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R 1689:2018  

(1) 

目 次 

ページ 

1 適用範囲 1 

2 引用規格 1 

3 用語及び定義  1 

4 原理 3 

5 測定装置 3 

6 試料 5 

6.1 形状  5 

6.2 反射膜の成膜  5 

7 測定手順 6 

7.1 薄膜の膜厚  6 

7.2 環境温度  6 

7.3 温度履歴曲線  6 

8 熱拡散率の算出  6 

9 報告書 7 

附属書A(参考)測温用レーザ発光装置に連続光を用いる装置の構成例  9 

附属書B(参考)加熱用パルス光を2分割し,一方を加熱用もう一方を測温用のパルス光として用いる装

置の構成例  10 

附属書C(参考)測温用レーザ発光装置にパルス光を用いる装置の構成例  12 

附属書D(参考)加熱用パルス光のパルス幅選択の目安  13 

附属書E(参考)加熱用パルス光の照射による試料の温度上昇の目安  15 

附属書F(参考)最小二乗法に用いる単層膜の温度応答の理論式  16 

附属書G(参考)加熱用パルス光の照射時刻原点t0の決定手順  18 

附属書H(参考)標準物質  19 

附属書I(規定)温度履歴曲線の負の傾きの補正法  20 

附属書J(規定)金属反射膜を施した場合の面積熱拡散時間法による熱拡散率の算出方法  22 

附属書K(参考)界面熱抵抗の影響  23 

 

 


 

R 1689:2018  

(2) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本

ファインセラミックス協会(JFCA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して

日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した

日本工業規格である。 

これによって,JIS R 1689:2011は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格に従うことは,次の者の有する特許権等の使用に該当するおそれがあるので,留意する。 

− 氏名:国立研究開発法人産業技術総合研究所 

− 住所:東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 

1) 特許 第3252155号“サーモリフレクタンス法による熱拡散率測定方法” 

2) 特許 第4817328号“熱物性値測定方法” 

上記の,特許権等の権利者は,非差別的かつ合理的な条件でいかなる者に対しても当該特許権等の実施

の許諾等をする意思のあることを表明している。ただし,この規格に関連する他の特許権等の権利者に対

しては,同様の条件でその実施が許諾されることを条件としている。 

この規格に従うことが,必ずしも,特許権の無償公開を意味するものではないことに注意する必要があ

る。 

この規格の一部が,上記に示す以外の特許権等に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本工業標

準調査会は,このような特許権等に関わる確認について,責任はもたない。 

なお,ここで“特許権等”とは,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権をいう。 

 

 


 

  

日本工業規格          JIS 

 

R 1689:2018 

 

ファインセラミックス薄膜の熱拡散率の測定方法−

パルス光加熱サーモリフレクタンス法 

Determination of thermal diffusivity of fine ceramic films  

by pulsed light heating thermoreflectance method 

 

適用範囲 

この規格は,基板上に成膜された厚さが100 nm〜数μmの均質なファインセラミックス薄膜の室温付近

の膜厚方向の熱拡散率の測定方法のうち,パルス光加熱サーモリフレクタンス法について規定する。 

 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS B 0601 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメ

ータ 

JIS B 0651 製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性 

JIS C 1602 熱電対 

JIS R 1600 ファインセラミックス関連用語 

JIS R 1611 ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法 

JIS R 1636 ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式表面粗さ計による測定方法 

 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0601及びJIS R 1600によるほか,次による。 

3.1 

試料 

基板及びその基板上に成膜された薄膜で構成される測定対象。 

3.2 

薄膜の裏面 

加熱用パルス光の波長に対し透明な基板上に作製された薄膜が基板と接する面。 

3.3 

薄膜の表面 

薄膜が空気と接する面。 

3.4 

温度履歴曲線 

パルス加熱によるファインセラミックス薄膜の表面温度の時間変化を表示した曲線(図1参照)。サーモ


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リフレクタンスの効果による温度に依存した光の反射率変化は物質によって異なるため,図1の縦軸の温

度は任意単位として用いる。 

3.5 

環境温度 

ファインセラミックス薄膜又はその近傍の温度。 

3.6 

最高温度上昇(ΔTmax) 

図1の温度履歴曲線における最大値。 

3.7 

パルス幅(τp) 

レーザパルス光の出力の時間変化曲線において,最大値の半値以上の出力が保持される時間。 

3.8 

照射直径 

ファインセラミックス薄膜へ照射する加熱用パルス光及び測温用レーザ光の直径。光強度がガウス分布

をもつ場合,最大強度の1/e2となる位置の包絡線で表される円の直径。 

3.9 

トリガ信号 

温度応答測定回路に加熱用パルス光の発光を伝える信号。 

3.10 

パルス照射時刻原点(t0) 

温度履歴曲線において時刻が0の点(t0=0)であり,加熱用パルス光が薄膜に照射された時刻に対応さ

せる。 

3.11 

ハーフタイム(t1/2)(s) 

温度履歴曲線においてパルス照射時刻原点から最高温度上昇ΔTmaxの二分の一に達するまでの時間。 

3.12 

熱拡散の特性時間(τ)(s) 

厚さdで熱拡散率αのファインセラミックス薄膜の裏面から表面まで熱が拡散するときτ=d 2/αによっ

て定義される時間。 

3.13 

単位体積当たりの熱容量(C)(Jm−3K−1) 

1 m3の体積をもつ物体の温度を1 K上昇させるのに必要な熱量。 

3.14 

サーモリフレクタンス 

物質の反射率が温度とともに変化する効果。対象物に照射した光の反射強度を基に対象物の温度変化を

観察するために利用することができる。特に,熱電対,放射温度計などの通常の温度測定装置では測定す

ることができない高速な温度変化を測定するために有効である。 

3.15 

標準薄膜 

パルス光加熱サーモリフレクタンス法の原理を用いた装置の校正又は測定値の補正を行うことを目的と


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して,熱拡散の特性時間が値付けられた薄膜。 

 

原理 

薄膜の裏面に,薄膜の膜厚に比べて十分に広い面積の加熱用パルス光を照射することで,薄膜の裏面は

パルス加熱され瞬間的に裏面が昇温し温度が低い表面に向かって一次元的に熱が拡散し,最終的に薄膜の

厚さ方向の温度分布は均一となる。薄膜の表面の反射率は,サーモリフレクタンスと呼ばれる現象によっ

て温度の変化に伴い僅かに変化する。したがって,薄膜の表面に照射された測温用レーザ光の反射後の光

強度を測定し,パルス加熱が行われた時刻を基準にして記録することによって,薄膜の表面の温度履歴曲

線を得る(図1参照)。パルス加熱が行われてから表面温度が十分上昇するまでの時間は,試料の膜厚及

び熱物性値に依存するため,温度履歴曲線を解析しファインセラミックス薄膜の膜厚方向の熱拡散率を算

出することができる。また,薄膜の表面側を加熱し,裏面側を測温してもよい。 

 

 

 

注記 横軸においてt0=0であることに注意する。 

 

図1−パルス光加熱サーモリフレクタンス法によって測定する温度履歴曲線の例 

 

測定装置 

5.1 

装置の構成例 パルス光加熱サーモリフレクタンス法の原理を用いた装置の構成例を図2に示す。

この図で示した構成は最も基本的なものであり,使用する光源又は記録装置の種類によって複数の構成を

とることができる。構成の例を附属書A〜附属書Cに示す。 

 


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図2−パルス光加熱サーモリフレクタンス法による測定装置の構成例 

 

5.2 

環境温度測定装置 環境温度測定装置は,熱電対及びその出力を測定する装置とする。熱電対はJIS 

C 1602に規定する測定温度まで安定なものを使用する。 

なお,JIS C 1602に規定した以外の熱電対又は熱電対以外の温度計を使用する場合には,使用した温度

計の許容差を報告書に明記する。 

5.3 

加熱用パルス光発光装置 加熱用パルス光発光装置は,薄膜の裏面を瞬間的に加熱するためのパル

ス光を発光し,試料に照射する装置である。パルス光を繰り返し発光する装置を使用する。測定できる温

度履歴曲線の長さは,繰り返し発光する加熱用パルス光のパルス間隔で制限されることに注意する。パル

ス幅の選択については,薄膜の熱拡散率及び厚さに対して測定を行うことができるパルス幅の目安を,附

属書Dに参考として示す。試料へのパルス光の照射直径は,0.1 mm〜0.5 mm程度とする。試料に照射す

るパルス光の平均出力は,10 mW〜100 mWを目安とする。 

加熱用パルス光の薄膜の表面におけるパワー密度は,1×105 mW/cm2を目安とし,測定する信号の大き

さによって調整を行う。附属書Eによって,照射領域における試料の温度上昇を見積もっておくのがよい。 

注記 薄膜を透過する波長の加熱用パルス光を用いることは避ける。薄膜の吸収係数を基に加熱用パ

ルス光のエネルギーが十分吸収される波長を選択するのがよい。加熱用パルス光の波長として,

780 nm及び1 064 nmを用いる例がある。吸収係数を用いた熱拡散率の解析には,式(F.4)に記載

された解析式を用いる。 

5.4 

測温用レーザ発光装置 測温用レーザ発光装置は,連続光又はパルス光のレーザビームを発光する。

試料への照射直径は,加熱用パルス光の照射直径よりも小さくする。照射する平均出力は,0.5 mW〜3 mW

程度がよい。薄膜の表面における測温用レーザのパワー密度は,5×104 mW/cm2を目安とするが,照射す

る平均出力を優先するのがよい。 

注記1 測温用レーザの平均出力が小さすぎると,測定する信号の強度が小さくなり,ノイズが信号


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に乗りやすくなるので注意が必要である。ノイズは,温度履歴曲線を積算することである程

度改善できる。平均出力が高すぎると,反射後の光強度によって受光装置が飽和することが

あるため,注意が必要である。 

波長は,受光装置が感度をもつ波長であるとともに,ファインセラミックス薄膜の透過率が無視できる

ほど小さく,かつ,反射率の温度係数が大きい波長を選択する。 

注記2 測温用レーザの波長の例として,窒化チタンでは波長780 nm近傍で良好な信号強度が得られ

る。また,反射膜として金属膜を用いた場合には,モリブデン(Mo),プラチナ(Pt)及び

アルミニウム(Al)では波長780 nmによる測定例があり,金(Au)では波長532 nmによる

測定例がある。 

パルス光を光源に用いる場合には,パルス幅は5 ns以下であることが望ましい。測温用レーザ発光装置

は独立した装置として用意するほか,加熱用パルス光発光装置のパルス光をビームスプリッタなどによっ

て分割して用いることもできる。測温光の光源の選択の仕方によって装置の構成が変わるため,附属書A

〜附属書Cを参考に示す。 

5.5 

受光装置 温度履歴曲線を測定するために,測温用光源の波長に対して感度をもつ光検出素子を用

いる。例えば,可視から近赤外に感度をもつシリコンフォトダイオード又はInGaAsフォトダイオードを

用いることができる。 

注記 測温用の光源が連続光の場合には,受光装置の応答性能は200 MHz以上あることが望ましい。

測温用としてパルス光源を用いる場合には,変調器によって加熱用パルス光に加えられた変調

周波数に対応する応答性能でよい(附属書B及び附属書C参照)。 

5.6 

温度応答測定回路 測温用レーザ発光装置の種類によって異なる装置を用いることに注意する。測

温用のレーザとして連続光を用いる場合には,200 MHz以上の応答性をもつAD変換回路を用いる(附属

書A参照)。パルス光を用いる場合には,ロックインアンプを用いる(附属書B及び附属書C参照)。 

5.7 

記録装置 記録装置は,温度履歴曲線を自動記録できるものを使用する。 

 

試料 

6.1 

形状 

ファインセラミックス薄膜の厚さは,100 nm〜数μmの範囲とする。加熱用パルス光の照射領域におい

て膜厚のうねりは,5 %以内であることが望ましい。表面の算術平均粗さRaは5 nm以下であることが望

ましい。ファインセラミックス薄膜は,両面が光学研磨され,基板を透過させるレーザに対して透明な基

板上に成膜する。 

注記1 基板の形状は,取扱いの点から一般的には厚さが0.3 mm以上1.5 mm以下,面積が約100 mm2

(約10 mm×10 mm)以上の寸法が望ましい。ただし,測定装置が対応できる範囲であれば,

この範囲でなくともよい。 

注記2 基板には,石英ガラス,各種光学用ガラスなど熱伝導率の低い材料を用いる方が良好な結果

を得やすい。シリコン,サファイアなどのように,熱伝導率が高い基板を用いる場合には,

基板への熱の逃げを原因とする温度履歴曲線の降温領域が強く観察されるため,F.3に記載す

る解析式によって最小二乗法を用いて解析を行うのがよい。 

6.2 

反射膜の成膜 

加熱用パルス光に対してファインセラミックス薄膜の透過率が高い場合又は反射率の温度係数が小さい

ために十分なサーモリフレクタンスの効果が得られない場合には,ファインセラミックス薄膜の上下に金


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属の反射膜を配置した3層膜を作製する。反射膜には,アルミニウム(Al),モリブデン(Mo)などを用

いることができる。反射膜の厚さは,100 nm以上が望ましい。この場合,ファインセラミックス薄膜の両

側に施す反射膜は,同じ材料,膜厚及び成膜条件となるように注意する。また,反射膜を施した場合での

加熱用パルス光の照射領域における膜厚のうねり及び表面の算術平均粗さの指定は,6.1と同様とする。 

 

測定手順 

7.1 

薄膜の膜厚 

薄膜の膜厚の測定手順は,次による。 

a) 薄膜の膜厚 JIS B 0651に規定する触針式表面粗さ測定機を用いて,JIS R 1636に規定する方法によ

って膜厚を測定することが望ましい。また,透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて試料の

断面を観察して膜厚を測定してもよい。 

b) 反射膜の膜厚 反射膜の膜厚の算出方法はa) によるが,同条件において成膜した単層の反射膜を別

に用意して,その膜厚値を用いてもよい。 

7.2 

環境温度 

測定時の環境の温度の測定は,熱電対によって行い,測温接点を試料に接触するか又は試料直近に固定

する。 

7.3 

温度履歴曲線 

温度履歴曲線の測定手順は,次による。 

a) 測温用レーザ光の調整 測温用のレーザ光を試料に照射し,その反射光を受光装置へと導いた後に,

受光装置のフルスケールを超えないように測温用のレーザ光の平均出力を調整する。 

b) 加熱用パルス光の照射 加熱用パルス光を試料へと照射し,試料への照射位置を,測温用のレーザ光

が照射されている位置と薄膜部分とを挟んで相対するように調整する。 

c) 温度履歴曲線の測定 温度応答測定回路によって,加熱用パルス光の照射時刻を基準として,温度履

歴曲線を測定する。温度履歴曲線の測定時間の範囲は,加熱用パルス照射時刻原点t0よりも前の時間

を含み,かつ,少なくともハーフタイムの10倍(図1参照:10・t1/2)以上まで記録する。温度履歴曲

線を記録できる最長の時間範囲は,加熱用パルス光のパルスの間隔までである。また,パルス照射時

刻原点t0を定めておく。t0の決定手順の例を,附属書Gに示す。 

d) ノイズの低減 温度応答測定回路で得られる信号強度が小さい場合など,ノイズの影響が無視できな

い場合には,複数回の温度履歴曲線の測定を積算することでS/N比の改善を図ってもよい。 

e) 測定の例 パルス光加熱サーモリフレクタンス法によって測定した温度履歴曲線の例を,図1に示す。 

f) 

装置の校正 装置の健全性を確認するには,熱拡散の特性時間が値付けされた標準物質を用いるとよ

い。入手可能な標準物質の情報を,附属書Hに示す。 

 

熱拡散率の算出 

熱拡散率は,次のいずれかの方法によって算出する。パルス照射時刻原点t0よりも前の時間の温度履歴

曲線に傾きがないか確認し,負の傾きが見られる場合には,附属書Iに規定する手順によって,算出の前

に温度履歴曲線を補正する。また,反射膜を施した場合には,附属書Jによって熱拡散率を算出する。 

注記 反射膜を施した場合の,反射膜とファインセラミックス薄膜との界面における熱抵抗の影響は,

附属書Kを参照。 

a) ハーフタイム法 断熱条件にある厚さdの均質な薄膜を測定する場合には,理想的な条件で熱拡散率


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をJIS R 1611に規定する式(1)によって算出する。 

2/1

2

8

138

.0

t

d

  (1) 

ここに, 

α: 熱拡散率(m2s−1) 

 

d: 膜厚(m) 

 

t1/2: ハーフタイム(s) 

 

b) 面積熱拡散時間法 図3のように温度履歴曲線の縦軸を最小値が0,最大値が1となるように規格化

し,面積熱拡散時間Aを求める。このとき,熱拡散率を式(2)によって算出する。 

A

d

6

2

  (2) 

ここに, 

α: 熱拡散率(m2s−1) 

 

d: 膜厚(m) 

 

A: 図3に示す最高温度上昇によって規格化された温度履歴

曲線において,温度履歴曲線,最高温度上昇値及びパル
ス照射時刻原点によって囲まれた網掛け部の面積(s) 

 

 

 

注記 横軸においてt0=0であることに注意する。 

 

図3−温度上昇を規格化して表した温度履歴曲線及び面積熱拡散時間 

 

c) 最小二乗法 測定した温度履歴曲線のデータT (ti) と温度履歴曲線の理論式f (ti, α) との残差の二乗和

Jが最小になるように,熱拡散率を式(3)によって算出する。 

i

i

i

t

f

t

T

J

2)

,

(

)

(

 (3) 

ここに, 

α: 熱拡散率(m2s−1) 

 

t: 時間(s) 

 

T: 温度の上昇 

 

f (ti, α): 温度履歴曲線の理論式 

 

J: 温度履歴曲線の測定データと理論式との残差の二乗和 

 

注記 理論式は,附属書Fに示す式を用いることができる。 

 

報告書 

報告書には,次の項目を記載する。ただし,受渡当事者間で記載不要との合意が得られた項目について


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は,報告書への記載を省略することができる。 

a) 規格番号 

b) 試料 

1) ファインセラミックス薄膜及び基板の種類 

2) ファインセラミックス薄膜の膜厚 

3) 反射膜の使用の有無,反射膜を用いた場合はその種類と膜厚 

c) 測定条件 

1) 加熱用パルス光と測温光の位置関係,環境温度,熱電対の種類又は温度計の許容差,熱電対と試料

との位置関係など 

2) 加熱用パルス光:レーザの一般名称(例えば,パルスYAGレーザー),試料へ照射した平均出力(W)

又は1パルス当たりのエネルギー(J),パルス幅,波長及びパルスの繰返し周波数 

3) 測温レーザ:レーザの一般名称,連続光又はパルス光のいずれか,並びに試料へ照射した平均出力

(W)又は1パルス当たりのエネルギー(J),パルス幅及び波長 

4) 測定雰囲気 

5) 繰り返し測定を行うことで温度履歴曲線を得た場合には,その積算回数 

d) 熱拡散率の算出方法 

温度履歴曲線を解析して熱拡散率を算出した際に用いた算出方法 

e) 測定結果 

1) 測定値の表示(熱拡散率・環境温度) 

2) 測定データ(温度履歴曲線) 

f) 

特記する必要のある次の事項 

1) この規格の規定に合致しない事項又は受渡当事者間で協定した事項 

2) その他必要とする事項 

 


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附属書A 

(参考) 

測温用レーザ発光装置に連続光を用いる装置の構成例 

 

A.1 装置の構成 

連続光を測温用レーザ発光装置に用いる装置の構成例を,図A.1に示す。温度応答測定回路には,AD

変換回路を用いる。また,加熱用パルス光の一部をハーフミラーなどで切り出してトリガ用受光装置で受

光する。トリガ用受光装置によって加熱用パルス光を電気信号に変換し,これをAD変換回路のトリガ信

号として使用する。トリガ用受光装置には,フォトダイオードなどを用いることができる。 

装置の時間分解能は,加熱用パルス光のパルス幅,受光装置の応答時間,AD変換回路のサンプリング

間隔及び周波数帯域のいずれか最も遅いものに依存する。例として,パルス幅2 nsの加熱用パルス光を用

いる場合に,パルス幅と同程度の時間分解能で温度履歴曲線を記録するためには,AD変換回路のサンプ

リング間隔はパルス幅より小さいことが望ましい。 

 

 

図A.1−連続光を測温用レーザに用いた場合の装置の構成例 


10 

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附属書B 

(参考) 

加熱用パルス光を2分割し,一方を加熱用 

もう一方を測温用のパルス光として用いる装置の構成例 

 

B.1 

装置の構成例 

1台のパルス光発光装置から出るビームをビームスプリッタなどで2分割し,一方を加熱用パルス光と

して用い,もう一方を測温用のパルス光として用いることができる。この場合の装置の構成例を,図B.1

に示す。2分割した後の加熱用パルス光の光路に,図B.1に示す例のような遅延ラインを加える。パルス

光を2分割した後の測温用のパルス光と加熱用パルス光の光路の長さを完全に一致するように構成したと

き,温度履歴曲線の時刻t0に対応する。図B.1のように遅延ラインが平行に折り返す光学系の場合,光路

の長さをΔx短くしたときの時刻の変化量Δtは,光速度をcとしたとき式(B.1)で表される。 

c

x

t

  (B.1) 

例えば,15 cmの移動距離をもつ遅延ラインを用いた場合では,光路の長さΔxを遅延ラインの移動距離

の2倍の30 cmまで変化させることが可能であるので,式(B.1)に従っておよそ1 nsの時間幅で温度履歴曲

線を記録することが可能である。温度応答測定回路には,ロックインアンプを用いる。また,加熱用パル

ス光には,変調器によって変調周波数の強度変調を加える。変調器には,オプティカルチョッパ,光音響

変調素子,電気光学変調素子などを用いることができる。変調周波数は周波数発生器によって制御し,加

熱用パルス光の繰返し周波数に対しておおよそ1/100になるように調整する。受光装置には,フォトダイ

オードなどを用いることができ,応答性能は変調周波数に対応させる。遅延ラインによって,加熱用パル

ス光が薄膜の裏面に到達した時刻を起点とした測温パルス光が到達するまでの時間間隔を制御し,記録装

置はこの時間間隔を温度履歴曲線における時間軸としてプロットする。縦軸の温度上昇値には,ロックイ

ンアンプから読み取った位相値又は振幅値のいずれでも用いることができるが,位相値を用いる場合には,

温度上昇時の位相値の変化幅の目安として15度を超えない条件であることが望ましい。もしも15度を大

きく越えてしまうのであれば,変調器によって加える変調周波数を低く調整することで改善することがで

きる。 

 


11 

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図B.1−1台のパルス光発光装置を用いた場合の装置の構成例 

 


12 

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附属書C 
(参考) 

測温用レーザ発光装置にパルス光を用いる装置の構成例 

 

C.1 装置の構成例 

パルス光を測温用レーザ発光装置に用いる装置の構成例を,参考として図C.1に示す。遅延制御装置に

よって測温用パルス光と加熱用パルス光とが繰り返して発光する周波数を固定する。遅延制御装置には,

例えば同期させた2台の周波数発生器を用いることができる。遅延制御装置によって,加熱用パルス光が

薄膜の裏面に到達した時刻を起点とした測温パルス光が到達するまでの時間間隔を制御し,記録装置はこ

の時間間隔を温度履歴曲線における時間軸としてプロットする。変調器,周波数発生器,ロックインアン

プ及び受光装置に必要な性能及び調整は,附属書Bと同様である。 

 

 

図C.1−パルス光を測温用レーザに用いた場合の装置の構成例 

 


13 

R 1689:2018  

 

附属書D 
(参考) 

加熱用パルス光のパルス幅選択の目安 

 

D.1 パルス幅の選択の目安 

この規格に示すハーフタイム法及び面積熱拡散時間法では,無限小のパルス幅で瞬間的に加熱した場合

を仮定しているため,加熱用パルス光のパルス幅τpは,ファインセラミックス薄膜の膜厚方向の熱拡散の

特性時間τに対して十分短くなければならない。ファインセラミックス薄膜の膜厚と熱拡散率との組合せ

に対する最大のパルス幅の目安を,表D.1に示す。 

また,ハーフタイムを基準にしたパルス幅の割合と,そのパルス幅で測定した温度履歴曲線を基にハー

フタイム法及び面積熱拡散時間法で算出した見掛けの熱拡散時間とを,図D.1に示す。パルス幅の影響は,

面積熱拡散時間法の方が相対的に小さい。 

 

表D.1−加熱用パルス光のパルス幅τpの選択の目安 

単位 s 

ファインセ
ラミックス
薄膜の膜厚 

(nm) 

ファインセラミックス薄膜の熱拡散率(m2s−1) 

1×10−4 

5×10−5 

1×10−5 

5×10−6 

1×10−6 

5×10−7 

1×10−7 

  200 

5.6×10−12 

1.1×10−11 

5.6×10−11 

1.1×10−10 

5.6×10−10 

1.1×10−9 

5.6×10−9 

  250 

8.7×10−12 

1.7×10−11 

8.7×10−11 

1.7×10−10 

8.7×10−10 

1.7×10−9 

8.7×10−9 

  300 

1.2×10−11 

2.5×10−11 

1.2×10−10 

2.5×10−10 

1.2×10−9 

2.5×10−9 

1.2×10−8 

  350 

1.7×10−11 

3.4×10−11 

1.7×10−10 

3.4×10−10 

1.7×10−9 

3.4×10−9 

1.7×10−8 

  400 

2.2×10−11 

4.4×10−11 

2.2×10−10 

4.4×10−10 

2.2×10−9 

4.4×10−9 

2.2×10−8 

  450 

2.8×10−11 

5.6×10−11 

2.8×10−10 

5.6×10−10 

2.8×10−9 

5.6×10−9 

2.8×10−8 

  500 

3.5×10−11 

6.9×10−11 

3.5×10−10 

6.9×10−10 

3.5×10−9 

6.9×10−9 

3.5×10−8 

  550 

4.2×10−11 

8.4×10−11 

4.2×10−10 

8.4×10−10 

4.2×10−9 

8.4×10−9 

4.2×10−8 

  600 

5.0×10−11 

1.0×10−10 

5.0×10−10 

1.0×10−9 

5.0×10−9 

1.0×10−8 

5.0×10−8 

  650 

5.9×10−11 

1.2×10−10 

5.9×10−10 

1.2×10−9 

5.9×10−9 

1.2×10−8 

5.9×10−8 

  700 

6.8×10−11 

1.4×10−10 

6.8×10−10 

1.4×10−9 

6.8×10−9 

1.4×10−8 

6.8×10−8 

  750 

7.8×10−11 

1.6×10−10 

7.8×10−10 

1.6×10−9 

7.8×10−9 

1.6×10−8 

7.8×10−8 

  800 

8.9×10−11 

1.8×10−10 

8.9×10−10 

1.8×10−9 

8.9×10−9 

1.8×10−8 

8.9×10−8 

  850 

1.0×10−10 

2.0×10−10 

1.0×10−9 

2.0×10−9 

1.0×10−8 

2.0×10−8 

1.0×10−7 

  900 

1.1×10−10 

2.2×10−10 

1.1×10−9 

2.2×10−9 

1.1×10−8 

2.2×10−8 

1.1×10−7 

  950 

1.3×10−10 

2.5×10−10 

1.3×10−9 

2.5×10−9 

1.3×10−8 

2.5×10−8 

1.3×10−7 

1 000 

1.4×10−10 

2.8×10−10 

1.4×10−9 

2.8×10−9 

1.4×10−8 

2.8×10−8 

1.4×10−7 

注記 パルス幅τpは,表中の数値より小さければよい。 

 


14 

R 1689:2018  

  

 

図D.1−ハーフタイム法及び面積熱拡散時間法で算出した見掛けの熱拡散時間 

 


15 

R 1689:2018  

 

附属書E 

(参考) 

加熱用パルス光の照射による試料の温度上昇の目安 

 

E.1 

試料の温度上昇の目安 

繰り返し照射される加熱用パルス光について,その平均出力に対応する連続光を照射したときの試料の

温度上昇量ΔTriseは,式(E.1)によって求める。 

π

2

rise

a

Q

T

  (E.1) 

ここに, 

Q: 試料へ吸収された加熱用パルス光の平均出力(W) 

 

a: 加熱用レーザパルス光の照射半径(m) 

 

λ: 基板の熱伝導率(Wm−1K−1) 

 


16 

R 1689:2018  

  

附属書F 

(参考) 

最小二乗法に用いる単層膜の温度応答の理論式 

 

F.1 

一般 

最小二乗法によって熱拡散率を算出する場合の理論式には,種々の方法がある。ここでは,その中で,

ファインセラミックス薄膜が外界から断熱されているとした近似によって導かれた理論式,ファインセラ

ミックス薄膜及び基板の2層モデルから導かれた温度応答の理論式,及び2層モデルにおいて更にファイ

ンセラミックス薄膜の表面から加熱用パルス光が有限の深さだけ浸透した後に熱へと変換される近似によ

る理論式を示す。これら以外の方法によって熱拡散率を算出した場合には,その算出方法について報告す

ることが望ましい。 

 

F.2 

断熱単層膜の近似 

ファインセラミックス薄膜の表面と基板との界面で断熱であるとした境界条件とし,加熱用パルス光は

基板との界面で吸収され熱へと変換されるとした場合の温度応答の理論式は,式(F.1)又は式(F.2)によって

求める。 

t

d

n

t

d

T

t

T

n

2

2

0

2

max

2

1

2

exp

π

2

)

(

  (F.1) 

2

2

1

max

π

exp

)1

(

2

1

)

(

d

t

n

T

t

T

n

n

  (F.2) 

ここに, 

t: 時間(s) 

 

T (t): パルス加熱後,時間t経過時における薄膜の表面の温度

上昇 

 

ΔTmax: 断熱境界条件における最高温度上昇 

 

α: 熱拡散率(m2s−1) 

 

n: 整数 

 

d: 膜厚(m) 

 

上の式(F.1)及び式(F.2)は等価であり,いずれを用いてもよい。 

 

F.3 

薄膜及び基板の2層モデル 

図F.1に示す薄膜及び基板の2層モデルにおいて,基板との界面が断熱ではなく,かつ,基板の厚さが

半無限遠として取り扱える場合には,温度応答の理論式は,式(F.3)によって求める。 

0

2

2

s

f

4

1

2

exp

π

)

(

2

)

(

n

n

t

d

n

t

b

b

t

T

  (F.3) 

s

f

s

f

b

b

b

b

 

ここに, 

bf: ファインセラミックス薄膜の熱浸透率(Jm−2s−0.5K−1) 

 

bs: 基板の熱浸透率(Jm−2s−0.5K−1) 


17 

R 1689:2018  

 

F.4 

薄膜及び基板の2層モデルにおいて,加熱用パルス光の有限吸収深さを考慮 

上述の薄膜及び基板の2層モデルにおいて,更に加熱レーザパルス光を薄膜へ照射したとき,その光の

エネルギーがファインセラミックス薄膜の吸収係数に依存して減衰しながら吸収されると考えたときには,

温度応答の理論式は,式(F.4)によって求める。 

n

n

d

t

d

t

d

n

t

d

n

T

T

2

2

2

max

2

1

2

exp

4

1

2

exp

 

 

d

t

d

t

d

n

2

1

2

erfc

  (F.4) 

ここに, 

ε: ファインセラミックス薄膜の吸収係数(m−1) 

 

 

図F.1−薄膜及び基板の2層モデル 

 


18 

R 1689:2018  

  

附属書G 
(参考) 

加熱用パルス光の照射時刻原点t0の決定手順 

 

G.1 

加熱用パルス光の照射時刻原点t0の決定 

パルス光加熱サーモリフレクタンス法で得られた温度履歴曲線を解析して熱拡散率を算出するためには,

加熱用パルス光が実際に薄膜に照射された時刻原点t0がどこにあるかを決定する必要がある。この時刻原

点t0を決定するために,測定対象の薄膜とは別に,光の浸透深さよりも薄い膜厚の金属膜を用意し,この

金属膜を箇条7によって測定を行う。このとき得られる温度履歴曲線は,おおよそパルス出力を時間積分

した形状と一致する。したがって,得られた最高温度上昇の半分に到達する時刻を加熱用パルス光の照射

時刻原点t0として決定することができる。このようにして得られた温度履歴曲線の例を,図G.1に示す。

最高温度上昇の半分に到達する<温度>を

点で示しており,このときの時刻がt0である。 

実際に用いる金属膜の例として,厚さ10 nm程度のモリブデン(Mo)膜を使うことができる。 

 

 

 

注記 この図では,t=0 psが加熱用パルス光が実際に薄膜に照射された時刻原点t0に相当する。 

 

図G.1−厚さ13 nmのMo膜を測定して得られる温度履歴曲線 

 


19 

R 1689:2018  

 

附属書H 
(参考) 
標準物質 

 

H.1 標準物質 

一般に薄膜の熱物性値は,内部に存在する欠陥,非常に小さい結晶粒径などに大きく影響を受けるため

に,同じ組成のバルク材料とは異なることが多い。特に,組成,純度,結晶構造及び温度では一義的に熱

物性値が決まらないことに注意が必要である。したがって,測定装置,解析手法の健全性などを確認する

ためには,信頼性の高い標準物質が重要である。近年,NMIJ 1) から膜厚方向の熱拡散の特性時間が値付

けされた窒化チタン薄膜[RM 2)]及び膜厚方向の熱拡散率が値付けされたモリブデン薄膜[CRM 3)]が頒

布されており入手が可能である。NMIJ 1) から頒布されている標準薄膜の仕様の抜粋を,参考として次に

示す。 

 

 

番号: 

NMIJ RM 1301-a 

 

材料: 

窒化チタン(薄膜),合成石英ガラス(基板) 

 

熱拡散時間: 

139.7×10−9 s(k=2における拡張不確かさ4.9 %) 

 

膜厚: 

680 nm(膜厚は参考値) 

 

基板形状: 

10 mm×10 mm×0.525 mm 

 

使用温度: 

室温 

 

 

番号: 

NMIJ CRM 5808-a 

 

材料: 

モリブデン(薄膜),合成石英ガラス(基板) 

 

熱拡散率: 

3.28×10−5 m2s−1(k=2における拡張不確かさ6.2 %) 

 

膜厚: 

400 nm(公称値) 

 

基板形状: 

38.1 mmφ×0.525 mm 

 

使用温度: 

室温 

 

注1) NMIJ(National Metrology Institute of Japan)とは,国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標

準総合センターをいう。 

2) RMは標準物質の略 

3) CRMは認証標準物質の略 

 


20 

R 1689:2018  

  

附属書I 

(規定) 

温度履歴曲線の負の傾きの補正法 

 

I.1 

温度履歴曲線の補正法 

パルス光加熱サーモリフレクタンス法で得られる温度履歴曲線は,試料を加熱用パルス光によって繰り

返し加熱することが原因となり,薄膜がほぼ断熱に近い理想的な条件であったとしても,図I.1におけるA

で示される曲線のように,温度履歴曲線全体に負の傾きが重畳した形状となる。これは,フラッシュ法の

ような単一のパルス加熱による温度履歴曲線Bとは本質的に異なることを示している。ここに,薄膜の熱

拡散の特性時間はτであり,加熱用パルス光はτの10倍の間隔で繰り返し発振する条件である。また,各々

の温度履歴曲線は,薄膜と基板との熱浸透率の比が9:1の場合を示した。繰返しパルス加熱による影響は,

加熱用パルス光の発光する時間間隔が,薄膜の熱拡散の特性時間τに対して長いほど小さくなる。しかし,

図I.1に示すように温度履歴曲線の負の傾きが目立つ場合には,次に示す手順によって温度履歴曲線の補

正を行うことが望ましい。 

 

 

 

注記 図の横軸においてt0=0である。これは図I.2においても同様である。 

 

図I.1−単一のパルス加熱で得られる温度履歴曲線と繰返しパルス加熱とで得られる温度履歴曲線の違い 

 

ここでは,図I.2を基に温度履歴曲線の補正手順を説明する。 

a) 図I.2に示した繰返しパルス加熱による温度履歴曲線Aについて,t0より負の時間側の温度履歴曲線

部分を用いて線形近似を行う。線形近似によって得られる直線は,図I.2の直線Cで表される。 

b) 温度履歴曲線Aから直線Cを差し引くことによって,補正された温度履歴曲線Dを得る。 

なお,曲線Bは,図I.1における単一のパルス加熱による温度履歴曲線Bを示したものである。補


21 

R 1689:2018  

 

正された温度履歴曲線Dは,箇条8に用いることができる。 

 

 

図I.2−温度履歴曲線の補正方法 

 


22 

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附属書J 

(規定) 

金属反射膜を施した場合の面積熱拡散時間法による熱拡散率の算出方法 

 

J.1 

熱拡散率の算出方法 

加熱用パルス光に対してファインセラミックス薄膜の透過率が高い場合,反射率の温度係数が小さいた

めに十分なサーモリフレクタンスの効果が得られないときには,ファインセラミックス薄膜を金属の反射

膜によって挟み込んだ3層膜を作製する。反射膜は厚さ100 nm以上であることが望ましく,材料にはア

ルミニウム(Al),モリブデン(Mo)などを用いることができる。このとき,ファインセラミックス薄膜

に施す反射膜は,両側とも,同じ材料,膜厚,成膜条件となるように注意する。このように,反射膜を両

側に施したファインセラミックス薄膜(図J.1参照)について,面積熱拡散時間法を用いた熱拡散率の算

出方法を示す。反射膜を含む3層膜が基板との界面で断熱である境界条件において,面積熱拡散時間Aは,

式(J.1)によって求める。 

f

f

m

m

f

f

f

m

m

f

f

2

m

m

m

f

f

m

m

2

6

1

3

4

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

A

  (J.1) 

ここに, 

Cf: ファインセラミックス薄膜の単位体積当たりの熱容量

(Jm−3K−1) 

 

df: ファインセラミックス薄膜の膜厚(m) 

 

τf: ファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間(s) 

 

Cm: 反射膜の単位体積当たりの熱容量(Jm−3K−1) 

 

dm: 反射膜の膜厚(m) 

 

τm: 反射膜の熱拡散の特性時間(s) 

 

式(J.1)によって算出されたファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間τfを用いて,熱拡散率αを式

(J.2)によって求める。 

f

2

f

  (J.2) 

注記 単位体積当たりの熱容量は,同じ組成のバルクの文献値,測定などによって決める。 

 

 

図J.1−金属の反射膜を両側に施したファインセラミックス薄膜の例 


23 

R 1689:2018  

 

附属書K 

(参考) 

界面熱抵抗の影響 

 

K.1 界面熱抵抗の影響 

附属書Jに示した薄膜の両側を金属の反射膜で挟み込んだ3層膜を作製した場合において,反射膜と薄

膜との界面に熱抵抗Rが存在するとき,面積熱拡散時間は,式(K.1)で与えられる。 

f

f

m

m

f

f

m

m

m

m

f

f

m

m

f

f

f

m

m

f

f

2

m

m

m

f

f

m

m

2

2

2

6

1

3

4

d

C

d

C

d

C

d

C

d

RC

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

A

 

 (K.1) 

したがって,界面熱抵抗が無視できない場合には,面積熱拡散時間Aは,熱抵抗Rによって式(K.1)の第

2項の分だけ増加する。薄膜として二酸化シリコン(SiO2)薄膜を考え,これに反射膜として厚さ100 nm

のモリブデン(Mo)薄膜を施して3層膜とした場合に,式(K.1)第2項が面積熱拡散時間Aに占める割合

を,図K.1に示す。図K.1の横軸は,SiO2薄膜の膜厚である。図中には,SiO2とMoとの界面熱抵抗Rが,

それぞれ10−10,10−9及び10−8 m2KW−1であるときのグラフを示した。セラミックスと金属との間の界面

熱抵抗は,おおよそ10−9 m2KW−1のオーダであることが報告1) されており,SiO2薄膜の膜厚が100 nm以

上では界面熱抵抗の影響は,ほぼ無視できると考えられる。ただし,反射膜を施す場合には,界面に汚染

がないように注意する。 

 

 

図K.1−SiO2薄膜における式(K.1)の第2項の割合 

 

注1) 式(K.1)については,T. Baba "Analysis of One-dimensional Heat Diffusion after Light Pulse Heating by 

the Response Function Method", Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 05EB04を参照すると

よい。 

2) 界面熱抵抗について詳細な議論はE. T. Swartz and R. O. Pohl, "Thermal boundary resistance", 

Reviews of Modern Physics, vol. 61, No. 3, (1989), pp 605-668を参照するとよい。