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R 1672

:2006

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。

JIS R 1672

には,次に示す附属書がある。

附属書 1(規定)校正用の純物質及び標準物質

附属書 2(規定)比熱容量の参照データ

附属書 3(規定)等温ベースラインの不一致を考慮した解析方法

附属書 4(規定)試料容器質量の補正方法


R 1672

:2006

目  次

ページ

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

1

4.

  測定法の概要 

2

5.

  測定装置及び器具

2

5.1

  示差走査熱量計

2

5.2

  ガス流量計 

2

5.3

  化学天びん 

2

6.

  試験試料の準備 

3

7.

  示差走査熱量計の校正 

3

8.

  測定方法

4

8.1

  共通事項 

4

8.2

  測定の順番 

4

8.3

  空容器の測定 

4

8.4

  参照試料の測定

5

8.5

  試験試料の測定

5

9.

  比熱容量の算出 

5

9.1

  一般

5

9.2

  DSC 曲線の解析

5

9.3

  等温ベースラインの不一致を考慮した解析

6

9.4

  試料容器質量の補正

6

9.5

  平均化処理 

6

10.

  数値の丸め方 

6

11.

  報告 

6

附属書 1(規定)校正用の純物質及び標準物質

8

附属書 2(規定)比熱容量の参照データ 

9

附属書 3(規定)等温ベースラインの不一致を考慮した解析方法 

12

附属書 4(規定)試料容器質量の補正方法 

13


日本工業規格

JIS

 R

1672

:2006

長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法

による比熱容量測定方法

Determination of specific heat of fiber-reinforced ceramics composite

by differential scanning calorimetry methods

1. 

適用範囲  この規格は,セラミックス長繊維及びセラミックス母材によって構成される長繊維強化セ

ラミックス複合材料の比熱容量を,示差走査熱量法によって室温から 1 273 K(1 000  ℃)まで測定する方

法について規定する。ただし,測定機器は入力補償 DSC,熱流束 DSC のいずれかの示査走査熱量計を対

象とし,定速昇温の連続加熱法による測定を規定する。

2. 

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0129

  熱分析通則

JIS K 7121

  プラスチックの転移温度測定方法

JIS R 1600

  ファインセラミックス関連用語

JIS Z 8401

  数値の丸め方

3. 

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0129JIS R 1600 によるほか,次による。

a)  DSC

  示差走査熱量法(differential scanning calorimetry)又は示差走査熱量計(differential scanning

calorimeter

JIS K 0129 c)  及び o)  を参照。

b)  DSC

信号  DSC で直接測定される信号で,熱流束 DSC では熱起電力差又は熱入力差,入力補償 DSC

では補償エネルギー差又は熱入力差。

c)

DSC

曲線  所定の温度制御に従って得られた DSC 信号の時間又は温度に対する変化。

d)

熱入力差  DSC の試料容器側と参照容器側とに流入する単位時間当たりの熱エネルギーの差。ただし

入力補償 DSC では等価な単位時間当たりの補償エネルギーの差。

e)

連続加熱法  試料を定速昇温で連続的に加熱し DSC 信号を得る方法。

f)

3

ステップ温度制御  初段の等温制御,中段の定速昇温制御,終段の等温制御からなる連続加熱法に

用いる温度制御。

g)

昇温速度(b)  3 ステップ温度制御の中段の定速昇温における単位時間当たりの昇温の割合。

h)

等温ベースライン  初段又は終段の等温制御下の定常状態で得られる DSC 曲線。

i)

仮想ベースライン  中段の定速昇温制御で得られる DSC 信号のゼロ点を与える仮想的ベースライン。

j)

試験試料片  セラミックス複合材料から切り出された,DSC の比熱容量測定のための試料片。

k)

参照試料片  DSC の比熱容量測定で用いる参照用の試料片。


2

R 1672

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l)

比熱容量(C

p

)  定圧比熱容量のこと。単位質量当たりの物質・材料の温度を定圧下で 1 K 上昇させ

るのに必要な熱エネルギー。

m)

基準単位体積(V

u

)

  セラミックス複合材料の周期構造を反映した最小単位体積で,試料片の代表性を

評価する基準となる単位体積。

4. 

測定法の概要  この規格では,入力補償 DSC と熱流束 DSC とを原理的に等価なものとして扱い,3

ステップ温度制御による連続加熱法に基づきセラミックス複合材料の比熱容量を DSC によって測定する

方法について規定する。ただし,セラミックス複合材料の不均質性を考慮し,基準単位体積に比べて十分

大きな試験試料片が得られる場合と得られない場合とで,試料片の準備及び測定データ処理の方法を区別

する。また,DSC 曲線の等温ベースラインが一致しない場合の解析方法を

附属書 に,試料容器質量の補

正方法については

附属書 に,それぞれ規定する。

5. 

測定装置及び器具

5.1 

示差走査熱量計  図 に示すように,試料側と参照側とに二つの容器ホルダーをもつ基本的な構造

と,それらのホルダーの熱容量が同等で,かつ,同一な熱交換条件で加熱及び冷却が可能な機能とをもつ

ものとする。ただし,その計測制御方法の違いから,熱流束 DSC では両ホルダーの温度差に比例する単位

時間当たりの熱エネルギーの入力差を測定し,入力補償 DSC では温度を等しく保つために両ホルダーに加

える単位時間当たりの熱エネルギーの入力差を測定するものとする。次に主な仕様を示す。

a)

昇温速度  毎分 10∼20 K の範囲の一定の速度で昇温でき,その再現性は毎分±0.1 K とする。

備考  等温制御に要求される安定性は温度範囲によって異なるが,室温で±0.5 K,1 273 K で±1 K 程

度である。

b)

ガス流入装置  ガス流入装置は,試料の周りに毎分 10∼50 ml の範囲の一定流量でガスを導入できる

構造とする。

c)

試料容器  試料容器は,測定条件下で試料及び雰囲気によって侵されることのない熱伝導率の高い材

料とする。

d)

データ記録装置  DSC 曲線を 0.5 秒以下のサンプリング間隔でディジタル又はアナログのいずれかの

方式で自動記録でき,この規格に規定する比熱容量算出法が適用できるデータ形式で記録データを出

力できる装置を用いる。

5.2 

ガス流量計  ガス流量計は,ガス種の違いに応じて毎分 10∼50 ml の範囲の流量を測定できる能力

を必要とする。

5.3 

化学天びん  化学天びんは,感量 0.01 mg 以上とする。


3

R 1672

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  1  DSC の基本構成

6. 

試験試料の準備  試験試料の準備は,次による。

a)

試験試料の基準単位体積 V

u

を見積もる。

備考  セラミックス複合材料の立体的周期構造を反映した 3 軸方向の繰り返し長さ l

x

l

y

l

z

から V

u

l

x

l

y

l

z

と見積もるのが妥当である。

b)

試料容器に適合する試料片を切断加工する。具体的には,試料容器(通常,内径 5∼6 mm で深さ 2 mm

程度)内部の底面積比にして 60  %以上の接触面積が確保された,厚さが一定の薄板状試料片を作製

する。形状は円形,方形のいずれでもよい。

c)

b)

で得られた試料片の体積 V

t

と a)で求めた基準単位体積 V

u

とを比較する。V

t

≧  5V

u

の場合には,試

験試料片として測定に用いる。ただし,V

t

<5V

u

の場合には,次の二つの選択を可能とする。

1)

整数倍の試験試料片(V

t

=4V

u

,3V

u

,2V

u

V

u

)を 1 個用意し,測定に使用する。

2)

複数個の試験試料片(V

t

<5V

u

)を作製し,全測定の平均値を使用する。

d)

材料は受領時の状態で加工に,また,試料片は作製時の状態で測定に用いることを基本とするが,加

工・測定に先立ち熱処理,機械的処理などを施した場合は報告する。

備考  作製した試験試料片が多孔性の場合,主に水分子を中心とした吸着分子の脱着現象に伴う吸熱

が,測定に不確かさを生じる場合があり,これが明らかに予見される場合には,加工・分析に

先立ち加熱脱着処理を行う必要がある。

7. 

示差走査熱量計の校正  熱流束 DSC,入力補償 DSC のいずれの装置においても,温度校正を次の要

領で必要な周期で行う。また,比熱容量を決めるための装置の感度校正を,次の要領で比熱容量標準物質

(a) 

熱流束 DSC

(b) 

入力補償 DSC


4

R 1672

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を用いて測定ごとに行う。

a)

温度校正  温度の校正は,実際の比熱容量測定と同じガス流量及び昇温速度で,純度 99.99  %以上の

純物質(

附属書 表 1)又は標準物質(附属書 表 2)を用いて行う。求めようとする温度に近い 2

種類以上の純物質又は標準物質の補外融解開始温度(JIS K 7121 の 9.1)を用いて内挿法によって温度

目盛を校正する。

b)

感度校正  装置の感度校正には,比熱容量標準物質として純度 99.9  %以上の α アルミナを材質とす

る円板状の参照試料片を用いる。化学天びんを用いて 0.01 mg まではかった質量 10∼100 mg 程度の参

照試料片を測定し,DSC 信号(空容器信号差し引き後)の読取り値を

附属書 表 に示す α アルミ

ナの比熱容量値に対応させることによって,DSC 曲線の縦軸の感度を測定ごとに校正する。

8. 

測定方法

8.1 

共通事項  空容器,参照試料,試験試料の一連の測定は同一の共通条件で行われるべきである。試

験試料の材質及び測定温度範囲を考慮し,使用する試料容器,雰囲気ガスの種類及び流量,測定区間及び

制御プログラムなどの共通事項をあらかじめ設定する。互いに異なる条件を設定する場合には,理由とと

もに報告する。

a)

容器の選定  使い捨て容器の場合には試料容器を 4 個用意する。ただし,繰り返して利用可能な容器

の場合には 2 個でよい。いずれの場合も,ふたを含めた試料容器の質量が互いに 2  %以内で一致する

よう選定する。

b)

雰囲気ガスの種類及び流量  試料空間に導入するガスは,窒素ガス,アルゴンガス又はヘリウムガス

のいずれかとし,毎分 10∼50 ml の範囲で一定の流量値を設定する。

c)

測定区間及び温度制御  等温ベースラインが安定して得られる温度範囲内では一回の走査によって測

定を行う。等温ベースラインの変動が大きい場合には,測定温度範囲を二つ以上の区間に分けて測定

する。通常一区間の走査幅(T

f

と T

i

の差)を入力補償 DSC で 50∼100 K,熱流束 DSC で 200∼500 K

に設定する。

なお,各測定区間は区間幅の約 20  %程度の範囲でオーバーラップさせながら設定する。

図 に示

すような 3 ステップ温度制御を行う。

1)

初段の温度 T

i

での等温制御(

図 の I,時刻 t

i

以前)

2)

中段の昇温速度 での定速昇温制御(

図 の II,時刻 t

i

から t

f

3)

終段の温度 T

f

での等温制御(

図 の III,時刻 t

f

以降)

8.2 

測定の順番  測定の順番は,8.38.5 に示すとおり,空容器,参照試料,試験試料の順とする。この

順番と異なる場合,又は空容器,参照試料の測定を間引く場合には理由とともに報告する。

備考  空容器,参照試料,試験試料の一連の測定は連続して 1 日以内に終えることが望ましい。

8.3 

空容器の測定  空容器の測定は,次による。

a)

使用する容器(ふたを含む)の質量をそれぞれ 0.01 mg まで測定する。

b)

ふたをした空の容器を試料側,参照側の二つの容器ホルダーに 1 個ずつ載せる。

c)

雰囲気ガスを試料空間に導入する。ガス種及び流量は 8.1 b)  の設定のとおり。一連の測定が終了する

まで一定流量を維持する。

d)  T

i

で等温制御し装置を安定させた後,DSC 信号を記録し,等温ベースライン(

図 の領域 I)を得る。

入力補償 DSC で 5 分以上,熱流束 DSC で 20 分以上記録する。

e)

引き続いて毎分 10∼20 K の範囲の一定の速度で昇温し,DSC 信号を記録する(

図 の領域 II)。昇温


5

R 1672

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速度が範囲外の場合は報告する。

f) 

T

f

で昇温を止め,等温制御下で DSC 信号を記録し,等温ベースライン(

図 の領域 III)を得る。入

力補償 DSC で 5 分以上,熱流束 DSC で 20 分以上記録する。

g)  8.1c)

で温度範囲を二区間以上定めた場合は,次の測定区間で d)f)  の過程を繰り返す。

h)

すべての測定区間を終了後,装置の温度を室温に戻す。

8.4

参照試料の測定  参照試料の測定は,次による。

a)

使用する容器(ふたを含む)の質量をそれぞれ 0.01 mg まで測定する。8.3 における容器と同一の容器

を使用する場合は測定の必要はない。

b)

比熱容量標準物質で作られた参照試料片[7. b)  を参照]の質量を,0.01 mg まで測定する。

c)

試料片を入れた容器を試料側ホルダーに,空の容器を参照側ホルダーに 1 個ずつ載せる。

d)

以下,8.3 c)h)  の過程を繰り返す。

8.5 

試験試料の測定  試験試料の測定は,次による。

a)

使用する容器(ふたを含む)の質量をそれぞれ 0.01 mg まで測定する。8.3 における容器と同一の容器

を使用する場合は測定の必要はない。

b)  6.

に従い用意された試験試料片の質量を 0.01 mg まで測定する。

c)

試料片を入れた容器を試料側ホルダーに,空の容器を参照側ホルダーに 1 個ずつ載せる。

d)

以下,8.3 c)h)  の過程を繰り返す。

9. 

比熱容量の算出

9.1 

一般  データ記録装置に記録された測定データに基づき,次の手続きに従って比熱容量を算出する。

この算出手続きに熱量計に付随する解析プログラムを用いる場合は,この規格への適合性をあらかじめ確

認する。

9.2 DSC

曲線の解析

a)  8.3

8.4 及び 8.5 の操作で得られた三つの DSC 曲線の等温ベースラインがほぼ一致する場合には,T

i

及び T

f

の等温べースラインが互いに重なり合うように,縦軸方向に平行移動し

図 のような作図を行

う。

b)

データの読取りは,a)  で作成した

図 の領域 II において,比熱容量を求めようとする温度 におけ

る試験試料の信号変位 D

t

及び校正用試料の信号変位 D

s

について行う。

c)

次の式によって比熱容量を算出する。

)

(

)

(

)

(

)

(

ps

t

s

s

t

pt

T

C

m

m

T

D

T

D

T

C

×

×

=

 (1)

ここに,

C

pt

(T)

温度 での試験試料の比熱容量(JK

-1

g

-1

C

ps

(T)

温度 での参照試料の比熱容量(JK

-1

g

-1

D

t

(T)

空容器測定を基準とした試験試料測定の DSC 曲線
の信号変位(mW)

D

s

(T)

空容器測定を基準とした参照試料測定の DSC 曲線
の信号変位(mW)

m

t

試験試料片の質量(g)

m

s

参照試料片の質量(g)

d)

  C

ps

(T)

は,

附属書 表 に示すαアルミナの比熱容量テーブルから,温度 を挟む前後のデータを内

挿することで決定する。


6

R 1672

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  2  DSC 曲線の解析例

9.3 

等温ベースラインの不一致を考慮した解析  9.2 a) において,参照試料又は試験試料のいずれかの

信号変位の最大値の 0.5  %以上の等温ベースラインの不一致がみられる場合には,

附属書 に示す方法で

等温ベースラインの不一致を考慮した上で比熱容量を算出することができる。

9.4 

試料容器質量の補正  測定に使用した試料容器間の質量の不一致が,参照試料又は試験試料のいず

れかの質量の 0.5  %よりも大きい場合には,

附属書 に示すやり方で補正を行うことができる。

9.5 

平均化処理  6. c) 2)  に示すように,基準単位体積の 5 倍より小さな試験試料片を複数個用意し測定

する選択をした場合には,すべての試料片の算出値の平均値を求め,これを比熱容量の測定値として代表

させる。

10. 

数値の丸め方  測定結果は,JIS Z 8401 によって,有効数字 4 ケタまで求める。

11.

報告  報告には,必要に応じて次の事項を記入する。

a) 

試料

1) 

試料の名称及び材質

2) 

試験試料片の形状及び寸法

3) 

試験試料片の質量

4) 

熱処理,機械処理などの前処理の有無及び内容

b) 

測定条件

1) 

測定年月日及び測定機関

2) 

測定装置(製造業者名,種類及び型式)

3) 

測定雰囲気(使用したガスの種類及びその流量)

t

D

t

(T)

D

s

(T)

高温

低温

ENDO

EXO

温度

熱入

時刻

等温領域 I

等温領域 III

昇温領域 II

t

i

t

f

T

T

f

T

i


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R 1672

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4) 

試料容器(材質,形状及び質量)

5) 

参照試料片(材質,純度,形状及び質量)

6) 

昇温速度及び温度制御プログラム

c) 

データ処理

1) 

等温ベースラインの補正の有無及びその内容

2) 

試料容器質量の補正の有無及びその内容

3) 

平均化処理の有無及びその内容

d) 

測定結果

1) 

試験試料の測定値(試料の測定温度及び単位質量当たりの比熱容量)

2) 

各 DSC 曲線(空容器,参照試料及び試験試料)のデータシート

e) 

特記事項

1) 

測定温度区間が複数の場合の測定履歴(測定の順番,回数などを記したもの)

2) 

複数個の試料片を測定する場合の測定履歴(測定の順番,回数などを記したもの)

3) 

この規格の規定に合致しない事項,又は受渡当事者間で協定した事項

4) 

その他特に必要とする事項


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附属書 1(規定)校正用の純物質及び標準物質

1. 

適用範囲  この附属書は,DSC の校正に用いる純物質及び標準物質について規定する。

2. 

校正用の純物質及び標準物質  示差走査熱量計の校正に用いる純物質及び標準物質を,それぞれ附属

書 表 1,附属書 表 に示す。これら金属系純物質の融解温度を基準に温度校正を行うことができる。

熱量計の感度校正に用いることができる比熱容量の標準物質を,

附属書 表 に示す。金属系純物質の融

解エンタルピーを基準に感度校正を行う方法もあるが,この規格ではその方法を用いないため,融解エン

タルピーの記載を省く。

附属書   1  金属系純物質及びその融解温度

純物質

融解温度  (℃)

融解温度 (K)

ガリウム

                            29.78

                          302.93

インジウム

                          156.4

                          429.5

すず

                          231.8

                          504.9

ビスマス

                          271.4

                          544.5

                          327.4

                          600.5

亜鉛

                          419.4

                          692.5

アルミニウム

                          660

                          933

                          962

                      1 235

                      1 064

                      1 337

備考  純物質は表面の酸化層を落として使用する。容器がアルミニウムで純物質に亜鉛を用いる場合には,溶融時に

合金となるおそれがあるので,第 1 回の加熱昇温時の値だけを用いる。 

附属書   2  DSC 校正用標準物質

標準物質

材質

NIST SRM2232

インジウム

NIST SRM2220

すず

PTB ZRM-31401

ガリウム

PTB ZRM-31402

インジウム

PTB ZRM-31403

すず

PTB ZRM-31404

ビスマス

附属書   3  比熱容量標準物質

比熱容量標準物質

材質

温度範囲  (K)

NIST SRM720

合成  α  アルミナ

10

∼2 250

NIST SRM781

モリブデン

273.15

∼2 800

備考 NIST : 米 国 標 準 技 術 局 ( National Insutitute of Standard and Technology), PTB : ド イ ツ 物 理 工 学 研 究 所

(Physikalisch-Technischen Bundesanstalt)


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R 1672

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附属書 2(規定)比熱容量の参照データ

1.

適用範囲  この附属書は,DSC の校正に用いるαアルミナの比熱容量の参照データについて規定する。

2. 

比熱容量の参照データ  示差走査熱量計では比熱容量値の知られた参照試料との比較測定によって試

験試料の比熱容量が決定される。参照試料用の比熱容量標準物質として最もよく用いられるαアルミナの

比熱容量値を,

附属書 表 に示す。

なお,この表の値は NIST SRM720  (合成αアルミナ)の比熱容量評価データに基づく。

附属書 に示すように,試料容器質量差に伴う比熱容量算出値に対する補正には,試料容器の比熱容量

値を知る必要がある。試料容器の材質として最もよく用いられるアルミニウムの比熱容量値を,

附属書 2

表 に示す。

附属書   1  αアルミナの比熱容量値

T

(ºC)

T

(K)

C

p

(JK

-1

g

-1

−153.15 120

0.1

9

−143.15 130

0.2

0

−133.15 140

0.2

0

−123.15 150

0.3

3

−113.15 160

0.3

5

−103.15 170

0.3

2

−93.15 180

0.4

0

−83.15 190

0.4

9

−73.15 200

0.5

4

−63.15 210

0.5

6

−53.15 220

0.5

4

−43.15 230

0.5

6

−33.15 240

0.6

4

−23.15 250

0.6

7

−13.15 260

0.6

6

−3.15 270

0.7

2

              6.85

280

0.734 4

             16.85

290

0.757 4

             26.85

300

0.779 2

             36.85

310

0.799 9

             46.85

320

0.819 4

             56.85

330

0.838 0

             66.85

340

0.855 6

             76.85

350

0.872 1

             86.85

360

0.887 8

             96.85

370

0.902 7

            106.85

380

0.916 8

            116.85

390

0.930 2

            126.85

400

0.942 9

            136.85

410

0.955 0

            146.85

420

0.966 6

            156.85

430

0.977 5


10

R 1672

:2006

附属書   1  αアルミナの比熱容量値(続き)

T

(ºC)

T

(K)

C

p

(JK

-1

g

-1

166.85 440 0.9

9

176.85 450 0.9

5

186.85 460 1.0

4

196.85 470 1.0

4

206.85 480 1.0

0

216.85 490 1.0

2

226.85 500 1.0

1

236.85 510 1.0

6

246.85 520 1.0

9

256.85 530 1.0

8

266.85 540 1.0

2

276.85 550 1.0

8

286.85 560 1.0

9

296.85 570 1.0

7

306.85 580 1.0

4

316.85 590 1.0

8

326.85 600 1.1

0

336.85 610 1.1

0

346.85 620 1.11 8

356.85 630 1.11 4

366.85 640 1.1

8

376.85 650 1.1

2

386.85 660 1.1

3

396.85 670 1.1

3

406.85 680 1.1

3

416.85 690 1.1

1

426.85 700 1.1

7

446.85 720 1.1

8

466.85 740 1.1

5

486.85 760 1.1

7

506.85 780 1.1

7

526.85 800 1.1

4

546.85 820 1.1

9

566.85 840 1.1

0

586.85 860 1.1

9

606.85 880 1.1

6

626.85 900 1.2

1

646.85 920 1.2

4

666.85 940 1.21 6

686.85 960 1.2

5

706.85 980 1.2

4

726.85 1

000  1.2

0

746.85 1

020  1.2

5

766.85 1

040  1.2

2

786.85 1

060  1.2

8

806.85 1

080  1.2

3


11

R 1672

:2006

附属書   1  αアルミナの比熱容量値(続き)

T

(ºC)

T

(K)

C

p

(JK

-1

g

-1

826.85 1

100

1.2

846.85 1

120

1.2

866.85 1

140

1.2

886.85 1

160

1.2

906.85 1

180

1.2

926.85 1

200

1.2

976.85 1

250

1.265

1 026.85

1 300

1.272

備考 SRM720 は DSC の参照試料片として必要な十分な大きさをもたないため,通常,その評価値だけが使用され,

出処の異なるαアルミナが参照試料として用いられることが多い。 

附属書   2  アルミニウムの比熱容量値

T

(℃)

T

(K)

C

p

(JK

-1

g

-1

−123.2

150

0.686 8

            −113.2

160

0.715 5

            −103.2

170

0.740 9

              −93.15

180

0.763 3

              −83.15

190

0.783 3

              −73.15

200

0.802 2

            −63.15

210

0.814 5

            −53.15

220

0.828 1

            −43.15

230

0.840 5

            −33.15

240

0.851 7

            −23.15

250

0.862 1

            −13.15

260

0.871 7

              −3.15

270

0.879 7

              6.85

280

0.888 6

             16.85

290

0.893 7

             26.85

300

0.904

            126.85

400

0.955

            226.85

500

1.000

            326.85

600

1.042

            426.85

700

1.085

            526.85

800

1.143


12

R 1672

:2006

附属書 3(規定)等温ベースラインの不一致を考慮した解析方法

1. 

適用範囲  この附属書は,DSC 曲線の等温ベースラインの不一致を補正するための解析方法を規定す

る。

2. 

等温ベースラインの解析方法  本体の 8.38.4 及び 8.5 の操作で得られた三つの DSC 曲線の等温ベー

スラインが一致しない場合のデータ解析要領を,

附属書 図 に示す。この図には前後に等温制御を伴う

定速昇温プログラム及びこれに伴う DSC 曲線 2 本が模式的に描かれている。上側及び下側の DSC 曲線は

それぞれ,試験試料測定及び空容器測定のものを想定している。

附属書 図 に示す例では,2 本の DSC

曲線を,互いを平行移動しても等温領域 I 及び等温領域 III のベースラインをともに一致させることはでき

ないことが分かる。したがってこのような事例では,本体の 9.2 に規定するような DSC 曲線の解析をその

まま適用できないため,次の手順に従って,D

t

T)及び D

s

T)を再定義して C

pt

T)を決定する。

a)

  2

本の DSC 曲線に対して,それぞれ独立した仮想ベースラインを昇温領域 II において設定する。この

仮想ベースラインの定義は,等温領域 I における直線部を tt

i

まで外挿した端点と,等温領域 III にお

ける直線部を tt

f

まで外挿した端点とを結ぶ直線とする。

b)

附属書 図 に示すとおり,時刻 すなわち,温度が における各 DSC 曲線の信号変位を各仮想ベー

スラインからの変位,すなわち,D

t1

T)及び D

t0

T)と定義する。

c)

試験試料測定時の信号変位を,D

t1

T)と D

t0

T)との和で与える。すなわち,D

t

T)=D

t1

T)+

D

t0

T)と再定義する。

d)

同様に,参照試料測定時の信号変位を,D

s1

T)と D

s0

T)との和とする。すなわち,D

s

T)=D

s1

T)+D

s0

T)と再定義する。

e) a)

d)  の手続きで得られた D

t

T)及び D

s

T)を用いて,本体の 9.2 c)  及び 9.2 d)  の手順に従い C

pt

T)を決定する。

附属書   1  等温ベースラインの不一致を考慮した解析例

高温

低温

温度

EN

D

O

EXO

熱入

力差

時刻

等温領域 I

等温領域 III

昇温領域 II

T

D

s1

(T)

D

s0

(T)

T

f

T

i

t

t

i

t

f


13

R 1672

:2006

附属書 4(規定)試料容器質量の補正方法

1. 

適用範囲  この附属書は,

DSC

による比熱容量測定で試料容器質量の補正方法を規定する。

2. 

試料容器質量の補正方法  示差走査熱量法は,空容器,参照試料及び試験試料の

3

回の測定を行って

初めて試験試料の比熱容量が決定できる方法である。したがって,同一試料容器を用いる場合以外は,厳

密には試料容器ごとに異なる熱容量の差を考慮し補正する必要がある。本体の 8.1 a) に規定するとおり,

同じ材質の容器質量が互いによく(

2

%以内)一致する場合は,通常の用途では補正が必要な程度ではな

い。ただし,本体の 9.4 に示すように,その不一致度が参照試料又は試験試料のいずれかの質量の

0.5

よりも大きい場合には,次に従い補正を行うことが望ましい。

試料容器質量の個体差に伴う熱容量の補正までも考慮した,信号変位の関係式は次のとおりである。

(

)

(

)

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

ps

s

pc

cb

cs

pt

t

pc

cb

ct

s

t

T

C

m

T

C

W

W

T

C

m

T

C

W

W

T

D

T

D

×

+

×

×

+

×

=

 (1)

ここに,

  C

pc

(T)

: 試料容器の比熱容量(

JK

-1

g

-1

C

pt

(T)

: 温度

T

での試験試料の比熱容量(

JK

-1

g

-1

C

ps

(T)

: 温度

T

での参照試料の比熱容量(

JK

-1

g

-1

D

t

(T)

: 空容器測定を基準とした試験試料測定の

DSC

曲線の

信号変位(

mW

D

s

(T)

: 空容器測定を基準とした参照試料測定の

DSC

曲線の

信号変位(

mW

m

t

: 試験試料片の質量(

g

m

s

: 参照試料片の質量(

g

W

cb

: 空容器測定に用いた試料容器の質量(

g

W

ct

: 試験試料測定に用いた試料容器の質量(

g

W

cs

: 参照試料測定に用いた試料容器の質量(

g

これから,試験試料の比熱容量は,次の式で与えられる。

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

)

(

pc

t

cb

ct

ps

t

cb

cs

s

t

ps

t

s

s

t

pt

T

C

m

W

W

T

C

m

W

W

T

D

T

D

T

C

m

m

T

D

T

D

T

C

×

+

×

×

+

×

×

=

··· (2)

式(

2

)右辺の第

2

項は,参照試料測定と空容器測定時との試料容器質量の差に起因する補正項で,第

3

項は試験試料測定と空容器測定時との試料容器質量の差に起因する補正項である。式(

2

)に従い補正を行

うためには,温度依存性までも含めた試料容器の比熱容量の値が必要になる。通常,使い捨て容器である

アルミニウムパンが最もよく用いられるので,アルミニウムの比熱容量値を

附属書 表 に示す。

備考

試験試料の単位質量当たりの比熱容量に比べて試料容器の単位質量当たりの比熱容量がより大

きな場合には,補正の必要性がより高まる。したがって,試料容器の個体差が試験試料の比熱

容量算出値に

0.5

%以上の影響を与えるか否かをもってこの補正の必要性を最終的に判断する

のが妥当である。