日本工業規格
JIS
M
7624
-1994
安全帯
Safety belts
1.
適用範囲 この規格は,建設,土木,鉱山,採石場などの高所又は急斜面における作業で,作業者の
墜落を防止するために使用する胴締め形安全帯(U 字つりのものを除く,以下,安全帯という。
)について
規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS G 3101
一般構造用圧延鋼材
JIS G 3141
冷間圧延鋼板及び鋼帯
JIS H 4040
アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
JIS L 2703
ビニロンロープ
JIS L 2704
ナイロンロープ
2.
この規格の中に{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考値である。
2.
種類 安全帯の種類は,補助ベルトの有無,ロープの先端に取り付けたフック若しくはカラビナ又は
グリップによって
表 1 のとおり 4 種類とする。
また,性能を向上させるためのショックアブソーバ付きのものは種類の最後に S を付けて表示する(
例:
1A
種のショックアブソーバ付きは 1A 種 S とする。
)
。
表 1 種類
種類
補助ベルトの有無
フック若しくはカラビナ又はグリップ
1A
種
有
フック又はカラビナ
1B
種
有
グリップ
2A
種
無
フック又はカラビナ
2B
種
無
グリップ
3.
各部の名称 安全帯各部の名称は,図 1∼3 及び表 2 による。
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図 1 安全帯 1A 種
備考 安全帯 1B 種は,1A 種のフック又はカラビナの代わりに図 3 に示すグリップを取り
付けたものとする。
図 2 安全帯 2A 種
備考 安全帯 2B 種は,2A 種のフック又はカラビナの代わりに図 3 に示すグリップを取り
付けたものとする。
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図 3 グリップ
備考 図 3 に示すグリップは,安全帯を垂直
親綱に連結する場合に使用するもの
である。
表 2 安全帯各部の名称
番号
名称
番号
名称
1
胴締めベルト 6
D
環止め
2
補助ベルト 7
ロープ
3
バックル 8
フック又はカラビナ
4
ベルト通し 9
8
字環又は三つ目環
5 D
環 10
グリップ
4.
性能
4.1
胴締めベルトの強さ 胴締めベルトは 7.1 に規定する方法によって試験し,14.7kN {1 500kgf} 以下
で破断してはならない。
4.2
ロープの強さ ロープは 7.2 に規定する方法によって試験し,17.9kN {1 830kgf} 以下で破断しては
ならない。
4.3
フック又はカラビナの強さ フック又はカラビナは 7.3 に規定する方法によって試験し,11.3kN {1
150kgf}
以下でかぎ部の外れ止め装置の機能を失ったり,破断してはならない。
4.4
グリップの強さ グリップは 7.4 に規定する方法によって試験し,11.3kN {1 150kgf} 以下で破断し
てはならない。
4.5
環類の強さ D 環又は 8 字環若しくは三つ目環は 7.5 に規定する方法によって試験し,11.3kN {1
150kgf}
以下で破断してはならない。
4.6
D
環の取付部の強さ D 環の取付部は 7.6 に規定する方法によって試験し,11.3kN {1 150kgf} 以下
で破断してはならない。
4.7
バックルによる連結部の強さ バックルによる連結部は 7.7 に規定する方法によって試験し,7.8kN
{800kgf}
以下で破断してはならない。
4.8
シヨックアブソーバの強さ シヨックアブソーバは 7.8 に規定する方法によって試験し,11.3kN {1
150kgf}
以下で破断してはならない。
4.9
安全帯の衝撃吸収性及び強さ ロープ先端にフック若しくはカラビナ又はグリップを付けた安全帯
は,7.9 に規定する方法によって繰り返し 2 回試験して破断せず,かつ,第 1 回目の衝撃力の測定値は 8.8kN
{900kgf}
を超えてはならない。ただし,グリップを付けた安全帯では,グリップの滑りは各回とも 30mm
以下でなければならない。
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また,ショックアブソーバ付きの安全帯は,第 1 回目の衝撃力の測定値は 5.9kN {600kgf} を超えず,シ
ョックアブソーバの伸び長さは 650mm 以内でなければならない。
4.10
垂直親綱附属グリップの強さ及び保持力 垂直親綱附属グリップは 7.4 に規定する方法によって試
験し,4.4 の規定を満足しなければならない。
また,グリップの垂直親綱に対する保持力は,7.9 に規定する方法によって繰り返し 2 回試験して破断せ
ず,かつ,グリップの滑りは各回とも 30mm 以下でなければならない。
5.
構造,形状及び寸法
5.1
構造一般
(1)
安全帯 1A 種及び 1B 種 安全帯 1A 種は,胴締めベルトに補助ベルトをもつもので,胴締めベルトに
は 1 個の D 環をもち,フック又はカラビナをつけたロープの他端を D 環に連結し,胴締めベルトはバ
ックルによって装着できる構造であって,ロープの端のフック又はカラビナ及び必要な場合は 8 字環
又は三つ目環を利用して,構造物,又は水平親綱などに取り付け,墜落を防止するものとする。
なお,作業上の都合によっては,垂直親綱附属のグリップに安全帯のフック又はカラビナを連結し
て使用してもよい。8 字環又は三つ目環は省略することができる。
また,1B 種は垂直親綱に取り付けて使用するものであって,ロープの先端に,1A 種のフック又は
カラビナの代わりにグリップを付けた構造のものとする。
(2)
安全帯 2A 種及び 2B 種 安全帯 2A 種は,胴締めベルトに補助ベルトをもたないもので,かつ,ロー
プの先端にフック又はカラビナを取り付けたもので,その他は安全帯 1A 種と同じ構造とする。
安全帯 2B 種は,2A 種のフック又はカラビナの代わりにグリップを取り付けた構造のものとする。
5.2
胴締めベルト 胴締めベルトは,次の各項を満足しなければならない。
(1)
ベルトは,柔軟,かつ,強じんな細幅織で,長軸方向に沿ってよじれ,折れ目などを生じないような
構造とし,幅は 50mm 以上,長さはバックルを含めて原則として 1 100mm 以上,厚みは 2mm 以上で
あるものとする。
(2)
ベルトの一端は,折り返してバックルを取り付け,この折返し部は縫糸によって強固に取り付け,他
端はほつれ止め加工をしておくものとする。
(3) D
環の取付けは,D 環をベルトに通し,D 環止めによって止めておくか,又はベルトと同質の布を当
て,縫糸にて強固に取り付けるものとする。
なお,D 環がベルトと接触する部分には,摩耗防止の措置を講じておくものとする。
5.3
補助ベルト 補助ベルトは,柔軟,かつ,強じんな細幅織で,胴締めベルトのよじれ,折れ目を補
強し,落下衝撃力をできるだけ身体の広い面積で受け持たせるもので,幅は 75mm 以上,長さは原則とし
て 650mm 以上,厚みは 2mm 以上とし,胴締めベルトに取り付けるものとする。
5.4
ロープ ロープは,次の各項を満足しなければならない。
(1)
ロープは,三つ打 Z よ(撚)り,八つ打(編索)などを用い,長さはフック若しくはカラビナ又はグ
リップを除き原則として 1 500mm 以下とし,作業上やむを得ない場合は 2 500mm までとする。
(2)
ロープの一端にはフック若しくはカラビナ又はグリップを取り付け,他端は D 環に直結又は掛けはず
しをする構造とする。
(3)
ロープをフック・カラビナ若しくはグリップ又は D 環に取り付ける場合は,ロープを折り返し,摩耗
防止の措置をした上,3 回以上さつま編み込みとしておくものとする。
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5.5
金属製品 金属製品の角は丸め,表面はすべて平滑に仕上げ,全体にわたってさび止めを施してあ
るか,又は耐食性のものとする。
(1)
フック又はカラビナ フック又はカラビナは,かぎ部の外れ止め装置を二重に備えたものとする。
なお,カラビナは
図 4 などのような形状で,いかなる負荷の場合にも,力の作用中心線が外れ止め
装置にかからないような構造とする。
図 4 カラビナ
(2)
グリップ グリップは垂直親綱の任意の位置で取り付け,取り外しができ,かつ,使用中必要な箇所
で常に垂直親綱を確実に把握し,また,移動させる場合は,垂直親綱の軸方向に上下に容易に移動さ
せることができる構造とする。
また,垂直親綱からの外れ止め装置は二重に備えたものであって,かつ,見えやすい箇所に使用す
る垂直親綱の太さを刻印しておくものとする。
なお,垂直親綱附属グリップの構造も,上記安全帯附属グリップと同じものとする。
(3)
環類 D 環又は 8 字環若しくは三つ目環は継目がないものとする。
(4)
バックルの環 バックルを構成する環は,継目がないものとする。
6.
材料
6.1
胴締めベルト 胴締めベルトは,合成繊維の原糸を用いたものとする。
6.2
補助ベルト 補助ベルトは,合成繊維の原糸,又は綿糸などを用いたものとする。
6.3
ロープ ロープは,合成繊維の原糸を用いたものとする。
6.4
バックルなどの取付部の縫糸 バックル及び D 環の縫付けに用いる縫糸は,合成繊維の良質なもの
とする。
6.5
フック又はカラビナ フック又はカラビナは JIS G 3101 に規定する SS400,若しくは JIS H 4040 に
規定する A2017-T4 又はこれらと同等以上の機械的性質をもつ材料を用いるものとする。
6.6
グリップ グリップは,JIS G 3141 に規定する SPCC 又はこれと同等以上の機械的性質をもつ材料
を用いるものとする。
なお,垂直親綱附属グリップの材料も安全帯附属グリップと同じものとする。
6.7
環類 D 環又は 8 字環若しくは三つ目環は,JIS G 3101 に規定する SS400 又はこれと同等以上の機
械的性質をもつ材料を用いるものとする。
6.8
バックル バックルは,JIS G 3141 に規定する SPCC 又はこれと同等以上の機械的性質をもつ材料
を用いるものとする。
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7.
試験方法
7.1
胴締めベルトの強さ試験 試験片の全幅をチャック又はその他の方法でつかみ,試験部分の間隔を
200mm
,引張強さを 300mm/min 以内として引張試験を行う。
7.2
ロープの強さ試験 JIS L 2704 の 5.7(引張強さ)に規定する方法によって試験を行う。
7.3
フック又はカラビナの強さ試験 図 5 に示すようにフック又はカラビナのかぎ部と,ロープの通し
穴に引張用金具を掛け,引張試験を行う。
図 5 フック又はカラビナの強さ試験
7.4
グリップの強さ試験 図 6 に示すようにグリップに表示した太さの JIS L 2703 に規定する親綱にグ
リップを取り付け,そのロープ環に引張用金具を掛け,引張試験を行う。
図 6 グリップの強さ試験
7.5
環類の強さ試験 図 7 に示すように D 環又は 8 字環若しくは三つ目環にそれぞれ引張用金具を掛け,
引張試験を行う。
図 7 環類の強さ試験
7.6
D
環の取付部の強さ試験 図 8 に示すように径 250∼300mm,幅 100mm 以上のドラムに安全帯をつ
け,D 環に引張用金具を掛け,引張試験を行う。
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図 8 D 環取付部の強さ試験
7.7
バックルによる連結部の強さ試験 図 9 に示すようにバックルを正規に掛けた連結状態でベルトの
全幅をチャック又はその他の方法でつかみ,引張試験を行う。
図 9 バックルによる連結部の強さ試験
7.8
ショックアブソーバの強さ試験 ショックアブソーバの両端部に引張用金具を掛け,引張試験を行
う。
7.9
安全帯の衝撃吸収性及び強さ試験 ロープ先端にフック又はカラビナを付けた安全帯では,図 10(1)
に示すように試験装置の上部に取り付けたロードセルにロープのフック又はカラビナを掛け,安全帯を質
量 75kg の砂のうに一般作業時と同じように着け,ロープの最大長さだけ自由落下させる。
また,ロープ先端にグリップを付けた安全帯は,
図 10(2)に示すように試験装置の上部に取り付けたロー
ドセルにグリップに表示した太さの JIS L 2703 に規定する親綱に掛け,ロープ先端のグリップを垂直親綱
上部のさつま編み込み部最下端から 250mm 下方のところに取り付け,安全帯を質量 75kg の砂のうに一般
作業時と同じように着け,ロープの最大長さだけ自由落下させる。ただし,第 2 回目の試験では,グリッ
プの取付位置は,第 1 回目のときの位置より 150mm 上部とし,ショックアブソーバ付きのものでは,砂
のうの落下高さは第 1 回目のロープ長さとする。
このようにして破損の有無を調べ,かつ,ロードセルに伝達された衝撃力を測定記録装置により測定記
録する。
なお,グリップを付けた安全帯ではグリップの滑りも調べ,また,ショックアブソーバ付きのものでは
75kg
の砂のうをつり下げた状態で衝撃吸収性試験の前後の長さを測定する。
備考1. ロードセルは,最大容量29.4kN {3tf} の抵抗線式引張型ロードセルとする。
2.
測定記録装置は,抵抗線動ひずみ計及びオシログラフなどとし,±10%の誤差で応答する周
波数範囲が最低 0∼300Hz あるものとする。
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図 10 安全帯の衝撃吸収性及び強さ試験
7.10
垂直親綱附属グリップの保持力試験 太さ 14mm,長さ 2 500mm の JIS L 2703 に規定するロープの
先端にフックを取り付けた安全帯のフックをグリップに連結し,
7.9
に規定しているグリップを取り付けた
安全帯と同様な方法で試験し,破損の有無,及びグリップの滑りを調べる。
8.
検査
8.1
構造,形状,寸法及び材料の検査 構造,形状の検査は全数検査を行い,5.及び 6.の規定に合格しな
ければならない。ただし,寸法及び材料については,合理的な抜取方法で行う。
8.2
性能検査 性能検査は,合理的な抜取方法によって 7.の規定に基づいて試験を行い,4.の規定に適合
しなければならない。
9.
製品の呼び方 安全帯の呼び方は,名称及び種類による。
例 安全帯 1A 種
10.
表示 安全帯には,見えやすい箇所に,次の事項を表示する。
(1)
名称及び種類 ただし,名称の略号として M という記号を用いてもよい。
(2)
製造年月
(3)
製造業者名又はその略号
(4)
ショックアブソーバ付きでは,最低の取付高さ
11.
使用上の注意 安全帯には,次のような使用上の注意事項を示さなければならない。
(1)
胴締めベルトは,バックルを正しく掛けて着装し,D 環は身体の側部より前方にこないようにして使
用すること。
(2)
安全帯を着けた腰の位置は,できるだけ安全帯ロープ先端の取付位置より高い位置にならないように
9
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して使用すること。
(3)
鋭い角のついたアングルなどに直接ロープを回し掛けしないこと。
(4)
体重をかける U 字つりで使用しないこと。
(5)
グリップを取り付ける垂直親綱は,グリップに表示した太さで,22.9kN {2340kgf} 以上の引張強さを
もつものを使用すること。
なお,グリップは上下の方向を間違わずに使用すること。
(6)
安全帯のロープとベルトは,同一製造業者,同一形式のものを使用すること。
(7)
一度でも大きな衝撃を受けた安全帯は,外観に変化がなくても再度使用しないこと。
(8)
ショックアブソーバ付きの安全帯では,ロープ先端の取付位置を表示された最低の取付高さ以上とす
ること。
JIS M 7624
(安全帯)原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
西 島 茂 一
財団法人安全衛生技術試験協会
大 関 親
労働省労働基準局
深 谷 潔
労働省産業安全研究所
揖 斐 敏 夫
通商産業省立地公害局
○
服 部 幹 雄
工業技術院標準部
近 藤 太 二
社団法人産業安全技術協会
梅 井 勲
中央労働災害防止協会
涌 井 直 正
鉱業労働災害防止協会
狩 野 祐 忠
建設業労働災害防止協会
河 野 欽 次
日本鋼管株式会社鶴見製作所
片 山 秀 夫
川崎製鉄株式会社千葉製鉄所
○
町 田 定 男
株式会社シモン
○
松 村 不二夫
ミドリ安全株式会社
○
藤 井 勉
藤井電工株式会社
○
松 本 正
サンコー株式会社
○
谷 澤 陽太郎
株式会社谷沢製作所
○
磯 野 祐 三
東洋物産工業株式会社
○
吉 村 栄 一
日新産業株式会社
○
三 上 圭 二
社団法人日本保安用品協会
備考 ○印を付けた委員は,小委員を兼ねる。