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R 1633 : 1998

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日

本工業規格である。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。主務大臣及び日本工業標準調査会は,

このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登

録出願にかかわる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 R

1633

 : 1998

ファインセラミックス及び

ファインセラミックス粉体用の

走査電子顕微鏡(SEM)観察のための

試料調製方法

Sample preparation method of fine ceramics

and fine ceramic powders for scanning electron

microscope observation.

1.

適用範囲  この規格は,乾燥状態にない試料,揮発性試料,非導電性試料の観察を可能にする特殊な

機能及び構造をもたず,試料室の圧力が 10

-2

Pa

以下で使用可能な走査電子顕微鏡(以下,SEM という。

を用いて,ファインセラミックスのバルク体材料及び粉体材料を SEM 観察するための試料調製方法につ

いて規定する。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。この引用規格は,その最新版を適用する。

JIS R 1600

  ファインセラミックス関連用語

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS R 1600 によるほか,次による。

a)

SEM

  Scanning Electron Microscope(走査電子顕微鏡)の略。

b)

バルク体  ファインセラミックス粉体を仮焼又は焼結して得られた塊状のファインセラミックス。

c)

導電性物質  非導電性の物質を SEM 観察する場合に,蒸着又はスパッタリングによって導電性の被

膜を形成することのできる物質。

d)

エッチング  バルク体の粒界層などの化学的に弱い部分を選択的に分解除去して粒界を強調させるた

めに行う処理。熱による分解を利用するサーマルエッチング,化学変化を利用するケミカルエッチン

グ又は物理的な粒子の移動若しくは衝突エネルギーを利用するフィジカルエッチングがある。

4.

原理  SEM は,高真空中に保持した試料表面に電子線を照射し,試料表面から発生した 2 次電子を検

出して表面形態を観察する。したがって,観察対象となる試料は,観察したい表面が露出している,乾燥

状態にあり不揮発性である及び,導電性があることが必要である。

5.

装置及び器具  装置及び器具は,次のとおりとし,必要に応じて適切なものを使用する。


2

R 1633 : 1998

a)

SEM

  分解能が 5nm 以上の機種が望ましい。

b)  SEM

観察用試料台  使用する SEM の試料室に固定可能な金属製の台。アルミニウム又は黄銅製が一

般的である。

c)

導電性両面テープ  粘着剤の中にグラファイトが分散させてあるもの,又は銅のメッシュに粘着剤が

塗布してあるもの。

d)

導電性ペースト  SEM 観察で試料を SEM 観察用試料台に固定するために用いられる接着剤。有機溶

媒にグラファイト粉末を溶かしたものが一般的である。

e)

研磨機  バルク体のラッピング及びポリッシングを行うことができる自動又は手動の研磨装置を用い

る。

f)

電気炉  サーマルエッチングに使用する。大気中又は不活性ガス雰囲気中で最高 1 600℃程度の温度を

数時間保持することができるもの。

g)

フィジカルエッチング装置  放電などによる物理的な粒子の移動,衝突エネルギーを利用して,試料

表面を削り取ることができる装置。

h)

超音波洗浄器  超音波振動を用いて水又は有機溶媒に粉体材料を分散させた懸濁液を作ることができ

る装置を用いる。

i)

コーティング装置  真空蒸着装置又はスパッタリング装置を用いる。

6.

試薬  ケミカルエッチングには,試料の材質及びその成分によって適切な強酸又は強アルカリの溶液

などを使用する。

7.

試料調製

7.1

バルク体の材料の観察  バルク体材料の観察には,材料の表面をそのまま観察する場合とエッチン

グ面を観察する場合がある。

a)

バルク体材料の表面  すでに露出している表面又は破断して作られた表面をそのまま観察する場合は,

その表面を水又は有機溶剤(

1

)

を用いて超音波洗浄し,ブロワーの空気流などを用いて表面の付着物を

取り除く。その後,SEM 観察用試料台に導電性両面テープなどで固定する。

(

1

)

超音波洗浄を行う場合は,バルク体材料が溶解又は化学変化を起こさない溶液を選定する。

b)

バルク体材料のエッチング面  ダイヤモンドと(砥)粒  (<1

µm)  などで研磨された表面をサーマル

エッチング,ケミカルエッチング(

2

)

又はフィジカルエッチングを施す。その後,SEM 観察用試料台に

導電性両面テープなどで固定する。

(

2

)

ケミカルエッチングに使用する強酸又は強アルカリの溶液などの取扱いには,十分な安全知識

と細心の注意が必要である。

7.2

粉体材料の観察  粉体材料の観察には,次のいずれかの分散方法によって試料を調製する。

a)

粉体材料の乾式分散  導電性両面テープなどをはり付けた SEM 観察用試料台の上に,ミクロスパー

テルや綿棒で採取した粉体材料を振りかけて粉体材料を分散させる。その後,エアスプレーなどの空

気流を吹きかけて,余分に振りかけられた粉体材料を除去する。

b)

粉体材料の湿式分散  水又は有機溶媒(

3

)

に粉体材料を極少量添加し,超音波洗浄器を用いて懸濁液を

調製する。懸濁液をスポイトなどを用いて,光学顕微鏡観察用カバーガラス又はアルミ箔の上に滴下

し,溶媒を蒸発,乾燥させる。粉体材料の乾燥時の再凝集を防ぐために,できるだけ薄く延ばす。十

分に乾燥した後,SEM 観察用試料台に合った適当な大きさに切断して,導電性ペーストなどを用いて


3

R 1633 : 1998

試料台に固定する。

カバーガラスを使用する場合には,SEM 観察用試料台の寸法に合うようにあらかじめ切断しておい

たものを使用する。

(

3

)

粉体材料の懸濁液を調製する溶媒には,粉体材料が溶解又は化学変化を起こさないものを選択

する。

7.3

導電性処理  非導電性ファインセラミックス及びファインセラミックス粉体の場合には,導電性物

質のコーティングを行う。コーティング膜の膜厚は,導電性物質の種類や SEM 観察試料の形態によって

異なるが,導電性物質として金 (Au) や白金 (Pt) を使用する場合,そのコーティング膜厚は 10∼30nm 程

度が一般的である。

8.

保存  試料調整が完了した試料は,直ちに観察することが望ましいが,保存を必要とする場合には,

室温で相対湿度 50%以下のデシケーター中に保存する。

9.

記録  必要に応じて,次の事項を記録する。

a)

材料名,試料履歴

b)

材料調製方法

1)

エッチング条件

2)

粉体分散方法,下地材料

3)

導電性物質の種類,膜厚

c)

試料調製年月日


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R 1633 : 1998

ファインセラミックス及びファインセラミックス粉体用の

SEM

観察のための試料調製方法原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

中  村  雅  彦

京都工芸繊維大学

(委員)

香  取  茂  美

旭硝子株式会社

菅  原  義  弘

財団法人ファインセラミックスセンター

上  原      剛

積水化学工業株式会社

青  柳  貞  夫

日本電子株式会社

後  藤  真知夫

日立計測エンジニアリング株式会社

安  田  榮  一

東京工業大学

大  司  達  樹

工業技術院名古屋工業技術研究所

水  野  峰  男

財団法人ファインセラミックスセンター

中  筋  善  淳

日本ガイシ株式会社

塩  貝  達  也

日本セメント株式会社

横  井  正  顕

東伸工業株式会社

梶      正  己

京セラ株式会社

西  川  友  三

京都工芸繊維大学(名誉教授)

坂井田  喜  久

財団法人ファインセラミックスセンター

宮  原      薫

石川島播磨重工業株式会社

浦  島  和  浩

日本特殊陶業株式会社

高  橋      実

名古屋工業大学

田  中  謙  次

株式会社村田製作所

堀  田      禎

財団法人ファインセラミックスセンター

松  尾  康  史

日本特殊陶業株式会社

村  岡  孝  敏

株式会社島津製作所

白仁田      昭

品川白煉瓦株式会社

長  友  隆  男

芝浦工業大学

一ノ瀬      昇

早稲田大学

合  田  拓  司

日本板硝子テクノリサーチ株式会社

和  田  明  生

日本分光株式会社

樋  口  勝  敏

株式会社東芝

柴  田  憲一郎

住友電気工業株式会社

伊  藤      敏

通商産業省生活産業局ファインセラミックス室

大  嶋  清  治

工業技術院標準部

加  山  英  男

財団法人日本規格協会

菅  野  隆  志

ファインセラミックス国際標準化推進協議会

岡  田      宏

社団法人日本ファインセラミックス協会

(事務局)

杉  本  克  晶

社団法人日本ファインセラミックス協会

備考  ○印は小委員会委員を兼ねる。

文責  原案作成小委員会