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R 1640 : 2002

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。

この規格の一部が、技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。主務大臣及び日本工業標準調査会は,

このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は,出願公開後の実用新案

登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

JIS R 1640

には,次に示す附属書がある。

附属書 1(参考)  窒化けい素の回折図形

附属書 2(参考)  ガザーラ法

附属書 3(参考)  プロファイルフィッティング法

附属書 4(参考)  リートベルト法


日本工業規格

JIS

 R

1640

: 2002

窒化けい素の相組成分析方法

Methods for the quantitative phase analysis of silicon nitride

1.

適用範囲  この規格は,X 線回折装置を用いた窒化けい素の相組成分析方法について規定する。

備考  この規格でいう窒化けい素は,

α

形及び

β

形窒化けい素を意味し,以下においてそれぞれを

α

及び

β

相と称する。また,この規格でいう相組成分析方法は

α相及び

β

相の質量百分率の分析に

適用され,これら両相以外の結晶相又は非晶質相が含まれる場合は,相組成分析はそれら

α

及び

β

相の相対的な質量比の分析となる。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む)を適用する。

JIS K 0131

  X 線回折分析通則

JIS R 1600

  ファインセラミックス関連用語

JIS Z 8401

  数値の丸め方

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0131 又は JIS R 1600 によるもののほかは,次によ

る。

a)

ガザーラ法  (the Gazzara method)    個々の回折線強度を観測データとして用いた,窒化けい素の相組

成分析方法の一つである。この方法は,個々の回折線強度から結晶構造及び回折角(回折線位置)に

依存した部分を取り除いて規格化し,更にそれらの平均値を用いることによって統計誤差を減少させ,

相組成分析の精度を向上させたものである。個々の回折線強度として,ピーク強度又は積分強度を使

用する。

b)

プロファイルフィッティング法  (the individual profile-fitting method)    粉末回折パターンにおいて重

なった回折線を個々のブラッグ反射成分に分解するパターン分解法の一つである。各反射の積分強度,

回折線位置,及びプロファイルの幅・形状などに関するパラメータが得られる。比較的狭い 2

θ

範囲の

分解に適用され,原理的に格子定数,構造パラメータなどの予備知識を必要とせずに適用できる特徴

をもつ。この規格においては,ガザーラ法で用いる積分強度を求める方法として使用する。

c)

リートベルト法  (the Rietveld method)    結晶構造モデル及びプロファイルモデルに基づいて計算され

た理論粉末回折パターンを,最小二乗法を用いて観測パターン全体にフィッティングすることによっ

て,結晶構造パラメータを精密化することを目的とした方法である。試料が複数成分の場合,フィッ

ティングによって精密化される各成分のスケール因子が被照射体積に比例することを用いて相組成分

析を行うことができる。

4.

装置  JIS K 0131 によって規定された X 線回折装置のうち,集中方式に基づいた回折装置を用いる。


2

R 1640 : 2002

5.

試料及びその調整方法  試料は粉末試料とし,JIS K 0131 に記された方法によって試料ホルダーへ充

てんする。試料が焼結体の場合は,分析精度の観点から,粉砕によって粉末試料とすることが望ましい。

6.

回折強度の測定  プロファイル強度を測定する。測定は,JIS K 0131 によるほか,次の項目について

条件を設定して行う。

a)

回折装置

1)

X

線管球  ターゲットが銅の管球を使用する。

2)

受光スリット  0.15∼0.3mm の範囲のものを使用する。

3)

モノクロメータ  S/N 比の向上のため,回折側においてグラファイトモノクロメータを使用するこ

とが望ましい。

b)

測定法

1)

走査法  各ステップでの計数時間を一定にした,定時ステップ走査法による(

1

)

(

1

)

計数統計に関する情報が失われるため,測定したプロファイル強度データに対してスムージン

グを行ってはならない。

2)

走査範囲  相組成分析方法によって,次の範囲を走査する。

2.1)

ガザーラ法  18∼45° (2

θ

)

の範囲とする。

2.2)

リートベルト法  18∼80° (2

θ

)

の範囲とする。

3)

走査ステップ幅  0.01∼0.04°の範囲内の値とする(0.02°とすることが望ましい。)。

4)

計数時間  分析対象となる回折ピーク強度が平均で 1 000 カウント程度得られるように,各ステッ

プでの計数時間を設定する。

7.

窒化けい素の相組成分析方法

7.1

方法の区分  窒化けい素の相組成分析方法は,次のいずれかの方法による。

a)

ガザーラ法

b)

リートベルト法

7.2

ガザーラ法  ガザーラ法を用いた相組成分析方法は,次による。

a)

測定した回折強度データから,次の方法で回折線強度(積分強度又はピーク強度)を測定する(

2

)

(

2

)

分析精度の観点から,積分強度の使用が望ましい。

1)

積分強度の測定  プロファイル強度データの走査範囲を表 に示した 6 個のブロックに分割し,各々

のブロックにプロファイルフィッティング法を適用して回折線の積分強度を求める。プロファイル

フィッティング法を次の条件下において適用する(

3

)

(

3

)

合成条件などに起因して試料の格子定数が変化し,実際の回折線ピーク位置が,

1に示した位

置からずれる場合がある。

1.1)

解析範囲  プロファイルフィッティング法を適用する各ブロックの解析範囲を表 に示す。回折線

の半値幅が粒径効果などで 0.2° (2

θ

)

以上に広がりを起こしている場合には,解析範囲を拡張する。

その場合,ピーク位置から低角側及び高角側へそれぞれ回折線の半値幅の 10 倍の角度距離を解析範

囲の目安とする。

1.2)

プロファイルモデル  多項式バックグラウンド関数を使用し,その次数を 0 次とする。プロファイ

ル関数として,擬似ヴォイト (pseudo−Voigt)  関数又はピアソン VII (Pearson VII)  関数を使用する。


3

R 1640 : 2002

1.3)

プロファイル関数の計算打切り  ピーク裾野部分においてプロファイル関数の計算強度が,個々の

ブロック内における回折線の最高ピーク強度の 0.1%となったところで関数の計算を打ち切る。

1.4)

パラメータの精密化  各ブロック内における複数本数の回折線をすべて一度にフィッティングする。

フィッティングにおいては,バックグラウンド,回折線位置,積分強度,半値幅,及びプロファイ

ル形状に関する各パラメータ[プロファイルの非対称性,

η

パラメータ(擬似ヴォイト関数の場合)

又は指数(ピアソン VII 関数の場合)

]を精密化する(

4

)

。ガザーラ法においては,得られたこれらパ

ラメータの中で,積分強度の値を使用する。

(

4

)

半値幅に関するパラメータは個々独立に,一方,プロファイル形状に関するパラメータはその

解析範囲内の各ピークとも同じ値をもつという拘束条件を課すことが望ましい。

表 1  プロファイルフィッティング法の適用における解析範囲

ブロック  解析範囲(2

θ

)

解析対象の回折線 回折線位置(2

θ

)

1 19.6

∼21.6

α

 (101)

20.6

2 21.9

∼24.4

α

 (110)

22.9

β

 (110)

23.4

3 25.5

∼28.1

α

 (200)

26.5

β

 (200)

27.1

4 30.0

∼32.8

α

 (201)

31.0

α

 (002)

31.8

5 32.7

∼37.1

β

 (101)

33.7

α

 (102)

34.6

α

 (210)

35.3

β

 (210)

36.1

6 42.5

∼44.5

α

 (301)

43.5

備考1.  解析範囲の中に

α

相及び

β

相以外の第3相が存在すると

きには,それによる回折線も計算に含めてプロファイ
ルフィッティングを行う。

2.

表 中の

α

又は

β

は,それぞれ

α

相又は

β

相からの回折線

を意味する。

3.

第 4 ブロックの

α

 (002)

は分析に使用しない。

2)

ピーク強度の測定  表 に示した各回折線のピーク強度を測定する。

2.1)

バックグラウンド強度  ピーク両側のバックグラウンド領域におけるプロファイル強度 3∼5 点の

平均値を求める。平均した 2 点を結ぶ直線と,ピーク強度から下ろした垂線との交点の強度をその

回折線に対するバックグラウンド強度とする。

2.2)

ピーク強度  最大プロファイル強度からバックグラウンド強度を差し引いたものをピーク強度とす

る。

b)

測定回折線強度(積分強度又はピーク強度)を,次の式によって規格化する。規格化には

表 に与え

た規格化因子を使用する。

j

j

j

n

j

j

j

n

R

I

I

R

I

I

β

β

β

α

α

α

/

/

=

=

ここに,

n

j

I

α

規格化された

α

相の 番目の回折線強度

j

n

I

β

規格化された

β

相の 番目の回折線強度

I

αj

測定した

α

相の 番目の回折線強度

I

βj

測定した

β

相の 番目の回折線強度


4

R 1640 : 2002

R

αj

α

相の 番目の回折線に対する規格化因子

(表 2

R

βj

β

相の 番目の回折線に対する規格化因子

(表 2

c)

α

相及び

β

相ごとに規格化された回折線強度の平均値を,次の式によって求める。

å

=

=

7

1

7

1

i

j

n

n

I

I

α

α

å

=

=

4

1

4

1

i

j

n

n

I

I

β

β

ここに,

n

I

α

規格化された

α

相の回折線強度の平均値

n

I

β

規格化された

β

相の回折線強度の平均値

d)

試料中の

α

相及び

β

相の質量百分率

 (%)

を,次の式によって求める(

5

)

100

100

×

+

=

×

+

=

n

n

n

n

n

n

I

I

I

w

I

I

I

w

β

α

β

β

β

α

α

α

ここに,

w

α

α

相の質量百分率

w

β

β

相の質量百分率

(

5

)

質量百分率を求めるに当たり,

α

相及び

β

相における密度の差異を無視する。

表 2  規格化因子

番号  (j)  回折線指数 回折線位置(2

θ

)

規格化因子

α

 

1 101

20.6

7.50

 2  110

22.9

3.58

 3  200

26.5

2.44

 4  201

31.0

7.44

 5  102

34.6

6.66

 6  210

35.3

6.79

 7  301

43.5

3.13

β

 

1 110

23.4

4.21

 2  200

27.1

10.53

 3  101

33.7

10.90

 4  210

36.1

11.21

7.3

リートベルト法  リートベルト法を用いた相組成分析方法は,次による。

a)

次の条件下においてリートベルト法を適用し,測定した回折強度データから

α

相及び

β

相に対するスケ

ール因子を求める。相組成分析には,得られたスケール因子を使用する。

1)

解析範囲  18∼80° (2

θ

)

の範囲とする。

2)

初期値

α

相及び

β

相の結晶学的データ及び原子パラメータ(位置座標,温度因子及び席占有率を含

む。

)として,

表 及び表 に与えたデータを使用する(

6

)

。他のパラメータに関しては,使用するリ

ートベルト法用のコンピュータプログラム又はその使用マニュアルが提供する値を使用する。

(

6

)

試料によって格子定数が異なる場合があるので,

3の値を初期値とすると精密化が行えない場

合がある。その場合には,

3に与えた値以外のものを選択して使用する。

3)

プロファイルモデル  多項式バックグラウンド関数を使用し,その次数を 4∼5 次の範囲とする。5


5

R 1640 : 2002

次を採用することが望ましい。プロファイル関数として,擬似ヴォイト関数又はピアソン VII 関数

を使用する。

4)

関数の打切り  ピーク裾野部分においてプロファイル関数の計算強度が,解析範囲内における回折

線の最高ピーク強度の 0.1%となったところで関数の計算を打ち切る。

5)

パラメータの精密化  フィッティングにおいては,バックグラウンド関数の各パラメータ,2

θ

零点

補正,格子定数,半値幅のパラメータ,及びプロファイルの形状に関するパラメータ[プロファイ

ルの非対称性,

η

パラメータ(擬似ヴォイト関数の場合)又は指数(ピアソン VII 関数の場合)

,各

相に対するスケール因子を精密化する(

7

)

表 に示す個々の温度因子を計算に使用しながら,全体

の温度因子が精密化できる場合には,全体の温度因子を各成分とも同じ値をもつという拘束条件を

課して精密化に加える。

(

7

)

半値幅に関するパラメータは各成分とも独立に,一方,プロファイルの形状に関するパラメー

タは各成分とも同じ値をもつという拘束条件を課すことが望ましい。

6)

精密化しないパラメータ  個々の原子の位置座標,温度因子,及び席占有率の精密化を行わない。

7)

選択配向補正  補正を行わない。

8)

第 相の存在  解析範囲の中に

α

相及び

β

相以外の第 3 相が存在するときには,それによる回折線も

計算モデルに含めてリートベルト法による解析を行う。

表 3  窒化けい素の結晶学的データ

α

β

化学組成 Si

3

N

4

 Si

3

N

4

結晶系

三方晶系

六方晶系

空間群

P31c

P6

3

格子定数 (nm)

a

=0.775 279 (6)

a

=0.760 25(2)

c

=0.562 073 (8)

c

=0.290 767(7)

単位胞体積 (nm

3

V

=0.292 6

V

=0.145 5

式数 4

2

表 4  窒化けい素の原子パラメータ

原子  位置

位置座標

温度因子

X Y Z 

α相 Si (1)  6 (c)  0.082 9 (1)  0.513 5 (1)  0.655 8 (2)

0.434

Si (2)  6 (c)  0.255 5 (1)

0.168 2 (1)

0.450 9

0.449

N (1)  6 (c)  0.655 8 (3)

0.607 5 (3)

0.432 0 (5)

0.608

N (2)  6 (c)  0.315 4 (3)

0.319 2 (3)

0.696 2 (5)

0.550

N (3)  2 (b)  1/3

2/3

0.592 6 (10)

0.894

N (4)  2 (a)  0

0

0.450 3 (12)

1.577

β相 Si

6 (c)  0.768 6 (1)

0.174 4 (1)

1/4

0.361

N (1)  6 (c)  0.029 8 (3)

0.329 4 (3)

0.262 8 (20)

0.439

N (2)  2 (b)  2/3

1/3

0.239 2 (55)

0.473

備考  各原子の席占有率は,すべて 100%とする。

b)

得られたスケール因子を使用し,

α

相及び

β

相の質量百分率 (%) を,次の式によって求める(

8

)

100

4

100

4

4

×

+

=

×

+

=

β

α

β

β

β

α

α

α

S

S

S

w

S

S

S

w

ここに,

w

α

α

相の質量百分率 (%)


6

R 1640 : 2002

w

β

β

相の質量百分率 (%)

S

α

α

相のスケール因子

S

β

β

相のスケール因子

(

8

)

ガザーラ法と同様に,質量百分率を求めるに当たり,

α

相と

β

相の密度の差違を無視する。

7.4

分析値  算出結果は,JIS Z 8401 によって,小数点以下一けたに丸める。

8.

記録  分析結果には,次の事項を記載する。

a)

試料名

b)

装置の名称,形式

c)

回折強度測定法

1)

X

線管球の種類(封入式管球,回転対陰極 X 線管)

2)

X

線管球の作動条件(管電圧,管電流)

3)

モノクロメータの有・無又はフィルターの有・無

4)

定時ステップ走査法における走査範囲

5)

定時ステップ走査法における走査ステップ幅

6)

定時ステップ走査法における計数時間

7)

走査範囲における最大回折ピーク強度

d)

第 3 相の存在の有・無と相の名称

e)

使用した相組成分析方法(ガザーラ法,リートベルト法)

f)

ガザーラ法を用いた場合

1)

回折線強度の測定方法(積分強度,ピーク強度)

2)

積分強度を用いた場合

2.1)

解析範囲(

表 の解析範囲と異なる場合)

2.2)

プロファイルフィッティング法のためのプログラム名称

2.3)

使用したプロファイル関数(擬似ヴォイト関数,ピアソン VII 関数)

2.4)

プロファイル関数の計算打切り強度

2.5)

精密化を行ったパラメータの種類及び拘束条件

2.6)

解析対象の回折線の積分強度

3)

ピーク強度を用いた場合

3.1)

解析対象の回折線のピーク強度

g)

リートベルト法を用いた場合

1)

リートベルト法のためのプログラム名称

2)

多項式バックグラウンド関数の次数

3)

使用したプロファイル関数(擬似ヴォイト関数,ピアソン VII 関数)

4)

プロファイル関数の計算打ち切り強度

5)

精密化を行ったパラメータの種類及び拘束条件

6)

各相のスケール因子

h)

分析値

備考  このほか,次の項目について,記録に付記することが望ましい。

a)

回折強度測定法


7

R 1640 : 2002

1)

ゴニオメータ半径 (mm)

2)

発散スリット  (°)

3)

受光スリット (mm)  

4)

散乱スリット  (°)  

b)

リートベルト法を用いた場合

1)

解析範囲

2)

信頼度因子

関連規格  JIS K 0050  化学分析方法通則


8

R 1640 : 2002

附属書 1(参考)  窒化けい素の回折図形 

この

附属書(参考)は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。

参考のため,

α

相及び

β

相の単一相,及び組成比が異なる両相の混合試料の粉末回折図形を

附属書 図 1

に示す。

附属書 図 1

α

相試料の粉末回折図形(

α

 :

β

≒1 : 0) (Cu K

α

)

附属書 図 2

β

相試料の粉末回折図形(

α

 :

β

≒0 : 1) (Cu K

α

)


9

R 1640 : 2002

附属書 図 3

α

相及び

β

相混合試料の粉末回折図形(

α

 :

β

≒9 : 1) (Cu K

α

)

附属書 図 4

α

相及び

β

相混合試料の粉末回折図形(

α

 :

β

≒1 : 1) (Cu K

α

)

附属書 図 5

α

相及び

β

相混合試料の粉末回折図形(

α

 :

β

≒1 : 9) (Cu K

α

)


10

R 1640 : 2002

附属書 2(参考)  ガザーラ法 

この

附属書(参考)は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。

1.

理論  定量分析の精度の向上に対するガザーラ (Gazzara) 法の基本的考え方は,以下の 2 点からなる。

1

)規格化によって回折線強度から結晶構造と回折角 (2

θ

)

に依存した部分を取り除く,2)複数本数の規

格化された回折線強度の平均値を用いることによって,統計誤差を減少させる。

k

番目の成分(

α

相に対して k=1 及び

β

相に対して k=2 とする。

)の 番目の反射の積分強度を I

jk

とした

とき,規格化された積分強度

n

jk

I

を次の式で定義する。

jk

jk

n

jk

R

I

I

=

ここに,

R

jk

規格化因子

規格化因子は,次の式で与えられる。

2

2

k

jk

j

jk

jk

V

F

Lp

Km

R

=

ここに,

K

物理定数

m

jk

反射の多重度

Lp

j

ローレンツ・偏光因子

jk

F

結晶構造因子の絶対値

V

k

単位胞体積

平均規格化積分強度

n

k

I

は,次の式で与えられる。

å

=

=

Nk

j

n

jk

k

n

k

I

N

I

1

1

ここに,

N

1

=7

N

2

=4

体積分率

v

k

は,次の式で与えられる。

n

n

n

k

k

I

I

I

v

2

1

+

=

ここに,

v

1

v

2

=1

これより質量百分率 (wt%) w

k

は,次の式で与えられる。

100

2

2

1

1

×

+

=

ρ

ρ

ρ

v

v

v

w

k

k

k

ここに,  w

1

w

2

=100

両相の密度の差異を無視(

ρ

1

ρ

2

と仮定)すれば.質量百分率は,次の式によって求められる。

100

2

1

×

+

=

n

n

n

k

k

I

I

I

w


11

R 1640 : 2002

附属書 3(参考)  プロファイルフィッティング法 

この

附属書(参考)は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。

1.

目的  粉末回折図形のパターン分解及び積分強度などの各種パラメータの精密化を行う。比較的狭い

角度範囲(数°∼十数°の 2

θ

範囲)に適用される。得られた積分強度パラメータから相組成分析,回折線

位置から格子定数測定,プロファイルの半値幅から結晶子径の測定などの解析を行うことができる。

2.

理論

a)

フィッティング関数  観測粉末回折図形に,モデルに基づいた計算粉末回折図形を最小二乗法を用い

てフィッティングし,各種パラメータの最適化を行うものである。コンピュータでデータ処理を行う

ため,ディジタル化された観測粉末回折パターンとして,ステップ走査法によって測定されたプロフ

ァイル強度データを用いる。

粉末回折図形の 番目のステップにおける観測プロファイル強度を Y (2

θ

i

) 

obs

とする。Y (2

θ

i

)

obs

に対応する計算プロファイル強度(フィッティング関数)を Y (2

θ

i

)

calc

とすると,

Y (2

θ

i

)

calc

は次の式で与えられる。

( )

( )

(

)

å

+

=

j

j

j

i

j

i

calc

i

T

P

I

B

Y

θ

θ

θ

2

2

2

ここに,

B (2

θ

i)

バックグラウンド関数

I

j

j

番目の回折線の積分強度

T

j

回折線のピーク位置

P (2

θ

i

)

j

プロファイル関数

この式の和の部分は,2

θ

i

におけるプロファイル強度に寄与している近傍回折線のすべてに対して求

める。回折線が K

α

1

K

α

2

二重線のときには,強度比 2 : 1 の二つのプロファイルを両成分の波長から

計算された位置に仮定し,それらのプロファイル強度を加えて計算する。

b)

バックグラウンド関数  バックグラウンド強度の 2

θ

に対する変化を表すバックグラウンド関数とし

て,多項式が使用される場合が多い。バックグラウンドパラメータとは多項式の係数を指す。一度に

解析する角度範囲が狭いので,非晶質物質などが含まれる場合を除いて,一般に 0 次又は 1 次近似を

用いる。

c)

プロファイル関数  プロファイル関数を用いて回折プロファイルの形状を表す。その面積は積分した

ときに 1 になるように規格化されており,それに積分強度を乗じることによって,回折線強度の分布

関数の役割をもつ。種々の関数が試されてきた歴史的経緯をもつが,現在ではその形をローレンツ関

数からガウス関数まで連続的に変化させることができる擬似ヴォイト (pseudo-Voigt) 関数又はピアソ

ン VII (Pearson VII)  関数が使用されることが多い。プロファイル関数は頂点位置に対応するピーク位

置パラメータ,ピークの半分の高さにおけるプロファイルの幅を表す半値幅,プロファイルの非対称

の度合いを表す非対称パラメータ,プロファイル関数の形状を表す

η

パラメータ(擬似ヴォイト関数

の場合)又は指数(ピアソン VII 関数の場合)を可変パラメータとしてもつ。

d)

精密化されるプロファイルパラメータ  精密化されるパラメータとして,バックグラウンドパラメー

タ,積分強度,回折線の位置,半値幅,非対称性,プロファイルの形状に関するパラメータが含まれ


12

R 1640 : 2002

る。

e)

パラメータの最適化  Y (2

θ

i

)

calc

を非線形最小二乗法を用いて Y (2

θ

i

)

obs

にフィッティングすることに

よって,Y (2

θ

i

)

catc

の上記各種パラメータを最適化する。最適化においては,次の関数を最小化する。

( )

( )

[

]

2

1

2

2

calc

i

obs

i

N

i

i

Y

Y

w

Δ

θ

θ

=

å

=

ここに,

w

i

:  番目の観測値に対する荷重

N

:  観測データの数

最小二乗法の適用において,回折線の積分強度及び位置に関するパラメータは一般に個々独立に変

化させる。一方,半値幅及び形状に関するパラメータは,狭い角度範囲においては変化しないものと

して,その範囲内のすべての回折線に対して同じであるという拘束条件を課して精密化するのが一般

的である。ただし,半値幅は各回折線が十分に分離しているとき,異方性があるとき,及び他成分が

混在しているときなどは原則として独立に精密化する。

f)

信 頼度 因子   フィッティ ングの統 計精度 を表 すた めに,次 の信頼 度因 子  (R

P

R

uP

R

E

)

及 び

Goodness-Of-Fit

指数  (S)  を定義して用いる(

1

)

( )

( )

( )

( )

( )

[

]

( )

(

)

( )

( )

( )

[

]

(

)

2

/

1

2

1

2

/

1

1

2

2

/

1

1

2

2

1

1

1

/

2

2

2

/

2

/

2

2

2

/

2

2

÷÷

÷

ø

ö

çç

ç

è

æ

=

÷

÷
ø

ö

ç

ç
è

æ

=

÷÷

÷

ø

ö

çç

ç

è

æ

=

=

å

å

å

å

å

å

=

=

=

=

=

=

P

N

Y

Y

w

S

Y

w

P

N

R

Y

w

Y

Y

w

R

Y

Y

Y

R

N

i

calc

i

obs

i

i

N

i

obs

i

i

E

N

i

obs

i

i

N

i

calc

i

obs

i

i

wP

N

i

obs

i

N

i

calc

i

obs

i

P

θ

θ

θ

θ

θ

θ

θ

θ

θ

ここに,

P

精密化されたパラメータの総数

(

1

)

  R

E

R

因子の期待値を表し,

E

Expected

を意味する。

3.

入力データ又は必要な情報  入力データは,次の項目を準備する。入力データの種類,データのフォ

ーマットは使用するコンピュータプログラムによって大きく異なるので,使用するプログラムのマニュア

ルなどに従うものとする。

a)

ステップ走査法を用いて測定された観測プロファイル強度

b)

測定に使用した

X

線の波長

c)

回折線の位置

d)

プロファイル半値幅のおおよその値

4.

出力データ

a)

精密化されたパラメータ

b)

信頼度因子

R

P

R

wP

R

E

及び

S

を出力する(

2

)

(

2

)

精密化されるパラメータの種類,最小二乗法を開始するに当たって必要とされる初期値の種類,


13

R 1640 : 2002

出力結果のパラメータの種類などに関しては,使用するコンピュータプログラムによって異な

る。

c)

フィッティング結果  回折図形の実測値,計算値,及び両者の差を示すプロット図。


14

R 1640 : 2002

附属書 4(参考)  リートベルト法 

この

附属書(参考)は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。

1.

目的  結晶構造パラメータ,格子定数,半値幅などの各種プロファイルパラメータ,及びパターン全

体の強度に対するスケール因子の精密化を行う。解析には粉末回折パターン全体のデータを使用する。試

料が複数成分からなるとき,各成分に対するスケール因子を用いて,相組成分析を行うことができる。

2.

理論

a)

フィッティング関数  リートベルト法においては,次のフィッティング関数を用いる。

( )

( )

(

)

å å

+

=

k

j

j

j

i

j

k

i

calc

i

T

P

I

S

B

Y

θ

θ

θ

2

2

2

ここに,

S

k

  k

番目の成分に対するスケール因子

その他は,プロファイルフィッティング法におけるフィッティング関数

(附属書 3)と同様である。

b)

バックグラウンド関数  プロファイルフィッティング法と同様に,多項式が使用される場合が多い(附

属書 3)。パターン全体のデータを用いて一度に解析するので,

3

次以上の高次多項式が使用される。

c)

プロファイル関数  プロファイルフィッティング法と同じプロファイル関数が使用される(附属書 3)。

d)

リートベルト法におけるプロファイルモデルの角度依存性  観測されたプロファイルの半値幅及び

形状を表す各パラメータは,回折角

 (2

θ)

とともに変化する。それゆえ,パターン全体をフィッティ

ングするリートベルト法においては,回折角に依存して変化するプロファイルモデルを用いる。例え

ば半値幅

H (2

θ

i

)

は一般に次の式で与えられる。

H (2

θ

i

)

=(

tan

θ

2

i

tan

θ

i

W

1/2

ここに,

  U

V

W

精密化される

2

次パラメータ(

1

)

(

1

)

プロファイル関数の半値幅を一次パラメータとしたとき,そのパラメータ中の

U

V

W

2

パラメータとなる。

e)

精密化されるプロファイルパラメータ  精密化されるパラメータを附属書 表 に示す。

附属書 表 1  精密化される各種パラメータ

全体のパラメータ

バックグラウンド

2

θ

の零点補正

格子定数

各成分に対す
るパラメータ

プ ロ フ ァ イ ル
パラメータ

半値幅(2 次)

非対称性(2 次)

プロファイルの形状(2 次)

スケール因子

配向補正

個々の原子の位置座標

結 晶 構 造 パ ラ
メータ

            温度因子

            席占有率

全体の温度因子

f)

パラメータの最適化  プロファイルフィッティング法と同様にして最適化を行う(附属書 3)。最適化


15

R 1640 : 2002

においては,次の関数を最小化する。

( )

( )

[

]

2

1

2

2

calc

i

obs

i

N

i

i

Y

Y

w

Δ

θ

θ

=

å

=

ここに,

w

i

  i

番目の観測値に対する荷重

N

観測データの数

パラメータ精密化の順序として,一般にプロファイルパラメータの精密化後に,結晶構造パラメー

タの精密化を行う。

g)

信頼度因子  フィッティングの統計精度を表すために,附属書 において定義した信頼度因子

R

P

R

wP

R

E

,及び

Goodness-Of-Fit

指数

  (S)

以外に,更に以下の信頼度因子(

R

B

及び

R

F

)を定義して用いる(

2

)

å

å

å

å

=

=

J

j

J

j

obs

j

calc

j

obs

j

F

J

j

J

j

obs

j

calc

j

obs

j

B

I

I

I

R

I

I

I

R

1

1

'

'

'

'

1

1

'

'

'

'

/

/

ここに,

'

'obs

j

I

リートベルトの分解公式による積分強度

J

積分反射の総数

(

2

)

  R

B

及び

R

F

は積分強度及び構造因子に対応する

R

因子を表し,

B

Bragg

反射を,また

F

は構造

因子をそれぞれ意味する。

h)

スケール因子による定量  リートベルト法における計算プロファイル強度は絶対強度ではないので,

それを実測値に合わせるためにスケール因子を用いる。試料からの

X

線回折強度は被照射体積に比例

しており,最小二乗法によって最適化されるスケール因子は,多成分試料の場合,個々の成分の被照

射体積に比例することになる。それゆえ,スケール因子の精密化によって体積比を,更にそれらを重

量分率に変換することによって重量分率による相組成分析が可能になる。スケール因子の重量分率へ

の変換には次の式を使用する。

÷

÷
ø

ö

ç

ç
è

æ

=

=

å

å

=

=

N

k

k

N

k

k

k

k

k

k

k

k

k

k

w

V

M

Z

S

V

M

Z

S

w

1

1

'

'

'

'

'

1

  

ここに,

w

k

k

番目の成分に対する重量分率

S

k

スケール因子

Z

k

化学式単位の個数(式数)

M

k

化学式単位における分子量

V

k

単位胞体積

N

成分の数

3.

入力データ又は必要な情報  入力データは,次の項目を準備する。入力データの種類,データのフォ

ーマットは使用するコンピュータプログラムによって大きく異なるので,使用するプログラムのマニュア

ルなどに従うものとする。

a)

ステップスキャン法を用いて測定された観測プロファイル強度

b)

測定に使用した X 線の波長

c)

格子定数,空間群などの結晶学的データ,結晶構造パラメータ


16

R 1640 : 2002

4.

出力データ

a)

精密化されたパラメータ  附属書 表 1,及び反射データの一覧表

b)

信頼度因子  R

P

R

wP

R

E

R

B

R

F

及び を出力する。

c)

フィッティング結果  回折図形の実測値,計算値,及び両者の差を示すプロット図。

窒化けい素の相組成分析方法原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

虎  谷  秀  穂

名古屋工業大学

(委員)

林      茂  雄

三重県窯業試験場

中  安  哲  夫

宇部興産株式会社

安  川  勝  正

京セラ株式会社

築  野      孝

住友電気工業株式会社

稲  場      徹

電気化学工業株式会社

内  海  良  治

工業技術院名古屋工業技術研究所

伊ケ崎  文  和

工業技術院物質工学工業技術研究所

青  木  正  司

財団法人ファインセラミックスセンター

山  田  哲  夫

宇部興産株式会社

伊  藤      崇

大川原化工機株式会社

渡  邊  敬一郎

日本ガイシ株式会社

松  尾  康  史

日本特殊陶業株式会社

鈴  木  和  夫

工業技術院名古屋工業技術研究所

椿      淳一郎

名古屋大学

中  平  兼  司

財団法人ファインセラミックスセンター

中  村  彰  一

大塚電子株式会社

福  井  俊  文

株式会社島津製作所

橋  本  邦  男

昭和電工株式会社

佐々木  邦  雄

株式会社セントラル科学貿易

山  口  浩  文

日本ガイシ株式会社

伊  藤      敏

通商産業省生活産業局ファインセラミックス室

大  嶋  清  治

工業技術院標準部材料規格課

加  山  英  男

財団法人日本規格協会

菅  野  隆  志

ファインセラミックス国際標準化推進協議会

渡  辺  一  志

社団法人日本ファインセラミックス協会

(事務局)

杉  本  克  晶

社団法人日本ファインセラミックス協会

備考  ○印は,小委員会委員を兼ねる。

(文責  原案作成小委員会)