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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 3 

2 引用規格························································································································· 3 

3 用語及び定義 ··················································································································· 3 

4 演習プログラムの計画策定,実施及び改善 ············································································ 6 

4.1 一般 ···························································································································· 6 

4.2 計画策定 ······················································································································ 7 

4.3 実施 ···························································································································· 8 

4.4 演習プログラムのレビュー及び改善··················································································· 9 

5 演習プロジェクトの計画策定,実施及び改善 ········································································· 9 

5.1 一般 ···························································································································· 9 

5.2 計画策定 ····················································································································· 10 

5.3 実施 ··························································································································· 21 

5.4 改善 ··························································································································· 22 

6 継続的改善 ····················································································································· 23 

6.1 一般 ··························································································································· 23 

6.2 評価 ··························································································································· 23 

6.3 マネジメントレビュー及び是正処置·················································································· 24 

附属書A(参考)マネジメントシステムにおける演習 ································································ 25 

附属書B(参考)ニーズ分析 ································································································· 27 

附属書C(参考)国レベルの戦略的演習 ·················································································· 29 

附属書D(参考)演習内容の充実 ··························································································· 32 

附属書E(参考)体験に基づいたシナリオの作成 ······································································· 34 

参考文献 ···························································································································· 36 

Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工

業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済

産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

Q 22398:2014 

(ISO 22398:2013) 

社会セキュリティ−演習の指針 

Societal security-Guidelines for exercises 

序文 

この規格は,2013年に第1版として発行されたISO 22398を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

この規格は,演習プログラム及び演習プロジェクトを計画し,実施し,改善する上での一般的なアプロ

ーチの諸要素を規定している。この規格の目的を次に示す。 

− 組織内の効果的な演習プログラムを理解し,策定し,実施するための基礎を示す。 

− 演習プロジェクトを計画し,実施する上での指針を示す。 

− 組織内外の関係者と共に演習を実施する組織の能力を強化する。 

− 優れた実践を反映し,リスクアセスメントに基づいた手法で,組織が自らの演習実現能力を育成し,

その実態を把握することを支援する。 

− 組織内の演習プログラム及び演習プロジェクトの継続的改善を実現可能にする。 

この規格は,組織の形態,規模及び性質を問わず,官民あらゆる組織に適用できる。この指針は,組織

のニーズ,目的,資源及び制約に合わせて適応させることができる。 

演習は,不足部分及び改善を必要とする領域を洗い出し,対応及び復旧に関する戦略の有効性を見極め

るための重要なマネジメントツールである。演習は,組織及びその要員の力量を測定するだけではなく,

改正した計画及び変更したプログラムに漏れがないか,現実を反映しているか,正確であるかを把握する

ための優れたツールである。 

演習は,次を行うために活用することができる。 

− 方針,計画,手順,教育訓練,装置及び組織間の合意の妥当性の確認 

− 情報通信技術(ICT)を使った災害復旧システムの試験 

− 要員の役割及び責任の明確化及び教育訓練の実施 

− 組織間の連携及びコミュニケーションの向上 

− 資源の不足部分の洗い出し 

− 個人のパフォーマンスの向上 

− 改善の機会の洗い出し 

− 統制された即応練習の機会提供 

演習プロジェクトでは,通常,例えば次のような演習パフォーマンス目標を掲げる。 

− 導入指導・実演:予期される事態をシミュレーションとして体験させることによって,ぜい(脆)弱

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

性,及びシミュレーションとして体験した事態への対応における効果的な行動の重要性に関する意識

を高める。 

− 学習:特定の力量の習得を目指して,個人又はグループの知識,技能又は能力を強化する。 

− 協力:人々が,共通の最終成果を達成するために力を合わせる機会を提供する。 

− 実験:完成度を高めるため,新しい方法及び/又は手順を試行する。 

− 試験:方法及び/又は手順のどの構成要素が十分に構築されたかを把握するため,方法及び/又は手

順を評価する。 

図1参照。 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

図1−演習プログラム及び演習プロジェクトと継続的改善との関係 

演習プログラム 

計画策定 

実施 

改善 

・プログラムの必要性を明確化する。 ・プログラムを実施する。 

・プログラムをレビューする。 

・支援基盤を構築する。 

・プログラム及びプロジェクトの ・プログラムを改善する。 

・狙い及び目的を設定する。 

 パフォーマンスを監視する。 

  演習プロジェクト3…X 

  演習プロジェクト2 

  演習プロジェクト1 
計画策定 
・基礎固め 
・範囲 
・プロジェクト計画策定 
・コミュニケーション 
・設計及び構築 
・文書化 
実施 
・演習前全体確認 
・開始時の説明会 
・発動 
・終了 
改善 
・観察所見 
・反省会 
・事後レビュー 

継続的改善:評価,マネジメントレビュー及び是正処置 

Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

適用範囲 

この規格は,組織が自らの演習プロジェクトを計画し,実施し,改善する上での優れた実践及び指針を

示す。演習プロジェクトは,多くの場合,演習プログラムの枠内で企画される。 

この規格は,組織の形態,規模及び性質を問わず,官民のあらゆる組織に適用できる。この指針は,組

織のニーズ,目的,資源及び制約に合わせて適応させることができる。 

この規格は,組織の要員の力量,特に組織のリーダーシップの確保に責任のある人々,並びに演習プロ

グラム及び演習プロジェクトの運用管理を担当する人々の利用を意図している。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 22398:2013,Societal security−Guidelines for exercises(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Q 22300 社会セキュリティ−用語 

注記 対応国際規格:ISO 22300,Societal security−Terminology(IDT) 

JIS Q 31000 リスクマネジメント−原則及び指針 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Q 22300によるほか,次による。 

3.1 

事後の報告書(after-action report) 

反省プロセス及びオブザーバからの報告を活用して,演習に関して,記録し,記述し,分析し,そこか

ら教訓を導き出す文書(JIS Q 22300参照)。 

注記1 事後の報告書は,事後レビューの結果を文書に記したものである。 

注記2 事後の報告書は,最終演習報告書とも呼ばれる。 

3.2 

力量(competence) 

意図した結果を達成するために,知識及び技能を適用する能力(JIS Q 22300参照)。 

3.3 

訓練(drill) 

ある特定の技能を練習し,複数回の繰返しを伴うことが多い活動(JIS Q 22300参照)。 

例 ビル火災の避難訓練が代表的な例 

3.4 

評価(evaluation) 

意図したパフォーマンスと実際のパフォーマンスとの相違を見極めるため,測定の結果を一般に認めら

れた基準と比較する体系的なプロセス。 

注記 この差異は,継続的改善プロセスへのインプットとなる。 

Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.5 

演習(exercise) 

組織内で,パフォーマンスに関する教育訓練を実施し,その実態を把握し,練習し,改善するプロセス。 

注記1 演習は,次のような目的のために利用することができる。 

− 方針,計画,手順,教育訓練,装置又は組織間合意の妥当性確認 

− 役割及び責任を担う要員の明確化並びにそれらの教育訓練 

− 組織間の連携及びコミュニケーションの改善 

− 資源の不足部分の特定 

− 個人のパフォーマンスの改善,及び改善の機会の特定 

− 臨機応変な対応を練習する統制された機会 

注記2 試験は,演習の独特かつ特有の形態で,計画中の演習の到達点又は目的の枠内で,合否の要

素を予想することが含まれている。 

3.6 

演習コーディネータ(exercise coordinator) 

演習活動の計画策定,実施及び評価の責任者。 

注記1 比較的規模の大きい演習では,この機能を複数の人・スタッフで果たすこともあり,この機

能を“演習の統制”と呼ぶこともある。 

注記2 国によっては,“演習コーディネータ”ではなく,“演習指揮者”という用語(又はこれに類

似した用語)が使われている。 

注記3 演習コーディネータの役割には,組織内外の事業体との協力に関する責任も含まれる。 

3.7 

演習プログラム(exercise programme) 

演習全体の目的又は目標を達成するために策定された,一連の演習活動。 

3.8 

演習プログラム管理者(exercise program manager) 

演習プログラムの計画策定及び改善の責任者。 

3.9 

演習プロジェクトチーム(exercise project team) 

演習プロジェクトの計画策定,実施及び評価を担当する人々。 

注記 演習プロジェクトとは,演習プログラムで設定された枠の中で個別に実施される演習のことを

いう。 

3.10 

演習安全責任者(exercise safety officer) 

演習の際のあらゆる活動が安全に実施されるよう徹底することを任務とする人。 

注記 複数の機能が盛り込まれた比較的規模の大きい演習では,複数の演習安全責任者が任命される

場合もある。 

3.11 

ハザード(hazard) 

潜在的な危害の源(JIS Q 22300参照)。 

注記 ハザードは,リスク源となることがある。 

Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.12 

利害関係者(interested party) 

ある決定事項若しくは活動に影響を与え得るか,その影響を受け得るか,又はその影響を受けると認識

している,個人又は組織。 

注記 意思決定者も利害関係者であり得る。 

3.13 

付与状況(inject) 

(演習参加者の)対応を促し,演習の流れを促進するために,演習に挿入された筋書き情報。 

注記 付与状況は,書面,口頭,テレビ画面に映し出す,及び/又はその他いかなる手段で伝達され

てもよい(例えば,ファクシミリ,電話,Eメール,音声,無線,合図など)。 

3.14 

マネジメント(management) 

組織を指揮し統制する連携のとれた活動。 

3.15 

オブザーバ(observer) 

演習活動から距離を置いた場所にとどまり,演習を見守る役割をもつ演習の参加者。 

注記 オブザーバは,評価プロセスに加わる場合もある。 

3.16 

参加者(participant) 

演習に関係する機能を果たす人又は組織。 

3.17 

リスク(risk) 

目的に対する不確かさの影響(JIS Q 22300参照)。 

注記1 影響とは,期待されていることから,好ましい方向及び/又は好ましくない方向にかい(乖)

離することをいう。 

注記2 目的は,例えば,財務,安全衛生,環境に関する到達目標など,異なった側面があり,戦略,

組織全体,プロジェクト,製品,プロセスなど,異なったレベルで設定されることがある。 

注記3 リスクは,起こり得る事象,それがもたらす結果又はこれらの組合せ,及びそれらが目的の

達成にどのように影響し得るかについて述べることによって,その特徴を記述することが多

い。 

注記4 リスクは,ある事象の結果又は周辺状況の変化,及びその起こりやすさの組合せとして表現

されることが多い。 

注記5 不確かさとは,事象,その結果又はその起こりやすさに関する,情報,理解又は知識が,た

とえ部分的にでも欠落している状態をいう。 

3.18 

シナリオ(scenario) 

演習を推し進めるためにあらかじめ計画されたストーリーであり,演習プロジェクトのパフォーマンス

目標を達成するために使われる刺激剤。 

3.19 

演習の範囲(scope of exercise) 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

規模,資源,並びに演習のニーズ及び目的を反映した領域。 

3.20 

筋書き(script) 

主要事象リストに記載された様々な要素が導入されるにつれ,演習の中で事象がどのように展開してい

くのかを,指揮を執っているスタッフに理解させるための演習のストーリー(JIS Q 22300参照)。 

注記 筋書きは,模擬事象の説明の形で書かれることが多い。 

3.21 

対象グループ(target group) 

演習の対象となる個人及び/又は組織。 

3.22 

試験(test) 

期待され測定可能な合否の結果を,得ることを狙いとした演習。 

注記1 試験は,演習の独特かつ特有の形態で,計画中の演習の到達点又は目的の枠内で合否を判定

する要素が含まれている。 

注記2 “試験”及び“試験の実施”という用語は,“演習”及び“演習の実施”という用語と同義で

はない。 

3.23 

教育訓練(training) 

知識,技能及び能力の,学習及び育成を促し,ある任務又は役割のパフォーマンスを改善するために策

定された活動(JIS Q 22300参照)。 

演習プログラムの計画策定,実施及び改善 

4.1 

一般 

演習を実施する組織は,演習プログラムを策定することが望ましい。演習プログラムを策定することで,

個別の計画,要員,能力及び/又は資源を演習することができるので,連携のとれたアプローチによって,

組織の実現能力を築き,成熟させることができる。 

トップマネジメントは,演習プログラムの目的を設定し,演習プログラムを運用管理する力量を備えた

人を任命することを徹底することが望ましい。演習プログラムの範囲は,演習を実施する組織の規模及び

性質,演習の適用範囲,機能,複雑さ及び計画の成熟度,並びに実現能力に基づいたものであることが望

ましい。 

演習プログラムは,規定された時間枠の中で演習を効果的かつ効率的に企画及び実施するために必要な

情報及び資源を含めることが望ましい。演習プログラムには,次の事項も含めることが望ましい。 

− ニーズ分析 

− 支援基盤 

− 演習プログラムの狙い及び目的 

− 演習プロジェクトの領域・数・種類・期間・場所・日程 

− 演習プロジェクトチームの選任 

− 必要な資源及び予算 

− 機密保持,情報セキュリティ,安全衛生,その他類似した事項を取り扱うプロセス 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

組織は,設定した目的が達成されていることを確認するために,演習プログラムの実施を監視し,測定

することが望ましい。演習プログラムは,改善の可能性を洗い出すため,レビューすることが望ましい。 

4.2 

計画策定 

4.2.1 

演習プログラムの必要性の確立 

組織は,次の事項を洗い出すため又は確立するために,ニーズ分析を実施することが望ましい。 

− 組織の戦略的目的 

− 組織に対するリスク 

− 法規制の要求事項 

− 組織の戦略的目的で求められる目的について,(現在の)実現能力と計画で求められる実現能力におけ

る差異を認識した対応及び/又は復旧を行う上での組織の成熟度 

− 演習を実施する必要がある計画,手順,能力又は資源 

− 所定のレベルの対応及び/又は復旧の実現能力(演習プログラムの範囲)を達成するのが望ましい期

間 

− 演習プログラムの内容に関する支援基盤及び手引 

4.2.2 

演習プログラムの支援基盤の確立 

組織は,組織全体による適切な関与及び資源に関するコミットメントを確実にするため,トップマネジ

メントによる支援基盤及びコミットメントを確保することが望ましい。支援基盤を確保することによって,

演習の狙い及び目的が,組織の戦略的目的及び戦略と確実に合致するようになる。 

トップマネジメントは,組織に対して,演習プログラムを実施する明確な指令及び完全な権限を付与す

ることが望ましい。ニーズ分析によって見極められた演習プログラムの便益及び利点は,トップマネジメ

ント及び演習プログラムに関する責任を担う人々に明確に説明し,提示することが望ましい。 

4.2.3 

演習プログラムの狙い及び目的の設定 

トップマネジメントは,演習の計画策定,実施及び改善の方向性を示すために,演習プログラムの狙い

及び目的を設定するよう徹底し,演習プログラムの効果的な実施を徹底することが望ましい。 

目的は,演習プログラムの狙いに基づき,次の事項をその基礎とすることもできる。 

− ニーズ分析で得られた所見 

− 経営の優先順位 

− 該当する場合,マネジメントシステムの要求事項 

− 法律上,規制上及び契約上の要求事項並びに組織が確約しているその他の要求事項 

− 利害関係者のニーズ及び期待 

− 組織又は利害関係者に対するリスク 

− 今までの演習,又は実際のインシデントの報告及び結果 

− 組織の成熟レベル及び演習の対象となる資源 

注記 マネジメントシステムの中で演習に関して追加される情報(又は要素)を,附属書Aに示す。 

4.2.4 

演習プログラム管理者の役割及び責任 

組織は,トップマネジメントが指名する演習プログラム管理者の役割及び責任を確立することが望まし

い。この役割及び責任には,通常,次の事項が含まれる。 

− 演習プログラムの範囲,狙い及び演習パフォーマンス目標を設定し,演習プログラムの目的に基づい

て,個別の演習プロジェクトの範囲,評価基準及び時間枠を設定する。 

− 演習プログラムのリスクを洗い出し,文書に記し,評価する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− 組織の業務,評判及び資源に対する演習プロジェクトの潜在的影響を見極める。 

− 演習プロジェクト中に現実のインシデントが発生した場合の影響を推定する。 

− 演習プログラムの目的を達成するために必要な演習の種類及び方法を確定する。 

− 演習を計画し,実施するための資源を始めとする,必要な資源を決定する。 

− 演習プロジェクトチームを選任する。 

− 文書を完成するための手順を構築し,文書類を運用管理及び維持する。 

− 演習プログラムの実施を徹底する。 

− 演習プログラムを監視し,レビューし,改善する。 

演習プログラム管理者は,演習プログラムに関連する活動及びリスクについてトップマネジメントに知

らせ,演習を進めることについて承認を得ることが望ましい。 

演習プログラム管理者は,演習プログラム及び関連するリスクを効果的かつ効率的に運用管理するため

に必要な力量を備えていることが望ましい。 

演習プログラム管理者は,演習プログラムについてトップマネジメントに報告する責任をもち,トップ

マネジメントは,演習プログラムに関する責任を負うことが望ましい。演習プログラム管理者は,演習プ

ログラムの実行を支援する一つ又は複数のチームを編成及び選任することもある。この場合,このチーム

のメンバーが,その責任を効果的かつ効率的に遂行する力量を備えているよう徹底することが望ましい。 

4.3 

実施 

4.3.1 

演習プログラムの実施 

演習プログラム管理者は,次の事項を行うことによって,演習プログラムを実施することが望ましい。 

− 演習プログラムの関連部分を利害関係者に伝達し,その進捗について定期的に知らせる。 

− 演習プロジェクト及び演習プログラムに関連するその他の活動について,調整し,日程を組む。 

− 必要な力量を備えたメンバーで構成する演習プロジェクトチーム(複数可)の選任を徹底する。 

− 演習プロジェクトチームに必要な資源を提供する。 

− 合意した時間枠の中で,演習プログラムに従って演習を実施する。 

− 演習活動を記録し,文書類を運用管理及び維持する。 

− 事後のレビューを完了し,得られた教訓及び改善のための提言のフォローアップを行う。 

4.3.2 

演習パフォーマンスの監視 

演習プログラム管理者は,個別の演習プロジェクトの効果的かつ効率的な評価を確実にすることが望ま

しい。効果的かつ効率的な演習プログラムを実施するため,演習プログラムの全期間にわたって比較方法

について考慮することが望ましい。 

演習パフォーマンス評価プロセスでは,成熟度の変化を洗い出し,チーム間,場所間又は実現能力間の

比較を行い,将来のプログラムの中で発展させていく領域を洗い出していく。参加者,手順及び実現能力

のパフォーマンスを一貫した方法で測定すれば,演習プログラムのパフォーマンスを効果的に評価できる

ため,一貫した測定方法を組織の評価プロセスに取り入れることが望ましい。 

演習プログラム管理者は,評価のプロセス及び基準が,演習プログラムの狙い及び目的に基づいて,個

別の演習プロジェクトを含む演習プログラム全体の状況を把握するものであるよう徹底することが望まし

い。演習パフォーマンス目標には,演習プロジェクトの結果を継時的に比較するための,あらかじめ決め

られた評価基準及び一貫した測定方法があることが望ましい。個別の演習プロジェクトには,互いに整合

のとれた数多くの目的を適用することが望ましく,また,演習プロジェクトの目的は,演習プログラムの

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目的と整合していることが望ましい。演習パフォーマンスの傾向を表すことのできそうな活動の例を次に

示す。 

− 演習に投入された情報(特定の付与状況)への対応に要した時間 

− 連絡網に従って次々と連絡するのに要した時間 

− 所定の時間又は空間に動員した資源の数 

4.3.3 

演習プログラムの監視 

4.3.3.1 

組織は,演習プログラム管理者が演習プログラムの実施を継続して監視するよう徹底することが

望ましい。また,次の事項についての必要性を検討する。 

− 演習プロジェクトチームメンバーのパフォーマンスを評価する。 

− 演習プロジェクトチームが演習プログラムを実施する能力を評価する。 

− トップマネジメント,利害関係者,演習参加者及び演習プロジェクトチームメンバーからのフィード

バックを評価する。 

4.3.3.2 

次の要因によって,演習プログラムの修正の必要性を決定する場合もある。 

− 事後の報告書又は実際のインシデントで得られた所見 

− (必要に応じて)実証された,マネジメントシステムの有効性のレベル 

− 新しいマネジメントシステムを構築した場合は,それに対する変更又はその実施 

− 計画,資源及び実現能力の変更又は新設 

− 規格,法令,規制及び契約の要求事項に対する変更,並びに組織が同意するその他の要求事項に対す

る変更 

− 組織体制又は要員の主要な変更 

4.4 

演習プログラムのレビュー及び改善 

演習プログラムは,設定した目的の達成を確実にするため,監視プロセスを通じて,得られた教訓から

改善点を洗い出し,改善を実施するよう徹底することが望ましい。演習プログラム管理者は,次の事項を

考慮し,定期的なレビューを実施することが望ましい。 

− 新しい演習方法 

− 演習プログラムの監視から得られた結果及び傾向 

− 利害関係者の新たに変化するニーズ 

演習プログラム管理者は,レビューの結果をトップマネジメントに報告することが望ましい。 

演習プロジェクトの計画策定,実施及び改善 

5.1 

一般 

個別の演習それぞれについて計画を策定することが求められているため,組織は,各演習を一つのプロ

ジェクトとして運用管理することが望ましい。ここでは,演習プロジェクトの計画策定及び実施に関する

手引を提供する。 

各演習プロジェクトの計画策定のレベルは,演習に関する要求事項及び演習プログラムに影響を与える

制約によって,演習プログラムの中で様々に変わっていく。 

組織は,演習プログラムの目的を達成する演習を実現するため,次の三つのステップを踏むことが望ま

しい。 

a) 演習の計画を策定する。 

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) 演習を実施する。 

c) 演習及びその結果を評価する。 

5.2 

計画策定 

5.2.1 

一般 

組織は,ニーズ分析及び演習プロジェクトの範囲に基づいて,演習を設計し,構築することが望ましい。

プロジェクトの計画策定には,演習プロジェクトの狙い及び演習パフォーマンス目標の設定,シナリオの

策定,文書類の作成,後方支援業務の運用管理,並びに実施する演習の計画策定及び継続的改善に関する

計画策定が含まれる。 

5.2.2 

演習プロジェクトの基礎確立 

5.2.2.1 

ニーズ分析 

組織は,ニーズ分析を行って,次のような成果物を出すことが望ましい。 

− 演習及び試験の必要性に関する記述 

− 演習プロジェクトに関する確固たる支援基盤 

− 組織に対するリスクの運用管理における演習及び試験の役割の認識 

− 演習の実施に伴うリスクを運用管理することの必要性の容認 

演習プログラムの目的を達成するため,組織は,リスク(の運用管理),演習活動を構築し実施する上で

の制約,地理的境界及び利害関係者に関連する様々な事柄を考慮した,具体的な演習活動を構築すること

が望ましい。 

ニーズ分析の役に立つ一連の質問項目を,附属書Bに示す。 

5.2.2.2 

演習プロジェクトの範囲 

組織は,ニーズ分析に基づいて,演習プロジェクトの範囲を設定することが望ましい。この範囲は,演

習の規模,資源及び領域,並びに演習の狙い及び演習プログラムのパフォーマンス目標(以下,演習パフ

ォーマンス目標という。)をどのように達成するのかを総括して記述する。 

5.2.2.3 

支援基盤 

組織は,それぞれの演習プロジェクトについて,たとえそれが演習プログラムの一部であったとしても,

トップマネジメント,参加者,利害関係者からの支援基盤及びコミットメントを確保することが望ましい。 

組織は,ニーズ分析によって決定された,演習がもたらす便益を洗い出し,演習に関する責任を負う人々

にその便益を伝達することが望ましい。 

演習の狙い及び演習パフォーマンス目標が,組織の戦略的目的に呼応し,整合することを確実にするた

めには,演習及び演習プロジェクトチームへの支援も重要である。 

トップマネジメントは,演習コーディネータ及び演習プロジェクトチームに対して,演習プロジェクト

の計画策定,実施及び評価に関する明確な指令及び完全な権限を付与することが望ましい。演習プロジェ

クトの便益及び利点は,演習コーディネータ,統制者,評価者,演習安全責任者など,適切な要員に明確

に説明し,提示することが望ましい。 

5.2.3 

演習プロジェクトの狙い及び演習パフォーマンス目標の設定 

5.2.3.1 

一般 

組織は,演習プロジェクトの狙いを定め,演習の実施が演習プログラムの狙い及び目的をどのように支

援するのかを明確化することが望ましい。組織は,シナリオ作成の枠組みを提供し,演習を評価するため

の基準を設定するため,各演習プロジェクトについて演習パフォーマンス目標を設定することが望ましい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

次の事項の実現を目指して,演習を設計することもできる。 

− 参加者に教育訓練を施し,知識,理解及び技能を習得する機会を提供する。 

− 個人,組織及びシステムの実現能力を評価する。 

− 活動を発展させ,能力を開発し,及び発想をもたらす。 

− 知識,能力及び耐久性(時間),又は実現能力を測定する。 

演習パフォーマンス目標は,組織が優先事項として設定した特定の実現能力を反映し,その実現能力に

関連する任務を洗い出すものであることが望ましい。演習パフォーマンス目標は,単純,測定可能,達成

可能,現実的及び課題志向的であることが望ましい。 

目的に照らして演習パフォーマンスを評価する能力は,アセスメントをするために用いるどのようなデ

ータ又は証拠を要求するかに左右される。演習パフォーマンス目標を採択する前に,どうすればその演習

パフォーマンス目標の達成状況を把握できるのかについて検討することが重要である。 

演習パフォーマンス目標には,通常,次の四つの部分が含まれている。 

a) 参加者:演習への参加者を洗い出す。比較的規模の大きい演習では,参加者は,複数のチーム又は複

数の部署である場合もある。 

b) パフォーマンス:演習パフォーマンス目標の的確な記述 

c) 状態:期待され,求められる演習パフォーマンスの実現を導く具体的な周辺状況 

d) 基準:観察された演習パフォーマンスをそのパフォーマンスに関する測定可能な基準と比較するため

に用いられる基準。演習パフォーマンスに関して,確立された基準が組織にない場合,組織は,その

基準を構築し,承認し,伝達することが望ましい。 

5.2.3.2 

測定不可能なパフォーマンス 

知っていること及び考えていることを直接測定することは難しい。演習において,これらの認識能力の

アセスメントが必要な場合は,組織は,演習パフォーマンス指標を用いることが望ましい。 

演習パフォーマンス指標の例としては,決定事項,選択肢,想起された情報などがあり得る。 

5.2.3.3 

演習パフォーマンス目標のレビュー 

演習プロジェクトの始動後に,演習パフォーマンス目標に何らかの変更が必要となることもある。この

変更は,確立された管理策に基づき,演習の狙いを達成するための改善プロセスの一環として実施するこ

とが望ましい。 

5.2.4 

チームマネジメント 

5.2.4.1 

一般 

組織は,演習の計画策定,実施及び評価を行う一つ又は複数の演習プロジェクトチームを編成すること

が望ましい。演習の対象となっている組織内の主要領域の代表が,このチームに含まれることが望ましい。

演習プロジェクトチームは,必要に応じて,拡充することもできる。演習の狙い及び演習パフォーマンス

目標を達成するため,例えば,後方支援業務及びコミュニケーションを追加することもある。 

組織は,演習の範囲を明確にし,演習の計画策定,実施及び評価を行う役割を明確にして,力量を備え

た個人に責任を割り当てることが望ましい。 

演習プロジェクトチームの役割には,次の事項が含まれる場合もある。 

− 演習コーディネータ 

− 文書化コーディネータ 

− 後方支援業務コーディネータ 

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− コミュニケーションコーディネータ 

− 演習安全責任者 

− 統制者及び進行役 

− 評価者 

演習の複雑さ又は範囲によっては,組織は,幾つかの役割に対して一人の人間を任命することも,また,

一つの役割に対して複数の人間を任命する場合もある。 

5.2.4.2 

チームの構築及び責任 

組織は,関与する人々の人数にかかわらず,演習プロジェクトチームの担当者として一人を任命するこ

とが望ましい。演習の計画策定及び実施に関する責任を負うことになるこの担当者は,計画策定委員会の

委員長を務め,組織に対して説明責任を負うことが望ましい。 

複数の組織による演習の場合,演習プロジェクトチームには,いずれの参加組織からも最低一人が加わ

ることが望ましい。 

演習コーディネータは,演習を実施する前に,演習プロジェクトチームへの教育訓練の必要性を明らか

にすることが望ましい。演習プロジェクトチームは,演習の安全に関する説明及び演習を実施し,評価す

る上で必要な重要情報を盛り込んだ,演習に関する事前説明資料を作成することが望ましい。 

組織は,演習プロジェクトチーム及び参加者が,割り当てられた役割及び責任を遂行するために必要な

知識,技能,能力及び力量を備えているよう徹底することが望ましい。組織は,更に,評価者に求められ

る力量も明らかにすることが望ましい。複数の組織による演習では,要求される力量の明確化は,評価者

の特定及び教育訓練前の演習計画策定中に行うことが望ましい。 

5.2.5 

リスクマネジメント 

5.2.5.1 

一般 

演習パフォーマンス目標の達成を確実にするため,演習の計画策定,実施及び評価の際に,リスクを運

用管理することが望ましい。リスクマネジメントでは,安全,環境影響,資源の廃棄物,機密情報の損失,

心的外傷(トラウマ),組織の評判,及び他の組織又は政府機関(政府間の取決め)との関係の悪化などの

懸念に対処する。 

演習において,参加者が潜在的に危険な状況若しくは有害物質にさらされる可能性,又は地域社会及び

環境に対するリスクが存在する場合,安全は,極めて重要となる。リスク管理策の明確化に関する責任は,

適切な責任及び権限を付与された安全責任者に割り当てることが望ましい。 

リスクマネジメントは,演習パフォーマンス目標を設定した計画策定プロセスにおいて不可欠なもので

ある。リスクの継続的なモニタリング及びリスクの再評価もリスクマネジメントの重要な部分である。リ

スクマネジメントプロセスには,コミュニケーション,文書化及び連携が含まれている。JIS Q 31000は,

体系的なリスクの特定,分析,評価のプロセスの利用を徹底し,演習パフォーマンス目標と比較してリス

クを評価するために,リスクマネジメントを実施する適切な枠組みを提供している。演習プロジェクトチ

ームは,JIS Q 31000に準拠したリスクマネジメントプロセスを利用することが望ましい。 

5.2.5.2 

組織の状況 

演習パフォーマンス目標に影響を与える可能性のある,法令及び規制の改定,メディアの関心,政府又

はその他の組織との関係などの組織内外の要因を考慮することが望ましい。演習を実施することによる組

織自体に及ぼすリスクも考慮することが重要である。 

5.2.5.3 

リスク特定 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

リスク特定には,演習パフォーマンス目標に負の影響を与える,リスク源,潜在的な望ましくない事象

及び事態並びにそれらの原因及びそれらがもたらす潜在的結果の洗い出しが含まれる。 

5.2.5.4 

リスク評価 

リスクは,最重要リスクから取り掛かるようにするため,リスク分析によって付与したリスクレベルを

使って優先順位を決めることが望ましい。リスク対応には,演習活動を実施しないことによるリスクの排

除又は回避,発生の起こりやすさの低減,リスクがもたらす結果の軽減,リスクの共有,リスクレベルの

受容及び変更のない演習プロジェクトの継続が含まれる場合もある。 

5.2.5.5 

リスクマネジメント計画 

リスクマネジメント計画は,リスクマネジメントを確実にするものであることが望ましい。リスクマネ

ジメントは,演習プロジェクトの効果的なリスクマネジメントに必要な方針,計画策定及び予算を含む,

組織の演習の業務及びプロセスのあらゆる側面に組み込まれることが望ましい。 

5.2.5.6 

リスクのモニタリング及びレビュー 

モニタリング及びレビューは,リスクマネジメントプロセスにとって不可欠なものであり,定期的な点

検又は調査も含まれる。モニタリング及びレビューに関する責任は,リスクマネジメント計画の中で明確

に定めることが望ましい。モニタリング及びレビューのプロセスは,次の事項を含めた,リスクマネジメ

ントのあらゆる側面を網羅することが望ましい。 

− 管理策が,設計及び運用の双方において,効果的かつ効率的であることを確実にする。 

− 事象(ニアミスを含む。),変化,傾向,成功例及び失敗例を分析し,そこから教訓を学ぶ。これによ

って,リスク対応の変更が必要になる場合もある。 

− 外部及び内部の状況の変化を検出する。 

− 新たに発生しているリスクを特定する。 

5.2.6 

環境面の考慮 

組織は,環境リスク及び環境影響,並びに地域社会及び業務環境への影響を考慮することが望ましい。

演習活動の際は,環境影響を把握・分析して,その結果を文書に記載し,演習の計画策定,実施及び評価

の際に考慮することが望ましい。 

5.2.7 

性別及び多様性の考慮 

演習コーディネータは,演習プロジェクトに関連する性別及び多様性を考慮する責任を担っている。こ

のような考慮事項は,演習の計画策定,実施及び評価において検討し,その結果を文書に記し,“明らかに

なった教訓”として報告することが望ましい。 

5.2.8 

後方支援業務の考慮 

演習プロジェクトコーディネータは,詳細な後方支援業務が演習プロジェクトチームによって管理され

ていることを確実にすることが望ましい。 

後方支援業務の詳細のマネジメントいかんで,演習は,効果的なものにも,混乱した非効果的かつ非効

率的なものにもなり得る。 

演習の後方支援業務に関する要求事項は,演習の種類及び方法によって変わってくる。演習を実施する

ために必要となる具体的な資材,装置及び施設は,演習計画策定者が,演習を実施する場所も含めたシナ

リオを作成する中で,決めていくことが望ましい。後方支援業務の担当者は,演習に必要な用品,資材,

装置,サービス及び施設を手配する。 

演習の後方支援業務に関する考慮事項には,輸送,インフラストラクチャ(施設,駐車場及び装置),ス

タッフの確保,サービス(仕出し,医療支援及び現場の保安),適切な会議,説明会の手配などが含まれる。 

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.9 

演習のコミュニケーション 

5.2.9.1 

一般 

演習プロジェクトの一環として,次の3種類のコミュニケーション活動を考慮することが望ましい。 

− 演習中に使用するコミュニケーション方法を演習する。 

− 演習の計画策定及び利害関係者参画のためのコミュニケーションを運用管理する。 

− 演習中のプロジェクトチーム内でのコミュニケーションを運用管理する。 

5.2.9.2 

演習パフォーマンス目標としてのコミュニケーション方法の演習 

演習プロジェクトには,演習パフォーマンス目標が設定されており,これに照らして,演習計画を実行

する際に使われるコミュニケーション方法又は演習の対象となっている実現能力を評価することができる。

これには,次の事項の演習が含まれる場合がある。 

− グループ間のコミュニケーションの流れ 

− 使用する通信装置 

演習パフォーマンス目標を確実に達成するためには,演習プロジェクトの計画を策定する際に,指標を

明確化することが望ましい。通信装置は,演習前に試験をして,問題点を洗い出し,解決することが望ま

しい。 

コミュニケーションの演習パフォーマンス目標の評価を支援するために利用できる指標の例を次に示す。 

− コミュニケーションを中継するのに要した時間 

− 中継した情報の正確さ 

− 使用したコミュニケーション方法の適切さ 

− 情報を受け取った人々又はシステムの適切さ 

5.2.9.3 

コミュニケーション戦略 

5.2.9.3.1 

一般 

演習コーディネータは,コミュニケーションに関する演習パフォーマンス目標及び利害関係者の洗い出

し,コミュニケーションの時期と内容とに関する指示,及び適切な資源の配分に関するマネジメントのコ

ミットメントを盛り込んだ戦略を策定することが望ましい。 

この戦略の実行責任者を一人割り当てることが望ましい。次の事項について考慮する場合もある。 

− コミュニケーション戦略の狙い及び範囲 

− リスクの問題及び影響 

− 演習の一環として考慮する主な活動,伝達するメッセージ及び使用するコミュニケーションの手法,

アプローチ,ツール及び経路 

− 時間枠 

− 役割及び責任 

コミュニケーション戦略が定まったら,トップマネジメントがそれを承認し,組織の演習のコミュニケ

ーション活動を統制するために利用することが望ましい。 

演習中に,メディアの関心についてシミュレーションする場合もある。コミュニケーション戦略の担当

者は,計画策定及び実行の段階に盛り込むメディアシミュレーションのための資源を洗い出す場合もある。 

コミュニケーション資源の役割には,次の事項が含まれることもある。 

− シナリオの適用において,危機発生時のコミュニケーションに関する専門知識を提供する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− 演習の状態を本物らしく見せるため,危機発生時のコミュニケーションに関する付与状況を作成する。 

− シナリオ及び付与状況の作成へのインプットを提供する。 

5.2.9.3.2 

コミュニケーションに関する演習パフォーマンス目標の設定 

コミュニケーション活動に関する演習パフォーマンス目標の設定において,組織は,自らの優先順位及

び求められる結果について考慮することが望ましい。組織は,利害関係者によるリスクの受け止め方,並

びに演習によって,リスク及び組織に関する利害関係者の受け止め方がどのように変わる可能性があるか,

に対して敏感であることが望ましい。 

コミュニケーション関連の演習パフォーマンス目標を設定する際の考慮事項には,次の事項が含まれる

場合もある。 

− 情報に関する利害関係者の期待に応える。 

− 内部及び/又は外部の対立を最小限にする。 

− 組織の信頼性及び評判を向上させる。 

− 組織の製品及びサービスに関する一般市民の知識及びイメージを向上させる。 

− 適用される法規制の要求事項,及び組織が同意するその他の要求事項を順守する。 

− 演習活動に関する情報を提供し,組織の様々な側面,影響及びパフォーマンスに関する利害関係者の

理解を促すこと。 

5.2.9.3.3 

利害関係者の洗い出し 

演習コミュニケーション戦略及び関連する演習パフォーマンス目標の策定において,組織は,組織の製

品,サービス,活動によって影響を受ける又は組織の製品,サービス,活動に利害・関心があると表明し

た,内部及び外部の利害関係者を洗い出すことが望ましい。 

組織が考慮することが望ましい利害関係者の例を次に示す。 

− 初期対応者,緊急事態管理要員,非政府組織 

− 従業員及びその代表並びに顧客,供給者及びサプライチェーンに関連する地域社会・請負契約者・流

通業者・競合他社 

− 政府当局,立法府及び規制当局,並びに政治家及びオピニオンリーダー 

− 地域社会,学校,学識経験者及び研究者 

− メディア組織 

様々な利害関係者の間の利益相反を洗い出す場合もある。コミュニケーション活動は,特に,最も影響

力のある人々,及び演習の結果に負の影響を与える可能性のある人々の要求に対処することが望ましい。 

5.2.9.3.4 

演習プロジェクト中のプロジェクトチームに関するコミュニケーションのマネジメント 

コミュニケーション戦略は,演習期間中ずっと演習プロジェクトチームが効果的にコミュニケーション

でき,かつ,効果的な演習プロジェクトの実行を支援できるように策定することが望ましい。その目的は,

コミュニケーションの方法及びルール間の相反を回避し,参加者への混乱の起こりやすさを低減して,演

習プロジェクトチームが次の事項を実施できるようにすることである。 

− 緊急事態が発生した場合は,意思決定を上位に引き上げ,打ち切ることも含め,演習を開始し,終了

させる。 

− 演習の進行を監視し,議論し,変更する。 

5.2.9.3.5 

演習中のコミュニケーション方法 

誰がどのような種類のコミュニケーションを利用するのかを含めた,演習中のコミュニケーション方法

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

を考慮したコミュニケーション戦略を策定することが望ましい。様々な種類の組織が参加している場合に

は,コミュニケーションの種類ごとの連絡の取りやすさ及び教育訓練に関する様々な要求事項を考慮する。

演習を運用管理し,さらに演習シナリオの中で,無線又はEメールのようなコミュニケーション手法を使

う場合には,演習への参加及び演習の運用管理において,これ以外の幾つかのコミュニケーション経路を

設けておくことが望ましい。 

演習プロジェクトチームは,演習におけるコミュニケーション及び演習の運用管理のためのコミュニケ

ーションを監視する要員を別途指名し,演習の運用管理のためのコミュニケーション及び参加者とのコミ

ュニケーション機能が失われた場合に備えた不測の事態への対応計画を策定することが望ましい。コミュ

ニケーション戦略は,演習開始前に,他の試験ルールと共に試験することが望ましい。演習を終了する必

要がある場合,参加者が演習プロジェクトチームに通知することができるようにルールを定めることが望

ましい。これには,指名された最高意思決定者へ情報を上げ,参加者に情報を返すための明確な上位への

意思決定の引き上げプロセスが含まれる。 

5.2.9.4 

レビュー 

演習プロジェクトチームがコミュニケーション戦略を実施する中で,フィードバックをすることが望ま

しい。利害関係者からのインプットを求める組織は,なぜ情報を求めているのか及び得られた情報は演習

の中でどのように活用されるのかについて説明することが望ましい。また,コミュニケーション関連の演

習パフォーマンス目標を確実に達成するため,コミュニケーション戦略のレビューにフィードバックを利

用することもある。 

5.2.10 

資源 

組織は,演習プロジェクトの中で,資金,時間,人,装置,施設などの資源が効果的に使用できるよう

徹底することが望ましい。演習コストの見積り及び予算は,演習の計画策定プロセスに着手する前に考慮

することが望ましい。演習に関する予算額は,想定される演習の狙い及び演習パフォーマンス目標を達成

するために必要となる演習の適切な種類及び方法の分析に基づいたものであることが望ましい。この分析

では,演習に関与するスタッフ,システム,ツール,参加する利害関係者,及びその他のコストを考慮す

ることが望ましい。演習プロジェクトチームは,演習に割り当てられた金額が,演習の狙い及び演習パフ

ォーマンス目標を達成するために十分であることを確認するために,支出を監視し,定常的に予算を更新

することをその責任とする。 

演習の日程,並びに演習プロジェクトチーム及び演習参加者が必要とする時間は,計画策定プロセスの

早い段階で考慮する。あらゆる演習において,演習の計画策定,実施及び評価には十分な時間を割り当て

る必要があり,これは,究極的には,演習の狙いと演習パフォーマンス目標によって決まってくる。 

演習プロジェクトの日程には,次の事項が含まれる場合もある。 

− 演習の日時 

− 演習の期間 

− 締切り 

− 演習に必要な人日の推算値 

必要な資源は,通常,それぞれの演習の範囲によって決まってくる。演習にはかなりの時間及び資源が

必要となるため,演習の参加者及び資源は,できるだけ早期に予定を立てることが望ましい。計画又は実

現能力が演習の対象である場合,関係者は,演習の対象となっている役割に関して必要とされる教育訓練

を受講することが望ましい。演習参加者は,演習の前に,教育訓練を受けることが望ましい。 

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17 

Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.11 

設計及び構築 

組織は,演習の範囲,並びに演習の設計で使われる演習の狙い及び演習パフォーマンス目標に基づいて,

演習を設計及び構築し,演習プロジェクト文書を作成し,後方支援業務を運用管理し,演習を実施及び評

価する計画を策定することが望ましい。組織は,演習パフォーマンス目標を達成するための演習の種類及

び方法を選定し,演習を構築し実施する上での制約条件について認識することが望ましい。演習の種類は,

何を演習の対象とするのかについて,演習範囲に整合した形で定めたものである。演習の方法は,演習の

狙い及び演習パフォーマンス目標と整合した形で,どのように演習を実施するのかを記述したものである。 

演習は,複数の種類及び方法の組合せとなることもある。 

5.2.12 

演習の種類 

組織は,演習の狙い及び演習パフォーマンス目標,並びに演習の規模及び程度に従って,演習の種類を

決めることが望ましい。演習の種類,及び演習を実施する際に演習の対象として取り上げ評価する機能又

は活動の例を,表1に示す。 

表1−演習の種類の例 

演習の種類 

説明 

警報発令演習 

関係する参加者に警報を発令し,対応を促すことによって,組織の試験及び警報発令の仕組みを
試験するために使う。主として組織内のスタッフに適用するものであるが,他の状況にも適用で
きる。 

始動演習 

適切な対応を起動する能力を試験及び育成する手段。通常,警報発令演習に続いて実施し,どの
程度迅速に組織が行動を開始し,割り当てられた適切な任務の実施に着手できるかを試す。 

スタッフ演習 

組織内の日常のプロセス,スタッフ,情報の中及びその間で行動し,共通の現状認識を構築し,
何を決断したほうがよいか提案する能力を高めることを目指して設計する。 

意思決定演習 

組織内の意思決定プロセスを演習するために使う。これには,明確かつ時宜を得た意思決定を行
う能力,時間的制約を考慮して,担当者間及び他の利害関係者との間の連携に着手する能力が含
まれる場合もある。 

マネジメント
演習 

警報発令演習,始動演習,スタッフ演習及び意思決定演習の組合せ。役割,組織体制及び標準作
業手順(SOP)に力点を置いたもの。 

協力演習 

様々な組織,又は一つの組織内の様々な部署が共通の目的を達成するために,共に取り組み又は
行動するために使う。この演習は,大規模な形でも小規模な形でも実施でき,次の事項を含む場
合もある。 
・ “垂直方向”の連携(国家レベル,地域レベル及び地元レベル間) 
・ “水平方向”の連携 
・ ある分野への,官民の利害関係者による参加 
・ 社会における複数分野の間の協力 

危機管理演習 

危機発生時の状態をシミュレーションとして作り,人々に危機管理計画に記載する自らの役割を
練習し,熟達する機会を提供する。 

国レベルの戦
略的演習 

戦略的なレベルで実施する包括的な演習活動(例えば,省庁横断形危機管理スタッフ,政府−官
庁スタッフ,分野横断形及び部門横断形のマネジメントスタッフ,民間の全社的な危機管理)。国
レベルの戦略的演習の全体目的には,次の事項が含まれる。 
・ 重大な脅威及び危険な事態 (危機的事態)における統合対応能力を向上させる。 
・ 官民の分野の組織内における包括的連携及び意思決定文化を育成する。 
附属書Cに国レベルの戦略的演習に関する詳細情報を示す。この情報は,公的分野の組織演習計
画の策定に役立つ場合もある。 

一連の演習実
施活動 

共通の全体的組織体制において繰り返し実施される一連の演習 

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Q 22398:2014 (ISO 22398:2013) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.13 

演習の方法 

演習の方法は,次の二つに分類することができる。 

− 討論主体の演習によって,現在の計画,方針,合意事項及び手順を参加者に熟知させる。この方法は

“ジレンマ演習”とも呼ばれ,新規の計画,方針,合意及び手順を構築する際に用いることもある。 

− 実践主体の演習は,計画,方針,合意事項及び手順の妥当性を確認し,役割及び責任を明確にするた

めに用いる。この方法は,シミュレーションによって実施するもので,演習活動を現実の環境の中で

実施する。実践的環境における資源の不足部分を洗い出すことに役立つ。この方法は,通常,ある種

類の演習の上に別の演習を積み上げるというアプローチを使って,実施する。 

一般的な演習の方法の例を,表2に示す。 

表2−演習の方法の例 

分類 

方法 

説明 

討論
主体 

セミナー 経験を積んだ進行役の支援によって,新規作成又は更新された計画,方針及び手順を参加者に

紹介することを意図して設計し,形式ばらない討論による方法。様々な事象を実時間でシミュ
レーションを実行するという制約はない。例えば,組織が直近に実際に起こった業務の中断・
混乱を招く事象において,実行が困難であることが判明した手順をレビューし改正するため,
計画及びプログラムの改正又は作成を行う際に,最初の企画段階として用いることもある。 

ワークシ
ョップ 

セミナーと似ているが,参加者間のやり取りが増えるという点,並びに新規の標準作業手順
(SOP),緊急時運用計画,複数年の計画及び改善計画のような成果物を実現又は構築すること
に力点が置かれるという点で,セミナーとは異なる。ワークショップは,演習のパフォーマン
ス目標及びシナリオを作成するため,演習構築時にしばしば用いられる。 

机上演習 主要な要員が,形式ばらない設定で,シミュレーションとして実行されたシナリオについて討

論する。改正した計画又は手順に関する力量及び支援を構築するツールとして,又は計画,方
針及び手順をレビューするツールとして,好ましくない事態に対応するために必要なプロセス
及びシステムを把握するツールとして用いる。シミュレーションとして実行された事象から明
らかになった問題については,問題解決プロセスを通して,意思決定を行う参加者が討論する。
迅速な意思決定を必要とするために時間制限が設けられている場合もあるが,解決策の徹底的
な討論及び構築を行えるようにするために時間が制限されていない場合もある。通常,最初に
時間を制限しない机上演習を用い,2回目は時間を決めた演習を用いる。 

討論主体
のゲーム 

複数のチームが関与する運用のシミュレーションで,実際の事態又は想定される現実の事態を
描写するために構築したルール,データ及び手順を使って,競合的な環境下で実施する場合が
多い。ゲーム及びシミュレーションは討論主体となる場合が多い。ゲームは“仮想演習”とも
呼ばれ,参加者を関与させ,行動条件のシミュレーションによってストレス状態を作り出す技
術を使う。 

実践
主体 

実践主体
のゲーム 

複数のチームが関与する実際の活動のシミュレーションで,実際の事態又は想定される現実の
事態を描写するために構築したルール,データ及び手順を使って,競合的な環境下で実施する
場合が多い。実践主体のゲームには,実際の業務の遂行が含まれる。 

訓練 

一つの事業体又は複数の組織で構成するチームで,単一の固有な業務又は機能を試験するため
に用いる,連携・監督された活動。例えば,消防署では,除染訓練を実施する場合もあり,又
はチームがコミュニケーション訓練を実施する場合もある。新しい装置に関する教育訓練の提
供,新しい方針・手順を構築若しくは妥当性の確認又は現在の技能を練習し,維持するために
用いることもできる。新しい方針・手順の紹介又は教育訓練のために訓練を行う場合は,力量
を把握するためにフォローアップ訓練が必要となる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表2−演習の方法の例(続き) 

分類 

方法 

説明 

実践 
主体 

(続き) 

機能演習 緊急対策拠点施設,合同現地事務所などの様々な機関連携センターの間の連携,命令及び統制

の調査及び/又は妥当性確認を行う。迅速かつ効果的な対応を必要とする複雑な本番と同様の
問題を使い,実際の運用環境をシミュレーションとして実行する。この演習は,通常,教育訓
練を受けた要員をストレスのかかる一刻を争う状態で評価するために用いる。 

総合演習 緊急対策拠点施設,合同現地事務所などの機能を含む,複数の機関,管轄又は領域にまたがる

演習。また,例えば,被害者役の人々の除染を行う消防士など,実際の対応の実演が含まれる。
この演習は,実時間に沿って実施し,実際の事象をよく反映した,ストレスのかかる,時間的
制約のある環境を再現するもので,最も複雑な演習方法である。総合演習は“地上軍(boots on 
the ground)演習”とも呼ばれ,また英語(full-scale exercise)の頭文字をとって“FSE”と表記
する場合もある。 

5.2.14 

シナリオの作成 

5.2.14.1 構成 

組織は,論理的で,分かりやすい形で,シナリオを作成することが望ましい。体系的な構成を実現する

ため,事象,インシデント及び付与状況という三つのレベルを使ってシナリオを構築することが多い。 

シナリオを作成する際は,演習が複雑になり過ぎること及び詳細過ぎることで過度な負担が掛からない

ことが望ましい。一方,演習の対象となるグループに対しては,意思決定及び行動を促すため,差し迫っ

た状況を提示する内容であることが望ましい。演習の一般的な構成要素の例を,図2に示す。 

図2−演習の一般的な構成要素 

シナリオを充実させる手段としては,ある特定のハザードに関する調査の詳細を盛り込むことから,爆

発によるがれき,人形,煙,シミュレーションの犠牲者などの小道具を利用することまで,様々なものが

ある。このように演習内容を充実させることによって,一層現実味のあるシナリオ又は現場環境を提示で

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き,参加者の学習の可能性が増す。 

演習内容を充実させることに関する詳細情報を,附属書Dで示し,また,シナリオを充実させることに

関する詳細情報を,附属書Eで示す。 

5.2.14.2 事象,インシデント及び付与状況 

事象は,演習対象のシナリオの全般的な内容を示すものである。事象の数は,演習の狙い及び演習パフ

ォーマンス目標によって異なる。演習プロジェクトの狙い及び演習パフォーマンス目標を達成するには,

幾つかの独立した事象が必要なこともある。しかし,独立に発生する事象が多すぎるとシナリオの現実味

がうすれる場合もある。それぞれの事象からは,幾つもの結果がもたらされる。 

事象がもたらす結果は,インシデントとも呼ばれている。インシデントの数は,演習参加者を忙しくさ

せ続けることが望ましいが,手に負えないような数であってはならない。万が一,演習中に,ある特定の

インシデント又は付与状況が無意味又は不適切になった場合は,演習計画策定チームは,使用できる別の

インシデント及び付与状況を利用するか,又はその場で臨機応変に対応し新しい内容を作成する準備をす

ることが望ましい。各インシデントは,一つ又は複数の演習パフォーマンス目標の評価が行えるものであ

ることが望ましい。演習パフォーマンス目標とインシデントとの関係が不明確である場合は,インシデン

トを変更又は削除することが望ましい。 

付与状況は,演習プロジェクトチームが,演習の対象となるグループに対して,演習の事象及びインシ

デントを伝達し,情報を提供するとともに解決することが望ましい問題を提示するものである。付与状況

は,対象グループの行動を制約したり,行動を起こさせたり,意思決定を促したりするものである。対象

グループに対してインシデントを投入する手段は,現実味のあるものであることが望ましい。 

シナリオは,演習の対象グループに対応を促して,その行動を評価基準の背景及び測定点に対して評価

できるものであることが望ましい。したがって,事象・インシデント・付与状況と演習パフォーマンス目

標・測定点との間には明確な関係及びつながりがなければならない。 

5.2.14.3 文書化 

組織は,演習プロジェクトに関して,範囲,狙い,演習パフォーマンス目標,リスクマネジメント,演

習の指示,演習の仕様,評価及び安全計画を文書化することが望ましい。 

演習プロジェクトチームは,演習評価及び演習安全計画を作成し,実施し,維持することが望ましい。

適切な結論を導き出し,将来の演習に対して改善を実施できるようにするため,それぞれの演習の有効性

を対象グループが評価する。 

参加者,従業員,一般市民及び環境の安全を確保するため,演習安全責任者は,演習安全計画を作成し,

レビューを受けるためにそれを演習プロジェクトチームに提出し,さらに演習コーディネータによる承認

を受けることが望ましい。修正を加えるときは,必ず演習安全責任者と話し合うことが望ましい。 

演習安全計画では,リスクマネジメントの側面及び手順を記述する。インシデントのシミュレーション

は,安全に関する配慮と均衡させた上で,できるだけ現実味のあるものとすることが望ましい。演習安全

計画で,リスクを洗い出し,適切なリスク対応を記述する。 

演習安全計画では,各演習について現場固有のハザードを洗い出し,それらのハザードそれぞれに対応

するための管理策を明確にすることが望ましい。リスク対応は,演習のリスク特定及びリスク評価に基づ

くもので,先を見越した,予防的かつ準備された対応を含む場合もある。演習安全計画書には,その他の

詳細事項,演習中断行動手順及び事故報告書も含まれることもある。 

5.2.14.4 記録 

文書類は,全て組織の品質及び記録保持に関する方針に従って,管理することが望ましい。演習に複数

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の組織が関与する場合,初回の計画策定会議では,記録の管理について話し合い,合意しておくことが望

ましい。 

5.3 

実施 

5.3.1 

演習全体確認 

演習チームメンバー全員が,演習全体確認に参加することが望ましい。この大まかなレビューには,演

習の全体を通じて,計画したとおりに参加者が行動することを徹底するために不可欠な情報だけを含むこ

とが望ましい。主任評価者は,このプロセスに参加することが望ましい。付与状況と演習シナリオの変更

とを一致させ,演習の進行に伴い,演習コーディネータによる指導の実施を促すため,これと同じような

レビューを演習統制者とも実施することが望ましい(複数日にまたがる演習の場合は,少なくとも日に一

度)。 

5.3.2 

開始時の概要説明 

演習コーディネータは,演習リスクマネジメントプロセスの中の必要不可欠な要素として,開始時の概

要説明を実施するよう徹底することが望ましい。また,組織は,危機発生の場合もそうでない場合も,ど

のような場合に演習を中断及び終了するのかについて,参加者全員に明確に伝達することが望ましい。 

開始時の説明会で取り上げる内容には,次の事項が含まれる場合もある。 

− 対象グループ 

− 演習の狙い及び演習パフォーマンス目標 

− 演習への参加の価値及び目的 

− マネジメントチームの機能及び演習参加者との関係 

− ロールプレイのルール 

− 演習中のコミュニケーションにおける,電話,演習用電話連絡先一覧などの使用 

− 演習に期待するもの 

− 提供する書面情報 

− シナリオ 

− 終了プロセス 

開始時の説明会は,シミュレーションの事象と実際の事象との混乱を回避するために利用することが望

ましい。 

5.3.3 

演習の始動 

組織は,予定された始動の前の段階で,演習の始動,一時的な中断及び終了に用いるコミュニケーショ

ンを試験することが望ましい。演習の始動,中断及び終了を伝達する方法は,開始時の概要説明の中で説

明することが望ましい。演習コーディネータが,演習の始まり又は開始を告知することが望ましい。演習

を始動する手法には,口頭による説明,架空のメディア付与状況,一斉送信などがある。 

5.3.4 

円滑な進行 

演習の範囲及び規模は様々であるが,演習進行の任務には,次の事項が含まれる場合がある。 

− 流れを維持する。 

− 参加者の意思決定に対応する。 

− 付与状況を柔軟に調節する。 

− オブザーバ及び評価者からの定期的なフィードバックを収集する。 

− 来客を管理する。 

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− 証拠及び成果を記録する。 

− 演習後の反省会を実施する。 

− 任務又は問題を再度試みる機会を促す。 

− 想定外の事柄に対応する。 

5.3.5 

演習の終了 

5.3.5.1 

一般 

演習コーディネータは,演習の始動及び一時的中断と同じコミュニケーションを使って,演習を終了す

ることが望ましい。演習は,例えば,演習が完了したことを示す付与状況又は告知によって,終了する場

合もある。 

5.3.5.2 

計画外の終了 

危機などの事態が発生した場合,演習コーディネータは,演習の即時終了及び定常業務への移行を命じ

ることが望ましい。また,手順の確認,観察された問題点を修正するための教育訓練の実施,又は危機で

はない別の事態を修正したりするために,演習を中断することもある。その後,演習を再開又は終了する

場合もある。 

演習を中断する緊急の必要性がある場合,あらゆる活動を直ちに止めることが求められる場合もある。

演習関連のあらゆる活動を直ちに止めることを参加者全員が分かるようにするため,例えば,一つの単語,

短い表現など,演習活動中断の仕組みを定めておくことが望ましい。“演習活動中断の仕組み”が計画され

ている場合は,参加者全員にそれを伝えて,その仕組みが発動された場合に直ちに取るべき行動を説明し

ておくことが望ましい。演習活動が中断した問題が解決した時点で,あらかじめ合意しておいた合図を使

って,演習活動が再開できることを知らせることが望ましい。 

組織は,演習活動中断停止を伝える号令を一つ決め,あらゆる演習でその号令を使用し続けることが望

ましい。“止め”及び“演習中止”のような言葉を使うこともある。組織は,参加者全員が,この号令,及

びこの号令が発せられたときに直ちに求められる行動を必ず知っているようにすることが望ましい。演習

中断の号令は,演習前の安全に関する説明会の中で取り上げることが望ましい。 

5.4 

改善 

5.4.1 

演習後の反省会 

演習コーディネータは,演習後の反省会を企画することが望ましい。演習のレビューでは,演習計画の

妥当性及びどの資源が利用可能だったか,その資源をどのように使用したか又は教育訓練で学習したとお

りに行動できたかに関する価値ある情報を提供することが望ましい。組織内の実際のインシデント及びニ

アミスのレビューに使用するプロセスを演習後の反省会実施の際に用いることが望ましい。 

演習後の反省会では,演習組織体制及び演習計画策定プロセスが機能したかどうかについて,注意を向

けることが望ましい。 

5.4.2 

観察所見 

演習評価者は,期待されるパフォーマンス及び評価基準に関する知識を備えていることが望ましい。演

習評価者は,演習パフォーマンス目標を記載し,用意した所見記入票を持ち,演習中にメモを取ることが

望ましい。 

注記 評価者は,演習からは独立した立場で,他の任務を割り当てないことが望ましい。 

5.4.3 

事後レビュー 

組織は,演習の事後レビューを実施し,演習計画の妥当性,利用可能だった資源,その資源をどのよう

に使用したか,教育訓練で学習したとおりに行動できたかなどについて検討することが望ましい。シミュ

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レーションの事象と実際の事象とを比較できるようにするため,演習の評価と同じ様式を実際のインシデ

ントの際にも使用することが望ましい。 

継続的改善 

6.1 

一般 

演習プロジェクトの事後レビューの結果は,個別の演習プロジェクト,演習プログラム全体及び演習の

対象となった側面を評価するためのフィードバックにつながる。 

6.2 

評価 

6.2.1 

一般 

組織は,演習プロジェクト中のパフォーマンスを監視又は測定することによって,演習パフォーマンス

目標に基づいて演習プログラム及び演習プロジェクトを評価し,演習パフォーマンス目標の中で設定され,

記載した評価基準と評価結果とを比較することが望ましい。 

演習パフォーマンス目標と監視又は測定されたパフォーマンスとの間の相違は,是正処置プロセスへの

インプットとなる。 

6.2.2 

評価プロセス 

6.2.2.1 

着手 

評価者は,最初の段階から演習プロジェクトに関与することが望ましい。演習プロジェクトに着手する

段階で,演習の範囲に応じて,一人又は複数の人を評価プロセスの運用管理のために任命することが望ま

しい。評価者は,演習の計画策定及び評価に参加することが望ましい。 

6.2.2.2 

計画策定及び組織体制 

演習プロジェクトチームは,評価及び演習の計画を同時に策定することが望ましい。評価は,演習の狙

い及び演習パフォーマンス目標の達成の度合いを把握することを目指して構築することが望ましい。比較

的規模の大きい演習では,演習プロジェクトのマネジメント及び演習を評価する様々な外部評価者がいる

ことが望ましい。 

6.2.2.3 

質問項目及び分析の基礎の構築 

演習パフォーマンス目標は,力量に関して採用した基準に基づいて設定することができる。評価者(複

数可)は,評価項目が演習の狙い及び演習パフォーマンス目標に関連しているよう徹底することが望まし

い。収集した資料を評価する基準は,明確に提示することが望ましい。評価基準は,評価及び演習の担当

者と他の参加者との協同作業によって構築することが望ましい。 

6.2.2.4 

教育訓練 

演習プロジェクトに対して任命された主任評価者は,評価グループが組織及び参加者の情報を得られる

よう徹底することが望ましい。評価資料を収集する評価者(複数可)は,割り当てられた任務に関わる教

育訓練を受けることが望ましい。 

6.2.2.5 

フィードバックの収集及び指示 

演習の評価には,様々な種類の評価資料を用いることができる。主要な評価資料には,参加者の観察所

見,記録及びメモ,Eメール,通話内容の報告,音声,映像による記録などがある。副次的な評価資料と

しては,導入指導用の文書,演習目的,シナリオ情報及び他の演習関連文書,評価の帳票,オブザーバの

メモ,並びに事後反省会からの直接のフィードバックがある。 

演習完了の直後に,参加者には,自らの体験について討論及び発表し,完了直後の段階で得られた所見

を述べ,計画どおりに進んだこと及び改善できそうなことに関する第一印象を提示する機会を与えること

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が望ましい。 

6.2.2.6 

データの分析及び事後の報告書の作成 

組織は,データを分析し,必要な是正処置を洗い出すことが望ましい。一貫性を維持するため,データ

の分析には,演習パフォーマンス目標の設定に用いたものと同じ基準を使うことが望ましい。 

6.2.2.7 

事後の報告書の提示 

事後の報告書では,演習の全体像を示し,演習の成果を演習パフォーマンス目標と比較して報告し,今

後どのような処置を誰が講じるのかを記すことが望ましい。 

事後の報告書には,次の事項を含める場合もある。 

− 演習の範囲,狙い及び演習パフォーマンス目標 

− 参加者,資源,演習の場所,設定及び演出,並びに演習の準備及び遂行に関係する活動の概要 

− シナリオ,インシデント及び付与状況を含む演習の種類及び方法の選定 

− 演習プロセスのあらゆる制約要因の明確化 

− 参加組織の対応も含む演習パフォーマンスの評価 

− オブザーバからのインプット及び反省会からのフィードバック 

− 参加者の運用パフォーマンス,力量及び学習体験 

− 担当者及び完了日を付記した,改善の提言 

− 次回の演習に向けた提言 

− 得られた所見の限界,又は得られた所見をどのように解釈するのがよいかに関する手引 

− 演習の妥当性に関する結論 

事後の報告書は,参加組織に回覧して,意見を求めることが望ましい。事後の報告書は,最終版として

確定した段階で,経営層及び利害関係者に提示することが望ましい。事後の報告書は,各参加組織のトッ

プマネジメントにも提示し,承認を受けることが望ましい。 

事後の報告書が複数の組織及び一般市民の間で共有される場合は,機密を保持するため,複数の版の報

告書が必要となる場合もある。 

6.3 

マネジメントレビュー及び是正処置 

トップマネジメントは,事後の報告書をレビューし,演習パフォーマンス目標と演習結果とを比較する

ことが望ましい。 

組織は,事後レビューで示されたあらゆる提言及び個々の是正処置の結果を文書に記すことが望ましい。

組織は,必要な是正処置を全て洗い出し,合意した日までに解決するために,適切かつ力量を備えた人々

を割り当てることが望ましい。演習プロジェクト中に明らかになった不具合を修正するための資源に限り

がある場合は,優先順位を確定するシステムが必要となることもある。組織は,適宜,進捗を監視し,報

告することが望ましい。演習プロジェクトチームは,有効性及び効率を改善する方法を模索し続けること

が望ましい。 

トップマネジメントは,承認された是正処置が実施され,是正処置へのコミットメントが満たされるこ

とを確実にするためのフォローアップを実施するよう徹底することが望ましい。是正処置の完了を追跡す

るシステムを構築することが推奨される。 

組織は,是正処置を標準作業手順(SOP)に盛り込むことが望ましい。得られた教訓は,通常,パフォ

ーマンスの強化,将来の演習の計画策定及び準備,並びに演習プログラムの改善のために活用する。 

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附属書A 

(参考) 

マネジメントシステムにおける演習 

A.1 一般 

マネジメントシステムは,組織内の数多くの要素を調和させて,有効かつ効率的なものとすることが望

ましい。組織のマネジメントシステムは,実施するプロセス及び管理策を定め,その狙い及び目的の達成

に寄与することが望ましい。マネジメントシステムは,柔軟かつ拡張可能で,組織の方針,狙い及び目的

の変更に順応できるものであることが望ましく,また,そのような変更を実施するためのツールとして機

能することが望ましい。 

高いレベルの力量を達成するため,組織は,そのマネジメントシステムの中の不可欠な要素として演習

を活用することが望ましい。演習は,組織内の部署又は外部の組織のいずれかが,計画し,実施し,評価

することが望ましい。附属書Aは,2013年に第4版として発行されたISO/IEC専門業務用指針:第1部

の附属書SL別紙(Appendix)2で規定されているマネジメントシステムの要素に対応している。 

A.2 演習を利用することの便益の洗い出し 

組織は,そのマネジメントシステムを通じて,演習プログラム及び演習プロジェクトから便益を得るこ

とが期待できる。適切なプログラムが策定でき,適切な演習の種類及び方法が選択できるようにするため,

組織のニーズを明確に見定めることが望ましい。 

A.3 組織のニーズの明確化 

A.3.1 インプットの洗い出し 

A.3.1.1 一般 

組織にとって効果的な演習を計画し,実施し,評価するために組織のニーズを明確にし,演習プログラ

ム管理者及び演習コーディネータに伝達することが望ましい。 

A.3.1.2 方針 

組織の戦略及び方針を支援することを目指して,あらゆる組織の活動は,組織の戦略及び方針を支援す

るために策定することが望ましく,方針は演習プログラムに影響を及ぼすことが望ましい。これは,組織

の方針に基づいて組織の狙い及び目的があり,組織の狙い及び目的に基づいてマネジメント計画があると

いう,順次的に連続したプロセスである。 

A.3.1.3 業務の計画策定及び統制 

計画及びその実施に対して割り当てられた資源は,演習に関する組織のニーズの基本的要素である。計

画に関与する参加者の力量は,効果的な演習を通じて,評価及び検証することが望ましい。不足部分が明

らかになった場合は,それをインプットとして,是正処置を策定する。 

A.3.1.4 利害関係者のニーズ及び期待の理解 

利害関係者の要求及び期待は,演習参加者が行わなければいけないこと(並びに制約,演習の種類,方

法,時期及び頻度)に影響を与える。 

A.3.1.5 組織の役割,責任及び権限 

演習プロジェクトでは,組織がその狙い及び演習パフォーマンス目標を達成できるよう,要員の力量を

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評価し,育成する。役割,力量及び期待を理解することは,演習プロジェクトの計画策定及び実施にとっ

て最も重要である。 

A.3.1.6 資源 

組織の経営層は,ある任務を割り当てられた参加者がそれを遂行できるよう,また,力量を構築及び維

持できるよう,財務及び人的資源,並びに装置を配分することが望ましい。演習は,確定された資源の制

約の枠内で,構築し,実施することが望ましい。 

A.3.1.7 力量及び認識 

組織は,その統制下で仕事を行う人々にとって必要な力量を見極め,力量が備わり,維持されるよう徹

底しなければならない。これには,マネジメントシステムのパフォーマンスに影響を与える力量も含まれ

る。組織の統制下で仕事をする人々は,マネジメントシステム方針は何か,マネジメントシステムの有効

性にどのように寄与することが期待されているか,マネジメントシステム要求事項に適合しない場合にど

のような結果がもたらされるのか,について認識しなければならない。 

A.3.2 演習プロジェクトからのフィードバックによって影響を受ける要素 

A.3.2.1 文書化された情報 

組織内の参加者が遂行する“力量強化”活動は,狙い及び演習パフォーマンス目標との兼ね合いの中で

要員を評価し,さらに将来の計画を策定するために,組織が記録し,活用しなければならない。 

A.3.2.2 力量及び認識 

演習プロジェクトからの情報は,利害関係者の認識及び力量のレベルを直接示すもので,また,解決し

なければならない不足部分を評価するための直接的インプットである。 

A.3.2.3 監視,測定,分析及び評価 

“PDCA”モデルを使用している場合,演習の計画策定及び実施は“D(Do)”の部分であり(例えば,

JIS Q 22301に従って),改善の機会を評価し,継続的改善を推進するために,その成果を“C(Check)”

及び“A(Act)”で活用する。 

A.3.2.4 不適合及び是正処置 

是正処置に取り組むことは,マネジメントシステムの継続的改善に寄与するものであり,演習は,是正

処置の題材を提供するものである。 

A.3.2.5 内部監査 

組織が演習を遂行しているか否か,及び演習において実際のパフォーマンスと求められる結果とを比較

しているか否かは,内部監査の中で把握することが望ましい。 

A.3.2.6 マネジメントレビュー 

継続的改善に向け優先順位を付けて推進するに当たり,演習の成果をトップマネジメントに理解させる

ことが重要であるため,演習の結果は,マネジメントレビューへの極めて重要なインプットである。 

A.4 継続的改善 

マネジメントシステムは,組織に対して,マネジメントシステムの適切性,妥当性及び有効性を継続的

に改善することを要求している。演習は,パフォーマンス,力量及び認識の不足部分を洗い出し,是正す

るために使われるツールの一つである。 

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附属書B 

(参考) 

ニーズ分析 

B.1 

組織としての考慮事項 

組織は,演習プログラム及び/又は演習プロジェクトの必要性を見極めるために,ニーズ分析を行うこ

とが望ましい。このため,利害関係者に対して次の質問をすることが望ましい。 

− 組織にとって戦略的問題及び優先順位は何か。このようなニーズを満たすものは何か。 

− 演習プログラム及び/又はプロジェクトに関する要求事項は何か。 

− 利害関係者は誰か。 

− どのリスクに対応が必要か。 

− 法律,規制及び組織が同意している順守義務事項は何か。 

B.2 

状況分析 

演習プログラム又は演習プロジェクトの構築又は改善は,様々な方法を使ったリスクアセスメントの結

果に基づいたリスクマネジメントの必要性を組織が受け入れるところから始まる。現状分析では,組織は,

次の事項を考慮して,その演習プログラム及び/又は演習プロジェクトの計画策定,実施及び改善を支援

する情報を収集することが望ましい。 

− リスクマネジメントに関する既存の活動及びコミットメント 

− 利害関係者の懸念 

− 同じような事態において,最も効果があることが証明された演習活動 

− リスクマネジメント関連の課題に関するオピニオンリーダーの影響 

− ハザード及びリスクのマッピング 

− 定期的なデータ分析 

− 社会的及び政治的意味合い 

− ある事柄に関して一般市民が抱いている組織のイメージ 

− 組織の特定の活動に関連するリスクマネジメントの課題における最新の展開及び傾向 

− 製品及びサービス 

− 経済,財務及び規制のもつ意味合い 

− 利害関係者の価値観及び文化に関する知識 

演習活動の周辺状況を評価する際,潜在的なコスト及び結果について考慮することも重要である。地域

社会又は機関による,ハザード分析,リスク分析及びぜい(脆)弱性分析の中で,又は現状分析と同等の

プロセス若しくは文書の中で,現状分析が既に完了している場合もある。 

B.3 

演習プログラム及び演習プロジェクトのマネジメントに関連する情報の洗い出し 

組織は,利害関係者が懸念する課題を予想することが望ましい。これによって,自らの製品,サービス,

プロセス,活動のパフォーマンスに関するリスク及び影響の情報,並びに資産保護に関するリスク及び影

響の情報の収集を絞り込むことができるためである。演習プロジェクトで設定した対象に基づいて,適切

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

な定量的及び定性的データ,情報を選択又は作成することができる。この情報は,パフォーマンス及びパ

フォーマンス指標に関する現行の基準及び指針と整合させることが望ましい。 

ほとんどの組織で入手できる情報には,数多くの情報源及び種類があり,これには,組織の戦略,方針

及び関連するリスクに関する情報も含まれる。 

情報源には,次のようなものが含まれる場合もある。 

− 製品,サービス,プロセス,活動,資産,財務に固有のリスク及び影響の一覧 

− リスク指標の一覧 

− 資産の査定及び重大な不足分のアセスメント 

− 定常的に及び時折収集される情報。例 特定の地域にある施設からの報告,(持株会社の場合)子会社

からの報告,調査報告,監視・制御・測定データ登録簿及び分析報告 

− 規制報告 

− コンプライアンスに係る記録,契約書及び組織が同意するその他の要求事項 

− 対応及び復旧に関する戦略及び計画 

− 従業員教育訓練のマニュアル及び記録 

− 関連する財務及び経理のデータ 

− 対応及び復旧についての関連する地域社会への参画活動から得られる情報 

演習を実施する時期を選ぶ際,次の事項を考慮することが望ましい。 

− 組織の日常活動及び業務に対する最小限の負の影響 

− 休日の日程 

− 天候及びその他季節的な考慮事項 

− 力量及び技能の向上に必要な期間 

− 規制の期間及び要求事項 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書C 
(参考) 

国レベルの戦略的演習 

C.1 一般 

この附属書は,5.2.12の表1に規定する“国レベルの戦略的演習”という種類の演習について,追加情

報を示すものである。 

C.2 国レベルの戦略的演習の目的 

国レベルの戦略的演習は,戦略的レベルで実施する包括的な演習活動を指す(例えば,省庁横断形危機

管理スタッフ,政府−官庁スタッフ,分野横断形及び部門横断形のマネジメントスタッフ又は民間の全社

的な危機管理)。 

国レベルの戦略的演習の全体目的には,次の事項が含まれる。 

a) 重大な脅威及び危険な事態(危機的事態)における統合対応能力を向上させる。 

b) 官民の分野の組織内における包括的連携及び意思決定文化を育成する。 

c) 弱点の洗い出し 

1) 危機的事態の事象における組織体制の中において 

2) マネジメント及び配備の概念という観点において 

3) 様々な組織の協力の観点,対応及び復旧を支援するために配備した資源の観点において 

d) 次の事項の評価及び改善 

1) 事態の包括的かつ予測的アセスメントのためのツール 

2) 部門,当局及び制度をまたいだ協力 

3) 要員又は技術的設備が不足する場合でも,しかるべき機能を果たすことが望ましい,既存の組織,

マネジメント及びコミュニケーションの体制の効率 

e) 社会全体の保護戦略,並びにリスクマネジメント計画及び危機管理計画に関連する目的と整合の取れ

た,要員及び特別な資材資源の入手可能性及び迅速な配備 

f) 

事態に対処する専門知識を備えた有能な人材の配置 

g) マネジメント手順,並びに管理者間及び管理者とスタッフとの間の内部危機コミュニケーション 

h) 時宜を得た的確な記者発表及び広報の情報 

i) 

危機管理の心理社会的側面の考慮 

j) 

特に資源の制約に直面した場合の,資源の適切な配備及びマネジメント 

C.3 演習の範囲 

国レベルの戦略的演習の範囲は,組織間のトップマネジメントの協力について習熟することで,官,民

及び非政府組織レベルのあらゆる組合せにおける演習を含む場合もある。このような演習では,一層効果

的な国民の防護を保証するために,国家レベルで極めて大きな規模の損害及び脅威が発生する事態をシミ

ュレーションとして体験することができる。 

主要な挑戦的課題は,国民及びその基本的ニーズに関する効率的セキュリティシステムを構築するため

に,あらゆる領域の国民セキュリティ対策を分野をまたいでつないでいくことである。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

したがって,国レベルの戦略的演習には,次の側面が含まれる。 

− 戦術レベル及び業務レベルよりも高いレベルの危機管理スタッフ及び行政スタッフによって遂行する

演習 

− 組織の責任並びに中央当局の可能性及び潜在力を合わせる。 

− 官民の分野で協力することによって,ネットワークなどを構築する(重要なインフラストラクチャ)。 

− メディアへの広報及び渉外の業務に関する,部門間及び事業部間の連携 

− 活動レベル及び戦術レベルの配備を成功させるための最適な基本条件の構築 

− 持続可能性及び耐え忍ぶ能力を確保する。 

− 社会全体的なアプローチ 

C.4 演習の目的 

国レベルの戦略的演習の目的は,国民の保護を目指して設計した社会全体の緊急事態への備えのシステ

ム及び戦略を試験し,強化することである。この種の演習には,極度なリスク及び損害という事態におけ

る施策の連携,及び担当当局と民間のインフラストラクチャ運営会社との間の協力が含まれる。国レベル

の戦略的演習では,情報,メディア及び資源のマネジメントを含む,部門横断形及び分野横断形の危機管

理に力点が置かれていることが望ましい。この演習は,国民全体のニーズに対応することが望ましい。 

C.5 参加者 

国レベルの戦略的演習のシナリオの参加者には,当局,民間運営会社,利害関係者における対応及び復

旧の専門職(危機管理スタッフ及び管理・行政スタッフ)が含まれる。この演習は,演習コーディネータ

が指揮をして,演習プロジェクトチーム,並びに中央及び地元の現場スタッフが,計画策定,実施及び改

善の活動を行う。演習の計画策定,実施及び改善については,演習シナリオに関わる複雑さによっては,

中央及び地元のプロジェクトグループを配備し,専門家の支援を受ける(C.7参照)。 

C.6 演習プロジェクトの計画策定 

演習の中で,準備のための施策及び各テーマに関する一般的,かつ,テーマについて適切なワークショ

ップを企画する。一般に,国レベルの戦略的演習の実施は,繰返しのプロセスに基づいたものである。 

戦略的危機管理演習では,最低12か月の準備期間が必要となる。準備段階では,開始点(シナリオ),

適切な追加文書(インシデント・付与状況)を添えた筋書き,コミュニケーション計画,及びその他の演

習関連書類を準備する。 

さらに,演習参加者にはそれぞれに割り当てられた機能を説明する。実際の演習の開始時点から,最適

な体制で実施段階を始動させるため,可能な場合は,いつでも危機管理の欠点を全て取り除いていくこと

が重要である。したがって,最適化された体制で実行段階に入るようにするため,準備段階で明らかにな

った危機管理の欠陥をできる限り改善することが何よりも重要である。 

計画策定の狙いは,シナリオが想定する実時間で実際にシミュレーションとして体験する場所に,要員,

装置及び資源を配備することである。計画全体の演習及び/又は試験を行うために,できるだけ数多くの

役割を盛り込む。演習パフォーマンス目標の数は,盛り込まれた役割の数によって決まってくる。役割一

つについて,最低三つの目的があることが望ましい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C.7 組織の観点 

国レベルの戦略的演習には,複雑な演習マネジメントチームが必要となる。 

演習の主要な狙い及び目的,並びに演習の枠組みに関する意思決定は,上位管理職による運営委員会が

行う。 

演習の実施中は,中央の演習プロジェクトチーム及び地元のマネジメントスタッフ,並びに枠組みマネ

ジメントグループが,演習を展開(着手,監視及び連携,そして,必要な場合は調節)する。このような

チーム及びグループは,マネジメントスタッフに報告する。彼らは,演習の全般的な計画策定及び実施に

緊密に関与する。枠組みマネジメントグループは,演習の実施に関する知識を備える。同時に,枠組みマ

ネジメントグループは,演習の参加者でもある。このように二つの機能をもつため,枠組みマネジメント

グループは,演習環境を象徴している。演習参加者に対しては,枠組みマネジメントグループは演習参加

者のように振る舞い,臨機応変に,演習の運用に関する知識だけを伝える。 

C.8 メディア対応業務 

危機管理の社会心理学的側面は,重要なものとなってきている。戦略的レベルの演習では,国民,個別

のグループ又は支援者の反応の仕方が重要なパラメータであり,演習の計画策定,実施及び評価において

考慮しなければならない。特にメディアへの広報及び渉外の業務(リスク及び危機コミュニケーション)

は,実際のメディア対応においても,シミュレーションのメディア対応においても,危機対応策の戦略的

手段である。 

C.9 評価 

演習の完了後得られた所見を踏まえて,合同評価報告を作成し,演習の参加者全員に配布する。また,

危機管理体制の更なる最適化及び危機に対応する最新戦略の策定及び再策定の出発点である。評価段階に

おいて,このような最適化策を理解でき,評価できるようにするためには,完全に文書化されていること

に注意を払うことが望ましい。更に詳細な情報は6.2を参照する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書D 
(参考) 

演習内容の充実 

D.1 一般 

演習内容を充実することで,現実味のあるシナリオ又は現場環境を提示でき,参加者の学習の可能性が

増す。内容の充実には,ある特定のハザードに関する詳細な調査に基づくシナリオを使用することから,

爆発によるがれき,人形,煙,シミュレーションの犠牲者などの小道具を利用することに至るまで,様々

なものがある。実践主体の演習内容の充実について,詳細をD.2に示す。 

D.2 演習内容の充実の事例 

D.2.1 小道具 

小道具は,実際の機能は果たさない模型で,その存在又は発見によって,演習の参加者に何らかの行動

を起こさせるものである。例えば,シミュレーションの爆弾,爆弾の爆発によるがれき(爆弾の金属片),

人形又は体の部位,発泡スチロールなどでできたれんが及びはり(梁)などがある。化学的なハザードの

影響をシミュレーションする状態,又は実際の検出機器にプラスの値が表示されるようなシミュレーショ

ン状態も小道具とみなされる。書面資料を提供することは,詳細な記述情報を提示する適切な方法である。

例えば,演習シナリオに関連する記事が記載されている地元紙のコピーを提供することは,平凡になりが

ちな状況設定に現実味を帯びさせる効果的な方法である。 

D.2.2 装置 

実行可能な場合,実際の装置を使用する方がシミュレーションの小道具を使用するよりも効果的である。

実際の装置を使用することによって,要員が職務の中で使うツールを習熟する効果が上がる。例えば,救

命士(EMT)にとっては,医療トリアージの札がある場合は何をするのかについて述べるよりも,実際に

医療トリアージの札に記入してみる方が効果的である。 

D.2.3 要員 

実際のチームメンバー及び犠牲者役の役者を使うことが現実味のある演習には不可欠である。常日頃一

緒に教育訓練を受け練習をしているチームの方が,効果的かつまとまりのある形で対応する傾向がある。

既存のチームを参加者(players)として演習に取り込むために,あらゆる努力をすることが望ましい。例

えば,有害物質(HazMat)チーム及び爆弾処理班,災害派遣医療チーム,鑑識チーム,特殊対応チーム並

びに人質交渉チームを参加させる。役者を犠牲者役として使うことによって,犠牲者に直接関与する対応

スタッフ全員にとって現実味が高まる。地元の行政区(例えば,市,郡)からボランティアを募ることで,

地域社会としての意識の醸成に役立ち,地域社会の住民は,地元の初期対応要員が十分に教育訓練を受け

ていることを確認できる。 

注記 有害物質(HazMat)チームとは,危険な化学物質に係るインシデントに対応する専門チームの

ことを示す。 

D.2.4 特殊効果 

特殊効果は,通常,教育訓練を受け,免許をもった要員,特別な使用許可,安全及び/又はセキュリテ

ィに関する追加的予防策を必要とする,専門的な内容充実策である。例えば,火工品又は爆発物の使用,

メークアップの専門家の使用などがある。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

D.2.5 レッドチーム 

ロールプレイの経験を積んだ要員で構成したレッドチームは,予防を主眼とした,実践主体の演習にお

いて,参加者がその攻撃を防止又は阻止しようとする敵役を実際に演じる。レッドチームを使う際は,数

多くの要員,後方支援業務及び安全への配慮が必要となる。 

注記1 レッドチームとは,主にインシデントの状況を作り出したり,実際にサイバー攻撃を仕掛け

るというような攻撃側の役割を担うチームのことを示す。これに対し,防護側の役割を担う

チームのことをブルーチームと呼ぶことが多い。 

注記2 ロールプレイとは,インシデント発生の場面を想定しながら,演習の参加者が自身に与えら

れた役割を演じ,その役割を演じることを通じ,実際のインシデント発生時に,より適切な

対応ができるようにする演習方法の一つである。 

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附属書E 

(参考) 

体験に基づいたシナリオの作成 

E.1 

一般 

演習のシナリオは,重大な事象に関わる体験から学習したことを盛り込むことによって,その内容を充

実させることができる。定性的調査ツールであるエスノグラフィは,このような体験の収集に役立つ方法

であり,知見を集め,人間への影響に対する気付き及び理解を提供することができる。 

エスノグラフィの活動には,関連するシナリオを体験した人と話をすることから,数多くの利害関係者

が関与する調査プロジェクトに至るまで,様々なものがある。シナリオの中には,エスノグラフィ調査が

既に完了していて,体験に関する有益な情報を提供できるものもある。 

この手法を使うと,演習の中で参加者は自らが想定したものとは全く異なるシナリオに遭遇するため,

対応の良し悪しを本質的に試せる演習を支援できる。 

注記 エスノグラフィとは,主に文化人類学・社会学の分野で適用される調査・記録の手法である。

また,防災分野において,インシデント対応経験者及び組織の行動様式について現場で聞き取

り調査を実施し,記録することをエスノグラフィ,又は災害エスノグラフィと呼ぶ場合もある。 

E.2 

便益 

演習でエスノグラフィを利用することの主な便益を,次に示す。 

− 業務の中断・混乱を招く事象によって,直接影響を受けた人々の体験及び無意識的な知識を理解でき

る。 

− 容易に予測できないようなインシデントにおいて発生し得る広範囲の影響及び潜在的な問題を理解で

きる。 

− 人間的又は動物的本能による体験及び認知に関する想定の妥当性を確認できる。 

この活動を通して,今までのインシデントを反映し,仮にそのシナリオで描いた事態が実際に発生した

場合に起こり得る結果を高い確率で反映した,充実したシナリオが作成できる。また,この活動によって,

周辺状況を提示し,演習参加者にとって学習機会を高めることができる。 

E.3 

方法論 

E.3.1 一般 

エスノグラフィは,言葉で語られる体験を記録する方法である。シナリオ構築のため,構築中のシナリ

オの内容と密に整合するインシデントを実際に体験した人々から口頭による報告を提供してもらうことが

望ましい。 

将来のインシデントで起こり得ることに関する,より包括的な理解を提示するため,口頭による報告を

体系的に分析する。 

E.3.2 方法 

E.3.2.1 一般 

主たる調査:体系化していない面談を通じて,口頭による報告を記録する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

副次的調査:以前に実施した調査から,求められる情報が得られることもある。報告書,書籍,学会専

門誌掲載論文などの文献調査によって,特定の事例研究に関するエスノグラフィ調査が実

施できることもある。その内容は,演習対象となるシナリオ又は影響に関連するものであ

ることが望ましい。 

E.3.2.2 面談対象者 

面談対象者は,次の事項によって選定する。 

− シナリオ 

− インシデントにおける面談対象者の役割。その人々は,生存者,対応要員,生存者の友人及び家族,

目撃者,又はインシデントにつながりのあるその他の人々であることもある。 

− 地理的場所:ただし,インシデントには特定の物理的場所が存在しないこともあるため,その場合は,

面談のしやすさを考慮することが望ましい。 

E.3.2.3 面談実施者 

面談実施者を選定する際,次の事項を考慮することが望ましい。 

− 面談対象者の文化面に関する理解 

− 心理状態に対する気配り 

− 被災地の損害を始めとするインシデントに関する理解 

E.3.2.4 面談の実施 

メモを取る,及び音声レコーダー・ビデオレコーダーなどの機器を使用することによって,面談を記録

する。面談実施後,面談実施者は,次の事項を行うことが望ましい。 

− メモ及び音声記録に基づいて,一語一語文字どおりに文章に起こす。ただし,ここで使用するものは,

必ずしもメモ及び音声記録とは限らない。 

− 必要な場合,文章に起こしたものを編集して,より読みやすく,かつ,理解しやすいものにする。編

集の際,元の意味を変えてはならない。 

− 編集した文章を面談対象者に見せて,本人の体験を正しく記述していることを確認した上で,記録を

仕上げる。 

公式記録は,教訓を導き出せそうな無意識的な知識を抽出するための分析を行う。記録の分析方法は,

必ずしも高度に定量的かつ専門的なものである必要はない。記録の分析に適用される枠組みは,その災害

に関する予備知識によって演習参加者が知りたいと思っている事柄及び知る必要がある事柄と副次的デー

タ源からの情報に関する演習参加者の解釈の組合せとから導き出すことが望ましい。 

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参考文献 

[1] ASIS SPC.1-2009,Organisational Resilience: Security, Preparedness and Continuity Management−

Requirements and Guidance for Use 

[2] ASIS GDL BC 01 2005,Business continuity guideline: A Practical Approach for Emergency Preparedness, 

Crisis Management, and Disaster Recovery 

[3] Australia P2 Public Safety Competencies 

[4] BS PD 25666,Exercising and Testing for continuity and contingency programmes 

[5] German Federal Office of Civil Protection and Disaster Assistance−LUKEX−Guidelines for Strategic Crisis 

Management Exercises 

[6] Guidelines for planning, conduct and assessment of international EAPC exercises 

[7] ISO/IEC 27031,Information technology−Security techniques−Guidelines for information and 

communication technology readiness for business continuity 

[8] ISO 10015,Quality management−Guidelines for training 

[9] JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針 

注記 対応国際規格:ISO 19011,Guidelines for auditing management systems(IDT) 

[10] JIS Q 22300 社会セキュリティ−用語 

注記 対応国際規格:ISO 22300,Societal security−Terminology(IDT) 

[11] JIS Q 22301 社会セキュリティ−事業継続マネジメントシステム−要求事項 

注記 対応国際規格:ISO 22301,Societal security−Business continuity management systems−

Requirements(IDT) 

[12] JIS Q 22320 社会セキュリティ−緊急事態管理−危機対応に関する要求事項 

注記 対応国際規格:ISO 22320,Societal security−Emergency management−Requirements for incident 

response(IDT) 

[13] JIS Q 0073 リスクマネジメント−用語 

注記 対応国際規格:ISO Guide 73,Risk management−Vocabulary(IDT) 

[14] NFPA 1600,Standard on disaster/emergency management and business continuity programs, National Fire 

Protection Association(USA) 

[15] SS 540:2008,Singapore Standard for Business Continuity Management 

[16] U.S. Department of Homeland Security HSEEP (Homeland Security Exercise Evaluation Program): 

Volume I: HSEEP Overview and Exercise Programme Management; Volume II: Exercise Planning and 

Conduct; Volume III: Exercise Evaluation and Improvement Planning; Volume IV Library: Sample 

Exercise Materials