の1)〜3) の構造及び4) の性能に適合するガラス製温度計を作る。
7
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1) 試験体温計に使用されている材料と同一の材料を用いて,400 ℃以上の温度に耐えるもの。ただし,
感温液には水銀を用いることができる。
2) −3 ℃〜3 ℃の範囲の温度を表す目盛線が目盛られ,目量が0.02 ℃,0.05 ℃又は0.1 ℃のもの。
3) 目幅が棒状のものにあっては1.0 mm以上,平形のものにあっては0.7 mm以上のもの。
4) 試験用ガラス製温度計を350 ℃以上の温度に5分間保持した後,50 ℃以下まで冷却してから0 ℃
の目盛線における器差試験を行ったときの器差と,その直後,再び350 ℃以上の温度に24時間保
持した後,50 ℃以下まで冷却してから0 ℃の目盛線における器差試験を行ったときの器差との差
が0.15 ℃以下のもの。ここで,350 ℃からの冷却速度は,10 ℃/h〜15 ℃/hとする。
b) 試験手順 試験手順は,次による。
なお,この試験において冷却中の球部は,ほかのものと接触させてはならない。
1) a) で作製した試験用ガラス製温度計を一週間常温に放置した後,0 ℃の目盛線における器差試験を
行う。
2) 100 ℃の温度に30分間保持した後,空気中で冷却し,15分以内に0 ℃の目盛線における器差試験
を行う。
c) 算出方法 b) の1) 及び2) の器差試験で求めた器差の差を零点示度変化量とする。
8
検査
検査は,材料及び性能について行い,箇条5及び箇条6の規定に適合しなければならない。
9
表示
9.1
体温計本体
体温計本体には,次の事項を表示する。
a) 製造販売業者名又はそれらの略号
b) 温度の計量単位セルシウス度(℃)
c) 体温計であることが識別できる標識
d) 感温液の種類又は水銀を用いていない旨の略号
なお,水銀を使用していない旨の略号は,NM 2) 又はMF 3) とする。
注2) NMとは,“No Mercury”の略語である。
3) MFとは,“Mercury Free”の略語である。
e) 婦人用の場合は,その旨
9.2
包装
包装には,次の事項を表示する。
a) 製造販売業者名
b) 婦人用の場合は,その旨
c) 感温液の種類又はその略号
10
附属文書
10.1
一般事項
体温計には,“医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律”(以下,“医薬品医
療機器法”という。)で規定された文書及び必要に応じて取扱説明書又はそれに準じる文書に,10.2に定め
8
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る記載項目を記載しなければならない。
10.2
記載項目
記載項目には,分かりやすい表現で,できる限り次の全項目を記載するが,記載する内容がない項目は
項目名を含めて省略してもよい。
a) 文書の作成又は改訂年月日
b) 医薬品医療機器法で規定された必要事項
c) 医薬品医療機器法に基づく製造販売承認を受けた又は製造販売を届け出た販売名以外の略称・愛称な
ど,製品を特定する場合に使用者を混乱させるおそれがある名称は記載しない。
d) 警告の記載事項は,赤枠内に項目名を含めて赤字で記載する。
e) 禁忌・禁止,体温計の設計限界又は不適正使用など,責任範囲を超える対象及び使用方法を記載する,
赤枠内に項目名を含めて記載するが,文字は赤色を使用しない。
f)
形状,構造,感温液など
g) 性能,使用目的,効能又は効果
h) 保証された測定精度
i)
測温範囲
j)
婦人用体温計においては,OV値などの説明
k) 操作方法,使用方法など
l)
体温の測定に当たって,検温に必要な時間及び正しい測定方法
m) 使用上の注意
n) 不具合・有害事象
o) 貯蔵・保管方法及び使用期間
p) 保管条件
1) 感温液が膨張して破損するおそれのある温度,一般用は42 ℃以上又は婦人用は38 ℃以上になる場
所に置かない。
2) 暖房器具の近く又は直射日光が当たる場所に置かない。
q) 取扱い上の注意
1) 保守・点検に関わる事項,滅菌条件など再使用のために必要な措置に関わる事項を記載する。
2) 清掃,洗浄,消毒及び滅菌方法に関する注意事項
r) 包装は,包装単位を記載する。複数の包装単位が存在する場合には,製品ごとに整理して全てを記載
する。
s)
主要文献及び文献請求先は,各項目の記載の裏付けとなる主要文献を記載する。文献請求先にあって
は,その氏名又は名称,住所及び電話番号を記載する。
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附属書A
(規定)
計量法におけるガラス製体温計の要求事項
A.1 一般
この附属書は,本体で対象とする体温計(箇条1)のうち,計量法における体温計の構造及び性能に係
る技術上の基準,検定,使用中の検査の方法などを規定する。
A.2 用語及び定義
この附属書で用いる主な用語及び定義は,箇条3によるほか,次による。
A.2.1
検定
計量法に規定される特定計量器の検査。
注記 検定を行うものは,計量法によってその特定計量器の種類ごとに都道府県知事,指定検定機関,
国立研究開発法人産業技術総合研究所又は日本電気計器検定所と定められている。
A.2.2
検定公差
検定における器差の許容値。
A.2.3
使用公差
使用中検査における器差の許容値。
A.2.4
型式承認表示
計量法に規定される特定計量器の型式について,その承認を取得している型式に属することを示す表示。
A.3
検定公差
検定公差は,一般用では±0.1 ℃,婦人用では±0.05 ℃とする。
A.4 材料
A.4.1 ガラス
ガラスの材料は,5.1による。
A.4.2 感温液
感温液の材料は,5.2による。
A.5 性能
A.5.1 目盛
目盛は,6.2及び,次による。ただし,6.2のb) 及びg) のOV値は除く。
指示範囲は,32 ℃〜43 ℃以内でなければならない。
10
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A.5.2 機構
機構は,6.3による。ただし,6.3 i) は除く。
A.5.3 留点のかたさ
留点のかたさは,6.4による。
A.5.4 零点示度変化量
零点示度変化量は,6.5による。
A.6 試験
A.6.1 アルカリ溶出試験
ガラスの材料がA.4.1に規定するアルカリ溶出量に適合するかどうかの試験は,7.2による。
A.6.2 振り下げ試験
留点のかたさがA.5.3に適合するかどうかの試験は,7.3による。
A.6.3 零点示度変化量試験
零点示度変化量がA.5.4に適合するかどうかの試験は,7.4による。
A.7 検定
A.7.1 一般
検定方法は,計量法の規定によって,型式承認表示を付している体温計の構造検定のときに行う“個々
に定める性能の検定”,型式承認表示を付していない体温計の構造検定のときに行う“型式承認表示を付し
ていない体温計の検定”及び型式承認表示の有無を問わず実施する“器差検定の方法”とする。
A.7.2 型式承認表示を付している体温計の構造検定
A.7.2.1 個々に定める性能の技術上の基準
性能は,A.5.1〜A.5.3による。
A.7.2.2 個々に定める性能の検定の方法
検定の方法は,目視及び7.4による。
A.7.3 型式承認表示を付していない体温計の構造検定
A.7.3.1 構造に係る技術上の基準
構造に係る技術上の基準は,5.1,5.2及びA.5による。
A.7.3.2 構造検定の方法
型式承認表示が付していない場合の構造検定の方法は,目視及び7.2〜7.4による。ただし,7.2〜7.4は
必要がないと判断できるときは,省略することができる。
A.7.4 器差検定
A.7.4.1 器差検定の条件
器差検定の条件は,次による。
a) 器差検定を行う目盛標識 次によって,低温から高温へと順次行う。
1) 測定できる最高温度を表す目盛標識
2) 測定できる最低温度を表す目盛標識
3) 37 ℃付近又は1)〜2) の温度範囲の任意の1点以上の目盛標識
なお,1) 及び/又は2) での器差検定が困難な場合は,できるだけそれに近い目盛標識で行う。
b) 基準器 計量法第103条第1項の規定によって基準器検査に合格し,かつ,有効期間内にある基準ガ
11
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ラス製温度計であって,検定を行う体温計の目量以下の目量でなければならない。
c) 検査槽 水温槽を使用するときは,基準ガラス製温度計及び検定を行う体温計の温度を感じる速さに
応じて,水温槽の温度が検定に必要な一定の温度に保持できる状態又は極めて緩やかに上昇する状態
で,かつ,温槽内部の温度が常に均一になるように液体をかくはんしながら行う。
注記 水温槽は,JIS B 7414の8.1.2に規定する±0.02 ℃の温度分布の性能をもつことが望ましい。
A.7.4.2 器差検定の方法
器差検定の方法は,次による。
a) 検定は,同一の水温槽に60秒間以上浸せきした体温計と基準ガラス製温度計との示度を比較すること
によって行い,体温計の示度から基準ガラス製温度計の示度を減じて器差を求める。
b) 検定で使用する基準ガラス製温度計の目盛線は,目盛面に視線が垂直になる位置に置いて,その正面
から示度を視定する。
c) 感温液が液体金属である場合は,液面の最上部で視定し,液体金属以外の液体であるときは,液面の
最下部で視定する。
d) 検定する温度を基準ガラス製温度計の表す目盛線の位置まで同一の温度とした状態で行う。ただし,
水温槽の構造及びその他のやむを得ない事由によって,目盛線の位置まで同一の温度とすることがで
きないときは,A.7.5による補正値を加える。
e) 示度の視定は,体温計を水温槽から取り出した後,速やかに行う。
A.7.5 検定温度の補正
検定温度の補正値は,次の式によって算出する。
(
)K
t
T
n
C
−
=
2
ここに,
C2: 補正値(℃)
n: 露出部(検定を行う目盛線とそれに対応する温度に保持
した箇所との間の部分をいう。)の長さをその目盛面に
おける1 ℃に相当する長さで除した値
T: 水温槽の温度(℃)
t: 露出部の平均温度(℃)
K: ガラスに対する感温液の見掛けの膨張係数(水銀温度計
を用いているのでK=1/6 300とする。)
A.8 表示
本体の表示は,9.1による。ただし,9.1 a) は,“製造事業者名,製造事業者の登録商標又は経済産業大
臣に届け出た記号”とする。
A.9 使用中検査
使用中検査は,附属書Bによる。
A.10 対応関係
この規格の箇条と特定計量器検定検査規則(以下,検則という。)の項目との対応関係は,表A.1による。
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表A.1−この規格の箇条と検則項目との対比表
箇条
検則の対応項目
A.8 表示(9.1)
第四章第一節第一款第一目“表記事項”
A.4 材料(5.1,5.2)
第四章第一節第一款第二目“材質”
A.1 一般(箇条1)
A.5 性能{6.2[b) 及びg) のOV値は除く。],6.3
[i) は除く。],6.4,及び6.5}
A.7.2.1 個々に定める性能の技術上の基準
第四章第一節第一款第三目“性能”
A.3 検定公差
第四章第一節第二款“検定公差”
A.6 試験(7.2〜7.4)
A7.3 型式承認表示を付していない体温計の構造
の検定{5.1,5.2,6.2[b) 及びg) のOV値は除
く。],6.3[i) は除く。],6.4,6.5,及び7.2〜7.4}
第四章第一節第三款第一目“構造検定の方法”
A.7.4.2 器差検定の方法
第四章第一節第三款第二目“器差検定の方法”
B.3 性能に係る技術上の基準[6.3のb),d) 及び
f) 並びに6.4]
第四章第二節第一款“性能に係る技術上の基準”
B.2 使用公差
第四章第二節第二款“使用公差”
B.4 性能に関する検査の方法(7.3)
B.5 器差検査の方法
第四章第二節第三款“使用中検査の方法”
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附属書B
(規定)
使用中検査
B.1
一般
この附属書は,体温計の製造後,市場において使用されている体温計の計量法の特定計量器として要求
される性能などについて規定する。
B.2
使用公差
使用公差は,検定公差の2倍とする。
B.3
性能に係る技術上の基準
性能に係る技術上の基準は,6.3のb),d) 及びf) 並びに6.4による。
B.4
性能に関する検査の方法
性能に関する検査の方法は,7.3による。
B.5
器差検査の方法
器差検査の方法は,A.7.4.2による。ただし,“器差検定”は“器差検査”に置き換える。
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附属書C
(参考)
感温液に水銀を用いた体温計の取扱い
C.1 一般
この附属書は,感温液に水銀を用いた体温計(以下,水銀体温計という。)の取扱い方法としての注意事
項及び水銀が体温計から外側に出た場合の処置の方法について記載したものである。
注記 感温液に水銀を用いた体温計は“水銀による環境の汚染の防止に関する法律”及び輸入貿易管
理令の規定によって2020年12月31日以降,製造・輸入が禁止されるが,その使用に規制はな
く,今後も使用され又は廃棄されるため留意事項をまとめた。
C.2 水銀体温計の破損についての注意
a) 一般的に水銀体温計は,ガラスが破損すると鋭利な破片となる。破片は十分に注意して取り扱う。
b) 体温計は常に丁寧に取り扱い,特に落とすなど毛細管及び球部を破損させないよう注意し,毛細管及
び球部に破損がないかを日常的に目視点検する。破損が発見された場合には使用を中止し,体温計を
廃棄する。また,廃棄する場合には,各自治体の指示に従い処分する。
c) 口中舌下での検温は,球部を舌の付け根部に差し込み,舌で押さえ密着させてそのまま口を閉じる。
検温中は口を開けたり,体温計をかまないようにする。
d) 暖房器具の近く,直射日光が当たる場所などは,水銀が膨張して破損することがあるので,一般用は
42 ℃以上又は婦人用は38 ℃以上になるところには体温計を置いてはならない。
e) 球部を強く擦ったり,裸火などで加熱するようなことは球部が破損してけがをしたり,又は水銀が飛
散し,蒸気を吸引する可能性がある。
C.3 水銀が水銀体温計から出た場合の処置方法
a) 誤って口中で球部を割った場合には,直ちに水を含み,口の中のガラス片及び水銀を十分に洗い出す。
体温計に使用されている金属水銀は誤って飲み込んでもほとんど体外へ排出されるが,処置は医師に
相談するのがよい。
b) 水銀がこぼれると,人体にも環境にも有害である。速やかにスポイトなどで残らず吸い取って密封し
た容器に収める。回収した水銀は,廃棄物として各自治体の指示によって処分する。
参考文献 JIS B 7414 ガラス製温度計