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R 1638 : 1999  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は,出願公開後の実用

新案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

R 1638 : 1999 

ファインセラミックス粉末の 

等電点測定方法 

Test methods of iso-electric point of fine ceramic powders 

1. 適用範囲 この規格は,ファインセラミックス粉末を電解質水溶液に分散させて,そのpHを変化さ

せてゼータ電位を測定することによって,等電点を求める方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。 

JIS R 1600 ファインセラミックス関連用語 

JIS Z 8802 pH測定方法 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS R 1600によるほか,次による。 

a) ゼータ電位 ゼータ電位は界面動電現象(電気泳動,電気浸透,流動電位及び沈降電位)の実験から

求められる電位。溶液中の帯電した粒子の近傍では,表面電荷と当量で反対符号の電荷が,粒子表面

の周りにイオンの形で集まる。このイオンの一部は粒子表面に吸着しStern層を,残りは静電引力と

熱運動による拡散とのバランスで,ある平衡分布をもつ拡散電気二重層を形成する。電気泳動又は電

気浸透では,このような帯電粒子が分散した電解質水溶液系に外部電場を印加すると,粒子と拡散二

重層はそれぞれ反対符号の電極に向かって引っ張られるが,粒子表面から数分子層内の液体分子は粒

子とともに運動するため,その外側の“すべり面”を境に相対運動が生じる。流動電位及び沈降電位

では,粒子表面から数分子層内の液体分子は粒子表面に留まり,その外側の“すべり面”を境に相対

運動が生じ,電位を生じる。このすべり面における電位。 

b) 電気泳動 溶液中の帯電した粒子に電場をかけると,粒子は電極に向かって泳動する現象。 

c) 電気泳動移動度 泳動度ともいう。電気泳動速度を加えた電場で除した値。 

d) 流動電位 キャピラリー中の溶液に圧力をかけて流動させると,電気二重層の拡散層内の電荷が運搬

され,流動電流を生じる。このときキャピラリーの両端に発生する電位。 

e) 流動液 粉体層の状態でゼータ電位を測定する流動電位法で用いるpH調整酸,塩基及びそれらの塩

の電解質水溶液。 

f) 

超音波振動電位 溶液中の帯電した粒子を超音波で振動させたとき,粒子とイオンの質量の違いによ

って発生する交流電位。 

g) ESA (Electro-kinetic Sonic Amplitude)  超音波振動電位の逆の現象で,溶液中の帯電した粒子に高周波

電圧を印加したときに発生する超音波の圧力。 

h) 等電点 イオンを含む溶液中で,ゼータ電位が零になる水素イオン濃度。 

R 1638 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4. 測定の原理 

4.1 

電気泳動法 帯電した粒子が溶液中に分散している系に外部から電場をかけると,粒子は電極に向

かって泳動する。電気泳動速度は粒子の電荷に比例するので,その電気泳動速度を測定することによって,

ゼータ電位を求めることができる。粒子の電気泳動移動度ue (m2・V−1・s−1) は,式(1)によって求める。 

E

v

u=

e

 ···················································································· (1) 

ここで, 

v: 粒子の電気泳動速度 (m・s−1) 

E: 電場 (V・m−1) 

ゼータ電位ζ (V) は,式(2)によって求める。 

e

r

0

u

ε

ε

η

ζ=

 ··············································································· (2) 

ここで, 

η: 電解質水溶液の粘性率 (Pa・s) 

ue: 電気泳動移動度 (m2・V−1・s−1) 

ε0: 真空の誘電率 (C2・N−1・m−2) 

εr: 電解質水溶液の比誘電率 

粒子の電気泳動速度を測定する方法には,電気泳動顕微鏡法,電気泳動レーザー・ドップラー法,電気

泳動質量輸送法がある。これらの方法は粒子濃度が希薄な系のゼータ電位測定に用いられる。 

a) 電気泳動顕微鏡法 帯電した粒子の溶液中での電気泳動速度を,顕微鏡を用いて直接観測する方法で,

ストップウォッチ法,回転プリズム法,回転グレーティング法,画像処理法がある。 

1) ストップウォッチ法 帯電した粒子が一定の距離を電気泳動する時間をストップウォッチで測定し,

式(3)によって電気泳動速度v (m・s−1) を求める。 

t

l

v= ······················································································ (3) 

ここで, l: 泳動距離 (m) 
 

t: 泳動時間 (s) 

2) 回転プリズム法 矩形プリズムを光が通過するときプリズムを回転させると,光の進路がずれる。

矩形プリズムを通して観察される粒子の像は,プリズムの回転速度に比例して移動する。回転方向

と回転速度を調節すると,電気泳動している粒子の像を静止させることができ,このときの回転速

度を測定して,式(4)によって電気泳動速度v (m・s−1) を求める。 

(

)

nM

n

KT

v

θ

1

=

 ··········································································· (4) 

ここで, 

K: 装置定数 

T: プリズムの厚さ (m) 

n: プリズムの屈折率 

θ: プリズムの回転速度 (rad・s−1) 

M: 顕微鏡の倍率 

3) 回転グレーティング法 電気泳動する帯電した粒子から散乱されたレーザ光は,レンズで拡大され,

グレーティング(放射状に溝が刻み込まれた円盤)に結像され,透過光は光電子増倍管に入る。グ

レーティングはゆっくり回転しており,帯電した粒子の像の電気泳動速度とグレーティングの回転

速度に違いがあれば,光電子増倍管を通してパルス信号が発生する。帯電した粒子の像の移動方向

と反対の方向にグレーティングが回転していれば,その周波数は高くなる。したがって,光パルス

の周波数分析を行い,式(5)によって電気泳動速度v (m・s−1) を求める。 

R 1638 : 1999  

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M

f

L

v

=

 ·················································································· (5) 

ここで, 

L: グレーティングの格子の間隔 (m) 

⊿f: 周波数のシフト量 (s−1) 

M: 顕微鏡の倍率 

4) 画像処理法 一定時間間隔で観察した2枚の粒子群の像を重ね合わせ,電気泳動した同一粒子の軌

跡を線で結び,移動距離を画像処理によって測定する。この移動距離とそれに要した時間から,式

(6)によって電気泳動速度v (m・s−1) を求める。 

t

l

v= ······················································································ (6) 

ここで, l: 泳動距離 (m) 
 

t: 泳動時間 (s) 

b) 電気泳動レーザー・ドップラー法 電気泳動している粒子にレーザー光を照射すると,粒子からの散

乱光はドップラー効果によって光の周波数がシフトする。そのシフト量は,帯電粒子の電気泳動速度

に比例することから,このシフト量を測定して,電気泳動速度を求める。 

屈折率nの電解質水溶液に分散した帯電粒子に,波長Λのレーザー光を照射し,散乱角θで検出して

レーザ光のドップラーシフト量を測定し,式(7)によって電気泳動速度v (m・s−1) を求める。 

( )2

sin

2

θ

n

v

v

Λ∆

=

 ·········································································· (7) 

ここに, 

Λ: レーザ光の波長 (m) 

⊿v: ドップラーシフト量 (s−1) 

n: 電解質水溶液の屈折率 

θ: 検出角度 (rad) 

c) 電気泳動質量輸送法 粉粒体を濃厚懸濁液の形態とし,泳動軸上に貯蔵部と捕集部の2室をもった構

造をした測定セル内に入れる。測定セル内の一対の電極間に電圧を与えると,帯電した粒子は表面の

電荷量に応じて電気泳動するので,捕集部内の粒子数は時間とともに増加又は減少する。捕集部内の

粒子数の変化は,測定前後の捕集部の質量変化量を測定することによって求める。ここで,電気泳動

移動度ue (m2・s−1・V−1) は式(8)によって求める。 

(

)(

)W

m

tim

u

=

1

2

1

1

e

1

ρ

ρ

ρ

λρ

······················································· (8) 

ここで, 

λ: 電解質水溶液の電導率 (S・m−1) 

ρ1: 粒子の密度 (kg・m−3) 

t: 泳動時間 (s) 

i: 電解質水溶液に通ずる電流 (A) 

m: 粒子濃度 (kg・m−3) 

ρ2: 電解質水溶液の密度 (kg・m−3) 

⊿W: 捕集部の質量変化 (kg) 

4.2 

流動電位法 流動電位法は,固−液界面における相対運動を,固体を固定し電解質水溶液だけを動

かすことによって,固体の両端に発生する流動電位を測定し,ゼータ電位を求める方法である。粉粒体試

料の場合,試料を粉体層の形状にすることによって,多孔性の構造をした一つの固体と考えることができ,

電解質水溶液が多孔性の構造をもった固体中の毛細管内を流れると考える。 

電解質水溶液の流路となる1本の毛細管を考えると,電解質水溶液を流動させる流動圧力P (Pa) は, 

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1

r

0

2

u

r

Q

P

ζ

ε

ε

π

η

=

 ········································································· (9) 

ここで, 

η: 電解質水溶液の粘性率 (Pa・s) 

Q: 毛細管壁面の表面電荷量 (C・m−2) 

r: 毛細管の半径 (m) 

ε0: 真空の誘電率 (C2・N−1・m−2) 

εr: 電解質水溶液の比誘電率 

ζ: ゼータ電位 (V) 

u1: 電解質水溶液の流速 (m・s−1) 

なる関係がある。一方,発生する流動電位E (V) は, 

1

0

2

u

r

Q

E

λ

π

=

 ··········································································· (10) 

ここで, 

Q: 毛細管壁面の表面電荷量 (C・m−2) 

r: 毛細管の半径 (m) 

λ0: 電解質水溶液の電導度 (S・m−1) 

u1: 電解質水溶液の流速 (m・s−1) 

で表され,式(9),式(10)から次に示される式が導き出される。 

P

E

r

0

0

ε

ε

ηλ

ζ=

 ·············································································· (11) 

式(11)では,毛細管のサイズ(半径,長さなど)と無関係で,実際の毛細管がどのような形状であるの

かを考慮する必要はない。 

4.3 

超音波法 超音波法によるゼータ電位測定法には,超音波振動電位法及びESA法がある。これらの

方法は粒子濃度が1〜50%体積濃度の濃厚系のゼータ電位測定に用いられる。 

a) 超音波振動電位法 帯電した粒子が溶液中に分散している系に超音波を照射し振動させると,粒子の

動きとその周りにある対イオンの動きの違いによって周期的に分極し,交流電圧が発生する。超音波

の半波長の奇数倍となる位置で,超音波振動電位はゼータ電位に比例するので,これを測定してゼー

タ電位を求める。 

超音波振動電位CVP (V) とゼータ電位ζ (V) の関係は式(12)で表される。 

(

)

(

)

φ

η

ζ

ε

ε

ρ

λ

ρ

ρ

φ

=

1

2

r

0

1

0

1

2

P

CVP

·················································· (12) 

ここで, 

P: 音圧 (N・m−2) 

φ: 粒子の体積分率 

ρ1: 粒子の密度 (kg・m−3) 

ρ2: 電解質水溶液の密度 (kg・m−3) 

λ0: 電解質水溶液の電導度 (S・m−1) 

ε0: 真空の誘電率 (C2・N−1・m−2) 

εr: 電解質水溶液の比誘電率 

η: 電解質水溶液の粘性率 (Pa・s) 

b) ESA法 帯電した粒子が溶液中に分散している系に高周波交流電圧をかけると,粒子はその供給周波

数で振動し,Electro-kinetic Sonic Amplitudeと呼ばれる圧力(超音波)が発生する。このESA値を測定

し,ゼータ電位を求める。 

ESA (N・m−1・V−1) 値とゼータ電位ζ (V) の関係は,式(13)で表される。 

()

()

α

η

ζ

ε

ε

ρ

ρ

ρ

φ

G

C

ESA

r

0

1

1

2−

=

 ················································ (13) 

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ここで, 

C(Ω): 装置定数 

φ: 粒子の体積分率 

ρ1: 粒子の密度 (kg・m−3) 

ρ2: 電解質水溶液の密度 (kg・m−3) 

ε0: 真空の誘導率 (C2・N−1・m−2) 

εr: 電解質水溶液の比誘電率 

η: 電解質水溶液の粘性率 (Pa・s) 

G(α): 慣性力補正項 

5. 装置及び器具 

5.1 

測定装置 ゼータ電位(等電点)測定装置は,測定方法によって図1〜6に例示する基本構成をもち,

次の条件を満たすものとする。 

a) 電気泳動顕微鏡法においては,次の装置からなる。 

1) 暗視野照明機構をもつ倍率100倍以上の光学顕微鏡装置 

2) 石英ガラス又はアクリル樹脂製の電気泳動測定セル 

3) 粒子を泳動させる電極及び供給電源装置 

4) 電気泳動速度測定装置 

備考 電気泳動速度測定装置にはストップウォッチ方式,回転プリズム方式,回転グレーティング方

式,画像処理方式などがある。 

b) 電気泳動レーザー・ドップラー法測定装置においては,次の装置からなる。 

1) 粒子に照射し,散乱光を発生させるレーザー装置 

2) 散乱光検出器 

3) ドップラーシフト量を測定する機能を備えた光学系 

4) 静止レベルを設定又は検出する機構 

5) 粒子を泳動させる電極をもった電気泳動測定セル 

6) 電気泳動測定セル部に電圧を供給する供給電源 

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図1 電気泳動顕微鏡法測定装置の基本構成の例 

図2 電気泳動レーザー・ドップラー法測定装置の基本構成の例 

c) 電気泳動質量輸送法測定装置においては,次の装置からなる。 

1) 貯蔵部と捕集部との2室からなる,電気泳動測定セル 

2) 電気泳動測定セル分離機構 

3) 粒子を泳動させる電極及び供給電源装置 

4) 電気泳動測定セル回転機構 

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図3 電気泳動質量輸送法測定装置の基本構成の例 

図4 流動電位法測定装置の基本構成の例 

d) 流動電位法測定装置においては,次の装置からなる。 

1) 試料充てん容器及び流動電位測定セル 

2) 流動液供給容器 

3) 流動液受給容器 

4) 流動圧力付加機構及び流動圧力測定器 

5) 流動電位測定電極及び流動電位測定器 

e) 超音波振動電位法測定装置においては,次の装置からなる。 

1) 試料容器及び試料液かくはん(攪拌)機構 

2) 超音波発振器 

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3) 超音波振動電位測定装置 

4) 電導度測定装置 

図5 超音波振動電位法測定装置の基本構成の例 

f) 

ESA法測定装置においては,次の装置からなる。 

1) 試料容器及び試料液かくはん機構 

2) 粒子を泳動させる電極及び高周波電源 

3) 音圧測定装置 

4) 電導度測定装置 

図6 ESA法測定装置の基本構成の例 

5.2 

pH測定装置 pH2〜pH10の範囲以上まで,測定可能なものとする。 

5.3 

試料分散容器 試料を電解質水溶液に分散させる容器で,ポリプロピレン又はガラス製のビーカー

とし,100〜1 000cm3のものとする。 

5.4 

分散装置 分散装置は超音波バス又は,超音波ホモジナイザーとする。必要に応じてかくはん機,

乳鉢,真空脱気装置などを併用してもよい。 

5.5 

天びん 10mg単位でひょう量可能なもので,200g以上ひょう量可能なものとする。 

5.6 

温度計 0〜50℃の測定範囲を0.5℃単位で,測定できるものとする。測定装置内蔵温度センサーで

もよい。 

R 1638 : 1999  

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5.7 

かくはん装置 ふっ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)で被覆されたかくはん子のマグネティ

ックスターラーとする。 

6. 装置の検定 装置の検定は,ゼータ電位既知の試料を使用し,結果に差がないことを確認することに

よる。pH測定装置の校正は,JIS Z 8802の6.(pH標準液)による。 

備考 ゼータ電位既知の試料として,各装置に用意されている標準試料を用いてもよい。 

7. 分散溶媒 イオン交換蒸留水とし,その電導度は,1×10−4S・m−1 (25℃) 以下とする。 

8. pH調整用の酸,塩基及び電解質水溶液 pH調整用の酸,塩基及び電解質水溶液の種類は,次のいず

れかから選択する。 

a) pH調整の酸,塩基の種類は硝酸 (HNO3) 及び水酸化アンモニウム (NH4OH) とし,電解質水溶液は

10mmol/l濃度の硝酸アンモニウム (NH4NO3) とする。 

b) a)以外でpH調整の酸及び塩基を用いる場合は,無機で1価の酸及び塩基の組合せとし,電解質水溶

液はそれらの塩とし,その塩の濃度は10mmol/lとする。 

9. 試料液 試料液の調製は,次による。 

a) 電解質水溶液の調製 8.によって電解質水溶液を選定し,10mmol/l濃度の電解質水溶液を調製する。 

b) 懸濁液の調製 この電解質水溶液に試料を分散させ,懸濁液を調製する。 

備考 測定に必要な量より多く試料を用意し,電気泳動法(電気泳動レーザー・ドップラー法,電気

泳動顕微鏡法)及び流動電位法では1mass%,電気泳動質量輸送法及び超音波法では10mass%

の懸濁液ができる量とする。 

c) 試料の分散 懸濁液に超音波を照射し,試料を十分に分散させる。このとき,超音波の照射は次のよ

うにする。超音波バスを用いる場合は,あらかじめ液面がよく波立つ強振点を調べておき,その条件

の下に出力300W以下で3分間以上照射する。超音波ホモジナイザーを用いる場合は,発振子先端を

液面とビーカー底面の中間位置まで浸し,1〜5分間照射する。 

d) 放置(懸濁液の安定化) 超音波分散させた後の懸濁液は10分間以上スターラーでかくはんし,均一

になるようにする。このとき,容器は密閉状態になるようにする。 

e) 懸濁液濃度 測定装置に適する懸濁液濃度に調整する。 

f) 

試料液 懸濁液を2分割し,一方は酸側,他方はアルカリ側にpHを調整して測定する試料液とする。 

備考 試料液のpHを順次変化させて測定することのできない方法を選択している場合は,懸濁液を9

〜10分割し,pH2〜pH10の範囲でpH1刻みに調整したものを試料液とする。 

10. 測定手順 測定手順は,測定方法によって次による。 

10.1 共通手順 ゼータ電位測定及びpH調整と測定の各測定法における共通手順は,次による。 

a) 測定装置の電源を入れ,装置が安定するまで待つ。 

b) 装置の初期校正を行い,測定装置を,6.によって検定する。 

c) pH測定装置(ゼータ電位測定装置に附属又は内蔵されているものも含む。)を,6.によって検定する。 

d) 試料液を測定セルに入れ,適切な濃度に調整する。 

e) 調整した試料液又は流動液のpH及び温度を測定する。 

10 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

f) 

選択した測定法でゼータ電位を測定する。ゼータ電位の測定手順は10.2〜10.7に示す。 

g) 4.によってゼータ電位を求める。 

h) 8.で選択したpH調整用の酸又は塩基で試料液のpHを,pHの増減量1以内で調整し,10分間以上放

置する。流動電位法では流動液のpHを,pHの増減量1以内で調整し,10分間以上放置する。試料液

を9〜10分割してある場合は,pHの変化量1以内で調整し,10分間以上放置した後,測定に使用す

る。 

i) 

試料液がpH2又はpH10に到達するまで,e)〜h)の手順を繰り返す。 

j) 

装置の電源を切る。 

10.2 電気泳動顕微鏡法 電気泳動顕微鏡法の測定手順は,次による。 

a) 測定に必要なパラメータを入力する。 

b) 顕微鏡の焦点を静止レベルに合わせる。 

c) 電気泳動測定セルに試料液を入れる。 

d) 泳動速度を観測するのに適切な電場を設定する。 

e) 粒子の電気泳動速度を測定する。 

10.3 電気泳動レーザー・ドップラー法 電気泳動レーザー・ドップラー法の測定手順は,次による。 

a) 測定パラメータ(電解質水溶液の屈折率,粘性率,誘電率)を入力する。 

b) 電気泳動セルを洗浄する。 

c) 電気泳動セルにpHを調整した試料液を注入する。 

d) 印加電圧を設定する。 

e) 測定を行う。 

10.4 電気泳動質量輸送法 電気泳動質量輸送法の測定手順は,次による。 

a) 試料液の電導度の測定を行う。 

b) 泳動時間及び測定セルに通ずる電流値の設定を行う。 

c) 測定セルを洗浄する。 

d) 試料液を二つある測定セルのそれぞれに入れる。 

e) 試料液の入った測定セルの一方の質量を測定する。 

f) 

測定セルを組み立て,装置に取り付ける。 

g) 測定を行う。 

h) 測定セルを装置から取り外し,測定セルを二つに分ける。 

i) 

測定前に質量をはかったほうのセルの質量を測定する。 

10.5 流動電位法 流動電位法の測定手順は,次による。 

a) 測定装置を洗浄する。 

b) 試料液から粒子を試料充てん容器に充てんし,測定装置に取り付ける。 

c) pH調整した流動液を流動液供給容器に入れる。 

d) 測定に必要な条件の設定を行う。 

e) 測定を行う。 

10.6 超音波振動電位法 超音波振動電位法の測定手順は,次による。 

a) 試料容器を洗浄する。 

b) 装置に必要なパラメータを入力する。 

c) 試料容器に試料液を入れる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

d) 試料液をかくはん機でかくはんする。 

e) CVP値を測定する。 

10.7 ESA法 ESA法の測定手順は,次による。 

a) 装置に必要なパラメータを入力する。 

b) 試料液を試料容器に入れ,測定部に取り付ける。 

c) 試料液をかくはん機でかくはんする。 

d) 試料の極性(+又は−)を判別する。 

e) ESA値を測定する。 

11. 等電点の決定 等電点の決定は,次による。 

a) 測定結果のゼータ電位−pH図によって,各測定点を滑らかな曲線で結ぶ。 

b) この曲線が電位零を示す等電点の値(pHの値)を,図から小数点以下1けたまで読み取る。 

12. 報告 測定結果は,次の項目について報告する。 

a) 試料名 

b) 測定装置名及び測定原理 

c) 電解質水溶液及びpH調整用の酸,又は塩基及びそれらの塩の種類と濃度 

d) 分散装置及び分散条件(試料液濃度,分散装置の種類と分散時の出力及び時間,温度など) 

e) 放置(懸濁液の安定化)時間及び試料液の放置状態 

f) 

等電点の値 

g) ゼータ電位−pH図 

h) 測定装置の検定結果 

12 

R 1638 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

○ 鈴 木 和 夫 

工業技術院名古屋工業技術研究所 

○ 椿   淳一郎 

名古屋大学大学院 

○ 中 平 兼 司 

財団法人ファインセラミックスセンター 

○ 中 村 彰 一 

大塚電子株式会社 

○ 福 井 俊 文 

株式会社島津製作所 

○ 橋 本 邦 男 

昭和電工株式会社 

○ 佐々木 邦 雄 

株式会社セントラル科学貿易 

○ 山 口 浩 文 

日本ガイシ株式会社 

内 海 良 治 

工業技術院名古屋工業技術研究所 

伊ヶ崎 文 和 

工業技術院物質工学工業技術研究所 

青 木 正 司 

財団法人ファインセラミックスセンター 

山 田 哲 夫 

宇部興産株式会社 

伊 藤   崇 

大川原化工機株式会社 

渡 邊 敬一郎 

日本ガイシ株式会社 

松 尾 康 史 

日本特殊陶業株式会社 

虎 谷 秀 穂 

名古屋工業大学 

林   茂 雄 

三重県窯業試験場 

中 安 哲 夫 

宇部興産株式会社 

安 川 勝 正 

京セラ株式会社 

前 田 貴 雄 

住友電気工業株式会社 

稲 葉   徹 

電気化学工業株式会社 

○ 伊 藤   敏 

通商産業省生活産業局ファインセラミックス室 

○ 大 嶋 清 治 

工業技術院標準部 

○ 加 山 英 男 

財団法人日本規格協会 

○ 菅 野 隆 志 

ファインセラミックス国際標準化推進協議会 

○ 渡 辺 一 志 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

(事務局) 

○ 杉 本 克 晶 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

備考 ○印は小委員会委員をかねる 

文責 原案作成小委員会