日本工業規格
JIS
S
3105
-1993
携帯用保冷具
Portable cooling pack
1.
適用範囲 この規格は,主に家庭用の電気冷蔵庫などで冷却し,内包された内容物の蓄熱効果によっ
て保冷又は冷却するもののうち,繰り返し使用できる携帯用保冷具(以下,保冷具という。
)について規定
する。ただし,氷の代替品など飲食物(加熱,洗浄などの加工を施すものを除く。
)に直接接触して使用す
るもの,機器に附属しているもの,及び化学反応による保冷又は冷却効果を伴うものを除く。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS Z 8401
数値の丸め方
2.
品質
2.1
外観 保冷具は,容器のきず,破れなどの異常がなく,内容物の漏れがあってはならない。
2.2
強度 保冷具は,4.2 によって試験したとき,破れ及び内容物の漏れがあってはならない。
2.3
耐寒性 保冷具は,4.3 によって試験したとき,異常があってはならない。
2.4
保冷性 保冷性は,次のとおりとする。
(1)
保冷時間 保冷時間は,4.4(1)によって試験したとき,表示値以上でなければならない。
(2)
保冷熱量 保冷熱量は,4.4(2)によって試験したとき,表示値に対して±10%以内でなければならない。
3.
材料 保冷具に使用される容器の材料は,食品衛生法に基づく食品・添加物などの規格基準に適合し
なければならない。
また,内容物は,人体に有害なものを使用してはならない。
4.
試験方法
4.1
数値の丸め方 試験結果は,規定の数値より一けた下の位まで求めて,JIS Z 8401 によって丸める。
4.2
強度 強度の試験は,次のとおりとする。
(1)
耐圧試験 常温の試料を,厚さ 30mm 以上の平滑なかし板又はこれと同等の堅さのある板に横にして
置き,
図 1 に示す大きさの押具(
1
)
を試料及び押具の長手方向が互いに直角になるように試料の上面中
央部に置き,押具を含めて 700N となるような静荷重を 1 分間かけた後,破れ及び内容物の漏れの有
無を調べる。
注(
1
)
押具は,試料に接する表面を平滑に仕上げたもので,荷重によって変形を生じない堅固なもの
であること。
備考 耐圧試験に用いる試験機は,当分の間,荷重が従来単位によって表示されたものを使用しても
よい。この場合,押具を含めて加える荷重は,72kgf とする。
2
S 3105-1993
図 1 耐圧試験
(2)
落下衝撃試験 常温の試料,及び表示の冷却方法によって冷却した試料を,厚さ 30mm 以上の平滑な
かし板又はこれと同等の堅さのある板に,
1m
の高さから,
図 2 に示す 3 方向に各々1 回落下させた後,
破れ及び内容物の漏れの有無を調べる。ただし, 冷却したものを落とすと破損するおそれがあるので
注意する旨の表示
が付けられているものについては,常温の試料だけについて行う。
図 2 落下衝撃試験
(3)
耐熱試験 80℃の温水に常温の試料を 10 分間浸した後,破れ及び内容物の漏れの有無を調べる。ただ
し,80℃を超える耐熱温度の表示があるものは,その温度によるものとする。
4.3
耐寒性試験 耐寒性の試験は,温度−30±2℃の雰囲気中で 12 時間冷却した試料を,温度 30℃以上
で 6 時間以上放置した後,異常の有無を調べる。
4.4
保冷性試験 保冷性の試験は,次のとおりとする。
(1)
保冷時間 表示の冷却方法によって冷却した 3 個の試料について,30±2℃,相対湿度 (65±10) %の
雰囲気中で,10cm 以上の高さの脚の付いた枠に 246 tex×3 の綿糸又はナイロン製の釣糸 60 号(径約
1.28mm
)を縦横約 10mm 間隔で張った網上に使用表面が上になるように 1 個ずつ試料を載せ,試料上
面中央部の表面温度が 10℃に達するまでの時間を測定し,その 3 個の試料の平均値を保冷時間とする
(
図 3 参照)。ただし,試験は,可能な限り無風状態とし,試料の全面から放熱できる方法で行うもの
とする。
3
S 3105-1993
図 3 保冷時間試験
(2)
保冷熱量
(a) 1
個の試料から約 20g の内容物を採取し,ポリエチレン製の袋に入れ密封し,調製試料とする。
(b)
調製試料を,−18±2℃で 12 時間以上冷却する。
(c) 20
±2℃,相対湿度 (65±10) %の雰囲気中において,
図 4 に示すように,水温 20℃の水 400g を入れ
たまほうびんの中に調製試料を入れ,かくはんする。
(d)
平衡状態に達したときの水の温度を測定する。
(e) (a)
〜(d)の操作を 3 個の試料について行い,次の式によって各試料ごとに個々に保冷熱量を算出し,
その平均値を保冷熱量とする(
2
)
。
注(
2
)
内容物が2層以上に分かれている試料は,3個の試料についてそれぞれの層別に測定を行い,層
別の保冷熱量を算出し,その和を保冷熱量とする。
(
) (
)
2
.
4
2
1
0
1
0
×
×
×
m
m
m
m
t
t
Q
+
−
=
ここに,
Q
:
各試料ごとの保冷熱量(J/袋,個又は缶)
t
0
:
試験前の水温 (℃)
t
1
:
平衡状態に達したときの水温 (℃)
m
0
:
まほうびんに入れる水の質量 (g)
m
1
:
まほうびん,かくはん機など容器全体の水当量 (g) (
3
)
m
2
:
採取試料の質量 (g)
m
:
内容物の質量 (g)
4.2
:
換算係数
注(
3
)
採取した試料に代えて約20g の水について(a)〜(d)の操
作を3回行い,次の式によって各試料ごとの容器全体の
水当量を算出し,その平均値を m
1
とする。ただし,こ
の測定は,必要に応じて行うものとする。
(
)
(
)
b
x
b
x
a
a
a
a
x
4.2
4.2
0
334
0
1
.
2
m
t
t
t
m
m
t
m
m
−
−
−
+
=
×
×
×
×
+
−
×
×
ここに,
m
x
:
各試料ごとの容器全体の水当量 (g)
m
a
:
氷の質量 (g)
m
b
:
まほうびんの水の質量 (g)
t
a
:
初めの氷の温度 (℃)
4
S 3105-1993
t
b
:
初めの水温 (℃)
t
x
:
平衡状態に達したときの水温 (℃)
2.1
:
氷の比熱 (J/g・℃)
4.2
:
水の比熱 (J/g・℃)
334
:
氷の融解熱 (J/g)
図 4 保冷熱量試験
5.
検査方法 保冷具は,2.について検査を行う。この場合,検査は,全数検査又は合理的な抜取検査方
式によって行う。
6.
表示 保冷具は,本体又は最小包装単位ごとに,次の事項を表示しなければならない。ただし,(4)に
ついては,本体に表示しなければならない。
(1)
冷却方法(温度及び時間)
(2)
保冷性能
(a)
保冷時間(
4
)
注(
4
)
保冷時間は,10分単位で表示するものとし,二つ以上の使用表面のあるものは,そのうち一つ
の表面の保冷時間を表示してもよい。
(b)
保冷熱量(J/袋,個又は缶)
(3)
製造年月又はその略号
(4)
製造業者名
7.
取扱い上の注意事項 保冷具の取扱い上の注意については,本体又は最小包装単位ごとに,次の事項
を表示しなければならない。ただし,該当しない事項については,省略することができる。
なお,その表現は,記載事項の主旨を変えない範囲であれば,自由とする。
(1)
堅い物,とがった物にぶつけないようにすること。
(2)
万一,破れて中身が漏れた場合には,まず布などでふき取り,その後水で洗い流すこと。
(3)
食べてはいけないこと。
(4)
電気冷蔵庫から出しておくときは,冷暗所に保管すること。
5
S 3105-1993
(5)
冷え過ぎる場合は,タオルなどで巻いて使用すること。
(6)
冷却したものを落とした場合は,折れたり,破れたりする場合があるので注意すること。
(7)
ドライアイスで冷却しないこと。
(8)
−30℃以下にしないこと。
(9)
80
℃以上にしないこと。
(10)
廃棄の方法
例 プラスチックごみとして廃棄してください。
日用品部会 携帯用保冷具専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
塚 野 隆
高分子素材センター
高 松 明
通商産業省生活産業局
倉 剛 進
工業技術院標準部
卜 部 啓
工業技術院物質工学工業技術研究所
上 野 雅 雄
通商産業省通商産業検査所
泉 ルイズ
関西主婦連合会
甲 斐 麗 子
主婦連合会
瀬 尾 宏 介
国民生活センター
古 川 哲 夫
財団法人日本消費者協会
森 谷 敦 子
東京都地域婦人団体連盟
横 田 倫 子
消費科学連合会
齋 藤 有 常
日本百貨店協会
前 島 明 宏
日本チェーンストア協会
市 川 清 司
日本軽金属株式会社
海老原 正一郎
株式会社白元
小板橋 義 朗
キャンピングガス株式会社
杉 山 邦 夫
旭電化工業株式会社
山 本 春 美
ピジョン株式会社
吉 田 忠 夫
株式会社ダンロップホームプロダクツ
(事務局)
天 野 正 喜
工業技術院標準部繊維化学規格課
平 塚 智 章
工業技術院標準部繊維化学規格課