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T 0902

:2014

(1)

目  次

ページ

序文  

1

1

  適用範囲  

1

2

  引用規格  

2

3

  用語及び定義  

2

4

  要求事項及び推奨事項  

3

4.1

  音の種類  

3

4.2

  フレーズの時間長さ  

6

4.3

  繰返し頻度  

6

4.4

  信号発生装置  

6

4.5

  スピーカ  

7

4.6

  周辺環境  

9

附属書 A(参考)参考文献  

10


T 0902

:2014

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まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)

及び独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべき

との申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


   

日本工業規格

JIS

 T

0902

:2014

高齢者・障害者配慮設計指針−

公共空間に設置する移動支援用音案内

Guidelines for older persons and persons with disabilities-

Auditory guides in public space for mobility assist

序文 

視覚に障害のある人が単独で歩行・移動する場合,移動支援用音案内は,移動目標の位置(方向及び距

離)及び概要(経路,状態など)を把握するために有効な支援方法である。その目的のために,移動支援

用音案内は,移動及び施設利用に関わる誘導(特定の目標地点に利用者を導く。

,注意喚起(利用者の注

意を引く。

,位置(誘導はせず利用者に対象の位置だけを知らせる。

,及び状態(周辺環境の状態を利用

者に知らせる。

)に関する情報のいずれか又は複数の組合せで構成される。

この規格は,主に視覚に障害のある人のための支援技術として使用される公共空間における移動支援用

音案内について,使用される音の特性,音発生装置の性能,スピーカの使用方法などについて規定し,移

動支援用音案内の機器の性能確保に関する指針として作成したものである。

適用範囲 

この規格は,音声及び非音声音の両方又は一方だけを含む音によって,高齢者・障害者(特に視覚に障

害のある人)を含む音の案内の利用者(以下,利用者という。

)の円滑かつ安全な歩行・移動を促進するた

め,誘導,注意喚起,位置及び状態に関する情報提供を行う移動支援用音案内の音の特性,機器の設計及

び使用方法について規定する。

この規格が規定する移動支援用音案内の機器は,公共空間に設置し,単独又は複数の装置が連携して動

作する。

この規格が規定する移動支援用音案内は,利用者の歩行・移動の円滑及び安全性を高めることを目的と

するが,過度な音案内を行うことによって発生する可能性がある周囲の音環境への影響についても配慮し

ている。

なお,この規格が規定する移動支援用音案内用の機器は,公共空間に設置するものを対象とする。ここ

で公共空間とは,旅客鉄道駅,空港,港,バスターミナルなどの公共交通施設,公官庁,図書館,公民館,

公園などの公共施設,及び公共(交通)施設と公共(交通)施設とをつなぐ公共の経路である。公共交通

施設及び公共施設については,それらの敷地と建物内との双方を含む。

この規格では,非常ベルの音など生命の安全を確保するための警報を目的とする音は含まない。また,

JIS T 0901

に規定する,利用者が携帯する情報端末などと通信することによって動作する移動支援用音案

内機器は含まない。


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引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS C 5532

  音響システム用スピーカ

JIS T 0102

  福祉関連機器用語[支援機器部門]

JIS T 0901

  高齢者・障害者配慮設計指針−移動支援のための電子的情報提供機器の情報提供方法

JIS Z 8106

  音響用語

JIS Z 8731

  環境騒音の表示・測定方法

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 5532JIS T 0102JIS T 0901JIS Z 8106 及び JIS Z 8731

によるほか,次による。

3.1 

音声 

言語的情報を伝える可聴音。

3.2 

非音声音 

音声以外の可聴音。

3.3 

移動支援用音案内 

音声及び/又は非音声音によって,利用者が歩行・移動するときの有益な情報を提供する案内。

3.4 

音声案内 

移動支援用音案内のうち,音声だけで構成される案内。

3.5 

非音声音案内(ひおんせいおん  あんない) 

移動支援用音案内のうち,非音声音だけで構成される案内。

注記 1  読み方は“ひおんせいおん  あんない”であり,“ひおんせい  おとあんない”ではない。

注記 2  国土交通省ガイドライン(附属書 [1]参照)では,“音響案内”という。

3.6 

フレーズ 

移動支援用音案内を構成する音の組合せの最小単位。音声案内の場合,1 単文(一組の主語述語によっ

て構成される文)を示す。非音声音案内の場合,連続した音の一塊を示す。

注記  移動支援用音案内は,通常,単一フレーズ又は異なる複数のフレーズの組合せを一定の時間間

隔で繰り返すことによって行われる。

3.7 

信号波 

移動支援用音案内を構成する音の波形。

3.8 

調波音 


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調波によってだけ構成される音であり,基本周波数成分及びその自然数倍の周波数をもつ倍音成分によ

って構成される音。

例  音声のうちの母音,音名をもつ楽音,三角波,く(矩)形波,のこぎり波などのように周期的波

形をもつ音。

注記  “調波”の定義は JIS Z 8106 を参照。

3.9 

チャイム音 

一つ以上の減衰振動する音で構成される非音声音。

例  聴感上,“ポン”,“ピンポン”,“キンコンカン”などの擬音語で表現できるもの。

3.10 

自然現象などから類推できる音 

聴感上,自然現象として存在する音に類似した非音声音。また,物理特性的に自然現象の音に対する類

似性は低くても,人間の認知特性に基づき,直感的な理解が得られるような非音声音。

例 1  鳥の鳴き声に類似した音を用いる。

例 2  トイレなど水に関係する場所であることを直感的に理解できるようにするため,水の流れる音

に類似した音を用いる。

3.11 

信号発生装置 

スピーカに供給する電気的アナログ波形を生成し出力する装置。

3.12 

スピーカの放射方向 

スピーカの基準軸上の,放射された音波の進行方向。

注記  スピーカの基準軸については JIS C 5532 を参照。

3.13 

主要動線 

該当する公共空間内において一般的に想定されている利用者の頭部中心(歩行路面からの高さは 1.5 m

とする。

)の移動軌跡。

3.14 

誘導動線 

該当する公共空間内において移動支援用音案内によって誘導が行われた場合に想定される利用者の頭部

中心(歩行路面からの高さは 1.5 m とする。

)の移動軌跡。

3.15 

誘導点 

移動支援用音案内によって利用者を誘導する目標となる,誘導動線上の点。

例  階段,エスカレータ,エレベータなどの目標物。

要求事項及び推奨事項 

4.1 

音の種類 

4.1.1 

一般 

移動支援用音案内で使用する音の種類は,音声案内及び非音声音案内の二つがある。


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4.1.2 

音声案内 

音声案内は,次による。

a) 

音声案内の種類  音声案内で使われる音声の種類は,次のように区分する。移動支援用音案内の設計

に音声の種類を考慮することが有効な場合がある。

1)

ヒトが自然に発話した音声又は合成音声による区分。

2)

男声,女声又は性別不明の音声による区分。

3)

録音再生又は実時間(リアルタイム)発声による区分。

b) 

音声案内の発話速度  音声案内の発話速度は,1 s に 4 音節から 5 音節までの範囲が望ましい。ただし,

周囲の反射,残響又は暗騒音によってこの範囲の発話速度が聴取困難な場合は,音声内容が聴き取れ

る範囲に調整する。

注記 1  日本語の場合,音節数はモーラ数で数える。

注記 2  一般に反射,残響,又は暗騒音が大きい場合,発話速度が速いと了解度が低くなる。

c) 

音声案内が提供する情報  音声案内を利用者の誘導に使用する場合,利用者に提示する情報は,次の

内容を含んでいなければならない。

1)

誘導する目標の種類

2)

誘導する目標の方向

3)

誘導する目標が動いている場合,その動きの様子及び方向

例 1  “男子トイレは向かって右です。”

例 2  “光町方面ホーム行き下りエスカレータです。”

注記 3  上記の例 及び例 の案内内容は,国土交通省ガイドライン(附属書 A [1]参照)で推奨し

ている音声案内の文面と一致するものではない。

d) 

注意喚起音  音声案内の前に,注意喚起の目的で非音声音を使用すると有効な場合がある。その場合,

4.1.3

の要求事項及び推奨事項を満たす非音声音を使用する。

例 3  “(水の流れを模した非音声音の後)トイレです。”

4.1.3 

非音声音案内 

非音声音案内は,次による。

a) 

非音声音案内の種類  非音声音案内に用いる音は,チャイム音,自然現象などから類推できる音,そ

の他の音の 3 種類に区分する。移動支援用音案内の設計において,これら 3 種類の音の特性の差異を

考慮して利用すると有効な場合がある。非音声音案内に用いる音は,次の特性をもつ。

1)

チャイム音は,

図 に示す時間構造をもつ。チャイム音の一つの“部分”は,立上がり時間の短い

開始部とその直後に緩徐に起こる減衰部とをもつ。チャイム音の一つのフレーズは,一つ以上の“部

分”によって構成される。チャイム音は,利用者に正しい位置情報を提供するために,次の要求事

項及び推奨事項を満たす必要がある。

1.1)

チャイム音の各“部分”の開始部(

図 1“部分”1∼の各包絡線の開始点から最大値までの区間)

は,0 ms より大きく,かつ,5 ms 以下でなければならない。

1.2)

チャイム音の各“部分”の減衰部は,振幅がおおむね時間と共に単調減少するものでなければな

らない。

1.3)

チャイム音の各“部分”の信号波は,単一の調波音又は異なる基本周波数をもつ複数の調波音を

組み合わせた音でなければならない。また,僅かな周波数ゆらぎ又は振幅ゆらぎ若しくはその両

方をもつことが望ましい。


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例 1  単一の調波音は,三角波,のこぎり波などがある。

例 2  異なる基本周波数をもつ複数の調波音の合成音で,僅かな周波数ゆらぎ,及び振幅ゆらぎをも

つ音には,楽器の和音などがある。

時間

フ レ ーズ

包絡線

搬送波

開始部

減衰部

音圧

部分1

部分2

部分3

部分

n

図 1−チャイム音の時間構造 

2)

自然現象などから類推できる音は,利用者に正確な位置情報を提供するために,次の要求事項及び

推奨事項を満たす必要がある。

2.1)

音案内が設置される周囲の自然現象の音との違いを明確に区別できる音にしなければならない。

また,実在する自然音との違いを明確に区別できる音にしなければならない。

2.2)

自然現象などから類推できる音は,原音信号に残響成分が含まれないことが望ましい。

3)

その他の音は,チャイム音,自然現象などから類推できる音に該当しない音である。

例 3  音楽,サウンドロゴなどは,チャイム音,自然現象などから類推できる音に該当しない音

である。

b) 

非音声音案内の信号波の周波数特性  非音声音案内に用いる音に対する信号波の周波数特性の要求事

項及び推奨事項は,次の特性とする。

1)

最も低い周波数成分は,100 Hz 以上 1 kHz 以下でなければならない。

注記 1  波形が調波音である場合,最も低い周波数成分とは,その調波音の基本周波数に等しい。

2)

最も高い周波数成分は,8 kHz 以上でなければならない。


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注記 2  純音などの狭い周波数帯域の音は,上記 1)2)  両方の条件を同時に満たさず,非音声音案

内としての要求事項を満たさない。

3)

調波音を使用する場合,基本周波数成分から最も高い周波数成分までの周波数範囲の調波を全ても

つことが望ましい。また,調波音を使用しない場合,可能な限り多くの周波数成分をもつことが望

ましい。

なお,調波音を使用しない場合,周囲の雑音との区別がつくような音色とすることが望ましい。

例 4  のこぎり波は基本周波数成分とその自然数倍周波数成分との調波を全て所有している。

注記 3  三角波及びく(矩)形波は,基本周波数成分とその奇数倍周波数成分との調波しかもたず,

偶数倍周波数成分の調波がないので,3)  で規定する非音声音案内としての推奨事項を満た

さない。

4)

チャイム音の信号波については,上記 1)3)  に加え,a)  の 1.3)  を満たすものとする。

4.2 

フレーズの時間長さ 

利用者が移動しながら聴取することが想定される場合,利用者が移動支援用音案内の内容を把握しやす

くするために,一つのフレーズの時間長さは 5 s 以内が望ましい。利用者が静止して聴取することが想定

される場所では,5 s を超えることができる。

注記  ヒトが歩行する速さは約 1.2 m/s と見積もられるので,音声案内のフレーズの開始から終了まで

の時間が 5 s の場合,その間に歩行者は約 6 m 移動することになる。フレーズの時間長さが長

くなるほど,利用者はフレーズの全体を聞くことなく通過する可能性が高くなる。

4.3 

繰返し頻度 

利用者が移動しながら聴取することが想定される場合,利用者が移動支援用音案内の内容を聞き落とし

て通過することを防ぐために,フレーズの終了時点から次のフレーズの開始時点までの時間間隔が 2 s 以

下で繰り返されることが望ましい。

例 1  チャイム音を用いて“ピンポン(その後 2 s の無音区間)”を繰り返す。

例 2  “向かって右が男子トイレです(その後 0 s の無音区間)。左が女子トイレです(その後 2 s の

無音区間)

”を繰り返す。

なお,次の a)d)  のいずれかの場合に限り,必要最低限の範囲で 2 s を超えることができる。

a)

利用者が,静止した状態で聴取することが想定される場所の場合。

b)

音声案内について,移動中に複数回のフレーズの明確な聴取が可能である場合。

c)

4.6 b)

に規定した,複数の移動支援用音案内の発音時間を重ならないようにする必要がある場合。

d)  4.6 d)

に規定した感知器によって動作する場合。

注記  ヒトが歩行する速さは約 1.2 m/s であるので,音声案内のフレーズの終了から次の開始までの時

間が 2 s の場合,その間に歩行者は約 2.4 m 移動することになる。終了から次の開始までの無音

の時間が長くなるほど,利用者は移動支援用音案内の内容の一部を聞き落とし通過する可能性

が高くなる。

4.4 

信号発生装置 

信号発生装置の特性は,次による。

a) 

周波数帯域  信号発生装置は,4.1 で規定した周波数帯域の音を出力できなければならない。

b) 

量子化ビット数  信号発生装置は,デジタル方式によって移動支援用音案内を発生,録音,再生又は

伝送する場合,音の信号の量子化ビット数は,8 bit 以上を用いなければならない。また,16 bit 以上

であることが望ましい。


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注記  量子化ビット数は,デジタル方式によって信号波を数値化する場合のビット数(2 進数で表

現した場合の桁数)である。

c) 

圧縮  信号発生装置は,デジタル方式によって移動支援用音案内を録音,再生又は伝送する場合で,

かつ,音信号のデジタルデータを圧縮して記録する場合,著しく音質が劣化しないような圧縮率を使

用する。

4.5 

スピーカ 

スピーカは,次による。

a) 

周波数特性  スピーカは,4.1 で規定した周波数帯域の音を出力できなければならない。

b) 

設置位置及び設置方向  設置位置及び設置方向は,次による。

1)

スピーカの設置高さは,歩行路面から 0.8 m 以下又は 2.4 m 以上の高さとする。ヒトの音源定位特

性の観点から,高さの上限は 3.0 m 以下が望ましい。公共空間の構造上の理由で 2.4 m 以上の高さ

に設置することが困難な場合,可能な範囲で高い位置に取り付けることが望ましい。また,設置空

間の構造上の理由で 3.0 m 以下の高さにスピーカを設置することが困難な場合,可能な範囲で最も

低い位置に取り付けることが望ましい。

注記 1  歩行路面から 0.8 m∼2.4 m の高さの範囲で誘導線上にスピーカが存在すると,利用者が通

過するときに頭部がスピーカに衝突するか,頭部とスピーカとが接近して,スピーカの音

量が聴覚に悪影響を与える可能性がある。

2)

移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合,スピーカの設置位置は,誘導点又はその近傍を

通る鉛直線上でなければならない。ただし,公共空間の構造上の理由でそのような設置が困難な場

合,できるだけ当該空間に近い位置に設置することが望ましい。

3)

スピーカの設置方向は,そのスピーカの基準軸がそのスピーカの放射方向において主要動線又は誘

導動線と交点をもつように設置する。ただし,公共空間の構造上の理由で交点をもたせることが困

難な場合,できるだけ基準軸を主要動線に近づけることが望ましい。

4)

移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合で,誘導動線と主要動線とが一致しているときの

スピーカの設置方向は,その基準軸が主要動線と 30°∼45°の角をなすことが望ましい(

図 を参

照)

5)

移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合で,誘導動線と主要動線とが一致していないとき

のスピーカの設置方向は,その基準軸と主要動線との交点が,誘導動線と主要動線との交点に一致

することが望ましい。ただし,公共空間の構造上の理由で交点に一致させることが困難な場合,で

きるだけ交点に近づけることが望ましい(

図 を参照)。

注記 2  誘導点は,図 及び図 の例のように,スピーカの放射角内に入らない場合がある。しか

し,スピーカは一般的に放射角外にも音を放射するので,利用者の頭部中心より高い位置

に設置したスピーカを水平方向に向けない限り,誘導点においても音を聴取し,音源を定

位することが可能である。利用者は,聴取した移動支援用音案内の音像が頭部上方向にあ

ることを知り,それに定位することによって自分が誘導点に到達したことを知ることがで

きる。

注記 3  狭指向性スピーカを使用する場合,誘導点においても移動支援用音案内の聴取が可能であ

ることを確認してから使用するのがよい。狭指向性スピーカでは放射角の範囲外では音の

聞き取りが難しい。また,放射角の範囲内では距離による音量変化が一般のスピーカより

小さいことに留意する必要がある。


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図 2−誘導動線と主要動線とが一致する場合のスピーカの設置例 

図 3−誘導動線と主要動線とが一致しない場合のスピーカの設置例 

c) 

周囲の構造  スピーカの基準軸上で,かつ,スピーカから主要導線までの範囲内に,音の伝搬に影響

を与える構造物が存在してはならない。また,スピーカの放射角の範囲内で,かつ,スピーカからの

距離 3 m 以内の領域内に,音の伝搬に影響を与える構造物が存在しないことが望ましい。

例 1  音の伝搬に影響を与える構造物には,看板,標識,柱,壁などがある。

d) 

外観  スピーカ又はスピーカを内蔵したきょう(筐)体は,それが移動支援用音案内を発する装置で

あることを示す外観をもつことが望ましい。

例 2  視覚障害者の国際シンボルマークをきょう体及び設置位置近傍の壁又は天井に貼付する。


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注記 4  移動支援用音案内を発する装置であることを示す外観の採用及びマーク表示によって,視

覚障害者などの利用への配慮を促すことができる。

4.6 

周辺環境 

周辺環境は,次による。

a) 

音量  移動支援用音案内の音量は,スピーカの基準軸と利用者の誘導動線との交点においては,周囲

の暗騒音レベルに対して,移動支援用音案内が 10 dB 以上大きくなければならない。さらに,周囲の

暗騒音レベルに対して 10 dB 大きい値に自動的に調整する装置を用いることが望ましい。ただし,装

置周辺の音環境への不都合が懸念される場合,移動支援用音案内を必要とする複数の利用者によって,

適正な効果が得られることを検証した上で,音圧レベルの差を 10 dB よりも小さくすることができる。

なお,音圧レベルの計測方法は周波数重み付け特性 A を用いることとし,移動支援用音案内の音圧

レベルは指数形時間重み付け特性 FAST (F) の最大値,周囲の暗騒音の音圧レベルは指数形時間重み

付け特性 SLOW (S)  の最大値を用いて計測する。

例 1  車両の通過音など突発的な騒音がない時において周囲の暗騒音レベルを計測する。移動支援

用音案内の音圧レベルは,この値に対して 10 dB 以上大きくなるように設定する。

例 2  混雑時,閑散時などの時間帯を決め,それぞれの時間帯において周囲の暗騒音レベルを計測

する。それぞれの時間帯における移動支援用音案内の音圧レベルは,この値に対して 10 dB

以上大きくなるように設定する。

例 3  周囲の暗騒音レベルの変化に合わせて,自動的に音量を 10 dB 高くなるように調整する装置

を用いる。

注記  暗騒音レベルに対して移動支援用音案内の音圧レベルが十分な大きさをもっていない場合,

利用者が移動支援用音案内を有効に利用することができない。また,移動支援用音案内の音

圧レベルが過大である場合,移動支援用音案内が周囲の音環境,スピーカ,又は周辺を通過

する人々の聴覚に影響を与える可能性がある。

b) 

複数の移動支援用音案内を近傍に設置する場合  同じ又は異なる内容の複数の移動支援用音案内を同

時に聴取できる場所が存在する場合,互いに発音する時間が重ならないことが望ましい。また,同じ

種類の非音声音案内が互いに近傍に設置される場合,異なる高さ又は音色の非音声音案内を使用する

ことが望ましい。その場合,それぞれの高さ又は音色が何を案内しているのかを,利用者に周知する

情報提供が必要である。

例 4  異なる鉄道事業者が乗り入れている駅で,それぞれの事業者の有人改札におけるチャイム音

を使用する場合,事業者ごとに異なる高さ,音色又はリズムのチャイム音を使用する。また,

どの高さ,音色又はリズムがどの事業者のチャイム音なのかを,該当駅のウェブサイト,文

書などで利用者に周知する。

c) 

反射及び残響がある場合  移動支援用音案内の設置に当たって,反射及び残響は可能な限り発生しな

いように配慮することが望ましい。また,反射及び残響によって移動支援用音案内の聴取が困難とな

る場合,反射及び残響を削減するために天井及び壁面に吸音材を取り付けるなどの対策を講じること

が望ましい。

d) 

感知器による能動的動作  移動支援用音案内は常時動作していることが望ましい。ただし,利用者が

いない期間が存在し,かつ,その期間内に移動支援用音案内を実施すると周囲の音環境に影響を与え

る可能性がある場合,人感センサなどの感知器によって移動支援用音案内を利用することが可能な領

域を利用者が通行している期間にだけ移動支援用音案内を動作させることができる。


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附属書 A

(参考) 
参考文献

[1]

国土交通省総合政策局安心生活政策課監修,バリアフリー整備ガイドライン,交通エコロジー・モビ

リティ財団,

(2013)

[2]  ISO 7240-16:2007

,Fire detection and alarm systems−Part 16: Sound system control and indicating equipment

[3]  ISO 11429:1996

,Ergonomics−System of auditory and visual danger and information signals

[4]  ISO 15006:2011

, Road vehicles − Ergonomic aspects of transport information and control systems −

Specifications for in-vehicle auditory presentation

[5]  ISO/TR 16352:2005

,Road vehicles−Ergonomic aspects of in-vehicle presentation for transport information

and control systems

−Warning systems

[6]  JIS Z 8503-6:2007

  人間工学−コントロールセンターの設計−第 6 部:コントロールセンターの環境

[7]  IEC 60073:2002

,Basic and safety principles for man-machine interface, marking and identification−Coding

principles for indicators and actuators

[8]  ISO 23600:2007

,Assistive products for persons with vision impairments and persons with vision and hearing

impairments

−Acoustic and tactile signals for pedestrian traffic lights

[9] J.

Blauert

,森本政之,後藤敏幸,Spatial Hearing  空間音響(鹿島出版会,東京,1986)