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R 1689

:2011

(1)

目  次

ページ

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語及び定義

1

4

  原理

3

5

  測定装置

3

5.1

  装置の構成例

3

5.2

  環境温度測定装置

4

5.3

  加熱用パルス光発光装置

4

5.4

  測温用レーザ発光装置

4

5.5

  受光装置

5

5.6

  温度応答測定回路

5

5.7

  記録装置

5

6

  試料

5

6.1

  形状

5

6.2

  反射膜の成膜

6

7

  測定手順

6

7.1

  試料の膜厚

6

7.2

  環境温度

6

7.3

  温度履歴曲線

6

8

  熱拡散率の算出

6

9

  報告書

8

附属書 A(参考)測温用レーザ発光装置に連続光を用いる装置の構成例

9

附属書 B(参考)加熱用パルス光を 分割し,一方を加熱用もう一方を測温用のパルス光として

    用いる装置の構成例

10

附属書 C(参考)測温用レーザ発光装置にパルス光を用いる装置の構成例

12

附属書 D(参考)加熱用パルス光の照射による試料の温度上昇の目安

13

附属書 E(参考)加熱用パルス光のパルス幅の選択の目安

14

附属書 F(参考)最小二乗法に用いる単層膜の温度応答の理論式

15

附属書 G(参考)標準物質

17

附属書 H(規定)温度履歴曲線の負の傾きの補正法

18

附属書 I(規定)金属反射膜を施した場合の面積熱拡散時間法による熱拡散率の算出方法

20

附属書 J(参考)界面熱抵抗の影響

21


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(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本ファインセラミックス協会

(JFCA)

,独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準

原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大

臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格に従うことは,次の者の有する特許権等の使用に該当するおそれがあるので,留意する。

−  氏名:独立行政法人産業技術総合研究所

−  住所:千代田区霞が関 1 丁目 3 番 1 号

1)  特許  第 3252155 号“サーモリフレクタンス法による熱拡散率測定方法”

2)  特許公開 2007−279060  “熱物性値測定方法”

上記の,特許権等の権利者は,非差別的かつ合理的な条件でいかなる者に対しても当該特許権等の実施

の許諾等をする意思のあることを表明している。ただし,この規格に関連する他の特許権等の権利者に対

しては,同様の条件でその実施が許諾されることを条件としている。

この規格に従うことが,必ずしも,特許権の無償公開を意味するものではないことに注意する必要があ

る。

この規格の一部が,上記に示す以外の特許権等に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本工業標

準調査会は,このような特許権等に関わる確認について,責任はもたない。

なお,ここで“特許権等”とは,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権をいう。


   

日本工業規格

JIS

 R

1689

:2011

ファインセラミックス薄膜の熱拡散率の測定方法−

パルス光加熱サーモリフレクタンス法

Determination of thermal diffusivity of fine ceramic films

by pulsed light heating thermoreflectance method

1

適用範囲

この規格は,透明基板上に成膜された厚さが 100 nm∼数 μm の均質なファインセラミックス薄膜の室温

付近の膜厚方向の熱拡散率の測定方法のうち,パルス光加熱サーモリフレクタンス法について規定する。

2

引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 0601

  製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメ

ータ

JIS B 0651

  製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性

JIS C 1602

  熱電対

JIS R 1600

  ファインセラミックス関連用語

JIS R 1611

  ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法

JIS R 1636

  ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式表面粗さ計による測定方法

3

用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS R 1600 及び JIS B 0601 によるほか,次による。

3.1

薄膜の裏面

加熱用パルス光の波長に対し,透明な基板上に作製された薄膜が基板と接する面。

3.2

薄膜の表面

薄膜が空気と接する面。

3.3

温度履歴曲線

図 に示す,パルス加熱によるファインセラミックス薄膜の表面温度の時間変化を表示した曲線。サー

モリフレクタンス(3.13 参照)の効果は物質によって異なるため,

図 の縦軸の温度は任意単位として用

いる。


2

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3.4

環境温度

ファインセラミックス薄膜又はその近傍の温度。

3.5

最高温度上昇(ΔT

max

図 の温度履歴曲線における最大値。

3.6

パルス幅(τ

p

レーザパルス光の出力の時間変化曲線において最大値の半値以上の出力が保持される時間。

3.7

照射直径

ファインセラミックス薄膜へ照射する加熱用パルス光及び測温用レーザ光の直径。光強度がガウシアン

分布をもつ場合,最大強度の 1/e

2

となる位置の包絡線で表される円の直径。

3.8

トリガ信号

温度応答測定回路に加熱用パルス光の発光を伝える信号。

3.9

パルス照射時刻原点(t

0

温度履歴曲線において時刻が 0 の点(t

0

=0)であり,加熱用パルス光が試料に照射された時刻に対応さ

せる。

3.10

ハーフタイム(t

1/2

s

温度履歴曲線においてパルス照射時刻原点から最高温度上昇 ΔT

max

の 1/2 に達するまでの時間。

3.11

熱拡散の特性時間(τ)(s

厚さ で熱拡散率 α のファインセラミックス薄膜の裏面から表面まで熱が拡散するとき τd

2

/α によっ

て定義される時間。

3.12

単位体積当たりの熱容量(C)(Jm

3

 K

1

1 m

3

の体積をもつ物体の温度を 1 K 上昇させるのに必要な熱量。

3.13

サーモリフレクタンス

物質の反射率が温度とともに変化する効果。対象物に照射した光の反射強度を基に対象物の温度変化を

観察するために利用することができる。特に,熱電対,放射温度計などの通常の温度測定装置では測定す

ることができない高速な温度変化を測定するために有効である。

3.14

標準薄膜

パルス光加熱サーモリフレクタンス法の原理を用いた装置の校正又は測定値の補正を行うことを目的と

して,熱拡散の特性時間が値付けられた薄膜。


3

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4

原理

薄膜の裏面に,薄膜の膜厚に比べて十分に広い面積の加熱用パルス光を照射することで,薄膜の裏面は

パルス加熱され瞬間的に昇温した裏面から表面に向かって一次元的に熱が拡散し,最終的に薄膜の厚さ方

向の温度分布は均一となる。薄膜の表面の反射率はサーモリフレクタンスと呼ばれる効果によって温度の

変化に伴い僅かに変化する。したがって,薄膜の表面に照射された測温用レーザ光の反射後の光強度を測

定し,

パルス加熱が行われた時刻を基準にして記録することによって,

薄膜の表面の温度履歴曲線を得る。

パルス加熱が行われてから表面温度が十分上昇するまでの時間は,試料の膜厚及び熱物性値に依存するた

め,温度履歴曲線を解析しファインセラミックス薄膜の膜厚方向の熱拡散率を算出することができる。ま

た,薄膜の表面側を加熱し,裏面側を測温してもよい。

注記  横軸において t

0

=0 であることに注意する。

図 1−パルス光加熱サーモリフレクタンス法によって測定される温度履歴曲線の例

5

測定装置

5.1

装置の構成例

パルス光加熱サーモリフレクタンス法の原理を用いた装置の構成例を

図 に示す。この図で示した構成

は最も基本的なものであり,使用する光源又は記録装置の種類によって複数の構成をとることができる。

構成の例については,

附属書 A,附属書 及び附属書 に参考として記載する。


4

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図 2−パルス光加熱サーモリフレクタンス法による測定装置の構成例

5.2

環境温度測定装置

熱電対及びその出力を測定する測定器からなる装置である。熱電対は JIS C 1602 に規定する測定温度ま

で安定なものを使用する。

なお,JIS C 1602 に規定された以外の熱電対又は熱電対以外の温度計を使用する場合には,使用した温

度計の性能を報告書に明記する。

5.3

加熱用パルス光発光装置

加熱用パルス光発光装置は,薄膜裏面を瞬間的に加熱するためのパルス光を発光し,ミラーを使って試

料に照射する装置である。パルス光は繰り返し発光するものとする。測定できる温度履歴曲線の長さは,

繰り返し発光する加熱用パルス光のパルス間隔で制限されることに注意する。パルス幅は 5 ns 以下である

ことが望ましい。試料へのパルス光の照射直径は 0.1 mm∼0.5 mm 程度とする。試料に照射するパルス光

の平均出力は 10 mW∼100 mW を目安とする。

加熱用パルス光の薄膜表面におけるエネルギー密度は 1×10

5

 mW/cm

2

を目安とし,測定される信号の大

きさによって調整を行う。

附属書 に基づき,照射領域における試料の温度上昇を見積もっておくことが

よい。

附属書 に試料の熱拡散率及び厚さに対して測定を行うことができるパルス幅の選択の目安を参考とし

て記す。

注記  加熱用パルス光の波長として,780 nm 及び 1 064 nm が用いられた例がある。薄膜を透過する

波長の加熱用パルス光を用いることは避ける。薄膜の吸収係数を基に加熱用パルス光のエネル

ギーが十分吸収される波長を選択するとよい。吸収係数を用いた熱拡散率の解析は F.4 に記載

された解析式を用いる。

5.4

測温用レーザ発光装置

測温用レーザ発光装置は,連続光又はパルス光のレーザビームを発光する。試料への照射直径は加熱用


5

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パルス光の照射直径よりも小さくする。照射する平均出力は 0.5 mW∼3 mW 程度がよい。薄膜表面におけ

る測温用レーザのエネルギー密度は 5×10

4

 mW/cm

2

を目安とするが,

前述の平均出力を優先する方がよい。

注記 1  測温用レーザの平均出力が小さすぎると,測定される信号の強度が小さくなり,ノイズが信

号に乗りやすくなるので注意が必要である。ノイズは温度履歴曲線を積算することである程

度改善できる。平均出力が高すぎると反射後の光強度によって受光装置が飽和してしまうこ

とがあるため注意が必要である。

波長は,受光装置が感度をもつ波長であるとともに,ファインセラミックス薄膜の透過率が無視できる

ほど小さくかつ反射率の温度係数が大きい波長を選択する。

注記 2  測温用レーザの波長の例として,窒化チタンでは波長 780 nm 近傍で良好な信号強度が得られ

る。また,反射膜として金属膜を用いた場合には,モリブデン(Mo)

,プラチナ(Pt)及び

アルミニウム(Al)では波長 780 nm による測定例があり,金(Au)では波長 532 nm による

測定例がある。

パルス光を光源に用いる場合には,パルス幅は 5 ns 以下であることが望ましい。測温用レーザ発光装置

は独立した装置として用意するほか,加熱用パルス光発光装置のパルス光をビームスプリッタなどによっ

て分割して用いることもできる。

測温光の光源の選択の仕方によって装置の構成が変わるため,

附属書 A

附属書 及び附属書 を参考にする。

5.5

受光装置

温度履歴曲線を測定するために,測温用光源の波長に対して感度をもつ光検出素子を用いる。例えば,

可視から近赤外に感度をもつシリコンフォトダイオード,InGaAs フォトダイオードなどを用いることがで

きる。

注記  測温用の光源が連続光の場合には,受光装置の応答性能は 200 MHz 以上あることが望ましい。

測温用としてパルス光源を用いる場合には,

附属書 及び附属書 にあるように,変調器によ

って加熱用パルス光に加えられた変調周波数に対応する応答性能でよい。

5.6

温度応答測定回路

測温用レーザ発光装置の種類によって異なる装置を用いることに注意する。測温用のレーザとして連続

光を用いる場合には,200 MHz 以上の応答性をもつ AD 変換回路を用いる(

附属書 A)。パルス光を用いる

場合には,ロックインアンプを用いる(

附属書 及び附属書 C)。

5.7

記録装置

温度履歴曲線を自動記録できるものを使用する。

6

試料

6.1

形状

ファインセラミックス薄膜の厚さは 100 nm∼数 μm の範囲とする。加熱用パルス光の照射領域において

膜厚のうねりは 5 %以内であることが望ましい。表面の算術平均粗さは 5 nmRa 以下であることが望ましい。

ファインセラミックス薄膜は,両面が光学研磨され,使用するレーザに対して透明な基板上に成膜する。

注記 1  基板の形状は,取扱いの点から一般的には厚さが 0.3 mm 以上 1.5 mm 以下,面積が約 100 mm

2

(約 10 mm×10 mm)以上の寸法が望ましい。ただし,測定装置が対応するのであれば,上

記の範囲でなくともよい。

注記 2  基板には,石英ガラス,各種光学用ガラスなど熱伝導率の低い材料を用いる方が良好な結果

を得やすい。シリコン,サファイアなどのように,熱伝導率が高い基板を用いる場合には,


6

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基板への熱の逃げを原因とする温度履歴曲線の降温領域が強く観察されるため,F.3 に記載す

る解析式を用いて最小二乗法を用いて解析を行うとよい。

6.2

反射膜の成膜

加熱用パルス光に対してファインセラミックス薄膜の透過率が高い場合又は反射率の温度係数が小さい

ために十分なサーモリフレクタンスの効果が得られない場合には,ファインセラミックス薄膜を金属の反

射膜によって挟み込んだ 3 層膜を作製する。反射膜にはアルミニウム(Al)

,モリブデン(Mo)などを用

いることができる。反射膜の厚さは 100 nm 以上が望ましい。この場合,ファインセラミックス薄膜の両

側に施す反射膜は同じ材料,膜厚及び成膜条件となるように注意する。また,反射膜を施した場合での加

熱用パルス光の照射領域における膜厚のうねり及び表面の算術平均粗さの指定は 6.1 と同様とする。

7

測定手順

7.1

試料の膜厚

試料の膜厚の測定手順は,次による。

a)

試料の膜厚  JIS B 0651 に規定する触針式表面粗さ測定機を用いて,JIS R 1636 に規定する方法によ

って膜厚を測定することが望ましい。また,透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)

を用いて試料の断面を観察して膜厚を測定してもよい。

b)

反射膜の膜厚  反射膜の膜厚の算出方法は 7.1 a)に準じるが,同条件において成膜した単層の反射膜

を別に用意して,その膜厚値を用いてもよい。

7.2

環境温度

測定時の環境の温度の測定は,熱電対によって行い,測温接点を試料に接触するか又は試料直近に固定

する。

7.3

温度履歴曲線

温度履歴曲線の測定手順は,次による。

a)

測温用レーザ光の調整  測温用のレーザ光を試料に照射し,その反射光を受光装置へと導いた後に,

受光装置のフルスケールを超えないように測温用のレーザ光の平均出力を調整する。

b)

加熱用パルス光の照射  加熱用パルス光を試料へと照射し,試料への照射位置を,測温用のレーザ光

が照射されている位置と薄膜部分とを挟んで相対するように調整する。

c)

温度履歴曲線の測定  温度応答測定回路によって,加熱用パルス光の照射時刻を規準にし,温度履歴

曲線を測定する。温度履歴曲線の測定時間の範囲は,パルス照射時刻原点 t

0

よりも前の時間を含み,

かつ少なくともハーフタイムの 10 倍(

図 参照:10・t

1/2

)以上まで記録する。温度履歴曲線を記録で

きる最長の時間範囲は,加熱用パルス光のパルスの間隔までである。

d)

ノイズの低減  温度応答測定回路で得られる信号強度が小さい場合など,ノイズの影響が無視できな

い場合には,複数回の温度履歴曲線の測定を積算することで S/N 比の改善を図ってもよい。

e)

測定の例  図 にパルス光加熱サーモリフレクタンス法によって測定される温度履歴曲線を示す。

f)

装置の校正  装置の健全性を確認するには,熱拡散の特性時間が値付けされた標準物質を用いるとよ

い。

附属書 に入手可能な標準物質の情報を記載した。

8

熱拡散率の算出

熱拡散率は,次のいずれかの方法によって算出する。パルス照射時刻原点 t

0

よりも前の時間の温度履歴

曲線に傾きがないか確認し,もしも負の傾きが見られる場合には,

附属書 に規定する手順で算出の前に


7

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温度履歴曲線を補正する。また,試料へ反射膜を施した場合には,

附属書 によって熱拡散率を算出する。

注記  反射膜を施した場合の,反射膜とファインセラミックス薄膜との界面における熱抵抗の影響は

附属書 を参考にするとよい。

a)

ハーフタイム法  断熱条件にある厚さ の均質な薄膜を測定した場合に,理想的な条件において熱拡

散率を JIS R 1611 に規定する式(1)で算出する。

2

/

1

2

8

138

.

0

t

d

×

=

α

 (1)

ここに,

α: 熱拡散率(m

2

s

1

d: 試料の膜厚(m)

t

1/2

ハーフタイム(s)

b)

面積熱拡散時間法  図 のように温度履歴曲線の縦軸を最小値が 0,最大値が 1 となるように規格化

し,面積熱拡散時間 を求める。このとき,熱拡散率を式(2)によって算出する。

A

d

6

2

=

α

 (2)

ここに,

α: 熱拡散率(m

2

s

1

d: 試料の膜厚(m)

A: 図 に示す最高温度上昇によって規格化された温度履歴曲線

において,温度履歴曲線,最高温度上昇値及びパルス照射時
刻原点によって囲まれた網掛け部の面積(s)

注記  横軸において t

0

=0 であることに注意する。

図 3−温度上昇を規格化して表した温度履歴曲線及び面積熱拡散時間

c)

最小二乗法  測定された温度履歴曲線のデータ T(t

i

)と温度履歴曲線の理論式 f(t

i

α)との残差の二乗和 J

が最小になるように熱拡散率を式(3)によって算出する。

[

]

=

i

i

i

t

f

t

T

J

2

)

,

(

)

(

α

 (3)

ここに,

α

熱拡散率(

m

2

s

1

t

時間(

s

T

温度の上昇

f(t

i

α)

温度履歴曲線の理論式

J

温度履歴曲線の測定データと理論式との残差の二乗和

注記

理論式は,

附属書 に記載された式を用いることができる。


8

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9

報告書

報告書には,次の項目を記載する。

なお,受渡当事者間で記載不要との合意が得られた項目については,報告書への記載を省略することが

できる。

a

)

規格番号(JIS R 1689

b

)

試料

1

)

ファインセラミックス薄膜及び基板の種類

2

)

ファインセラミックス薄膜の膜厚

3

)

反射膜の使用の有無,反射膜を用いた場合はその種類及び膜厚

c

)

測定条件

1

)

環境温度,熱電対の種類,熱電対と試料との位置関係など

2

)

加熱用パルス光:レーザの一般名称(例えば,パルス

YAG

レーザ)

,試料へ照射した平均出力(

W

又は

1

パルス当たりのエネルギー(

J

,パルス幅,波長及びパルスの繰返し周波数

3

)

測温レーザ:レーザの一般名称,連続光又はパルス光のいずれか,試料へ照射した平均出力(

W

又は

1

パルス当たりのエネルギー(

J

,パルス幅及び波長

4

)

測定雰囲気

5

)

繰り返し測定を行うことで温度履歴曲線を得た場合には,その積算回数

d

)

熱拡散率の算出方法

温度履歴曲線を解析して熱拡散率を算出した際に用いた算出方法

e

)

測定結果

1

)

測定値の表示(熱拡散率,環境温度)

2

)

測定データ(温度履歴曲線)

f

)

特記事項

その他特記する必要のある次の事項を記載する。

1

)

この規格の規定に合致しない事項又は受渡当事者間で協定した事項

2

)

その他必要とする事項


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附属書 A

参考)

測温用レーザ発光装置に連続光を用いる装置の構成例

A.1

装置の構成例

連続光を測温用レーザ発光装置に用いる装置の構成例を,

図 A.1 に示す。温度応答測定回路には,

AD

変換回路を用いる。また,加熱用パルス光の一部をハーフミラーなどで切り出してトリガ用受光装置で受

光する。トリガ用受光装置によって加熱用パルス光を電気信号に変換し,これを

AD

変換回路のトリガ信

号として使用する。トリガ用受光装置には,フォトダイオードなどを用いることができる。

装置の時間分解能は,加熱用パルス光のパルス幅,受光装置の応答時間,

AD

変換回路のサンプリング

間隔及び周波数帯域のいずれか最も遅いものに依存する。例として,パルス幅

2 ns

の加熱用パルス光を用

いる場合に,パルス幅と同程度の時間分解能で温度履歴曲線を記録するためには,

AD

変換回路のサンプ

リング間隔はパルス幅より小さいことが望ましい。

図 A.1−連続光を測定用レーザに用いた場合の装置の構成例


10

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附属書 B

参考)

加熱用パルス光を 2 分割し,一方を加熱用

もう一方を測温用のパルス光として用いる装置の構成例

B.1

装置の構成例

1

台のパルス光発光装置から出るビームをビームスプリッタなどで

2

分割し,一方を加熱用パルス光と

して用い,もう一方を測温用のパルス光として用いることができる。この場合の装置の構成例を

図 B.1 

示す。

2

分割した後の加熱用パルス光の光路に

図 B.1 に示す例のような遅延ラインを加える。パルス光を

2

分割した後の測温用のパルス光と加熱用パルス光の光路の長さを完全に一致するように構成したとき,温

度履歴曲線の時刻

t

0

に対応する。

図 B.1 のように遅延ラインが平行に折り返す光学系の場合,光路の長さ

Δx

短くしたときの時刻の変化量

Δt

は,光速度を

c

としたとき式

(B.1)

で表される。

c

x

t

Δ

=

Δ

(B.1)

例えば,

15 cm

の移動距離をもつ遅延ラインを用いた場合では,光路の長さ

Δx

を遅延ラインの移動距離

2

倍の

30 cm

まで変化させることが可能であるので,式

(B.1)

に従っておよそ

1 ns

の時間幅で温度履歴曲

線を記録することが可能である。温度応答測定回路には,ロックインアンプを用いる。また,加熱用パル

ス光には,変調器によって変調周波数の強度変調を加える。変調器には,オプティカルチョッパ,光音響

変調素子,電気光学変調素子などを用いることができる。変調周波数は周波数発生器によって制御し,加

熱用パルス光の繰返し周波数に対しておおよそ

1/100

になるように調整する。受光装置には,フォトダイ

オードなどを用いることができ,応答性能は変調周波数に対応させる。遅延ラインによって,加熱用パル

ス光が試料に到達した時刻を起点とした測温パルス光が到達するまでの時間間隔を制御し,記録装置はこ

の時間間隔を温度履歴曲線における時間軸としてプロットする。縦軸の温度上昇値には,ロックインアン

プから読み取った位相値又は振幅値のどちらでも用いることができるが,位相値を用いる場合には温度上

昇時の位相値の変化幅の目安として

15

℃を超えない条件であることが望ましい。

もしも

15

℃を大きく超

えてしまうのであれば,変調器によって加える変調周波数を低く調整することで改善することができる。


11

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図 B.1台のパルス光発光装置を用いた場合の装置の構成例


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附属書 C 

参考)

測温用レーザ発光装置にパルス光を用いる装置の構成例

C.1

装置の構成例

パルス光を測温用レーザ発光装置に用いる装置の構成例を参考として

図 C.1 に示す。遅延制御装置によ

って測温用パルス光と加熱用パルス光とが繰り返して発光する周波数を固定する。遅延制御装置には,例

えば同期させた

2

台の周波数発生器を用いることができる。遅延制御装置によって,加熱用パルス光が試

料に到達した時刻を起点とした測温パルス光が到達するまでの時間間隔を制御し,記録装置はこの時間間

隔を温度履歴曲線における時間軸としてプロットする。変調器,周波数発生器,ロックインアンプ,受光

装置に必要な性能及び調整は

附属書 と同様である。

図 C.1−パルス光を測定用レーザに用いた場合の装置の構成例


13

R 1689

:2011

附属書 D 

参考)

加熱用パルス光の照射による試料の温度上昇の目安

D.1

試料の温度上昇の目安

繰り返し照射される加熱用パルス光について,その平均出力に対応する連続光を照射したときの試料の

温度上昇量

ΔT

rise

は,式

(D.1)

によって求める。

π

λ

a

Q

T

2

rise

=

Δ

(D.1)

ここに,

Q

試料へ吸収された加熱用パルス光の平均出力(

W

a

加熱用レーザパルスの照射半径(

m

λ

基板の熱伝導率(

Wm

1

K

1


14

R 1689

:2011

   

附属書 E

参考)

加熱用パルス光のパルス幅の選択の目安

E.1

パルス幅の選択の目安

加熱用パルス光のパルス幅

τ

p

は,ファインセラミックス薄膜の膜厚方向の熱拡散の特性時間

τ

に対して

十分短くなければならない。ハーフタイム

t

1/2

に対してその

1/10

以下のパルス幅であれば,温度履歴曲線

をインパルス加熱によるものと同等であると取り扱ってよい。

表 E.1 にファインセラミックス薄膜の膜厚

と熱拡散率との組合せに対して,適用できる最大のパルス幅を示す。

表 E.1−加熱用パルス光のパルス幅

τ

p

の選択の目安

ファインセラミックス薄膜の熱拡散率

m

2

s

1

ファインセ

ラミックス
薄膜の膜厚

nm

1×10

4

5×10

5

1×10

5

5×10

6

1×10

6

5×10

7

1×10

7

200 5.6×10

12

 1.1×10

11

5.6×10

11

1.1×10

10

5.6×10

10

1.1×10

9

 5.6×10

9

250 8.7×10

12

 1.7×10

11

8.7×10

11

1.7×10

10

8.7×10

10

1.7×10

9

 8.7×10

9

300 1.2×10

11

 2.5×10

11

1.2×10

10

2.5×10

10

1.2×10

9

2.5×10

9

 1.2×10

8

350 1.7×10

11

 3.4×10

11

1.7×10

10

3.4×10

10

1.7×10

9

3.4×10

9

 1.7×10

8

400 2.2×10

11

 4.4×10

11

2.2×10

10

4.4×10

10

2.2×10

9

4.4×10

9

 2.2×10

8

450 2.8×10

11

 5.6×10

11

2.8×10

10

5.6×10

10

2.8×10

9

5.6×10

9

 2.8×10

8

500 3.5×10

11

 6.9×10

11

3.5×10

10

6.9×10

10

3.5×10

9

6.9×10

9

 3.5×10

8

550 4.2×10

11

 8.4×10

11

4.2×10

10

8.4×10

10

4.2×10

9

8.4×10

9

 4.2×10

8

600 5.0×10

11

 1.0×10

10

5.0×10

10

1.0×10

9

5.0×10

9

1.0×10

8

 5.0×10

8

650 5.9×10

11

 1.2×10

10

5.9×10

10

1.2×10

9

5.9×10

9

1.2×10

8

 5.9×10

8

700 6.8×10

11

 1.4×10

10

6.8×10

10

1.4×10

9

6.8×10

9

1.4×10

8

 6.8×10

8

750 7.8×10

11

 1.6×10

10

7.8×10

10

1.6×10

9

7.8×10

9

1.6×10

8

 7.8×10

8

800 8.9×10

11

 1.8×10

10

8.9×10

10

1.8×10

9

8.9×10

9

1.8×10

8

 8.9×10

8

850 1.0×10

10

 2.0×10

10

1.0×10

9

2.0×10

9

1.0×10

8

2.0×10

8

 1.0×10

7

900 1.1×10

10

 2.2×10

10

1.1×10

9

2.2×10

9

1.1×10

8

2.2×10

8

 1.1×10

7

950 1.3×10

10

 2.5×10

10

1.3×10

9

2.5×10

9

1.3×10

8

2.5×10

8

 1.3×10

7

1 000  1.4×10

10

 2.8×10

10

1.4×10

9

2.8×10

9

1.4×10

8

2.8×10

8

 1.4×10

7

注記  パルス幅 τ

p

は,表中の数値より小さければよい。


15

R 1689

:2011

附属書 F

参考)

最小二乗法に用いる単層膜の温度応答の理論式

F.1

一般

最小二乗法によって熱拡散率を算出する場合の理論式には種々の方法がある。ここでは,その中で,フ

ァインセラミックス薄膜が外界から断熱されているとした近似によって導かれた理論式,ファインセラミ

ックス薄膜及び基板の

2

層モデルから導かれた温度応答の理論式及び

2

層モデルにおいて更にファインセ

ラミックス薄膜表面から加熱用パルス光が有限の深さだけ浸透した後に熱へと変換される近似による理論

式を示す。これ以外の方法によって熱拡散率を算出した場合には,その算出方法について報告する。

F.2

断熱単層膜の近似

ファインセラミックス薄膜の表面と基板との界面で断熱であるとした境界条件とし,加熱用パルス光は

基板との界面で吸収され熱へと変換されるとした場合の温度応答の理論式は,次の式

(F.1)

又は式

(F.2)

によ

って求める。

⎪⎭

⎪⎩

+

Δ

=

=0

2

2

2

max

2

1

2

exp

2

)

(

n

t

d

n

t

d

T

t

T

α

απ

(F.1)

( )

⎥⎦

⎢⎣

⎡−

+

Δ

=

=1

2

2

max

exp

)

1

(

2

1

)

(

n

n

d

t

n

T

t

T

α

π

(F.2)

ここに,

T(t): パルス加熱後,遅延時間 経過時における薄膜表面の温度上

ΔT

max

: 断熱境界条件における最大温度上昇

α: 熱拡散率(m

2

 s

1

n: 整数

d: 試料の膜厚(m)

式(F.1)及び式(F.2)は等価であり,いずれを用いてもよい。

F.3

薄膜及び基板の 層系モデル

図 F.1 に示される薄膜及び基板の 2 層系モデルにおいて,基板との界面が断熱ではなく,かつ基板の厚

さが半無限遠として取り扱える場合において,温度応答の理論式は次の式(F.3)で求める。

(

)

=

⎟⎟

⎜⎜

+

+

=

0

2

2

s

f

4

1

2

exp

)

(

2

)

(

n

n

t

d

n

t

b

b

t

T

α

γ

π

(F.3)

s

f

s

f

b

b

b

b

+

=

γ

ここに,

b

f

ファインセラミックス薄膜の熱浸透率(

J m

2

 s

0.5

 K

1

b

s

基板の熱浸透率(

J m

2

 s

0.5

 K

1


16

R 1689

:2011

   

F.4

薄膜及び基板の 層系モデルにおいて,加熱用パルス光の有限吸収深さを考慮

薄膜及び基板の

2

層系モデルにおいて,更に加熱レーザパルスを薄膜へ照射したとき,その光のエネル

ギーがファインセラミックス薄膜の吸収係数に依存して減衰しながら吸収されると考えたときには,温度

応答の理論式は次の式

(F.4)

によって求める。

(

)

−∞

=

⎪⎩





+

⎟⎟

⎜⎜

Δ

=

n

n

d

t

d

t

d

n

t

d

n

T

T

2

2

2

max

2

1

2

exp

4

1

2

exp

α

ε

α

α

γ

⎪⎭



+

×

d

t

d

t

d

n

α

ε

α

2

1

2

erfc

(F.4)

ここに,

ε

ファインセラミックス薄膜の吸収係数(

m

1

図 F.1−薄膜及び基板の 層系モデル


17

R 1689

:2011

附属書 G 

参考)

標準物質

G.1

標準物質

一般に薄膜の熱物性値は,内部に存在する欠陥,非常に小さい結晶粒径などに大きく影響を受けるため

に,同じ組成のバルク材料とは異なることが多い。特に,組成,純度,結晶構造及び温度では一義的に熱

物性値が決まらないことに注意が必要である。したがって,測定装置,解析手法の健全性などを確認する

ためには,信頼性の高い標準物質が重要である。近年,

NMIJ

1)

から膜厚方向の熱拡散の特性時間が値付け

された窒化チタン薄膜[

RM

2)

]が頒布されており入手が可能である。参考として,

 NMIJ

1)

から頒布され

ている標準薄膜の仕様の抜粋を次に示す。

番号:

NMIJ RM 1301-a

材料:

窒化チタン(薄膜)/合成石英ガラス(基板)

試料の形状(薄膜部分)

 9.5

mm

×

9.5 mm

×

680 nm

(膜厚は参考値)

試料の形状(基板部分)

 10

mm

×

10 mm

×

0.52 mm

使用温度:

室温

1)

 NMIJ

National Metrology Institute of Japan

)とは,独立行政法人産業技術総合研究所計量標準総

合センターをいう。

2)

 RM

は標準物質の略。


18

R 1689

:2011

   

附属書 H 

規定)

温度履歴曲線の負の傾きの補正法

H.1

温度履歴曲線の補正法

パルス光加熱サーモリフレクタンス法で得られる温度履歴曲線は,試料を加熱用パルス光によって繰り

返し加熱することが原因となり,薄膜がほぼ断熱に近い理想的な条件であったとしても,

図 H.1 における

A

で示される曲線のように,温度履歴曲線全体に負の傾きが重畳した形状となる。これは,フラッシュ法

のような単一のパルス加熱における温度履歴曲線

B

とは本質的に異なることを示している。ここに,試料

の熱拡散の特性時間は

τ

であり,

加熱用パルス光は

τ

10

倍の間隔で繰り返し発振する条件である。

また,

各々の温度履歴曲線は,薄膜と基板の熱浸透率の比が

9

1

の場合を示した。繰返しパルス加熱による影響

は,加熱用パルス光の発光する時間間隔が,薄膜の熱拡散の特性時間

τ

に対して長いほど小さくなる。し

かし,

図 H.1 に示すように温度履歴曲線の負の傾きが目立つ場合には,次に示す手順によって温度履歴曲

線の補正を行うことが望ましい。

注記  図の横軸において t

0

=0 である。

図 H.1−単一のパルス加熱で得られる温度履歴曲線と繰返しパルス加熱とで得られる温度履歴曲線の違い

ここでは,

図 H.2 を基に温度履歴曲線の補正手順を説明する。

a

)

図 H.2 に示した繰返しパルス加熱による温度履歴曲線

A

について,

t

0

より負の時間側の温度履歴曲線

部分を用いて線形近似を行う。線形近似によって得られる直線は

図 H.2 の直線

C

で表される。

b

)

温度履歴曲線

A

から直線

C

を差し引くことで補正された温度履歴曲線

D

を得る。

なお,曲線

B

図 H.1 における単一のパルス加熱における温度履歴曲線

B

を示したものである。補

正された温度履歴曲線

D

は,箇条 8(熱拡散率の算出)に用いることができる。


19

R 1689

:2011

注記  図の横軸において t

0

=0 である。

図 H.2−温度履歴曲線の補正方法


20

R 1689

:2011

   

附属書 I

規定)

金属反射膜を施した場合の面積熱拡散時間法による熱拡散率の算出方法

I.1

熱拡散率の算出方法

加熱用パルス光に対してファインセラミックス薄膜の透過率が高い場合,反射率の温度係数が小さいた

めに十分なサーモリフレクタンスの効果が得られない場合には,ファインセラミックス薄膜を金属の反射

膜によって挟み込んだ

3

層膜を作製する。反射膜は厚さ

100 nm

以上であることが望ましく,材料には

Al

Mo

などを用いることができる。このとき,ファインセラミックス薄膜に施す反射膜は,両側とも,同じ

材料,膜厚,成膜条件となるように注意する。このように,反射膜を両側に施したファインセラミックス

薄膜(

図 I.1)について,面積熱拡散時間法を用いた熱拡散率の算出方法を記す。反射膜を含む

3

層膜が基

板との界面で断熱である境界条件において,面積熱拡散時間

A

は式

(I.1)

によって表される。

(

)

f

f

m

m

f

f

f

m

m

f

f

2

m

m

m

f

f

m

m

2

6

1

3

4

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

A

+

⎟⎟

⎜⎜

+

+

+

+

=

τ

τ

 (I.1)

ここに,

C

f

ファインセラミックス薄膜の単位体積当たりの熱容量

Jm

3

 K

1

d

f

ファインセラミックス薄膜の膜厚(

m

τ

f

ファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間(

s

C

m

反射膜の単位体積当たりの熱容量(

J m

3

 K

1

d

m

反射膜の膜厚(

m

τ

m

反射膜の熱拡散の特性時間(

s

(I.1)

によって算出されたファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間

τ

f

を用いて,熱拡散率

α

を式

(I.2)

によって求める。

f

2

f

τ

α

d

=

 (I.2)

注記

単位体積当たりの熱容量は,同じ組成のバルクの文献値,測定などによって決める。

図 I.1−金属の反射膜を両側に施したファインセラミックス薄膜の例


21

R 1689

:2011

附属書 J

参考)

界面熱抵抗の影響

J.1

界面抵抗の影響

附属書 で示した試料の両側を金属の反射膜で挟み込んだ

3

層膜を作製した場合において,反射膜と試

料との界面に熱抵抗

R

が存在するとき,面積熱拡散時間は,式

(J.1)

で与えられる。

(

)

f

f

m

m

f

f

m

m

m

m

f

f

m

m

f

f

f

m

m

f

f

2

m

m

m

f

f

m

m

2

2

2

6

1

3

4

d

C

d

C

d

C

d

C

d

RC

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

d

C

A

+

+

+

+

⎟⎟

⎜⎜

+

+

+

+

=

τ

τ

(J.1)

したがって界面熱抵抗が無視できない場合には,面積熱拡散時間

A

は熱抵抗

R

によって式

(J.1)

の第

2

の分だけ増加する。

図 J.1 に,試料として

SiO

2

薄膜を考え,これに反射膜として厚さ

100 nm

Mo

薄膜を

施して

3

層膜とした場合に,式

(J.1)

2

項が面積熱拡散時間

A

に占める割合を示した。

図 J.1 の横軸は,

SiO

2

薄膜の膜厚である。図中には,

SiO

2

Mo

との界面熱抵抗

R

が,それぞれ

10

10

10

9

及び

10

8

 m

2

KW

1

であるときのグラフを示した。セラミックスと金属の界面の熱抵抗はおおよそ

10

9

 m

2

KW

1

のオーダで

あることが報告

1)

されており,

SiO

2

薄膜の膜厚が

100 nm

以上では界面熱抵抗の影響はほぼ無視できると

考えられる。ただし,反射膜を施す場合には,界面に汚染がないように注意する。

図 J.1SiO

2

薄膜における式

(

J.1

)

の第 項の割合

1)

界面熱抵抗についての詳細な議論は

E. T. Swartz and R. O. Pohl, “Thermal boundary resistance”,

Reviews of Modern Physics, vol. 61, No. 3, (1989), pp 605-668

を参照するとよい。