日本工業規格
JIS
M
8217
-1994
鉄鉱石−硫黄定量方法
Iron ores
−Methods for determination
of sulfur content
1.
適用範囲 この規格は,鉄鉱石中の硫黄定量方法について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 8005
容量分析用標準物質
JIS M 8202
鉄鉱石−分析方法通則
JIS R 1306
化学分析用磁器燃焼ボート
JIS R 1307
化学分析用磁器燃焼管
JIS R 1308
化学分析用高周波燃焼るつぼ
2.
この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 4689 : 1986
Iron ores−Determination of sulfur content−Barium sulfate gravimetric method
ISO 4690 : 1986
Iron ores−Determination of sulfur content−Combustion method
2.
一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS M 8202 による。
3.
定量方法の区分 硫黄の定量方法は,次のいずれかによる。
(1)
熱分解−よう素酸カリウム滴定法 この方法は,硫黄含有率 0.002% (m/m) 以上 1.0% (m/m) 以下の試
料に適用するもので,
附属書 1 による。
(2)
熱分解−赤外線吸収法(積分法) この方法は,硫黄含有率 0.002% (m/m) 以上 0.10% (m/m) 以下の
試料に適用するもので,
附属書 2 による。ただし,赤外線吸収法装置の集じん管部に加熱機構のある
装置では,鉄鉱石中の化合水含有率が 3.0% (m/m) 以上,また加熱機構のない装置では,鉄鉱石中の
化合水含有率が 1.0% (m/m) 以上の試料には適用できない。
(3)
硫酸バリウム重量法[国際一致規格 (ISO 4689) ] この方法は,硫黄含有率 0.0l% (m/m) 以上 1.0%
(m/m)
以下の試料に適用するもので,
附属書 3 による。
2
M 8217-1994
附属書 1 熱分解−よう素酸カリウム滴定法
1.
要旨 試料を酸化タングステン (VI) と混合し,窒素気流中で高温に加熱して硫黄を二酸化硫黄とす
る。これを塩酸を含むよう化カリウム溶液に吸収させ,でんぷんを指示薬としてよう素酸カリウム標準溶
液で滴定する。
2.
試薬 試薬は,次による。
(1)
窒素[99.5% (
v
/
v
)
以上]
(2)
過塩素酸マグネシウム 粒径 0.5〜2mm のもの。
(3)
塩化すず (II) 二水和物 粒径 0.5〜2mm のもの。
(4)
酸化タングステン (VI) 粉末状のもの。
(5)
アスカライト
(6)
吸収液 塩酸 (1.5+98.5) 80ml,よう化カリウム溶液 (30g/l) 1ml 及びでんぷん溶液 (20g/l) 1ml を混合
する。でんぷん溶液 (20g/l) は次によって調製する。
でんぷん(溶性)2g をはかり採ってビーカー (200ml) に移し入れ,水 10ml でのり状に練り,約 50ml
の煮沸水中に注ぎ入れ,約 1 分間煮沸して冷却し,水で液量を 100ml とする。
この溶液は使用の都度調製する。
(7)
よう素酸カリウム標準溶液 よう素酸カリウム (JIS K 8005) 0.222 5g を水に溶解し,これを 1 000ml
の全量フラスコに水を用いて移し水で標線まで薄める。この溶液 1ml に相当する硫黄の質量は,試料
と組成の類似する硫黄含有率既知の鉄鉱石の認証標準物質を用いて 5.の手順に従って操作し,次の式
によって求める。
V
G
P
f
×
×
= 01
.
0
ここに,
f
:
よう素酸カリウム標準溶液
1ml
に相当する硫黄の質量
(g)
P
:
鉄鉱石認証標準物質の硫黄含有率
[% (m/m)]
G
:
認証標準物質のはかり採り量
(g)
V
:
よう素酸カリウム標準溶液の使用量
(ml)
3.
装置,器具及び材料 装置,器具及び材料は,原則として次のものを用いる(附属書 1 付図 1 及び附
属書 1 付図 2 参照)。
(1)
窒素清浄装置
(a)
窒素ガスを清浄乾燥するためのもので,アスカライト
[
2.(5)
]
と過塩素酸マグネ
シウム
[
2.(2)
]
を詰めた塔。
(2)
熱分解炉
(b)
原則として次のものを用いる。管状電気抵抗加熱炉は,長さ約
300mm
で電気抵抗加
熱体を用いて加熱し,電流を調節して温度を加減し,炉の中央部の長さ約
150mm
を
1 200
±
25
℃の一
定温度に保つことができるもの。
炉内には,長さ約
600
〜
700mm
,内径
24mm
で
1 200
±
25
℃に耐える磁器燃焼管
(c)
(JIS R 1307 の
CTO
又は
CT1
)を挿入し,燃焼管の出口部は炉壁から
100
〜
150mm
突き出させる。
また,出口部にテーパーを付けてすり合わせガラス製キャップ
(g)
をはめ,ばね
(h)
で炉壁に締め
3
M 8217-1994
付ける。
また,ガラス製キャップ
(g)
と炉壁との間に遮熱板
(i)
を置き,炉体からの熱が吸収瓶
(e)
に当た
らないようにする。
炉の中央部の燃焼管
(c)
の真上の温度を熱電高温度計で測定する。熱電高温度計の指示値は,一般
に燃焼管
(c)
内の温度と異なるので,その差を求めておき,必要があれば指示値を補正して燃焼管
(c)
内の温度を求める
燃焼管
(c)
と窒素清浄装置
(a)
との連結は,すり合わせ又は耐熱性のシリコーンゴム栓を用いる。
なお,新しい磁器燃焼管を使用するときは,
1200
℃で
30
分間以上窒素気流中で空焼きを行う。
(3)
吸収瓶 (e) 吸収液
[
2.
(6)
]
約
80ml
を入れ,ガラス製キャップ
(g)
の先に内径
6mm
の導入管(ガラ
ス製)
(d)
を取り付け,その先端が吸収瓶の最下部に達するようにして小孔を開けたものを用い
(
1
)
,
液面までの高さを
60
〜
80mm
とする。
注(
1
)
小孔の代わりに,その先端を内径
1mm
に絞り,この管に吸収液面の下約
15mm
の位置に,合成
樹脂板に多くの小孔を開けた中板
(j)
を取り付けてもよい。
(4)
ビュレット
(f)
(
2
)
注(
2
)
25ml
を用いる。硫黄含有率が
0.005% (m/m)
未満の場合は,最小目盛が
0.05ml
のミクロビュレ
ット,又はそれ以上の滴定液滴加精度をもつ滴定器具を用いる。
(5)
吸収細管 (k)(
3
)
試料から発生した塩素ガスを分離するもので,約
10g
の塩化すず
(II)
二水和物
[
2.(3)
]
を詰めた細いガラス管で,燃焼管
(c)
中の
附属書 1 付図 1 に示す位置に挿入する。
なお,細管
(k)
の出口側は試薬が吸収瓶
(e)
側へ吹き飛ばされないように石英ウールを詰めておく。
また,塩化すず
(II)
二水和物の溶解を避けるため,挿入位置はできるだけ低温部にする。
注(
3
)
塩化物を含む試料を分析するときに使用する。試料中の塩化物を塩素として
1%
以上含む試料を
多数分析するときは,塩化すず
(II)
二水和物を取り替える頻度を明確にするため,この試薬の
塩素吸収効率を前もって求めておかなければならない。
また,試料中の塩素含有率が不明の場合は,この塩化すず
(II)
二水和物の吸収細管
(k)
を使
用するのが適当である。
(6)
磁器燃焼ボート及び磁器燃焼ボートカバー
(1)
(以下,ボート及びカバーという。
)
ボートは,JIS
R 1306
の
CB1
を用い,必要に応じてカバーを使用する。カバーは,JIS R 1306 の
CBC1
を用いる。ボ
ート及びカバーはあらかじめ窒素気流中又は空気中で
1 200
℃で
10
分間加熱後,デシケータ中で保存
したものを用いる(
4
)
。カバーを用いる代わりに,多孔質のカートリッジ[
附属書 1 付図 2(b)]を用い
てもよい。
注(
4
)
デシケータからの出し入れは,ピンセットなどで扱い,直接手を触れてはならない。長時間保
存したものは,空試験値が高くなっているおそれがあるため,使用を避けて再度空焼きを行う。
4.
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,附属書 1 表 1 による。
4
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附属書 1 表 1 試料はかり採り量
硫黄含有率
% (m/m)
試料はかり採り量
g
0.002
以上 0.05 未満
1.0
0.05
以上 0.30 未満 0.50
0.30
以上 1.0 以下 0.20
5.
操作 操作は,次の手順によって行う。
(1)
3.
の装置を気密に連結し(
5
)(
6
)
,燃焼管
(c)
を加熱してその管内温度を
1 200
℃とする。次に窒素を毎
分
150
〜
200ml
の割合で流しながら,よう素酸カリウム標準溶液
[
2.(7)
]
の数滴を加え,吸収液が淡い
青色を呈するようにする。
注(
5
)
塩化物を含む試料の場合は吸収細管
(k)
を使用する。
注(
6
)
キャップ
(g)
は使用前に洗浄,乾燥したものを用いる。
また,試料の種類によっては汚染されやすいものがあるので,この場合は直ちに清浄なキャ
ップと取り替える。
(2)
試料をはかり採ってひょう量瓶に移し入れ,さらに酸化タングステン
(VI) [
2.(4)
] 1g
を加えて十分に
混合した後,ボートに移し入れ,カバーをかぶせ,挿入棒で燃焼管
(c)
の加熱部の中央に挿入して気
密に栓をする。
(3)
直ちに,窒素を毎分
150
〜
200ml
(
7
)
の割合で送入し,発生した二酸化硫黄などを窒素と共に吸収瓶
(e)
に導き,吸収液が青色を保ち続けるように,よう素酸カリウム標準溶液
[
2.(7)
]
を絶えず滴下し,引
き続き
5
分間(
8
)(
9
)
窒素ガスを流す。
(4)
燃焼管
(c)
の出口のキャップ
(g)
を外し,吸収液でガラス管内を数回洗浄し,再びキャップ
(g)
をし
て窒素を流して淡い青色を呈するまで滴定し,終点とする。
注(
7
)
高硫黄含有量の試料については,窒素送入量を
150ml/min
に調整することが必要である。
(8)
試料が多量の化合水を含む場合は,装置の内部に水が付着するので,このようなときは滴定完
了前に外部から加熱して完全に気化蒸発させる必要がある。
(9)
低硫黄含有率試料の熱分解時間は,通常
4
〜
8
分で十分であるが,高含有率試料については,
10
分程度の熱分解時間が必要である。
6.
空試験 試料を用いないで,5.の(1)〜(4)の手順に従って,試料と同じ操作を試料と併行して行う。
7.
計算 5.(4)及び 6.で得た滴定量から,試料中の硫黄含有率を次の式によって算出する。
(
)
100
2
1
×
×
−
=
m
f
V
V
S
ここに,
S
:
試料中の硫黄含有率
[% (m/m)]
V
1
:
試料の分析におけるよう素酸カリウム標準溶液の使用量
(ml)
V
2
:
空試験におけるよう素酸カリウム標準溶液の使用量
(ml)
f
:
よう素酸カリウム標準溶液の使用量
1ml
に相当する硫黄の質
量
(g)
m
:
試料はかり採り量
(g)
5
M 8217-1994
8.
許容差 許容差は,附属書 1 表 2 による。
附属書 1 表 2 許容差
単位% (m/m)
室内許容差
室間許容差
D(n)
[0.012 0×(硫黄含有率)+0.000 4] D(n)[0.028 2×(硫黄含有率)+0.000 9]
n
=2 のとき,D (n) =2.8
参考
この許容差は,硫黄含有率
0.002% (m/m)
以上
1.0% (m/m)
以下の試料を用いて求めたものであ
る。
6
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附属書 1 付図 1 硫黄定量装置の例
備考 寸法は概略を示す。
7
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附属書 1 付図 2
備考 寸法は概略を示す。
備考 寸法は概略を示す。
8
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附属書 2 熱分解−赤外線吸収法(積分法)
1.
要旨 試料を分解助剤と共に酸素気流中で高周波加熱し,発生した硫黄酸化物を過剰の酸素と共に赤
外線吸収検出器の測定セルに送り,二酸化硫黄の赤外線吸収量を測定する。
2.
試薬及び標準物質 試薬及び標準物質は,次による。
(1)
酸素
99.5% (
v
/
v
)
以上のもの。
(2)
酸化鉄
(III)
できるだけ純度がよく,硫黄含有率が
0.003% (m/m)
以下のもの。
(3)
標準硫黄溶液 事前に
105
〜
110
℃で恒量まで乾燥してデシケータ中で放冷した硫酸カリウム[
99.9%
(m/m)
以上]を,
表 1 に従ってはかり採り,それぞれ水で溶解してから
100ml
の全量フラスコに水を
用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準硫黄溶液とする。
附属書 2 表 1 標準硫黄溶液
標準硫黄溶液
硫酸カリウムはかり採り量
g
硫黄の濃度
mg/ml
A 0.5
5
1.00
B 1.0
0
2.00
C 1.9
2
3.50
D 2.7
4
5.00
(4)
鉄鉱石認証標準物質 硫黄の認証値が
0.002
〜
0.100% (m/m)
の範囲で,化学組成が分析試料と類似し
ているもの。ただし,化合水含有率は本体の 3.(2)に示した範囲内であること。
(5)
校正試料 硫黄含有率が定量範囲の上限及び下限近傍でかつ既知で,瀬定値の再現性のよいもの。例
えば,鉄鋼試料,鉄鉱石試料など。又はそれらの認証標準物質でもよい。この試料は装置の校正に用
いる。
3.
装置,器具及び材料
3.1
装置 高周波誘導加熱炉型 酸素精製部,試料加熱部,発生ガス精製部及び二酸化硫黄定量部から
構成される積分方式の装置で,原則として次のものを用いる。
(1)
酸素精製部 酸素精製部は,酸素の圧力及び流量を調節し,その中に含まれる硫黄酸化物,水などの
硫黄定量に妨げとなる成分を除去する部分で,酸素ボンベ,減圧弁,流量計,硫黄酸化物吸収管,脱
水管などから構成し,この順序に連結して使用する。
硫黄酸化物吸収管には,ソーダ石灰又は粒状水酸化ナトリウムを詰めた塔,脱水管には,過塩素酸
マグネシウム(無水)を詰めた塔を用いる。
また,減圧弁は二段式のものが望ましく,流量計は使用する装置に指定されたものを用いる。
(2)
試料加熱部 試料加熱部は,試料を加熱分解させる部分で,石英製燃焼管(以下,燃焼管という。)及
び高周波誘導加熱炉(以下,加熱炉という。
)から構成する。燃焼管の入り口は酸素精製部,出口は二
酸化硫黄定量部に連結して使用する。加熱炉は,
原則として次のものを用いる
(
附属書 2 付図 1 参照)。
加熱炉は,燃焼管
(a)
(外径
30
〜
44mm
,内径
26
〜
37mm
,長さ
140
〜
220mm
)
,その外側に巻いた
加熱コイル
(b)
(高さ
30
〜
55mm
,巻数
4
〜
5
)
,これに高周波電流を供給する高周波発振器などから
9
M 8217-1994
構成する。高周波燃焼用磁器るつぼ
(c)
(以下,るつぼという。
)に試料を入れ,このるつぼを加熱
コイルのほぼ中央に保持して電流を通じたとき,試料が分解して硫黄が完全に追い出される温度が得
られるようにする。
酸素の供給にはバイパス回路を設けて,るつぼ受台
(d)
の動きと連動させるものでもよい。
また,発生ガスの出口は,燃焼管と一体として硫黄酸化物の凝縮を防止できるものとする。
(3)
発生ガス精製部 発生ガス精製部は,発生ガス中の酸化物ダストを除去するもので,円筒形の金属フ
ィルタ
(e)
及びガラス綿を詰めた集じん管
(f)
を用いる(
附属書 2 付図 1 参照)。金属フィルタの周
囲は,水が凝集しないように加熱機構
(g)
があるものが望ましい。
また,発生ガス精製部と二酸化硫黄定量部の間には,過塩素酸マグネシウム(粒径
0.5
〜
2mm
)を
詰めた管を連結する。
(4)
二酸化硫黄定量部 二酸化硫黄定量部は,精製された発生ガス中の二酸化硫黄を定量する部分で,赤
外線検出器,
測定回路などで構成する。
赤外線吸収検出器
(
附属書 2 付図 2 参照)は,赤外線発生源
(h)
,
フィルタセル
(i)
,測定セル
(j)
,対照セル
(k)
,赤外線検出部
(l)
などから構成し,二酸化硫黄の
赤外線吸収量を測定できるものとする。
測定回路は,直線化回路,積分回路,演算回路などから構成し,赤外線吸収検出器から取り出され
た電気信号を,二酸化硫黄濃度と直線関係に変換,積分し,硫黄量に比例した値として指示計に指示
する。指示計は,指定された試料はかり採り量の場合に硫黄含有率を直示するものが望ましい。
3.2
器具及び材料 器具及び材料は,原則として次のものを用いる。
(1)
るつぼ 加熱炉に使用するるつぼは,JIS R 1308 の
FC2
を使用する。
るつぼの空試験値が高いときは,あらかじめ空気又は酸素を送入しながら,
1 100
℃以上で空焼きす
る。一度に多数を空焼きした場合は,グリースなど塗らないデシケータ中で放冷して保存する。
(2)
分解助剤 分解助剤は,酸素中で試料を加熱分解させ,試料中の硫黄を二酸化硫黄として発生しやす
くするため,試料の上に載せて使用するもので,次の材料を組み合わせて用いる。いずれも硫黄含有
率が
0.001% (m/m)
以下のもの。
(a)
鉄 例えば,粒状
0.2
〜
12mm
のもの。
(b)
すず 例えば,粒状
0.2
〜
3.0mm
のもの。
(c)
タングステン 例えば,粒状
0.1
〜
1.0mm
のもの。
(3)
すずカプセル 直径約
6mm
,高さ約
18mm
,質量約
0.3g
で容量約
0.4ml
のもの。
(4)
ミクロピペット
100
µ
l
で誤差
1
µ
l
以下のもの。
4.
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,
0.50g
とする。
5.
操作
5.1
準備操作 3.1 の装置を気密に連結した後,電源を入れて各部を安定させ,高周波誘導加熱に関する
条件(
1
)
を設定する。次に校正試料
[
2.(5)
]
を分析し,その表示値がそれぞれ校正試料の硫黄含有率に近似
するように装置を校正する。
注(
1
)
高周波発振器の陽極電流,格子電流など,使用する装置の仕様に応じて決められた条件による。
5.2
定量操作 定量操作は,次の手順によって行う。
(1)
試料をはかり採ってるつぼ
[
3.2(1)
]
に移し入れ,その上に分解助剤
[
3.2(2)
]
の鉄
0.500g
,すず
0.3
〜
0.5g
,タングステム
1g
を順に覆う。
10
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(2)
るつぼを燃焼管
(a)
の加熱コイル
(b)
の中心部に挿入する。
(3)
酸素精製部と気密に連結し,酸素を送入して空気と置換した後,燃焼管
(a)
内を所定の圧力にし,高
周波スイッチを入れて試料を分解させる。赤外線吸収検出器の指示値が一定になったとき,高周波誘
導加熱をやめ(
2
)
,指示値を読み取る(
3
)
。
注(
2
)
燃焼タイマー付きの装置の場合は,自動的に停止する。
(
3
)
るつぼを燃焼管外に取り出して,試料の分解状態が完全であるかどうかを調べる。分解不完全
な場合は,分析をやり直す。
6.
空試験 試料を用いないで,5.2 の(1)〜(3)の手順に従って試料と同じ操作を試料と併行して行う。
7.
検量線の作成及び維持管理
7.1
検量線の作成 検量線の作成は,次のいずれかによる。
(1)
標準硫黄溶液による場合
(a)
ミクロピペット
[
3.2(4)
]
を用いて,水及び標準硫黄溶液
A
〜
D [
2.(3)
]
を,
附属書 2 表 2 に示すよう
に分取して
5
個の別々のすずカプセル
[
3.2(3)
]
中に移し入れる。次に,
90
℃で完全に乾燥するまで
静かに水を蒸発し,デシケータ中で室温まで放冷する。
(b)
(a)
で得たすずカプセルをるつぼ
[
3.2(1)
]
に入れ,カプセルをるつぼの底部へ軽く押し付ける。次に
酸化鉄
(III)[
2.(2)
] 0.500g
,分解助剤
[
3.2(2)
]
の鉄
0.500g
及びタングステン
1g
を順に覆う。以下,
5.2(2)
及び(3)の手順に従って操作して指示値を読み取る。
(c)
分取した硫黄量と指示値の関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線と
する。
附属書 2 表 2 標準硫黄溶液分取量
標準硫黄溶液
分取量
µl
分取した溶液中の硫黄の質量
µg
水 100
0
A 100
100
B 100
200
C 100
350
D 100
500
(2)
鉄鉱石認証標準物質による場合
(a)
硫黄の定量範囲をほぼ均等に分割するように鉄鉱石認証標準物質
[
2.(4)
]
を
4
,
5
種類用意し,そ
れぞれ
0.500g
をはかり採ってるつぼ
[
3.2(1)
]
に移し入れ,その上に分解助剤
[
3.2(2)
]
の鉄
0.500g
,
すず
0.3
〜
0.5g
及びタングステン
1g
を順に覆う。以下,5.2 の(2)及び(3)の手順に従って操作して指
示値を読み取る。
(b)
鉄鉱石認証標準物質中の硫黄量と指示値の関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移
動して検量線とする。
7.2
検量線の維持管理 必要に応じて 5.1 で用いた校正試料の硫黄を分析し,その分析値と装置を校正し
たときの分析値の差が室内許容差
(
9.
)
内にあることを確認する。室内許容差を超えた場合は,再度 5.1 の準
備操作を行って装置を校正する。
11
M 8217-1994
8.
計算 5.2 及び 6.で得た指示値と,7.1 で作成した検量線とから硫黄量を求め,試料中の硫黄含有率を
次の式によって算出する。
(
)
100
2
1
×
−
=
m
m
m
S
ここに,
S
:
試料中の硫黄含有率
[% (m/m)]
m
1
:
試料の分析で得た硫黄量
(g)
m
2
:
空試験で得た硫黄量
(g)
m
:
試料のはかり採り量
(g)
9.
許容差 許容差は,附属書 2 表 3 による。
附属書 2 表 3 許容差
単位% (m/m)
室内許容差
室間許容差
D (n)
[0.008 5×(硫黄含有率)+0.000 27] D (n) [0.032 4×(硫黄含有率)+0.000 55]
n
=2 のとき,D (n) =2.8
参考
この許容差は,硫黄含有率
0.003% (m/m)
以上
0.088% (m/m)
以下の試料を用いて求めたもので
ある。
附属書 2 付図 1 高周波誘導加熱炉及び発生ガス精製部の例
12
M 8217-1994
附属書 2 付図 2 赤外線吸収検出器の例
13
M 8217-1994
附属書 3 硫酸バリウム重量法
日本工業規格としてのまえがき
この附属書は,
1986
年第
1
版として発行された ISO 4689
(Iron ores
−
Determination of sulfur content
−
Barium
sulfate gravimetric method)
を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成したものであ
る。
なお,この附属書で下線を施してある
参考
は,原国際規格にはない事項である。
1.
適用範囲
この国際規格は,鉄鉱石中の硫黄を硫酸バリウム重量法によって定量する方法について規定する。
この方法は,天然鉱石,精鉱及び焼結鉱を含む塊成鉱で,硫黄の含有率
0.01% (m/m)
〜
1.0% (m/m)
の範
囲のものに適用する。
参考
原国際規格の適用上限は,
1.0% (m/m)
であるが,国内における共同実験の結果,
2.0% (m/m)
ま
で適用可能であることを確認している。
2.
引用規格
ISO 3081
: 1986
Iron ores
−
Increment sampling
−
Manual method
ISO 3082
: 1987
Iron ores
−
Increment sampling and sample preparation
−
Mechanical method
ISO 3083
: 1986
Iron ores
−
Preparation of samples
−
Manual method
ISO 7764
: 1985
Iron ores
−
Preparation of predried test samples for chemical analysis
3.
原理
試料を塩素酸カリウム,塩酸及び硝酸で分解して蒸発乾固する。塩酸で塩類を分解し,不溶解残さをろ
過する。ろ液中の大部分の鉄を
4
−メチル−
2
−ペンタノンで抽出分離する。
残さを強熱し,ふっ化水素酸と硝酸で処理して,二酸化けい素を除去する。処理後の残さを炭酸ナトリ
ウムで融解した後,溶解してろ過する。ろ液は酸性溶液として主液に合わせる。
残留した鉄は二価に還元し,酸濃度を調節して塩化バリウム溶液を加える。硫酸バリウムをこし分けて
重量法によって測定する。
4.
試薬
分析の際は,分析用保証試薬
(recognized analytical grade)
,蒸留水又はこれと同等の純度をもつ水を使
用する。
4.1
塩素酸カリウム
(KClO
3
)
,粉末
4.2
無水炭酸ナトリウム
(Na
2
CO
3
)
4.3
亜鉛,
1mm
〜
3mm
の粒度で,硫黄含有率ができるだけ少ないものを使用する。
4.4
塩酸(密度
1.16g/ml
〜
1.19g/ml
)
4.5
塩酸(密度
1.16g/ml
〜
1.19g/ml
)
,希釈液
2
+
1
4.6
塩酸(密度
1.16g/ml
〜
1.19g/ml
)
,希釈液
1
+
1
4.7
塩酸(密度
1.16g/ml
〜
1.19g/ml
)
,希釈液
2
+
100
14
M 8217-1994
4.8
硝酸(密度
1.4g/ml
)
4.9
ふっ化水素酸
40% (m/m)
,
(密度
1.13g/ml
)
,又は
48% (m/m)
,
(密度
1.185g/ml
)
4.10
混酸,塩酸
(
4.4
)
+硝酸
(
4.8
)
,
4
+
1
(
注参照)
注
この溶液は保存せず使用直前に調製する。
4.11
塩化バリウム
(BaCl
2
・
2H
2
O)
,
100g/l
溶液
塩化バリウム二水和物の結晶
(BaCl
2
・
2H
2
O) 100g
を水
1l
で溶解した後,時計皿で覆い,煮沸するまで加
熱する。
2
時間以上水浴上で加熱した後,常温で一夜間放冷する。プラスチック製試薬瓶に保存し,使用
の都度必要な量をち密なろ紙でろ過する。
4.12
塩酸洗浄溶液(塩化バリウム含有)
ち密なろ紙でろ過した塩化バリウム溶液
(
4.11
)10ml
を塩酸
(
4.7
)
で
1 000ml
に希釈する。
4.13
硝酸ナトリウム
(NaNO
3
)
,飽和溶液
4.14
炭酸ナトリウム
(Na
2
CO
3
)
,
20g/l
溶液
プラスチック製試薬瓶に保存する。
4.15
チオシアン酸アンモニウム
(NH
4
SCN)
,
100g/l
溶液
4.16
硝酸銀,
20g/l
溶液
4.17
メチルオレンジ,
0.1g/100ml
溶液
メチルオレンジ
0.10g
を水
100ml
に溶解する。
4.18
4
−メチル−
2
−ぺンタノン
[CH
3
COCH
2
CH (CH
3
)
2
]
(メチルイソブチルケトン)
使用前に次の前処理を行う。
4
−メチル−
2
−ぺンタノン
200ml
と塩酸
(
4.6
)100ml
を
500ml
の分液漏斗に
入れ,約
1
分間激しく振り混ぜる。
2
層に分離後,下層の水相を捨てる。
5.
装置
通常の分析用器具
6.
サンプリング及び試料
6.1
分析用試料
分析には,ISO 3081 又は ISO 3082 に従って採取され,ISO 3082 又は ISO 3083 によって調製された,粒
度
100
µ
m
以下の分析用試料を用いる。化合水又は酸化しやすい化合物の含有率が高い鉱石の場合には,粒
度
160
µ
m
以下のものを用いる(
注参照)。
注
化合水及び酸化しやすい化合物の含有率についてのガイドラインは ISO 7764 に記されている。
6.2
乾燥試料の調製方法
分析用試料を十分に混合して,容器の全量を代表するように数インクリメントで分析試料を採取する。
分析試料を ISO 7764 に従って
105
±
2
℃で乾燥する(これを乾燥試料という。)。
7.
操作
7.1
分析回数
乾燥試料
1
個について,
附属書 3A に従って少なくとも独立に(注参照)
2
回の分析を行う。
注
独立に
という表現は,
2
度目又は続いて行った分析結果が以前の結果によって影響を受けな
いことを意味する。特にこの分析方法では,この条件は操作の繰り返しは同一人の場合は異なっ
た時間に又は異なった人によって行われることを意味する。
15
M 8217-1994
7.2
空試験及びチェック試験
1
回の定量について空試験を
1
個と同一種類の鉄鉱石認証標準物質(
注参照)の
1
個を分析試料と併行
して同一条件で分析しなければならない。認証標準物質の乾燥試料は,鉱石の種類に適合した方法(6.2
参照)で調製しなければならない。
注
認証標準物質は分析試料と同一種類で,両者の性質が分析操作に重大な変更を必要としない程度
によく類似したものでなければならない。
同時に数試料の分析を行う場合,分析操作が同じで使用する試薬が同一試薬瓶からのものであれば,空
試験値は
1
個で代表することができる。
分析が同時に同一種類の鉱石の数試料に及ぶ場合は,
1
個の認証標準物質の分析値を用いることができ
る。
7.3
はかり採り試料
表に従い,乾燥試料
(
6.2
)
から数インクリメントを取って,
0.000 2g
のけたまではかり採る(
注参照)。
注
はかり採り試料は吸湿水の再吸収を避けるため,迅速にはかり採るのがよい。
表 分析試料及び分解に用いる混酸(4.10)の量
硫黄含有率 W
s
% (m/m)
はかり採り試料質量
g
混酸の量
ml
0.01<W
s
<0.1 5.0 70
0.1<W
s
<0.5 2.0 40
0.5<W
s
<1.0 1.0 25
7.4
定量
7.4.1
試料の分解
はかり採り試料
(
7.3
)
を
500ml
のビーカーに入れ,塩素酸カリウム
(
4.1
)1g
と水
3ml
〜
4ml
を加えて十分に
混合する。
表(7.3 参照)に示した量の混酸
(
4.10
)
を加え,徐々に加熱して分解する(
注参照)。
注
試料の分解が
1
〜
2
時間で不完全な時には,さらに分解時間を延長して分解する。
溶液を約
150
℃の熱板上で蒸発乾固させた後,冷却して塩酸
(
4.4
)10ml
を加える。
再度,溶液を約
110
℃の熱板上で
30
分間蒸発乾固する。冷却して塩酸
(
4.6
)30ml
を添加し,加温して塩類
を溶解する。
水
25ml
を加え,約
5
分間煮沸する。溶液をち密なろ紙でろ過し,ろ液を
500ml
のビーカーに集める。
ろ紙と残さを温塩酸
(
4.7
)
で洗浄し,ろ液の少量を取りチオシアン酸アンモニウム溶液
(
4.15
)
を滴加して鉄
(III)
イオンが検出されなくなるまで洗浄を行う。ろ液と洗液は保存する。ろ紙及び残さは白金るつぼに移
す。
7.4.2
鉄の抽出
ろ液と洗液
(
7.4.1
)
を液量が約
10ml
になるまで加熱濃縮する。冷却した後,
200ml
の分液漏斗
A
に移し入
れ,塩酸
(
4.5
)50ml
を数回に分けて,ビーカー内壁を洗浄して分液漏斗に入れる。
4
−メチル−
2
−ペンタノ
ン
(
4.18
)50ml
を加えて,約
1
分間激しく振り混ぜる。液層が分離した後,下層の水相を,別の
200ml
の分
液漏斗
B
に移し入れる。
有機相に塩酸
(
4.5
)10ml
を加えて約
30
秒間振り混ぜる。液層が分離した後,水相を
1
回目の水相へ合わ
せる。再び有機相に塩酸
(
4.5
)10ml
を加えて洗浄した後,水相を
1
回目の水相へ合わせ,有機相は捨てる。
4-
メチル−
2-
ぺンタノン
(
4.18
)50ml
を水相が入っている分液漏斗に加え約
1
分間激しく振り混ぜる。液層
16
M 8217-1994
が分離した後,下層の水相を
500ml
のビーカーに移し変える。有機相を塩酸
(
4.5
)10ml
で
2
回洗浄した後,
洗液をビーカーに入れる。得られた水溶液は,ほとんど乾固するまで蒸発する。
混酸溶液
(
4.10
)10ml
を加えて,塩類を溶解させた後,蒸発乾固させて有機物質を分解する。塩酸
(
4.4
)10ml
を加え,約
150
℃の熱板上で蒸発乾固させる。さらに,塩酸
(
4.4
)10ml
を加え
110
℃で約
30
分間加熱する。
冷却した後,塩酸
(
4.4
)5ml
と水
30ml
を加えて,塩類を溶解し,主液として保存する。
7.4.3
残さの処理
7.4.1
で得られた残さを含むろ紙を硝酸ナトリウム溶液
(
4.13
)1
及び
2
滴を加えて湿らせ,ろ紙が炭化する
まで注意深くるつぼを加熱した後,
800
℃〜
850
℃で強熱灰化する。るつぼを冷却した後,強熱灰化した残
さに硝酸
(
4.8
)
数滴を加えて湿す。ふっ化水素酸
(
4.9
)
約
5ml
を加えて,乾固するまで注意深く加熱して,二
酸化けい素と硝酸を除去する(
注参照)。
注
けい素含有率が高い場合,ふっ化水素酸
(
4.9
)5ml
による二酸化けい素の除去処理を繰り返す。
るつぼを冷却した後,炭酸ナトリウム
(
4.2
)3g
を加えて,約
1 000
℃で
15
分間加熱して残さを融解する。
冷却したるつぼを,
300ml
のビーカーに入れ,温水約
100ml
を加えて加熱し,融成物を溶解する。るつぼ
を取り出し水で洗浄する。
溶液をち密なろ紙でろ過し,ろ液を
300ml
のビーカーに集める。ろ紙は炭酸ナトリウム溶液
(
4.14
)
で数回
洗浄し,残さは捨てる。ろ液と洗液にメチルオレンジ指示薬溶液
(
4.17
)0.5ml
を加え,かき混ぜながら塩酸
(4.6)
を少量加えて中和する。塩酸
(
4.6
)5ml
を過剰に加え,7.4.2 で得られた主液に合わせる。
7.4.4
硫酸バリウムの沈殿
溶液が入ったビーカーを時計皿で覆い,
25ml
になるまで加熱濃縮する。冷却した後,塩酸
(
4.6
)3ml
と水
50ml
を加え,加熱して可溶性塩類を溶解する。
60
℃〜
70
℃の水浴上で加熱し,亜鉛
(
4.3
)1.0g
を加えて,残
っている鉄
(III)
を鉄
(II)
に還元する。亜鉛が完全に溶解した後,直ちにち密なろ紙でろ過し,ろ液を
300ml
のビーカーに集める。ろ紙と残さを塩酸
(
4.7
)
で,ろ液が約
120ml
になるまで洗浄し,残さは捨てる。
溶液を
60
℃〜
70
℃で加熱し,かき混ぜながらゆっくりと塩化バリウム溶液
(
4.11
)5ml
をビュレットから加
える。さらに,
5
分間かき混ぜた後,ビーカーを時計皿で覆い,
60
℃〜
70
℃の水浴上で約
2
時間加熱する。
溶液を室温まで冷却して一夜間放置する。
硫酸バリウムの沈殿はち密なろ紙でろ過する(
注参照)。
注
もし必要ならば,微細な沈殿がろ紙を通過しないように,少量のろ紙パルプを使用してもよい。
ビーカーを塩化バリウムを含む塩酸洗浄溶液
(
4.12
)
で
1
回洗浄し,ゴム管付ガラス棒でビーカー内壁の付
着物をこすり落とし,塩化バリウムを含む塩酸洗浄溶液
(
4.12
)
でろ紙上に洗い移す。塩化バリウムを含む塩
酸洗浄液
(
4.12
)
を用いて数回ビーカーを洗浄し,次に硝酸銀溶液
(
4.16
)
で試験して洗液中に塩化物イオンが
検出されなくなるまでろ紙上の沈殿を温水で洗浄する。
7.4.5
ひよう量
7.4.4
で得られたろ紙と沈殿をひょう量した白金るつぼに入れる。ろ紙を低い温度で乾燥,炭化させた後,
注意深く強熱(灰化)する。初めに,約
500
℃で
20
分間,次に約
800
℃で同じ時間加熱する。るつぼはデ
シケータ中で室温まで放冷し,硫酸バリウムとしてひょう量する。質量差が
0.000 1g
の恒量になるまで
800
℃で強熱(灰化)を繰り返す。
参考
白金るつぼはあらかじめ約
800
℃で加熱して恒量としておく必要がある。
8.
結果の表示
8.1
硫黄含有率の計算
17
M 8217-1994
硫黄含有率
ω
s
(質量百分率)は,小数点
5
けた目までを次の式
(1)
によって計算する。
(
) (
) (
)
[
]
5
4
3
2
1
100
4
137
.
0
/
%
m
m
m
m
m
m
m
w
s
×
×
−
−
−
=
(
) (
)
[
]
5
4
3
2
1
74
.
13
m
m
m
m
m
×
−
−
−
=
(1)
ここに,
m
1
:
試料からの硫酸バリウムを含んだ白金るつぼの質量
(g)
m
2
:
実試料用白金るつぼ(風袋)の質量
(g)
m
3
:
空試験の白金るつぼの質量
(g)
m
4
:
空試験用白金るつぼ(風袋)の質量
(g)
m
5
:
はかり採り試料の質量
(g)
0.137 4
:
硫酸バリウム中の硫黄含有率(質量比)
8.2
結果の一般的取扱い
8.2.1
繰返し精度及び許容差
この分析方法の精度は,次の回帰式で表される。
*
r
=
0.026X
+
0.004 (2)
P
=
0.027X
+
0.006 (3)
σ
r
=
0.009X
+
0.002 (4)
σ
L
:
0.007X
+
0.002 (5)
ここに,
X
:
次で計算された乾燥試料中の硫黄含有率を質量百分率で表し
たもの
室内回帰式[式
(2)
及び
(4)
の場合]
:
2
回分析値の算術平均値
室間回帰式[式
(3)
及び
(5)
の場合]
:
2
分析室で
(
8.2.3
)
の方法に
よって得られた最終分析
値の算術平均値
r
:
室内の許容差(繰返し精度)
P
:
室間の許容差
σ
r
:
室内の標準偏差
σ
L
=
室間の標準偏差
8.2.2
分析値の採択
認証標準物質で求めた結果において,この分析結果と標準物質の認証値との間に統計的に有意差が認め
られてはならない。正確さ及び精度ともにこの方法に相当する分析方法を用いて,少なくとも
10
か所の分
析室で分析した標準物質に対しては,有意差の検定には次の式を用いる。
n
N
n
S
S
A
A
r
L
c
Wc
Wc
Lc
c
2
2
2
2
2
σ
σ
+
+
+
≤
−
(6)
ここに,
Ac
:
認証値
A
:
認証標準物質を分析して得られた結果又はその平均値
S
Lc
:
認証値を決定した分析室の室間標準偏差
S
Wc
:
認証値を決定した分析室の室内標準偏差
n
Wc
:
認証値を決定した分析室の分析回数の平均
N
c
:
認証値を決定した分析室の数
n
:
認証標準物質の分析回数(ほとんどの場合 n=1)
σ
r
及び
σ
L
:
8.2.1
に定義してあるとおり。
*
追加情報は,
附属書 3A 及び附属書 3C に示されている。
18
M 8217-1994
もし,式(6)の左辺が右辺より小さいか又は等しければ,差|A
c
−A|は統計的に有意ではなく,逆の場合は,
統計的に有意である。
差が有意であるときは,試料の分析と同時に認証標準物質の分析を繰り返す。もし,差が再び有意であ
るならば,同じ種類で別の認証標準物質を用いて同じ操作を繰り返さなければならない。
分析試料の二つの分析値の範囲が 8.2.1 の式(2)で計算された r の限度を超えるときは,
附属書 3A のフロ
ーシートに従って,さらにもう一度同じ種類の認証標準物質とともに分析試料の分析を行わなければなら
ない。
分析試料の結果の採択の可否は,いつの場合も認証標準物質の結果の採択の可否に従わなければならな
い(
注参照)。
注 認証標準物質の情報が不十分なときには,次の手順を用いる。
a)
室間標準偏差を推定するのに十分なデータがあれば,S
2
Wc
/n
Wc
を削除して,S
Lc
を室平均値の
標準偏差とみなす。
b)
もし,認証標準物質の認証が 1 分析室だけで行われている場合,又は室間の分析結果がない
場合には,この認証標準物質はこの規格には適用しないのがよい。その使用が避けられない
場合は,次の式を用いる。
;
n
A
A
r
L
c
2
2
2
2
σ
σ
+
≤
−
(7)
8.2.3
最終結果の計算
最終結果は,分析試料の採択し得る値の算術平均か,又は
附属書 3A に規定した手順によって求める。
小数点以下 5 けたまで計算した採択し得る分析値の算術平均は,次のようにして小数点以下 3 けたに丸め
なければならない。
a)
小数点以下 4 けた目の数値が 5 より小さいときにはそれを切り捨て,小数点以下 3 けた目の数値はそ
のままとする。
b)
小数点以下 4 けた目の数値が 5 で,小数点以下 5 けた目に 0 以外の数値があるとき,又は小数点以下
4
けた目の数値が 5 より大きいときには,小数点以下 3 けた目の数値を 1 だけ増加させる。
c)
小数点以下 4 けた目の数値が 5 で,小数点以下 5 けた目が 0 のときは,小数点以下 4 けた目の 5 を切
り捨て,小数点以下 3 けた目の数値が 0,2,4,6 又は 8 であれば小数点以下 3 けた目の数値はそのま
まとし,1,3,5,7 又は 9 であれば小数点以下 3 けた目の数値は切り上げて数を 1 だけ増加させる。
9.
試験結果の報告
試験結果の報告には,次の情報を記載する。
a)
この国際規格に準拠したこと
b)
試料の識別に関する詳細事項
c)
分析結果
d)
分析結果の参照番号
e)
定量時において気づいた特記事項及びこの国際規格に規定がない操作で,試料又は認証標準物質の分
析結果に影響を与えるおそれがある操作
19
M 8217-1994
附属書 3A (規定)
分析値の採択手順フローシート
参考 偶数個に対するメジアンは,数値を大きさの順に並べたときの中央 2 個の平均値
20
M 8217-1994
附属書 3B
繰返し精度及び許容差回帰式の典拠
(この附属書は情報として記載するもので,この規格の一部ではない。)
附属書 3 8.2.1 の回帰式は,1974 年/1975 年に 6 か国の 23 の分析室において 5 種類の鉄鉱石試料につい
て実施した国際分析実験の結果に基づくものである(
注 1 及び注 2 参照)。
精度データは,
附属書 3C に図示した。
分析試料には次のものを使用した。
試料
硫黄含有率
% (m/m)
ニンバ 0.006
キルナ D 0.019
ロンビン 0.078
テキサダ 0.255
焙焼残さ(プリプルズ)
0.534
注1
この国際分析実験の報告書及び結果の統計的解析(文書 ISO/TC 102/SC 2N 440E,1976年4月)
は,ISO/TC 102/SC 2事務局又は ISO/TC 102事務局で入手できる。
注2
統計的解析は,ISO 5725で規定されている原則に従って実施された。
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M 8217-1994
附属書 3C
国際分析実験で得られた精度データ(注参照)
(この附属書は情報として記載されているもので,この規格の一部ではな
い。)
注 この図は,附属書 3 8.2.1 の式をグラフ表示したものである。
図 硫黄 X [% (m/m)] に対する精度の最小二乗法による回帰線
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M 8217-1994
原案作成委員会の構成
氏名
所属
鉄鋼分析部会
(部会長)
佐 伯 正 夫
新日本製鐵株式会社
化学分析分科会
(主査)
岩 田 英 夫
日本鋼管株式会社
鉄鉱石 JIS 改正 WG
(リーダー)
岩 田 英 夫
日本鋼管株式会社
(直属幹事)
石 橋 耀 一
日本鋼管株式会社
岡 野 輝 雄
川崎製鉄株式会社
杉 原 孝 志
川鉄テクノリサーチ株式会社
中 川 孝
川鉄テクノリサーチ株式会社
秋 窪 英 敏
合同製鐵株式会社
金 築 宏 治
株式会社神戸製鋼所
河 村 恒 夫
株式会社コベルコ科研
稲 本 勇
新日本製鐵株式会社(硫黄担当)
大 水 勝
新日本製鐵株式会社
笠 井 茂 夫
新日本製鐵株式会社(硫黄担当)
鈴 木 興 三
新日本製鐵株式会社
鈴 木 節 雄
新日本製鐵株式会社
土 屋 武 久
新日本製鐵株式会社
蔵 保 浩 文
住友金属工業株式会社
中 里 福 和
住友金属工業株式会社
西 野 和 美
住友金属工業株式会社
平 松 茂 人
住友金属工業株式会社
菅 野 清
株式会社中山製鋼所
西 田 宏
日新製鋼株式会社
小 倉 正 之
日本鋼管株式会社
船 曳 佳 弘
日本鋼管株式会社
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
増 喜 浩 二
社団法人日本鉄鋼協会
鉄鉱石 JIS 改正 WG
(リーダー)
稲 本 勇
新日本製鐵株式会社
余 語 英 俊
愛知製鋼株式会社
坂 尾 則 隆
川鉄テクノリサーチ株式会社
粕 谷 治
株式会社神戸製鋼所
金 築 宏 治
株式会社神戸製鋼所
笠 井 茂 夫
新日本製鐵株式会社
西 野 和 美
住友金属工業株式会社
平 松 茂 人
住友金属工業株式会社
菅 野 清
株式会社中山製綱所
杉 本 和 巨
日本鋼管株式会社
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M 8217-1994
鉄鉱石分析標準化推進委員会原案検討小委員会
氏名
所属
鉄鉱石分析標準化推進委員会
(委員長)
松 村 泰 治
川鉄テクノリサーチ株式会社
原案検討小委員会
(委員長)
松 村 泰 治
川鉄テクノリサーチ株式会社
宮 本 幸 夫
通商産業省工業技術院
藤 本 京 子
川崎製鉄株式会社
岡 山 和 生
合同製鐵株式会社
金 築 宏 治
株式会社神戸製鋼所
今 北 毅
株式会社コベルコ科研
西 埜 誠
株式会社島津製作所
笠 井 茂 夫
新日本製鐵株式会社
鈴 木 興 三
新日本製鐵株式会社
鈴 木 節 雄
新日本製鐵株式会社
西 野 和 美
住友金属工業株式会社
松 本 義 朗
住友金属工業株式会社
原 田 幹 雄
株式会社中山製鋼所
藤 田 昇 平
日新製鋼株式会社
林 三 男
社団法人日本海事検定協会
石 橋 耀 一
日本鋼管株式会社
小 倉 正 之
日本鋼管株式会社
河 野 久 征
理学電機工業株式会社
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
脊 戸 雄 功
社団法人日本鉄鋼連盟