日本工業規格
JIS
M
7653
-1996
携帯形可燃性ガス検知器
Portable type combustible gas detector
1.
適用範囲 この規格は,工場,鉱山,船舶などにおいて,空気中の可燃性ガスの濃度を検知する携帯
形可燃性ガス検知器(以下,検知器という。
)について規定する。ただし,検知原理が光干渉計方式のもの
を除く。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 0901
炭鉱用電気機器の防爆構造
JIS C 0903
一般用電気機器の防爆構造通則
JIS F 8004
船用耐圧防爆電気器具通則
JIS F 8005
船用本質安全防爆システム通則
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1)
拡散式検知器 被検空気が検知部内に,自然に拡散浸透する方式の検知器。
(2)
吸引式検知器 被検空気をポンプ又はスプレー(ゴム球)によって,強制的に検知部内に導入する方
式の検知器。
(3)
最大指示値 検知レンジの最大指示値
(4)
試験用ガス 検知器を試験するときに用いる既知濃度の可燃性ガス。
(5) 90%
応答時間 検知部を被検空気中に入れたとき又は検知部に被検空気を導入し始めたときから指示
値が最終到達値の 90%に達するまでの時間。
3.
性能
3.1
指示精度 5.2 に規定する試験を行ったとき,それぞれの指示値と試験用ガスの濃度との差が,最大
指示値の±10%又は指示値の±25%のどちらか小さい値以下でなければならない。
3.2
繰返し性 5.3 に規定する試験を行ったとき,それぞれの指示値と指示値の平均値との差が,最大指
示値の±5%又は指示値の±10%のどちらか小さい値以下でなければならない。
3.3
安定性 5.4 に規定する試験を行ったとき,無通電状態又は通電状態の放置前後の指示値と試験用ガ
スの濃度との差が,それぞれ最大指示値の±15%以内でなければならない。
3.4
傾斜による影響 5.5 に規定する試験を行ったとき,それぞれの指示値と試験用ガスの濃度との差が,
最大指示値の±15%以内でなければならない。
3.5
耐衝撃性 5.6 に規定する試験を行ったとき,指示値と試験用ガスの濃度との差が,最大指示値の±
15%
以内でなければならない。
3.6
温度変化による影響 5.7 に規定する試験を行ったとき,20℃付近,0℃,40℃における指示値と試
験用ガスの濃度との差が,それぞれ最大指示値の±15%以内でなければならない。
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3.7
ガス検知の遅れ 5.8 に規定する試験を行ったとき,ガス検知の遅れは,拡散式検知器では 60 秒以
内,吸引式検知器では 30 秒以内でなければならない。
3.8
電源電圧の変動による影響 5.9 に規定する試験を行ったとき,3.2 及び 3.7 の性能を満たすものでな
ければならない。
3.9
耐拡散性 5.10 に規定する試験を行ったとき,試験槽内に 6 時間放置前後の指示値と試験用ガスの
濃度との差が,それぞれ最大指示値の±15%以内でなければならない。
4.
構造 検知器は,検知部と指示部からなり,検知部と指示部が分離しているものと一体となっている
ものがある。
検知場所の被検空気を拡散又は吸引によって検知部に導入し,ガス濃度を検知し電気信号に換え,指示
部によってガス濃度を指示する構造のもので,次の各項に適合するものでなければならない。
(1)
軽量,小形で携帯が便利で,取扱い及び点検などが容易であること。
(2)
各部の構造は,十分な強度及び耐久性をもち,器内に電気回路を取り付ける部分は,JIS C 0901,JIS
C 0903
,JIS F 8004 又は JIS F 8005 に適合する防爆構造であること。
(3)
金属材料は,耐食性材料を用いるか又は完全な表面防食処理を行ったもので,塗装は,仕上げが良好
で容易に色があせず,はく落しないものであること。
(4)
主な構造物に用いる高分子材料は,難燃性であること。
(5)
静電気対策を必要とする場合は,検知器の携帯用具には静電気帯電防止性能をもつ材料を使用するこ
と。
(6)
各部は,円滑,正確に作動し,容易に狂いを生じないものであること。
(7)
作動状態にあることを容易に識別できるものであること。
(8)
校正が容易にできるものであること。
5.
試験方法
5.1
試験場所の標準状態 温度 20±5℃,相対湿度 (65±10) %,気圧 1013±30hPa とする。
5.2
指示精度試験 検知器を作動状態にし,製造業者が表示する作動安定時間(以下,所定の安定時間
という。
)を経過した後,最大指示値の 80%付近の濃度のメタン又はイソブタン試験用ガスで校正(以下,
校正という。
)を行い,検知部へ最大指示値の 20%,50%,80%付近の濃度の試験用ガスを導入し,指示が
安定した後の最終指示値とそれぞれの試験用ガスの濃度との差を調べる。
5.3
繰返し性試験 検知器を作動状態にし,所定の安定時間を経過した後,検知部へ清浄空気及び最大
指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを,交互に 3 回ずつそれぞれ導入し,試験用ガスに対する指示値の
平均値と各回の指示値との差を調べる。
5.4
安定性試験 検知器を作動状態にし,所定の安定時間を経過した後校正を行い,検知部へ最大指示
値の 50%付近の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べた後,(1)又は(2)
の試験を行う。
(1)
間欠使用の検知器 無通電状態にして 2 時間以上放置し,再び作動状態にして所定の安定時間を経過
した後,検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガス
の濃度との差を調べる。
(2)
連続使用の検知器 作動状態のままで 2 時間以上放置した後,検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度
の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。
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5.5
傾斜試験 検知器を作動状態にし,所定の安定時間を経過した後校正を行い,検知器を前後左右に
それぞれ 30 度傾斜させて,一回ごとに,検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導入し,
検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。
5.6
衝撃試験 コンクリート床上に厚さ約 30mm の松板又は杉板を置き,その板上へ約 100mm の高さか
ら校正した作動状態の検知器を落下した後,
検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導入し,
検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。ただし,濃度指示部,表示灯,調整つまみなどが直
接板に接触しないように落下させるものとする。
5.7
温度試験 検知器を 20℃付近の室温で作動状態にし,所定の安定時間を経過した後,校正を行い,
次に,(1)又は(2)の試験を行う。
(1)
間欠使用の検知器 無通電状態にして 0℃及び 40℃の恒温試験槽の中に入れ,それぞれの温度に 90
分間放置し,それぞれの温度において,再び作動状態にして所定の安定時間を経過した後,検知部へ
最大指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調
べる。
(2)
連続使用の検知器 作動状態のままで 0℃及び 40℃の恒温試験槽の中に入れ,それぞれの温度に 90
分間放置した後,それぞれの温度において,検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導
入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。
5.8
ガス検知遅れ試験 検知器を作動状態にし,所定の安定時間を経過した後,検知部へ最大指示値の
50%
付近の濃度の試験用ガスを導入し,90%応答時間を調べる。
5.9
電源電圧変動試験 検知器を 20℃付近の室温で作動状態にし,所定の安定時間を経過した後,校正
を行い,検知器の電源電圧を定格電圧の±10%変化させ,検知部へ最大指示値の 50%付近の濃度の試験用
ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。
5.10
拡散試験 密閉した空気室をもった検知器に限って行うものとし,検知部へ最大指示値の 50%付近
の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べた後,検知対象ガスの爆発下限
界の
2
1
付近の濃度にした試験槽内に,検知器を作動状態のままで 6 時間以上放置した後,検知部へ最大指
示値の 50%付近の濃度の試験用ガスを導入し,検知器の指示値と試験用ガスの濃度との差を調べる。
6.
検査
6.1
形式検査 検知器の新しい設計,改造又は生産技術条件の変更を行う都度,最初の製品ロットから
ランダムに 1 台以上を抜き取って,4.の規定に適合しているかどうか調べた後,5.に規定する試験を行い,
3.
の規定に適合しなければならない。
6.2
製品検査 検知器の各製品ごとに 5.2,5.3 及び 5.4 の試験を行い,それぞれ 3.1,3.2 及び 3.3 に適合
しなければならない。
なお,製品検査は,抜取検査方式によってもよい。
7.
表示 検知器には,次の事項を表示しなければならない。
(1)
名称又は品名
(2)
検知対象ガス名
(3)
製造業者名又はその略号
(4)
製造年月又はその略号
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8.
取扱い上の注意事項 検知器には,取扱説明書を添付し,次の事項を記載しなければならない。
(1)
検知対象ガス名及びその検知濃度範囲
(2)
操作方法
(3)
間欠使用又は連続使用の別
(4)
使用温度範囲及び急激な温度変化を避けることの注意
(5)
高気圧下及び低気圧下での検知方法
(6)
作動安定時間及び検知遅れ時間
(7)
連続使用可能時間及び検知部の耐用時間
(8)
衝撃及び振動に対する注意
(9)
他ガス及び蒸気による影響
(10)
校正方法及び校正の頻度
(11)
その他必要な事項
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(携帯形可燃性ガス検知器)原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
房 村 信 雄
早稲田大学
大 関 真 一
通商産業省環境立地局鉱山課
波田野 純 一
通商産業省環境立地局石炭課
○ 高 木 譲 一
工業技術院標準部材料規格課
○ 北 原 良 哉
資源環境技術総合研究所
片 岡 哲 雄
労働省労働基準局安全衛生部
○ 酒 井 高 明
財団法人石炭技術研究所
北 山 忍
日本石炭協会
涌 井 直 正
鉱業労働災害防止協会
土 屋 義 幸
日本鉱業協会
狩 野 祐 忠
建設業労働災害防止協会
○ 中 島 義 男
理研計器株式会社
○ 米 田 登貴彦
光明理化学工業株式会社
○ 庄 野 京 一
株式会社ガステック
○ 松 波 登
株式会社東科精機
○ 肥 山 智 彦
産業用ガス検知警報器工業会
(事務局)
三 上 圭 二
社団法人日本保安用品協会
備考 ○をつけた委員は,小委員会委員を兼ねる。